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特許7582169都市管理支援装置、都市管理支援方法、及び都市管理支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】都市管理支援装置、都市管理支援方法、及び都市管理支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/063 20230101AFI20241106BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20241106BHJP
【FI】
G06Q10/063
G06Q50/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021198006
(22)【出願日】2021-12-06
(65)【公開番号】P2023083969
(43)【公開日】2023-06-16
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 昌広
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸久
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英男
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-69882(JP,A)
【文献】特開2011-248695(JP,A)
【文献】特開2017-97520(JP,A)
【文献】特開2003-317192(JP,A)
【文献】特開2014-220975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路、給電ステーション、集積場のうちの少なくとも1つである都市資源を共用する複数のサービスが同時に提供される都市の管理を支援する都市管理支援装置であって、
少なくとも1つのプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリと、
前記少なくとも1つのプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記都市資源の提供状況に関する情報を取得すること、
前記複数のサービスのそれぞれの提供状況に関する情報を取得すること、
前記複数のサービスのそれぞれについてサービスの内容が定義され、前記都市資源と前記複数のサービスとの関係に関わるパラメータが前記都市の仕様に合わせて予め作り込まれた予測モデルに、前記都市資源の前記提供状況と前記複数のサービスのそれぞれの提供状況とを入力することによって、前記複数のサービスの所定時間未来のサービス達成度をサービス毎に予測計算すること、及び
前記サービス毎の前記サービス達成度を前記都市資源の前記提供状況に関連付けた形態で出力すること、を実行させるように構成された
ことを特徴とする都市管理支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の都市管理支援装置において、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記都市資源の前記提供状況に異常が生じたことを受けて、前記サービス毎に前記サービス達成度を予測計算すること、をさらに実行させるように構成された
ことを特徴とする都市管理支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の都市管理支援装置において、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記都市資源の前記提供状況の異常による前記複数のサービスの少なくとも一つにおける前記サービス達成度の低下を受けて、前記都市資源の前記提供状況の異常の内容を前記サービス達成度が低下するサービスに関連付けて出力すること、をさらに実行させるように構成された
ことを特徴とする都市管理支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の都市管理支援装置において、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記複数のサービスの少なくとも一つにおける前記サービス達成度が閾値よりも低下することを受けてアラートを出力すること、をさらに実行させるように構成された
ことを特徴とする都市管理支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の都市管理支援装置において、
前記閾値は前記サービス毎にサービスの種類に応じて設定されている
ことを特徴とする都市管理支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の都市管理支援装置において、
前記サービス毎の前記サービス達成度を前記都市資源の前記提供状況に関連付けた形態で出力することは、前記サービス毎の前記サービス達成度を前記都市資源の前記提供状況と併せてディスプレイに表示することを含む
ことを特徴とする都市管理支援装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の都市管理支援装置において、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記都市資源の前記提供状況の異常による前記複数のサービスの少なくとも一つにおける前記サービス達成度の低下を受けて、前記サービス達成度が低下するサービスの提供方法として、予め定義された1又は複数の代替方法の中から選択された、前記都市資源の前記提供状況の異常の影響を低減可能な代替方法を提案すること、をさらに実行させるように構成された
ことを特徴とする都市管理支援装置。
【請求項8】
道路、給電ステーション、集積場のうちの少なくとも1つである都市資源を共用する複数のサービスが同時に提供される都市の管理をコンピュータを用いて支援する都市管理支援方法であって、
前記都市資源の提供状況に関する情報を取得すること
前記複数のサービスのそれぞれの提供状況に関する情報を取得すること、
前記複数のサービスのそれぞれについてサービスの内容が定義され、前記都市資源と前記複数のサービスとの関係に関わるパラメータが前記都市の仕様に合わせて予め作り込まれた予測モデルに、前記都市資源の前記提供状況と前記複数のサービスのそれぞれの提供状況とを入力することによって、前記複数のサービスの所定時間未来のサービス達成度をサービス毎に予測計算すること、及び
前記サービス毎の前記サービス達成度を前記都市資源の前記提供状況に関連付けた形態で出力すること、を前記コンピュータに実行させる
ことを特徴とする都市管理支援方法。
【請求項9】
道路、給電ステーション、集積場のうちの少なくとも1つである都市資源を共用する複数のサービスが同時に提供される都市の管理をコンピュータを用いて支援するための都市管理支援プログラムであって、
前記都市資源の提供状況に関する情報を取得すること、
前記複数のサービスのそれぞれの提供状況に関する情報を取得すること、
前記複数のサービスのそれぞれについてサービスの内容が定義され、前記都市資源と前記複数のサービスとの関係に関わるパラメータが前記都市の仕様に合わせて予め作り込まれた予測モデルに、前記都市資源の前記提供状況と前記複数のサービスのそれぞれの提供状況とを入力することによって、前記複数のサービスの所定時間未来のサービス達成度をサービス毎に予測計算すること、及び
前記サービス毎の前記サービス達成度を前記都市資源の前記提供状況に関連付けた形態で出力すること、を前記コンピュータに実行させるように構成された
ことを特徴とする都市管理支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有限の資源を共用する複数のサービスが同時に提供される都市の管理に用いて好適な都市管理支援装置、都市管理支援方法、及び都市管理支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、スマート化によりサービスが一括管理されている“都市”が研究され、また、各地で計画されている。ここでいう都市は、様々なサービスが提供されることで人々の生活が営まれている物理的空間を意味し、所謂スマートシティのような大規模なものだけでなく、地下街のような中規模のものや、大型ビルディングのような小規模のものも含む。このような都市では、都市において提供される資源の多くは有限であり、多くの場合においてその有限の資源は複数のサービスで共用されている。都市の継続的な発展のためには、資源とサービスの両面において都市の管理者による効率的且つ適切な管理が求められる。
【0003】
しかしながら、これまでのところ、有限の資源を共用する複数のサービスが同時に提供される都市の管理については研究が十分に進んでいるとは言い難い。例えば、特許文献1には、輸送スケジューリングシステムにおいて、市場予測から物流負荷を予測し、要求を満足するようなスケジュールを算出する技術が開示されている。しかしながら、この技術では、都市の資源は有限であり資源を使用できなくなる可能性があることについては考慮されていない。
【0004】
なお、本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、上述の特許文献1の他にも下記の特許文献2乃至4を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-527857号公報
【文献】特開2015-187498号公報
【文献】特開平11-0353358号公報
【文献】国際公開第2013/084268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、有限の資源を共用する複数のサービスが同時に提供される都市の管理に有用な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示は都市管理支援装置を提供する。本開示の都市管理支援装置は、有限の資源を共用する複数のサービスが同時に提供される都市の管理を支援する装置である。本開示の都市管理支援装置は、少なくとも1つのプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリと、上記少なくとも1つのプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサとを備える。上記少なくとも1つのプログラムは、上記少なくとも1つのプロセッサに、資源の提供状況に関する情報を取得すること、資源の提供状況に基づき複数のサービスの所定時間未来のサービス達成度をサービス毎に予測計算すること、及び、サービス毎のサービス達成度を資源の提供状況に関連付けた形態で出力することを実行させるように構成されている。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本開示は都市管理支援方法を提供する。本開示の都市管理支援方法は、有限の資源を共用する複数のサービスが同時に提供される都市の管理をコンピュータを用いて支援する方法である。本開示の都市管理支援方法は、資源の提供状況に関する情報をコンピュータに入力すること、資源の提供状況に基づき複数のサービスの所定時間未来のサービス達成度をサービス毎にコンピュータにより予測計算すること、及び、サービス毎のサービス達成度を資源の提供状況に関連付けた形態でコンピュータから出力することを含む。
【0009】
さらに、上記目的を達成するため、本開示は都市管理支援プログラムを提供する。本開示の都市管理支援プログラムは、有限の資源を共用する複数のサービスが同時に提供される都市の管理をコンピュータを用いて支援するためのプログラムである。本開示の都市管理支援プログラムは、資源の提供状況に関する情報を取得すること、資源の提供状況に基づき複数のサービスの所定時間未来のサービス達成度をサービス毎に予測計算すること、及び、サービス毎のサービス達成度を資源の提供状況に関連付けた形態で出力することをコンピュータに実行させるように構成されている。
【0010】
本開示の上記の技術によれば、都市において同時に提供される複数のサービスの所定時間未来のサービス達成度が、サービス毎に資源の提供状況に関連付けた形態で出力される。都市の管理者は、その出力より、サービスの提供状況が今後どのようになるのかを資源の提供状況に結び付けて認識することができる。
【0011】
本開示の上記の技術において、資源の提供状況に異常が生じたことを受けて、サービス毎にサービス達成度を予測計算してもよい。これによれば、資源の提供状況に異常が生じたことを予測計算の条件とすることで、プロセッサの負荷を低減し、また、計算に伴う電力の使用を抑えることができる。
【0012】
また、本開示の上記の技術において、資源の提供状況の異常による複数のサービスの少なくとも一つにおけるサービス達成度の低下を受けて、資源の提供状況の異常の内容をサービス達成度が低下するサービスに関連付けて出力してもよい。これによれば、都市の管理者は、どのような資源の提供状況の異常がどのサービスのサービス達成度の低下を招くかを認識することができる。
【0013】
また、本開示の上記の技術において、複数のサービスの少なくとも一つにおけるサービス達成度が閾値よりも低下することを受けてアラートを出力してもよい。これによれば、都市の管理者は、各サービスのサービス達成度を常時モニタリングせずとも、いずれかのサービスにおいてサービス達成度が低下したときにはアラートによって気づくことができる。サービスの種類に応じて適切にアラームが出力されるように、アラートの閾値はサービス毎にサービスの種類に応じて設定してもよい。
【0014】
本開示の上記の技術において、サービス毎のサービス達成度を資源の提供状況と併せてディスプレイに表示してもよい。これによれば、都市の管理者は、サービスの提供状況と資源の提供状況とを視覚的に把握することができ、また、サービスの提供状況と資源の提供状況との関連を容易に把握することができる。
【0015】
また、本開示の上記の技術において、資源の提供状況の異常による複数のサービスの少なくとも一つにおけるサービス達成度の低下を受けて、サービス達成度が低下するサービスの提供方法として、予め定義された1又は複数の代替方法の中から選択された、資源の提供状況の異常の影響を低減可能な代替方法を提案してもよい。これによれば、都市の管理者は、資源の提供状況の異常によりサービス達成度が低下するサービスについて、資源の提供状況の異常の影響を低減可能な代替方法を知ることができる。
【0016】
さらに、本開示の上記の技術において、サービス達成度は、サービス提供者の視点でのサービス達成度を示す第1値と、サービス利用者の視点でのサービス達成度を示す第2値とを含んでもよい。これによれば、都市の管理者は、サービス提供者とサービス利用者のそれぞれの視点で、サービスの提供状況を把握することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本開示の技術は有限の資源を共用する複数のサービスが同時に提供される都市の管理において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の実施形態に係る都市の概要を示す図である。
図2】本開示の実施形態に係る都市管理支援装置の構成を示すブロック図である。
図3】本開示の実施形態に係る都市の模式的な市街地図である。
図4図3に示す都市で提供される道路を共有するサービスの例について説明する図である。
図5】都市で提供されるサービスが図4に示すサービスである場合の都市管理支援装置の画面の例を示す図である。
図6】都市で提供されるサービスが図4に示すサービスである場合の都市管理支援装置の画面の別の例を示す図である。
図7図3に示す都市で提供される給電ステーションを共有するサービスの例について説明する図である。
図8】都市で提供されるサービスが図7に示すサービスである場合の都市管理支援装置の画面の例を示す図である。
図9図3に示す都市で提供される集積場を共有するサービスの例について説明する図である。
図10】都市で提供されるサービスが図9に示すサービスである場合の都市管理支援装置の画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の都市管理支援装置、都市管理支援方法、及び都市管理支援プログラムの実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0020】
1.都市の概要
本開示において、都市とは、様々なサービスが提供されることで人々の生活が営まれている物理的空間を意味する。本開示における都市の規模には限定はない。スマートシティは大規模な都市の一例であり、地下街は中規模な都市の一例であり、大型ビルディングは小規模な都市の一例である。物理的空間ではないインターネットの仮想空間は本開示における都市には含まれない。
【0021】
都市では各種のサービスが利用者に提供されている。サービスは都市の資源を利用して提供される。資源とは、都市におけるサービスの提供に利用されるものであり、例えば、道路、給電ステーション、集荷場、ネットワーク、電気、水等が含まれる。物流サービスがビルのエレベータも利用するのであれば、エレベータも資源に含まれる。ただし、本開示における資源は有限なものであって、無限なもの或いは有限ではあるがその限度がサービスによる資源の利用量に比較して十分に高いものは本開示における資源には含まれない。本開示における都市では、有限の資源が複数のサービスで共用されている。
【0022】
図1は本開示の実施形態に係る都市100の概要を示す。本実施形態に係る都市100では、有限の資源110を共用するサービスA,B及びCが各サービスA,B,Cの提供者120A,120B,120Cから利用者130に対して同時に提供される。有限の資源110を利用する複数のサービスが同時に提供されるとは、1人の利用者130が複数のサービスを同時に利用するという意味の他に、有限の資源110を利用する複数のサービスが相互に排他的でないことを意味する。つまり、都市100で提供されるサービスA,B及びCのうちいずれか1つのサービスが資源110を独占することはないし、いずれか2つのサービスが資源110を寡占することもない。
【0023】
利用者130に対する各サービスA,B,Cの提供状況は都市100における資源110の提供状況の影響、特に、提供状況の異常の影響を受ける。どのサービスがどれだけ影響受けるかは資源110の提供状況の異常の内容次第である。例えば、一部のサービスのみ影響を受ける場合もあれば、全てのサービスが影響を受ける場合もある。資源110の提供状況の異常の内容次第では、サービスの提供方法を通常の提供方法から代替方法に変更することによって、サービスの低下を抑えることができる場合もある。ただし、資源110は共用されているので、例えば1つのサービスを維持するためには、他のサービスを低下せざるを得ない場合もある。資源110の提供状況に異常が生じた場合に都市100全体としてサービスの低下を如何に抑えるかは、都市100の管理における重要な課題である。
【0024】
本実施形態に係る都市100では、各サービスA,B,Cの提供状況は資源110の提供状況とともに都市管理者140によって一括管理されている。都市管理者140は資源110の提供状況を監視し、資源110の提供状況に異常が生じた場合には速やかに復旧する権限と責任を有する。ただし、資源110の種類によっては日頃のメンテナンスや異常時の復旧を都市管理者140が別の事業者に委託することもあれば、資源110の提供自体が別の事業者によって行われる場合もある。
【0025】
都市管理者140は基本的にはサービス提供者120A,120B,120Cとは別の事業者である。例外として都市管理者140が自身でサービスを提供している場合を除き、基本的には都市管理者140がサービスの提供方法を変えることはできない。都市管理者140は、資源110の提供状況に異常が生じた場合、サービス提供者120A,120B,120Cに対してその状況を知らせ、必要に応じてサービスの提供方法の代替方法をアドバイスする。
【0026】
本実施形態に係る都市100では、その継続的な発展のため、資源110とサービスA,B,Cの両面において効率的且つ適切な管理が都市管理者140に対して求められている。本開示の実施形態に係る都市管理支援装置200は都市管理者140による都市100の効率的且つ適切な管理を支援するための装置である。都市管理支援装置200はそれ自体が都市100を管理するのではなく、支援情報の提供によって都市管理者140による都市の管理を支援する。都市管理支援装置200が都市管理者140に提供する支援情報には、資源110の現在の提供状況に関する情報、各サービスの将来の状況に関する予測情報、サービスの低下が予測される場合の都市管理者140に対するアドバイス等が含まれる。
【0027】
都市管理支援装置200は少なくとも1つのプログラム203を記憶した少なくとも1つのメモリ202と、少なくとも1つのプログラム203を実行する少なくとも1つのプロセッサ201とを備えたコンピュータである。メモリ202に記憶されたプログラム203がプロセッサ201で実行されることによって、都市管理者140の支援のための様々な機能が実現される。ただし、都市管理支援装置200は一つのコンピュータによって構成されてもよいし、ネットワークで接続された複数のコンピュータによって構成されてもよい。次の章では都市管理支援装置200の詳細について説明する。
【0028】
2.都市管理支援装置の構成
図2は都市管理支援装置200の構成を示すブロック図である。都市管理支援装置200は、情報取得ユニット210、サービスシミュレータ220、達成度演算ユニット230、代替方法提案ユニット240、通知ユニット250、ディスプレイ260、及び警報器270を備える。都市管理支援装置200を構成するこれらの要素は、メモリ202に記憶されたプログラム203、詳しくは、都市管理支援プログラムがプロセッサ201で実行されたときに実現される都市管理支援装置200の機能である。
【0029】
情報取得ユニット210は都市100の管理のために必要な情報を都市100から取得する。情報取得ユニット210により取得される情報には、都市100における資源110の提供状況に関する情報が含まれる。資源110の提供状況に関する情報は、例えば、都市100に配備された様々なセンサによる検出情報、サービス提供者120A,120B,120Cからの提供情報、或いは、SNS上の情報を含む利用者130からの提供情報から取得される。情報取得ユニット210により取得された資源110の提供状況に関する情報はサービスシミュレータ220に入力される。
【0030】
情報取得ユニット210により取得される情報には、各サービスA,B,Cの提供状況に関する情報が含まれる。サービスAの提供状況に関する情報はサービス提供者120Aから取得される。サービスBの提供状況に関する情報はサービス提供者120Bから取得される。そして、サービスCの提供状況に関する情報はサービス提供者120Cから取得される。ただし、例えば2つのサービスが同じ事業者によって提供されている場合には、その事業者から2つのサービスの提供状況に関する情報が取得される。また、SNS上の情報を含む利用者130からの提供情報からサービスの提供状況に関する情報を取得することもできる。情報取得ユニット210により取得された各サービスA,B,Cの提供状況に関する情報はサービスシミュレータ220に入力される。
【0031】
サービスシミュレータ220は予測モデルを用いて所定時間未来のサービスの状況を予測するシミュレータである。サービスシミュレータ220の入力は、現在の各サービスA,B,Cの提供状況に関する情報と資源110の提供状況に関する情報である。サービスシミュレータ220はこれらの情報に基づき予測モデルを用いて各サービスA,B,Cの所定時間未来の状況を予測する。予測時間は例えば10分、1時間、2時間等であり、サービスの内容に応じて決められる。
【0032】
サービスシミュレータ220が用いる予測モデルでは、資源110とサービスとの関係に関わるパラメータが都市100の仕様に合わせて予め作り込まれている。例えば都市100で提供されるサービスが交通サービス又は物流サービスである場合、建物や道路の状態、移動体の場所及び状態、住民モデル、サービスによる移動体の利用方法等のパラメータが予め作り込まれている。住民モデルとは都市100の住民をモデル化したものである。住民は時には道路を利用し、時には移動体の障害物となる等して資源110とサービスとの関係に影響を与える。住民モデルでは、サービスの内容によって住民一人一人の動きをシミュレーションしてもよいし、集団としてシミュレーションしてもよい。
【0033】
サービスシミュレータ220が用いる予測モデルでは、サービス毎にサービス定義が設定されている。例えば、都市100で提供されるサービスが交通サービスである場合、ルート、時刻表、乗降予測人数、資源110の提供状況に異常が生じた場合のサービスの提供方法の代替方法等がサービス定義として設定されている。また、都市100で提供されるサービスが物流サービスである場合、荷受予測数、届け先予測、資源110の提供状況に異常が生じた場合のサービスの提供方法の代替方法等がサービス定義として設定されている。サービスシミュレータ220の定義設定部222AにはサービスAの定義が設定され、定義設定部222BにはサービスBの定義が設定され、定義設定部222CにはサービスCの定義が設定されている。定義設定部222A,222B,222Cに設定されている各サービス定義は更新可能である。
【0034】
サービスシミュレータ220による所定時間未来のサービスの状況の予測は継続的に実行されてもよいし、資源110の提供状況に異常が生じたことを条件として実行されてもよい。資源110の提供状況に異常とは後述するサービスの達成度に影響を与える異常であり、資源毎サービス毎に予め定義されている。資源110の提供状況の異常を予測計算の実行条件とすることで、プロセッサ201の負荷を低減し、また、計算に伴う電力の使用を抑えることができる。
【0035】
サービスシミュレータ220からは予測計算された各サービスA,B,Cの状況予測値が出力される。つまり、各サービスA,B,Cの所定時間未来の状況の予測結果はそれぞれ一つの数値で表される。各サービスA,B,Cの状況予測値は達成度演算ユニット230に入力される。
【0036】
達成度演算ユニット230はサービスシミュレータ220から入力された各サービスA,B,Cの状況予測値に基づきサービスA,B,C毎にサービス達成度を計算する。サービス達成度は、サービスの低下が利用者130に与えるインパクトを示す数値であって、例えば、SLA(Service Level Agreement)のように予め規定された水準からのずれの程度を示す数値として定義される。サービス毎のサービス達成度の計算方法の詳細については後述する。なお、サービス達成度はサービス毎に単一の値であってもよいし、サービス提供者120A,120B、120Cの視点での達成度(第1値)と、利用者130の視点での達成度(第2値)とを含んでもよい。達成度演算ユニット230で計算された各サービスA,B,Cの達成度は代替方法提案ユニット240と通知ユニット250とに入力される。
【0037】
代替方法提案ユニット240は達成度演算ユニット230から入力された各サービスA,B,Cの達成度と、サービスシミュレータ220から入力された資源110の提供状況に関する情報とを受け付ける。代替方法提案ユニット240はサービスA,B及びCのうち少なくとも一つにおいてサービス達成度が閾値よりも低下した場合、サービス達成度が低下したサービスの提供方法の代替方法を提案する。
【0038】
より詳しくは、代替方法提案ユニット240は、資源110の提供状況とサービス達成度が低下したサービスとの関連に基づき、資源110の提供状況の異常の影響を低減可能な代替方法を提案する。代替方法の提案の判断基準となるサービス達成度の閾値はサービス毎にサービスの種類に応じて設定されている。代替方法提案ユニット240は定義設定部222A,222B,222Cにおいて予め定義された1又は複数の代替方法の中から提案するに相応しい代替方法を選択する。代替方法提案ユニット240により選択された代替方法は通知ユニット250に入力される。
【0039】
通知ユニット250は達成度演算ユニット230から入力された各サービスA,B,Cの達成度と、代替方法提案ユニット240から入力された資源110の提供状況に関する情報とを受け付ける。また、代替方法提案ユニット240によって何れかのサービスの提供方法の代替方法が提案された場合には、通知ユニット250は代替方法提案ユニット240から入力された代替方法を受け付ける。
【0040】
通知ユニット250はディスプレイ260に接続されている。通知ユニット250は達成度演算ユニット230から受け付けた情報と代替方法提案ユニット240から受け付けた情報とに基づきディスプレイ260に表示する表示情報を生成する。特にサービスA,B及びCのうち少なくとも一つにおいてサービス達成度の低下が検出された場合、通知ユニット250は資源110の提供状況の異常の内容をサービス達成度が低下するサービスに関連付ける表示情報を生成する。また、サービス達成度の低下が検出されたサービスについて提供方法の代替方法が提案された場合、提案された代替方法をサービス達成度が低下するサービスに関連付ける表示情報を生成する。通知ユニット250は生成した表示情報をディスプレイ260に入力する。
【0041】
通知ユニット250は警報器270に接続されている。通知ユニット250はサービスA,B及びCのうち少なくとも一つにおいてサービス達成度が閾値よりも低下した場合、警報器270へアラート信号を入力する。アラート信号の出力の判断基準となるサービス達成度の閾値はサービス毎にサービスの種類に応じて設定されている。
【0042】
ディスプレイ260は通知ユニット250から入力された表示情報を画像に変換して表示する。ディスプレイ260に表示される画像には、所定時間未来の各サービスA,B,Cの達成度を示す画像と、現在の資源110の提供状況を示す画像とが含まれる。また、資源110の提供状況に異常が生じた場合には、資源110の提供状況の異常の影響を受けるサービスに関し、提供方法の代替方法を示す画像がディスプレイ260に表示される。
【0043】
都市管理者140は、ディスプレイ260に表示される画像より、各サービスA,B,Cの提供状況と資源110の提供状況とを視覚的に把握することができ、また、各サービスA,B,Cの提供状況と資源110の提供状況との関連を容易に把握することができる。そして、各サービスA,B,Cの提供状況が今後どのようになるのかを資源110の提供状況に結び付けて認識することができる。また、都市管理者140は、資源110の提供状況の異常によりサービス達成度が低下するサービスについて、資源の提供状況の異常の影響を低減可能な代替方法を知ることができる。
【0044】
警報器270は通知ユニット250から入力されたアラート信号を受けてアラートを出力する。都市管理者140は、各サービスA,B,Cのサービス達成度を常時モニタリングせずとも、いずれかのサービスにおいてサービス達成度が低下したときにはアラートによって気づくことができる。
【0045】
3.都市管理支援装置による都市管理支援方法の具体例
3-1.前提
以下、都市管理支援装置200による都市管理支援方法について幾つかの具体例を挙げて説明する。その具体例を説明する上での前提として、都市100は図3の模式的な市街地図に示すように構成されているとする。この市街地図に示すように、都市100は1つの出入口100aを有する閉ざされた空間であり、その内部には道路がつくられている。道路は東西に走る4本の東西道路111A,111B,111C,111Dと、南北に走る5本の南北道路112A,112B,112C,112D,112Eとを含む。これらの道路によって、都市100の内部はAブロックからLブロックまでの12のブロックに区画されている。後の具体例でも述べるように、道路は都市100において様々なサービスを提供するための有限の資源110である。
【0046】
3-2.第1の具体例
3-2-1.サービスの概要
第1の具体例として、都市100で提供されるサービスが道路を共有するサービスである例について説明する。図4は第1の具体例について説明する図である。
【0047】
第1の具体例においてサービス間で共有される資源110は道路である。図3に示す4本の東西道路111A,111B,111C,111Dと、南北に走る5本の南北道路112A,112B,112C,112D,112Eとが第1の具体例におけるサービス間の共有の資源110である。
【0048】
第1の具体例において資源110である道路を共有するサービスは定期路線バス、物流、及びライドシェアの3つのサービスである。図1及び図2に示す例に当てはめるならば、定期路線バスサービスがサービスA、物流サービスがサービスB、ライドシェアサービスがサービスCとなる。道路は路線幅や車線数等に制約のある有限の資源110であり、そこを通る各サービスの車両によって共用される。
【0049】
サービスとしての定期路線バスは路線バス152A,152Bを用いて乗客を運ぶ一種の交通サービスである。定期路線バスサービスの提供者120Aは例えばバス会社である。定期路線バスサービスの利用者130は路線バス152A,152Bに乗って移動する乗客である。路線バス152A,152Bには充電可能なバッテリを搭載した電気駆動の自動運転バスが用いられている。路線バス152A,152Bは予め定められたサービス対象経路153に沿って走り、予め定められた時刻表に従ってバス停151A,151E,151K,151H,151Cに順に停車するように運行される。また、路線バス152A,152Bは予め定められたタイミングにて図示しない給電ステーションにて充電する。
【0050】
サービスとしての物流は配送ロボット154A,154Bを用いて拠点間やビル間で荷物を配送するサービスである。物流サービスの提供者120Bは例えば運送会社である。物流サービスの利用者130は荷物の発送主及び受取主である。配送ロボット154A,154Bはビルとビルの間や、ビルのフロア間、集積場とビルの間等の拠点間を自律走行して荷物を配送する。配送ロボット154A,154Bが配送する荷物は都市100の内部で発生する荷物と都市100の外部から持ち込まれる荷物とがある。外部から都市100に輸送された荷物は出入口100aに最も近いDブロックに設けられた集積場に運びこまれ、集積場から都市100内の各所(荷物の中継所を含む)に配送される。都市100から外部に輸送される荷物は集積場に集められ、集積場から出入口100aを通って外部に運び出される。
【0051】
配送ロボット154A,154Bの運行は配送量にあわせて動的にスケジューリングされる。図4に示す例では、配送ロボット154Aは、Bブロック、Cブロック、Gブロック、及びFブロックを巡回する配送経路155Aを通って荷物を配送している。また、配送ロボット154Bは、Dブロックに設けられた集積場とGブロックとの間の配送経路155B、及び、Dブロックに設けられた集積場とKブロックとの間の配送経路155Cを通って荷物を配送している。
【0052】
図4に示す配送ロボット154A,154Bは一種類であるが、実際には配送区間と配送する荷物にあわせて複数種類のロボットが用意される。また、配送区間と配送する荷物にあわせてより多くのロボットが用意される。ロボットは種類によってサイズ、積載容量、駆動時間等が異なるが、いずれのロボットも電気で駆動される。また、ロボットはサイズによって移動する場所が異なる。配送ロボット154A,154Bは共有資源としての道路を移動するロボットであるが、歩道や施設内通路等を移動するロボットも存在する。
【0053】
サービスとしてのライドシェアは都市100の住民が他の住民からの要求に応じて運転中のプライベート車両156A,156Bを配車するサービスである。プライベート車両156A,156Bは住民個人の所有物でもよいし特定のメンバーで構成されたグループの共有物でもよい。ライドシェアサービスの提供者120Cは例えばマッチングプラットフォームを運営するプラットフォーマである。ライドシェアサービスの利用者130は配車を要求する乗客である。プライベート車両156A,156Bを用いてライドシェアに参加したい住民はサービス提供者から提供されるマッチングプラットフォームに運転手登録しておく。配車の需要が発生した場合、登録された運転手に対して乗降場所およびルートが提示される。一方、ライドシェアサービスを利用したい住民、すなわち、配車を要求する乗客は移動したいときに自身が所持する端末のアプリ経由で乗降場所と時間を指定する。
【0054】
図4に示す例では利用者131Aの配車の要求に対してマッチングプラットフォームによりプライベート車両156Aの運転手がアサインされ、プライベート車両156Aの運転手に対して利用者131Aの乗降場所およびルート157Aが提示されている。また、利用者131Bの配車の要求に対してマッチングプラットフォームによりプライベート車両156Bの運転手がアサインされ、プライベート車両156Bの運転手に対して利用者131Bの乗降場所およびルート157Bが提示されている。
【0055】
3-2-2.都市管理支援装置の画面の例
都市100において上述の3つのサービスが提供されている場合、都市管理支援装置200はそれらのサービスに関連する支援情報を都市管理者140に提供する。上述の通り都市管理支援装置200による都市管理者140への情報の提供手段はディスプレイ260による表示と警報器270によるアラームである。
【0056】
図5は第1の具体例における都市管理支援装置200のディスプレイ260の画面の一例を示す。ディスプレイ260には各サービスのサービス達成度を表示する達成度ウインドウ262と、都市100における資源110の提供状況を示す資源提供状況ウインドウ264とが表示される。達成度ウインドウ262には、サービス毎にサービス達成度が文字で表示される。一方、資源提供状況ウインドウ264には、都市100における資源110の提供状況が一目で認識できるように市街地図が表示される。
【0057】
達成度ウインドウ262には、定期路線バス、物流、及びライドシェアのそれぞれのサービスについて所定時間後のサービス達成度が点数(達成度スコア)で表示されている。達成度スコアは100点が最高点であり減点方式で計算される。以下、サービス毎の達成度の計算方法について説明する。
【0058】
まず、都市管理支援装置200による定期路線バスサービスのサービス達成度の計算方法について説明する。都市管理支援装置200のサービスシミュレータ220に入力される定期路線バスサービスの提供状況に関する情報には、例えば、各路線バスの状態に関する情報、時刻表、及びサービス対象経路が含まれる。路線バスの状態に関する情報には、例えば、位置、速度、乗客数、サービス中かどうか、及びバッテリ残量が含まれる。これらの情報がサービスシミュレータ220に入力される。サービスシミュレータ220は入力された情報に基づいて路線バス毎に次のバス停の到着予定時刻を予測する。そして、路線バス毎に予測された次のバス停の到着予定時刻を定期路線バスサービスの状況予測値として出力する。
【0059】
達成度演算ユニット230はサービスシミュレータ220により予測された次のバス停の到着予定時刻に基づいてサービス達成度を計算する。定期路線バスサービスのサービス達成度の計算には以下の式1が用いられる。ただし、式1の右辺の計算値は整数になるように四捨五入されサービス達成度は0から100までの整数で表される。式1の右辺の計算値が負の値になる場合、サービス達成度は0とされる。
サービス達成度=100-((予測された到着予定時刻と時刻表での予定時刻との差の絶対値(分単位))×100/60 ・・・式1
【0060】
達成度演算ユニット230は路線バス毎に上記式1によってサービス達成度を計算する。図4に示す例では、路線バス152Aのサービス達成度と路線バス152Bのサービス達成度とがそれぞれ計算される。達成度演算ユニット230は路線バス152Aのサービス達成度と路線バス152Bのサービス達成度のうちより低い方を期路線バスサービスのサービス達成度として出力する。或いは、路線バス152Aのサービス達成度と路線バス152Bのサービス達成度の平均値を定期路線バスサービスのサービス達成度として出力する。
【0061】
通知ユニット250は定期路線バスサービスの達成度スコアをディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。図5に示す例では、定期路線バスサービスの達成度スコアは100点中の30点となっている。予測時間は10分後と表示されているが、予測時間は凡その目安である。10分後、1時間後、2時間後等の予測時間が予め定義されていて予測モデルによる計算で用いられた予測時間に最も近い時間が達成度ウインドウ262に表示される。
【0062】
また、通知ユニット250は定期路線バスサービスのサービス達成度の評価をディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。サービス達成度の評価は達成度スコアとサービスの種類に応じて設定された閾値との比較に基づいて行われる。例えば、定期路線バスサービスに対して設定された閾値が50点である場合、達成度スコアの30点は不合格であるので通知ユニット250は評価として“No-Good”を達成度ウインドウ262に表示する。
【0063】
次に、都市管理支援装置200による物流サービスのサービス達成度の計算方法について説明する。都市管理支援装置200のサービスシミュレータ220に入力される物流サービスの提供状況に関する情報には、例えば、各配送ロボットの状態に関する情報、日次での配送計画、及び残り配送貨物が含まれる。配送ロボットの状態に関する情報には、例えば、位置、速度、積載数、サービス中かどうか、バッテリ残量、配送先、及び配送元が含まれる。これらの情報がサービスシミュレータ220に入力される。サービスシミュレータ220は入力された情報に基づいて日次での配送計画からのずれ、すなわち、配達の平均遅延を予測する。そして、予測された配達の平均遅延を物流サービスの状況予測値として出力する。
【0064】
達成度演算ユニット230はサービスシミュレータ220により予測された配達の平均遅延に基づいてサービス達成度を計算する。物流サービスのサービス達成度の計算には以下の式2が用いられる。ただし、式2の右辺の計算値は整数になるように四捨五入されサービス達成度は0から100までの整数で表される。式2の右辺の計算値が負の値になる場合、サービス達成度は0とされる。
サービス達成度=100-(配達の平均遅延(分単位))×100/60 ・・・式2
【0065】
通知ユニット250は物流サービスの達成度スコアをディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。図5に示す例では、物流サービスの達成度スコアは100点中の70点となっている。また、通知ユニット250は物流サービスのサービス達成度の評価をディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。例えば、物流サービスに対して設定された閾値が50点である場合、達成度スコアの70点は合格であるので通知ユニット250は評価として“Good”を達成度ウインドウ262に表示する。
【0066】
次に、都市管理支援装置200によるライドシェアサービスのサービス達成度の計算方法について説明する。都市管理支援装置200のサービスシミュレータ220に入力されるライドシェアサービスの提供状況に関する情報には、例えば、シェア可能な各車両の状態に関する情報、及び需要に関する情報が含まれる。車両の状態に関する情報には、例えば、位置、速度、乗客数、サービス中かどうか、及びバッテリ残量が含まれる。需要に関する情報には、例えば、時刻、起終点、及び人数が含まれる。これらの情報がサービスシミュレータ220に入力される。サービスシミュレータ220は入力された情報に基づいて乗車前平均待ち時間(例えば過去1時間での平均値)を予測する。そして、予測された乗車前平均待ち時間をライドシェアサービスの状況予測値として出力する。
【0067】
達成度演算ユニット230はサービスシミュレータ220により予測された乗車前平均待ち時間に基づいてサービス達成度を計算する。ライドシェアサービスのサービス達成度の計算には以下の式3が用いられる。式3における標準待ち時間は乗車前待ち時間の標準SLAであり、例えば10分に設定することができる。ただし、式3の右辺の計算値は整数になるように四捨五入されサービス達成度は0から100までの整数で表される。式3の右辺の計算値が負の値になる場合、サービス達成度は0とされる。また、式3の右辺の計算値が100を超える場合、サービス達成度は100とされる。
サービス達成度=100-(乗車前平均待ち時間(分単位)-標準待ち時間)×100/60 ・・・式3
【0068】
通知ユニット250はライドシェアサービスの達成度スコアをディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。図5に示す例では、ライドシェアサービスの達成度スコアは100点中の80点となっている。また、通知ユニット250はライドシェアサービスのサービス達成度の評価をディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。例えば、ライドシェアサービスに対して設定された閾値が40点である場合、達成度スコアの80点は合格であるので通知ユニット250は評価として“Good”を達成度ウインドウ262に表示する。
【0069】
次に、資源提供状況ウインドウ264について説明する。都市100で提供されるどのサービスも順調である場合、つまり、達成度スコアによる評価がGoodである場合、資源提供状況ウインドウ264には都市100の市街地図のみが表示されている。しかし、いずれかのサービスにおいて達成度スコアによる評価がNo-Goodになった場合、資源提供状況ウインドウ264には達成度スコアの低下の原因となった資源110の提供状況の異常の内容が表示される。
【0070】
図5に示す例では、達成度ウインドウ262に表示されている定期路線バスサービスの達成度スコアがNo-Goodになり、それに合わせて資源提供状況ウインドウ264の市街地図上に事故が起きたエリア101が表示される。事故は都市100に設置されたカメラで把握することができる。事故が起きたエリア101はFブロック、Gブロック、Jブロック、及びKブロックの間の交差点であり、路線バス152A,152Bのサービス対象経路153と重なっている。
【0071】
図5に示すようなディスプレイ260上の表示は、都市管理者140に対し、エリア101で起きた事故が原因で極近い将来において定期路線バスサービスの達成度が低下することを認識させることができる。また、定期路線バスサービスの達成度スコアがGoodからNo-Goodに変化したときには、達成度ウインドウ262における定期路線バスサービスに関連する文字が強調表示されるとともに、警報器270からアラートが出力される。
【0072】
さらに、資源提供状況ウインドウ264には、代替方法提案ユニット240により提案された定期路線バスサービスの提供方法の代替方法が表示される。定期路線バスサービスのサービス定義には、資源110の提供状況の悪化時の代替方法として、迂回、運休、振替輸送、徒歩等が定義されている。代替方法提案ユニット240は、道路上での事故の定期路線バスサービスへの影響を最小限に抑えることができる代替方法をサービス定義の中から選択して通知ユニット250に入力する。
【0073】
図5に示す例では、事故が起きたエリア101を迂回する迂回路153aが資源提供状況ウインドウ264に表示されている。提案された迂回路153aを選択すれば、事故が起きたエリア101を通ることなく、全てのバス停151A,151E,151K,151H,151Cに路線バス152A,152Bを停車させることができる。提案を受けた都市管理者140は定期路線バスサービスのサービス提供者に対し、エリア101で起きた事故の定期路線バスサービスへの影響を知らせる。そして、代替方法として迂回路153aに路線バス152A,152Bを迂回させることをアドバイスする。
【0074】
図6には第1の具体例におけるディスプレイ260の画面の別の例が示されている。図6に示す例では、達成度ウインドウ262に表示されている物流サービスの達成度スコアがNo-Goodになっている。そして、資源提供状況ウインドウ264の市街地図上には、冠水しているエリア102が表示されている。冠水は都市100に設置されたカメラと降水量とで把握することができる。冠水は資源110としての道路が使用できなくなる異常であり、各サービスの達成度スコアの低下の原因となる。冠水が起こっているエリア102はBブロックとFブロックとの間からCブロックとGブロックとの間の道路であり、配送ロボット154Aによる配送経路155Aと重なっている。また、配送ロボット154Bによる配送経路155Bとも重なっている。
【0075】
図6に示すようなディスプレイ260上の表示は、都市管理者140に対し、エリア102の冠水が原因で極近い将来において物流サービスの達成度が低下することを認識させることができる。また、物流サービスの達成度スコアがGoodからNo-Goodに変化したときには、達成度ウインドウ262における物流サービスに関連する文字が強調表示されるとともに、警報器270からアラートが出力される。
【0076】
さらに、資源提供状況ウインドウ264には、代替方法提案ユニット240により提案された物流サービスの提供方法の代替方法が表示される。代替方法提案ユニット240は、予め定められた物流サービスのサービス定義の中から、道路の冠水の物流サービスへの影響を最小限に抑えることができる代替方法を選択して通知ユニット250に入力する。
【0077】
図6に示す例では、冠水したエリア102を迂回してBブロック、Cブロック、Gブロック、及びFブロックを巡回することができる迂回配送経路155Dが資源提供状況ウインドウ264に表示されている。また、冠水したエリア102を迂回して集積場からGブロックまで荷物を配送できる迂回配送経路155Eが資源提供状況ウインドウ264に表示されている。提案されたこれらの迂回配送経路155D,155Eを選択すれば、冠水したエリア102を通ることなく予定された配送先へ荷物を配送することができる。提案を受けた都市管理者140は物流サービスのサービス提供者に対し、エリア102の冠水の物流サービスへの影響を知らせる。そして、代替方法として迂回配送経路155D,155Eを用いて配送ロボット154A,154Bに配送させることをアドバイスする。
【0078】
なお、資源110としての道路の異常は例示した事故と冠水だけではない。例えば、地震や洪水等の自然災害による道路の不通、積雪による車両通行止め、落ち葉や枯れ葉の堆積、路上駐車車両のような道路上の障害物等は資源110としての道路の異常である。これらの異常は、例えばカメラのような都市100に設置されたセンサで検出することができる。
【0079】
3-3.第2の具体例
3-3-1.サービスの概要
第2の具体例として、都市100で提供されるサービスが給電ステーションを共有するサービスである例について説明する。図7は第2の具体例について説明する図である。
【0080】
第2の具体例においてサービス間で共有される資源110は給電ステーションである。給電ステーションでは自動運転する各種の移動体(車両、ロボット等)に対して無線で電力が供給される。電動の移動体(車両、ロボット等)はバッテリ残量に応じて充電が必要になる。これらの移動体は自動運転で給電ステーションに移動し、無線充電によって自身のバッテリに充電する。都市100には複数の給電ステーション113A,113B,113D,113G,113H,113Jが設置されている。
【0081】
第2の具体例において資源110である給電ステーションを共有するサービスは定期路線バス、サポートロボット、及び警備ロボットの3つのサービスである。図1及び図2に示す例に当てはめるならば、定期路線バスサービスがサービスA、サポートロボットサービスがサービスB、警備ロボットサービスがサービスCとなる。給電ステーションは台数に制約のある有限の資源110であり、充電を要する各サービスの移動体によって共用される。
【0082】
サービスとしての定期路線バスは路線バス152A,152Bを用いて利用者を運ぶ一種の交通サービスであって、その詳細は第1の具体例で説明した通りである。路線バス152A,152Bが運行されているサービス対象経路153には給電ステーション113Bが設置されている。路線バス152A,152Bは予め定められたタイミングにて給電ステーション113Bにて充電する。
【0083】
サービスとしてのサポートロボットはサポートロボット162A~162Eを用いてハンドバックからスーツケース程度の重さの個人の荷物を運搬するサービスである。サポートロボットサービスの提供者120Bは例えばポーターサービス会社である。サポートロボットサービスの利用者130は都市100を徒歩や低速モビリティで移動する住民である。利用者はサポートロボット162A~162Eに荷物を預け、荷物を預けられたサポートロボット162A~162Eは利用者に追従して移動する。サポートロボット162A~162Eは都市100内を巡回するか或いは所定の待機場で待機している。利用者は荷物の運搬を頼みたいときに自身が所持する端末のアプリ経由で予約するか、空いているサポートロボット162A~162Eを見つけてその場で荷物の運搬を依頼する。サポートロボット162A~162Eは電気駆動であり、バッテリの電気残量がしきい値を下回ると直近の給電ステーションまで自動で充電しにいく。
【0084】
サービスとしての警備ロボットはカメラを備えた警備ロボット164A~164Eによって情報収集を行い、収集した情報に基づきその後の行動判断を行うサービスである。警備ロボットサービスの提供者120Cは例えば警備会社である。警備ロボットサービスの利用者130は都市100に住む個人の他、会社や商店或いは商店街のような法人や団体である。警備ロボット164A~164Eはカメラを含む各種のセンサを備え、設定された経路を設定された時間に巡回している。また、警備会社の監視センタからの指示があった場合や、利用者が自身の所持する端末のアプリ経由で要請を行った場合、警備ロボット164A~164Eは設定経路から外れて指示された或いは要請された地点へ監視に向かう。警備ロボット164A~164Eは電気駆動であり、予め定められたタイミングにて予め定められた給電ステーションへ自動で充電しにいく。
【0085】
3-3-2.都市管理支援装置の画面の例
都市100において上述の3つのサービスが提供されている場合、都市管理支援装置200はそれらのサービスに関連する支援情報を都市管理者140に提供する。
【0086】
図8は第2の具体例における都市管理支援装置200のディスプレイ260の画面の一例を示す。達成度ウインドウ262には、定期路線バス、サポートロボット、及び警備ロボットのそれぞれのサービスについて所定時間後のサービス達成度が点数(達成度スコア)で表示されている。以下、サービス毎の達成度の計算方法について説明する。ただし、定期路線バスサービスのサービス達成度の計算方法については第1の具体例で説明した通りであるので、ここでは重ねての説明は省略する。
【0087】
都市管理支援装置200によるサポートロボットサービスのサービス達成度の計算方法について説明する。都市管理支援装置200のサービスシミュレータ220に入力されるサポートロボットサービスの提供状況に関する情報には、例えば、各サポートロボットの状態に関する情報、及び残りの未対応リクエスト数が含まれる。サポートロボットの状態に関する情報には、例えば、位置、速度、積載数、サービス中かどうか、バッテリ残量、配送先、及び配送元が含まれる。これらの情報がサービスシミュレータ220に入力される。サービスシミュレータ220は入力された情報に基づいて所定時間後の未対応リクエスト数を予測する。そして、予測された未対応リクエスト数をサポートロボットサービスの状況予測値として出力する。
【0088】
達成度演算ユニット230はサービスシミュレータ220により予測された未対応リクエスト数に基づいてサービス達成度を計算する。サポートロボットサービスのサービス達成度の計算には以下の式4が用いられる。式4における標準リクエスト数は標準SLAから決定される数値であり、例えば5に設定することができる。係数は任意に設定可能な数値であり、例えば5に設定することができる。係数の値が大きいほどサービス達成度に対する未対応リクエスト数の増大の影響は大きくなる。ただし、式4の右辺の計算値は整数になるように四捨五入されサービス達成度は0から100までの整数で表される。式4の右辺の計算値が負の値になる場合、サービス達成度は0とされる。また、式4の右辺の計算値が100を超える場合、サービス達成度は100とされる。
サービス達成度=100-(未対応リクエスト数-サービス中のロボット数×標準リクエスト数)×係数 ・・・式4
【0089】
通知ユニット250はサポートロボットサービスの達成度スコアをディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。図8に示す例では、サポートロボットサービスの達成度スコアは100点中の70点となっている。また、通知ユニット250はサポートロボットサービスのサービス達成度の評価をディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。例えば、サポートロボットサービスに対して設定された閾値が50点である場合、達成度スコアの70点は合格であるので通知ユニット250は評価として“Good”を達成度ウインドウ262に表示する。
【0090】
次に、都市管理支援装置200による警備ロボットサービスのサービス達成度の計算方法について説明する。都市管理支援装置200のサービスシミュレータ220に入力される警備ロボットサービスの提供状況に関する情報には、例えば、各警備ロボットの状態に関する情報、及び予定経路が含まれる。警備ロボットの状態に関する情報には、例えば、位置、速度、サービス中かどうか、及びバッテリ残量が含まれる。これらの情報がサービスシミュレータ220に入力される。サービスシミュレータ220は入力された情報に基づいて時間単位での監視範囲(平米)を予測する。そして、予測された監視範囲を警備ロボットサービスの状況予測値として出力する。
【0091】
達成度演算ユニット230はサービスシミュレータ220により予測された監視範囲に基づいてサービス達成度を計算する。警備ロボットサービスのサービス達成度の計算には以下の式5が用いられる。式5における係数は任意に設定可能な数値であり、例えば10に設定することができる。係数の値が小さいほどサービス達成度に対する監視範囲の縮小の影響は大きくなる。ただし、式5の右辺の計算値は整数になるように四捨五入されサービス達成度は0から100までの整数で表される。式5の右辺の計算値が負の値になる場合、サービス達成度は0とされる。
サービス達成度=100-(計画された監視範囲(平米)-予測された監視範囲)/係数 ・・・式5
【0092】
通知ユニット250は警備ロボットサービスの達成度スコアをディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。図8に示す例では、警備ロボットサービスの達成度スコアは100点中の80点となっている。また、通知ユニット250は警備ロボットサービスのサービス達成度の評価をディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。例えば、警備ロボットサービスに対して設定された閾値が60点である場合、達成度スコアの70点は合格であるので通知ユニット250は評価として“Good”を達成度ウインドウ262に表示する。
【0093】
次に、第2の具体例における資源提供状況ウインドウ264の表示について説明する。図8に示す例では、達成度ウインドウ262に表示されている定期路線バスサービスの達成度スコアがNo-Goodになり、それに合わせて資源提供状況ウインドウ264の市街地図上に給電不可となった給電ステーション113Bが明示される。給電ステーションの給電不可は給電ステーションへ電力を供給する電線が断線したり給電ステーション自体が故障したりすることで生じる異常である。給電ステーションの異常は例えば給電中の移動体の充電状況から把握することができる。給電不可となった給電ステーション113Bは路線バス152A,152Bのサービス対象経路153上にあり、路線バス152A,152Bの充電に使用されている。
【0094】
図8に示すようなディスプレイ260上の表示は、都市管理者140に対し、給電ステーション113Bでの給電が不可となったことが原因で極近い将来において定期路線バスサービスの達成度が低下することを認識させることができる。また、定期路線バスサービスの達成度スコアがGoodからNo-Goodに変化したときには、達成度ウインドウ262における定期路線バスサービスに関連する文字が強調表示されるとともに、警報器270からアラートが出力される。
【0095】
さらに、資源提供状況ウインドウ264には、代替方法提案ユニット240により提案された定期路線バスサービスの提供方法の代替方法が表示される。代替方法提案ユニット240は、給電ステーション113Bの異常の定期路線バスサービスへの影響を最小限に抑えることができる代替方法をサービス定義の中から選択して通知ユニット250に入力する。
【0096】
図8に示す例では、給電ステーション113Hを通過する臨時経路153bが資源提供状況ウインドウ264に表示されている。提案された臨時経路153bを選択すれば、給電ステーション113Hでの充電を可能にしつつ、全てのバス停151A,151E,151K,151H,151Cに路線バス152A,152Bを停車させることができる。提案を受けた都市管理者140は定期路線バスサービスのサービス提供者に対し、給電ステーション113Bでの給電が不可となったことの定期路線バスサービスへの影響を知らせる。そして、代替方法として臨時経路153bに路線バス152A,152Bの経路を切り替えて給電ステーション113Hを利用することをアドバイスする。
【0097】
3-4.第3の具体例
3-4-1.サービスの概要
第3の具体例として、都市100で提供されるサービスが集積場を共有するサービスである例について説明する。図9は第3の具体例について説明する図である。
【0098】
第3の具体例においてサービス間で共有される資源110は集積場である。集積場は一定のスペースを有する場所であるから、物資を一時的に置いておく物置として利用可能であるし、車両を一時的に置いておく駐車場としても利用可能である。都市100には複数の集積場114D,114E,114Kが設けられている。
【0099】
第3の具体例において資源110である集積場を共有するサービスは物流、都市100の住人向けのレンタルトランクルーム、及びオンデマンドバスの3つのサービスである。図1及び図2に示す例に当てはめるならば、物流サービスがサービスA、レンタルトランクルームサービスがサービスB、オンデマンドバスサービスがサービスCとなる。集積場利用可能な面積に制約のある有限の資源110であり、物資や車両を一時的に置いておく場所を必要とする各サービスによって共用される。
【0100】
サービスとしての物流は配送ロボットを用いて拠点間やビル間で荷物を配送するサービスであって、その詳細は第1の具体例で説明した通りである。外部から都市100に輸送された荷物は出入口100aから都市100の内部に運びこまれ、出入口100aに最も近いDブロックに設けられた集積場114Dに集積される。集積場114Dに集積された荷物170は配送ロボット175A,175B,175Cによって都市100内の各所(荷物の中継所を含む)に配送される。
【0101】
サービスとしてのレンタルトランクルームは移動可能なトランク172D,172E,172Kを物置として貸し出すサービスである。レンタルトランクルームサービスの提供者120Bは例えば倉庫会社である。レンタルトランクルームサービスの利用者130は都市100の住民である。トランク172D,172E,172Kは都市100内の集積場114D,114E,114Kの一角に設置される。トランク172D,172E,172Kはトラックによって移転可能なコンテナであるので、その設置個所や設置個数はサービスの利用頻度や状況に応じて変更される。例えばAブロックの住民の要請によってEブロックの集積場114Eに設置するトランク172Eの数を増やすことや、逆にAブロックから遠いDブロックの集積場114Dにトランクを移して代わりに利用料金を安くすること等が可能である。
【0102】
サービスとしてのオンデマンドバスは乗客からの配車要求に応じてオンデマンドバス174A,174Bを配車するサービスである。オンデマンドバスサービスの提供者120Cは例えばバス会社である。オンデマンドバスサービスの利用者130はオンデマンドバスに乗って移動する乗客である。オンデマンドバス174A,174Bには充電可能なバッテリを搭載した電気駆動の自動運転バスが用いられている。オンデマンドバスサービスを利用したい乗客131Cは自身が所持する端末のアプリ経由で乗降場所と時間を指定する。乗客131Cからの配車の要求を受けて、待機しているオンデマンドバス174Aが指定時間に指定場所に配車される。オンデマンドバス174A,174Bを待機させておく駐車場として集積場114Eは使用されている。
【0103】
3-4-2.都市管理支援装置の画面の例
都市100において上述の3つのサービスが提供されている場合、都市管理支援装置200はそれらのサービスに関連する支援情報を都市管理者140に提供する。
【0104】
図10は第3の具体例における都市管理支援装置200のディスプレイ260の画面の一例を示す。達成度ウインドウ262には、物流、レンタルトランクルームサービス、及びオンデマンドバスのそれぞれのサービスについて所定時間後のサービス達成度が点数(達成度スコア)で表示されている。以下、サービス毎の達成度の計算方法について説明する。ただし、物流サービスのサービス達成度の計算方法については第1の具体例で説明した通りであるので、ここでは重ねての説明は省略する。
【0105】
都市管理支援装置200によるレンタルトランクルームサービスのサービス達成度の計算方法について説明する。都市管理支援装置200のサービスシミュレータ220に入力されるレンタルトランクルームサービスの提供状況に関する情報には、例えば、各トランクの状態に関する情報、及び移動予定が含まれる。トランクの状態に関する情報には、例えば、設置場所、契約者、及び積載量が含まれる。これらの情報がサービスシミュレータ220に入力される。サービスシミュレータ220は入力された情報に基づいて所定時間以内に利用が想定される各契約者の住居とトランクとの平均距離(メートル単位)を予測する。そして、予測された平均距離をレンタルトランクルームサービスの状況予測値として出力する。
【0106】
達成度演算ユニット230はサービスシミュレータ220により予測された平均距離に基づいてサービス達成度を計算する。レンタルトランクルームサービスのサービス達成度の計算には以下の式6が用いられる。式6における標準距離は利用者が許容する平均距離であり、例えば300メートルに設定することができる。係数は任意に設定可能な数値であり、例えば10に設定することができる。係数の値が小さいほどサービス達成度に対する平均距離の拡大の影響は大きくなる。ただし、式6の右辺の計算値は整数になるように四捨五入されサービス達成度は0から100までの整数で表される。式6の右辺の計算値が負の値になる場合、サービス達成度は0とされる。
サービス達成度=100-(予測された平均距離-標準距離)/係数 ・・・式6
【0107】
通知ユニット250はレンタルトランクルームサービスの達成度スコアをディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。図10に示す例では、レンタルトランクルームサービスの達成度スコアは100点中の40点となっている。また、通知ユニット250はレンタルトランクルームサービスのサービス達成度の評価をディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。例えば、サポートロボットサービスに対して設定された閾値が50点である場合、達成度スコアの40点は不合格であるので通知ユニット250は評価として“No-Good”を達成度ウインドウ262に表示する。
【0108】
次に、都市管理支援装置200によるオンデマンドバスサービスのサービス達成度の計算方法について説明する。都市管理支援装置200のサービスシミュレータ220に入力されるオンデマンドバスサービスの提供状況に関する情報には、例えば、各車両の状態に関する情報、及び需要に関する情報が含まれる。車両の状態に関する情報には、例えば、位置、速度、乗客数、サービス中かどうか、及びバッテリ残量が含まれる。需要に関する情報には、例えば、時刻、起終点、及び人数が含まれる。これらの情報がサービスシミュレータ220に入力される。サービスシミュレータ220は入力された情報に基づいて指定時刻からの平均遅刻時間(例えば過去1時間での平均値)を予測する。そして、予測された平均遅刻時間をオンデマンドバスサービスの状況予測値として出力する。
【0109】
達成度演算ユニット230はサービスシミュレータ220により予測された平均遅刻時間に基づいてサービス達成度を計算する。オンデマンドバスサービスのサービス達成度の計算には以下の式7が用いられる。式7における係数は任意に設定可能な数値であり、例えば30秒に設定することができる。係数の値が小さいほどサービス達成度に対する遅刻の影響は大きくなる。ただし、式7の右辺の計算値は整数になるように四捨五入されサービス達成度は0から100までの整数で表される。式7の右辺の計算値が負の値になる場合、サービス達成度は0とされる。
サービス達成度=100-平均遅刻時間/係数 ・・・式7
【0110】
通知ユニット250はオンデマンドバスサービスの達成度スコアをディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。図10に示す例では、オンデマンドバスサービスの達成度スコアは100点中の80点となっている。また、通知ユニット250はオンデマンドバスサービスのサービス達成度の評価をディスプレイ260の達成度ウインドウ262に表示する。例えば、オンデマンドバスサービスに対して設定された閾値が60点である場合、達成度スコアの80点は合格であるので通知ユニット250は評価として“Good”を達成度ウインドウ262に表示する。
【0111】
なお、式7にて計算されるサービス達成度は、オンデマンドバスサービスのサービス提供者の視点でのサービス達成度(第1値)である。オンデマンドバスサービスの利用者の視点に立つのであれば、以下の式8で計算されるサービス達成度(第2値)を計算してもよいし、両方のサービス達成度を計算してもよい。式8を用いる場合、サービスシミュレータ220では所定時間後の乗客数が予測される。式8における係数は任意に設定可能な数値であり、例えば10に設定することができる。係数の値が大きいほどサービス達成度に対する混雑度(乗客数/座席数)の影響は大きくなる。ただし、式8の右辺の計算値は整数になるように四捨五入されサービス達成度は0から100までの整数で表される。式8の右辺の計算値が負の値になる場合、サービス達成度は0とされる。
サービス達成度=100-係数×乗客数/座席数 ・・・式8
【0112】
次に、第3の具体例における資源提供状況ウインドウ264の表示について説明する。図10に示す例では、達成度ウインドウ262に表示されている物流サービスの達成度スコアとレンタルトランクルームサービスの達成度スコアとがNo-Goodになり、それに合わせて資源提供状況ウインドウ264の市街地図上に使用不可となった集積場114Dが明示される。集積場の使用不可は例えば荷崩れによって一部のスペースが使用できなくなる異常である。集積場の異常は例えば集積場に設置されたカメラの映像から把握することができる。使用不可となった集積場114Dは荷物170の置場として使用されるとともに、トランク172Dの置場としても使用されている。
【0113】
図10に示すようなディスプレイ260上の表示は、都市管理者140に対し、集積場114Dでの給電が不可となったことが原因で極近い将来において物流サービスとレンタルトランクルームサービスの達成度が低下することを認識させることができる。また、物流サービスとレンタルトランクルームサービスの各達成度スコアがGoodからNo-Goodに変化したときには、達成度ウインドウ262における物流サービスとレンタルトランクルームサービスに関連する文字が強調表示されるとともに、警報器270からアラートが出力される。
【0114】
さらに、資源提供状況ウインドウ264には、代替方法提案ユニット240により提案された物流サービスとレンタルトランクルームサービスの各提供方法の代替方法が表示される。代替方法提案ユニット240は、集積場114Dの異常の物流サービスとレンタルトランクルームサービスへの影響を最小限に抑えることができる代替方法をサービス定義の中から選択して通知ユニット250に入力する。
【0115】
図10に示す例では、集積場114Eに設けられた荷物171の仮設置場(仮設荷物置場)が資源提供状況ウインドウ264に表示されている。提案された仮設荷物置場を荷物171の置場として利用することで、仮設荷物置場から都市100内の各所(荷物の中継所を含む)に荷物を配送することが可能となり、都市100内の物流の混乱を抑えることができる。提案を受けた都市管理者140は物流サービスのサービス提供者に対し、集積場114Dの使用が不可となったことの物流サービスへの影響を知らせる。そして、代替方法として集積場114Eを仮設荷物置場として利用することをアドバイスする。
【0116】
さらに、図10に示す例では、集積場114Kに設けられたトランク173の仮設置場(仮設トランク置場)が資源提供状況ウインドウ264に表示されている。提案された仮設トランク置場をトランク173の置場として利用することで、レンタルトランクルームサービスを利用する住民の不便を低減することができる。提案を受けた都市管理者140はレンタルトランクルームサービスのサービス提供者に対し、集積場114Dの使用が不可となったことのレンタルトランクルームサービスへの影響を知らせる。そして、代替方法として集積場114Kを仮設トランク置場として利用することをアドバイスする。
【0117】
なお、集積場114Eは2台のオンデマンドバス174A,174Bの駐車場として使用されている。このため集積場114Eを仮設荷物置場とする場合、集積場114Eには2台のオンデマンドバス174A,174Bのうちのどちらか1台しか駐車できなくなる。しかし、オンデマンドバス174A,174Bは自走可能であり、都市100には他にも駐車可能な場所は存在する。ゆえに、都市100の有限の資源110としての集積場114Eの有効利用を考えた場合、集積場114Eを仮設荷物置場として用いた方が総合的なサービス達成度は向上する。都市管理者140はオンデマンドバスサービスのサービス提供者に対し、集積場114Eの駐車場の一部を仮設荷物置場とすることを通知する。その際、駐車場を明け渡すことの代償として、都市管理者140からオンデマンドバスサービスのサービス提供者に対して何らかのインセンティブを与えてもよい。
【0118】
4.その他
ネットワークもまた都市100の有限の資源110と言える。ネットワークを共用するサービスとしては遠隔運転車両の遠隔運転サービスと動画配信サービスとを挙げることができる。資源110としてのネットワークの提供状態の異常とは、例えばネットワークの混雑によって帯域が狭くなることである。ネットワークの帯域が狭くなると移動体通信を用いた遠隔運転を継続することができず遠隔運転から自動運転に切り替わりがちになる。よって、遠隔運転サービスのサービス達成度としては遠隔運転率を用いることができる。また、動画配信サービスのサービス達成度としては一定時間内の動画のフリーズ率を用いることができる。
【符号の説明】
【0119】
100 都市
100a 出入口
110 資源
113A,113B,113D,113G,113H,113J 給電ステーション
114D,114E,114K 集積場
120A,120B,120C サービス提供者
130 利用者
140 都市管理者
151A,151C,151E,151K,151H バス停
152A,152B 路線バス
153 サービス対象経路
154A,154B,175A,175B,175C 配送ロボット
156A,156B ライドシェア車両
162A,162B,162C,162D,162E サポートロボット
164A,164B,164C,164D,164E 警備ロボット
170,171 荷物
172D,172E,172K,173 トランク
174A,174B オンデマンドバス
200 都市管理支援装置
260 ディスプレイ
262 達成度ウインドウ
264 資源提供状況ウインドウ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10