(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20241106BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20241106BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
F04D29/58 P
F04D29/42 H
F04D29/42 M
H02K9/06 A
(21)【出願番号】P 2021208277
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 英文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤也
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-13695(JP,A)
【文献】特開2002-138962(JP,A)
【文献】特開平9-308189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 29/58
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に支持される回転軸と、
前記ハウジングに収容されるとともに前記回転軸を回転させるモータと、
前記回転軸に取り付けられるとともに前記回転軸と一体的に回転することで空気を圧縮するコンプレッサインペラと、を備え、
前記モータは、
前記ハウジングの内周面に固定されるステータコアを有するステータと、
前記ステータの内側に配置されるとともに前記回転軸と一体的に回転するロータと、を備え、
前記ハウジングは、前記モータを収容するモータ室を有している遠心圧縮機であって、
前記モータ室内に、前記ハウジング外の空気を前記コンプレッサインペラによって圧縮し、圧縮された空気の一部を導入する圧縮空気導入口と、
前記モータ室内に、前記ハウジング外の空気を圧縮せずに導入する空気導入口と、
前記モータ室内の空気を前記モータ室外へ排出する排出口と、
前記モータ室内に、前記圧縮空気導入口から導入された空気を大気圧よりも低い圧力にした状態で前記モータ室内に噴出するノズルと、
前記ノズルの噴出先に配置され、前記空気導入口から前記モータ室内に導入された空気と前記ノズルから噴出された圧縮された空気とが混合される混合部と、
前記ステータと前記ロータとの間に設けられ、前記混合部からの空気を昇圧させて前記排出口に向けて流すディフューザ流路と、を備えていることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記コンプレッサインペラを収容するインペラ室と、
前記インペラ室に空気を吸入する吸入口と、を有し、
前記コンプレッサインペラは、前記回転軸の第1端に連結されており、
前記空気導入口は、前記回転軸の前記第1端に開口するとともに前記吸入口に連通し、
前記回転軸内には、前記空気導入口と前記モータ室内とを連通する軸内通路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記ロータは、
筒部材と、
前記筒部材の内側に固定される磁性体と、を有し、
前記回転軸は、前記筒部材の軸方向の両端部にそれぞれ設けられる軸部材を含み、
前記軸内通路は、前記磁性体の内部を貫通していることを特徴とする請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記モータよりも前記コンプレッサインペラ寄りで前記回転軸をラジアル方向で回転可能に支持する第1ラジアル軸受と、
前記モータよりも前記コンプレッサインペラとは反対側で前記回転軸をラジアル方向で回転可能に支持する第2ラジアル軸受と、を備え、
前記ハウジングは、
前記モータ室に連通するとともに前記第1ラジアル軸受を保持する第1ラジアル軸受保持部と、
前記モータ室に連通するとともに前記第2ラジアル軸受を保持する第2ラジアル軸受保持部と、を有し、
前記ノズルは、前記第2ラジアル軸受保持部に設けられ、
前記混合部は、前記モータ室における前記モータと前記第2ラジアル軸受保持部との間に配置され、
前記軸内通路から前記ハウジング内に導入された空気は、前記第2ラジアル軸受保持部内を前記モータとは反対側から通過して、前記混合部において前記ノズルから噴出された圧縮された空気と混合することを特徴とする請求項3に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記コンプレッサインペラと前記第1ラジアル軸受との間で前記回転軸をスラスト方向で回転可能に支持するスラスト軸受を備え、
前記ハウジングは、前記第1ラジアル軸受保持部に連通するとともに前記スラスト軸受を収容するスラスト軸受収容室を有し、
前記回転軸の外周面には、前記スラスト軸受収容室内に配置されるとともに前記回転軸と一体的に回転する環状の支持部が設けられており、
前記スラスト軸受は、
前記支持部に対して前記コンプレッサインペラ寄りに位置する第1スラスト軸受部と、
前記支持部に対して前記第1ラジアル軸受寄りに位置する第2スラスト軸受部と、を含み、
前記ハウジングには、
前記第1ラジアル軸受保持部内の空気を前記排出口に向けて流す第1排出路と、
前記モータ室内の空気を前記スラスト軸受収容室に向けて流す第2排出路と、
前記スラスト軸受収容室における前記第1スラスト軸受部寄りの壁部から前記スラスト軸受収容室内の空気を前記排出口に向けて流す第3排出路と、が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、ハウジングと、回転軸と、モータと、コンプレッサインペラと、を備えている。回転軸は、ハウジングに回転可能に支持されている。モータは、ハウジングに収容されるとともに回転軸を回転させる。コンプレッサインペラは、回転軸に取り付けられている。そして、コンプレッサインペラは、回転軸と一体的に回転することで空気を圧縮する。モータは、ステータと、ロータと、を備えている。ステータは、ハウジングの内周面に固定されるステータコアを有している。ロータは、ステータの内側に配置されている。ロータは、回転軸と一体的に回転する。ハウジングは、モータを収容するモータ室を有している。
【0003】
ところで、このような遠心圧縮機においては、遠心圧縮機の耐久性の向上を図るために、例えば、モータのようなモータ室内に収容されている部品を冷却したいという要望がある。そこで、例えば特許文献1のように、コンプレッサインペラによって圧縮された空気の一部をモータ室内に導入することが考えられている。このように、空気をモータ室内に導入することで、モータ等を空気によって冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンプレッサインペラによって圧縮された空気は、ハウジング外の空気に比べると高温であるため、モータ等の冷却が不十分になる虞がある。したがって、遠心圧縮機の耐久性のさらなる向上を図ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する遠心圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジングに回転可能に支持される回転軸と、前記ハウジングに収容されるとともに前記回転軸を回転させるモータと、前記回転軸に取り付けられるとともに前記回転軸と一体的に回転することで空気を圧縮するコンプレッサインペラと、を備え、前記モータは、前記ハウジングの内周面に固定されるステータコアを有するステータと、前記ステータの内側に配置されるとともに前記回転軸と一体的に回転するロータと、を備え、前記ハウジングは、前記モータを収容するモータ室を有している遠心圧縮機であって、前記モータ室内に、前記ハウジング外の空気を前記コンプレッサインペラによって圧縮し、圧縮された空気の一部を導入する圧縮空気導入口と、前記モータ室内に、前記ハウジング外の空気を圧縮せずに導入する空気導入口と、前記モータ室内の空気を前記モータ室外へ排出する排出口と、前記モータ室内に、前記圧縮空気導入口から導入された空気を大気圧よりも低い圧力にした状態で前記モータ室内に噴出するノズルと、前記ノズルの噴出先に配置され、前記空気導入口から前記モータ室内に導入された空気と前記ノズルから噴出された圧縮された空気とが混合される混合部と、前記ステータと前記ロータとの間に設けられ、前記混合部からの空気を昇圧させて前記排出口に向けて流すディフューザ流路と、を備えている。
【0007】
これによれば、ノズルからモータ室内に噴出される圧縮された空気の圧力は、大気圧よりも低い。このため、ノズルの噴出先に配置された混合部が負圧となるため、空気導入口からモータ室内に導入された空気が混合部に向けて吸引され易くなる。そして、混合部からの空気がディフューザ流路によって昇圧されながら排出口に向けて流れて、排出口からモータ室外へ排出される。したがって、空気導入口からモータ室内に導入された空気が混合部に向けて吸引され易く、さらには、モータ室内の空気が排出口を介してモータ室外へ排出され易くなっている。その結果、ハウジング外の空気を圧縮せずに空気導入口を介してモータ室内に効率良く導入することができる。したがって、コンプレッサインペラによって圧縮された空気の一部よりも低温である空気を積極的にモータ室内に導入することができる。よって、例えば、モータのようなモータ室内に収容されている部品を、圧縮された空気よりも低温である空気によって効率良く冷却することができる。したがって、遠心圧縮機の耐久性の向上を図ることができる。
【0008】
上記遠心圧縮機において、前記ハウジングは、前記コンプレッサインペラを収容するインペラ室と、前記インペラ室に空気を吸入する吸入口と、を有し、前記コンプレッサインペラは、前記回転軸の第1端に連結されており、前記空気導入口は、前記回転軸の前記第1端に開口するとともに前記吸入口に連通し、前記回転軸内には、前記空気導入口と前記モータ室内とを連通する軸内通路が形成されているとよい。
【0009】
これによれば、インペラ室に吸入される前の空気が吸入口から空気導入口を介して軸内通路を通過して、モータ室内に導入される。したがって、例えば、空気導入口に空気を供給するための配管を別途設ける必要が無いため、遠心圧縮機の構成を簡素化することができる。
【0010】
上記遠心圧縮機において、前記ロータは、筒部材と、前記筒部材の内側に固定される磁性体と、を有し、前記回転軸は、前記筒部材の軸方向の両端部にそれぞれ設けられる軸部材を含み、前記軸内通路は、前記磁性体の内部を貫通しているとよい。
【0011】
これによれば、軸内通路を通過する空気によって磁性体を冷却することができる。したがって、磁性体を、圧縮された空気よりも低温である空気によって効率良く冷却することができる。よって、遠心圧縮機の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0012】
上記遠心圧縮機において、前記モータよりも前記コンプレッサインペラ寄りで前記回転軸をラジアル方向で回転可能に支持する第1ラジアル軸受と、前記モータよりも前記コンプレッサインペラとは反対側で前記回転軸をラジアル方向で回転可能に支持する第2ラジアル軸受と、を備え、前記ハウジングは、前記モータ室に連通するとともに前記第1ラジアル軸受を保持する第1ラジアル軸受保持部と、前記モータ室に連通するとともに前記第2ラジアル軸受を保持する第2ラジアル軸受保持部と、を有し、前記ノズルは、前記第2ラジアル軸受保持部に設けられ、前記混合部は、前記モータ室における前記モータと前記第2ラジアル軸受保持部との間に配置され、前記軸内通路から前記ハウジング内に導入された空気は、前記第2ラジアル軸受保持部内を前記モータとは反対側から通過して、前記混合部において前記ノズルから噴出された圧縮された空気と混合するとよい。
【0013】
これによれば、空気によって磁性体を冷却しつつ、さらには、第2ラジアル軸受も空気によって冷却することができる。したがって、磁性体に加えて、第2ラジアル軸受も、圧縮された空気よりも低温である空気によって効率良く冷却することができる。よって、遠心圧縮機の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0014】
上記遠心圧縮機において、前記コンプレッサインペラと前記第1ラジアル軸受との間で前記回転軸をスラスト方向で回転可能に支持するスラスト軸受を備え、前記ハウジングは、前記第1ラジアル軸受保持部に連通するとともに前記スラスト軸受を収容するスラスト軸受収容室を有し、前記回転軸の外周面には、前記スラスト軸受収容室内に配置されるとともに前記回転軸と一体的に回転する環状の支持部が設けられており、前記スラスト軸受は、前記支持部に対して前記コンプレッサインペラ寄りに位置する第1スラスト軸受部と、前記支持部に対して前記第1ラジアル軸受寄りに位置する第2スラスト軸受部と、を含み、前記ハウジングには、前記第1ラジアル軸受保持部内の空気を前記排出口に向けて流す第1排出路と、前記モータ室内の空気を前記スラスト軸受収容室に向けて流す第2排出路と、前記スラスト軸受収容室における前記第1スラスト軸受部寄りの壁部から前記スラスト軸受収容室内の空気を前記排出口に向けて流す第3排出路と、が形成されているとよい。
【0015】
これによれば、モータ室内においてディフューザ流路を通過した空気が、第1ラジアル軸受保持部内を通過し、その後、第1排出路を介して排出口からモータ室外へ排出される。したがって、第1ラジアル軸受保持部内を通過する空気によって、第1ラジアル軸受を冷却することができる。また、モータ室内においてディフューザ流路を通過した空気が、第2排出路を介してスラスト軸受収容室内に流入する。そして、スラスト軸受収容室内に流入した空気は、第1スラスト軸受部に向けて流れる空気と、第2スラスト軸受部に向けて流れる空気とに分岐される。第1スラスト軸受部に向けて流れた空気は、第3排出路を介して排出口からモータ室外へ排出される。したがって、スラスト軸受収容室内を第1スラスト軸受部に向けて流れる空気によって、第1スラスト軸受部を冷却することができる。さらに、スラスト軸受収容室と第1ラジアル軸受保持部とは連通しているため、第2スラスト軸受部に向けて流れた空気は、第1ラジアル軸受保持部内に流入し、第1排出路を介して排出口からモータ室外へ排出される。したがって、スラスト軸受収容室内を第2スラスト軸受部に向けて流れる空気によって、第2スラスト軸受部を冷却することができる。よって、空気によってスラスト軸受が効率良く冷却される。以上により、磁性体、第1ラジアル軸受、第2ラジアル軸受、及びスラスト軸受それぞれを効率良く冷却することができる。したがって、遠心圧縮機の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、遠心圧縮機の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態における遠心圧縮機の断面図である。
【
図2】遠心圧縮機の一部分を拡大して示す断面図である。
【
図3】遠心圧縮機の一部分を拡大して示す断面図である。
【
図4】遠心圧縮機の一部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、遠心圧縮機を具体化した一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。本実施形態の遠心圧縮機は、燃料電池車に搭載されている。遠心圧縮機は、空気を圧縮する。
(遠心圧縮機10の全体構成)
図1に示すように、遠心圧縮機10は、ハウジング11を備えている。ハウジング11は、金属材料製である。ハウジング11は、例えば、アルミニウム製である。ハウジング11は、モータハウジング12、コンプレッサハウジング13、タービンハウジング14、第1プレート15、第2プレート16、及びシールプレート17を有している。
【0019】
モータハウジング12は、筒状である。モータハウジング12は、板状の端壁12aと、周壁12bと、を有している。周壁12bは、端壁12aの外周部から筒状に延びている。第1プレート15は、モータハウジング12の周壁12bの開口側の端部に連結されている。第1プレート15は、モータハウジング12の周壁12bの開口を閉塞している。そして、モータハウジング12の端壁12a及び周壁12bと第1プレート15とによって、モータ室18が区画されている。
【0020】
図2に示すように、第1プレート15におけるモータハウジング12とは反対側の端面15aには、第1凹部15c及び第2凹部15dが形成されている。第1凹部15c及び第2凹部15dは、円孔状である。第1凹部15cの内径は、第2凹部15dの内径よりも大きい。第2凹部15dは、第1凹部15cの底面15fに形成されている。第1凹部15cの軸線と第2凹部15dの軸線とは一致している。
【0021】
シールプレート17は、第1凹部15cに嵌め込まれている。シールプレート17は、例えば、図示しないボルトによって第1プレート15に取り付けられている。シールプレート17は、第2凹部15dの開口を閉塞している。そして、シールプレート17と第2凹部15dとによって、スラスト軸受収容室19が区画されている。したがって、ハウジング11は、スラスト軸受収容室19を有している。また、シールプレート17は、シャフト挿通孔17hを有している。シャフト挿通孔17hは、シールプレート17の中央部に形成されている。シャフト挿通孔17hは、スラスト軸受収容室19に開口している。
【0022】
第1プレート15は、第1ラジアル軸受保持部21を有している。第1ラジアル軸受保持部21は、円筒状である。第1ラジアル軸受保持部21は、第1プレート15におけるモータハウジング12側の端面15bの中央部からモータ室18内に突出している。第1ラジアル軸受保持部21は、モータ室18に連通している。第1ラジアル軸受保持部21は、第1プレート15を貫通して第2凹部15dの底面15hに開口している。したがって、第1ラジアル軸受保持部21は、スラスト軸受収容室19に連通している。よって、スラスト軸受収容室19は、第1ラジアル軸受保持部21に連通する。第1ラジアル軸受保持部21の軸線は、第1凹部15cの軸線及び第2凹部15dの軸線と一致している。
【0023】
コンプレッサハウジング13は、筒状である。コンプレッサハウジング13は、円孔状の吸入口22を有している。コンプレッサハウジング13は、吸入口22の軸線が、シールプレート17のシャフト挿通孔17hの軸線と一致した状態で、第1プレート15の端面15aに連結されている。吸入口22は、コンプレッサハウジング13における第1プレート15とは反対側の端面に開口している。
【0024】
コンプレッサハウジング13とシールプレート17との間には、インペラ室23と、吐出室24と、コンプレッサディフューザ流路25と、が形成されている。したがって、ハウジング11は、インペラ室23を有している。シールプレート17は、インペラ室23とスラスト軸受収容室19とを隔てている。インペラ室23は、吸入口22に連通している。インペラ室23は、吸入口22から離れるにつれて徐々に拡径していく略円錐台孔形状になっている。吐出室24は、インペラ室23の周囲で吸入口22の軸線周りに延びている。コンプレッサディフューザ流路25は、インペラ室23と吐出室24とを連通している。インペラ室23は、シールプレート17のシャフト挿通孔17hに連通している。
【0025】
図3に示すように、モータハウジング12の端壁12aは、第2ラジアル軸受保持部26を有している。第2ラジアル軸受保持部26は、円筒状である。第2ラジアル軸受保持部26は、モータハウジング12の端壁12aの内面の中央部からモータ室18内に突出している。第2ラジアル軸受保持部26は、モータ室18に連通している。第2ラジアル軸受保持部26の内側は、モータハウジング12の端壁12aを貫通して端壁12aの外面に開口している。第1ラジアル軸受保持部21の軸線と第2ラジアル軸受保持部26の軸線とは一致している。
【0026】
第2プレート16は、モータハウジング12の端壁12aの外面に連結されている。第2プレート16は、シャフト挿通孔16hを有している。シャフト挿通孔16hは、第2プレート16の中央部に形成されている。
【0027】
タービンハウジング14は、筒状である。タービンハウジング14は、円孔状の吐出口27を有している。タービンハウジング14は、吐出口27の軸線が、第2プレート16のシャフト挿通孔16hの軸線と一致した状態で、第2プレート16におけるモータハウジング12とは反対側の端面16aに連結されている。吐出口27は、タービンハウジング14における第2プレート16とは反対側の端面に開口している。
【0028】
タービンハウジング14と第2プレート16の端面16aとの間には、タービン室28と、吸入室29と、連通通路30と、が形成されている。タービン室28は、吐出口27に連通している。吸入室29は、タービン室28の周囲で吐出口27の軸線周りに延びている。連通通路30は、タービン室28と吸入室29とを連通している。タービン室28は、第2プレート16のシャフト挿通孔16hに連通している。
【0029】
(モータ31の構成)
図1に示すように、遠心圧縮機10は、モータ31を備えている。モータ31は、モータ室18に収容されている。したがって、モータ室18は、モータ31を収容する。そして、モータ31は、ハウジング11内に収容されている。
【0030】
モータ31は、ステータ32と、ロータ33と、を備えている。ステータ32は、筒状のステータコア34と、コイル35と、を有している。コイル35は、ステータコア34に巻回されている。ステータコア34は、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定されている。ステータコア34の両端面には、コイル35の一部であるコイルエンド36がそれぞれ突出している。なお、以下の説明では、ステータコア34における第1プレート15側に位置するコイルエンド36を、「第1コイルエンド36a」と記載する。また、ステータコア34におけるモータハウジング12の端壁12a側に位置するコイルエンド36を、「第2コイルエンド36b」と記載する。
【0031】
(樹脂部37の構成)
図4に示すように、ステータ32は、樹脂部37を備えている。樹脂部37は、ステータコア34及びコイルエンド36を被覆している。樹脂部37は、第1樹脂部38、第2樹脂部39、及び第3樹脂部40を有している。したがって、ステータ32は、第1樹脂部38、第2樹脂部39、及び第3樹脂部40を備えている。第1樹脂部38は、第1コイルエンド36aを樹脂で覆う筒状である。第2樹脂部39は、第2コイルエンド36bを樹脂で覆う筒状である。第3樹脂部40は、ステータコア34の内周面を樹脂で覆う筒状である。第3樹脂部40は、ステータコア34の内側でステータコア34の軸方向に延びている。第3樹脂部40は、第1樹脂部38と第2樹脂部39とを接続している。第3樹脂部40の内周面は、第2樹脂部39から第1樹脂部38に向かうにつれて内径が拡径していく円錐孔になっている。
【0032】
(ロータ33の構成)
ロータ33は、ステータ32の内側に配置されている。ロータ33は、筒部材41と、磁性体である永久磁石42と、を有している。本実施形態では、筒部材41は、例えば、チタン合金製である。筒部材41は、筒部材41の軸線が直線状に延びる筒状である。筒部材41の外径は一定である。永久磁石42は、円筒状である。永久磁石42は、筒部材41の内側に配置されている。永久磁石42の軸線は、筒部材41の軸線と一致している。永久磁石42は、永久磁石42の径方向に着磁されている。永久磁石42は、筒部材41の内周面に圧入されている。したがって、永久磁石42は、筒部材41の内側に固定されている。
【0033】
永久磁石42の軸方向に位置する両端面それぞれは、ステータコア34の両端面それぞれに対してステータコア34の径方向で重なる位置に配置されている。永久磁石42における軸線が延びる方向の長さは、筒部材41における軸線が延びる方向の長さよりも短い。永久磁石42の両端面は、筒部材41の内側に位置している。よって、筒部材41の軸方向に位置する両端部それぞれは、永久磁石42の両端面それぞれに対して軸方向へ突出している。そして、筒部材41の両端部は、ステータコア34の両端面それぞれに対して軸方向へ突出している。
【0034】
(回転軸43について)
図1に示すように、遠心圧縮機10は、回転軸43を備えている。回転軸43は、軸部材である第1軸部材44及び第2軸部材45を含む。第1軸部材44及び第2軸部材45は、筒部材41の軸方向の両端部にそれぞれ設けられている。第1軸部材44は、回転軸43の軸方向における第1端側の部位を構成し、第2軸部材45は、回転軸43の軸方向における第2端側の部位を構成している。第1軸部材44及び第2軸部材45は、例えば、鉄製である。
【0035】
第1軸部材44は、円柱状である。第1軸部材44の一端部は、筒部材41の内周面における軸方向の一端部に圧入されている。よって、第1軸部材44は、筒部材41の内周面に固定されている。第1軸部材44の他端部は、モータ室18から第1ラジアル軸受保持部21の内側、スラスト軸受収容室19、及びシャフト挿通孔17hを通過して、インペラ室23内に突出している。
【0036】
第2軸部材45は、円柱状である。第2軸部材45の一端部は、筒部材41の内周面における軸方向の他端部に圧入されている。よって、第2軸部材45は、筒部材41の内周面に固定されている。第2軸部材45の他端部は、モータ室18から第2ラジアル軸受保持部26の内側、及びシャフト挿通孔16hを通過して、タービン室28内に突出している。第1軸部材44の他端は、回転軸43の第1端であり、第2軸部材45の他端は、回転軸43の第2端である。
【0037】
シールプレート17のシャフト挿通孔17hと第1軸部材44との間には、第1シール部材46が設けられている。第1シール部材46は、インペラ室23からモータ室18に向かう空気の洩れを抑制する。第2プレート16のシャフト挿通孔16hと第2軸部材45との間には、第2シール部材47が設けられている。第2シール部材47は、タービン室28からモータ室18に向かう空気の洩れを抑制する。第1シール部材46及び第2シール部材47は、例えば、シールリングである。
【0038】
回転軸43は、図示しないバッテリからコイル35に電流が流れることによって、ロータ33と一体的に回転する。したがって、モータ31は、回転軸43を回転させる。よって、モータ31は、回転軸43を回転させるための駆動源である。ロータ33は、回転軸43と一体的に回転する。
【0039】
(支持部48について)
遠心圧縮機10は、支持部48を備えている。支持部48は、第1軸部材44の外周面から環状に突出している。したがって、回転軸43の外周面には、環状の支持部48が設けられている。支持部48は、円板状である。支持部48は、第1軸部材44の外周面から径方向外側へ環状に突出した状態で、第1軸部材44の外周面に固定されている。したがって、支持部48は、第1軸部材44とは別体である。支持部48は、スラスト軸受収容室19内に配置されている。支持部48は、第1軸部材44と一体的に回転する。したがって、支持部48は、回転軸43と一体的に回転する。
【0040】
(コンプレッサインペラ49について)
遠心圧縮機10は、コンプレッサインペラ49を備えている。コンプレッサインペラ49は、第1軸部材44の他端部に取り付けられている。したがって、コンプレッサインペラ49は、回転軸43に取り付けられている。コンプレッサインペラ49は、回転軸43の第1端に連結されている。コンプレッサインペラ49は、第1軸部材44における支持部48よりも第1軸部材44の他端部寄りに配置されている。コンプレッサインペラ49は、背面から先端面に向かうに従って徐々に縮径した筒状である。コンプレッサインペラ49は、インペラ室23に収容されている。したがって、インペラ室23は、コンプレッサインペラ49を収容する。コンプレッサインペラ49の外縁は、インペラ室23の内周面に沿って延びている。コンプレッサインペラ49は、第1軸部材44と一体的に回転することで空気を圧縮する。
【0041】
(タービンホイール50について)
遠心圧縮機10は、タービンホイール50を備えている。タービンホイール50は、第2軸部材45の他端部に取り付けられている。タービンホイール50は、タービン室28に収容されている。タービンホイール50は、第2軸部材45と一体的に回転する。
【0042】
(第1ラジアル軸受51及び第2ラジアル軸受52について)
遠心圧縮機10は、第1ラジアル軸受51及び第2ラジアル軸受52を備えている。第1ラジアル軸受51は、円筒状である。第1ラジアル軸受51は、第1ラジアル軸受保持部21に保持されている。したがって、第1ラジアル軸受保持部21は、第1ラジアル軸受51を保持する。第2ラジアル軸受52は、円筒状である。第2ラジアル軸受52は、第2ラジアル軸受保持部26に保持されている。したがって、第2ラジアル軸受保持部26は、第2ラジアル軸受52を保持する。
【0043】
第1ラジアル軸受51は、第1軸部材44をラジアル方向で回転可能に支持する。したがって、第1ラジアル軸受51は、モータ31よりもコンプレッサインペラ49寄りで回転軸43をラジアル方向で回転可能に支持する。第2ラジアル軸受52は、第2軸部材45をラジアル方向で回転可能に支持する。したがって、第2ラジアル軸受52は、モータ31よりもコンプレッサインペラ49とは反対側で回転軸43をラジアル方向で回転可能に支持する。第1ラジアル軸受51及び第2ラジアル軸受52は、モータ31を回転軸43の軸方向で挟んだ両側の位置で回転軸43をラジアル方向で回転可能に支持する。なお、「ラジアル方向」とは、回転軸43の軸方向に対して直交する方向である。
【0044】
(スラスト軸受53について)
図2に示すように、遠心圧縮機10は、スラスト軸受53を備えている。スラスト軸受53は、スラスト軸受収容室19に収容されている。したがって、スラスト軸受収容室19は、スラスト軸受53を収容する。スラスト軸受53は、第1スラスト軸受部53aと、第2スラスト軸受部53bと、を含む。第1スラスト軸受部53a及び第2スラスト軸受部53bは、支持部48を挟み込むように配置されている。第1スラスト軸受部53aは、支持部48に対してコンプレッサインペラ49寄りに位置する。第2スラスト軸受部53bは、支持部48に対して第1ラジアル軸受51寄りに位置する。そして、第1スラスト軸受部53a及び第2スラスト軸受部53bは、支持部48をスラスト方向で回転可能に支持する。したがって、スラスト軸受53は、コンプレッサインペラ49と第1ラジアル軸受51との間で支持部48を介して回転軸43をスラスト方向で回転可能に支持する。なお、「スラスト方向」とは、回転軸43の軸線方向に対して平行な方向である。このように、回転軸43は、ハウジング11に回転可能に支持されている。
【0045】
(燃料電池システム55について)
図1に示すように、上記構成の遠心圧縮機10は、燃料電池車に搭載された燃料電池システム55の一部を構成している。燃料電池システム55は、遠心圧縮機10の他に、燃料電池スタック56と、供給流路57と、排出流路58と、を備えている。燃料電池スタック56は、複数の電池セルから構成されている。なお、説明の都合上、各電池セルの図示は省略している。供給流路57は、吐出室24と燃料電池スタック56とを接続する。排出流路58は、燃料電池スタック56と吸入室29とを接続する。
【0046】
回転軸43がロータ33と一体的に回転すると、コンプレッサインペラ49及びタービンホイール50が回転軸43と一体的に回転する。すると、吸入口22からインペラ室23に空気が吸入される。したがって、吸入口22は、インペラ室23に空気を吸入する。なお、吸入口22を流れる空気は、図示しないエアクリーナによって清浄化されている。
【0047】
吸入口22から吸入された空気は、インペラ室23内でコンプレッサインペラ49によって圧縮されるとともにコンプレッサディフューザ流路25を通過して吐出室24から圧縮された空気として供給流路57へ吐出される。そして、吐出室24から供給流路57へ吐出された空気は、供給流路57を介して燃料電池スタック56に供給される。燃料電池スタック56に供給された空気は、燃料電池スタック56を発電するために使用される。その後、燃料電池スタック56を通過する空気は、燃料電池スタック56の排気として排出流路58へ排出される。
【0048】
燃料電池スタック56の排気は、排出流路58を介して吸入室29に吸入される。吸入室29に吸入される燃料電池スタック56の排気は、連通通路30を通じてタービン室28に導入される。タービンホイール50は、タービン室28に導入された燃料電池スタック56の排気により回転する。回転軸43は、モータ31の駆動による回転に加え、燃料電池スタック56の排気により回転するタービンホイール50の回転によっても回転する。そして、燃料電池スタック56の排気によるタービンホイール50の回転により回転軸43の回転が補助される。タービン室28を通過した排気は、吐出口27から外部へ吐出される。
【0049】
(圧縮空気導入口60について)
図3に示すように、ハウジング11は、圧縮空気導入口60を有している。圧縮空気導入口60は、第2プレート16及びモータハウジング12の端壁12aに形成されている。圧縮空気導入口60は、モータ31よりもタービン室28側に配置されている。圧縮空気導入口60は、第1導入路61と、第2導入路62と、を有している。第1導入路61は、圧縮空気導入口60において、第2プレート16を回転軸43の径方向に貫通して延びる部分である。第1導入路61の第1端は、第2プレート16の外周面に開口している。第1導入路61の第2端は、第2プレート16の内部に位置している。第2導入路62は、圧縮空気導入口60において、第2プレート16及びモータハウジング12の端壁12aを回転軸43の径方向に対して交差する方向に貫通して延びる部分である。第2導入路62の第1端は、第1導入路61の第2端に連続している。第2導入路62の第2端は、第2ラジアル軸受保持部26の先端に開口している。第2導入路62の第2端は、モータ室18内に連通している。
【0050】
図1に示すように、燃料電池システム55は、分岐流路59を備えている。分岐流路59の第1端は、供給流路57に接続されている。したがって、分岐流路59は、供給流路57から分岐している。分岐流路59の第2端は、第1導入路61の第1端に接続されている。したがって、分岐流路59は、圧縮空気導入口60に接続されている。分岐流路59の途中には、インタークーラ59aが設けられている。インタークーラ59aは、分岐流路59を流れる空気を冷却する。そして、供給流路57を流れる空気の一部は、分岐流路59に流れ込み、インタークーラ59aによって冷却された後、分岐流路59を介して圧縮空気導入口60に導入される。圧縮空気導入口60は、分岐流路59から導入された空気を、モータ室18内に導入する。したがって、圧縮空気導入口60は、モータ室18内に、ハウジング11外の空気をコンプレッサインペラ49によって圧縮し、圧縮された空気の一部を導入する。
【0051】
(ノズル63について)
図3に示すように、遠心圧縮機10は、ノズル63を備えている。ノズル63は、第2導入路62の第2端の部分である。したがって、ノズル63は、第2ラジアル軸受保持部26に設けられている。ノズル63は、モータ室18内に、圧縮空気導入口60から導入された空気を大気圧よりも低い圧力にした状態でモータ室18内に噴出可能に構成されている。ノズル63は、モータ室18における第2樹脂部39よりも内側の空間に向けて空気を噴出する。したがって、ノズル63は、モータ室18内に、圧縮空気導入口60から導入された空気を大気圧よりも低い圧力にした状態でモータ室18内に噴出する。
【0052】
(空気導入口70及び軸内通路65について)
図1に示すように、遠心圧縮機10は、軸内通路65を備えている。軸内通路65は、第1軸路66、磁性体内通路67、第2軸路68、及び複数の径路69を含む。第1軸路66は、第1軸部材44の内部を第1軸部材44の軸方向に貫通している。第1軸路66の第1端は、吸入口22に連通している。磁性体内通路67は、永久磁石42の内部を永久磁石42の軸方向に貫通している。したがって、軸内通路65は、永久磁石42の内部を貫通している。磁性体内通路67の第1端は、第1軸路66の第2端に連通している。第2軸路68は、第2軸部材45の内部を第2軸部材45の軸方向に延びている。第2軸路68の第1端は、磁性体内通路67の第2端に連通している。第2軸路68の第2端は、第2軸部材45の内部に位置している。第2軸路68の第2端は、第2軸部材45の内部におけるシャフト挿通孔16hの内部に位置する部位まで延びている。複数の径路69は、第2軸路68の第2端に連通している。各径路69は、第2軸路68の第2端から回転軸43の径方向へ延びている。各径路69の第1端は、第2軸路68に連通している。各径路69の他端は、第2軸部材45の外周面に開口して、ハウジング11内であるシャフト挿通孔16h内に連通している。各径路69の他端は、シャフト挿通孔16h内における第2シール部材47よりも第2ラジアル軸受保持部26寄りの部分に連通している。
【0053】
第1軸路66の第1端には、吸入口22からの空気が導入される。そして、吸入口22から第1軸路66に導入された空気は、第1軸路66、磁性体内通路67、第2軸路68、及び各径路69を介してシャフト挿通孔16h内に導入される。シャフト挿通孔16h内に導入された空気は、第2ラジアル軸受保持部26内を通過して、モータ室18内に導入される。したがって、第1軸路66の第1端は、モータ室18内に、ハウジング11外の空気を圧縮せずに導入する空気導入口70になっている。よって、遠心圧縮機10は、空気導入口70を備えている。空気導入口70は、回転軸43の第1端に開口するとともに吸入口22に連通している。このように、回転軸43内には、空気導入口70とモータ室18内とを連通する軸内通路65が形成されている。
【0054】
(混合部71について)
図4に示すように、遠心圧縮機10は、混合部71を備えている。混合部71は、モータ室18における第2樹脂部39よりも内側の空間である。よって、混合部71は、ノズル63の噴出先に配置されている。混合部71では、シャフト挿通孔16hから第2ラジアル軸受保持部26内を通過してモータ室18内に導入された空気とノズル63から噴出された圧縮された空気とが混合される。したがって、混合部71では、空気導入口70からモータ室18内に導入された空気とノズル63から噴出された圧縮された空気とが混合される。このように、混合部71は、モータ室18におけるモータ31と第2ラジアル軸受保持部26との間に配置されている。そして、軸内通路65からモータ室18内に導入された空気は、第2ラジアル軸受保持部26内をモータ31とは反対側から通過して、混合部71においてノズル63から噴出された圧縮された空気と混合する。
【0055】
(ディフューザ流路72について)
遠心圧縮機10は、ディフューザ流路72を備えている。ディフューザ流路72は、第3樹脂部40の内周面と筒部材41の外周面との間に形成された空間である。したがって、ディフューザ流路72は、ステータ32とロータ33との間に設けられている。ディフューザ流路72は、モータ室18における第2樹脂部39よりも内側の空間である混合部71と、モータ室18における第1樹脂部38よりも内側の空間である排出空間73とを連通する。ディフューザ流路72は、最も混合部71寄りの部分の流路断面積が最小となるように流路が絞られている。ディフューザ流路72は、最も排出空間73寄りの部分の流路断面積が最大となる。したがって、ディフューザ流路72は、混合部71から排出空間73に向けて流路断面積が漸次大きくなる。そして、ディフューザ流路72は、混合部71からの空気を昇圧させる。
【0056】
(排出口80について)
図2に示すように、ハウジング11は、排出口80を有している。排出口80は、第1プレート15に形成されている。排出口80は、モータ31よりもインペラ室23側に配置されている。排出口80は、第1プレート15の内部を回転軸43の径方向に延びている。排出口80の第1端は、第1プレート15の外周面に開口している。排出口80の第2端は、第1プレート15の内部に位置している。排出口80は、モータ室18内の空気をモータ室18外へ排出する。
【0057】
(第1排出路81、第2排出路82及び第3排出路83について)
ハウジング11には、第1排出路81と、第2排出路82と、第3排出路83と、が形成されている。第1排出路81は、第1プレート15の内部を貫通している。第1排出路81は、第1ラジアル軸受保持部21内と排出口80とを接続している。第1排出路81の第1端は、第1ラジアル軸受保持部21内に連通している。第1排出路81の第2端は、排出口80に連通している。第1排出路81は、第1ラジアル軸受保持部21内の空気を排出口80に向けて流す。
【0058】
第2排出路82は、第1プレート15の内部を貫通している。第2排出路82は、モータ室18とスラスト軸受収容室19とを接続している。第2排出路82の第1端は、モータ室18内におけるモータ31よりも第1プレート15寄りの空間に連通している。第2排出路82の第2端は、第2凹部15dの内周面に開口している。そして、第2排出路82の第2端は、スラスト軸受収容室19に連通している。第2排出路82は、モータ室18内の空気をスラスト軸受収容室19に向けて流す。
【0059】
第3排出路83は、シールプレート17の内部、及び第1プレート15の内部を貫通している。第3排出路83は、シャフト挿通孔17hと排出口80とを接続している。第3排出路83の第1端は、シャフト挿通孔17h内に連通している。第3排出路83の第2端は、排出口80に連通している。したがって、第3排出路83は、シャフト挿通孔17hを介してスラスト軸受収容室19に接続されている。第3排出路83は、スラスト軸受収容室19における第1スラスト軸受部53a寄りの壁部からスラスト軸受収容室19内の空気を排出口80に向けて流す。
【0060】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
コンプレッサインペラ49によって圧縮されて供給流路57へ吐出された空気の一部は、分岐流路59を介して圧縮空気導入口60に導入される。圧縮空気導入口60に導入された空気は、ノズル63から混合部71に向けて噴出される。ノズル63から混合部71に向けて噴出される空気の圧力は、大気圧よりも低い。このため、ノズル63の噴出先に配置された混合部71が負圧となる。
【0061】
一方で、吸入口22からの空気の一部は、空気導入口70から軸内通路65を通過してシャフト挿通孔16h内に導入される。したがって、軸内通路65を通過する空気によって永久磁石42が冷却される。さらに、シャフト挿通孔16h内に導入された空気は、第2ラジアル軸受保持部26内を通過する。したがって、第2ラジアル軸受保持部26内を通過する空気によって第2ラジアル軸受52が冷却される。
【0062】
そして、第2ラジアル軸受保持部26内を通過した空気は、混合部71に導入される。このとき、混合部71が負圧となっている。このため、空気導入口70から導入された空気が混合部71に向けて吸引され易くなっている。そして、混合部71からの空気は、ディフューザ流路72によって昇圧されながら排出空間73に向けて流れる。
【0063】
ディフューザ流路72から排出空間73に排出された空気の一部は、第1ラジアル軸受保持部21内を通過する。したがって、第1ラジアル軸受保持部21内を通過する空気によって、第1ラジアル軸受51が冷却される。第1ラジアル軸受保持部21内を通過した空気は、第1排出路81を介して排出口80からモータ室18外へ排出される。このように、モータ室18内においてディフューザ流路72を通過した空気は、第1ラジアル軸受保持部21内を通過し、その後、第1排出路81を介して排出口80からモータ室18外へ排出される。
【0064】
また、ディフューザ流路72から排出空間73に排出された空気の一部は、モータ室18内におけるモータ31よりも第1プレート15寄りの空間から第2排出路82を介してスラスト軸受収容室19内に流入する。そして、スラスト軸受収容室19内に流入した空気は、第1スラスト軸受部53aに向けて流れる空気と、第2スラスト軸受部53bに向けて流れる空気とに分岐される。
【0065】
第1スラスト軸受部53aに向けて流れた空気は、第3排出路83を介して排出口80からモータ室18外へ排出される。したがって、スラスト軸受収容室19内を第1スラスト軸受部53aに向けて流れる空気によって、第1スラスト軸受部53aが冷却される。さらに、スラスト軸受収容室19と第1ラジアル軸受保持部21とは連通している。このため、第2スラスト軸受部53bに向けて流れた空気は、第1ラジアル軸受保持部21内に流入し、第1排出路81を介して排出口80からモータ室18外へ排出される。したがって、スラスト軸受収容室19内を第2スラスト軸受部53bに向けて流れる空気によって、第2スラスト軸受部53bが冷却される。よって、空気によってスラスト軸受53が効率良く冷却される。
【0066】
このように、空気導入口70からモータ室18内に導入された空気が混合部71に向けて吸引され易くなっている。さらには、ディフューザ流路72は、混合部71からの空気を昇圧させて排出口80に向けて流す。そして、モータ室18内の空気が排出口80を介してモータ室18外へ排出され易くなっている。その結果、空気が空気導入口70を介してモータ室18内に効率良く導入される。したがって、コンプレッサインペラ49によって圧縮された空気の一部よりも低温である空気が積極的にモータ室18内に導入される。
【0067】
(効果)
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)ノズル63からモータ室18内に噴出される空気の圧力は、大気圧よりも低い。このため、ノズル63の噴出先に配置された混合部71が負圧となるため、空気導入口70からモータ室18内に導入された空気が混合部71に向けて吸引され易くなる。そして、混合部71からの空気がディフューザ流路72によって昇圧されながら排出口80に向けて流れて、排出口80からモータ室18外へ排出される。したがって、空気導入口70からモータ室18内に導入された空気が混合部71に向けて吸引され易く、さらには、モータ室18内の空気が排出口80を介してモータ室18外へ排出され易くなっている。その結果、ハウジング11外の空気を圧縮せずに空気導入口70を介してモータ室18内に効率良く導入することができる。したがって、コンプレッサインペラ49によって圧縮された空気の一部よりも低温である空気を積極的にモータ室18内に導入することができる。よって、例えば、モータ31のようなモータ室18内に収容されている部品を、圧縮された空気よりも低温である空気によって効率良く冷却することができる。したがって、遠心圧縮機10の耐久性の向上を図ることができる。
【0068】
(2)空気導入口70は、回転軸43の第1端に開口するとともに吸入口22に連通している。回転軸43内には、空気導入口70とモータ室18内とを連通する軸内通路65が形成されている。これによれば、インペラ室23に吸入される前の空気が吸入口22から空気導入口70を介して軸内通路65を通過して、モータ室18内に導入される。したがって、例えば、空気導入口70に空気を供給するための配管を別途設ける必要が無いため、遠心圧縮機10の構成を簡素化することができる。
【0069】
(3)軸内通路65は、永久磁石42の内部を貫通している。これによれば、軸内通路65を通過する空気によって永久磁石42を冷却することができる。したがって、永久磁石42を、圧縮された空気よりも低温である空気によって効率良く冷却することができる。よって、遠心圧縮機10の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0070】
(4)軸内通路65からモータ室18内に導入された空気は、第2ラジアル軸受保持部26内をモータ31とは反対側から通過して、混合部71においてノズル63から噴出された空気と混合する。これによれば、空気によって永久磁石42を冷却しつつ、さらには、第2ラジアル軸受52も空気によって冷却することができる。したがって、永久磁石42に加えて、第2ラジアル軸受52も、圧縮された空気よりも低温である空気によって効率良く冷却することができる。よって、遠心圧縮機10の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0071】
(5)ハウジング11には、第1排出路81と、第2排出路82と、第3排出路83と、が形成されている。これによれば、モータ室18内においてディフューザ流路72を通過した空気が、第1ラジアル軸受保持部21内を通過し、その後、第1排出路81を介して排出口80からモータ室18外へ排出される。したがって、第1ラジアル軸受保持部21内を通過する空気によって、第1ラジアル軸受51を冷却することができる。また、モータ室18内においてディフューザ流路72を通過した空気が、第2排出路82を介してスラスト軸受収容室19内に流入する。そして、スラスト軸受収容室19内に流入した空気は、第1スラスト軸受部53aに向けて流れる空気と、第2スラスト軸受部53bに向けて流れる空気とに分岐される。第1スラスト軸受部53aに向けて流れた空気は、第3排出路83を介して排出口80からモータ室18外へ排出される。したがって、スラスト軸受収容室19内を第1スラスト軸受部53aに向けて流れる空気によって、第1スラスト軸受部53aを冷却することができる。さらに、スラスト軸受収容室19と第1ラジアル軸受保持部21とは連通しているため、第2スラスト軸受部53bに向けて流れた空気は、第1ラジアル軸受保持部21内に流入し、第1排出路81を介して排出口80からモータ室18外へ排出される。したがって、スラスト軸受収容室19内を第2スラスト軸受部53bに向けて流れる空気によって、第2スラスト軸受部53bを冷却することができる。よって、空気によってスラスト軸受53が効率良く冷却される。以上により、永久磁石42、第1ラジアル軸受51、第2ラジアル軸受52、及びスラスト軸受53それぞれを効率良く冷却することができる。したがって、遠心圧縮機10の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0072】
(6)吸入口22から吸入された空気の一部を空気導入口70から導入し、軸内通路65を通過させることができる。このため、永久磁石42を低温の空気によって効率良く冷却することができる。
【0073】
(7)コンプレッサインペラ49によって圧縮された空気の一部は、圧縮された空気よりも低温である空気をモータ室18内に効率良く導入するために、圧縮空気導入口60からモータ室18内に導入されている。したがって、圧縮空気導入口60からモータ室18内に導入される空気の流量は、モータ31のようなモータ室18内に収容されている部品の冷却に必要となる流量よりも比較的少なくて済む。したがって、コンプレッサインペラ49によって圧縮された空気を、燃料電池スタック56に効率良く供給することができる。したがって、遠心圧縮機10の圧縮効率を向上させることができる。
【0074】
(変更例)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0075】
○ 実施形態において、ステータコア34の内周面が樹脂によって覆われていなくてもよい。そして、ステータコア34の内周面が、第2コイルエンド36bから第1コイルエンド36aに向かうにつれて内径が拡径していく円錐孔になっていてもよい。このようにして、ステータコア34の内周面と筒部材41の外周面との間にディフューザ流路72が形成されていてもよい。
【0076】
○ 実施形態において、第3樹脂部40の内周面の内径が一定であってもよい。そして、筒部材41の外周面が、第2軸部材45から第1軸部材44に向かうにつれて外径が拡径していく円錐面であってもよい。そして、第3樹脂部40の内周面と筒部材41の外周面との間にディフューザ流路72が形成されていてもよい。要は、ディフューザ流路72は、ステータ32とロータ33との間に設けられていればよい。
【0077】
○ 実施形態において、回転軸43内に、軸内通路65が形成されていなくてもよい。そして、空気導入口70が、例えば、モータハウジング12の周壁12bに形成されていてもよい。
【0078】
○ 実施形態において、軸内通路65が、永久磁石42の内部を貫通していなくてもよく、例えば、第1軸部材44のみを貫通していてもよい。そして、軸内通路65が、第1軸部材44のみを貫通して、例えば、モータ室18内に連通していてもよい。
【0079】
○ 実施形態において、軸内通路65の各径路69の他端が、シャフト挿通孔16h内に連通していなくてもよい。そして、例えば、各径路69の他端が、混合部71に連通していてもよい。したがって、軸内通路65が、シャフト挿通孔16hに連通していなくてもよく、例えば、混合部71に連通していてもよい。このように、軸内通路65からハウジング11内に導入された空気が、第2ラジアル軸受保持部26内をモータ31とは反対側から通過しない構成であってもよい。
【0080】
○ 実施形態において、排出口80が、例えば、モータハウジング12の周壁12bに形成されていてもよい。そして、排出口80が、モータ室18内におけるモータ31よりも第1プレート15寄りの空間に連通していてもよい。この場合、ハウジング11には、第1排出路81、第2排出路82、及び第3排出路83が形成されていなくてもよい。
【0081】
○ 実施形態において、圧縮空気導入口60が、例えば、第1プレート15に形成されており、スラスト軸受収容室19に連通していてもよい。そして、圧縮空気導入口60に導入された圧縮された空気が、スラスト軸受収容室19及び第1ラジアル軸受保持部21内を通過して、ノズル63からモータ室18内に噴出する構成であってもよい。この場合、ノズル63は、例えば、第1ラジアル軸受保持部21の先端に設けられている。また、この場合、空気導入口70は、例えば、モータハウジング12の周壁12bに形成されている。空気導入口70は、モータ室18内におけるモータ31よりも第1プレート15寄りの空間に連通している。そして、混合部71は、モータ室18における第1樹脂部38よりも内側の空間である。また、この場合、第3樹脂部40の内周面は、第1樹脂部38から第2樹脂部39に向かうにつれて内径が拡径していく円錐孔になっている。そして、ディフューザ流路72は、混合部71からモータ室18における第2樹脂部39よりも内側の空間に向けて流路断面積が漸次大きくなる。さらに、この場合、排出口80は、例えば、モータハウジング12の周壁12bに形成されている。排出口80は、モータ室18内におけるモータ31よりも端壁12a寄りの空間に連通している。そして、ディフューザ流路72を通過することで昇圧された空気は、排出口80からモータ室18外へ排出される。このように構成することにより、例えば、モータ31のようなモータ室18内に収容されている部品を、圧縮された空気よりも低温である空気によって効率良く冷却することができる。
【0082】
○ 実施形態において、遠心圧縮機10は、タービンホイール50を備えていない構成であってもよい。
○ 実施形態において、遠心圧縮機10は、タービンホイール50に代えて、コンプレッサインペラを備えている構成であってもよい。つまり、遠心圧縮機10は、回転軸43の両端部にコンプレッサインペラが取り付けられており、一方のコンプレッサインペラによって圧縮された空気が、他方のコンプレッサインペラによって再び圧縮されるような構成であってもよい。
【0083】
○ 実施形態において、磁性体としては、永久磁石42に限らず、例えば、積層コア、アモルファスコア、又は、圧粉コア等であってもよい。
○ 実施形態において、筒部材41が、例えば、炭素繊維強化プラスチックから構成されていてもよい。要は、筒部材41の材質は、特に限定されるものではない。
【0084】
○ 実施形態において、ロータ33の構成としては、例えば、電磁鋼板が複数積層されて構成されるロータコアと、ロータコアに埋設される磁性体と、を備えたロータであってもよい。
【0085】
○ 実施形態において、遠心圧縮機10は、燃料電池車に搭載されていなくてもよい。また、遠心圧縮機10は、車両に搭載されるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0086】
10…遠心圧縮機、11…ハウジング、18…モータ室、19…スラスト軸受収容室、21…第1ラジアル軸受保持部、22…吸入口、23…インペラ室、26…第2ラジアル軸受保持部、31…モータ、32…ステータ、33…ロータ、34…ステータコア、41…筒部材、42…磁性体である永久磁石、43…回転軸、44…軸部材である第1軸部材、45…軸部材である第2軸部材、48…支持部、49…コンプレッサインペラ、51…第1ラジアル軸受、52…第2ラジアル軸受、53…スラスト軸受、53a…第1スラスト軸受部、53b…第2スラスト軸受部、60…圧縮空気導入口、63…ノズル、65…軸内通路、70…空気導入口、71…混合部、72…ディフューザ流路、80…排出口、81…第1排出路、82…第2排出路、83…第3排出路。