(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】運転診断装置、運転診断方法、及び運転診断プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2021148770
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 周平
(72)【発明者】
【氏名】秋間 聡
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-058994(JP,A)
【文献】特開2019-046319(JP,A)
【文献】特開2020-021409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転情報を収集する車載器を搭載していない車両に
設けられたセンサから取得した前記車両の運転に関する第1のデータを取得する取得部と、
前記
第1のデータが取得された前記車両とは異なる車両に搭載された
前記車載器に接続されたセンサから取得された
運転情報である第2のデータを入力して運転に関する診断を行う診断モデルを、前記第1のデータを用いた診断が可能となるように調整した調整部と、
調整された前記診断モデルに対して前記第1のデータを入力して前記
第1のデータが取得された前記車両の運転に関する診断を行う診断部と、を備え
、
前記第1のデータ、及び前記第2のデータは、運転項目毎にデータが存在し、
前記調整部は、診断に用いるデータの項目数を減らして前記診断モデルを調整する、
運転診断装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記診断に用いる閾値を変更して前記診断モデルを調整する
請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項3】
前記診断モデルは、前記第2のデータを用いて、前記診断するための機械学習を行った学習済みモデルであり、
前記調整部は、前記第2のデータに前記第1のデータを加えて機械学習を行うことによって前記診断モデルを調整する請求項1又は請求項2に記載の運転診断装置。
【請求項4】
運転情報を収集する車載器を搭載していない車両に
設けられたセンサから取得した前記車両の運転に関する第1のデータを取得し、
前記
第1のデータが取得された前記車両とは異なる車両に搭載された
前記車載器に接続されたセンサから取得された
運転情報である第2のデータを入力して運転に関する診断を行う診断モデルを、前記第1のデータを用いた診断が可能となるように調整し、
調整された前記診断モデルに対して前記第1のデータを入力して前記
第1のデータが取得された前記車両の運転に関する診断を
行い、
前記第1のデータ、及び前記第2のデータは、運転項目毎にデータが存在し、
診断に用いるデータの項目数を減らして前記診断モデルを調整する、
処理をコンピュータが実行する運転診断方法。
【請求項5】
運転情報を収集する車載器を搭載していない車両に
設けられたセンサから取得した前記車両の運転に関する第1のデータを取得し、
前記
第1のデータが取得された前記車両とは異なる車両に搭載された
前記車載器に接続されたセンサから取得された
運転情報である第2のデータを入力して運転に関する診断を行う診断モデルを、前記第1のデータを用いた診断が可能となるように調整し、
調整された前記診断モデルに対して前記第1のデータを入力して前記
第1のデータが取得された前記車両の運転に関する診断を
行い、
前記第1のデータ、及び前記第2のデータは、運転項目毎にデータが存在し、
診断に用いるデータの項目数を減らして前記診断モデルを調整する、
処理をコンピュータに実行させる運転診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転に関する診断を行う運転診断装置、運転診断方法、及び運転診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載器から車両の操作情報を取得し、当該操作情報を用いて、運転スキルに関する診断を行う運転診断管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
診断を行う車両が運転診断システムの設計に関与していない他社の車両である場合、車載器から操作情報を取得することは容易ではない。また、セキュリティの観点からも望ましくない。そのため、多くの種類の車両を管理する場合、当該車両に搭載されている車載器に対応した運転診断システムを用意する必要があり、管理コストが増大する。
【0005】
本発明は、多くの種類の車両を管理する場合において、当該車両に搭載されている車載器に対応した運転診断システムの管理コストを低減することができる運転診断装置、運転診断方法、及び運転診断プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の運転診断装置は、運転情報を収集する車載器を搭載していない車両に設けられたセンサから取得した前記車両の運転に関する第1のデータを取得する取得部と、前記第1のデータが取得された前記車両とは異なる車両に搭載された前記車載器に接続されたセンサから取得された運転情報である第2のデータを入力して運転に関する診断を行う診断モデルを、前記第1のデータを用いた診断が可能となるように調整した調整部と、調整された前記診断モデルに対して前記第1のデータを入力して前記第1のデータが取得された前記車両の運転に関する診断を行う診断部と、を備え、前記第1のデータ、及び前記第2のデータは、運転項目毎にデータが存在し、前記調整部は、診断に用いるデータの項目数を減らして前記診断モデルを調整する。
【0007】
請求項1に記載の運転診断装置は、車載器に接続されていないセンサから取得した第1のデータを用いて、運転の診断を行う。運転診断装置は、運転の診断を行う際に、車載器に搭載された第2のデータを用いて診断を行う診断モデルを、第1のデータを用いて診断が行えるように調整を行い、運転の診断を行う。つまり、当該運転診断装置によれば、車載器に接続された第2のデータを活用して、後付けで車両に設置されたセンサ等の第1のデータに対する運転の診断を行うことにより、車両に搭載されている車載器に対応した運転診断システムの管理コストを低減することができる。請求項1に記載の運転診断装置によれば、診断に用いる項目数を減らすことにより、管理コストを抑えることができる。
【0010】
請求項2に記載の運転診断装置は、請求項1に記載の運転診断装置において、前記調整部は、前記診断に用いる閾値を変更して前記診断モデルを調整する。
【0011】
請求項2に記載の運転診断装置によれば、第1のデータと、第2のデータと、のデータの精度を考慮して運転を診断することができる。
【0012】
請求項3に記載の運転診断装置は、請求項1又は2に記載の運転診断装置において、前記診断モデルは、前記第2のデータを用いて、前記診断するための機械学習を行った学習済みモデルであり、前記調整部は、前記第2のデータに前記第1のデータを加えて機械学習を行うことによって前記診断モデルを調整する。
【0013】
請求項3に記載の運転診断装置によれば、第2のデータに加え、過去に取得した第1のデータを活用して、第1のデータにおける運転を診断することができる。
【0014】
請求項4に記載の運転診断方法は、運転情報を収集する車載器を搭載していない車両に設けられたセンサから取得した前記車両の運転に関する第1のデータを取得し、前記第1のデータが取得された前記車両とは異なる車両に搭載された前記車載器に接続されたセンサから取得された運転情報である第2のデータを入力して運転に関する診断を行う診断モデルを、前記第1のデータを用いた診断が可能となるように調整し、調整された前記診断モデルに対して前記第1のデータを入力して前記第1のデータが取得された前記車両の運転に関する診断を行い、前記第1のデータ、及び前記第2のデータは、運転項目毎にデータが存在し、診断に用いるデータの項目数を減らして前記診断モデルを調整する、処理をコンピュータが実行する。
【0015】
請求項4に記載の運転診断方法が実行されるコンピュータは、車載器に接続されていないセンサから取得した第1のデータを用いて、運転の診断を行う。当該運転診断方法は、運転の診断を行う際に、車載器に搭載された第2のデータを用いて診断を行う診断モデルを、第1のデータを用いて診断が行えるように調整を行い、運転の診断を行う。つまり、当該運転診断方法によれば、車載器に接続された第2のデータを活用して、後付けで車両に設置されたセンサ等の第1のデータに対する運転の診断を行うことにより、車両に搭載されている車載器に対応した運転診断システムの管理コストを低減することができる。請求項4に記載の運転診断方法によれば、診断に用いる項目数を減らすことにより、管理コストを抑えることができる。
【0016】
請求項5に記載の運転診断プログラムは、運転情報を収集する車載器を搭載していない車両に設けられたセンサから取得した前記車両の運転に関する第1のデータを取得し、前記第1のデータが取得された前記車両とは異なる車両に搭載された前記車載器に接続されたセンサから取得された運転情報である第2のデータを入力して運転に関する診断を行う診断モデルを、前記第1のデータを用いた診断が可能となるように調整し、調整された前記診断モデルに対して前記第1のデータを入力して前記第1のデータが取得された前記車両の運転に関する診断を行い、前記第1のデータ、及び前記第2のデータは、運転項目毎にデータが存在し、診断に用いるデータの項目数を減らして前記診断モデルを調整する、処理をコンピュータに実行させる。
【0017】
請求項5に記載の運転診断プログラムが実行されるコンピュータは、車載器に接続されていないセンサから取得した第1のデータを用いて、運転の診断を行う。当該コンピュータは、運転の診断を行う際に、車載器に搭載された第2のデータを用いて診断を行う診断モデルを、第1のデータを用いて診断が行えるように調整を行い、運転の診断を行う。つまり、当該コンピュータによれば、車載器に接続された第2のデータを活用して、後付けで車両に設置されたセンサ等の第1のデータに対する運転の診断を行うことにより、車両に搭載されている車載器に対応した運転診断システムの管理コストを低減することができる。請求項5に記載の運転診断プログラムによれば、診断に用いる項目数を減らすことにより、管理コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多くの種類の車両を管理する場合において、当該車両に搭載されている車載器に対応した運転診断システムの管理コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る運転診断システムの概略構成を示す図である。
【
図2】実施形態の車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の車載器の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態の計測機器のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態の計測機器の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態のセンタサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図7】実施形態のセンタサーバの機能構成を示すブロック図である。
【
図8】実施形態のセンタサーバにおいて実行される運転診断処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】変形例のセンタサーバにおいて実行される機械学習処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の運転診断装置を含む運転診断システムについて説明する。運転診断システムは、車両の車載器に接続されたセンサから取得した運転技量に係るデータを活用して、車載器に接続されていないセンサから取得した運転技量に係るデータを用いて運転技量の診断を行うシステムである。
【0021】
(全体構成)
図1に示されるように、本発明の実施形態の運転診断システム10は、複数の車両12と、運転診断装置としてのセンタサーバ40と、を含んで構成されている。また、車両12には車載器20が搭載されている車両12Aと、計測装置30が搭載されている車両12Bと、がある。車載器20、及び計測装置30は、ネットワークNを通じて相互にセンタサーバ40に接続されている。
【0022】
なお、
図1には、1のセンタサーバ40に対して、車載器20、又は計測装置30を含む2台の車両12が図示されているが、車両12、車載器20、及び計測装置30の数はこの限りではない。
【0023】
計測装置30は、車両12の測位情報、及び加速度等を計測して、センタサーバ40に送信する装置である。センタサーバ40は、例えば、車両12を製造する製造元や当該製造元系列のカーディーラーに設置されている。
【0024】
(車両)
図2に示されるように、本実施形態に係る車両12Aは、車載器20と、複数のECU(Electronic Control Unit)22と、複数の車載機器24と、を含んで構成されている。
【0025】
車載器20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、車内通信I/F(Interface)20D、及び無線通信I/F20Eを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、車内通信I/F20D、及び無線通信I/F20Eは、内部バス20Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0026】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0027】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM20Bには、ECU22から車両12Aの状態及び制御に係る運転情報の収集を行う収集プログラム100が記憶されている。収集プログラム100の実行に伴い、車載器20は、運転情報をセンタサーバ40に送信する処理を実行する。また、ROM20Bには、運転情報のバックアップデータである履歴情報110が記憶されている。
RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0028】
車内通信I/F20Dは、各ECU22と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。車内通信I/F20Dは、外部バス20Fに対して接続されている。
【0029】
無線通信I/F20Eは、センタサーバ40と通信するための無線通信モジュールである。当該無線通信モジュールは、例えば、5G、LTE、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。無線通信I/F20Eは、ネットワークNに対して接続されている。
【0030】
ECU22は、ADAS(Advanced Driver Assistance System)-ECU22A、ステアリングECU22B、ブレーキECU22C及びエンジンECU22Dを少なくとも含む。
【0031】
ADAS-ECU22Aは、先進運転支援システムを統括制御する。ADAS-ECU22Aには、車載機器24を構成する車速センサ24A、ヨーレートセンサ24B、及び外部センサ24Cが接続されている。外部センサ24Cは、車両12Aの周辺環境の検出に用いられるセンサ群とされている。この外部センサ24Cには、例えば、車両12Aの周囲を撮像するカメラ、探査波を送信し反射波を受信するミリ波レーダ、及び車両12Aの前方をスキャンするライダ(Laser Imaging Detection and Ranging)等が含まれる。
【0032】
ステアリングECU22Bは、パワーステアリングを制御する。ステアリングECU22Bには、車載機器24を構成する舵角センサ24Dが接続されている。舵角センサ24Dはステアリングホイールの舵角を検出するセンサである。
【0033】
ブレーキECU22Cは、車両12Aのブレーキシステムを制御する。ブレーキECU22Cには、車載機器24を構成するブレーキアクチュエータ24Eが接続されている。
【0034】
エンジンECU22Dは、車両12Aのエンジンを制御する。エンジンECU22Dには、車載機器24を構成するスロットルアクチュエータ24F及びセンサ類24Gが接続されている。センサ類24Gは、エンジンオイルの油温を測定するための油温センサ、エンジンオイルの油圧を測定するための油圧センサ、及びエンジンの回転数を検知する回転センサを含む。
【0035】
なお、本実施形態に係る車速センサ24A、ヨーレートセンサ24B、外部センサ24C、舵角センサ24D、ブレーキアクチュエータ24E、スロットルアクチュエータ24F、及びセンサ類24Gは、「車載器に接続されたセンサ」の一例である。
【0036】
図3に示されるように、本実施形態の車載器20では、CPU20Aが、収集プログラム100を実行することで、収集部200、及び出力部210として機能する。
【0037】
収集部200は、車両12Aの各ECU22から車載機器24の状態、及び車載機器24から得られる車両12Aの運転に係る運転情報を取得する機能を有している。運転情報は、車速、加速度、ヨーレート、舵角、アクセル開度、ブレーキペダル踏力又はストローク等の情報を含む。また、運転情報は、外部センサ24Cとしてのカメラにより撮像された車両12A外部の撮像画像を含んでいてもよい。
【0038】
出力部210は、収集部200が収集した運転情報をセンタサーバ40に向けて出力する機能を有している。
【0039】
(計測装置)
図4に示されるように、計測装置30は、CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D、通信I/F30E、センサ30F、及びGPS(Global Positioning System)装置30Gを含んで構成されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D、通信I/F30E、センサ30F、及びGPS装置30Gは、内部バス30Hを介して相互に通信可能に接続されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C及び通信I/F30Eの機能は、上述した車載器20のCPU20A、ROM20B、RAM20C及び無線通信I/F20Eと同じである。
【0040】
メモリとしてのストレージ30Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム、及びセンサ30F及びGPS装置30Gから取得した計測結果に関する情報(以下、「計測情報」という。)を記憶している。本実施形態のストレージ30Dには、収集プログラム120が記憶されている。なお、ROM30Bが収集プログラム120を記憶してもよい。ここで、計測情報は、「第1のデータ」の一例あり、運転情報は、「第2のデータ」の一例である。
【0041】
センサ30Fは、車両に搭載されている計測装置30に掛かる加速度を検出する加速度センサ、及びヨー方向の角速度を検出する角速度センサである。
【0042】
GPS装置30Gは、複数のGPS衛星から車両12Bに搭載されている計測装置30の位置を測位した測位情報を受信し、位置を検出する装置である。GPS装置30Gは、GPS衛星からの測位情報を受信する図示しないアンテナを含んでいる。
【0043】
プログラムとしての収集プログラム120は、計測情報として、測位情報、加速度、及び角速度を取得し、センタサーバ40に送信する処理を行う。
【0044】
なお、本実施形態に係るセンサ30F、及びGPS装置30Gは、「車載器に接続されていないセンサ」の一例である。
【0045】
図5に示されるように、本実施形態の計測装置30では、CPU30Aが、収集プログラム120を実行することで、収集部300、及び出力部310として機能する。
【0046】
収集部300は、計測情報として、GPS装置30Gから車両12Bに搭載されている計測装置30の測位情報、及びセンサ30Fから車両12Bの加速度及び角速度を収集する。
【0047】
出力部310は、収集部300が収集した運転情報をセンタサーバ40に向けて出力する機能を有している。
【0048】
(センタサーバ)
図6に示されるように、センタサーバ40は、CPU40A、ROM40B、RAM40C、ストレージ40D及び通信I/F40Eを含んで構成されている。CPU40A、ROM40B、RAM40C、ストレージ40D及び通信I/F40Eは、内部バス40Fを介して相互に通信可能に接続されている。CPU40A、ROM40B、RAM40C及び通信I/F40Eの機能は、上述した車載器20のCPU20A、ROM20B、RAM20C及び無線通信I/F20Eと同じである。なお、通信I/F40Eは有線による通信を行ってもよい。
【0049】
メモリとしてのストレージ40Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のストレージ40Dには、運転診断プログラム130、運転情報データベース(DB)140、及び診断モデル150が記憶されている。なお、ROM40Bが運転診断プログラム130、運転情報DB140、及び診断モデル150を記憶してもよい。
【0050】
プログラムとしての運転診断プログラム130は、センタサーバ40を制御するためのプログラムである。運転診断プログラム130の実行に伴い、センタサーバ40は、車両12の運転者の運転技量を診断する運転診断処理を含む、各処理を実行する。
【0051】
運転情報DB140には、車載器20から受信した運転情報、及び計測装置30から受信した計測情報が記憶されている。
【0052】
診断モデルは、車載器20から受信した運転情報を用いて、運転に関する運転技量を診断するための閾値等の判定条件が設定されたモデルである。ここで、診断モデルに設定されている判定条件は、車載器20から受信した運転情報に対応する閾値等が設定されている。当該閾値は、過去に収集された運転情報を解析することによって、運転情報に係る各々のデータから運転項目毎に運転技量を判定するための判定条件である。
【0053】
すなわち、診断モデルに、各種データを含む運転情報を入力することによって、運転情報に対応した運転技量を示す診断結果が出力される。
【0054】
図7に示されるように、本実施形態のセンタサーバ40では、CPU40Aが、運転診断プログラム130を実行することで、取得部400、記憶部410、調整部420、診断部430、及び出力部440として機能する。
【0055】
取得部400は、車両12Aの車載器20及び車両12Bの計測装置30から、運転情報及び計測情報を取得する機能を有している。取得部400は、車載器20及び計測装置30から任意のタイミングで送信された運転情報及び計測情報を取得する。
【0056】
記憶部410は、車載器20から取得した運転情報と、計測装置30から取得した計測情報と、を運転情報DB140に記憶する。
【0057】
調整部420は、計測装置30から取得した計測情報に対する運転の診断を行う場合において、計測装置30から取得した計測情報に対応するように診断モデルの調整を行う。
【0058】
具体的には、調整部420は、診断モデル150に入力する運転情報に係るデータの数を限定する調整を行う。例えば、車載器20に係る運転情報は、車速、加速度、ヨーレート、舵角、アクセル開度、ブレーキペダル踏力又はストローク等を含んでおり、計測装置30に係る計測情報は、車両12の測位情報、加速度、及び角速度等を含んでいる。そのため、各々の運転情報におけるデータの数、及び種類が異なっている。
【0059】
例えば、診断モデルは、車載器20に係る運転情報に対して、車速、加速度、及びアクセル開度を用いて、急発進の診断を行っている。そこで、調整部420は、計測装置30に係る計測情報に対して、測位情報、及び加速度を用いて、急発進の診断を行うように調整する。また、診断モデルは、車載器20に係る運転情報に対して、ヨーレート、舵角、アクセル開度、及びブレーキペダル踏力を用いて、運転の粗さの診断を行っている。そこで、調整部420は、計測装置30に係る計測情報に対して、加速度、及び角速度を用いて、運転の粗さの診断を行うように調整する。
【0060】
すなわち、運転情報及び計測情報は、診断する運転項目毎に予め定められたデータを含んでおり、調整部420は、運転項目に用いるデータの数、及び種類を切り替え、診断モデルによって運転項目における診断を行うように調整する。
【0061】
なお、本実施形態に係る調整部420は、診断モデルに入力するデータの数を限定する調整を行う形態について説明した。しかし、これに限定されない。調整部420は、診断モデルに係る判定条件を調整してもよい。
【0062】
例えば、計測装置30に係る運転情報を用いて急発進の診断を行う場合、車載器20に係る運転情報とはデータの数、及び種類が異なるため、車載器20に係る運転情報と比較して、運転の診断の精度が劣る場合がある。
【0063】
そこで、調整部420は、計測装置30に係る計測情報に対する診断を行うために、車載器20に係る運転情報に対応する閾値を加減算することによって変更して、診断モデルに係る判定条件の調整を行ってもよい。例えば、運転情報から急発進のスコアを算出して、診断モデルを用いて急発進の度合の診断を行っている場合、調整部420は、診断モデルにおける急発進の度合を決定するための閾値を変更して診断を行うように調整する。
【0064】
診断部430は、診断モデルを用いて、運転情報に係るデータに応じた運転項目の診断を行う。ここで、診断部430は、計測装置30に係る計測情報を用いて運転項目の診断を行う場合、調整部420によって調整された診断モデルを用いて診断を行う。
【0065】
出力部440は、診断部430による診断結果を出力する。ここで、出力部440は、診断結果を車載器20、及び計測装置30等に送信して出力してもよいし、センタサーバ40が備えている図示しないモニタに診断結果を表示して出力してもよい。
【0066】
(制御の流れ)
本実施形態の運転診断システム10で実行される処理の流れについて、
図8のフローチャートを用いて説明する。センタサーバ40における処理は、センタサーバ40のCPU40Aが、取得部400、記憶部410、調整部420、診断部430、及び出力部440として機能することにより実行される。
図8に示す運転診断処理は、例えば、運転診断を実行する指示が入力された場合、実行される。
【0067】
ステップS100において、CPU40Aは、運転の診断を行うデータとして、運転情報DB140に記憶されている運転情報、又は計測情報を取得する。
【0068】
ステップS101において、CPU40Aは、ストレージ40Dから診断モデル150を取得する。
【0069】
ステップS102において、CPU40Aは、取得したデータが、計測装置30に係る計測情報であるか否かの判定を行う。計測装置30に係る計測情報である場合(ステップS102:YES)、CPU40Aは、ステップS103に移行する。一方、計測装置30に係る計測情報でない(車載器20に係る運転情報である)場合(ステップS102:NO)、CPU40Aは、ステップS104に移行する。
【0070】
ステップS103において、CPU40Aは、診断モデル150を調整する。
【0071】
ステップS104において、CPU40Aは、診断モデル150を用いて、取得したデータに対する運転の診断を行う。
【0072】
ステップS105において、CPU40Aは、診断結果を出力する。
【0073】
ステップS106において、CPU40Aは、運転診断処理を終了するか否かの判定を行う。運転診断処理を終了する場合(ステップS106:YES)、運転診断処理を終了する。一方、運転診断処理を終了しない場合(ステップS106:NO)、CPU40Aは、ステップS100に移行して、情報を取得する。
【0074】
(変形例)
上記実施形態に係る診断モデルは、閾値等の判定条件が設定されたモデルである形態について説明した。しかし、これに限定されない。診断モデルは、運転技量を判定するために、車載器20から受信した運転情報を機械学習した学習済みモデルであってもよい。
【0075】
例えば、診断モデル150が車載器20に係る運転情報を学習データとして機械学習を行ったモデルである場合、調整部420は、運転情報DB140に記憶されている過去に取得した計測装置30に係る計測情報をさらに学習させることによって調整可能である。
【0076】
診断モデル150は、車載器20に係る運転情報と、計測装置30に係る計測情報と、を学習することにより、車載器20に係る運転情報を活用した、計測装置30に係る計測情報に対する運転の診断が可能である。
【0077】
また、診断モデル150は、予め定められた箇所に、運転情報における定められたデータを設定した固定長データを学習データすることによって、車載器20に係る運転情報、及び計測装置30に係る計測情報でデータの数が異なっていても機械学習が可能である。例えば、計測装置30に係る運転情報に任意のデータが存在しない場合であっても、当該データの代わりに空データを設定して学習データとすることによって、データの数が異なっていても機械学習が実行可能である。
【0078】
すなわち、調整部420は、診断モデルに対して、車載器20に係る運転情報に加えて、計測装置30に係る計測情報をさらに学習させることによって、診断モデルの調整を行う。また、調整部420は、学習データとして、運転情報における固定長データを学習させ、データの数を減らして学習させることによって、診断モデルの調整を行う。
【0079】
変形例の運転診断システム10で実行される処理の流れについて、
図9のフローチャートを用いて説明する。センタサーバ40における処理は、センタサーバ40のCPU40Aが、取得部400、記憶部410、調整部420、診断部430、及び出力部440として機能することにより実行される。
図9に示す機械学習処理は、例えば、学習を実行する指示が入力された場合、実行される。
【0080】
ステップS200において、CPU40Aは、機械学習を行う学習データとして、運転情報DB140に記憶されている運転情報、及び計測情報を取得する。ここで、学習データとしての運転情報、及び計測情報は、ラベルとして診断結果を設定されている。例えば、学習データには、一の運転情報及び計測情報に対して、ラベルとして急発進及び運転の粗さ等の診断結果が設定されている。
【0081】
ステップS201において、CPU40Aは、取得した学習データを用いて、診断モデルに対して機械学習を実行する。ここで、CPU40Aは、運転情報、及び計測情報を入力データとし、運転情報、及び計測情報に設定されたラベルを入力データに対する正解データとした教師あり学習を実行する。
【0082】
ステップS202において、CPU40Aは、診断モデルを生成する。
【0083】
ステップS203において、CPU40Aは、機械学習処理を終了するか否かの判定を行う。機械学習処理を終了する場合(ステップS203:YES)、ステップS204に移行する。一方、機械学習処理を終了しない場合(ステップS203:NO)、CPU40Aは、ステップS200に移行して、学習データを取得する。
【0084】
ここで、機械学習を終了せずに、再度機械学習を行う場合、運転情報、及び計測情報に設定されているラベルを変更して学習させてもよいし、学習データを変更して学習させてもよい。
【0085】
ステップS204において、CPU40Aは、診断モデルを記憶する。
【0086】
以上の処理によって、運転情報、及び計測情報に応じて調整可能な運転の診断を実行する診断モデルが生成される。
【0087】
また、上記実施形態に係る診断モデルは、運転情報に係るデータに応じた運転項目の診断を行う形態について説明した。しかし、これに限定されない。計測情報に係るデータから他のデータを推定して診断してもよい。例えば、計測装置30に係る計測情報に含まれる測位情報から車両12Bの車速を推定して、当該車速を用いて運転項目の診断を行ってもよい。
【0088】
また、上記実施形態に係る計測装置30は、センサ30F、及びGPS装置30Gを搭載している形態について説明した。しかし、これに限定されない。センサ30Fのみ、又はGPS装置30Gのみを搭載していてもよい。
【0089】
また、上記実施形態に係る計測装置30は、GPS装置30Gによって車両12Bの位置を測位する形態について説明した。しかし、これに限定されない。例えば、通信I/F30Eを用いて、車両12Bの位置を測位してもよい。例えば、通信I/F30EがWi-Fi(登録商用)である場合、接続されたWi-Fi(登録商用)のアクセスポイント、及びアクセスポイントに接続した時刻を記憶することによって、車両12Bの位置及び速度が推定可能である。
【0090】
(まとめ)
本実施形態の運転診断装置としてのセンタサーバ40は、車載器に接続されていないセンサから取得した第1のデータを用いて、運転の診断を行う。運転診断装置は、運転の診断を行う際に、車載器に搭載された第2のデータを用いて診断を行う診断モデルを、第1のデータを用いて診断が行えるように調整を行い、運転の診断を行う。つまり、当該運転診断装置によれば、車載器に接続された第2のデータを活用して、例えば後付けで車両に設置されたセンサ等の第1のデータに対する運転の診断を行うことにより、車両に搭載されている車載器に対応した運転診断システムの管理コストを低減することができる。
【0091】
また、本実施形態のセンタサーバ40によれば、診断に用いる項目数を減らすことにより、管理コストを抑えることができる。
【0092】
また、本実施形態のセンタサーバ40では、第1のデータと、第2のデータと、のデータの精度を考慮して運転を診断することができる。
【0093】
さらに、本実施形態のセンタサーバ40によれば、第2のデータに加え、過去に取得した第1のデータを活用して、第1のデータにおける運転を診断することができる。
【0094】
[備考]
上記実施形態では、センタサーバ40を運転診断装置としたが、この限りではなく、車載器20を運転診断装置としてもよい。この場合、車載器20は、車両12に搭載された計測装置30に係る計測情報を取得し、予め記憶しておいた診断モデルを用いて運転診断処理を実行する。
【0095】
なお、上記実施形態でCPU20A、CPU30A、及びCPU40Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0096】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、車載器20における収集プログラム100はROM20Bに予め記憶され、計測装置30における収集プログラム100はストレージ30Dに予め記憶され、センタサーバ40における運転診断プログラム130はストレージ40Dに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0097】
上記実施形態で説明した処理の流れは、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
12 車両
20 車載器
30 計測装置
40 センタサーバ(運転診断装置)
40A CPU(プロセッサ)
130 運転診断プログラム
150 診断モデル
400 取得部
420 調整部
430 診断部