IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-点火プラグ 図1
  • 特許-点火プラグ 図2
  • 特許-点火プラグ 図3
  • 特許-点火プラグ 図4
  • 特許-点火プラグ 図5
  • 特許-点火プラグ 図6
  • 特許-点火プラグ 図7
  • 特許-点火プラグ 図8
  • 特許-点火プラグ 図9
  • 特許-点火プラグ 図10
  • 特許-点火プラグ 図11
  • 特許-点火プラグ 図12
  • 特許-点火プラグ 図13
  • 特許-点火プラグ 図14
  • 特許-点火プラグ 図15
  • 特許-点火プラグ 図16
  • 特許-点火プラグ 図17
  • 特許-点火プラグ 図18
  • 特許-点火プラグ 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】点火プラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
H01T13/20 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021171795
(22)【出願日】2021-10-20
(65)【公開番号】P2023061701
(43)【公開日】2023-05-02
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100142918
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 貴志
(72)【発明者】
【氏名】高田 健一朗
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-22513(JP,A)
【文献】特開2010-262918(JP,A)
【文献】特開平5-198350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸孔(21)の形成された絶縁碍子(20)と、
前記軸孔の中心軸(CX1)に沿った一方側の端部となる位置において、前記絶縁碍子に保持された中心電極(30)と、
前記絶縁碍子を外周側から保持する主体金具(50)と、
前記主体金具から伸びており、前記中心電極と一部が対向する接地電極(60)と、を備え、
前記中心電極及び前記接地電極のうちの少なくとも一方は、
電極基材(100)と、
前記電極基材に対し溶接により固定された放電チップ(200)と、を有しており、
前記中心電極と前記接地電極とが互いに対向する方向、である対向方向に沿って見た場合において、
前記放電チップのうち前記電極基材側の表面であって、当該表面の中心となる位置には、有底又は無底の穴であるチップ側中心穴(220)が形成されており、
前記電極基材と前記放電チップとを繋ぐ溶接部が形成されている範囲は、前記放電チップの外側面(201)を外側から包含する範囲であり、且つ、前記チップ側中心穴の内側面(221)よりも内側まで入り込む範囲であり、
前記チップ側中心穴の内側においては、前記溶接部が形成されていない領域が存在している点火プラグ。
【請求項2】
前記チップ側中心穴は有底で且つ円形の穴であり、
前記チップ側中心穴の底部(222)の近傍においては、
前記チップ側中心穴の中心軸(CX2)に沿って前記チップ側中心穴の底部に近づくほど、前記チップ側中心穴の内径が次第に小さくなっている、請求項1に記載の点火プラグ。
【請求項3】
前記チップ側中心穴の底部の内面が曲面となっている、請求項2に記載の点火プラグ。
【請求項4】
前記チップ側中心穴の底部の内面が球面となっている、請求項3に記載の点火プラグ。
【請求項5】
前記電極基材のうち前記放電チップ側の表面であって、前記チップ側中心穴と対向する部分には、有底又は無底の穴である基材側中心穴(120)が形成されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項6】
前記基材側中心穴は無底の穴であり、
前記基材側中心穴のうち前記放電チップとは反対側の端部は、周囲の空間へと開放されている、請求項5に記載の点火プラグ。
【請求項7】
前記基材側中心穴は有底で且つ円形の穴であり、
前記基材側中心穴の底部(122)の近傍においては、
前記基材側中心穴の中心軸に沿って前記基材側中心穴の底部に近づくほど、前記基材側中心穴の内径が次第に小さくなっている、請求項5に記載の点火プラグ。
【請求項8】
前記基材側中心穴の底部の内面が曲面となっている、請求項7に記載の点火プラグ。
【請求項9】
前記基材側中心穴の底部の内面が球面となっている、請求項8に記載の点火プラグ。
【請求項10】
前記電極基材には、前記放電チップを外側から囲む筒状突起(150)が設けられている、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項11】
前記筒状突起は押出成形により形成されている、請求項10に記載の点火プラグ。
【請求項12】
前記溶接部は、前記筒状突起の外側面から、前記チップ側中心穴の内側面に至る範囲に形成されている、請求項10又は11に記載の点火プラグ。
【請求項13】
前記放電チップのうち前記電極基材側の表面には、直線状の溝である第1溝(230)と第2溝(240)とが形成されており、
前記第1溝及び前記第2溝が、前記チップ側中心穴において互いに直交している、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項14】
前記対向方向に沿って見た場合において、
前記第1溝の内側及び前記第2溝の内側においては、前記溶接部が形成されていない領域が存在している、請求項13に記載の点火プラグ。
【請求項15】
前記対向方向に沿って見た場合において、
前記放電チップの外側面の形状が円形である、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項16】
前記対向方向に沿って見た場合において、
前記放電チップの外側面の形状が矩形である、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に搭載される内燃機関には、燃料への点火を行うための点火プラグが設けられる。点火プラグは、中心電極と接地電極とを備えており、これらの電極間で火花放電を生じさせることで燃料への点火を行う。火花放電に対する耐久性を高めるために、中心電極及び接地電極のうちの少なくとも一方は、電極基材に放電チップを溶接した構成とされることが多い。
【0003】
内燃機関の動作中においては、電極基材と放電チップとを繋ぐ溶接部において熱応力が生じる。熱応力の大きさによっては、溶接部において亀裂が生じ、放電チップが剥離又は脱落してしまう場合がある。下記特許文献1には、このような放電チップの脱落等を防止するための構成として、電極基材と放電チップとが対向する接合面の全体において溶接固定を行うのではなく、接合面の一部に空洞を形成した状態で溶接固定を行うことで、熱応力を緩和することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6310497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された点火プラグのように、空洞の形成により接合面積を小さくすれば、熱応力を緩和することができる。しかしながら、接合面積を小さくすると、溶接の強度自体が低下してしまうので、却って放電チップの脱落等が生じやすくなってしまうことも起こり得る。上記特許文献1に記載された点火プラグは、空洞、すなわち未溶接部の具体的な形状や配置について、更なる改良の余地がある。
【0006】
本開示は、熱応力に伴う放電チップの脱落等を抑制することのできる点火プラグ、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る点火プラグは、軸孔(21)の形成された絶縁碍子(20)と、軸孔の中心軸(CX1)に沿った一方側の端部となる位置において、絶縁碍子に保持された中心電極(30)と、絶縁碍子を外周側から保持する主体金具(50)と、主体金具から伸びており、中心電極と一部が対向する接地電極(60)と、を備える。中心電極及び接地電極のうちの少なくとも一方は、電極基材(100)と、電極基材に対し溶接により固定された放電チップ(200)と、を有している。中心電極と接地電極とが互いに対向する方向、である対向方向に沿って見た場合において、放電チップのうち電極基材側の表面であって、当該表面の中心となる位置には、有底又は無底の穴であるチップ側中心穴(220)が形成されており、電極基材と放電チップとを繋ぐ溶接部が形成されている範囲は、放電チップの外側面(201)を外側から包含する範囲であり、且つ、チップ側中心穴の内側面(221)よりも内側まで入り込む範囲であり、チップ側中心穴の内側においては、溶接部が形成されていない領域が存在している。
【0008】
電極基材と放電チップとの溶接面に沿って、連続して伸びている溶接部の長さが長くなるほど、生じる熱応力は大きくなる。上記構成の点火プラグでは、チップ側中心穴が形成されている中心部分において、溶接部が形成されていない領域が存在しているため、当該領域において溶接部が途切れることとなる。例えば、放電チップが円柱形状である場合には、連続して伸びている溶接部の長さは、当該円柱形状の半径程度に抑えられる。上記構成の点火プラグでは、未溶接部の面積を小さく抑えながらも、連続して伸びている溶接部の長さを効率的に短くすることができる。その結果、溶接の強度を十分に確保しながら、熱応力に伴う放電チップの脱落等を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、熱応力に伴う放電チップの脱落等を抑制することのできる点火プラグが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る点火プラグの構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
図3図3は、図2のIII-III断面を示す図である。
図4図4は、比較例に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
図5図5は、他の比較例に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
図6図6は、第2実施形態に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
図7図7は、第3実施形態に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
図8図8は、第4実施形態に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
図9図9は、第5実施形態に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
図10図10は、図9のX-X断面を示す図である。
図11図11は、第5実施形態に係る点火プラグの、接地電極の構成を示す図である。
図12図12は、第5実施形態に係る点火プラグの、接地電極の製造方法について説明するための図である。
図13図13は、第5実施形態に係る点火プラグの、接地電極の製造方法について説明するための図である。
図14図14は、第5実施形態に係る点火プラグの、接地電極の製造方法について説明するための図である。
図15図15は、第6実施形態に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
図16図16は、第7実施形態に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
図17図17は、図16のXVII-XVII断面を示す図である。
図18図18は、第8実施形態に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
図19図19は、第9実施形態に係る点火プラグの、放電チップ及びその近傍の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
第1実施形態に係る点火プラグ10の構成について、図1を参照しながら説明する。尚、図1においては、点火プラグ10を、後述の中心軸CX1を含む面で切断した場合の断面が左側部分に示されている。ただし、点火プラグ10を構成する部材のうち中心電極30及び端子金具40等については、断面ではなくそれぞれの外観が示されている。
【0013】
点火プラグ10は、不図示の内燃機関の各気筒に設けられ、当該気筒の燃焼室において燃料への着火を行うための装置である。点火プラグ10は、絶縁碍子20と、中心電極30と、端子金具40と、主体金具50と、接地電極60と、を備えている。
【0014】
絶縁碍子20は、例えばアルミナ等の絶縁材料により形成された筒状の部材である。絶縁碍子20には軸孔21が形成されている。軸孔21は、絶縁碍子20をその中心軸に沿って貫くように形成された貫通孔である。軸孔21の中心軸は、絶縁碍子20の中心軸と一致している。軸孔21の中心軸のことを、以下では「中心軸CX1」とも表記する。絶縁碍子20を、中心軸CX1に対し垂直に切断した場合の断面においては、軸孔21の形状は円形となっている。
【0015】
中心電極30は、軸孔21のうち、中心軸CX1に沿った一方側の端部(図1では下方側の端部)となる位置において、絶縁碍子20により保持されている部材である。中心電極30は、電極基材31と、放電チップ32と、を有している。
【0016】
電極基材31は、中心電極30のうちの殆どの部分を占める金属製の部材である。電極基材31は棒状の部材であり、その大部分が軸孔21の内側に配置されている。電極基材31の一部は、軸孔21から絶縁碍子20の外側へと突出しており、その突出している部分の先端には放電チップ32が溶接固定されている。放電チップ32は、例えば、イリジウムに対して所定量の白金等を含有させた合金により形成されている。先に述べた絶縁碍子20は、中心電極30を外周側から保持している部材、ということができる。
【0017】
端子金具40は、軸孔21のうち、中心軸CX1に沿った他方側の端部(図1では上方側の端部)となる位置において、絶縁碍子20により保持されている金属製の部材である。端子金具40は棒状の部材であり、その大部分が軸孔21の内側に配置されている。端子金具40の一部は、軸孔21から絶縁碍子20の外側へと突出している。この突出している部分は、不図示の外部電源から電圧が印加される電極端子となっている。
【0018】
絶縁碍子20のうち、中心軸CX1に沿って中心電極30が取り付けられている方のことを、以下では「先端側」とも称する。また、絶縁碍子20のうち、中心軸CX1に沿って端子金具40が取り付けられている方のことを、以下では「後端側」とも称する。
【0019】
軸孔21のうち、端子金具40と中心電極30との間には、抵抗体71が配置されている。抵抗体71は、端子金具40から中心電極30に至る電路の電気抵抗を調整するために配置された部材である。抵抗体71は、粉末状のガラス及びジルコニアに対し所定量のカーボン粉末を添加した材料、により形成されている。抵抗体71の電気抵抗は、上記のカーボン添加量によって調整されている。端子金具40から中心電極30に至る電路に抵抗体71が配置されることで、点火プラグ10の火花放電に伴う電磁ノイズの発生が抑制される。抵抗体71と中心電極30との間は、導電性シール層72を介して電気的に接続されている。同様に、端子金具40と抵抗体71との間は、導電性シール層73を介して電気的に接続されている。導電性シール層72、73は、いずれも、粉末状のガラスに対し銅粉末を添加した材料により形成された、導電性を有する層である。
【0020】
主体金具50は、絶縁碍子20の一部を外周側から保持している筒状の部材である。主体金具50は、その全体が金属により形成されている。主体金具50は、加締められることで絶縁碍子20に対し固定されており、その状態で絶縁碍子20を保持している。主体金具50は、嵌合部52と、フランジ部55と、挿入部56と、を有している。
【0021】
嵌合部52は、内燃機関に対する点火プラグ10の取り付け時において、例えばプラグレンチのような工具と嵌合する部分である。中心軸CX1に沿って見た場合における嵌合部52の形状は例えば六角形である。
【0022】
フランジ部55は、内燃機関に点火プラグ10が取り付けられた際、内燃機関の外表面に対しガスケットGKを介して当接する部分である。フランジ部55は、嵌合部52よりも先端側となる位置に設けられており、外周側に向けて突出している。
【0023】
挿入部56は、フランジ部55よりも更に先端側の部分であって、内燃機関に形成された不図示の挿入孔へと挿入される部分である。挿入部56の外周面には雄螺子561が形成されている。点火プラグ10が内燃機関に取り付けられる際には、嵌合部52が工具から受ける力により中心軸CX1の周りに回転する。これにより、上記挿入孔の内周面に形成された雌螺子と、挿入部56の雄螺子561とが互いに螺合する。これにより、内燃機関に対して点火プラグ10が締結固定される。点火プラグ10が内燃機関に取り付けられた状態においては、主体金具50の電位は、内燃機関と同じ接地電位となる。
【0024】
接地電極60は、主体金具50のうち先端側の先端面Sから、更に先端側へと伸びるように形成された部材である。先端面Sは中心軸CX1に対し垂直な面である。接地電極60は、電極基材100と、放電チップ200と、を有している。電極基材100は、接地電極60のうちの殆どの部分を占める金属製の部材である。電極基材100は屈曲しており、その一部が、中心軸CX1に沿って中心電極30の放電チップ32と対向した状態となっている。つまり、接地電極60の電極基材100は、その一端側が主体金具50の先端面Sに接続されており、他端側が中心電極30と対向している。電極基材100のうち中心電極30と対向する部分には、放電チップ200が取り付けられている。放電チップ200は、放電チップ32と同様に、例えば、イリジウムに対して所定量の白金等を含有させた合金により形成されている。
【0025】
上記構成において、放電チップ200と放電チップ32とは、中心軸CX1に沿って並んでおり互いに対向している。互いに対向する放電チップ200と放電チップ32との間に形成された隙間が、火花放電の生じる放電ギャップGPとなっている。
【0026】
中心電極30と接地電極60とが互いに対向する方向、すなわち、上記の放電チップ32と放電チップ200とが互いに対向する方向のことを、以下では「対向方向」とも称する。本実施形態の対向方向は、中心軸CX1に沿った方向となっている。
【0027】
内燃機関の動作時においては、点火プラグ10の端子金具40と、内燃機関のボディとの間に、パルス状の高電圧が印加される。この高電圧は、互いに対向する放電チップ200と放電チップ32との間との間に印加されることとなり、放電ギャップGPにおいて火花放電を生じさせる。尚、放電チップ200及び放電チップ32のうち、いずれか一方が設けられていない態様であってもよい。
【0028】
接地電極60の具体的な構成について説明する。尚、以下に説明する接地電極60の構成は、これと対向する中心電極30にも適用し得るものである。接地電極60及び中心電極30のうちの少なくとも一方が、以下に説明する構成を有していればよい。後に説明する他の実施形態についても同様である。
【0029】
図2には、接地電極60の放電チップ200及びその近傍の部分を、対向方向に沿って中心電極30側から見た状態が示されている。また、図3には、図2のIII-III断面が示されている。
【0030】
本実施形態においては、放電チップ200は略円柱形状となっている。このため、図2に示されるように、対向方向に沿って見た場合においては、放電チップ200の外側面201の形状は円形となっている。
【0031】
放電チップ200にはチップ側中心穴220が形成されている。チップ側中心穴220は、放電チップ200のうち電極基材100側の表面(つまり円形の表面)の中心となる位置を通る無底の穴であって、対向方向に沿って放電チップ200を直線状に貫く貫通穴として形成されている。チップ側中心穴220は円形の穴である。チップ側中心穴220の中心軸CX2は、円柱形状である放電チップ200の中心軸と一致しており、先に述べた中心軸CX1とも一致している。尚、チップ側中心穴220は、放電チップ200のうち電極基材100側の表面の中心を含む範囲に形成されていればよく、中心軸CX2が放電チップ200の中心軸と一致していなくてもよい。
【0032】
放電チップ200は、レーザー溶接により電極基材100に対し溶接固定されている。図2、3において符号「300」が付されている部分は、電極基材100と放電チップ200とを繋いでいる溶接部である。当該部分のことを、以下では「溶接部300」とも称する。溶接部300は、放電チップ200を溶接固定する際において、母材である放電チップ200及び電極基材100の一部が一旦融解し、その後凝固した部分、ということができる。
【0033】
溶接部300は、放電チップ200の外側面201よりも外側まで広がっており、また、チップ側中心穴220の内側面221よりも内側まで広がっている。このため、図2のように対向方向に沿って見た場合において、溶接部300が形成されている範囲は、放電チップ200の外側面201を外側から包含する範囲であり、且つ、チップ側中心穴220の内側面221よりも内側まで入り込む範囲となっている。溶接部300は、外側面201から内側面221に至るまでの範囲において、途中で途切れることなく連続して形成されている。
【0034】
ただし、チップ側中心穴220の中心軸CX2が通る部分においては、溶接部300は形成されていない。このため、電極基材100のうち放電チップ200側の表面110であって、チップ側中心穴220と対向する部分には、チップ側中心穴220よりも小さい未溶接部が存在している。図2、3においては、この未溶接部に符号「111」が付してある。この未溶接部のことを、以下では「未溶接部111」とも称する。未溶接部111は、対向方向に沿って見た場合において、「チップ側中心穴220の内側において溶接部300が形成されていない領域」ということができる。
【0035】
溶接部300のうち未溶接部111の直上においては、溶接部300を対向方向に沿って貫く貫通穴が形成されている。対向方向に沿って見た場合において、当該貫通穴は、チップ側中心穴220よりも小さく、チップ側中心穴220の内側面221の内側に包含されている。本実施形態のように、チップ側中心穴220が円形の穴である場合には、上記貫通穴の内径は、チップ側中心穴220の内径よりも小さい。
【0036】
接地電極60を以上のような構成としたことの利点を説明するために、比較例に係る構成について説明する。図4には、比較例に係る接地電極60Aの構成が、図3と同様の視点で描かれている。この比較例では、放電チップ200にチップ側中心穴220が形成されていない。このため、図3等に示される未溶接部111が形成されておらず、未溶接部111の直上にある溶接部300の貫通穴も形成されていない。溶接部300は、電極基材100と放電チップ200とが互いに対向する面の全体に亘って形成されている。
【0037】
このような構成においては、連続して伸びている溶接部300の長さが、放電チップ200の直径程度まで長くなる。その結果、電極基材100と放電チップ200との熱膨張差に起因した熱応力が大きくなり、当該熱応力に起因して、図4において「CR1」で示されるような亀裂が生じやすくなる。このような亀裂は、放電チップ200の剥離や脱落の原因となるので好ましくない。
【0038】
これに対し、本実施形態に係る接地電極60では、チップ側中心穴220が形成されている中心部分が未溶接部111となっており、中心部分において溶接部300が途切れた状態となっている。これにより、連続して伸びている溶接部300の長さが、放電チップ200の半径程度に抑えられている。
【0039】
尚、熱応力を小さくするという観点においては、中心部分に限らずあらゆる部分に未溶接部を形成し、未溶接部全体の面積を大きくすることが好ましい。しかしながら、この場合には、接合面積が小さくなり過ぎて溶接の強度自体が低下してしまうので、却って放電チップ200の脱落等が生じやすくなってしまう可能性がある。
【0040】
この点、本実施形態では、チップ側中心穴220を放電チップ200の中心に形成することで、未溶接部の面積を小さく抑えながらも、連続して伸びている溶接部の長さを効率的に短くしている。その結果、溶接の強度を十分に確保しながら、熱応力に伴う放電チップ200の脱落等を従来よりも抑制している。尚、以上の説明は、チップ側中心穴220とは別の位置に、追加の未溶接部を形成するような構成を除外するものではない。
【0041】
図5には、他の比較例に係る接地電極60Bの構成が、図3図4と同様の視点で描かれている。この比較例では、チップ側中心穴220が、無底の穴ではなく有底の穴として形成されている。このチップ側中心穴220は、内側面221と、底部222とによって区画されている。この比較例における底部222は、中心軸CX2に対し垂直な面となっているので、底部222と内側面221との境界にはコーナー部が形成されている。
【0042】
また、この比較例においては、未溶接部111が、チップ側中心穴220の内側面221よりも外側の範囲まで広がっている。チップ側中心穴220の内側面221から内側の部分には、溶接部300が形成されていない。
【0043】
このような比較例の構成においても、チップ側中心穴220の部分に未溶接部111が形成されるので、本実施形態と同様に熱応力を低減する効果が得られる。しかしながら、この比較例では、チップ側中心穴220の底部222と内側面221との境界にコーナー部が形成されるので、応力の集中しやすいこのコーナー部を起点として、図5の「CR2」で示されるような亀裂が生じる可能性がある。このような亀裂は、放電チップ200が破損する原因となるので好ましくない。
【0044】
これに対し、本実施形態に係る接地電極60では、チップ側中心穴220が無底の貫通穴として形成されているので、亀裂の起点となるようなコーナー部が存在しない。これにより、放電チップ200が破損してしまう可能性が小さくなっている。
【0045】
また、図5の比較例においては、中心部にある未溶接部111が、チップ側中心穴220の内側面221よりも外側まで入り込んでおり、その更に外側にある溶接部300に繋がっている。このように、未溶接部111が内側面221よりも外側まで入り込んでいる状態は、放電チップ200の溶接を抵抗溶接で行った場合において特に生じやすい。
【0046】
このような構成においては、電極基材100と放電チップ200との熱膨張差に起因して、未溶接部111の外周端を起点とした亀裂が生じやすくなる。図5においては、このように生じる亀裂の例が「CR3」として示されている。このような亀裂は、図3のCR1と同様に、放電チップ200の剥離や脱落の原因となるので好ましくない。
【0047】
これに対し、本実施形態に係る接地電極60では、溶接部300が、チップ側中心穴220の内側面221よりも内側まで広がっているので、未溶接部111の外周端を起点としたCR3のような亀裂は生じにくくなっている。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態に係る接地電極60では、放電チップ200の中心にチップ側中心穴220を形成し、その内側まで入り込むように溶接部300を形成しながら、中心に未溶接部111を形成している。このような構成により、溶接部300における亀裂の発生を抑制し、熱応力に伴う放電チップ200の脱落等を十分に抑制することが可能となっている。
【0049】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。図6には、本実施形態に係る接地電極60の構成が、図3と同様の視点で描かれている。
【0050】
本実施形態では、図5の比較例と同様に、チップ側中心穴220が無底の穴ではなく有底の穴として形成されている。本実施形態でも、チップ側中心穴220は円形の穴である。このチップ側中心穴220のうち、図6における点線DL1よりも下方側(電極基材100側)の部分では、チップ側中心穴220の内径は深さに寄らず均一となっている。点線DL1よりも上方側、すなわち、チップ側中心穴220の底部222の近傍部分においては、中心軸CX2に沿って底部222に近づくほど、チップ側中心穴220の内径が次第に小さくなっている。具体的には、点線DL1よりも上方側の範囲においては、チップ側中心穴220の底部222の内面が球面(正確には半球面)となっている。
【0051】
このような構成においては、図5の比較例とは異なり、底部222にはコーナー部が形成されていないので、図5の「CR2」で示されるような亀裂は生じにくくなっている。このような構成でも、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0052】
尚、底部222の内面は、コーナー部が形成されないように曲面となっているのであれば、本実施形態のような半球面となっていなくてもよい。
【0053】
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。図7には、本実施形態に係る接地電極60の構成が、図3と同様の視点で描かれている。
【0054】
本実施形態に係る放電チップ200の構成は、第2実施形態(図6)に係る放電チップ200の構成と同じである。本実施形態では、電極基材100に基材側中心穴120が形成されており、この点において第2実施形態と異なっている。基材側中心穴120は、電極基材100のうち放電チップ200側の表面110のうち、チップ側中心穴220と対向する部分に形成されている。基材側中心穴120は有底の穴であり且つ円形のとして形成されている。基材側中心穴120の中心軸CX3は、チップ側中心穴220の中心軸CX2と一致している。基材側中心穴120のうち、図7における点線DL2よりも上方側(放電チップ200側)の部分では、基材側中心穴120の内径は均一となっている。当該内径は、チップ側中心穴220の内径と等しい。
【0055】
本実施形態においては、基材側中心穴120の内径と、チップ側中心穴220の内径と、が互いに一致していることにより、チップ側中心穴220の内側には未溶接部111が形成されていない。ただし、本実施形態でも第1実施形態等と同様に、溶接部300は、チップ側中心穴220の内側面221よりも内側まで広がっており、更にその内側においては、溶接部300の中心を貫くように貫通穴が形成されている。この貫通穴(図7において符号301が付された部分)は、「チップ側中心穴220の内側において溶接部300が形成されていない領域」に該当する。上記貫通穴の内径は、チップ側中心穴220の内径よりも小さい。このため、未溶接部111が形成されていない本実施形態においても、第1実施形態で説明したものと同様の効果が得られる。
【0056】
図7における点線DL2よりも下方側、すなわち、基材側中心穴120の底部122の近傍部分においては、中心軸CX3に沿って底部122に近づくほど、基材側中心穴120の内径が次第に小さくなっている。具体的には、点線DL2よりも下方側の範囲においては、基材側中心穴120の底部122の内面が球面(正確には半球面)となっている。
【0057】
電極基材100のうち放電チップ200に対し溶接されている部分においては、基材側中心穴120の内側における肉が抜かれていることにより、電極基材100の弾性変形が比較的生じやすくなっている。このため、電極基材100と放電チップ200との熱膨張差を吸収し、溶接部300の亀裂を更に生じにくくさせるという効果が得られる。
【0058】
また、チップ側中心穴220の底部222と同様に、基材側中心穴120の底部122においても、コーナー部が形成されていない。このため、電極基材100においても、コーナー部を起点とした亀裂は生じにくくなっている。尚、底部122の内面は、コーナー部が形成されないように曲面となっているのであれば、本実施形態のような半球面となっていなくてもよい。
【0059】
尚、以上のような効果を奏するにあたっては、基材側中心穴120の中心軸CX3と、チップ側中心穴220の中心軸CX2とは、互いに一致していなくてもよい。また、基材側中心穴120の内径と、チップ側中心穴220の内径とは、互いに一致していなくてもよい。
【0060】
第4実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。図8には、本実施形態に係る接地電極60の構成が、図3と同様の視点で描かれている。
【0061】
本実施形態に係る放電チップ200の構成は、第3実施形態(図7)に係る放電チップ200の構成と同じである。また、本実施形態でも第3実施形態と同様に、電極基材100には基材側中心穴120が形成されている。
【0062】
ただし、本実施形態における基材側中心穴120は、有底ではなく無底の穴として形成されている。基材側中心穴120は円形の貫通穴であり、その中心軸CX3は中心軸CX2と一致している。基材側中心穴120の内径は、チップ側中心穴220の内径よりも小さく、溶接部300の中心に形成された貫通穴の内径よりも小さい。その結果、電極基材100のうち放電チップ200側の表面110であって、チップ側中心穴220の周囲の部分には、本実施形態でも第1実施形態と同様の未溶接部111が形成されている。このような構成の本実施形態においても、第1実施形態で説明したものと同様の効果が得られる。
【0063】
基材側中心穴120のうち、放電チップ200とは反対側の端部は、電極基材100のうち表面110とは反対側の表面130において開口している。つまり、基材側中心穴120のうち放電チップ200とは反対側の端部は、点火プラグ10の周囲の空間へと開放されている。このため、チップ側中心穴220の内部空間は密閉空間とはなっておらず、基材側中心穴120を介して、点火プラグ10の周囲の空間へと繋がっている。
【0064】
このような構成においては、チップ側中心穴220の内部空間にある空気が、熱膨張によりその体積を増加させた場合であっても、当該空気は基材側中心穴120を通って外部へと流出する。このため、基材側中心穴120の内部空間において気圧が上昇することはなく、気圧の上昇に伴って溶接部300に亀裂が生じてしまうような事態を防止することができる。
【0065】
第5実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。図9には、本実施形態に係る接地電極60の放電チップ200及びその近傍の部分を、対向方向に沿って中心電極30側から見た状態が示されている。また、図10には、図9のX-X断面が示されている。図11には、本実施形態に係る接地電極60を、対向方向に沿って放電チップ200とは反対側から見た状態が示されている。
【0066】
本実施形態に係る放電チップ200の形状は、第1実施形態に係る放電チップ200の形状(図3)と同じである。本実施形態では、電極基材100の形状において第1実施形態と異なっている。具体的には、本実施形態の電極基材100には筒状突起150が設けられている。筒状突起150は、電極基材100のうち放電チップ200側の表面110から、中心電極30側へと突出する円筒状の突起であって、放電チップ200を外側から囲むように形成されている。筒状突起150の突出高さは、放電チップ200の高さよりも小さく、且つ、溶接部300の厚さよりも大きいことが好ましい。このような筒状突起150は、後に説明するように押出成形により形成することができる。
【0067】
本実施形態の溶接部300は、筒状突起150の外側面151から、チップ側中心穴220の内側面221に至る範囲において、途中で途切れることなく連続して形成されている。図9に示されるように、溶接部300は、筒状突起150の外側面151よりも外側まで広がっており、また、チップ側中心穴220の内側面221よりも内側まで広がっている。チップ側中心穴220の中心軸CX2が通る部分においては、本実施形態でも未溶接部111が形成されている。
【0068】
ところで、電極基材100をレーザー溶接により接合する際においては、溶接部300の最外周部分において気泡の小爆発が生じること等に起因して、内側に入り込むような凹部が形成されてしまうことがある。図5においては、符号「310」が付されている部分に、上記のような凹部が形成された例が示されている。溶接部300の最外周部分に凹部が形成されると、当該凹部を起点として、図5の「CR4」で示されるような亀裂が生じる可能性がある。また、凹部が形成されていない場合であっても、溶接部300の最外周部分では、放電チップ200と溶接部300との界面部分などから、図5の「CR5」で示されるような亀裂が生じる可能性もある。このように、溶接部300の最外周部分は、熱膨張に起因した亀裂が比較的生じやすい部分となっている。
【0069】
そこで、本実施形態に係る点火プラグ10では、放電チップ200の外側を囲むように予め筒状突起150を形成しておくことで、筒状突起150が存在しない場合に比べて、溶接部300の最外周部分を放電チップ200から外側へと遠ざけることとしている。このような構成においては、溶接部300の最外周部分において図5の「CR4」や「CR5」で示されるような亀裂が生じたとしても、当該亀裂が進行し放電チップ200の脱落等が生じるまでに要する時間を長くすることができる。その結果として、熱応力に伴う放電チップの脱落等を更に抑制することが可能となっている。
【0070】
以上のような接地電極60の製造方法について説明する。先ず、図12に示されるような上型410と下型420とが用意される。上型410には、筒状突起150に対応した円形の溝である凹部411が形成されている。また、下型420には、円形の平坦面である面421と、面421の中央に形成された円形の凹部422と、が形成されている。上型410と下型420とが互いに対向する方向に沿って見た場合において、面421は、凹部411の全体を包含する領域に設けられている。
【0071】
上型410と下型420との間に電極基材100を挟みこんでプレスすると、電極基材100のうち表面110の一部が凹部411の内側へと押し出され、これにより筒状突起150が形成される。このとき、電極基材100の表面130は面421によって押込まれる。これにより、表面110における筒状突起150の形成が促進される。最終的には、表面130には図11に示されるような円形の凹部131が形成される。
【0072】
続いて、図13に示されるように、表面110のうち筒状突起150の内側の部分に、放電チップ200が設置される。その後、レーザー溶接が施される。レーザー溶接では、図14に示されるように、筒状突起150の外周側から矢印ARに沿ってレーザーが当てられ、これにより溶接部300が形成されて行く。周方向に沿ってレーザーを当てて行くことで、全周に亘って溶接部300が形成され、図10等に示されるような接地電極60が完成する。尚、レーザー溶接を行う際には、中心軸CX2の近傍部分において図10の未溶接部111が形成されるように、溶接の条件が適宜設定される。
【0073】
第6実施形態について説明する。以下では、上記の第5実施形態と異なる点について主に説明し、第5実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。図15には、本実施形態に係る接地電極60の構成が、図10と同様の視点で描かれている。
【0074】
本実施形態に係る接地電極60の構成は、第5実施形態(図10)に係る接地電極60の放電チップ200を、第2実施形態(図6)に係る放電チップ200に置き換えた構成となっている。このような構成においても、第5実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。本実施形態と同様に、電極基材100に筒状突起150を設けた構成は、これまでに説明した各実施形態の構成においても採用することができる。
【0075】
第7実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。図16には、本実施形態に係る接地電極60の構成が、中心軸CX2に対し垂直な方向から見た側面視で描かれている。また、図17には、図6のXVII-XVII断面が示されている。
【0076】
本実施形態に係る接地電極60の放電チップ200では、電極基材100側の表面に第1溝230及び第2溝240が形成されている。第1溝230及び第2溝240はいずれも直線状に形成された溝であって、電極基材100側の表面から凹状に後退するように形成されている。第1溝230は、図16における左右方向に沿って直線状に伸びるよう形成されている。第2溝240は、図16における紙面奥行き方向に沿って直線状に伸びるよう形成されている。第1溝230及び第2溝240は、放電チップ200のうち、対向方向に沿って見た場合の中心となる位置において互いに直交しており、この直交している部分に、有底の穴であるチップ側中心穴220が形成されている。第1溝230の底部、及び第2溝240の底部は、いずれも内面が円弧状に湾曲している。このため、両者の交点であるチップ側中心穴220においては、底部222の内面が球面(正確には半球面)となっている。
【0077】
図17に示されるように、溶接部300は、放電チップ200の外側面201よりも外側まで広がっており、第1溝230の内側面や第2溝240の内周面よりも内側まで広がっている。また、本実施形態における未溶接部111は、チップ側中心穴220の中心軸CX2が通る部分だけでなく、第1溝230及び第2溝240のそれぞれの長手方向に沿って伸びるように形成されている。つまり、対向方向に沿って見た場合において、第1溝230の内側及び第2溝240の内側には、溶接部300が形成されていない領域が存在している。
【0078】
このような構成においては、溶接部300を介して接合されている面積が更に小さくなるので、熱膨張に伴う応力を低減し、亀裂が発生する可能性を更に小さくすることができる。接合強度を確保し得る範囲であれば、本実施形態のように未溶接部111を拡大した構成を採用してもよい。放電チップ200に第1溝230及び第2溝240を形成した構成は、これまでに説明した各実施形態の構成においても採用することができる。
【0079】
第8実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。図18には、本実施形態に係る接地電極60の構成が、図2と同様の視点で描かれている。尚、中心軸CX2を含む面で接地電極60を切断した場合における断面形状は、図3の断面形状と同様の形状となる。
【0080】
本実施形態では、対向方向に沿って見た場合における放電チップ200の外側面201の形状が、円形ではなく矩形となっている。その他の点については第1実施形態と同じである。このような構成でも、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0081】
第9実施形態について説明する。以下では、先に述べた第7実施形態(図17)と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。図19には、本実施形態に係る接地電極60の構成が、図17と同様の視点で描かれている。尚、中心軸CX2を含む面で接地電極60を切断した場合における断面形状は、図16の断面形状と同様の形状となる。
【0082】
本実施形態でも、対向方向に沿って見た場合における放電チップ200の外側面201の形状が、円形ではなく矩形となっている。その他の点については第7実施形態と同じである。つまり、本実施形態でも、放電チップ200に第1溝230及び第2溝240を形成した構成となっている。このような構成でも、第7実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0083】
第8実施形態(図18)及び第9実施形態(図19)と同様に、放電チップ200の形状を矩形とした構成は、これまでに説明した各実施形態の構成においても採用することができる。
【0084】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0085】
10:点火プラグ
20:絶縁碍子
21:軸孔
CX1:中心軸
30:中心電極
50:主体金具
60:接地電極
100:電極基材
200:放電チップ
201:外側面
220:チップ側中心穴
221:内側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19