(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】サーバ装置および電力取引システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241106BHJP
G06Q 30/08 20120101ALI20241106BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q30/08
(21)【出願番号】P 2021144556
(22)【出願日】2021-09-06
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木暮 宏光
(72)【発明者】
【氏名】工藤 由貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 和峰
(72)【発明者】
【氏名】小幡 一輝
(72)【発明者】
【氏名】菊池 智志
(72)【発明者】
【氏名】間庭 佑太
【審査官】日比野 可奈子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-087298(JP,A)
【文献】特開2021-056666(JP,A)
【文献】特開2021-065043(JP,A)
【文献】特開2021-093831(JP,A)
【文献】国際公開第2020/148851(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユニット間で電力授受の取引を行うサーバ装置であって、
プロセッサと、
前記プロセッサが実行するプログラムを記憶するメモリとを備え、
前記複数のユニットは、第1ユニット、第2ユニット、および第3ユニットを含み、
前記プロセッサは、
前記第1ユニットに対する前記第2ユニットの前記電力授受の取引に関する入札を受け付け、
前記電力授受の予定時間が到来する前に、前記第2ユニットのユーザによって選択されたユニットを前記第3ユニットとして決定し、
前
記予定時間において前記第2ユニットが前記第1ユニットに対する前記電力授受を行わない場合に、前記第3ユニットが前記第1ユニットに対する前記電力授受を行うための約定処理を実行する、サーバ装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記予定時間において前記第1ユニットに対する前記電力授受が行われない場合に、前記第2ユニットのユーザに対してペナルティを課すためのペナルティ処理を実行する、請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記予定時間において前記第2ユニットが前記第1ユニットに対する前記電力授受を行わない場合に、予め決められたルールに基づく優先順位に従って前記複数のユニットの中から前記第3ユニットを決定する、請求項1または請求項2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記予定時間が到来する前に前記優先順位を決定する、請求項3に記載のサーバ装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記予め決められたルールとして、前記電力授受の取引価格、前記電力授受の取引における入札順、前記電力授受の取引における電力量、前記電力授受の取引における過去の評価結果、および前記電力授受が行われる場所からの距離のうち、少なくとも1つに基づき前記優先順位を決定する、請求項3または請求項4に記載のサーバ装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第2ユニットと権利を共有するユニットを前記第3ユニットとして決定する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のサーバ装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記予定時間において、前記第2ユニットのユーザが前記第1ユニットに対する前記電力授受をキャンセルした場合に、前記約定処理を実行する、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載のサーバ装置。
【請求項8】
電力授受の取引を行う電力取引システムであって、
各々が前記電力授受を行うことが可能な複数のユニットと、
サーバ装置とを備え、
前記複数のユニットは、第1ユニット、第2ユニット、および第3ユニットを含み、
前記サーバ装置は、
前記第1ユニットに対する前記第2ユニットの前記電力授受の取引に関する入札を受け付け、
前記電力授受の予定時間が到来する前に、前記第2ユニットのユーザによって選択されたユニットを前記第3ユニットとして決定し、
前
記予定時間において前記第2ユニットが前記第1ユニットに対する前記電力授受を行わない場合に、前記第3ユニットが前記第1ユニットに対する前記電力授受を行うための約定処理を実行する、電力取引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーバ装置および電力取引システムに関し、より特定的には、複数のユニット間で電力授受の取引を行うサーバ装置および電力取引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-9334号公報(特許文献1)は、住宅および企業などの各構成員が電力取引プラットフォームを介して電力授受の取引(以下、「電力取引」とも称する。)を行うことができるシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたシステムによれば、各構成員が電力授受の取引を行うことができる。しかしながら、特許文献1に開示されたシステムにおいては、電力授受の取引を予定していたにも関わらず、電力授受が行われなかった場合の対処については何ら考慮されておらず、電力取引について改良の余地があった。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、電力授受の取引を極力途切れさせることなく、電力授受の取引を最適に行うことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係るサーバ装置は、複数のユニット間で電力授受の取引を行うサーバ装置であって、プロセッサと、プロセッサが実行するプログラムを記憶するメモリとを備える。複数のユニットは、第1ユニット、第2ユニット、および第3ユニットを含む。プロセッサは、第1ユニットに対する第2ユニットの電力授受の取引に関する入札を受け付け、電力授受の予定時間において第2ユニットが第1ユニットに対する電力授受を行わない場合に、第3ユニットが第1ユニットに対する電力授受を行うための約定処理を実行する。
【0007】
上記の構成によれば、第1ユニットに対する第2ユニットの電力授受の取引に関する入札が受け付けられた後、電力授受の予定時間において第2ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われない場合でも、第3ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われる。これにより、複数のユニット間で電力授受の取引を極力途切れさせることなく、電力授受の取引を最適に行うことができる。
【0008】
プロセッサは、予定時間において第1ユニットに対する電力授受が行われない場合に、第2ユニットのユーザに対してペナルティを課すためのペナルティ処理を実行する。
【0009】
上記の構成によれば、電力授受の予定時間において第1ユニットに対する電力授受が行われない場合に、第2ユニットのユーザに対してペナルティが課されるが、第2ユニットの代わりに第3ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われることで、第2ユニットのユーザに対してペナルティが課されることを回避することができる。
【0010】
プロセッサは、予定時間において第2ユニットが第1ユニットに対する電力授受を行わない場合に、予め決められたルールに基づく優先順位に従って複数のユニットの中から第3ユニットを決定する。
【0011】
上記の構成によれば、電力授受の予定時間において第2ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われない場合に、予め決められたルールに基づく優先順位に従って第3ユニットが決定されるため、優先順位に従って電力授受の取引を最適に行うことができる。
【0012】
プロセッサは、予定時間が到来する前に優先順位を決定する。
【0013】
上記の構成によれば、電力授受の予定時間が到来する前に第3ユニットを決定するための優先順位が決定されるため、予め決められた優先順位に従って電力授受の取引を最適に行うことができる。
【0014】
プロセッサは、予め決められたルールとして、電力授受の取引価格、電力授受の取引における入札順、電力授受の取引における電力量、電力授受における過去の評価結果、および電力授受が行われる場所からの距離のうち、少なくとも1つに基づき優先順位を決定する。
【0015】
上記の構成によれば、電力授受の取引価格、電力授受の取引における入札順、電力授受の取引における電力量、電力授受の取引における過去の評価結果、および電力授受が行われる場所からの距離のうち、少なくとも1つに基づき決められた優先順位に従って電力授受の取引を最適に行うことができる。
【0016】
プロセッサは、第2ユニットと権利を共有するユニットを第3ユニットとして決定する。
【0017】
上記の構成によれば、電力授受の予定時間において第2ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われない場合でも、第2ユニットと権利を共有する第3ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われるため、電力授受の取引を最適に行うことができる。
【0018】
プロセッサは、予定時間が到来する前に、第2ユニットのユーザによって選択されたユニットを第3ユニットとして決定する。
【0019】
上記の構成によれば、電力授受の予定時間において第2ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われない場合でも、第2ユニットのユーザによって選択された第3ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われるため、電力授受の取引を最適に行うことができる。
【0020】
プロセッサは、予定時間において、第2ユニットのユーザが第1ユニットに対する電力授受をキャンセルした場合に、約定処理を実行する。
【0021】
上記の構成によれば、電力授受の予定時間において第2ユニットのユーザによって第1ユニットに対する電力授受がキャンセルされた場合でも、第3ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われるため、電力授受の取引を最適に行うことができる。
【0022】
本開示のある局面に係る電力取引システムは、電力授受の取引を行う電力取引システムであって、各々が前記電力授受を行うことが可能な複数のユニットと、サーバ装置とを備える。複数のユニットは、第1ユニット、第2ユニット、および第3ユニットを含む。サーバ装置は、第1ユニットに対する第2ユニットの電力授受の取引に関する入札を受け付け、電力授受の予定時間において第2ユニットが第1ユニットに対する電力授受を行わない場合に、第3ユニットが第1ユニットに対する電力授受を行うための約定処理を実行する。
【0023】
上記の構成によれば、第1ユニットに対する第2ユニットの電力授受の取引に関する入札が受け付けられた後、電力授受の予定時間において第2ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われない場合でも、第3ユニットによって第1ユニットに対する電力授受が行われる。これにより、複数のユニット間で電力授受の取引を極力途切れさせることなく、電力授受の取引を最適に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、複数のユニット間で電力授受の取引を極力途切れさせることなく、電力授受の取引を最適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態に係る電力取引システムの一例を説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係る電力取引システムが適用されるP2P電力取引市場の一例を説明するための図である。
【
図3】P2P電力取引の一般取引市場における入札の一例を説明するための図である。
【
図4】P2P電力取引の直接取引市場における入札の一例を説明するための図である。
【
図5】実施の形態に係る電力取引システムの構成の一例を説明するための図である。
【
図6】エージェント装置が記憶するユニット情報の一例を説明するための図である。
【
図7】サーバ装置が記憶するエージェント情報の一例を説明するための図である。
【
図8】サーバ装置が記憶する優先順位情報の一例を説明するための図である。
【
図9】電力取引システムによる電力取引の一例を説明するための図である。
【
図10】サーバ装置の入札時における処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】サーバ装置の電力取引時における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0027】
[電力取引システムの概要]
図1は、実施の形態に係る電力取引システム1の一例を説明するための図である。
図1に示すように、電力取引システム1は、複数のユニット間で電力授受の取引を行うように構成されている。具体的には、電力取引システム1は、各々が電力授受を行うことが可能な複数のユニットと、サーバ装置3とを備える。サーバ装置3は、ネットワーク10を介して、複数のユニットの各々と通信可能に構成されている。なお、「電力授受」とは、第1ユニットが第2ユニットに対して電力を供給すること、および、第1ユニットが第2ユニットから電力を受け取ることのうち、少なくとも1つを含む概念である。
【0028】
複数のユニットは、車両5A~5Eと、工場7A、会社7B、商業施設7C、住宅7D、および店舗7Eなどの各種の建物とを含む。車両5A~5Eは、走行用のバッテリが搭載された電動車両であり、たとえば電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)またはプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)を含む。車両5A~5Eおよび工場7Aなどの複数のユニットは、充放電器6A~6Hに接続可能に構成されている。充放電器6A~6Hは、車両5A~5Eなどの充放電可能なユニットに接続されることで、接続されたユニットに電力を供給したり、ユニットからの電力を受け取ったりする。なお、以下では、車両5A~5Eを単に「車両」とも称し、充放電器6A~6Hを単に「充放電器」とも称する。また、車両5A~5Eおよび工場7Aなどの電力授受を行うことができる装置または施設を単に「ユニット」とも称する。なお、「ユニット」は、充放電器6A~6Hを含んでいてもよい。
【0029】
電力会社9からの電力は、工場7A、会社7B、商業施設7C、住宅7D、および店舗7Eなどの各種の建物に送電線網PL(系統電力網)を介して供給される。また、電力の自由化および再生可能エネルギーの発電技術の普及によって、電力会社9に限らず、電力資源を有する個人または法人と、電力の需要家である別の個人または法人との間で直接的に電力の売買取引を行うP2P(Peer to Peer)電力取引が導入され得る。
【0030】
たとえば、車両は、送電線網PLまたは工場7Aなどの各種の建物に設置された充放電器に接続されることで、バッテリの充放電を可能にする。つまり、車両は、充放電器に接続されることで、直接的に送電線網PLを介して電力会社9との間で電力授受を行ったり、工場7Aなどの各種の建物との間で電力授受を行ったりすることができる。このように、車両などの移動体を用いた電力授受をP2P取引によって行うことが実施され得る。
【0031】
電力取引システム1においては、車両、工場7A、および住宅7Dなどの電力需要家は、サーバ装置3との間の通信によってP2P電力取引の市場へアクセスし、電力の買取または売却の入札を行う。たとえば、電力需要家は、電力の買取または売却を希望する際に、サーバ装置3を介して電力取引を行いたい電力取引市場に対して、電力を買取または売却したい時間帯、単位時間帯ごとの電力量、および取引価格などを入札条件として入札する。P2P電力取引市場の運営者は、任意のアルゴリズムにより、入札条件が合致する売り手と買い手との間において電力取引の約定を発効し、条件の合致する相手が見つからない入札については不約定として処理する。なお、「入札」とは、買取または売却といったような電力取引を注文する行為、またはその注文自体を意味する。これに対して、「約定」とは、入札された電力取引を行うことを決定する行為、またはその決定自体を意味する。
【0032】
[P2P電力取引市場の概要]
図2は、実施の形態に係る電力取引システム1が適用されるP2P電力取引市場の一例を説明するための図である。
図2に示すように、P2P電力取引市場においては、たとえば、車両などの移動体における入札および約定を管理する移動体エージェント2A~2Dと、工場、商業施設、空港、および店舗などの比較的に電力需要が大きい大電力需要家における入札および約定を管理する事業者エージェント2E~2Hと、住宅などの比較的に電力需要が小さい小電力需要家における入札および約定を管理する住宅エージェント2I,2Jとが設けられている。車両、大電力需要家、および小電力需要家の各々は、対応するエージェントを介して、入札を行うように構成されている。
【0033】
P2P電力取引市場は、一般取引市場と、直接取引市場(個別取引市場)とを含む。一般取引市場は、不特定多数のエージェントが電力取引に参加することができる市場である。一般取引市場においては、P2P電力取引市場をまとめる運営者が定めた任意のルールに従って、電力取引の約定が行われる。マッチングルールとしては、単位時間帯で売り手が提示する価格と買い手が提示する価格とが合致した場合に、先着順で取引を成立させる方法がある。その他のマッチングルールとしては、単位時間帯で行われた売り手および買い手の入札(注文)を一旦整理した上で適切な価格で取引を成立させる方法とがある。
【0034】
図3は、P2P電力取引の一般取引市場における入札の一例を説明するための図である。
図3に示すように、一般取引市場においては、単位時間帯(1、2、…n)ごとに、不特定多数の売り手が価格および電力量の組(p,q)を入札する一方で、不特定多数の買い手が価格と電力量との組(P,Q)を入札する。なお、単位時間帯は、一般取引市場において設定された時間幅(たとえば、30分)である。電力量の取引は、単位時間帯の中で伝送される電力量(電力×単位時間帯長さ)ごとに行われる。
【0035】
直接取引市場は、直接取引市場のIDを有するエージェントのみが電力取引に参加することができる市場である。
図2に示すように、直接取引市場においては、充放電器が設置された固定の電力需要家に対して一つの市場が構成される。各電力需要家が管理するサーバ装置が1つの直接取引市場を構成してもよいし、1つのサーバ装置が複数の直接取引市場を構成してもよい。直接取引市場においては、各市場の運営者が独自で定めた任意のルールに従って、電力取引の約定が行われる。たとえば、上述したように、マッチングルールとしては、単位時間帯で売り手が提示する価格と買い手が提示する価格とが合致した場合に、先着順で取引を成立させる方法、あるいは、単位時間帯で行われた売り手および買い手の入札(注文)を一旦整理した上で適切な価格で取引を成立させる方法がある。
【0036】
図4は、P2P電力取引の直接取引市場における入札の一例を説明するための図である。
図4に示すように、直接取引市場においは、単位時間帯(1、2、…n)ごとに、売り手が価格および電力量の組(p,q)を提示したことに対して、直接取引市場のIDを有する複数の買い手が価格と電力量との組(P,Q)を入札する。なお、単位時間帯は、直接取引市場において個別に設定された時間幅(たとえば、30分)である。電力量の取引は、単位時間帯の中で伝送される電力量(電力×単位時間帯長さ)ごとに行われる。
【0037】
[電力取引システムの構成]
図5は、実施の形態に係る電力取引システム1の構成の一例を説明するための図である。
図5に示すように、電力取引システム1は、各々が電力授受を行うことが可能な複数のユニットと、エージェント装置2、サーバ装置3とを備える。
図5においては、複数のユニットとして、車両5、工場7A、および住宅7Dが例示されている。各ユニットには、エージェント装置2が接続されている。
【0038】
エージェント装置2は、複数のユニットの各々に接続され、接続されたユニットの電力取引に関する入札をサーバ装置3に対して行うように構成されている。エージェント装置2は、プロセッサ21と、メモリ22と、通信装置23とを備える。
【0039】
プロセッサ21は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算主体(コンピュータ)である。たとえば、プロセッサ21は、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。なお、プロセッサ21は、演算回路(processing circuitry)によって構成されてもよい。
【0040】
メモリ22は、プロセッサ21が各種の処理を実行するためのプログラムおよびデータを記憶する。たとえば、メモリ22は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体で構成される。メモリ22は、演算プログラム221と、ユニット情報222とを記憶する。
【0041】
演算プログラム221は、プロセッサ21が実行する処理を特定するためのソースコードを含む。たとえば、演算プログラム221は、エージェント装置2に接続されたユニットの電力取引に関する入札をサーバ装置3に対して行うためのソースコードを含む。
【0042】
ユニット情報222は、エージェント装置2に接続されたユニット(たとえば、車両5)に関し、特に電力取引の入札および約定に関する情報を含む。
【0043】
図6は、エージェント装置2が記憶するユニット情報222の一例を説明するための図である。たとえば、エージェント装置2は、
図6に示すようにテーブル形式でユニット情報222を記憶する。なお、
図6においては、車両5に接続されたエージェント装置2が記憶するユニット情報テーブルが示されている。
図6に示すように、ユニット情報テーブルは、IDと、形態情報と、トリップ情報と、SOC(State Of Charge)情報と、接続情報と、入札情報と、約定情報とを含む。
【0044】
IDは、ユニット(この例では車両)を特定するための識別情報を含む。形態情報は、ユニットの形態に関する情報を含み、たとえば、移動体(車両)、事業者、および住宅などを特定するための情報を含む。トリップ情報は、過去の走行ルートおよび走行時間などの走行履歴に関する情報を含む。SOC情報は、現在バッテリに蓄積された電力量に関する情報を含む。接続情報は、現在、充放電器に接続されているか否かを特定するための情報を含む。入札情報は、過去の入札履歴に関する情報、および現在行われている入札に関する情報を含む。約定情報は、過去の約定履歴に関する情報、および現在行われている入札が約定しているか否かを特定するための情報を含む。
【0045】
図5に戻り、メモリ22は、外部情報223をさらに記憶する。外部情報223は、現在の日時に関する情報、天気予報に関する情報、および電力取引市場における電力価格の気配値に関する情報などを含む。エージェント装置2は、これらの外部情報223を、ネットワーク10を介してサーバ装置3などの外部装置から取得する。特に、気配値は、サーバ装置3によって管理および決定されるため、エージェント装置2は、サーバ装置3から気配値を取得する。
【0046】
通信装置23は、有線通信または無線通信によって、ネットワーク10を介して他のエージェント装置2またはサーバ装置3との間でデータを送受信する。
【0047】
サーバ装置3は、たとえば、P2P電力取引の一般取引市場または直接取引市場において電力取引を管理する装置であり、電力取引に係る処理を実行する。サーバ装置3は、プロセッサ31と、メモリ32と、通信装置33とを備える。
【0048】
プロセッサ31は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算主体(コンピュータ)である。プロセッサ31は、たとえば、CPU、FPGA、およびGPUなどで構成される。なお、プロセッサ31は、演算回路(processing circuitry)によって構成されてもよい。
【0049】
メモリ32は、プロセッサ31が各種の処理を実行するためのプログラムおよびデータを記憶する。たとえば、メモリ32は、ROMおよびRAMなどの記憶媒体で構成される。メモリ32は、演算プログラム321と、エージェント情報322とを記憶する。
【0050】
演算プログラム321は、プロセッサ31が実行する処理を特定するためのソースコードを含む。たとえば、演算プログラム321は、後述する
図10および
図11に示す処理を実行するためのソースコードを含む。
【0051】
エージェント情報322は、サーバ装置3が管理する電力取引市場に参加しているエージェント装置2に関し、特に電力取引の入札および約定に関する情報を含む。
【0052】
図7は、サーバ装置3が記憶するエージェント情報322の一例を説明するための図である。たとえば、サーバ装置3は、
図7に示すようにテーブル形式でエージェント情報322を記憶する。
図7に示すように、エージェント情報テーブルは、IDと、形態情報と、入札情報と、約定情報と、評価情報とを含む。
【0053】
IDは、各エージェント装置2に接続されたユニットを特定するための識別情報を含む。形態情報は、ユニットの形態に関する情報を含み、たとえば、移動体(車両)、事業者、および住宅などを特定するための情報を含む。入札情報は、各エージェント装置2における過去の入札履歴に関する情報、および現在行われている入札に関する情報を含む。約定情報は、各エージェント装置2における過去の約定履歴に関する情報、および現在行われている入札が約定しているか否かを特定するための情報を含む。評価情報は、各エージェント装置2における過去の電力取引での評価結果に関する情報を含む。たとえば、サーバ装置3は、エージェント装置2が過去の電力取引において適切に入札および約定した場合は、評価ポイントを加算し、エージェント装置2が過去の電力取引において入札したにも関わらず電力授受をキャンセルした場合は、評価ポイントを減算し、このようにして算出された評価ポイントが評価情報としてエージェント情報テーブルに格納される。
【0054】
図5に戻り、通信装置33は、有線通信または無線通信によって、ネットワーク10を介してエージェント装置2との間でデータを送受信する。
【0055】
以上のように構成された電力取引システム1においては、エージェント装置2は、ユニット情報222に含まれるトリップ情報、SOC情報、および接続情報などに基づき、電力取引市場のサーバ装置3に対して電力取引の入札を行う。
【0056】
たとえば、エージェント装置2は、トリップ情報に基づきユニットである車両5の走行ルートを予測し、目標地点に到達するまでに必要な電力量のうち、現在のSOCに係る電力量の不足分を算出する。すなわち、エージェント装置2は、未来の走行において目標地点に到達するために購入すべき電力量を算出する。そして、エージェント装置2は、算出した電力量を購入するために、決定した取引価格を提示して、電力取引市場のサーバ装置3に対して電力取引の入札を行う。入札に関する入札情報は、エージェント装置2からサーバ装置3に送信される。このような入札は、複数のユニットの各々に対応するエージェント装置2によって行われるため、電力量および取引価格は複数のユニットの各々で異なる。
【0057】
さらに、エージェント装置2は、外部情報223に基づき、電力取引市場のサーバ装置3に対して電力取引の入札を行ってもよい。たとえば、エージェント装置2は、日時および気配値に基づき、最も電力量が安い単位時間帯を狙って電力取引の入札を行ってもよい。また、天気予報に基づき、車両5が走行予定時間までに発電可能な電力量、または、車両5が走行中に発電可能な電力量を算出し、目標地点に到達するために購入すべき電力量から算出した電力量を減算してもよい。
【0058】
サーバ装置3は、エージェント装置2から電力取引に関する入札を受け付けると、エージェント装置2によって指定された予定時間および充放電器において電力取引を予定するための処理を実行する。
【0059】
そして、サーバ装置3は、予定時間が到来したときに、指定された充放電器に車両5が接続され、かつ、車両5が充放電器を介して充放電可能である場合、エージェント装置2からの電力取引に関する入札を約定させるための約定処理を実行する。これにより、電力供給側のユニットと車両5との間で充放電器を介して電力授受が行われる。
【0060】
一方、サーバ装置3は、予定時間が到来したときに、車両5が充放電器を介して充放電可能でない場合、エージェント装置2からの電力取引に関する入札を約定させることなく、電力取引をキャンセルする。この場合、電力供給側のユニットは、予定していた電力取引ができないため、サーバ装置3は、電力取引をキャンセルした車両5のユーザに対してペナルティを課すためのペナルティ処理を実行する。たとえば、サーバ装置3は、車両5のユーザに対してキャンセルされた電力取引分の料金を請求したり、電力取引のキャンセル料金を請求したりする。
【0061】
このようにして、電力取引システム1においては、エージェント装置2とサーバ装置3との間で電力取引に関する入札および約定が行われる。しかしながら、エージェント装置2が電力取引の入札を行った後、予定時間において、指定された充放電器に車両5が必ずしも接続されるとは限らない。たとえば、エージェント装置2は、車両5のユーザの意思に関わらず、トリップ情報に基づき予測した走行ルートに基づき、電力取引を行う時間および電力取引を行う充放電器を指定して入札を行うが、このような予想が外れる可能性がある。このような状況において、電力取引がキャンセルされた車両5のユーザに対してペナルティが課されると、ユーザにとって不利益となる。また、電力取引が行われないことは、電力供給側のユニットにとっても不利益である。
【0062】
そこで、実施の形態に係る電力取引システム1は、電力取引を極力途切れさせることなく、電力取引を最適に行うように構成されている。
【0063】
具体的には、電力取引システム1において、サーバ装置3は、複数のエージェント装置2から、同じ電力取引時間帯で同じ充放電器による電力取引の入札を受け付けると、電力取引の入札を約定させる際の優先順位を決める。たとえば、
図5に示すように、サーバ装置3のメモリ32は、優先順位情報323を記憶する。
【0064】
図8は、サーバ装置3が記憶する優先順位情報323の一例を説明するための図である。たとえば、サーバ装置3は、
図8に示すようにテーブル形式で優先順位情報323を記憶する。
図8に示すように、優先順位情報テーブルは、電力取引の予定時間を特定するための情報と、電力取引が行われる充放電器を特定するための情報と、需要側のユニットを特定するための情報と、その他の情報とを含む。
【0065】
優先順位情報323においては、需要側のユニットとして、複数の車両に対して優先順位(1位、2位、3位など)が定められている。たとえば、サーバ装置3は、予定時間Aにおいて商業施設Aの充放電器を用いて行われる電力取引について、優先順位1位として車両Aを特定するための情報を記憶し、優先順位2位として車両Bおよび車両Cを特定するための情報を記憶し、優先順位3位として車両Dを特定するための情報を記憶する。なお、車両Bと車両Cとの間では、電力取引の権利が共有されており、サーバ装置3は、車両Bと車両Cとが権利を共有している旨の情報を記憶する。
【0066】
サーバ装置3は、予定時間Bにおいて工場Aの充放電器を用いて行われる電力取引について、優先順位1位として車両Eを特定するための情報を記憶し、優先順位2位として車両Fを特定するための情報を記憶し、優先順位3位として車両Gおよび車両Hを特定するための情報を記憶し、優先順位4位として車両Iを特定するための情報を記憶する。なお、車両Gと車両Hとの間では、電力取引の権利が共有されており、サーバ装置3は、車両Gと車両Hとが権利を共有している旨の情報を記憶する。
【0067】
サーバ装置3は、電力取引の予定時間が到来したときに、優先順位情報323によって特定される優先順位に従って、優先順位の高い順(すなわち、1位、2位、3位の順)に電力取引の入札を約定させる。これにより、サーバ装置3は、複数のユニット間で電力取引を極力途切れさせることなく、電力取引を最適に行うことができる。
【0068】
[電力取引システムによる電力取引の一例]
図9は、電力取引システム1による電力取引の一例を説明するための図である。
図9では、
図8の優先順位テーブルに格納された商業施設Aの充放電器を用いて行われる電力取引についての例が示されている。
【0069】
図9に示すように、電力取引の予定時間(予定時間A)において、サーバ装置3は、優先順位1位の車両Aが商業施設Aの充放電器で充放電可能か否かを判定する。なお、充放電が不可能な場合の例としては、エージェント装置2によるユーザの行動予想(たとえば、走行ルートの予想など)が外れたこと、ユーザによる充放電器に対する車両の接続ミスなどが想定される。サーバ装置3は、車両Aが商業施設Aの充放電器で充放電可能である場合、商業施設Aの充放電器に対する車両Aの電力授受を行うための約定処理を実行する。これにより、車両Aが商業施設Aの充放電器からの電力を受けてバッテリを充電することができる。
【0070】
予定時間(予定時間A)において、車両Aが商業施設Aの充放電器で充放電不可能である場合、サーバ装置3は、優先順位を繰り上げて、優先順位2位の車両Bが商業施設Aの充放電器で充放電可能か否かを判定する。サーバ装置3は、車両Bが商業施設Aの充放電器で充放電可能である場合、商業施設Aの充放電器に対する車両Bの電力授受を行うための約定処理を実行する。これにより、車両Bが商業施設Aの充放電器からの電力を受けてバッテリを充電することができる。
【0071】
予定時間(予定時間A)において、車両Bが商業施設Aの充放電器で充放電不可能である場合、サーバ装置3は、車両Bと権利を共有する車両Cが商業施設Aの充放電器で充放電可能か否かを判定する。サーバ装置3は、車両Cが商業施設Aの充放電器で充放電可能である場合、商業施設Aの充放電器に対する車両Cの電力授受を行うための約定処理を実行する。これにより、車両Cが商業施設Aの充放電器からの電力を受けてバッテリを充電することができる。
【0072】
なお、車両Bと車両Cとの間では、権利を共有するための車両認証が行われていてもよい。たとえば、車両Bのユーザ(管理者)と車両Cのユーザ(管理者)とが同じである場合、ユーザ(管理者)は、車両Bと車両Cとの間で予め車両認証しておけば、車両Bが電力取引できない場合に、車両Bの代わりに車両Cを用いて円滑に電力取引を行うことができる。
【0073】
車両認証においては、たとえば、車両Bと車両Cとの間で同じ識別情報(たとえば、ワンタイムトークン)を共有するなど、車両認証においては各種の認証技術を用いることができる。サーバ装置3は、車両Bが商業施設Aの充放電器で充放電不可能な場合、車両Bとの間で車両認証を行っている車両Cについて、商業施設Aの充放電器との間で電力取引を行えばよい。さらに、車両Bおよび車両Cの各々と、充放電器との間で識別情報(たとえば、ワンタイムトークン)を用いて認証してもよい。この場合、サーバ装置3は、車両Bが商業施設Aの充放電器で充放電不可能な場合、商業施設Aの充放電器との間で車両認証を行っている車両Cについて、商業施設Aの充放電器との間で電力取引を行えばよい。
【0074】
予定時間(予定時間A)において、車両Cが商業施設Aの充放電器で充放電不可能である場合、サーバ装置3は、優先順位を繰り上げて、優先順位3位の車両Dが商業施設Aの充放電器で充放電可能か否かを判定する。サーバ装置3は、車両Dが商業施設Aの充放電器で充放電可能である場合、商業施設Aの充放電器に対する車両Dの電力授受を行うための約定処理を実行する。これにより、車両Bが商業施設Aの充放電器からの電力を受けてバッテリを充電することができる。
【0075】
予定時間(予定時間A)において、車両Dが商業施設Aの充放電器で充放電不可能である場合、サーバ装置3は、電力取引の入札を行っている車両が存在しないため、優先順位1位の車両Aのユーザに対してペナルティを課すためのペナルティ処理を実行する。
【0076】
なお、上述した
図9の例において、商業施設Aまたは商業施設Aの充放電器(すなわち、電力供給側のユニット)は、「第1ユニット」の一例である。車両A(すなわち、優先順位が1位のユニット)は、「第2ユニット」の一例である。車両B、車両C、および車両Dの各々(すなわち、優先順位が2位以下のユニット)は、「第3ユニット」の一例である。
【0077】
[サーバ装置の入札時における処理]
図10は、サーバ装置3の入札時における処理手順を示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、たとえば、予め定められた条件成立時にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて定期的に実行される。各ステップは、サーバ装置3のプロセッサ31が演算プログラム321を実行することで実現される。以下、ステップをSと略す。
【0078】
図10に示すように、サーバ装置3は、入札情報を取得することで、エージェント装置2からの電力取引に関する入札を受け付けたか否かを判定する(S1)。入札情報は、たとえば、電力取引の予定時間、電力取引の場所(充放電器の場所など)、取引価格、および取引される電力量などの情報を含む。
【0079】
サーバ装置3は、入札情報を取得していない場合(S1でNO)、処理をメインルーチンに戻す。一方、サーバ装置3は、入札情報を取得することで、エージェント装置2からの電力取引に関する入札を受け付けた場合(S1でYES)、エージェント装置2によって指定された予定時間および充放電器において電力取引を予定するための処理を実行する(S2)。たとえば、サーバ装置3は、メモリ32に記憶された
図7のエージェント情報322に含まれる入札情報として、予定時間において電力取引を実行するためのフラグ情報を記憶するとともに、電力取引が予定される充放電器の位置情報を記憶する。
【0080】
次に、サーバ装置3は、電力取引の予定時間が到来する前に、優先順位を決定する(S3)。たとえば、サーバ装置3は、メモリ32に記憶された
図8の優先順位情報323として、同じ電力取引時間帯で同じ充放電器による電力取引の入札を行った複数のエージェント装置2のそれぞれに対応する複数の車両について、予め決められたルールに従って優先順位を決定する。
【0081】
たとえば、サーバ装置3は、予め決められたルールとして、電力授受の取引価格、電力取引における入札順、電力取引における電力量、電力取引における過去の評価結果、および電力取引が行われる充放電器の場所からの距離、および電力取引に係る権利の供給のうち、少なくとも1つに基づき優先順位を決定する。
【0082】
具体的には、サーバ装置3は、入札を行った複数の車両のうち、電力授受の取引価格が高い順から優先順位を高くしてもよい。サーバ装置3は、入札を行った複数の車両のうち、入札タイミングが早い順から優先順位を高くしてもよい。サーバ装置3は、入札を行った複数の車両のうち、電力取引における電力量が多い順から優先順位を高くしてもよい。サーバ装置3は、入札を行った複数の車両のうち、電力取引における過去の評価結果が高い順から優先順位を高くしてもよい。なお、サーバ装置3は、メモリ32に記憶された
図7のエージェント情報322に含まれる評価情報に基づき、評価結果を特定すればよい。サーバ装置3は、入札を行った複数の車両のうち、電力取引が行われる充放電器の場所からの車両の距離が近い順から優先順位を高くしてもよい。また、サーバ装置3は、上述したような複数種類のルールのうち、一のルールのみを用いて優先順位を決定してもよいし、複数のルールを組み合わせて優先順位を決定してもよい。すなわち、サーバ装置3は、上述したような複数種類のルールのうち、少なくとも1つに基づき優先順位を決定し得る。
【0083】
サーバ装置3は、S3の後、処理をメインルーチンに戻して、電力取引の予定時間が到来するまで約定を保留する。
【0084】
[サーバ装置の電力取引時における処理]
図11は、サーバ装置3の電力取引時における処理手順を示すフローチャートである。
図11のフローチャートは、たとえば、予め定められた条件成立時にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて定期的に実行される。各ステップは、サーバ装置3のプロセッサ31が演算プログラム321を実行することで実現される。以下、ステップをSと略す。
【0085】
図11に示すように、サーバ装置3は、電力取引の予定時間が到来したか否かを判定する(S11)。サーバ装置3は、電力取引の予定時間が到来していない場合(S11でNO)、処理をメインルーチンに戻す。
【0086】
一方、サーバ装置3は、電力取引の予定時間が到来した場合(S11でYES)、優先順位が最上位の車両が充放電可能か否かを判定する(S12)。サーバ装置3は、優先順位が最上位の車両が充放電可能である場合(S12でYES)、優先順位が最上位の車両が電力取引を行うための約定処理を実行する(S13)。たとえば、サーバ装置3は、約定処理を実行することで、電力供給側のユニットおよび優先順位が最上位の車両の各々に対して電力授受を行うための制御信号を送信する。その後、サーバ装置3は、処理をメインルーチンに戻す。
【0087】
一方、サーバ装置3は、優先順位が最上位の車両が充放電不可能である場合(S12でNO)、優先順位が最上位の車両と権利を共有する車両が存在するか否かを判定する(S14)。サーバ装置3は、優先順位が最上位の車両と権利を共有する車両が存在する場合(S14でYES)、権利を共有する車両が充放電可能か否かを判定する(S15)。サーバ装置3は、権利を共有する車両が充放電可能である場合(S15でYES)、権利を共有する車両が電力取引を行うための約定処理を実行する(S13)。たとえば、サーバ装置3は、約定処理を実行することで、電力供給側のユニットおよび権利を共有する車両の各々に対して電力授受を行うための制御信号を送信する。その後、サーバ装置3は、処理をメインルーチンに戻す。
【0088】
一方、サーバ装置3は、優先順位が最上位の車両と権利を共有する車両が存在しない場合(S14でNO)、優先順位を繰り上げる(S16)。その後、サーバ装置3は、優先順位が割り当てられた車両が存在するか否かを判定する(S17)。サーバ装置3は、優先順位が割り当てられた車両が存在する場合(S17でYES)、S12に戻って再び優先順位が最上位の車両が充放電可能か否かを判定する。
【0089】
一方、サーバ装置3は、優先順位が割り当てられた車両が存在しない場合(S17でNO)、優先順位が1位の車両に対してペナルティ処理を実行する(S18)。たとえば、サーバ装置3は、優先順位が1位の車両のユーザに対してキャンセルされた電力取引分の料金を請求したり、電力取引のキャンセル料金を請求したりするための処理を実行する。その後、サーバ装置3は、処理をメインルーチンに戻す。
【0090】
以上のように、本実施の形態に係る電力取引システム1によれば、電力供給側のユニットに対する優先順位が1位のユニット(この例では車両)の電力取引に関する入札が受け付けられた後、電力授受の予定時間において優先順位が1位のユニットによって電力供給側のユニットに対する電力授受が行われない場合でも、優先順位が2位以下のユニットによって電力供給側のユニットに対する電力授受が行われる。これにより、複数のユニット間で電力取引を極力途切れさせることなく、電力取引が最適に行われる。
【0091】
電力授受の予定時間において電力供給側のユニットに対する電力授受が行われない場合に、優先順位が1位のユニットのユーザに対してペナルティが課されるが、優先順位が1位のユニットの代わりに優先順位が2位以下のユニットによって電力供給側のユニットに対する電力授受が行われることで、優先順位が1位のユニットのユーザに対してペナルティが課されることを回避することができる。
【0092】
電力授受の予定時間において優先順位が1位のユニットによって電力供給側のユニットに対する電力授受が行われない場合に、予め決められたルールに基づく優先順位に従って電力取引を行うユニットが決定されるため、優先順位に従って電力取引が最適に行われる。
【0093】
電力授受の予定時間が到来する前に優先順位が2位以下のユニットを決定するための優先順位が決定されるため、予め決められた優先順位に従って電力取引が最適に行われる。
【0094】
電力授受の取引価格、電力授受の取引における入札順、電力授受の取引における電力量、電力授受の取引における過去の評価結果、および電力授受が行われる場所からの距離のうち、少なくとも1つに基づき決められた優先順位に従って電力授受の取引が最適に行われる。
【0095】
電力授受の予定時間において優先順位が1位のユニットによって電力供給側のユニットに対する電力授受が行われない場合でも、優先順位が1位のユニットと権利を共有するユニットによって電力供給側のユニットに対する電力授受が行われるため、電力授受の取引が最適に行われる。
【0096】
[変形例]
本開示は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本開示に適用可能な変形例について説明する。
【0097】
上述した実施の形態においては、エージェント装置2が、ユニット(たとえば、車両)のユーザの意思に関わらず、サーバ装置3に対して電力取引の入札を行うものであった。しかしながら、ユーザ自らがサーバ装置3に対して電力取引の入札を行ってもよい。たとえば、エージェント装置2は、ユーザが入札のための操作を可能な情報端末装置であってもよい。情報端末装置は、たとえば、PC(Personal Computer)、車両に搭載されたナビゲーションシステム、およびスマートフォンなどの携帯端末であってもよい。
【0098】
また、サーバ装置3が電力取引市場に参加しているユニットについて、電力取引の入札および約定を行ってもよい。
【0099】
上述した実施の形態においては、サーバ装置3は、優先順位に従って決定したユニットに対して電力授受を許可していたが、優先順位が1位のユニットのユーザによって選択されたユニットに対して電力授受を許可してもよい。たとえば、
図9の例においては、電力授受の予定時間が到来する前に、優先順位が1位の車両Aのユーザが、優先順位が2位以下の車両を選択できるように電力取引システム1が構成されてもよい。
【0100】
すなわち、サーバ装置3のプロセッサ31は、予定時間が到来する前に、優先順位が1位のユニットのユーザによって選択されたユニットを優先順位が2位以下のユニットとして決定してもよい。このようにすれば、電力授受の予定時間において優先順位が1位のユニットによって電力供給側のユニットに対する電力授受が行われない場合でも、優先順位が1位のユニットのユーザによって選択された優先順位が2位以下のユニットによって電力供給側のユニットに対する電力授受が行われるため、電力取引が最適に行われる。
【0101】
上述した実施の形態においては、電力授受の予定時間において優先順位が1位のユニットが電力供給側のユニットに対する電力授受を行わない場合の例として、エージェント装置2によるユーザの行動予想(たとえば、走行ルートの予想など)が外れたことなどを例示した。しかしながら、サーバ装置3のプロセッサ31は、電力授受の予定時間において優先順位が1位のユニットのユーザが電力供給側のユニットに対する電力授受をキャンセルした場合において、約定処理を実行してもよい。このようにすれば、電力授受の予定時間において優先順位が1位のユニットのユーザによって電力供給側のユニットに対する電力授受がキャンセルされた場合でも、優先順位が2位以下のユニットによって電力供給側のユニットに対する電力授受が行われるため、電力取引が最適に行われる。
【0102】
上述した実施の形態においては、「第1ユニット」として電力供給側のユニットを例示し、「第2ユニット」として電力を受け取る側の優先順位1位のユニットを例示し、「第3ユニット」として電力を受け取る側の優先順位2位以下のユニットを例示した。しかしながら、「第1ユニット」は電力を受け取る側のユニットであり、「第2ユニット」は電力供給側の優先順位1位のユニットであり、「第3ユニット」は電力供給側の優先順位2位以下のユニットであってもよい。すなわち、電力の買い取りを希望するエージェント装置2に対して、電力の売却を希望する複数のエージェント装置2の各々からサーバ装置3に対して入札を行うような例に対して、電力取引システム1を適用してもよい。この場合、電力を受け取る側のユニットに対する優先順位が1位の電力供給側のユニットの電力取引に関する入札が受け付けられた後、電力授受の予定時間において優先順位が1位の電力供給側のユニットによって電力を受け取る側のユニットに対する電力授受が行われない場合でも、優先順位が2位以下の電力供給側のユニットによって電力を受け取る側のユニットに対する電力授受が行われる。これにより、複数のユニット間で電力取引を極力途切れさせることなく、電力取引が最適に行われる。
【0103】
上述した実施の形態においては、「第1ユニット」、「第2ユニット」、および「第3ユニット」として、車両を例示した。しかしながら、「第1ユニット」、「第2ユニット」、および「第3ユニット」の各々は、車両に限らず、
図1に示すような、工場、会社、商業施設、住宅、および店舗などの各種の建物、またはこれらに接続された充放電器であってもよい。
【0104】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1 電力取引システム、2 エージェント装置、2A,2B,2C,2D 移動体エージェント、2E,2F,2G,2H 事業者エージェント、2I,2J 住宅エージェント、3 サーバ装置、5,5A,5B,5C,5D,5E 車両、6A,6B,6C,6D,6E,6F,6G,6H 充放電器、7A 工場、7B 会社、7C 商業施設、7D 住宅、7E 店舗、9 電力会社、10 ネットワーク、21,31 プロセッサ、22,32 メモリ、23,33 通信装置、221,321 演算プログラム、222 ユニット情報、223 外部情報、322 エージェント情報、323 優先順位情報、PL 送電線網。