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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】疲労関連情報演算装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20241106BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241106BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20241106BHJP
   B60L 3/00 20190101ALN20241106BHJP
   B60L 15/20 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
H02P29/024
G16Y10/40
G16Y40/10
B60L3/00 N
B60L15/20 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021188412
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075482
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118752(JP,A)
【文献】特開2017-190983(JP,A)
【文献】特開2018-148690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
G16Y 10/40
G16Y 40/10
B60L 3/00
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのロータを構成する部品の疲労度に関連する疲労関連情報を演算する疲労関連情報演算装置であって、
所定時間毎に、前記所定時間における前記ロータの回転速度の時間変化量を演算し、
前記時間変化量の範囲として予め定められた区分毎に、前記演算した前記時間変化量が前記区分に含まれる頻度を計数し、計数した前記区分毎の前記頻度に基づいて前記疲労関連情報を演算する
疲労関連情報演算装置。
【請求項2】
請求項1記載の疲労関連情報演算装置であって、
前記疲労関連情報として、前記区分毎に設定された上限回数に対する、前記区分毎の前記頻度の割合に基づいて前記部品の寿命を演算する
疲労関連情報演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疲労関連情報演算装置に関し、詳しくは、モータのロータを構成する部品の寿命を推定する疲労関連情報演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の疲労関連情報演算装置としては、モータのロータを支持する軸受けの疲労に関連する疲労関連情報を演算するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、所定の単位時間毎にモータのトルクを求め、モータのトルクから軸受けの平均荷重を求め、軸受けの平均荷重と定格荷重とから寿命回転数を演算し、モータの回転数の積算値としての積算回転数と寿命回転数とを用いて軸受けの疲労度を疲労関連情報として演算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-32712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の疲労関連情報演算装置では、モータの回転数を積算した積算回転数を用いて寿命を推定していることから、モータのロータを構成する部品のうち、モータの回転速度の変化で寿命が影響を受ける部品については、その寿命を適正に演算することができない。そのため、適正に疲労関連情報を演算しているとは言えない。
【0005】
本発明の疲労関連情報演算装置は、より適正に疲労関連情報を演算することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の疲労関連情報演算装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の疲労関連情報演算装置は、
モータのロータを構成する部品の疲労度に関連する疲労関連情報を演算する疲労関連情報演算装置であって、
所定時間毎に、前記所定時間における前記ロータの回転速度の時間変化量を演算し、
前記時間変化量の範囲として予め定められた区分毎に、前記演算した前記時間変化量が前記区分に含まれる頻度を計数し、計数した前記区分毎の前記頻度に基づいて前記疲労関連情報を演算する
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の疲労関連情報演算装置では、所定時間毎に、所定時間における回転速度の時間変化量を演算し、時間変化量の範囲として予め定められた区分毎に、演算した時間変化量が区分に含まれる頻度を計数し、計数した区分毎の頻度に基づいて疲労関連情報を演算する。この結果、より適正に疲労関連情報を演算できる。
【0009】
こうした本発明の疲労関連情報演算装置において、前記疲労関連情報として、前記区分毎に設定された上限回数に対する、前記区分毎の前記頻度の割合に基づいて前記部品の寿命を演算してもよい。こうすれば、より適正に部品の寿命を疲労関連情報として演算できる。
【0010】
また、本発明の疲労関連情報演算装置において、前記ロータは、中空円筒状のロータコアと、円環状で前記ロータコアの軸方向の少なくとも一方側に配置されるエンドプレートと、前記ロータコアおよび前記エンドプレートが取り付けられたロータシャフトと、を有し、前記ロータシャフトは、周方向に並びそれぞれ軸方向に突出し径方向外側にかしめられたかしめ部を有していてもよい。ロータコアの回転速度が急変すると、かしめ部によりかしめられたエンドプレートは、ごく短時間であるが、ロータコアの回転に追従できなくなる。そのため、ロータコアとエンドプレートとの間に僅かに生じるガタ部で衝突が繰り返され、ロータコアやエンドプレートが摩耗し、かしめが緩んでしまう。本発明では、こうしたかしめの緩みを考慮して部品の寿命をより適正に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施例としての疲労関連情報演算装置を備える警報システム10の構成の概略を示す構成図である。
図2】ロータ20の断面の一例を示す断面概略図である。
図3図2のロータ20を右側から見た側面概略図(外観概略図)である。
図4】データセンタDCのサーバ50により実行される警報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図5】入力した回転速度ωの時間変化の一例を示している。
図6】時間変化量dωのヒストグラムの一例を示す説明図である。
図7】本発明の第2実施例としての疲労関連情報演算装置を搭載する警報システム110の構成の概略を示す構成図である。
図8】各車両Vにおいて、図4の警報処理ルーチンのステップS120で計数した区分毎の回数Hi(頻度)を示すヒストグラムの一例を示す。
図9】各車両Vの総走行距離に対する各車両V毎に図4の警報処理ルーチンのステップS140で演算した寿命消費率LCRの分布の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の第1実施例としての疲労関連情報演算装置を搭載する警報システム10の構成の概略を示す構成図である。実施例の警報システム10は、車両Vの修理や点検などを行なうと共に車両Vのユーザに関する情報を記憶しているサービスセンタSCに所定の警報を発するシステムとして構成されており、車両Vと、サーバ50と、を備える。
【0014】
車両Vは、モータMからの動力を車軸に連結された駆動軸に出力して走行する電気自動車として構成されており、モータMの他に、制御装置40を備える。
【0015】
モータMは、図示しないステータと、ロータ20と、を備える。図2は、ロータ20の断面の一例を示す断面概略図である。図3は、図2のロータ20を右側から見た側面概略図(外観概略図)である。
【0016】
ロータ20は、図2に示すように、無方向性電磁時鋼板を打ち抜いて形成した円環状のロータ部材を複数積層してなる中空円筒状のロータコア22と、ロータコア22の複数のスロットにそれぞれ嵌挿される永久磁石23と、ロータコア22や永久磁石23の軸方向(ロータ部材の積層方向)の端面を押さえるための円環状のエンドプレート24,25と、ロータコア22およびエンドプレート24,25が取り付けられるロータシャフト30と、を備える。
【0017】
エンドプレート25は、図2に示すように、内径がロータシャフト30の取付部33の外径より小さく形成されている。
【0018】
ロータシャフト30は、図2に示すように、動力を入出力するための中空円筒状の入出力部31と、この入出力部31に比して大きな径の中空円筒状の取付部33と、が連結部32によって連結されて一体に形成されている。取付部33は、エンドプレート24におけるロータコア22側とは反対側の面(図2の左側の面)と接する大径部34と、大径部34に軸方向で連続すると共にエンドプレート24の内周面およびロータコア22におけるエンドプレート24側の面(図2の左側の面)の内周側領域と接する中径部35と、中径部35に軸方向で連続すると共にロータコア22の内周面に接する小径部36と、小径部36に軸方向で連続すると共にエンドプレート25の径方向外側に突出すると共にかしめられた複数のかしめ部37と、を備える。
【0019】
こうして構成された実施例のロータ20では、エンドプレート24の内周面の周方向の1箇所に形成された図示しない凸部と、ロータシャフト30の取付部33の中径部35の外周面の周方向の1箇所に形成された軸方向の図示しない凹部と、が噛み合うようエンドプレート24がロータシャフト30に取り付けられることにより、エンドプレート24がロータシャフト30に対して一体回転する(相対回転しない)ようになっている。また、ロータコア22の内周面の周方向の1箇所に形成された図示しない凸部と、ロータシャフト30の取付部33の小径部36の外周面の周方向の1箇所に形成された軸方向の図示しない凹部と、が噛み合うようロータコア22がロータシャフト30に取り付けられることにより、ロータコア22がロータシャフト30に対して一体回転する(相対回転しない)ようになっている。さらに、ロータシャフト30の複数のかしめ部37が、エンドプレート25の径方向外側にかしめられている。これにより、エンドプレート25がロータシャフト30に対して一体回転する(相対回転しない)と共にロータコア22やエンドプレート24,25が図2の右側にずれないようになっている。
【0020】
制御装置40は、CPUを中心とする汎用のマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートなどを備える。制御装置40には、各種センサにより検出された信号が入力されている。入力される信号としては、モータMの回転位置を検出する回転位置検出センサ42からのモータMのロータ20の回転位置θなどを挙げることができる。制御装置40からは、各種信号が出力されている。出力される信号としては、モータMを駆動する図示しないインバータへの駆動制御信号などを挙げることができる。制御装置40は、回転位置検出センサ42からのモータMのロータ20の回転位置θに基づいて、ロータ20の回転速度ωを演算している。制御装置40は、車両Vに要求される要求駆動力に基づいてモータMを駆動する駆動制御を実行する。制御装置40は、通信を介してサーバ50と各種データをやり取りする。
【0021】
サーバ50は、車両Vからのデータを収集して各種処理を行なうデータセンタDCに設置されている。サーバ50は、CPUを中心とする汎用のマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,フラッシュメモリ、記憶装置、入出力ポート、通信ポートなどを備える。サーバ50は、通信を介して車両VやサービスセンタSCと各種データをやり取りする。サーバ50は、車両Vからは、各種データを常時収集している。収集するデータとしては、車両Vの制御装置40が演算したロータ20の回転速度ωなどを挙げることができる。サーバ50は、サービスセンタSCに車両Vに関する各種情報を出力する。
【0022】
次に、こうして構成された警報システム10の動作、特に、データセンタDCのサーバ50からサービスセンタSCに警報を出力する際の動作について説明する。図4は、データセンタDCのサーバ50により実行される警報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、所定時間tref(例えば、数10msec)毎に繰り返して実行される。
【0023】
本ルーチンが実行されると、サーバ50のCPUは、ロータ20の回転速度ωを入力する処理を実行する(ステップS100)。回転速度ωは、車両Vの制御装置40で演算されたものを通信を介して入力している。図5は、入力した回転速度ωの時間変化の一例を示している。本ルーチンは、所定時間tref毎に繰り返して実行されることから、回転速度ωは、所定時間tref毎に入力される。
【0024】
こうして回転速度ωを入力すると、次式(1)を用いて回転速度ωの時間変化量dωを演算する(ステップS110)。式(1)中、「前回ω」は、前回本ルーチンを実行したときにステップS110で入力された回転速度ωである。本ルーチンを最初に実行するときには、前回ωには値0が入力される。本ルーチンは、所定時間tref毎に繰り返し実行されることから、ステップS110では、所定時間tref毎に、所定時間trefにおけるロータ20の回転速度ωの時間変化量dωを演算していることになる。
【0025】
dω=(ω-前回ω)/tref ・・・(1)
【0026】
続いて、ロータ20の回転速度ωの時間変化量dωのヒストグラムを更新する(ステップS120)。図6は、時間変化量dωのヒストグラムの一例を示す説明図である。図中、横軸は、ステップS110で演算した時間変化量dωを所定変化量dref毎に区切った区分(階級)を表している。縦軸は、ステップS110で演算した時間変化量dωが各区分(階級)に属した回数(頻度、度数)Hi(iは、値1以上の整数)を表している。ステップS120では、ステップS110で演算した時間変化量dωが属する区分における回数Hiを値1だけ増加させる演算を行なう。
【0027】
このように、区分毎の回数Hi(頻度)を演算して、ロータ20の回転速度ωの時間変化量dωのヒストグラムを作成する理由について説明する。ロータコア22の回転速度が急変すると、ロータシャフト30のかしめ部37によりかしめられたエンドプレート25は、ごく短時間であるが、ロータコア22の回転に追従できなくなる。そのため、ロータコア22とエンドプレート25との間に僅かに生じるガタ部で衝突が繰り返され、ロータコア22やエンドプレート25が摩耗し(疲労し)、ロータシャフト30のかしめ部37におけるかしめに緩みが発生することで、ロータ20が寿命を迎える。即ち、ロータコア22の回転速度ωの変化、つまり、回転速度ωの時間変化量dωが、ロータコア22の疲労に関連することから、ロータ20の回転速度ωの時間変化量dωのヒストグラムは、ロータコア22(ロータ20)に疲労度に関連する情報と言える。このことを考慮して、区分毎の回数Hi(頻度)を演算して、ロータ20の回転速度ωの時間変化量dωのヒストグラムを作成するのである。
【0028】
次に、更新したヒストグラムを用いて後述する寿命消費率LCRの演算を実行するか否かを判定する(ステップS130)。ステップS130では、前回寿命消費率LCRの演算を実行してから、所定時間trefより長い演算実行間隔texe(例えば、1日毎や1月毎など)が経過していないときには、寿命消費率LCRを実行しないと判定し、前回寿命消費率LCRの演算を実行してから演算実行間隔texeを経過しているときには、寿命消費率LCRを実行すると判定する。
【0029】
ここで、演算実行間隔texeについて説明する。上述したように、ロータコア22の回転速度が急変すると、ロータシャフト30のかしめ部37によりかしめられたエンドプレート25が、ロータコア22の回転に追従できなくなることに起因して、ロータシャフト30のかしめ部37におけるかしめに緩みが発生し、ロータ20が寿命を迎える。演算実行間隔texeは、こうしたかしめの緩みを遅延なく検出できる時間間隔として予め定められた時間である。
【0030】
ステップS130で寿命消費率LCRの演算を実行しないと判定したときには、本ルーチンを終了する。
【0031】
ステップS130で寿命消費率LCRの演算を実行すると判定したときには、各区分における回数Hiと上限回数Giとを用いて、次式(2)により、寿命消費率LCRを疲労関連情報として演算する(ステップS140)。上限回数Giは、各区分に属する時間変化量dωで回転速度ωが変化したときに、ロータシャフト30のかしめ部37におけるかしめに緩みが発生しない回数の上限値である。したがって、回数Hiが上限回数Giを超えると、ロータシャフト30のかしめ部37におけるかしめに緩みが発生すると考えられる。
【0032】
LCR=H1/G1+H2/G2+H3/G3+・・・+Hn/Gn ・・・(2)
【0033】
こうして寿命消費率LCRを演算すると、寿命消費率LCRが閾値LCRref以上であるか否かを判定する(ステップS150)。閾値LCRrefは、これ以上モータMの使用を継続するとロータシャフト30のかしめ部37におけるかしめの緩みにより故障が発生し、ロータ20が寿命を迎える可能性が高いか否かを判定するための閾値である。
【0034】
ステップS150で寿命消費率LCRが閾値LCRref未満のときには、モータMの使用を継続しても差し支えないと判断して、本ルーチンを終了する。
【0035】
ステップS150で寿命消費率LCRが閾値LCRref以上のときには、モータMの使用を継続すると、ロータシャフト30のかしめ部37におけるかしめの緩みにより故障が発生する可能性が高いと判断して、サービスセンタSCに警報を送信して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。警報を受信したサービスセンタSCは、車両VのユーザにサービスセンタSCへの入庫を促す情報を発信する。サービスセンタSCへの入庫を促されたユーザは、車両VをサービスセンタSCに入庫させると考えられる。車両VがサービスセンタSCに入力すると、サービスセンタSCは、モータMに故障が発生する前に、かしめ部37を再度かしめるなどのモータMの修理を行なうことができるから、モータMの故障を抑制できる。
【0036】
以上説明した第1実施例の疲労関連情報演算装置を備える警報システム10によれば、所定時間tref毎に、所定時間trefにおけるロータ20の回転速度ωの時間変化量dωを演算し、時間変化量dωの範囲として予め定められた区分毎に、演算した時間変化量dωが区分に含まれる回数Hi(頻度)を計数し、計数した区分毎の回数Hi(頻度)に基づいて疲労関連情報としてのロータ20の寿命を演算することにより、より適正に疲労関連情報を演算できる。
【0037】
また、区分毎に設定された上限回数Giに対する計数した区分の回数Hi(頻度)の割合に基づいてモータMを構成するロータ20の寿命(ロータシャフト30のかしめ部37によるかしめの寿命)を演算するから、モータMを構成する部品としてのロータ20の寿命を疲労関連情報としてより適正に演算できる。
【実施例2】
【0038】
図7は、本発明の第2実施例としての疲労関連情報演算装置を搭載する警報システム110の構成の概略を示す構成図である。第2実施例の警報システム110は、車両Vを複数備えている点を除いて、第1実施例の警報システム10と同一である。したがって、警報システム110において、警報システム10と同一のハード構成には同一の符号を付し、詳細の説明を省略する。
【0039】
警報システム110は、複数の車両Vと、データセンタDCに設置されるサーバ50と、を備える。サーバ50は、各車両Vに対して、図4に例示した警報処理ルーチンを実行する。
【0040】
第2実施例のサーバ50は、各車両Vについて、図4の警報処理ルーチンを実行する。そして、図4の警報処理ルーチンのステップS120で計数した区分毎の回数Hi(頻度)から、時間変化量dωの最大値dωmaxを含む区分の回数Himを各車両V(例えば、V1~V3)のかしめの緩みの代表値Vt1~Vt3として設定し、設定した代表値Vt1~Vt3を各車両Vの疲労関連情報として設定する。図8は、各車両Vにおいて、図4の警報処理ルーチンのステップS120で計数した区分毎の回数Hi(頻度)を示すヒストグラムの一例を示す。図中、各車両V1~V3において、最も大きい時間変化量dωを含む区分に対応する回数Him1~Him3に、斜線のハッチングを施している。ここで、代表値Vtを設定する理由について説明する。
【0041】
図9は、各車両Vの総走行距離に対する各車両V毎に図4の警報処理ルーチンのステップS140で演算した寿命消費率LCRの分布の一例を示す説明図である。この分布において、特定の車両V(以下、「特定車両Vref」とする)が、他の車両Vなどに比して寿命消費率LCRが有意に高いときには、特定車両Vrefで寿命消費率LCRが高い要因を検討する必要がある。特定車両Vrefの寿命消費率LCRが高い要因を検討する手法として、特定車両Vrefのヒストグラム(区分毎の回数Hi(頻度))と、特定車両Vrefと総走行距離が近い他の車両Vのヒストグラム(区分毎の回数Hi(頻度))と、を比較する手法がある。しかしながら、特定車両Vrefと総走行距離が近い他の車両Vが多数存在するときには、ヒストグラム同士を比較すると、演算負荷が高くなっててしまう。
【0042】
第2実施例のサーバ50は、こうした演算負荷を抑制するために、図4の警報処理ルーチンのステップS120で計数した区分毎の回数Hi(頻度)から、ロータコア22の疲労に最も影響を与える時間変化量dωの最大値dωmaxを含む区分の回数Himを各車両V1~V3をかしめの緩みの代表値Vt1~Vt3として設定し、代表値Vt1~Vt3を各車両Vの疲労関連情報とする。これにより、例えば、特定車両Vrefが車両V1のときには、代表値Vt1を他の代表値Vt2、Vt3と比較することにより、特定車両Vrefで寿命消費率LCRが高い要因を検討できる。
【0043】
以上説明した第2実施例の疲労関連情報演算装置を備える警報システム110によれば、所定時間tref毎に、所定時間trefにおけるロータ20の回転速度ωの時間変化量dωを演算し、時間変化量dωの範囲として予め定められた区分毎に、演算した時間変化量dωが区分に含まれる回数Hi(頻度)を計数し、区分毎の回数Hi(頻度)の中で、時間変化量dωの最大値dωmaxが含まれる区分の頻度としての代表値Vtを疲労関連情報とすることにより、より適正に疲労関連情報を演算できる。
【0044】
第1、第2実施例の疲労関連情報演算装置を備える警報システム10、110では、モータMを構成する部品としてのロータシャフト30の寿命消費率LCRを演算している。しかしながら、モータMの疲労度に関連するパラメータを演算すればよく、寿命消費率LCRに代えて、値1から寿命消費率LCRを減じた余寿命などを演算してもよい。また、区分毎の回数Hi(頻度)としてのヒストグラムを、疲労関連情報としてもよい。
【0045】
第1、第2実施例の疲労関連情報演算装置を備える警報システム10、110では、サーバ50が、図4に例示した警報処理ルーチンを実行している。しかしながら、図4に例示した警報処理ルーチンの一部または全てを車両Vの制御装置40で実行してもよい。
【0046】
第1、第2実施例では、本発明を電気自動車としての車両Vに適用する場合について例示している。しかしながら、本発明は、モータを搭載する他の装置、例えば、電動ドリルやサイクロン式の掃除機、洗濯機や、モータを搭載していないが作動に伴って何らかの応力が発生する他の装置に適用しても構わない。
【0047】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。第1、第2実施例では、サーバ50が「部品寿命推定装置」に相当する。
【0048】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0049】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、疲労関連情報演算装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 警報システム、20 ロータ、22 ロータコア、23 永久磁石、24 エンドプレート、25 エンドプレート、30 ロータシャフト、31 入出力部、32 連結部、33 取付部、34 大径部、35 中径部、36 小径部、37 かしめ部、40 制御装置、42 回転位置検出センサ、50 サーバ、DC データセンタ、M モータ、SC サービスセンタ、V 車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9