(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】道路鋲システム、道路鋲の制御方法および道路鋲の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
E01F 9/559 20160101AFI20241106BHJP
【FI】
E01F9/559
(21)【出願番号】P 2021191684
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】及川 晋
(72)【発明者】
【氏名】中谷 浩之
(72)【発明者】
【氏名】北浜 謙一
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-526605(JP,A)
【文献】特開2013-096200(JP,A)
【文献】特開2015-090599(JP,A)
【文献】特開2012-046914(JP,A)
【文献】米国特許第06384742(US,B1)
【文献】韓国登録特許第10-2300183(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/559
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩道と車道とが重複する重複領域の中または外縁に埋設される複数の道路鋲を制御する制御システムと、前記制御システムによって制御される複数の前記道路鋲と、を備える道路鋲システムであって、
前記道路鋲は、
予め設定された識別情報を記憶する端末記憶部と、
予め設定された第1方向または前記第1方向と異なる第2方向に向けて第1色調または前記第1色調と異なる第2色調の光を発光する発光部と、
前記識別情報に基づいて、予め設定された前記制御システムから前記発光部の動作の指示信号を受信する無線通信部と、
を有し、
前記制御システムは、
前記重複領域が、歩行者の通行を優先させる第1状態か、自動車の通行を優先させる第2状態か、を判断する判断部と、
前記判断の結果に応じて、前記道路鋲に対して前記発光の方向および色調を指示する指示信号を前記道路鋲に送信する指示部と、
を有
し、
前記判断部は、
前記重複領域の中または周辺の歩道に歩行者を検出する場合、または、前記重複領域の中または周辺の車道に自動車を検出しない場合には、前記判断の結果を、前記第1状態とし、
前記判断の結果が前記第1状態ではない場合には、前記判断の結果を前記第2状態とする、
道路鋲システム。
【請求項2】
前記指示部は、
前記判断の結果が前記第1状態の場合には前記第1方向に前記第1色調を発光するとともに第2方向に前記第2色調を発光することを指示し、
前記判断の結果が前記第2状態の場合には前記第1方向に前記第2色調を発光するとともに第2方向に前記第1色調を発光することを指示する、
請求項1に記載の道路鋲システム。
【請求項3】
前記道路鋲は、周辺の動体を検出したことを示す検出信号を生成する動体検出部をさらに有し、前記無線通信部は前記検出信号を前記制御システムに送信するものであって、
前記判断部は、前記検出信号に基づいて、移動体が前記重複領域に進入する可能性があるか否かをさらに判断し、
前記指示部は、前記判断の結果が前記第1状態の場合に、前記重複領域に自動車が進入する可能性がある場合には、前記第1方向に前記第2色調を発光することを指示する、
請求項1または2に記載の道路鋲システム。
【請求項4】
前記制御システムは、
複数の前記道路鋲のそれぞれと無線通信可能に接続し、前記識別情報に基づいて、前記複数の前記道路鋲を制御するグループ制御部を有するグループ制御装置と、
複数の前記グループ制御装置と通信可能に接続し、前記グループ制御装置を介して、前記識別情報に基づいて、前記複数の前記道路鋲を制御する全体制御装置と、
をさらに備える、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の道路鋲システム。
【請求項5】
前記端末記憶部は、前記識別情報として、固有の固定位置情報を記憶する、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の道路鋲システム。
【請求項6】
前記制御システムは、
前記固定位置情報に基づいて、前記第1状態または前記第2状態において、前記重複領域の外縁に沿った位置に埋設されている前記道路鋲に対して発光動作を指示する
請求項
5に記載の道路鋲システム。
【請求項7】
歩道と車道とが重複する重複領域の中または外縁に埋設される複数の道路鋲を制御する制御システムと、前記制御システムによって制御される複数の前記道路鋲と、が実行する道路鋲の制御方法であって、
前記道路鋲は、
予め設定された識別情報を記憶する端末記憶ステップと、
予め設定された第1方向または前記第1方向と異なる第2方向に向けて第1色調または前記第1色調と異なる第2色調の光を発光する発光ステップと、
前記識別情報に基づいて、予め設定された前記制御システムから前記発光ステップの動作の指示信号を受信する無線通信ステップと、
を有し、
前記制御システムは、
前記重複領域が、歩行者の通行を優先させる第1状態か、自動車の通行を優先させる第2状態か、を判断する判断ステップと、
前記判断の結果に応じて、前記道路鋲に対して前記発光の方向および色調を指示する指示信号を前記道路鋲に送信する指示ステップと、
を有
し、
前記判断ステップは、
前記重複領域の中または周辺の歩道に歩行者を検出する場合、または、前記重複領域の中または周辺の車道に自動車を検出しない場合には、前記判断の結果を、前記第1状態とし、
前記判断の結果が前記第1状態ではない場合には、前記判断の結果を前記第2状態とする、
道路鋲の制御方法。
【請求項8】
歩道と車道とが重複する重複領域の中または外縁に埋設される複数の道路鋲を制御する制御システムと、前記制御システムによって制御される複数の前記道路鋲と、に実行させる道路鋲の制御プログラムであって、
前記道路鋲は、
予め設定された識別情報を記憶する端末記憶ステップと、
予め設定された第1方向または前記第1方向と異なる第2方向に向けて第1色調または前記第1色調と異なる第2色調の光を発光する発光ステップと、
前記識別情報に基づいて、予め設定された前記制御システムから前記発光ステップの動作の指示信号を受信する無線通信ステップと、
を有し、
前記制御システムは、
前記重複領域が、歩行者の通行を優先させる第1状態か、自動車の通行を優先させる第2状態か、を判断する判断ステップと、
前記判断の結果に応じて、前記道路鋲に対して前記発光の方向および色調を指示する指示信号を前記道路鋲に送信する指示ステップと、
を有
し、
前記判断ステップは、
前記重複領域の中または周辺の歩道に歩行者を検出する場合、または、前記重複領域の中または周辺の車道に自動車を検出しない場合には、前記判断の結果を、前記第1状態とし、
前記判断の結果が前記第1状態ではない場合には、前記判断の結果を前記第2状態とする、
道路鋲の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路鋲システム、道路鋲の制御方法および道路鋲の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路の利便性を向上させるための様々な取り組みが行われている。例えば、太陽電池と発光部とを有し、太陽光を利用することにより発光部を発光させる道路鋲が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術は、太陽電池が太陽光を受けている間は発光部が発光するが、太陽電池から得られる電力は限られている。一方、さらに利便性を向上させた道路鋲システムの開発が期待されている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、好適な視認性を有する道路鋲システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる道路鋲システムは、歩道と車道とが重複する重複領域の中または外縁に埋設される複数の道路鋲を制御する制御システムと、制御システムによって制御される複数の道路鋲と、を有する。上記道路鋲は、端末記憶部と、発光部と、無線通信部と、を有する。端末記憶部は、予め設定された識別情報を記憶する。発光部は、予め設定された第1方向または第1方向と異なる第2方向に向けて第1色調または第1色調と異なる第2色調の光を発光する。無線通信部は、識別情報に基づいて、予め設定された制御システムから発光部の動作の指示信号を受信する。上記制御システムは、判断部と、指示部と、を有する。判断部は、重複領域が、歩行者の通行を優先させる第1状態か、自動車の通行を優先させる第2状態か、を判断する。指示部は、判断の結果に応じて、道路鋲に対して発光の方向および色調を指示する指示信号を道路鋲に送信する。
【0007】
このような構成により、道路鋲システムは、歩行者および自動車に対して好適に光を発することができる。
【0008】
上記道路鋲システムにおいて、指示部は、判断の結果が第1状態の場合には第1方向に第1色調を発光するとともに第2方向に第2色調を発光することを指示するものであってもよい。この場合、指示部は、判断の結果が第2状態の場合には第1方向に第2色調を発光するとともに第2方向に第1色調を発光することを指示するものであってもよい。これにより道路鋲システムは、第1状態と第2状態とを周辺に明示できる。
【0009】
上記道路鋲システムにおいて道路鋲は、周辺の動体を検出したことを示す検出信号を生成する動体検出部をさらに有し、無線通信部は検出信号を制御システムに送信するものであってもよい。この場合、判断部は、検出信号に基づいて、移動体が重複領域に進入する可能性があるか否かをさらに判断し、指示部は、判断の結果が第1状態の場合に、重複領域に自動車が進入する可能性がある場合には、第1方向に第2色調を発光することを指示する。これにより、道路鋲システムは、重複領域に自動車が進入する可能性があることを周辺に視認させることができる。
【0010】
上記道路鋲システムにおいて、判断部は、重複領域の中または周辺の歩道に歩行者を検出する場合、または、重複領域の中または周辺の車道に自動車を検出しない場合には、判断の結果を、第1状態とするものであってもよい。この場合、判断部は、判断の結果が第1状態ではない場合に、判断の結果を、第2状態とするものであってもよい。これにより道路鋲システムは、重複領域において歩行者と自動車が接触する可能性を抑制できる。
【0011】
上記道路鋲システムにおいて制御システムは、グループ制御装置と、全体制御装置とを有するものであってもよい。グループ制御装置は、複数の道路鋲のそれぞれと無線通信可能に接続し、識別情報に基づいて、複数の道路鋲を制御するグループ制御部を有する。全体制御装置は、複数のグループ制御装置と通信可能に接続し、グループ制御装置を介して、識別情報に基づいて、複数の道路鋲を制御する。これにより道路鋲システムは、広範囲の道路鋲を一括して制御できる。
【0012】
上記道路鋲システムにおいて記憶部は、識別情報として、固有の固定位置情報を記憶するものであってもよい。これにより、道路鋲システムは、位置情報に紐づいた制御を行うことができる。
【0013】
上記道路鋲システムにおいて、制御システムは、固定位置情報に基づいて、第1状態または第2状態において、重複領域の外縁に沿った位置に埋設されている道路鋲に対して発光動作を指示するものであってもよい。これにより道路鋲システムは、簡便に複数の道路鋲を制御できる。
【0014】
本発明にかかる道路鋲の制御方法は、歩道と車道とが重複する重複領域の中または外縁に埋設される複数の道路鋲を制御する制御システムと、制御システムによって制御される複数の道路鋲と、が以下の方法を実行する。道路鋲は、端末記憶ステップにおいて、予め設定された識別情報を記憶する。道路鋲は、発光ステップにおいて、予め設定された第1方向または第1方向と異なる第2方向に向けて第1色調または第1色調と異なる第2色調の光を発光する。道路鋲は、無線通信ステップにおいて、識別情報に基づいて、予め設定された制御システムから発光ステップの動作の指示信号を受信する。制御システムは、判断ステップにおいて、重複領域が、歩行者の通行を優先させる第1状態か、自動車の通行を優先させる第2状態か、を判断する。制御システムは、指示ステップにおいて、判断の結果に応じて、道路鋲に対して発光の方向および色調を指示する指示信号を道路鋲に送信する。
【0015】
このような方法により、道路鋲システムは、歩行者および自動車に対して好適に光を発することができる。
【0016】
本発明にかかる道路鋲の制御プログラムは、歩道と車道とが重複する重複領域の中または外縁に埋設される複数の道路鋲を制御する制御システムと、前記制御システムによって制御される複数の前記道路鋲と、に以下の処理を実行させる。道路鋲は、端末記憶ステップにおいて、予め設定された識別情報を記憶する。道路鋲は、発光ステップにおいて、予め設定された第1方向または第1方向と異なる第2方向に向けて第1色調または第1色調と異なる第2色調の光を発光する。道路鋲は、無線通信ステップにおいて、識別情報に基づいて、予め設定された制御システムから発光ステップの動作の指示信号を受信する。制御システムは、判断ステップにおいて、重複領域が、歩行者の通行を優先させる第1状態か、自動車の通行を優先させる第2状態か、を判断する。制御システムは、指示ステップにおいて、判断の結果に応じて、道路鋲に対して発光の方向および色調を指示する指示信号を道路鋲に送信する。
【0017】
このようなプログラムにより、道路鋲システムは、歩行者および自動車に対して好適に光を発することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、好適な視認性を有する道路鋲システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態にかかる道路鋲の構成を示す断面図である。
【
図3】道路鋲システムにかかるグループの構成を示す平面図である。
【
図4】実施の形態にかかる道路鋲システムの全体概要を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態にかかる道路鋲のブロック図である。
【
図6】実施の形態にかかるグループ制御装置のブロック図である。
【
図7】実施の形態にかかる全体制御装置のブロック図である。
【
図8】全体制御装置が記憶するグループ情報を示す図である。
【
図9】実施の形態にかかる道路鋲システムの動作の例を示す第1図である。
【
図10】実施の形態にかかる道路鋲システムの動作の例を示す第2図である。
【
図11】実施の形態にかかる道路鋲システムの動作の例を示す第3図である。
【
図12】実施の形態にかかる道路鋲システムの動作の例を示す第4図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0021】
<実施の形態>
以下、実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態にかかる道路鋲の構成を示す断面図である。
図1は、道路90および歩道91の延伸方向に直交する面における断面を示している。また
図1は、道路90に埋設された道路鋲10の断面を模式的に示している。
図1はさらに、道路90と歩道91との間に埋設され配管ボックス81と、歩道91上に設置された多目的ポール82を含む。
【0022】
道路鋲10は、道路上に露出する本体ブロック10Uと、道路に埋め込まれる電源ブロック10Lと、を有している。道路鋲10は、道路90の任意の位置において、本体ブロック10Uの少なくとも一部が露出するように埋設される。道路鋲10は、金属または樹脂の筐体を有し、外部から雨水や泥などの異物が侵入しない構造となっている。本体ブロック10Uは、端末制御部11、無線通信部12、発光部13、動体検出部14、等を含む制御基板を有する。
【0023】
端末制御部11は、制御基板に含まれる各構成から適宜信号を受け取り、または、各構成を制御する。端末制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMCU(Micro Controller Unit)と称される集積回路を含む。
【0024】
無線通信部12は、複数の道路鋲10を制御する制御システムであるグループ制御装置20と相互通信を行う。無線通信部12は、制御基板に実装され、制御システム(グループ制御装置20)との通信を制御する送受信制御回路と、信号の送受信を行うアンテナ部とを含む。無線通信部12は、例えば、920メガヘルツ帯の電波を利用してグループ制御装置20と通信を行う。なお、無線通信部12が使用する周波数帯は一例であって、他の周波数帯位置を使用してもよい。
【0025】
第1発光部13Aおよび第2発光部13Bは、LED(light emitting diode)を含み、周辺に対して予め設定された光を発する。なお、本実施の形態において、単に「発光部13」と記載した場合には、第1発光部13Aと第2発光部13Bとを総称して示しているものとする。
【0026】
発光部13は、それぞれ異なる方向に発光するように設置されている。本実施の形態において、2つの発光部13は、互いに反対方向に向けて発光するように設置されている。以降、本実施の形態において、第1発光部13Aが発光する方向を、第1方向と称し、第2発光部13Bが発光する方向を、第2方向と称する。
【0027】
本体ブロック10Uは、2つの発光部13の外側に光を透過する窓を有している。発光部13が発光することにより、周辺の歩行者や自動車の運転手などは、道路鋲10から発光される光を視認できる。2つの発光部13は、同じ仕様のLEDを含んでもよいし、異なる仕様のLEDを含んでもよい。2つの発光部13は、色調、輝度、発光タイミング等が別になるように制御され得る。
【0028】
動体検出部14は、動体センサであって、赤外線やマイクロ波等の電磁波を利用して周辺の動体を検出する。動体検出部14は、電磁波を受信するための透過部が道路鋲10の筐体から露出している。
【0029】
電源ブロック10Lは、本体ブロック10Uの下方に位置し、道路90に埋設されている。電源ブロック10Lは蓄電池16および変流器17を有する。
【0030】
蓄電池16は、後述する変流器17に接続しており、変流器17から電力の供給を受ける。蓄電池16は、変流器17から受ける交流電流を適宜直流に変換し、所定の電圧を受けて蓄電する。蓄電池16は、蓄電した電力を、本体ブロック10Uに含まれる制御基板に供給する。これにより道路鋲10は、安定した電力により好適な動作を実現する。
【0031】
変流器17は、道路鋲10の付近に埋設されている交流電力の電力線に併設される。変流器17は、交流電力線の周囲にコイルを有する。これにより変流器17は、交流電流を生じる。変流器17は生じた電流を、電線(電力供給線)を介して蓄電池16に供給する。上述の構成により、道路鋲10は、好適に所望の電力を蓄えることができる。
【0032】
道路90と歩道91との間には、配管ボックス81が敷設されている。配管ボックス81は例えばコンクリートにより形成された矩形状かつ中空の配管設備であって、中空部に送電線、配電線または光ケーブルなどの社会基盤設備を内包する。
図1に示す配管ボックス81は、中空部に電力線80を有している。変流器17は、電力線80の周囲を鉄などの磁性体およびコイルが囲む。これにより変流器17に電流が生じる。
【0033】
以上、道路鋲10について説明した。
図1に示した道路鋲10は、本体ブロック10Uと電源ブロック10Lの蓄電池16を格納している部分とが一体となった構成を示している。しかし、道路鋲10は、本体ブロック10Uと電源ブロック10Lとが離間していてもよい。これにより、道路鋲10の設置の自由度が向上する。
【0034】
次に、グループ制御装置20について説明する。
図1に示すグループ制御装置20は、多目的ポール82に内蔵されている。多目的ポール82は、道路の所定の位置に配置され、無線ネットワークや携帯電話の基地局、監視カメラまたは街灯などの様々な設備を有する。
【0035】
グループ制御装置20は、複数の道路鋲10と通信し、通信する道路鋲10のそれぞれを制御する。グループ制御装置20は、無線通信により、例えば数十あるいは数百の道路鋲10と通信する。
【0036】
次に、
図2を参照して、道路鋲10およびグループ制御装置20についてさらに説明する。
図2は、道路鋲システムの構成を示す平面図である。
図2は道路鋲システムが設置されている街路を示している。
図2は、上方向が北、下方向が南、右方向が東、左方向が西である。
【0037】
図2において、道路90は、南北方向に延びている。また道路90の西側には歩道91が道路90に平行して延伸している。道路90と歩道91との境界付近には、電力線80が道路90に平行に埋設されている。さらに歩道91の中間部から西に向かって脇道92が伸びている。
【0038】
図2の道路90において、道路鋲10は、道路90の中央に、数メートル毎に等間隔に埋設されている。またそれぞれの道路鋲10は、変流器17が電力線80に併設されている。このように、道路鋲10は、それぞれが独立して電源となる電力を確保する。これにより、道路鋲10は、例えば故障などの不具合を生じる道路鋲10が他の道路鋲10に不具合の影響を及ぼすことがない。
【0039】
道路90に埋設されている道路鋲10は、発光部13のうち、第1発光部13Aが南に向き、第2発光部13Bが北に向いているように設定されている。すなわち、道路90に埋設されている道路鋲10は、第1方向が南向きであり、第2方向が北向きに設定されている。
【0040】
図2において、道路90と脇道92とが合流している地点付近に、グループ制御装置20が設置されている。グループ制御装置20は、
図2に示される複数の道路鋲10を制御する。すなわち、グループ制御装置20は、グループ制御装置20と通信する複数の道路鋲10を自機が管轄するグループとして制御する。
【0041】
道路90には、南から自動車が北に向かって走行している。このような場合に例えば道路鋲10は、動体検出部14が自動車を検出し、自動車が存在する南方向すなわち第1方向に向かって、緑色の光を発する。また例えば、道路鋲10は、自動車の存在する南方向の反対方向である北方向すなわち第2方向に向かって、赤い光を発する。
【0042】
次に、道路鋲10の異なる態様について説明する。脇道92の北側には、電力供給装置70が設置されている。電力供給装置70は、複数の道路鋲10に対して電力を供給するための装置である。電力供給装置70は、生成した電力を複数の道路鋲10に供給できるように、電力供給線が複数の道路鋲10と鎖状に繋がっている。脇道92は、電力線が埋設されていない。このような道路に道路鋲10を設置する場合、道路鋲10は、電力供給装置70から電力の供給を受けることができる。
【0043】
次に、
図3を参照して道路鋲システムについてさらに説明する。
図3は、道路鋲システムにかかるグループの構成を示す平面図である。
図3は、
図2に示した街路よりもさらに広域の街路であって、所定の市街地を示している。なお、
図3に示す平面図は、
図2と同様に、方角が定義されている。
図3において、東西または南北に延びる太い直線は、道路90を示している。道路90に囲まれたグレーの部分は建物等を示している。
【0044】
図3には、3つのグループ制御装置20(20A、20Bおよび20C)が設置されている。またそれぞれのグループ制御装置20は、矩形の点線によって囲まれている。矩形の点線は、それぞれのグループ制御装置20が管轄する道路鋲10が配置される領域を示している。すなわち、グループ制御装置20Aは、領域200Aの中に配置された道路鋲10を制御する。グループ制御装置20Bは、領域200Bの中に配置された道路鋲10を制御する。そしてグループ制御装置20Cは、領域200C中に配置された道路鋲10を制御する。
【0045】
次に、
図4を参照して、道路鋲システムについてさらに説明する。
図4は、実施の形態にかかる道路鋲システムの全体概要を示すブロック図である。
図4は、道路鋲システム1のブロック図が示されている。道路鋲システム1は、制御システム2と、制御システム2により制御される複数の道路鋲10を有する。
【0046】
制御システム2は、複数のグループ制御装置20と、全体制御装置30と、を有する。複数のグループ制御装置20と全体制御装置30とは、ネットワークNを介して通信可能に接続している。グループ制御装置20は上述のとおり、無線通信可能に接続する、自機のグループである複数の道路鋲10を制御する。グループ制御装置20は、道路鋲10から受け取った情報を、全体制御装置30に供給する。またグループ制御装置20は、全体制御装置30から道路鋲10に対する指示信号を受け取り、受け取った指示信号を、道路鋲10に供給する。
【0047】
全体制御装置30は、ネットワークNを介して複数のグループ制御装置20に接続する。全体制御装置30は、グループ制御装置20から道路鋲10についての情報を受け取る。また全体制御装置30は、受け取った情報に応じて、グループ制御装置20に対して道路鋲10を制御するための指示信号を供給する。
【0048】
なお、道路鋲10、グループ制御装置20および全体制御装置30は、例えばフラッシュメモリ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)およびCPU(Central Processing Unit)等が実装された回路基板を含み、メモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、システムの機能を実現する。また道路鋲10、グループ制御装置20および全体制御装置30は、不揮発性メモリに予め記憶された制御プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。
【0049】
次に、
図5を参照して、道路鋲10の機能について説明する。
図5は、実施の形態にかかる道路鋲のブロック図である。道路鋲10は、端末制御部11、無線通信部12、発光部13、動体検出部14および端末記憶部15を有する。なお、上述の各構成は、通信バスにより適宜、通信可能に接続されている。
【0050】
端末制御部11は、道路鋲10の各構成に接続し、道路鋲10を制御する。端末制御部11は、発光制御部110および検出信号取得部111を有する。発光制御部110は、無線通信部12を介して指示信号を受信し、受信する指示信号に従い、発光部13を制御する。発光制御部110は、例えば発光部13がR(赤)、G(緑)およびB(青)の3色のLEDを一組とするものであった場合には、それぞれの色の発光頻度等を指示する。検出信号取得部111は、動体検出部14が生成する検出信号を取得し、取得した検出信号を、無線通信部12を介してグループ制御装置20に対して送信する。
【0051】
無線通信部12は、制御システム2(すなわちグループ制御装置20)との無線通信を行う。無線通信部12は、グループ制御装置20との無線通信を実現するための送信回路、受信回路、およびアンテナ等を含む。無線通信部12は、グループ制御装置20から、発光部の動作の指示信号を受信する。無線通信部12は、指示信号を受信すると、受信した指示信号を、端末制御部11に供給する。無線通信部12はまた、端末制御部11から検出信号を受け取ると、受け取った検出信号を、グループ制御装置20に対して送信する。
【0052】
なお、無線通信部12は、上述の無線通信を行う際に、制御システム2に自機を識別させるための情報として、端末記憶部15に記憶している固定位置情報を利用する。すなわち、例えば無線通信部12が検出信号をグループ制御装置20に送信する際には、固定位置情報の送信も併せて行う。また無線通信部12は、グループ制御装置20から所定の指示信号を受け取る際、固定位置情報と共に指示信号を受け取る。
【0053】
ここで、「固定位置情報」とは、予め設定された位置情報であって、制御システム2が自機を識別可能な固有の識別情報でもある。位置情報は、道路鋲10が埋設される位置の位置情報に対応するものであって、固定された情報である。例えば、固定位置情報は、緯度および経度と紐づいた所定の地図情報において、道路鋲10が埋設される位置を指定することにより決定される。これにより道路鋲10は、自機が埋設されている位置に紐づいた発光動作の指示を受けることができる。
【0054】
発光部13は、発光制御部110からの指示に従い、指示に応じた色および頻度により道路鋲10の周辺に光を発する。発光部13は、第1発光部13Aと、第2発光部13Bとを含む。第1発光部13Aと第2発光部13Bとは互いに異なる方向に向けて光を発するように設定されている。
【0055】
動体検出部14は、動体を検出すると、検出信号を生成する。動体検出部14は生成した検出信号を、検出信号取得部111に供給する。
【0056】
端末記憶部15は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)またはSSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを含む。端末記憶部15は、上述の固定位置情報150を記憶する。端末記憶部15は、道路鋲10が埋設される前に予め固定位置情報150を記憶する。端末記憶部15は、上書き禁止の記憶領域であってもよい。端末記憶部15は、CPUに付随するレジスタであってもよい。端末記憶部15は、道路鋲10が埋設された後に、制御システム2により固定位置情報150が更新されてもよい。
【0057】
以上、道路鋲10について説明した。このような構成により、道路鋲10は、固定位置情報を識別子として利用し、グループ制御装置20から位置情報に紐づいた指示を受けることができる。
【0058】
次に、
図6を参照して、グループ制御装置20の機能について説明する。
図6は、実施の形態にかかるグループ制御装置のブロック図である。グループ制御装置20は、グループ制御部21、グループ通信部22およびグループ記憶部23を有する。
【0059】
グループ制御部21は、グループ制御装置20が制御する複数の道路鋲10に対して適宜、指示信号を送信する。またグループ制御部21は、全体制御装置30から指示信号を受け取ると、受け取った指示信号に応じて、道路鋲10に指示信号を送信する。グループ制御部21は、上述の機能を実現するため、グループ通信部22と接続し、種々の信号をやりとりする。またグループ制御部21は、必要に応じてグループ記憶部23から端末情報を読み取る。またグループ制御部21は、必要に応じてグループ記憶部23の端末情報を更新する。
【0060】
グループ通信部22は、複数の道路鋲10のそれぞれと通信する。またグループ通信部22は、全体制御装置30とも通信する。グループ通信部22は、道路鋲10および全体制御装置30との通信を実現するための送信回路、受信回路、インタフェース等を含む。なお、グループ通信部22が道路鋲10と通信する場合の通信方式と、グループ通信部22が全体制御装置30と通信する場合の通信方式とは、異なるものであってもよいし、同じものであってもよい。
【0061】
グループ記憶部23は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。グループ記憶部23は、端末情報230を記憶する。端末情報230は、グループ制御装置20が制御する道路鋲10の固定位置情報150を少なくとも含む。また端末情報230は、それぞれの道路鋲10における発光部13の動作状態や、動体検出部14が検出信号を送信しているか否かを含んでいてもよい。端末情報230に、発光部13の動作状態や検出信号の状態を含む場合、グループ制御部21は、端末情報230を適宜更新する。以上の構成により、グループ制御装置20は、グループ制御装置20に接続する複数の道路鋲を一括して制御できる。
【0062】
次に、
図7を参照して、全体制御装置30の機能について説明する。
図7は、実施の形態にかかる全体制御装置のブロック図である。全体制御装置30は、例えばコンピュータである。全体制御装置30は、全体制御部31、全体通信部32および全体記憶部33を有する。
【0063】
全体制御部31は、CPU等の演算回路を含み、道路鋲システム1の全体を制御する。より具体的には、全体制御部31は、グループ制御装置20を介して接続する複数の道路鋲10を制御する。全体制御部31は、指示部311および判断部312を有する。
【0064】
判断部312は、重複領域が、歩行者の通行を優先させる第1状態か、自動車の通行を優先させる第2状態か、を判断する。
【0065】
ここで「重複領域」とは、歩道と車道とが重複する領域である。重複領域は、歩行者が通行する領域でもあり、自動車が通行する領域でもある。重複領域は、歩行者と自動車とが接触する可能性がある。そこで、道路鋲システム1は、重複領域の外縁に設置された道路鋲10を利用して、歩行者の通行を優先させる第1状態と、自動車の通行を優先させる第2状態とを周辺の歩行者および自動車に示す機能を有している。なお、制御システム2は、固定位置情報に基づいて、重複領域に沿った位置に埋設されている道路鋲10に対して発光動作を指示する。これにより道路鋲システムは、簡便に複数の道路鋲を制御できる。
【0066】
判断部312は、重複領域が第1状態か第2状態かを、種々のパラメータを利用して判断できる。例えば判断部312は、時刻に応じて第1状態か第2状態かを判断してもよい。また判断部312は、周辺の移動体の状況に応じて第1状態か第2状態かを判断してもよい。判断部312は、周辺の移動体の状況を、発光制御部110の固定位置情報と検出信号から判断できる。そのため、例えば判断部312は、歩行者の通行を優先させる第1状態であると判断している場合に、かかる重複領域に自動車が進入する可能性がある場合には、歩行者に対して注意を促すための光を発することを判断できる。
【0067】
指示部311は、判断部312が行う判断の結果に応じて、道路鋲10に対して発光の方向および色調を指示する指示信号を送信する。指示部311は、かかる指示信号を、全体通信部32を介して、グループ制御装置20に供給する。グループ制御装置20は、指示が適用される道路鋲10に対して指示信号を送信する。
【0068】
例えば指示部311は、判断部312による判断の結果が第1状態の場合には歩行者の方向に通行を許可することを示す色調の光を発することを指示する。また指示部311は、判断部312による判断の結果が第1状態の場合には自動車の方向に通行を許可しないことを示す色調の光を発することを指示する。また指示部311は、判断部312による判断の結果が第2状態の場合には歩行者の方向に通行を許可しないことを示す色調の光を発することを指示する。また指示部311は、判断部312による判断の結果が第2状態の場合には自動車の方向に通行を許可することを示す色調の光を発することを指示する。
【0069】
また例えば、歩行者の通行が優先の状態にも拘わらず自動車が進入してきた場合に、判断部312は歩行者に対して注意を促すための光を発することを判断する。この場合、指示部311は、歩行者の方向に対して注意を促す色調の光を発することを指示する。
【0070】
以上に示したように、全体制御部31は、好適に第1状態か第2状態かを判断し、それぞれの状態に対応した発光動作を行うことができる。
【0071】
全体通信部32は、ネットワークNを介して、グループ制御装置20と通信をする。全体記憶部33は、グループ制御装置20との通信を実現するための送信回路、受信回路、インタフェース等を含む。全体通信部32は、グループ制御装置20から受信した検出信号を、全体制御部31に供給する。また全体通信部32は、全体制御部31から受け取った指示信号を、グループ制御装置20に送信する。
【0072】
全体記憶部33は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。全体記憶部33は、全グループ情報330を記憶する。全グループ情報330は、それぞれのグループ制御装置20が管理する端末情報230に含まれる道路鋲10それぞれの固定位置情報と、道路鋲10それぞれの発光部13の動作状態と、動体検出部14の検出信号の状態と、を含む。全体制御装置30は、全体記憶部33に全グループ情報330を記憶し、適宜更新する。これにより全体制御装置30は、道路鋲10それぞれの状態を管理する。すなわち、全体制御装置30は、全てのグループが有する複数の道路鋲を一括して制御できる。
【0073】
また全体記憶部33は、重複領域情報331を記憶する。重複領域情報は、道路鋲10が埋設されている領域における重複領域を示す情報である。重複領域情報331は、位置情報に対応した情報である。そのため、全体制御部31の判断部312は、全グループ情報330に含まれる道路鋲10の固定位置情報と、重複領域情報331と、から、重複領域における処理を実行できる。
【0074】
次に、
図8を参照して、全グループ情報について説明する。
図8は、全体制御装置が記憶する全グループ情報を示す図である。
図8に示す表は、全グループ情報330の例を示している。全グループ情報330は、固定位置情報、発光部の状態、検出信号の状態、およびグループ属性情報が含まれる。
【0075】
固定位置情報は道路鋲10それぞれが有する位置情報である。例えば、表M30の一行目には、固定位置情報150でもある「E137.16021,N35.05075」が示されている。
【0076】
かかる固定位置情報150の右側には、この道路鋲10が有する2つの発光部13の状態として「第1発光部の状態」が「0:1:0」と示され、「第2発光部の状態」が「1:0:0」と示されている。これらは、発光部13のRGBそれぞれの動作状態を示すものであって、「0」がオフを示し、「1」がオンを示す。すなわち、1行目の道路鋲10は、第1発光部が緑色に点灯し、第2発光部が赤く点灯しているという状態である。同様に、例えば3行目の道路鋲10は、発光部13が点灯していない状態である。また、4行目の道路鋲10は、第1発光部が青く点灯しており、第2発光部は点灯していない状態である。
【0077】
全グループ情報330において、検出信号の状態は、「HI」または「LO」により示される。「HI」は、動体検出部が動体を検出している状態を示し、「LO」は、動体検出部が動体を検出していない状態を示している。1行目の道路鋲10において、検出信号の状態は、「LO」が示されている。すなわち1行目の道路鋲10は、動体を検出していない状態である。また2行目と3行目の道路鋲10は、動体を検出している状態である。
【0078】
検出信号の状態の右側には、グループ属性情報が示されている。グループ属性情報は、同じ行に示された固定位置情報150にかかる道路鋲10が、どのグループに属しているかを示している。例えば1行目から3行目までの道路鋲10は、グループ制御装置20Aが制御することが示されている。また4行目と5行目の道路鋲10は、グループ制御装置20Bが制御することが示されている。
【0079】
以上、全グループ情報330について説明した。全グループ情報330のうち、同じグループ属性情報を有する情報群は、そのグループの端末情報230と同じである。すなわち、全グループ情報330はグループ制御装置20それぞれが有する端末情報230の集合でもある。また端末情報230は、グループ制御装置20が有する道路鋲10それぞれの固定位置情報150を含む。
【0080】
なお、全グループ情報のうち発光部13の状態および検出信号の状態は、常に変化し得る。これらの情報は、例えば1秒ごとに更新される。よって、全グループ情報330は、例えば予め設定された期間分の履歴を記憶するものであってもよい。全体制御部31は、予め設定された期間分の履歴から、移動体の存在を推定してもよい。
【0081】
次に、
図9を参照して、重複領域における道路鋲システム1の動作の例について説明する。
図9は、実施の形態にかかる道路鋲システムの動作の例を示す第1の図である。
図9は南北に延びる道路90と、道路90の西側において道路90と平行に伸びる歩道91と、歩道91の途中に出入口を有する施設93とが示されている。
【0082】
また施設93と道路90との間には、重複領域D1が示されている。重複領域D1は、歩道と車道とが重複する領域である。施設93は車の乗り入れを許容する施設である。そのため、図に示すように、施設93を利用する自動車V1は、重複領域D1を横断する。一方、図に示すように、歩行者P1もまた、歩道91に沿って、重複領域D1を歩行する。重複領域D1は、歩行者P1が通行する領域でもあり、自動車V1が通行する領域でもある。
【0083】
このような状況の街路において、重複領域D1の外縁に沿った位置であって、道路90と歩道91との境界部には、複数の道路鋲10が埋設されている。
図9に示す例において、道路鋲システム1は、重複領域D1において歩行者を優先とする第1状態と、自動車を優先とする第2状態とを判断し、判断の結果に応じて発光部13を動作させる。
【0084】
図に示す例において、道路鋲10は、第1発光部13Aが図に示す第1方向に光を発するように設定されている。また道路鋲10は、第2発光部13Bが図に示す第2方向に光を発するように設定されている。
【0085】
ここで、第1方向は、道路鋲10から歩道91に向かう方向である。すなわち第1方向に光を発することにより、道路鋲10は歩行者P1に対して光を認識させることができる。第2方向とは、道路鋲10から道路90に向かう方向である。すなわち第2方向に光を発することにより、道路鋲10は自動車V1に対して光を認識させることができる。このような構成により、道路鋲システムは、歩行者および自動車に対して光を発することができる。
【0086】
次に、
図10を参照して第1状態における道路鋲システム1の動作について説明する。
図10は、実施の形態にかかる道路鋲システムの動作の例を示す第2図である。
図10に示す街路は、
図9に示す街路と同じ場所である。
図10に示す街路は、歩道91に歩行者P1が通行している。
【0087】
歩行者P1の付近に埋設されている道路鋲10の動体検出部14は、動体として歩行者P1を検出し、検出信号を制御システム2に送信する。判断部312は、受け取った検出信号と、検出信号を送信した道路鋲10の固定位置情報と、から、移動体が存在することを判断する。より具体的には、判断部312は、道路鋲10から受け取った情報のうち、予め設定された期間分の履歴から、移動体の存在を判断する。歩行者P1の存在を判断した判断部312は、続いて、重複領域D1を第1状態と判断する。そして、判断部312は、重複領域D1が第1状態であることを示す信号を指示部311に供給する。
【0088】
指示部311は、判断部312から判断の結果が第1状態であることを示す信号を受け取ると、この判断の結果に応じて、指示信号を生成する。第1状態における指示信号は、第1方向を向いている第1発光部13Aに対して第1色調を発光し、第2方向を向いている第2発光部13Bに対して第2色調を発光する指示を含む。
【0089】
次に、
図11を参照して第2状態における道路鋲システム1の動作について説明する。
図11は、実施の形態にかかる道路鋲システムの動作の例を示す第3図である。
図11に示す街路は、
図9に示す街路と同じ場所である。
図11に示す街路は、道路90に自動車V1が通行しており、重複領域D1に進入しようとしている。また、歩道91に歩行者P1は存在していない。
【0090】
自動車V1の付近に埋設されている道路鋲10の動体検出部14は、動体として自動車V1を検出し、検出信号を制御システム2に送信する。判断部312は、受け取った検出信号と、検出信号を送信した道路鋲10の固定位置情報と、から、移動体として自動車V1が存在することを判断する。より具体的には、判断部312は、道路鋲10から受け取った情報のうち、予め設定された期間分の履歴から、自動車V1の存在を判断する。自動車V1の存在を判断した判断部312は、続いて、重複領域D1を第2状態と判断する。そして、判断部312は、重複領域D1が第2状態であることを示す信号を指示部311に供給する。
【0091】
指示部311は、判断部312から判断の結果が第2状態であることを示す信号を受け取ると、この判断の結果に応じて、指示信号を生成する。第2状態における指示信号は、第1方向を向いている第1発光部13Aに対して第2色調を発光し、第2方向を向いている第2発光部13Bに対して第1色調を発光する指示を含む。
【0092】
次に、
図12を参照して第1状態において、自動車V1が重複領域D1に進入してくる場合における道路鋲システム1の動作について説明する。
図12は、実施の形態にかかる道路鋲システムの動作の例を示す第4図である。
図12に示す街路は、
図9に示す街路と同じ場所である。
【0093】
図12に示す街路は、歩道91を通行する歩行者P1が、重複領域D1を通行しようとしたところ、道路90を通行する自動車V1も、重複領域D1に進入しようとしているという状況である。
【0094】
図12に示す例では、道路鋲システム1の判断部312は、
図10と同様に第1状態を判断していた。そのため、指示部311は、第1発光部13Aに第1色調の発光を指示し、第2発光部13Bに第2色調の発光を指示する指示信号を送っていた。しかしその後、自動車V1が重複領域D1に進入しようとしていることを、判断部312が判断した。そこで、指示部311は、第1発光部13Aに対して第1色調から第2色調の発光に変更する指示信号を送信した。
【0095】
このように、道路鋲システム1は、第1状態を判断した場合であっても、周辺の移動体の状況に応じて、道路鋲10の発光部13の動作を柔軟に変更できる。なお、上記道路鋲システム1において、判断部312は、重複領域D1の中または周辺の歩道に歩行者P1を検出する場合、または、重複領域D1の中または周辺の車道に自動車を検出しない場合には、判断の結果を、第1状態とするものであってもよい。この場合、判断部312は、判断の結果が第1状態ではない場合に、判断の結果を、第2状態とするものであってもよい。これにより道路鋲システムは、重複領域において歩行者と自動車が接触する可能性を抑制できる。
【0096】
以上、実施の形態について説明した。実施の形態によれば、好適な視認性を有する道路鋲システムを提供できる。
【0097】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0098】
上述のプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、SSD又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0099】
1 道路鋲システム
2 制御システム
10 道路鋲
10U 本体ブロック
10L 電源ブロック
11 端末制御部
12 無線通信部
13 発光部
13A 第1発光部
13B 第2発光部
14 動体検出部
15 端末記憶部
16 蓄電池
17 変流器
20 グループ制御装置
21 グループ制御部
22 グループ通信部
23 グループ記憶部
30 全体制御装置
31 全体制御部
32 全体通信部
33 全体記憶部
70 電力供給装置
80 電力線
81 配管ボックス
82 多目的ポール
90 道路
91 歩道
92 脇道
93 施設
110 発光制御部
111 検出信号取得部
311 指示部
312 判断部
330 全グループ情報
331 重複領域情報
D1 重複領域