(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】試験機
(51)【国際特許分類】
G01N 3/04 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G01N3/04 J
G01N3/04 N
(21)【出願番号】P 2021138879
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020195881
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 昴
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-055669(JP,A)
【文献】実開昭61-014306(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0231210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片を厚み方向から掴む掴み具を備え、前記試験片に試験力を付与する試験装置と、
前記掴み具に前記試験片を搬送する搬送装置と、
を備えた試験機であって、
前記搬送装置は、前記試験片を保持する保持機構と、
前記試験片の厚み中心が前記掴み具の掴み中心に一致するように前記保持機構を移動させる移動機構と、を備え
、
前記試験片の厚み中心が前記掴み具の掴み中心に一致するように前記移動機構による前記保持機構の移動を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記移動機構が前記保持機構を移動する移動量を、前記試験片の厚みに応じて求める算出式を記憶しており、
前記搬送装置が前記掴み具に前記試験片を搬送する際に、前記試験片の厚みを厚み測定装置に測定させて、取得し、
取得した厚みから前記算出式に基づいて前記移動量を決定し、
決定した前記移動量に応じて前記保持機構を移動するように前記移動機構を制御する、
試験機。
【請求項2】
前記制御装置は、
基準試験片の厚み中心を前記掴み具の掴み中心に一致させるように前記移動機構に前記保持機構を移動させる移動量を、厚みが全て異なる複数の基準試験片のそれぞれについて取得し、
前記複数の基準試験片のそれぞれの前記移動量に基づいて、前記算出式を校正する、
請求項
1に記載の試験機。
【請求項3】
前記保持機構は、前記試験片の厚み方向の面を吸着して前記試験片を保持する吸着パッドを備え、
前記搬送装置は、前記保持機構を支持するアームと、前記アームを倒伏位置と起立位置との間で回動可能に支持する回動機構と、を備え、
前記制御装置は、前記回動機構を制御して、収容容器から前記試験片を取り出す場合に前記アームを前記倒伏位置に移動させ、前記試験片を前記掴み具に搬送する場合に前記アームを前記起立位置に移動させる、
請求項
1または2に記載の試験機。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記保持機構を、前記倒伏位置において、前記収容容器に接近離間する接近離間方向に移動可能に支持する第2の移動機構を備え、
前記制御装置は、前記第2の移動機構を制御し、前記収容容器から前記試験片を取り出す場合に前記保持機構を前記接近離間方向に移動させる、
請求項
3に記載の試験機。
【請求項5】
前記移動機構は前記回動機構に支持されて、前記アームが前記起立位置に移動した場合に前記保持機構を
、前記
掴み具が掴む方向である掴み方向に移動可能とし、且つ、前記アームが前記倒伏位置に移動した場合に前記保持機構を前記接近離間方向に移動可能として前記第2の移動機構の機能も有する、
請求項
4に記載の試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験機、および、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チャックにより試験片の両端を把持し、この試験片にチャックを介して試験荷重を加え、試験片の破断試験などを行う試験機が知られている。この種の試験機では、試験装置に試験片を供給する搬送装置を備えている場合があり、収容容器から試験片を取り出し、試験片を試験装置のチャックに自動的にセットしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、試験片の試験を行う試験機では、対象とする試験片の規格が日本産業規格などにより予め規定されており、試験機は、サイズが一定の試験片のみを扱うための構成となっていた。このため、例えば、規格と異なる厚みの試験片を扱おうとすると、試験装置自体では、その異なる試験片を扱うことができても、搬送装置では、厚みに起因して試験片の配置位置を変える必要があり、試験装置に適切に搬送できないという課題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、様々な厚みの試験片を、試験装置に適切に搬送することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、試験片を厚み方向から掴む掴み具を備え、前記試験片に試験力を付与する試験装置と、前記掴み具に前記試験片を搬送する搬送装置と、を備えた試験機であって、前記搬送装置は、前記試験片を保持する保持機構と、前記試験片の厚み中心が前記掴み具の掴み中心に一致するように前記保持機構を移動させる移動機構と、を備え、前記試験片の厚み中心が前記掴み具の掴み中心に一致するように前記移動機構による前記保持機構の移動を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記移動機構が前記保持機構を移動する移動量を、前記試験片の厚みに応じて求める算出式を記憶しており、前記搬送装置が前記掴み具に前記試験片を搬送する際に、前記試験片の厚みを厚み測定装置に測定させて、取得し、取得した厚みから前記算出式に基づいて前記移動量を決定し、決定した前記移動量に応じて前記保持機構を移動するように前記移動機構を制御する、試験機に関する。
【0006】
本発明の第2の態様は、試験片を厚み方向から掴む掴み具に前記試験片を搬送する搬送装置であって、前記試験片を保持する保持機構と、前記試験片の厚み中心が前記掴み具の掴み中心に一致するように前記保持機構を移動させる移動機構と、を備える、搬送装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様および第2の態様によれば、試験片が掴み具にセットされる際に、試験片の厚み中心が掴み具の掴み中心に一致するように保持機構を移動させることができるため、掴み具に適切に試験片を掴ませることができる。よって、試験片の厚みが異なっても適切に試験片を試験装置に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る自動材料試験機の図である。
【
図4】
図3の矢印X方向に見た搬送装置の図である。
【
図5】第1実施形態の搬送装置の動作を示す図であり、
図5(A)は吸着機構が倒伏位置で上昇位置に保持された状態を示す図、
図5(B)は吸着機構が薄い試験片の下降位置に移動した状態を示す図、
図5(C)は吸着機構が厚い試験片の下降位置に移動した状態を示す図である。
【
図6】第1実施形態の搬送装置の動作を示す図であり、自動材料試験機が取り扱う試験片のうち最も薄い厚みの試験片を搬送する場合の図である。
【
図7】第1実施形態の搬送装置の動作を示す図であり、
図7(A)は厚い試験片を搬送する場合に吸着機構が起立位置に回動した状態を示す図、
図7(B)は
図7(A)の状態から試験片の厚み中心がチャックの掴み中心に一致するように幅方向に移動した状態を示す図である。
【
図8】基準試験片に基づく移動量の計測方法の一例を示す図である。
【
図9】一定の厚みの試験片のみを対象とする搬送装置を示す図であり、
図9(A)は一定の試験片を吸着する場合の図、
図9(B)は一定の試験片よりも厚い試験片を吸着する場合の図である。
【
図10】制御装置の位置合わせ処理のフローチャートである。
【
図11】制御装置の校正処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[1.第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る自動材料試験機1の図である。
本実施形態の「試験機」の一例としての自動材料試験機1は、試験片Tに対して試験力としての試験荷重を付与することにより、試験片Tの引張力及び伸びを測定する。
【0011】
自動材料試験機1は、試験片供給装置10と、試験装置30と、試験片回収装置50と、制御装置100と、を備える。
【0012】
試験片供給装置10は、試験装置30に試験片Tを供給する。試験片供給装置10は、試験片Tをパレット11に収容した状態で収納する収納供給部12と、収納供給部12からパレット11が搬送される搬送台13と、搬送台13に供給されたパレット11から試験片Tを試験装置30に搬送する搬送装置20と、収納供給部12から搬送台13にパレット11を搬送する際に試験片Tの測寸を行う測寸装置14と、を備える。
【0013】
収納供給部12は、試験片Tが収められた複数のパレット11を、例えば、上下に重ねて収納する。収納供給部12は、いずれか一つのパレット11が図示しない棒状の引き出し用の部材で引き出されて搬送台13に移送可能に構成されている。パレット11には、底部に不図示の開口が形成されており、開口を跨ぐように複数の試験片Tが倒伏した状態でパレット11に並べて収められている。
【0014】
搬送台13には、収納供給部12からパレット11が供給される。搬送台13は、収納供給部12から供給されたパレット11が載置されるテーブル13Aと、テーブル13A上でパレット11をガイドする複数のローラー13Bと、を備える。搬送台13では、パレット11がローラー13Bによってガイドされて移動されることで、パレット11上の試験片Tが順次、所定の被取出位置に配置される。
【0015】
搬送装置20は、吸着パッド29を備えたアーム26を備える。搬送装置20は、搬送台13にセットされたパレット11から、吸着パッド29により試験片Tを一片ずつ取り出して保持し、試験片Tを試験装置30に搬送、供給する。搬送装置20は、試験片Tを試験装置30の所定位置にセットする。
【0016】
測寸装置14は、試験片Tの厚みWを測寸する。測寸装置14は、当て材14Aと、当て材14Aに対して接近離間可能に支持された測寸ゲージ14Bとを備える。測寸ゲージ14Bは、例えば、磁気スケールである。測寸装置14は、「厚み測定装置」の一例に対応する。
本実施形態では、測寸装置14は、収納供給部12から搬送台13にパレット11を搬送する際に、試験片Tを測寸し、搬送装置20にセットされる前の試験片Tを測寸する。測寸装置14は、パレット11の開口上に跨る試験片Tを当て材14Aと測寸ゲージ14Bとで挟むように、当て材14Aに対して測寸ゲージ14Bを移動させ、その移動量に基づいてパレット11上の試験片Tの厚みWを測寸する。測寸ゲージ14Bの計測信号は制御装置100に入力される。
【0017】
試験装置30は、試験片供給装置10から供給された試験片Tに試験荷重を付与して試験片Tを試験する。
試験装置30は、台座31を有する。台座31の上部にはテーブル32が設けられている。テーブル32には、鉛直方向上方に延びる支柱33が立設されている。支柱33は、自動材料試験機1の試験装置30の幅方向(
図1の左右方向)SDに一対設けられている。支柱33の上部には、一対の支柱33の間に延びるクロスヨーク34が架け渡されている。支柱33の内部には、図示しないねじ棒が設けられている。ねじ棒はボールネジで構成されている。ねじ棒には、クロスヘッド35の両端が図示しないナットを介して連結されている。クロスヘッド35は、ねじ棒の回転によりテーブル32に対して昇降する。なお、ねじ棒は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0018】
クロスヘッド35には、ロードセル36が設置されている。ロードセル36には、継手37が取り付けられる。継手37は、下方に延びている。継手37の下端には、上チャック(掴み具)38が接続されている。上チャック38には、不図示のシリンダ装置が配置されている。不図示のシリンダ装置が作動することにより、上チャック38は幅方向SDに開閉される。上チャック38には、起立された状態の試験片Tの上側の端部Taが掴まれる。試験片Tは、上チャック38の掴み中心L上に配置される。
【0019】
上チャック38の下方には、下チャック(掴み具)39が配置される。下チャック39は、接手40を介してテーブル32の上面に固定される。下チャック39は、上チャック38に対して上下対称に構成されること以外は、上チャック38と同様に構成される。下チャック39には、起立された状態の試験片Tの下側の端部Tbが掴まれる。試験片Tは、下チャック39の掴み中心L上に配置される。
【0020】
上チャック38及び下チャック39によって試験片Tが掴まれた状態で、上チャック38がクロスヘッド35と共に昇降する。これにより、上チャック38と下チャック39との間に掴まれた試験片Tには、試験力が付与される。この際に、ロードセル36は、継手37を介して、上チャック38が付与する試験力を計測する。ロードセル36の計測信号は制御装置100に入力される。
【0021】
図1において、上チャック38及び下チャック39の右側には、試験片回収装置50が配置されている。試験片回収装置50は、試験装置30から試験片Tを回収する。
試験片回収装置50は、上チャック38に対応して設けられた上部回収装置51と、下チャック39に対応して設けられた下部回収装置81とを備える。
【0022】
上部回収装置51は、試験片Tを回収する回収機構52と、回収機構52を上チャック38が掴んだ試験片Tに対向可能に支持する支持機構53とを備える。
上部回収装置51は、クロスヘッド35に固定されており、クロスヘッド35と共に昇降可能である。上部回収装置51では、回収機構52が上チャック38に対向する回収位置と、上チャック38から退避する退避位置との間を移動可能に構成されており、回収機構52が回収位置に移動した場合に試験片Tが回収され、回収機構52が退避位置に移動した場合に、回収された試験片Tが破棄される。
【0023】
下部回収装置81は、上部回収装置51に対応して、回収機構52に対応する回収機構82と、支持機構53に対応する支持機構83とを備える。下部回収装置81は、上部回収装置51と上下対称に配置され、支持機構83がテーブル32の上面に固定されていること以外は、上部回収装置51と同様に構成される。下部回収装置81は、下チャック39に対する相対的な高さが一定に保持される。
【0024】
図2は、搬送装置20の斜視図である。
搬送装置20は、搬送台13に供給されたパレット11から試験片Tを取り出して試験片Tを試験装置30に搬送し、供給する。
搬送台13上のパレット11は、トレー状の収容容器である。パレット11には、複数の試験片Tが平置き状態(倒伏した状態)で並べて収められる。一片の試験片Tは、厚みが均一に構成された縦長の板材である。試験片Tは、平面視では、両側の端部Ta、Tbに比べ、それら端部Ta、Tb同士を繋ぐ中間部Tcが幅狭に形成されており、いわゆるダンベル形状を成している。試験片Tの両側の端部Ta、Tbは、試験装置30において、チャック38、39に装着される箇所である。これら端部Ta、Tbの間を引き延ばす方向に試験力を加えたときの中間部Tcの変化(変形等)が試験装置30によって測定される。
なお、かかる試験片Tには、例えば日本産業規格K6251に規定されたダンベル状試験片を用いることが可能であるが、本実施形態では、日本産業規格K6251で規定された試験片以外の厚みの試験片Tを用いることができる。すなわち、パレット11には、複数の試験片Tが配置されるが、パレット11上の複数の試験片Tは、すべてが、互いに同一の厚みを有する試験片Tでもよいし、試験片T毎に互いに異なる厚みを有する試験片Tでもよい。
【0025】
図3は、搬送装置20の側面図である。
図2、
図3において、搬送装置20は、固定部21を備える。固定部21は床面に固定される。固定部21の上部には、搬送スライド装置22が支持される。
搬送スライド装置22は、搬送台13から試験装置30に向かう方向に延びるガイドロッド22A、22Aを備える。本実施形態では、ガイドロッド22A、22Aは、試験装置30の前面側で前後方向(第1方向)FDに延びる。ガイドロッド22A、22Aは、試験装置30の幅方向(第2方向)SDに一対配置される。なお、第2方向は、第1方向に直交し且つ水平方向に延びる方向である。換言すれば、幅方向SDは、前後方向FDに直交し且つ水平方向に延びる方向である。
【0026】
ガイドロッド22A、22Aには、搬送ステージ22Bが装着される。搬送ステージ22Bは、ガイドロッド22A、22Aに沿って摺動可能に支持される。搬送ステージ22Bには、図示しない駆動源から動力が伝達される。駆動源は、例えば電動モータである。搬送ステージ22Bは、試験片Tを取り出す取出位置(
図3の実線)と、試験片Tを試験装置30にセットするセット位置(
図3の二点鎖線)との間を移動可能に構成されている。
【0027】
搬送ステージ22Bには、「移動機構」の一例としての幅方向スライド装置23が支持される。
幅方向スライド装置23は、試験装置30の幅方向SDに延びるガイドロッド23Aを備える。ガイドロッド23Aには、台状の幅摺動ステージ23Bが装着される。幅摺動ステージ23Bは、ガイドロッド23Aに沿って摺動可能に支持される。幅摺動ステージ23Bは、「駆動装置」の一例としての電動アクチュエータ23Cで駆動される。電動アクチュエータ23Cは、シリンダ本体23C1と、幅方向SDに延びるシリンダロッド23C2とを備える。シリンダロッド23C2は、シリンダ本体23C1に対して伸縮可能に支持される。電動アクチュエータ23Cは、リニアアクチュエータであり、シリンダ本体23C1に対するシリンダロッド23C2の位置制御が可能に構成されている。具体的には、電動アクチュエータ23Cは、ストロークセンサ23C3(
図3参照)を備え、ストロークセンサ23C3によりシリンダ本体23C1に対するシリンダロッド23C2のストローク量を検出可能である。電動アクチュエータ23Cは、ストロークセンサ23C3によって検出されたストローク量に基づいてシリンダロッド23C2の幅方向SDの位置制御を行う。
【0028】
シリンダ本体23C1は、搬送スライド装置22の搬送ステージ22Bに固定される。一方、シリンダロッド23C2は、幅摺動ステージ23Bに固定され、幅摺動ステージ23Bを支持する。シリンダロッド23C2がシリンダ本体23C1に対して伸縮すると、幅摺動ステージ23Bがシリンダロッド23C2と共にガイドロッド23Aに沿って幅方向SDに摺動する。ここで、本実施形態の自動材料試験機1が対象とすることが可能な最も薄い試験片T1の厚みをW1とし、最も厚い試験片T2の厚みをW2とする場合、本実施形態の幅摺動ステージ23Bは、距離(W2-W1)/2以上、幅方向SDに移動可能に構成されている。
【0029】
幅摺動ステージ23Bには、試験片Tの取出装置24が支持される。取出装置24は、搬送ステージ22Bによって前後方向FDに移動可能であるとともに、幅摺動ステージ23Bによって幅方向SDに移動可能である。幅方向SDは、チャック38、39の開閉される方向(掴み方向)に対応する。
【0030】
取出装置24は、回動機構25と、回動機構25に支持された吸着機構(保持機構)28とを備える。
回動機構25は、円筒状の回動機構本体25Aを備える。回動機構本体25Aは、屈曲板状のフレーム部材25Bを介して、幅摺動ステージ23Bに固定される。回動機構本体25Aは、回動軸25A1を備える。回動軸25A1は、ガイドロッド22A、22Aに沿って前後方向FDに延びる。本実施形態の回動機構本体25Aは、図示しないエア供給装置によりエアが供給されることで駆動可能なエア旋回装置で構成される。回動軸25A1は、正逆駆動可能に構成されている。回動軸25A1には、回動軸25A1から径方向に延びるアーム26が支持される。
【0031】
図4は、
図3の矢印X方向に見た搬送装置20の図である。
アーム26は、回動軸25A1と一体に回動する。アーム26は、回動軸25A1の周方向に90度、正逆回転可能に構成されている。アーム26は、
図4の実線で示す倒伏位置と、
図4の二点鎖線で示す起立位置との間を回動する。ここで、倒伏位置は、吸着パッド29が試験片Tを倒伏した状態で吸着可能な位置である。また、起立位置は、吸着パッド29が吸着した試験片Tが起立した状態になる位置である。
【0032】
アーム26の径方向外側の端部には、「第2の移動機構」の一例としての昇降シリンダ27が支持される。昇降シリンダ27は、外観箱状のシリンダ本体27Aと、
図2において、上下方向TDに延びるシリンダロッド27Bを備える。シリンダロッド27Bは、シリンダ本体27Aに対して伸縮可能に支持される。シリンダロッド27Bの先端には、吸着機構28が支持される。吸着機構28は、シリンダロッド27Bが、シリンダ本体27Aに対して上下方向(第3の方向、試験片Tに対する接近離間方向)TDに伸縮することで昇降する。なお、第3の方向は、第1の方向及び第2の方向に直交する方向である。換言すれば、上下方向TDは、前後方向FD及び幅方向SDに直交する方向である。
【0033】
昇降シリンダ27は、
図4の実線で示す上昇位置と、
図4の破線で示す下降位置との間を移動可能に構成される。本実施形態の昇降シリンダ27のシリンダロッド27Bは、最大で距離H(=W2-W1)以上、昇降可能に構成される。具体的には、例えば、10mm以上、昇降可能に構成される。
なお、以降の説明では、厚みW2と厚みW1、試験片T2と試験片T1は、必ずしも自動材料試験機1が対象とすることが可能な最も薄い厚みW1の試験片T1と、最も厚い厚みW2の試験片T2を示すものではない。単に、厚みW2が厚みW1よりも厚いことを示すために、厚みW2、W1や、厚みW2、W1の試験片T2、T1を使用する場合もある。
【0034】
吸着機構28は、長板状の吸着アーム28Aを備える。吸着アーム28Aは、シリンダロッド27Bの先端に支持されている。吸着アーム28Aの径方向外端には、吸着部材の一例としての吸着パッド29が支持されている。吸着パッド29は、一対設けられる。
図4において、吸着パッド29は、上下方向TDに延びており、下端が拡径形状を有する。吸着パッド29には、図示しないエア供給装置が接続されており、吸着パッド29が試験片Tに接触した状態で、図示しないエア供給装置が作動させることで、吸着パッド29には、試験片Tが吸着され、離脱可能に保持される。
【0035】
図1に示すように、自動材料試験機1には、自動材料試験機1の各部を制御する制御装置100が配置される。制御装置100は、自動材料試験機1を中枢的に制御する装置であり、自動材料試験機1との間で信号を送受信可能に接続される。
制御装置100が自動材料試験機1から受信する信号は、測寸装置14が出力する計測信号や、ロードセル36が出力する計測信号、制御や試験に要する適宜の信号である。
制御装置100が自動材料試験機1へ送信する信号は、試験片供給装置10の制御信号、チャック38、39の図示しないシリンダ装置の制御信号や、図示しないネジ棒のモータの制御信号、回収装置51、81の制御信号、その他の制御や試験に要する適宜の信号である。
【0036】
制御装置100はコンピュータを備え、このコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリデバイスと、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置と、制御装置100や各種の周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、を備える。そして、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶された制御プログラムを実行することで、自動材料試験機1の各種の機能を実現する。
【0037】
本実施形態の制御装置100は、試験片供給装置10を制御する。制御装置100は、収納供給部12を制御して収納供給部12からパレット11を搬送台13に供給させる。制御装置100は、図示しないモータによって引き出し用の部材を制御して、パレット11を収納供給部12から引き出すように移動させて、パレット11に収容された試験片Tを測寸装置14の測寸の位置に移動させる。制御装置100は、パレット11上の試験片Tが測寸の位置に移動すると、測寸装置14を制御して、試験片Tの厚みWを測寸させる。制御装置100は、測寸装置14が出力する計測信号により、測寸装置14が測寸した試験片Tの厚みWを取得する。制御装置100は、測寸装置14の測寸が終了すると、図示しない引き出し用の部材によりパレット11を移動させて、測寸された試験片Tを搬送装置20に対向する所定の被取出位置(搬送装置20で吸着する位置)に移動させる。制御装置100は、測寸された試験片Tが被取出位置に移動すると、搬送装置20を制御する。
【0038】
制御装置100は、搬送装置20の回動機構25を制御して、吸着機構28を倒伏位置に移動させる。制御装置100は、吸着機構28が倒伏位置に移動して吸着パッド29が試験片Tに対向すると、昇降シリンダ27を制御する。制御装置100は、昇降シリンダ27を制御して、吸着機構28を下降させる。
【0039】
図5は、第1実施形態の搬送装置20の動作を示す図であり、
図5(A)は吸着機構28が倒伏位置で上昇位置に保持された状態を示す図、
図5(B)は吸着機構28が薄い試験片T1の下降位置に移動した状態を示す図、
図5(C)は吸着機構28が厚い試験片T2の下降位置に移動した状態を示す図である。なお、以降の図面では、説明の便宜のために一体的に動く部分には網掛けを付している。
制御装置100は、吸着機構28を下降させる際には、吸着パッド29が試験片Tに接触した場合に下降が規制される程度の力で駆動するように、昇降シリンダ27を制御する。本実施形態では、制御装置100は、対象となる最も薄い試験片T1に接触可能な十分な所定時間、下降制御する。これにより、所定時間が経過した場合には、試験片Tの厚みWに関わらず、吸着パッド29が試験片Tの上面(厚み方向の面)に到達して接触する。
【0040】
制御装置100は、所定時間が経過すると、不図示のエア供給装置を作動させて、試験片Tを吸着パッド29に吸着させる。
よって、吸着機構28が上昇位置から下降位置に移動させることで、薄い試験片T1や、厚い試験片T2が吸着パッド29で吸着される。
【0041】
制御装置100は、吸着パッド29に試験片Tを吸着すると、昇降シリンダ27を制御して、吸着パッド29を上昇位置に移動させる。
制御装置100は、吸着パッド29を上昇位置に移動させた後に、回動機構25を制御して、吸着機構28を起立位置に移動させる。
【0042】
図6は、第1実施形態の搬送装置20の動作を示す図であり、自動材料試験機1が取り扱う試験片Tのうち最も薄い厚みW1の試験片T1を搬送する場合の図である。
図7は、第1実施形態の搬送装置20の動作を示す図であり、
図7(A)は試験片T1よりも厚い試験片T2を搬送する場合に吸着機構28が起立位置に回動した状態を示す図、
図7(B)は
図7(A)の状態から試験片T2の厚み中心Laがチャック38、39の掴み中心Lに一致するように幅方向SDに移動した状態を示す図である。
制御装置100は、吸着機構28を起立位置に移動させて試験片Tが起立状態になると、試験片Tの厚みWに応じて、試験片Tを厚み方向に移動させる。
【0043】
ここで、
図6に示すように、本実施形態の自動材料試験機1では、最も薄い試験片T1が位置合わせをすることなく搬送されるように自動材料試験機1が構成されている。すなわち、吸着機構28に保持された最も薄い試験片T1が、上昇位置に移動して起立位置に回動した場合に、試験片T1の厚み中心Laが、チャック38、39の掴み中心Lに一致するように構成されている。
一方、厚みW1よりも厚い試験片T2を吸着した場合には、吸着機構28が上昇位置(
図4の実線参照)に移動した状態で起立位置に移動すると、
図7(A)に示すように、試験片T2の厚み中心Laがチャック38、39の掴み中心Lに対して
図7(A)の左右方向(試験片T2の厚み方向)にずれる。
【0044】
そこで、制御装置100は、搬送途中で測寸される厚みWに応じて、幅摺動ステージ23Bを
図7(A)の左右方向に移動させる。制御装置100は、幅方向スライド装置23が吸着機構28を移動する距離(移動量)Dを、試験片Tの厚みWに応じて求める算出式を記憶している。
例えば、制御装置100は、算出式として、下記の式(1)を記憶してもよい。
D=(W-W1)/2 (1)
そして、制御装置100は、幅方向スライド装置23を制御して、最も薄い試験片T1の場合の位置から距離D(=(W-W1)/2)(
図7(B)参照)だけ、幅摺動ステージ23Bを幅方向SDの一方(
図7では左方向)に移動させてもよい。これにより、幅摺動ステージ23Bに支持された回動機構25や吸着機構28が一体に距離Dだけ左方向に移動するため、吸着機構28に吸着された試験片Tの厚み中心Laを、チャック38、39の掴み中心Lに一致させることができる。
【0045】
ここで、掴み中心Lは、チャック38、39が閉じる際に、チャック38、39におけるそれぞれの幅方向SDの一対の歯38A、39Aが向かう目標位置である。換言すれば、上チャック38及び下チャック39では一対の歯38A、39Aが掴み中心Lに向かって均等に閉じ、試験片Tを厚み方向から挟んで試験片Tを掴む構造であるため、掴み中心Lは、歯39A、38Aが閉じ動作を開始する前の開いた状態、すなわち開かれた状態のチャック38、39の初期状態における歯38A、39Aと歯38A、39Aの幅方向SDにおける中央の位置である。また、掴み中心Lは、上チャック38及び下チャック39が閉じた状態において、幅方向SDの両側にある歯38A、39Aと歯38A、39Aの間の中央位置とも言い換えられる。
【0046】
しかしながら、自動材料試験機1は機差や機械的調整などによって機械的な特性が異なるため、算出式としては、本実施形態では、自動材料試験機1の機械的な特性によって定まる一次式、すなわち、次の式(2)を記憶する。
D=a×W+k (2)
ここで、第1係数a、及び第2係数kの決定方法については、
図8を参照して後述する。
上記式(2)は、「算出式」の一例に対応する。
【0047】
制御装置100は、測寸装置14が測寸した厚みWを取得すると、式(2)を用いて、距離Dを決定する。制御装置100は、幅方向スライド装置23を制御して、幅摺動ステージ23Bを、基準の位置から距離Dだけ幅方向SDの一方に移動させる。これにより、吸着機構28に吸着された試験片Tの厚み中心Laを、チャック38、39の掴み中心Lに一致させることができる。
したがって、自動材料試験機1の機械的特性、具体的には、搬送装置20の機械的特性に応じて、吸着機構28に吸着された試験片Tの厚み中心Laを、チャック38、39の掴み中心Lに一致させることができる。
【0048】
制御装置100は、試験片Tの厚み中心Laが掴み中心Lに一致するように吸着機構28を幅方向SDに移動させると、搬送ステージ22Bを前後方向FDに移動させて、吸着機構28をセット位置(
図3の二点鎖線)に移動させる。搬送ステージ22Bがセット位置に移動して、上チャック38の幅方向SDの一対の歯38Aの間と、下チャック39の幅方向SDの一対の歯39Aの間とに試験片Tがセットされると、制御装置100は、不図示のシリンダ装置を駆動させて、上チャック38及び下チャック39を作動させる。
【0049】
制御装置100は、試験片Tがチャック38、39で掴まれると、不図示のエア供給装置を制御して、試験片Tを吸着パッド29から離脱させる。そして、制御装置100は、吸着機構28を元の取出位置に戻すとともに、試験装置30を制御して試験片Tの試験を行い、その後、試験片回収装置50を制御して試験片Tを回収する。
そして、制御装置100は、次の試験片Tに対して、上述の一連の制御工程を繰り返す。
【0050】
図8は、基準試験片Tα、Tβに基づく移動量Dα、Dβの計測方法の一例を示す図である。
制御装置100が記憶する式(2)における第1係数a、及び第2係数kは自動材料試験機1の機械的な調整に依存するため、メンテナンスの際に、以下のようにして校正される。
【0051】
すなわち、まず、ユーザーは、厚みWαの第1の基準試験片Tαを搬送装置20の吸着パッド29に吸着させる。そして、第1の基準試験片Tαの厚み中心Laをチャック38、39の掴み中心Lに合わせるように、幅方向スライド装置23に吸着機構28を移動させ、第1移動量Dαを計測する。厚みWαは、例えば、1mmである。
次に、ユーザーは、厚みWβの第2の基準試験片Tβを搬送装置20の吸着パッド29に吸着させる。そして、第2の基準試験片Tβの厚み中心Laをチャック38、39の掴み中心Lに合わせるように、幅方向スライド装置23に吸着機構28を移動させ、第2移動量Dβを計測する。厚みWβは、例えば、12mmである。
そして、次の式(3)及び式(4)によって、第1係数a、及び第2係数kを算出して、校正する。
a=(Dβ-Dα)/(Wβ-Wα) (3)
k=Dα-a×Wα (4)
【0052】
本実施形態では、複数の基準試験片として、二つの基準試験片Tα、Tβを使用するが、多項式の次数に合わせた数の複数の基準試験片を使用して算出式を校正する構成でもよい。
【0053】
基準試験片Tα、Tβには、厚み中心Lα、Lβを示すマークMα、Mβ(
図8参照)が設けられている。マークMα、Mβにより基準試験片Tα、Tβの厚み中心Lα、Lβを目視可能である。
【0054】
基準試験片Tα、Tβの厚み中心Lα、Lβを一致させる対象としてのチャック38には、掴み中心Lを示すマークMが付されている。ここで、本実施形態の試験装置30は、搬送装置20から試験片Tを受け取る際に、上チャック38が下チャック39よりも先に試験片Tを掴むように構成されている。このため、先に試験片Tを掴む上チャック38の掴み中心Lに一致させることが望ましく、上チャック38にマークMが付されている。
【0055】
以下では、説明の便宜のために、第1の基準試験片Tαを先に計測し、その次に、第2の基準試験片Tβを計測する場合について説明する。
ユーザーは、制御装置100の入力部により、校正処理の開始の入力操作を行い、制御装置100に校正処理を開始させる。入力部は、例えば、制御装置100に接続されたキーボードである。校正処理の開始の入力操作は、自動材料試験機1のメンテナンスの終了後に行うことが望ましい。
【0056】
ユーザーが制御装置100を校正処理の開始の入力操作をした後に、ユーザーは、第1の基準試験片TαのマークMαが上チャック38のマークMに一致するように、幅方向スライド装置23の幅摺動ステージ23Bを幅方向SDに移動させる。ユーザーは、第1の基準試験片TαのマークMαが上チャック38のマークMに一致した場合には、幅摺動ステージ23Bを停止させた状態で、使用している第1の基準試験片Tαの厚みWαを、入力部の操作により、制御装置100に入力する。
【0057】
次いで、ユーザーは、次の第2の基準試験片Tβに関し、第1の基準試験片Tαの厚みWαを入力した場合と同様の作業を行う。すなわち、起立位置の吸着パッド29に第2の基準試験片Tβが保持された状態で、ユーザーは、第2の基準試験片TβのマークMβが上チャック38のマークMに一致するように、幅方向スライド装置23の幅摺動ステージ23Bを幅方向SDに移動させる。ユーザーは、第2の基準試験片TβのマークMβが上チャック38のマークMに一致した場合には、幅摺動ステージ23Bを停止させた状態で、使用している第2の基準試験片Tβの厚みWβを、入力部の操作により、制御装置100に入力する。
【0058】
一方、制御装置100は、校正処理の開始の入力を受け付けると、ストロークセンサ23C3(
図8参照)に基づいてストローク量の検出を開始する。ストローク量は、基準位置、いわゆるゼロ点からの吸着機構28の移動量である。
制御装置100は、厚みWαの入力がされると、入力時に検出されたストローク量を、第1移動量Dαとして取得する。すなわち、制御装置100は、第1の基準試験片Tαに関する厚みWαと第1移動量Dαとを取得する。制御装置100は、この厚みWαと第1移動量Dαとを記憶する。
【0059】
また、制御装置100は、次の厚みWβの入力がされると、入力時に検出されたストローク量を、第2移動量Dβとして取得する。すなわち、制御装置100は、第2の基準試験片Tβに関する厚みWβと第2移動量Dβとを取得する。制御装置100は、この厚みWβと第2移動量Dβとを記憶する。
【0060】
制御装置100は、二つの基準試験片Tα、Tβに関する厚みWα、Wβおよび移動量Dα、Dβを記憶すると、第1係数aを、上記式(3)によって算出する。また、制御装置100は、第2係数kを、上記式(4)によって算出する。制御装置100は、算出された第1係数aと第2係数kとに基づいて、式(2)を更新する。
制御装置100は、算出式の校正処理を終了する。
【0061】
これにより、機械的調整などにより搬送装置20の搬送特性に変化が生じても、算出式を校正することにより、変化した搬送特性に合わせた算出式とすることができる。よって、式(2)で決定された移動量Dによって吸着機構28を移動させることにより、精度よく試験片Tの厚み中心Laをチャック38、39の掴み中心Lに合わせることができる。
【0062】
図9は、一定の厚みW1の試験片T1のみを対象とする搬送装置を示す図であり、
図9(A)は一定の試験片T1を吸着する場合の図、
図9(B)は一定の試験片T1よりも厚い試験片T2を吸着する場合の図である。
一定の厚みW1の試験片T1のみを搬送する構成では、一定の厚みW1に応じて吸着機構28を動作させれば十分であるため、例えば、
図9(A)に示すように、吸着機構28を倒伏位置に移動させた場合に、吸着パッド29が試験片T1に接触させる位置に移動させることが可能であった。
【0063】
すなわち、一定の厚みW1の試験片T1のみを搬送する構成では、幅方向スライド装置23や昇降シリンダ27は不要であり、搬送スライド装置22と回動機構25との間を固定部材Z1で接続し、回動機構25と吸着機構28との間を固定部材Z2で接続していた。このため、一定の厚みW1の試験片T1を対象とする搬送装置では、例えば、厚い試験片T2の場合には、
図9(B)に示すように、倒伏位置に移動する前に吸着パッド29が試験片T2に接触してしまい、吸着パッド29が適切に試験片T2を吸着、保持できない場合があった。
【0064】
また、仮に、吸着パッド29に厚みW1とは異なる試験片T2を吸着できたとしても、起立位置では、厚みW1の試験片T1に合わせて、試験片T1の厚み中心Laが、チャック38、39の掴み中心Lに一致するように構成されている。このため、本実施形態の
図6と
図7(A)との関係のように、厚い試験片T2では、厚み中心Laが掴み中心Lからずれてしまう。このため、その状態で試験片T2をセット位置に搬送しても、チャック38、39が掴む際に、チャック38、39の歯38A、39Aの当たるタイミングが厚み方向で異なり、チャック38、39で厚みの異なる試験片T2を適切に掴み難い。
【0065】
このように、一定の厚みの試験片Tを対象とする試験機では、その試験片Tに応じた一定量のみ移動する構成であれば十分であり、試験片Tの厚みに応じて移動量(回動量、昇降量)を変更できないため、試験片Tの厚みに応じて適切に試験装置30に試験片Tを搬送できなかった。
【0066】
これに対して、本実施形態では、吸着機構28を昇降させる昇降シリンダ27を備える。このため、吸着機構28を倒伏位置に移動する場合には、吸着パッド29を試験片Tに接触させる前に、
図5(A)に示すように、吸着パッド29を試験片Tから十分な距離を空けて対向させる構成にすることが可能である。そして、吸着パッド29を試験片Tに対向させた後に、昇降シリンダ27により、吸着パッド29を試験片に接触するまで下降させることで、
図5(B)に示すように薄い試験片T1が吸着パッド29で吸着可能である。また、厚い試験片T2も
図5(C)に示すように吸着パッド29で吸着可能である。
【0067】
また、本実施形態では、吸着機構28を幅方向SDに移動させる幅方向スライド装置23を備える。このため、吸着機構28をセット位置に移動する際に、試験片Tの厚みWに応じて、試験片Tを、試験片Tの厚み中心Laが掴み中心Lに一致するように幅方向SDに移動させることが可能であり、チャック38、39で試験片Tを適切に掴み易くなっている。
【0068】
したがって、本実施形態では、試験片Tの厚みに関わらず掴み易く、様々な厚みの試験片を、自動で搬送して試験装置30に配置することができる。
【0069】
図10は、制御装置100の位置合わせ処理のフローチャートである。「位置合わせ処理」とは、試験片Tの厚み中心Laを、チャック38、39の掴み中心Lに一致させる処理である。
ステップST11において、制御装置100は、試験が開始されると、測寸装置14により試験片Tの厚みWが測寸されたか否かを判断する。
制御装置100は、測寸装置14により試験片Tの厚みWが測寸されていないと判断する場合(ステップST11:NO)には、ステップST11を繰り返す。
制御装置100は、測寸装置14により試験片Tの厚みWが測寸されたと判断する場合(ステップST11:YES)には、処理をステップST12に進める。
ステップST12において、制御装置100は、厚みWを取得する。
ステップST13において、制御装置100は、厚みWから上記式(2)に基づいて、吸着機構28の移動量Dを決定する。
【0070】
ステップST14において、制御装置100は、試験片Tが被取出位置に移動したか否かを判断する。
制御装置100は、試験片Tが被取出位置に移動していないと判断する場合(ステップST14:NO)には、ステップST14を繰り返す。
制御装置100は、試験片Tが被取出位置に移動したと判断する場合(ステップST14:YES)には、ステップST15において、昇降シリンダ27により吸着機構28を所定時間下降させる。
ステップST16において、制御装置100は、吸着パッド29に試験片Tを吸着させる。
ステップST17において、制御装置100は、昇降シリンダ27により吸着機構28を所定時間上昇させる。
【0071】
ステップST18において、制御装置100は、回動機構25により吸着機構28を倒伏位置から起立位置に移動させる。
ステップST19において、制御装置100は、幅方向スライド装置23により、吸着機構28を、ステップST13で決定された移動量Dだけ、幅方向SDに移動させる。
ステップST20において、制御装置100は、搬送スライド装置22により吸着機構28をセット位置に移動させる。
ステップST21において、制御装置100は、チャック38、39で挟まれた後に、吸着パッド29から試験片Tを離脱させる。
ステップST22において、制御装置100は、搬送スライド装置22により吸着機構28を取出位置に移動させる。
【0072】
ステップST23において、制御装置100は、搬送される次の試験片Tが無いか否かを判断する。
制御装置100は、次の試験片Tがあると判断した場合(ステップST23:NO)には、ステップST11に戻る。
制御装置100は、次の試験片Tが無いと判断した場合(ステップST23:YES)には、位置合わせ処理を終了する。
【0073】
図11は、制御装置100の校正処理のフローチャートである。
校正処理とは、2つの基準試験片Tα、Tβを用いて、上記式(2)の第1係数aおよび第2係数kを校正する処理である。
制御装置100は、校正開始の入力を受け付けると、校正処理を開始する。
ステップST31において、制御装置100は、校正処理を開始すると、一つ目の基準試験片に関する厚みと移動量とが取得されたか否かを判断する。本実施形態では、制御装置100は、一つ目の基準試験片Tαに関する厚みWαが入力された場合に、入力結果に基づいて厚みWαを取得すると共に、ストロークセンサ23C3の検出信号に基づいて移動量Dαを取得する。
【0074】
制御装置100は、一つ目の基準試験片に関する厚みと移動量とが取得されないと判断する場合(ステップST31:NO)には、ステップST31を繰り返す。
制御装置100は、一つ目の基準試験片に関する厚みと移動量とが取得されたと判断する場合(ステップST31:YES)には、処理をステップST32に進める。
ステップST32において、一つ目の基準試験片に関する厚みと移動量とを記憶する。
【0075】
ステップST33において、制御装置100は、二つ目の基準試験片に関する厚みと移動量とが取得されたか否かを判断する。本実施形態では、制御装置100は、二つ目の基準試験片Tβに関する厚みWβが入力された場合に、入力結果に基づいて厚みWβを取得すると共に、ストロークセンサ23C3の検出信号に基づいて移動量Dβを取得する。
【0076】
制御装置100は、二つ目の基準試験片に関する厚みと移動量とが取得されないと判断する場合(ステップST33:NO)には、ステップST33を繰り返す。
制御装置100は、二つ目の基準試験片に関する厚みと移動量とが取得されたと判断する場合(ステップST33:YES)には、処理をステップST34に進める。
ステップST34において、制御装置100は、二つ目の基準試験片に関する厚みと移動量とを記憶する。
【0077】
ステップST35において、制御装置100は、第1の基準試験片Tαに関する厚みWαおよび第1移動量Dαと、第2の基準試験片Tβに関する厚みWβおよび第2移動量Dβと、により、上記式(3)及び式(4)を用いて、上記式(2)(=算出式)の係数a,bを算出する。
ステップST36において、制御装置100は、算出された係数a,bにより上記式(2)(=算出式)を校正する。
制御装置100は、校正処理を終了する。
【0078】
本実施形態では、基準試験片が2つである場合について説明するが、これに限定されない。基準試験片が3つ以上でもよい。
基準試験片が3つ以上である場合には、式(2)に示す一次式を最小二乗法等で算出してもよい。
【0079】
本実施形態では、算出式が一次式である場合について説明するが、これに限定されない。算出式が多項式であってもよい。この場合には、多項式の次数に応じて、基準試験片の個数を設定すればよい。
【0080】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0081】
本実施形態の自動材料試験機1は、試験片Tを厚み方向に掴むチャック38、39を備え試験片Tに試験力を付与する試験装置30と、チャック38、39に試験片Tを搬送する搬送装置20と、を備えた自動材料試験機1であって、搬送装置20は、試験片Tを保持する吸着機構28と、試験片Tの厚み中心Laがチャック38、39の掴み中心Lに一致するように、吸着機構28を移動させる幅方向スライド装置23と、を備える。
したがって、試験片Tがチャック38、39にセットされる際に、試験片Tの厚み中心Laがチャック38、39の掴み中心Lに一致するように吸着機構28を移動させることができるため、チャック38、39に適切に試験片Tを掴ませることができる。よって、試験片Tの厚みWが異なっても適切に試験片Tを試験装置30に搬送することができる。
【0082】
本実施形態では、自動材料試験機1は、試験片Tの厚み中心Laがチャック38、39の掴み中心Lに一致するように幅方向スライド装置23による吸着機構28の移動を制御する制御装置100を備える。
したがって、制御装置100により、自動で、試験片Tの厚み中心Laをチャック38、39の掴み中心Lに合わせることができる。
【0083】
本実施形態では、制御装置100は、幅方向スライド装置23が吸着機構28を移動する移動量Dを、試験片Tの厚みWに応じて求める算出式を記憶しており、搬送装置20がチャック38、39に試験片Tを搬送する際に、試験片Tの厚みWを測寸装置14に測定させて、取得し、取得した厚みWから算出式に基づいて移動量Dを決定し、決定した移動量Dに応じて吸着機構28を移動するように、幅方向スライド装置23を制御する。
したがって、測寸装置14が測定する厚みWに基づいて幅方向スライド装置23を移動でき、試験片T毎に精度よく、試験片Tの厚み中心Laをチャック38、39の掴み中心Lに合わせることができる。
【0084】
本実施形態では、制御装置100は、基準試験片Tα、Tβの厚み中心Lα、Lβをチャック38、39の掴み中心Lに合わせるように幅方向スライド装置23に吸着機構28を移動させる移動量Dα、Dβを、厚みWα、Wβが全て異なる複数の基準試験片Tα、Tβのそれぞれについて取得し、複数の基準試験片Tα、Tβのそれぞれの移動量Dα、Dβに基づいて、算出式を校正する。したがって、機械的調整などにより搬送装置20の搬送特性に変化が生じても、算出式を校正することにより、変化した搬送特性に合わせた算出式とすることができる。よって、算出式で決定された移動量Dによって吸着機構28を移動させることにより、精度よく試験片Tの厚み中心Laをチャック38、39の掴み中心Lに合わせることができる。
【0085】
また、本実施形態では、吸着機構28は、試験片Tの厚み方向の面を吸着して試験片Tを保持する吸着パッド29を備え、搬送装置20は、吸着機構28を支持するアーム26と、アーム26を倒伏位置と起立位置との間で回動可能に支持する回動機構25と、を備え、制御装置100は、回動機構25を制御して、パレット11から試験片Tを取り出す場合にアーム26を倒伏位置に移動させ、試験片Tをチャック38、39に搬送する場合にアーム26を起立位置に移動させる。
したがって、試験片Tを搬送する際に試験片Tの姿勢を倒伏した状態から起立した状態に変更できる。
【0086】
また、本実施形態では、搬送装置20は、吸着機構28を、倒伏位置において、パレット11に接近離間する接近離間方向に移動可能に支持する昇降シリンダ27を備え、制御装置100は、昇降シリンダ27を制御し、パレット11から試験片Tを取り出す場合に吸着機構28を接近離間方向に移動させる。
したがって、パレット11から試験片Tを取り出す場合に、吸着パッド29を試験片Tに対して十分な間隔を空けて配置することができ、様々な厚みWの試験片Tに応じて吸着機構28を接近離間させることで、様々な厚みWの試験片Tを吸着できる。
【0087】
本実施形態の搬送装置20は、試験片Tを厚み方向に掴むチャック38、39に試験片Tを搬送する搬送装置20であって、試験片Tを保持する吸着機構28と、試験片Tの厚み中心Laがチャック38、39の掴み中心Lに一致するように、吸着機構28を移動させる幅方向スライド装置23と、を備える。
したがって、試験片Tがチャック38、39にセットされる際に、試験片Tの厚み中心Laがチャック38、39の掴み中心Lに一致するように吸着機構28を移動させることができるため、チャック38、39に適切に試験片Tを掴ませることができる。よって、試験片Tの厚みWが異なっても適切に試験片Tを試験装置30に搬送できる。
【0088】
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、前述の第1実施形態と同一の構成要素には同一符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0089】
図12は、第2実施形態に係る搬送装置220の図である。
図12は、第1実施形態の
図7の図示場面に対応する。
第2実施形態の搬送装置220における搬送スライド装置22の搬送ステージ22Bには、幅方向スライド装置23に代えて、固定台223が支持されている。すなわち、第2実施形態では、第1実施形態の移動機構に対応する幅方向スライド装置23が省略されている。
また、搬送装置220では、第2の移動機構の一例としての昇降シリンダ27に代えて、移動機構の一例としてのリニアアクチュエータ227が支持されている。すなわち、リニアアクチュエータ227は、回動機構25のアーム26に支持される。リニアアクチュエータ227は、本体部227Aと、本体部227Aに対して伸縮可能なロッド部227Bとを備える。リニアアクチュエータ227は、電動制御可能であり、本体部227Aに対するロッド部227Bの位置制御が可能に構成されている。リニアアクチュエータ227は、第1実施形態の電動アクチュエータ23Cと同様に構成してもよい。
【0090】
リニアアクチュエータ227のロッド部227Bには、吸着機構28が支持される。ロッド部227Bは、吸着機構28が倒伏位置にある場合には、本体部227Aに対して上下方向TDに移動可能であり、昇降可能である。また、ロッド部227Bは、吸着機構28が起立位置に移動している場合には、本体部227Aに対して幅方向SDに移動可能である。
【0091】
第2実施形態の制御装置100は、吸着機構28が倒伏位置に移動している場合には、リニアアクチュエータ227を制御して、吸着機構28を昇降させる点が、第1実施形態の制御装置100とは異なる。また、本実施形態の制御装置100は、吸着機構28が起立位置に移動している場合には、リニアアクチュエータ227を制御して、吸着機構28を幅方向SDに移動させる点が、第1実施形態の制御装置100とは異なる。
【0092】
制御装置100は、測寸装置14で試験片Tの厚みWが測定されると、試験片Tの厚みWに応じて、リニアアクチュエータ227を制御して、試験片Tの厚み中心Laがチャック38、39の掴み中心Lに一致させるように幅方向SDに移動させる。
【0093】
第2実施形態では、リニアアクチュエータ227が、第1実施形態の昇降シリンダ27の機能と、幅方向スライド装置23の機能を実現しているため、第2実施形態でも、様々な厚みWの試験片Tを、自動で搬送して試験装置30に配置できる。
【0094】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、次のような効果を奏する。
【0095】
本実施形態では、リニアアクチュエータ227は回動機構25に支持されて、アーム26が起立位置に移動した場合に吸着機構28を掴み方向に移動可能とし、且つ、アーム26が倒伏位置に移動した場合に吸着機構28を接近離間方向に移動可能として第2の移動機構の機能も有する。
したがって、吸着機構28の異なる方向の移動を、単独の移動機構、すなわち、単独のリニアアクチュエータ227で実現できる。
【0096】
[3.変形例]
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、および応用が可能である。
【0097】
上述した実施形態において、試験片T毎に、測寸装置14で厚みWを測寸して、その厚みWに応じて幅方向SDに移動させる構成を説明したが、試験片Tの試験順序が定まっている場合には、試験開始前に試験片の厚みWを入力可能な構成とし、試験片T毎に、試験機が入力された厚みWで初期調整されて、入力された厚みWに基づいて自動材料試験機1を作動させる構成でもよい。
【0098】
上述した実施形態では、保持機構として吸着機構28を説明したが、保持機構としては、試験片Tを搬送するための掴み具によって試験片Tを挟んで掴む構成でもよく、例えば、空気圧で開閉駆動するエアグリッパーでもよい。
【0099】
上述した例示的な実施形態、及び変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0100】
(第1項)
一態様に係る試験機は、試験片を厚み方向から掴む掴み具を備え前記試験片に試験力を付与する試験装置と、収容容器から試験片を取り出して前記掴み具に前記試験片を搬送する搬送装置と、を備えた試験機であって、前記搬送装置は、前記試験片を保持する保持機構と、前記試験片の厚み中心が前記掴み具の掴み中心に一致するように、前記保持機構を移動させる移動機構と、を備えてもよい。
【0101】
第1項に記載の試験機によれば、試験片が掴み具にセットされる際に、試験片の厚み中心が掴み具の掴み中心に一致するように保持機構を移動させることができるため、掴み具に適切に試験片を掴ませることができる。よって、試験片の厚みが異なっても適切に試験片を試験装置に搬送することができる。
【0102】
(第2項)
第1項に記載の試験機において、前記試験片の厚み中心が前記掴み具の掴み中心に一致させるように前記移動機構による前記保持機構の移動を制御する制御装置を備えてもよい。
【0103】
第2項に記載の試験機によれば、制御装置により、自動で、前記試験片の厚み中心を前記掴み具の掴み中心に一致させることができる。
【0104】
(第3項)
第2項に記載の試験機において、前記制御装置は、前記移動機構が前記保持機構を移動する移動量を、前記試験片の厚みに応じて求める算出式を記憶しており、前記搬送装置が前記掴み具に前記試験片を搬送する際に、前記試験片の厚みを厚み測定装置に測定させて、取得し、取得した厚みから前記算出式に基づいて前記移動量を決定し、決定した前記移動量に応じて前記保持機構を移動するように、前記移動機構を制御してもよい。
【0105】
第3項に記載の試験機によれば、厚み測定装置が測定する厚みに基づいて移動機構を移動することができ、試験片毎に精度よく、試験片の厚み中心を掴み具の掴み中心に合わせることができる。
【0106】
(第4項)
第3項に記載の試験機において、前記制御装置は、基準試験片の厚み中心を前記掴み具の掴み中心に合わせるように前記移動機構に前記保持機構を移動させる移動量を、厚みが全て異なる複数の基準試験片のそれぞれについて取得し、前記複数の基準試験片のそれぞれの前記移動量に基づいて、前記算出式を校正してもよい。
【0107】
第4項に記載の試験機によれば、機械的調整などにより搬送装置の搬送特性に変化が生じても、算出式を校正することにより、変化した搬送特性に合わせた算出式とすることができる。よって、算出式で決定された移動量によって保持機構を移動させることにより、精度よく試験片の厚み中心を掴み具の掴み中心に合わせることができる。
【0108】
(第5項)
第2項から第4項のいずれか一項に記載の試験機において、前記保持機構は、前記試験片の厚み方向の面を吸着して前記試験片を保持する吸着パッドを備え、前記搬送装置は、前記保持機構を支持するアームと、前記アームを倒伏位置と起立位置との間で回動可能に支持する回動機構と、を備え、前記制御装置は、前記回動機構を制御して、前記収容容器から前記試験片を取り出す場合に前記アームを前記倒伏位置に移動させ、前記試験片を前記掴み具に搬送する場合に前記アームを前記起立位置に移動させてもよい。
【0109】
第5項に記載の試験機によれば、試験片を搬送する際に試験片の姿勢を倒伏した状態から起立した状態に変更できる。
【0110】
(第6項)
第5項に記載の試験機において、前記搬送装置は、前記保持機構を、前記倒伏位置において、収容容器に接近離間する接近離間方向に移動可能に支持する第2の移動機構を備え、前記制御装置は、前記第2の移動機構を制御し、前記収容容器から前記試験片を取り出す場合に前記保持機構を前記接近離間方向に移動させてもよい。
【0111】
第6項に記載の試験機によれば、前記収容容器から前記試験片を取り出す場合に、吸着パッドを試験片に対して十分な間隔を空けて配置することができ、様々な厚みの試験片に応じて保持機構を接近離間させることで、様々な厚みの試験片を吸着できる。
【0112】
(第7項)
第6項に記載の試験機において、前記移動機構は前記回動機構に支持されて、前記アームが前記起立位置に移動した場合に前記保持機構を前記掴み方向に移動可能とし、且つ、前記アームが前記倒伏位置に移動した場合に前記保持機構を前記接近離間方向に移動可能として前記第2の移動機構の機能も有してもよい。
【0113】
第7項に記載の試験機によれば、保持機構の異なる方向の移動を、単独の移動機構で実現できる。
【0114】
(第8項)
一態様に係る搬送装置は、試験片を厚み方向から掴む掴み具に前記試験片を搬送する搬送装置であって、前記試験片を保持する保持機構と、前記試験片の厚み中心が前記掴み具の掴み中心に一致するように、前記保持機構を移動させる移動機構と、を備えてもよい。
【0115】
第8項に記載の搬送装置によれば、試験片が掴み具にセットされる際に、試験片の厚み中心が掴み具の掴み中心に一致するように保持機構を移動させることができるため、掴み具に適切に試験片を掴ませることができる。よって、試験片の厚みが異なっても適切に試験片を試験装置に搬送できる。
【符号の説明】
【0116】
1 自動材料試験機(試験機)
11 パレット(収容容器)
14 測寸装置(厚み測定装置)
20 搬送装置
23 幅方向スライド装置(移動機構)
25 回動機構
26 アーム
27 昇降シリンダ(第2の移動機構)
28 吸着機構(保持機構)
29 吸着パッド
30 試験装置
38 上チャック(掴み具)
39 下チャック(掴み具)
100 制御装置
220 搬送装置
227 リニアアクチュエータ(移動機構、第2の移動機構)
a,b 係数
L 掴み中心
La 厚み中心
T 試験片
T1 試験片
T2 試験片
Tα 第1の基準試験片
Tβ 第2の基準試験片
Lα 第1の基準試験片の厚み中心
Lβ 第2の基準試験片の厚み中心
W 厚み
W1 厚み
W2 厚み
D 移動量
Dα 第1移動量
Dβ 第2移動量