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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】吸収体および衛生材料製品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20241106BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20241106BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/534 110
A61F13/53 300
A61F13/53 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021500759
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2020045181
(87)【国際公開番号】W WO2021112212
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2019219270
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新崎 盛昭
(72)【発明者】
【氏名】蓑毛 克弘
(72)【発明者】
【氏名】大井 亮
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-148751(JP,A)
【文献】特開2014-068856(JP,A)
【文献】特開2015-066027(JP,A)
【文献】特開平07-024007(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099635(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の不織布および第2の不織布が吸水ポリマー群を挟んでなる吸収体であって、
前記第1の不織布における前記吸水ポリマー群の側の面が有する開孔群は、
その直径の分布における90%直径が10μm以上130μm以下であり、
またその直径の分布における90%直径と10%直径との差が100μm以下であり、
前記第1の不織布における前記吸水ポリマー群と反対側の面が有する開孔群は、
その空孔率が25%以上50%以下であり、
前記第1の不織布の保水率は1000質量%以上であり、
前記第2の不織布の少なくとも一方の面が有する開孔群は、
その直径の分布における90%直径が10μm以上130μm以下であり、
またその直径の分布における90%直径と10%直径との差が100μm以下であり、
前記吸水ポリマー群を構成する吸水ポリマーは粒子状であり、
前記吸水ポリマーの粒子径は、106μmを超え1000μm以下であり、前記第1の不織布が、前記吸水ポリマー群の側の面を含む第1a層と前記吸水ポリマー群と反対側の面を含む第1b層とを含む積層不織布であり、
前記第1b層が、単繊維強度が0.15N以上1.0N以下である短繊維を含み、かつ、前記第1b層の全体に対し20質量%以上含む、吸収体。
【請求項2】
前記吸水ポリマー群が2層の吸水ポリマー群からなり、
当該2層の吸水ポリマー群に挟まれた第3の不織布をさらに有する、
請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記第1の不織布および前記第2の不織布が、一体につながったコアラップシートである、請求項1または2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記吸水ポリマーの粒子径は、106μmを超え300μm以下である、請求項1~のいずれかに記載の吸収体。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の吸収体を備える、衛生材料製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつやナプキン等の衛生材料製品は、尿や経血等(以下、尿等と称することがある)の水系液体を吸収し保水するシート状の吸収体、吸収体の一方の面に配置された表面シートおよび吸収体の他方の面に配置された裏面シートを有している。上記の表面シートは尿等の透過性を有し、上記の裏面シートは尿等の防漏性を有する。また、上記の吸収体は、パルプ繊維と吸水ポリマーの混合物がコアラップで包まれた構成となっている。ここで、コアラップとは、不織布またはティッシュである。
【0003】
そして、衛生材料製品において、吸収体、表面シートおよび裏面シートは、上記の衛生材料製品の着用時に、着用者に近い方から表面シート、吸収体および裏面シートの順に配置されている。
【0004】
ここで、近年、紙おむつやナプキン等の衛生材料製品の普及に伴い、衛生材料製品には大量の尿等を迅速に吸収する性能が求められている。
【0005】
そして、大量の尿等の迅速な吸収を目指した衛生材料製品として、以下のものが知られている。
【0006】
特許文献1には、2枚の親水性の不織布により吸水ポリマーが狭持されてなる吸収体を備える衛生材料製品が開示されている。また、特許文献1には、上記の2枚の不織布のうち上側の不織布(すなわち、2枚の不織布のうち、衛生材料製品の着用時に着用者側に位置する不織布)は透水性に優れたエアスルー不織布であることが開示されている。エアスルー不織布は、一般的に嵩が大きく空孔率が高い不織布である。よって、公知例1に記載のエアスルー不織布も嵩が大きく空孔率が高いために、特許文献1に記載の衛生材料製品が備える2枚の不織布のうち上側の不織布は透水性に優れたものであると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/099635号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された衛生材料製品が備える吸収体の大量の尿等を迅速に吸収する性能は不十分であるといえる。そして、上記の性能をより向上させるためには、衛生材料製品が備える吸収体が含む吸水ポリマーの粒子径を小さくし、吸水ポリマーの比表面積を大きくすることが考えられる。しかし、この場合には、吸収体において吸収ポリマーを挟持する2枚の不織布や、吸収体において吸収ポリマーを包むコアラップを吸収ポリマーが通過し、吸収体の外部へ吸水ポリマーが脱落するとの課題がある。
【0009】
よって、上記の課題に鑑み、本発明は、大量の尿等を迅速に吸収する性能に優れるとともに、吸収ポリマーの吸収体の外部への脱落が抑制された吸収体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成からなる。
(1)第1の不織布および第2の不織布が吸水ポリマー群を挟んでなる吸収体であって、
前記第1の不織布における前記吸水ポリマー群の側の面が有する開孔群は、その直径の分布における90%直径が10μm以上130μm以下であり、またその直径の分布における90%直径と10%直径との差が100μm以下であり、前記第1の不織布における前記吸水ポリマー群と反対側の面が有する開孔群は、その空孔率が25%以上50%以下であり、前記第1の不織布の保水率は1000質量%以上であり、前記第2の不織布の少なくとも一方の面が有する開孔群は、その直径の分布における90%直径が10μm以上130μm以下であり、またその直径の分布における90%直径と10%直径との差が100μm以下であり、前記吸水ポリマー群を構成する吸水ポリマーは粒子状であり、前記吸水ポリマーの粒子径は、106μmを超え1000μm以下であり、前記第1の不織布が、前記吸水ポリマー群の側の面を含む第1a層と前記吸水ポリマー群と反対側の面を含む第1b層とを含む積層不織布であり、前記第1b層が、単繊維強度が0.15N以上1.0N以下である短繊維を含み、かつ、前記第1b層の全体に対し20質量%以上含む、吸収体。
(2)前記吸水ポリマー群が2層の吸水ポリマー群からなり、当該2層の吸水ポリマー群に挟まれた第3の不織布をさらに有する、(1)に記載の吸収体。
(3)前記第1の不織布および前記第2の不織布が、一体につながったコアラップシートである、(1)または(2)に記載の吸収体。
(4)前記吸水ポリマーの粒子径は、106μmを超え300μm以下である、請求項(1)~(3)のいずれかに記載の吸収体。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の吸収体を備える、衛生材料製品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サイズの小さなポリマーが、適切な開孔の孔径および孔径分布を有する不織布に挟まれることにより、大量の尿等を迅速に吸収する性能に優れるとともに、吸収ポリマーの吸収体の外部への脱落が抑制できる吸収体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の吸収体を用いた衛生材料製品の一実施態様を示す概念図である。図中の線cは、図2~6の断面に対応する方向を示す。
図2図2は、本発明の吸収体において、線cにおける断面を表す概念図である。
図3図3は、本発明の吸収体に第3の不織布を用いた場合の、線cにおける断面を表す概念図である。
図4図4は、本発明の他の実施形態の吸収体において、線cにおける断面を表す概念図である。
図5図5は、本発明の他の実施様態の吸収体に第3の不織布を用いた場合の、線cにおける断面を表す概念図である。
図6図6は、本発明の実施様態の吸収体に被覆材料を用いた場合の、線cにおける断面を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について、詳細に説明する。なお、本発明において「以上」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも大きいことを意味する。また、「以下」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも小さいことを意味する。
【0014】
(第1の不織布)
まず、本発明の吸収体が備える第1の不織布について説明する。
【0015】
第1の不織布は、公定水分率が8%以上である繊維を第1の不織布全体に対して、60質量%以上含むことが好ましい。このような公定水分率が8%以上である繊維は親水性の繊維であるといえ、この繊維の親水性により第1の不織布の保水率を、効果的に高く、具体的には1000%以上の範囲とし易くなる。なお各短繊維の公定水分率は繊消誌1991年32巻3号P.88-96に記載されている。
【0016】
公定水分率が8%以上の繊維としては、具体的には、羊毛の繊維、絹の繊維、および綿・麻・レーヨンの繊維等のセルロース系の繊維を挙げることができる。これらの繊維のなかでも、セルロース系の繊維が、吸収体が虫害などに対して保存安定性に優れたものとなることから好ましい。また、セルロース系繊維のなかでもレーヨン繊維が、公定水分率で10%以上という高い水分率を有することにより、第1の不織布の保水率を高い値とすることが容易となる。
【0017】
また、第1の不織布として、具体的には、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布およびスパンレース不織布を挙げることができる。これらの中でも、第1の不織布を構成する繊維としてセルロース系の繊維を用いた場合であってもバインダーレスで不織布化が可能であるとの理由により、第1の不織布はスパンレース不織布であることが好ましい。
【0018】
また、第1の不織布は、2層以上の層を積層して一体化することによって得られる積層不織布であることが好ましい。そうすることで、第1の不織布における一方の面を含む層および他方の面を含む層のそれぞれを構成する単繊維の強度、繊度や、目付を調整することにより、それぞれの面の開孔群の直径の分布、具体的には90%直径、10%直径、およびそれらの差や触感などを、効果的に後述する範囲内とすることができる。
【0019】
第1の不織布の構成が積層不織布である場合、吸水ポリマー群の側の面(以下、「第1a面」とも呼ぶ。)を含む層(以下、「第1a層」とも呼ぶ)は、単繊維強度が0.1N以下である短繊維を含む短繊維からなり、かつ、第1a層の全体に対し、単繊維強度が0.1N以下である短繊維を90質量%以上含むことが好ましい。また、第1a層における単繊維強度が0.1N以下である短繊維の繊維径は、15μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下である。第1a層が、上記の単繊維強度であり、かつ上記の繊維径である短繊維を90質量%以上、より好ましくは95質量%以上含有することで、第1の不織布の製造時においてウォータージェットやカレンダーなどの短繊維を面方向に圧し潰す力により、第1a面を含む層を構成する短繊維全体の繊維軸を面方向に配向させるとともに、繊維間で形成される開孔部の直径を小さなものとし易くなる。その結果、効果的に、第1a面が有する開孔群の、その直径の分布における90%直径を10μm以上130μm以下とするとともに、その直径の分布における90%直径と10%直径との差を、100μm以下とし易くなる。ことが好ましい。なお、第1a層が含む単繊維強度が0.1N以下である短繊維の、当該層全体に対する含有量としては、その定義から100質量%以下であり、繊維径は、後述するカードマシンの通過性の観点から、5μm以下が好ましい。
【0020】
第1a層が含む単繊維強度が0.1N以下である短繊維の種類としては、上記の特性を満たしてさえいれば特に限定されないが、第1の不織布の保水量を1000%以上とするとの観点から、セルロース系短繊維であることが好ましく、中でも公定水分率が10%以上であるレーヨン短繊維であることが好ましい。
【0021】
第1の不織布の構成が積層不織布である場合、吸水ポリマー群と反対側の面(以下、「第1b面」とも呼ぶ。)を含む層(以下、「第1b層」とも呼ぶ。)は、単繊維強度が0.15N以上である短繊維を含む短繊維からなり、かつ、第1b層の全体に対し、単繊維強度が0.15N以上である短繊維を10質量%以上含むことが好ましい。第1b層が、単繊維強度が0.15N以上、より好ましくは0.2N以上である短繊維を10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上含有することで、第1の不織布の製造時においてウォータージェットやカレンダーなどの短繊維を面方向に圧し潰す力が働く工程を経ても、当該短繊維の剛性による反発で、第1b層を構成する短繊維全体の繊維軸を厚み方向に配向させ易くなり、その結果、第1b面の空孔率を効果的に所望の範囲とし易くなる。当該短繊維の単繊維強度の上限は、特に限定はされないが、第1の不織布を触感の良いものとし、着用時に不快感のない衛生材料製品を得ることができるとの理由により、1.0N以下であることが好ましい。
【0022】
第1b層が含む単繊維強度が0.15N以上の短繊維の含有量の上限は、特に限定はされないが、着用時に不快感のない衛生材料製品を得ることができるとの理由により、50質量%以下であることが好ましい。
【0023】
ここで、短繊維の単繊維強度とはJIS L1015(2010) 8.7.1に準じて、短繊維1本について引張試験を行った際に得られる伸び-荷重曲線の最大荷重をいう。また、短繊維とは、繊維長が10~100mmの範囲である繊維をいう。後述するカードマシンの通過性の観点からは、短繊維の繊維長は20~80mmであることが好ましい。
【0024】
第1b層が含む単繊維強度が0.15N以上の短繊維の好ましい例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン短繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル短繊維、ナイロン短繊維、アクリルニトリル等のアクリル繊維、ポリビニルアルコール等のビニロン繊維を挙げることができる。これらの短繊維の中でも強度や汎用性に優れるとの観点からポリエステル短繊維が好ましい。さらに、ポリエチレンテレフタレートの短繊維がより好ましい。
【0025】
また、第1b層が含む単繊維強度が0.15N以上の短繊維は中空繊維であることが好ましい。また、当該中空繊維の空孔率は10%以上であることが好ましい。当該短繊維が空孔率10%以上の中空繊維であることで、当該短繊維自体の嵩が大きくなり、結果として、第1b面が有する開孔群の空孔率を後述する範囲とすることが容易になる。
【0026】
第1a面が有する開孔群は、その直径の分布における90%直径が10μm以上130μm以下である。ここで、直径の分布における90%直径とは、観察した開孔群の各開孔部の面積を小さい順に並べ、面積が小さいものから面積を足し合わせていき、累積面積が各開孔部の総面積の90%に最も近い値となる開孔部の直径をいう。また、後述する10%直径も、各開孔部の面積を小さい順に並べ、面積が小さいものから面積を足し合わせていき、累積面積が各開孔部の総面積の10%に最も近い値となる開孔部の直径をいう。なお、開孔部の開孔直径とは、開孔部を楕円近似した際に得られる楕円の長軸の長さをいう。上記開孔群の90%直径を130μm以下、好ましくは100μm以下とすることにより、不織布の繊維間隙をすり抜けて吸水ポリマーが第1b面に脱落する現象を抑制しやすくなる。また、第1a面の開孔群の90%直径を10μm以上、好ましくは50μm以上とすることで、第1の不織布に浸透した尿等の水系液体が吸水ポリマー群に速やかに到達し、優れた吸収特性を効果的に得ることができる。
【0027】
また、第1a面が有する開孔群は、その直径の分布における90%直径と10%直径との差が100μm以下である。90%直径と10%直径との差は、直径の分布の幅を表す指標である。上記開孔群の90%直径が上記の範囲内であることに加え、同開孔群の90%直径と10%直径との差が100μm以下、好ましくは80μm以下であること、すなわち、全ての開孔に対する、開孔直径が極端に小さい開孔および開孔直径が極端に大きい開孔の割合が小さいことで、第1の不織布は透水性に優れたものとなるとともに、吸水ポリマーの脱落抑制性能にも優れたものとなる。
【0028】
なお、詳細は後述するが、90%直径、及び90%直径と10%直径との差は、SEM観察により得られた不織布表面画像を、画像解析ソフトを用いて2値化し、開孔部に相当する部分を粒子と見なし粒子解析を施すことで得ることができる。
【0029】
第1b面が有する開孔群は、その空孔率が25%以上50%以下である。25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上とすることで、第1b面から第1a面の方向に水系液体が迅速に浸透し易くなる。よって、本発明の吸収体を用いた衛生材料製品の着用時に、第2の不織布および吸水ポリマーよりも第1の不織布が着用者側となるようにし、さらに第1b面が着用者側となるように配置されることで、着用者から発せられた水系液体は第1の不織布内に迅速に浸透した後、吸水ポリマーに吸水され、保水されやすくなる。すなわち、吸収体の吸収特性が優れたものとなる。一方、50%以下、好ましくは45%以下とすることで、第1の不織布の剛性を十分なものとし、第1b面における開孔が変形しつぶれて第1の不織布の透水性が低下するのを防ぐことができる。
【0030】
なお、詳細は後述するが、本発明でいう空孔率は、SEM観察により得られた不織布表面画像を、画像解析ソフトを用いて2値化することで得ることができる。
【0031】
第1の不織布の目付は、60g/m以下であることが好ましい。第1の不織布の目付を60g/m以下、より好ましくは50g/m以下とすることで、第1b面から第1a面に水系液体は透過し易くなる。一方で、第1の不織布の目付の下限は特に限定はされないが、後述する吸水ポリマーをより確実に担持することができるとの理由から20g/m以上であることが好ましい。
【0032】
第1の不織布は、その保水率が1000%以上である。保水率を1000%以上、好ましくは1200%以上とすることで、第1の不織布は好ましい親水性を有していると言え、尿等の水系液体が第1の不織布の親水性により吸収体内部に浸透しやすくなる。よって、本発明の吸収体を用いた衛生材料製品において、尿等の水系液体が、着用者から発せられても、吸収体に迅速に浸透しやすくなる。また、尿等の水系液体が、繰り返し着用者から発せられる場合であっても、第1の不織布の親水性が維持されるため、吸収体の尿等の水系液体を迅速に吸収する性能を維持しやすくなる。一方で、保水率の上限は、特に限定されないが、衛生材料製品に適用する観点からすると、3000%程度あれば十分である。
【0033】
なお、保水率は、不織布を過剰量の水で洗浄することで、表面に付着した親水性成分を洗い流したものについて、JIS L 1913:2010 6.9.2に準じて測定することで得ることができる。
【0034】
(第2の不織布)
次に、本発明の吸収体が備える第2の不織布について説明する。第2の不織布の少なくとも一方の面、好ましくは両面が有する開孔群は、その直径の分布における90%直径が10μm以上130μm以下である。当該開孔群の90%直径を130μm以下、好ましくは100μm以下とすることにより、不織布の繊維間隙をすり抜けて吸水ポリマーが脱落する現象を抑制できる。また、当該開孔群の90%直径を10μm以上、好ましくは50μm以上とすることで、透気性に優れ、蒸れ感が生じるのを防ぐことができる。
【0035】
また、第2の不織布において上記の90%直径を満足する開孔群は、その直径の分布における90%直径と10%直径との差が100μm以下である。同開孔群の90%直径と10%直径との差が100μm以下、好ましくは80μm以下であること、すなわち、全ての開孔に対する、開孔直径が極端に小さい開孔および開孔直径が極端に大きい開孔の割合が小さいことで、第2の不織布は吸水ポリマーの脱落抑制性能にも優れたものとなる。
【0036】
また、第2の不織布としては、上記の構成を有してさえいれば特に限定はされず、第1の不織布と同一の不織布であってもよいし、第1の不織布とは異なる不織布であってもよい。
【0037】
(コアラップシート)
また、第1の不織布および第2の不織布が、一体につながったコアラップシートであることも好ましい。コアラップシートとは、吸水ポリマーを包んで把持する役割を有する材料を言う。吸収体の形状が略長方形のシート状である場合には、略長方形のシート状のコアラップシートの材料について、その2本の辺が、例えば吸収体の2本の短辺のそれぞれの中点を結んだ線の位置で略重なるようにコアラップシートの材料を折り畳み、コアラップシートの内側に吸水ポリマーを把持する。このようにすることで、コアラップシートの材料が折り畳まれた後、すなわち、吸収体となった後においては、略長方形のシート状の吸収体の長辺の両方の端部は、コアラップシートによって閉じられた形態となる。吸収体の長辺の両方の端部がコアラップシートにより閉じられていることにより、吸水ポリマーが吸収体の端部から脱落する現象を抑制する効果と、吸収体の内部に浸透した尿等の水系液体が吸収体の端部から漏れ出す現象を抑制する効果を得ることができる。図4においては、コアラップシート4が吸水ポリマー群5を包み込んだ形態を有する。
【0038】
(吸水ポリマー群)
続いて、本発明の吸収体が備える吸水ポリマー群について説明する。吸水ポリマー群は、粒子状の吸水ポリマーの集合体である。吸水ポリマーとしては例えば、デンプン、架橋カルボキシメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又はその共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩やポリアクリル酸塩グラフト重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。
【0039】
また、吸水ポリマーは、吸水ポリマー1g当たりの生理食塩水の吸収倍率が25~50倍であって、かつ、吸水ポリマー1g当たりの生理食塩水の吸収速度が45秒以下であるものが、吸収体の吸収特性がより優れたものとなるとの観点から好ましい。ここで、吸水ポリマーの生理食塩水の吸収倍率はJIS K7223(1996)に規定されたティーパック法で測定されたものをいい、吸水ポリマーの生理食塩水の吸収速度はJIS K7224(1996)に規定されたVortex法で測定されたものをいう。
【0040】
吸水ポリマー群を形成する吸水ポリマーの粒子径は、106μmを超え、1000μm以下である。吸水ポリマーの粒子径を1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは425μm以下、さらに好ましくは300μm以下、さらに好ましくは212μm以下とすることで、本発明の吸収体を備える衛生材料製品の着用時に着用者が感じる凹凸による不快感を軽減することができる。さらに、各吸水ポリマーの比表面積を大きなものとし、尿等の水系液体が吸水ポリマーに迅速に吸水され、保水されやすくなる。一方、吸水ポリマーの粒子径が106μmを超えることで、吸水ポリマーが第1の不織布や第2の不織布を構成する繊維の間隙をすり抜けて吸収体の内部から吸収体の外部に脱落することを抑制することができる。
【0041】
吸水ポリマーの粒子径は、吸水ポリマーの分級に用いるふるいの目の大きさで規定することとする。より具体的な例を挙げると、目開き106μmの上に目開き1000μmの振るいを重ね、目開き1000μmの振るいに吸水ポリマーを入れ10分間振とうした後に目開き106μmのふるいに残った吸水ポリマーの粒子径は、106μmを超えて1000μm以下であるとする。また目開き106μmの上に目開き300μmのふるいを重ね、目開き300μmのふるいに吸水ポリマーを入れ10分間振とうした後に目開き106μmのふるいに残った吸水ポリマーの粒子径は、106μmを超えて300μm以下であるとする。
【0042】
上記の粒子径を満足する吸水ポリマーの、吸水ポリマー群における含有率としては、90質量%以上が好ましく、特に好ましいのは100質量%、すなわち、各吸水ポリマーが上記の粒子径を満足することである。
【0043】
本発明において、吸水ポリマーとしてポリアクリル酸ナトリウム系吸水ポリマーを用いる場合には、SDPグローバル社製『サンウェット』シリーズや日本触媒社製『アクリアック』シリーズから、振るいを用いて前記の粒子径の成分を分取することにより得ることができる。
【0044】
本発明の吸収体では、吸水ポリマー群の目付けが100g/m以上500g/m以下であることが好ましい。吸水ポリマーが密に存在した状態で尿等の水系液体と接した際に吸水膨張した吸水ポリマー同士が接触して、他の未吸水・未膨張の吸水ポリマーと尿等の水系液体の接触を阻害する『ゲルブロック現象』が起こることが知られているが、吸水ポリマー群の目付けが上記の範囲であることにより、吸水ポリマーの粒子同士が適度な間隔で存在し『ゲルブロック現象』を回避して、吸水ポリマーが効率的に機能し易くなる。なお、吸水ポリマー群が、後述する第1の吸水ポリマー群と第2の吸水ポリマー群に分かれる場合、第1の吸水ポリマー群の目付けと第2の吸水ポリマー群の目付の合計を吸水ポリマー群の目付とする。
【0045】
(第3の不織布)
本発明の吸収体は、吸水ポリマー群が2層の吸水ポリマー群からなり、当該2層の吸水ポリマー群に挟まれた第3の不織布をさらに有することが好ましい。図3,5においては、2層の吸水ポリマー群(図3,5中5a,5b)に第3の不織布(図3,5中3)が挟まれている。このような構成とすることで、第3の不織布を介して吸収体の内部に浸透した尿等の水系液体が、吸収体の内部で第3の不織布の面方向に拡散しやすくなるため、吸水ポリマー群全体の吸水効率をより向上させることができ、本発明の吸収体を衛生材料製品に用いた場合に、この衛生材料製品は、より多量の尿等の水系液体を保水しやすくなる。
【0046】
第3の不織布の役割が吸収体の内部で尿等の水系液体を拡散させることにある観点から、第3の不織布のバイレック法吸水試験における吸水高さは、30mm以上が好ましく、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは125mm以上である。
【0047】
(吸収体)
本発明の吸収体は、前記第1の不織布および前記第2の不織布が、前記吸水ポリマー群を挟んでなる。また、第1の不織布における開孔群と前記吸水ポリマー群との位置関係は、前述のとおりである。図2においては、第1の不織布(図2中1)および第2の不織布(図2中2)が、吸水ポリマー群(図2中5)を挟んでいる。このような構成とすることで、本発明の吸収体をおむつなどの衛生材料製品に用いた場合に、着用者から発せられた尿等の水系液体が迅速に吸収体の内部に浸透し、吸水ポリマーに迅速に吸収され、保水される。よって、着用時の不快感がなく漏れの少ない衛生材料製品とすることができる。
【0048】
本発明の吸収体は、公知のおむつなどの衛生材料製品に用いられている吸収体と同様に、略長方形のシート状であることが好ましい。
【0049】
本発明の吸収体は、厚みが3mm以下であることが好ましい。吸収体の厚みが3mm以下であることで、本発明の吸収体をおむつなどの衛生材料製品に用いた場合に、本発明の吸収体を用いた衛生材料製品を柔軟であり、ごわつき感が抑制され、さらに、着用感に優れたものとし易くなる。衛生材料製品の着用感をより良くするとの理由から、吸収体は薄いほうが好ましく、吸収体の厚さは2.5mm以下であることが好ましい。一方で、吸収体の吸収特性をより優れたものとするとの理由から、吸収体の厚さは1mm以上であることが好ましい。なお、ここで言う吸収体の厚みとはJIS L1913(2010) 6.1.1 A法に基づいて測定したものをいう。
【0050】
本発明の吸収体は、吸収体製造時の搬送性や、吸収体自体の形状保持性の観点から、被覆材料によって部分的に被覆されていることも好ましい。吸収体が被覆材料によって被覆された状態の、具体的な例として図6を例に説明する。図6において、吸収体の形状は略長方形のシート状である。この吸収体に対して用いる、略長方形のシート状の被覆材料6について、略長方形の2本の長辺が第1の不織布上で固定されることにより、吸収体を部分的に被覆した状態となっている。このような形態とすることで、第1の不織布による吸収体への水系液体の浸透性を維持しつつ、前述の、吸収体製造時の搬送性や、吸収体自体の形状保持性を良好なものとし易くなる。被覆材料としては、特に制限はないが、軽量性や通気性の観点から、不織布が好ましく、搬送性や形状保持性の点で強度特性に優れるスパンボンド不織布が好ましい。
【0051】
(吸収体の製造方法)
本発明の吸収体を製造する方法について具体的に説明するが、本発明の吸収体は、下記の製造方法により製造されるものに限定されない。
【0052】
第1の不織布と第2の不織布との間に吸水ポリマー群を固定して吸収体を得る。吸水ポリマーを固定する方法としては、第1の不織布の第1の面にホットメルト接着剤をスプレー状やスパイラル状に散布しその上から吸水ポリマーを散布し吸水ポリマー群を形成した後に、同様に片面にホットメルト接着剤を散布した第2の不織布を、ホットメルト接着剤と吸水ポリマーが接するように上から被せて圧着させる方法が挙げられる。
【0053】
また第3の不織布を用いて、吸水ポリマー群を第1の吸水ポリマー群と第2の吸水ポリマー群に分ける場合は、前記と同様に、第1の不織布の第1の面にホットメルト接着剤をスプレー状やスパイラル状に散布しその上から吸水ポリマーを散布し第1の吸水ポリマー群を形成した後に、同様に片面にホットメルト接着剤を散布した第3の不織布をホットメルト接着剤と第1の吸水ポリマー群が接するように上から被らせて、圧着させる。続いて第3の不織布のもう一方の面にホットメルト接着剤を散布し、その上から吸水ポリマーを散布し第2の吸水ポリマー群を形成した後に、同様に片面にホットメルト接着剤を散布した第2の不織布をホットメルト接着剤と第1の吸水ポリマー群が接するように上から被らせて、圧着させる。
【0054】
ホットメルト接着剤としては、衛生材料製品用途に適したスチレン系ホットメルトやオレフィン系ホットメルト接着剤を好適なものとして用いることができる。
【0055】
またホットメルト接着剤の散布量は、不織布上に吸水ポリマーを固定する観点と、ホットメルトによる吸水ポリマーの膨張阻害の観点から、不織布と吸水ポリマー群の間に形成される各界面について、0.5g/m以上3g/m以下が好ましい。
【0056】
第1の不織布および第2の不織布が一体につながったコアラップシートである場合の、吸収体を製造する方法について具体的に説明する。略長方形のシート状になるようにカットしたコアラップシートの、吸水ポリマー群の側の面(第1a面に相当する面)にホットメルト接着剤を用いて吸水ポリマー群を固定する。続いて、コアラップシートの略長方形の1組の短辺のそれぞれの中点を結んだ線を中心線とし、コアラップシートの略長方形の2本の長辺の近傍同士が中心線の位置で重なるようにコアラップシートを折り畳み、長辺の近傍同士を圧着させる。このようにして、コアラップシートにより吸水ポリマー群が包まれた形態となる。第3の不織布を用いる場合は、略長方形のシート状になるようにカットしたコアラップシートの、吸水ポリマー群の側の面(第1a面に相当する面)にホットメルト接着剤を用いて吸水ポリマー群を固定した後、片面にホットメルト接着剤を散布した第3の不織布を、ホットメルト接着剤と吸水ポリマー群が接するように被らせる。続いて、第3の不織布のもう一方の面に、ホットメルト接着剤を散布し、コアラップシートの2本の長辺が中心線の位置で重なるように、コアラップシートを折り畳み、圧着させる。
【0057】
効率的に生産する上では、長手方向に続く各不織布から長手方向に続く吸収体を製造して、必要な長さにカットすることも好ましい。
【0058】
(衛生材料製品およびその製造方法)
本発明の吸収体は、紙おむつやナプキン等の衛生材料製品に好ましく用いることができる。すなわち本発明の衛生材料製品は、本発明の吸収体を備える。
【0059】
本発明の吸収体は、衛生材料製品に好ましく用いることができる。すなわち本発明の衛生材料製品は、本発明の吸収体を備える。図1において、表面シート(図1中8)と裏面シート(図1中9)の間に、本発明の吸収体(図1中7)を備えた本発明の衛生材料製品(図1中10)を示す。
【0060】
本発明の衛生材料製品の製造方法について説明する。本発明の吸収体を必要な長さに断裁した後に、断裁後の吸収体と同じく略長方形のシート状であり、かつ、断裁後の吸収体よりも面積の大きい表面シートおよび裏面シートの間に吸収体を挟持して固定する。このとき、第1の不織布が表面シートと接するように挟持することが好ましい。第1の不織布は、一方の面(第1b面)から他方の面(第1a面)に尿等の水系液体を透過し易くする特徴を有するため、表面シートが第1の不織布と接することにより、表面シート内部に浸透した尿等の水系液体は第1の不織布を迅速に透過し、吸水ポリマーに吸水され、保水されやすくなる。よって、吸収体の吸収特性はより優れたものとなる。また、吸収体が、コアラップシートを用いた態様のものである場合、触感による着用者の負担とならないよう、コアラップシートの継ぎ目が裏面シート側に配置されるように、吸収体を表面シートと裏面シートとで挟持することが好ましい。表面シートと吸収体、裏面シートと吸収体、および表面シートと裏面シートが、直接接する部分を固定する方法は、ホットメルト接着剤を用いる方法や熱融着性の樹脂パウダーを用いる方法を挙げることができる。
【0061】
また、本発明の吸収体を衛生材料製品とする際に用いる表面シートとしては、通液性や触感がより優れたものとなるとの観点から、不織布を採用することが好ましく、例えば、湿式不織布やレジンボンド式乾式不織布、サーマルボンド式乾式不織布、スパンボンド式乾式不織布、ニードルパンチ式乾式不織布、ウォータージェットパンチ式乾式不織紙布またはフラッシュ紡糸式乾式不織布等のほか、目付や厚みが均一にできる抄紙法により製造された不織布も好ましく使用できる。中でも、人肌に触れる場所に位置するという観点から、触感に優れるサーマルボンド式乾式不織布を表面シートとして用いることが好ましい。
【0062】
また、本発明の吸収体を衛生材料製品とする際に用いる裏面シートとしては、衛生材料製品内部に蓄積した水蒸気を外部に逃がして着用者に快適性を与えることができるとの観点と、防水性や触感を優れたものとすることができるとの観点とから、透湿防水性フィルムと不織布との積層シートであることが好ましい。上記の透湿防水性フィルムとしては多孔質ポリエチレンフィルム、透湿性ウレタンフィルムや透湿性ポリエステルエラストマーフィルム等が挙げられる。また上記の不織布としては表面シートと同様の不織布を用いることができるが、コストと強度の観点からスパンボンド式乾式不織布が好ましい。
【実施例
【0063】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0064】
[測定および評価方法]
(1)不織布の目付
JIS L1913(2010)6.2に基づき目付を測定した。不織布から25cm×25cmの試験片3枚を採取し、それぞれの標準状態における質量(g)を量り、次の式によって、目付(g/m)を求め、その平均値を算出した。
Sm=W/A
Sm:目付(g/m
W:標準状態における試験片の質量(g)
A:試験片の面積(m)。
【0065】
(2)不織布のバイレック法吸水試験における吸水高さ
JIS L1907(2010)7.1.2に基づいてバイレック法による吸水高さを測定した。具体的には不織布から200mm×25mmの試験片を5枚採取し、水を入れた水槽の水面上に支えた水平棒上に試験片を固定した後、水平棒を降下させて試験片の下端の20mmが水に浸せきするように調整し、そのまま10分間放置する。放置後、毛細管現象によって水が上昇した高さをスケールで1mmまで測定し、試験片5点の平均値を求めた。
【0066】
(3)不織布を構成する繊維の含有量
JIS L 1030-1(2012)「繊維製品の混用率試験方法-第1部:繊維識別」、およびJIS L 1030-2(2012)「繊維製品の混用率試験方法-第2部:繊維混用率」に基づいて、正量混用率(標準状態における各繊維の質量比)を測定し、これを、不織布を構成する繊維の含有量(質量%)とした。
【0067】
(4)不織布の保水率
JIS L 1913(2010)6.9.2に準じて不織布の保水率を測定した。100mm×100mmの試験片を5枚用意し、その質量を測定した。次に、適切な大きさの容器に3Lの蒸留水を入れ、これらの試験片を20℃の蒸留水中に30分間浸漬させた。続いて、ピンセットで試験片を別で用意した3Lの蒸留水中に入れ替え再び30分間浸漬させる操作を2回繰り返し、不織布表面に付着している親水化処理剤等を落とした。次に、試験片の一端をクリップで吊るし、1分間水をしたたり落した後、その試験片の質量を測定し保水状態での質量とした。得られた試験片各5枚のそれぞれについて、次の式を用いて保水率を算出し、試験片5点の平均値を求めた。
m=(m2-m1)/m1
m:保水率(質量倍)
m1:試験片の標準状態での質量(g)
m2:試験片を湿潤し、水をしたたり落した後の質量(g)。
【0068】
(5)不織布の開孔群の90%開孔直径、90%開孔直径と10%開孔直径の差、および空孔率
走査型電子顕微鏡観察により得られた不織布の表面画像を画像解析することにより、標記の値を測定した。具体的には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製 S-3400N)を用いて倍率70で観察した。得られた画像を画像解析ソフトImageJで読み込み、上限・下限閾値をそれぞれ0として2値化を行い、繊維間に形成された開孔部を粒子とみなし面積が100μm以上の開孔部について粒子解析を行った。なお、この時画像の境界と接している開孔部は解析から外した。また、この観察により観察される開孔部は、画像解析におけるノイズの影響により後述する直径が10μm以上のものである。
【0069】
解析により得られた各開孔部を面積が小さい順に並べ、面積が小さいものから面積を足し合わせていき、累積面積が各開孔部の総面積の10%に最も近い値となる開孔部の直径を10%直径とした。また、解析により得られた各開孔部を面積が小さい順に並べ、面積が小さいものから面積を足し合わせていき、累積面積が各開孔部の総面積の90%に最も近い値となる開孔部の直径を90%直径とした。ここで、累積面積が、各開孔部の総面積の10%に最も近い値となる開孔部が2つ存在する場合には、より直径が大きい開孔部の開孔直径を10%直径とした。また、累積面積が、各開孔部の総面積の90%に最も近い値となる開孔部が2つ存在する場合には、より直径が大きい開孔部の直径を90%直径とした。なお、開孔部の直径とは、開孔部を楕円近似した際に得られる楕円の長軸の長さをいう。また、90%直径と10%直径との差を用いて、粒度分布の幅の目安とした。
【0070】
また、空孔率は画像全体に対する各開孔部の総面積から算出した。
【0071】
(6)短繊維の単繊維強度
JIS L1015(2010)8.7.1に準じて単繊維強度を測定した。具体的には繊維一本を緩く伸ばした状態で繊維の両端をそれぞれ接着剤で紙に貼り付け、紙を貼り付けた部分をつかみ部とした試料を作成した。このときつかみ部分間の繊維のみの領域を20mm確保するようにした。この試料のつかみ部分を引張試験器(オリエンテック社製 テンシロン万能試験機 型式RTG-1210)のつかみに取り付け、つかみ間隔10mm、引張速度10mm/分の速度で引っ張り、得られた伸び(mm)-荷重(N)曲線における最大荷重を単繊維強度(N)とした。測定は各試料10本について行いその平均値を算出した。
【0072】
(7)短繊維の公定水分率
短繊維の組成が既知である場合は、繊消誌1991年32巻3号P.88-96において同一の組成について記載されている公定水分率値を、短繊維の公定水分率とした。短繊維の組成が不明である場合は、上記(3)に記載の方法で、短繊維の組成を特定し、同様に繊消誌1991年32巻3号P.88-86において同一の組成について記載されている公定水分率値を、短繊維の公定水分率とした。
【0073】
(8)短繊維の空孔率、繊維径
ウルトラミクロトームを用いて短繊維サンプルを繊維軸と直行する方向から切り出することにより露出した繊維断面を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製 S-3400N)を用いて倍率500倍~1,500倍で観察した。得られた繊維断面画像において繊維内部に空間が確認できた場合は、画像解析ソフトImageJにて自動2値化処理を施すことにより繊維成分部分の面積と繊維内部の空間部分の面積を求め、次式により空孔率を算出した。
空孔率(%)=[S1/(S1+S2)]×100
S1:繊維部分の面積
S2:繊維内部の空間部分の面積
また同様の観測で、得られた繊維断面画像の長軸と短軸を測定しその平均値を繊維径とした。
【0074】
(9)吸収体の厚み
JIS L1913(2010)6.1.1 A法に基づいて吸収体の厚みを測定した。具体的には不織布の試料から50mm×50mmの試験片を5枚採取し、厚さ測定器(TECLOCK社製定圧厚さ測定器、型式PG11J)を用いて標準状態で試験片に0.36kPaの圧力を10秒間かけて厚さを測定した。測定は各試験片(5枚)について行い、平均値を算出した。
【0075】
(10)吸収体からの吸水ポリマーの脱落量
吸収体をふるい振とう器にかけ、不織布越しに脱落した吸水ポリマーの量を測定した。具体的には、直径75mm、面積44cmの円形状に切り出した吸収体を直径75mm、目開き500μmのふるいに敷き、そのふるいをアズワン製ミニふるい振とう機MVS-1Nにセットした。メモリ設定値を3として5分間振とうさせた後、吸収体の下面の不織布越しに脱落した吸水ポリマーの質量(g)を測定した。続いて、ふるいに敷いた吸収体を上下面が入れ替わるように再度ふるいに敷き、同様の方法で振とうさせて吸収体のもう一方の不織布越しに脱落した吸水ポリマーの質量(g)を測定した。得られた吸水ポリマーの重量をもとに、次式により脱落量を算出した。
脱落量(g/m)=(n1+n2)×10000/44
n1:吸収体の一方の不織布越しに脱落した吸水ポリマー量
n2:吸収体のもう一方の不織布越しに脱落した吸水ポリマー量
(11)衛生材料製品の逆戻り量、繰り返し使用時の逆戻り量
表面シート、吸収体、裏面シートを接着して一体化した衛生材料製品を試料とし、試料の表面シート側から尿を模倣した水系液体として用意した生理食塩水(9%の塩化ナトリウム水溶液)を20ml投与した。生理食塩水を投与して5分後に、表面シート上の生理食塩水を投与した位置に予め重量を測定したろ紙(アドバンテック社製定性濾紙No1 110φ)を置き、その上からステンレス製の直径110mmの円柱形状の錘を置き5分間保持した。試験終了後、錘を除去して逆戻りにより吸水したろ紙の質量を測定した。試験後のろ紙の質量(mg)と試験前のろ紙の質量(mg)を用いて次式により逆戻り量を算出した。
逆戻り量(mg)=W1―W0
W1:試験後のろ紙の質量
W2:試験前のろ紙の質量。
【0076】
錘を除去してから30分経過後に、前回生理食塩水を投与した位置に再び20mlの生理食塩水を投与し、新たに準備したろ紙を用いて同様の錘保持時間・方法で逆戻り量を測定する操作を2回繰り返し、2回目の逆戻り量と3回目の逆戻り量を算出した。この3回目の逆戻り量を繰り返し使用時の逆戻り量とした。
【0077】
逆戻り量は低い値を示すものほど、逆戻り防止性に優れている。逆戻り量が60mg以下のものは尿等の水系液体を一度吸収した状態で着用し続けても、肌側への尿等の水系液体の逆戻りが抑制されているため快適性があり好ましい。同様に繰り返し使用時の逆戻り量も低い値ほど逆戻り防止性に優れており、繰り返し使用時の逆戻り量が1500mg以下のものは、繰り返し使用しても快適性が持続しており好ましい。
【0078】
(12)傾斜状態での表面液流れ距離
表面シート、吸収体、裏面シートを接着して一体化した略長方形状の衛生材料製品を試料とし、試料を45°の傾斜角度を有した傾斜台に試料の長手方向が傾斜方向と一致するように固定した。このとき表面シート上の皺をなくすため試料を伸ばした状態で固定した。続いて表面シートの上端から1cm下方の位置で、あらかじめビーカーに準備した0.90%生理食塩水(青色染料で着色)を、マイクロチューブポンプから、1.5g/秒の速度で合計25g滴下した。このとき生理食塩水が表面シート伝いに傾斜方向に流れ落ち、ある位置で表面シート内部に吸収されて表面シート上から消失する挙動が観測される。滴下位置を始点としてこの生理食塩水が消失するまでの距離を表面液流れ距離とし、25gの生理食塩水全量を滴下している間に観察された最大の表面液流れ距離を、傾斜状態での表面液流れ距離とした。
【0079】
表面液流れ距離は低い値を示すものほど、液漏れ防止性に優れている。表面液流れ距離が45mmより大きいものは、着用状態で寝位を取った際など衛生材料製品が傾斜状態になるときの漏れが顕著であり、実用レベルの吸収特性を有さないと判断した。
【0080】
(13)傾斜状態での吸収量
上記(12)に記載の方法において、生理食塩水の滴下量を過剰量とし、衛生材料製品の下側端面から生理食塩水の漏出が観測されるまで、生理食塩水の滴下を継続した。より詳細にはビーカーに250gの生理食塩水を準備し、上記(12)に記載の方法と同様の滴下速度で生理食塩水を滴下し、衛生材料製品の下側端面から生理食塩水の漏出が観測された時点で滴下を終了した。滴下されずにビーカーに残った生理食塩水の質量(g)を測定し、以下の式により傾斜状態での吸収量を算出した。
傾斜状態での吸収量(g)=250-Q
Q:滴下されずにビーカーに残った生理食塩水の質量(g)
傾斜状態での吸収量は高い値を示すほど、液漏れ防止性に優れている。傾斜状態での吸収量が100gより小さいものは着用状態で寝位を取った際など衛生材料製品が傾斜状態になるときの漏れが顕著であり、実用レベルの吸収特性を有さないと判断した。
【0081】
(14)吸水ポリマーの粒子径
受け皿およびJIS Z8801に準拠した公称目開き106μm、212μm、300μm、425μm、500μm、1mm(1000μm)、及び1.4mmのふるいを、下からこの順に重ねて、1.7mmのふるいに吸水ポリマー5.00gを置き、自動振とう機(アズワン製水平旋回ふるい SKH-01)を用いてメモリ設定値3で10分間振とうし、各ふるいおよび受け皿上での吸水ポリマーの有無と質量を確認した。ただし、各ふるいもしくは受け皿上において、存在が確認できる吸水ポリマーが仕込み量5.00gの5%未満である場合には、当該ふるいもしくは受け皿上には吸水ポリマーが無いものとみなす。
【0082】
得られた結果から、吸水ポリマーの粒子径の上限値に関しては、吸水ポリマーの存在が仕込み量5.00gの5%以上の量で確認されるふるいのうち目開きが一番大きいものについて、そのふるいよりも1段目開きが大きいふるいの目開きを吸水ポリマーの粒子径の上限値とした。例えば、吸水ポリマーをふるいにかけた結果、吸水ポリマーの存在が仕込み量5.00gの5%以上の量で確認されるふるいのうち目開きが一番大きいものが425μmの目開きのものである場合は、そのふるいより1段目開きが大きい500μmを吸水ポリマーの粒子径の上限値とし、吸水ポリマーの粒子径は500μm以下となる。
【0083】
また下限値に関しては、吸水ポリマーの存在が仕込み量5.00gの5%以上の量で確認されるふるいのうち目開きが一番小さいものについて、そのふるいの目開きを吸水ポリマーの粒子径の下限値とした。ただし、範囲の表現において当該数値は含まない。例えば「212μmを超え300μm以下である」は表中では「212-300(μm)」と表す。なお、吸水ポリマーが目開き106μmの振るいを通過し、受け皿にも仕込み量5.00gの5%以上の量で確認された場合には、受け皿を目開き0μmのふるいと見なした。例えば、吸水ポリマーをふるいにかけた結果、吸水ポリマーの存在が仕込み量5.00gの5%以上の量で確認されるふるいのうち目開きが一番小さいものが106μmの目開きのものである場合は、106μmを吸水ポリマーの粒子径の下限値とし、吸水ポリマーの粒子径は106μmを超えるということになる。また、吸水ポリマーの存在が受け皿にも仕込み量5.00gの5%以上の量で確認された場合は、測定結果としての下限値の記載は「吸水ポリマーの粒子径は0μmを超える」ということになる。
【0084】
(製造例1:不織布A)
レーヨン(公定水分率:11%)からなる短繊維(繊維径:13μm、繊維長:51mm、単繊維強度:0.04N)の塊を、カードで開繊した後、クロスラップウエーバーで目付20g/mのウエッブaとした。また上記と同様のレーヨンからなる短繊維の塊70質量%と、ポリエチレンテレフタレート(公定水分率:0.4%)からなる中空短繊維(繊維径:30μm、繊維長:51mm、単繊維強度:0.27N、空孔率:30%)の塊30質量%とをカードで混繊し、開繊した後、クロスラップウエーバーで目付20g/mのウエッブbとした。得られたウエッブaとウエッブbとを重ねて、圧力3MPa、速度1.0m/minの条件で、ウエッブa側から高圧水流をあてて絡合させ、150℃で3分間乾燥することにより目付40g/mの不織布Aを得た。不織布Aの、ウエッブaに由来する側の面は、90%直径が114μm、90%直径と10%直径との差が91μmである開孔群を有していた。またウエッブbに由来する側の面は、空孔率37%の開孔群を有していた。
【0085】
(製造例2:不織布B)
製造例1におけるのと同様のウエッブbを2枚重ね、製造例1と同様の条件で絡合させ、乾燥することにより目付40g/mの不織布Bを得た。不織布Bの両面のうち90%直径が小さい方の面は、90%直径が205μm、90%直径と10%直径との差が159μmである開孔群を有していた。またもう一方の面は、空孔率38%の開孔群を有していた。
【0086】
(製造例3:不織布C)
製造例1におけるのと同様のウエッブaを2枚重ね、製造例1と同様の条件で絡合させ、乾燥することにより目付40g/mの不織布Cを得た。不織布Cの両面のうち90%直径が小さい方の面は、90%直径が110μm、90%直径と10%直径との差が88μmである開孔群を有していた。またもう一方の面は、空孔率19%の開孔群を有していた。
【0087】
(製造例4:不織布D)
重ね合わせるウエッブの一方として、製造例1におけるのと同様のウエッブaを用いた。また、もう一方のウエッブとして、ウエッブaにおけるのと同様のレーヨンからなる短繊維の塊70質量%と、ポリエチレンテレフタレート(公定水分率:0.4%)からなる中実の短繊維(繊維径:14μm、繊維長:51mm、単繊維強度:0.11N、空孔率:0%)の塊とをカードで混繊し、開繊した後、クロスラップウエーバーで20g/mのウエッブbとした。ウエッブaとウエッブbとを重ねて、製造例1と同様の条件で絡合させ、乾燥することにより目付40g/mの不織布Dを得た。不織布Dの、ウエッブaに由来する側の面は、90%直径が109μm、90%直径と10%直径との差が84μmである開孔群を有していた。またウエッブbに由来する側の面は、空孔率21%の開孔群を有していた。
【0088】
(製造例5:不織布E)
ポリエチレンテレフタレート(公定水分率:0.4%)からなる中実の短繊維(繊維径:12μm、繊維長:51mm、単繊維強度:0.09N、空孔率:0%)の塊を、カードで開繊した後、クロスラップウエーバーで目付20g/mのウエッブaとした。また重ね合わせるもう一方のウエッブとして、製造例1におけるのと同様のウエッブbを用いた。ウエッブaとウエッブbとを重ねて、製造例1と同様の条件で絡合させた。続いて、親水化剤(親水性ポリエステル成分を含むノニオン系界面活性剤)を付与して、乾燥することにより目付40g/mの不織布Eを得た。不織布Eの、ウエッブaに由来する側の面は、90%直径が125μm、90%直径と10%直径との差が98μmである開孔群を有していた。またウエッブbに由来する側の面は、空孔率37%の開孔群を有していた。
【0089】
(製造例6:不織布F)
レーヨン(公定水分率:11%)からなる短繊維(繊維径:8μm、繊維長:51mm、単繊維強度:0.02N)の塊を、カードで開繊した後、クロスラップウエーバーで目付20g/mのウエッブaとした。また重ね合わせるもう一方のウエッブとして、製造例1におけるのと同様のウエッブbを用いた。ウエッブaとウエッブbとを重ねて、製造例1と同様の条件で絡合させ、乾燥することにより目付40g/mの不織布Fを得た。不織布Fの、ウエッブaに由来する側の面は、90%直径が98μm、90%直径と10%直径との差が77μmである開孔群を有していた。またウエッブbに由来する側の面は、空孔率36%の開孔群を有していた。
【0090】
(製造例7:不織布G)
重ね合わせるウエッブの一方として、製造例1におけるのと同様のウエッブaを用いた。また、もう一方のウエッブとして、レーヨンからなる短繊維(繊維径:17μm、繊維長:51mm、単繊維強度:0.09N)の塊70質量%と、製造例1で用いたのと同様のポリエチレンテレフタレートからなる中空短繊維の塊30質量%とをカードで混繊し、開繊した後、クロスラップウエーバーで20g/mのウエッブbとした。ウエッブaとウエッブbとを重ねて、製造例1と同様の条件で絡合させ、乾燥することにより目付40g/mの不織布Gを得た。不織布Gの、ウエッブaに由来する側の面は、90%直径が110μm、90%直径と10%直径との差が93μmである開孔群を有していた。またウエッブbに由来する側の面は、空孔率42%の開孔群を有していた。
【0091】
(製造例8:不織布H)
重ね合わせるウエッブの一方として、製造例1におけるのと同様のウエッブaを用いた。また、もう一方のウエッブとして、製造例1で用いたのと同様のレーヨンからなる短繊維の塊50質量%と、製造例1で用いたのと同様のポリエチレンテレフタレートからなる中空短繊維の塊50質量%とをカードで混繊し、開繊した後、クロスラップウエーバーで目付20g/mのウエッブbとした。ウエッブaとウエッブbとを重ねて、製造例1と同様の条件で絡合させ、乾燥することにより目付40g/mの不織布Hを得た。不織布Hの、ウエッブaに由来する側の面は、90%直径が118μm、90%直径と10%直径との差が88μmである開孔群を有していた。またウエッブbに由来する側の面は、空孔率46%の開孔群を有していた。
【0092】
(製造例9:不織布I)
製造例6で用いたのと同様のウエッブaを2枚重ね、製造例1と同様の条件で絡合させ、乾燥することにより40g/mの不織布Iを得た。
【0093】
(実施例1)
市販の吸水ポリマー(SDPグローバル社製 IM930)を目開き300μmと212μmの振るいを用いて分級し、212μmを超え300μm以下の粒子径を有する吸水ポリマーAを得た。続いて、第1の不織布として不織布Aを用い、不織布Aのウェブaに由来する側の面を第1a面として、第1a面にスチレン系ホットメルト接着剤を1g/mとなるようにスプレー状に塗布し、さらにその上から吸水ポリマーAを300g/mとなるように均一に散布した。続いて第2の不織布として、別の不織布Aを用い、同様にウェブaに由来する側の面を第2の不織布の不織布の吸水ポリマー側の面(第2a面)として、第2a面にスチレン系ホットメルト接着剤を1g/mとなるようにスプレー状に塗布し、第2の不織布のホットメルト接着剤の塗布面が第1の不織布上に散布した吸水ポリマーと接するように被せ、圧着することにより吸収体を得た。さらに当該吸収体を30cm×10cmの略長方形状にカットするとともに、表面シートとして、芯部にポリエチレン、鞘部にポリプロピレンを有する芯鞘構造の複合短繊維を用いて作製したサーマルボンド式乾式不織布を35cm×14cmの略長方形状にカットしたものを、スチレン系ホットメルト接着剤を1g/mスプレー状に塗布して、第1b面に重ねて圧着した。また、裏面シートとして多孔質ポリエチレンフィルムとポリプロピレン製スパンボンド式乾式不織布を35cm×20cmの略長方形状にカットしたものを用い、スチレン系ホットメルト接着剤を1g/mスプレー状に塗布して第2の不織布の吸水ポリマーと反対側の面(第2b面)に重ねて圧着した。このとき、表面シート、吸収体、裏面シートの各材料の長方形状の長手方向を揃えつつ重心が一致するように重ねて圧着し衛生材料製品とした。得られた吸収体、および衛生材料製品の組成および評価結果を表1に示す。
【0094】
(実施例2~4、比較例1~5)
第1の不織布および第2の不織布についてそれぞれ、表1および表2に記載のものを用いた以外は実施例1と同様にして、吸収体および衛生材料製品を得た。得られた吸収体および衛生材料製品の評価結果を表1および表2に示す。なお、比較例1、2における不織布Bおよび不織布Cは単層構成であり表面と裏面の組成に差がないため、両方の面に対して90%開孔直径を解析し、90%開孔直径が小さい方の面が吸水ポリマーの側に位置するようにした。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
実施例1と、比較例1および比較例5との比較において、第1の不織布の第1a面および第2a面のそれぞれの90%直径および90%直径と10%直径との差が、本発明の範囲を満たすことにより、吸水ポリマーの脱落防止性に優れることがわかる。さらに実施例1と実施例2との比較において、第1a面および第2a面のそれぞれの、90%直径および90%直径と10%直径との差を、本発明の好ましい範囲とすることにより、脱落量をさらに低減できることがわかる。
【0098】
実施例1と、比較例2および比較例3との比較において、第1の不織布の第1b面が、本発明で規定する空孔率の範囲を満たすことにより、表面流れ距離を小さくできることがわかる。その結果、傾斜状態での吸収量において衛生材料製品のより上流から吸収できるため、吸収量に優れることがわかる。
【0099】
実施例1と実施例3との比較により、第1の不織布の第1b面の空孔率を本発明の好ましい範囲内とすることで、より優れた吸収量を実現できることがわかる。
【0100】
実施例1と比較例4との比較において、第1の不織布の保水率が本発明で規定する範囲内であることにより、親水性を維持し続けることができるため、繰り返し使用時の逆戻り防止性に優れることがわかる。
【0101】
(実施例5)
実施例1において、吸水ポリマーの分級に用いた振るいを目開き1000μmおよび106μmとし、106μmを超え1000μm以下の粒子径を有する吸水ポリマーBを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、吸収体、および衛生材料製品を得た。吸収体および衛生材料製品の評価結果を表3に示す。
【0102】
(実施例6)
実施例1において、吸水ポリマーの分級に用いた振るいを目開き212μmおよび106μmとし、106μmを超え212μm以下の粒子径を有する吸水ポリマーCを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、吸収体および衛生材料製品を得た。得られた吸収体および衛生材料製品の評価結果を表3に示す。
【0103】
(比較例6)
実施例1において、吸水ポリマーの分級に用いた振るいを目開き106μmとし、0μmを超え106μm以下の粒子径を有する吸水ポリマーDを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、吸収体および衛生材料製品を得た。得られた吸収体および衛生材料製品の評価結果を表3に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
実施例1と比較例6との比較により、吸水ポリマーの粒子径が本発明の規定する範囲内であることにより、吸水ポリマーの脱落を抑制しつつ、高い吸収量を実現できることがわかる。
【0106】
実施例1と実施例6との比較において、第1a面および第2a面のそれぞれの、90%直径および90%直径と10%直径との差を本発明の範囲内としつつ、さらに細かい吸水ポリマーを用いることにより、高い吸収量を実現できることがわかる。
【0107】
(実施例7)
第1の不織布として不織布Aを用い、不織布Aのウェブaに由来する側の面を第1a面として、第1a面にスチレン系ホットメルト接着剤を1g/mとなるようにスプレー状に塗布し、さらにその上から吸水ポリマーAを150g/mとなるように均一に散布した。続いて第3の不織布として、不織布Cを用い、不織布Cの片面にスチレン系ホットメルト接着剤を1g/mとなるようにスプレー状に散布し、第3の不織布のホットメルト接着剤の散布面が第1の不織布上に散布した吸水ポリマーと接するように被せた。さらに、不織布Cのもう一方の面にスチレン系ホットメルト接着剤を1g/mとなるようにスプレー状に塗布し、さらにその上から吸水ポリマーAを150g/mとなるように均一に散布した。次いで、第2の不織布として、別の不織布Aを用い、ウェブaに由来する側の面にスチレン系ホットメルト接着剤を1g/mとなるようにスプレー状に塗布し、第2の不織布のホットメルト接着剤の塗布面が第3の不織布上に散布した吸水ポリマーと接するように被せ、圧着することにより吸収体を得た。以降、実施例1と同様の方法で、衛生材料製品とした。得られた吸収体および衛生材料製品の評価結果を表4に示す。
【0108】
(実施例8,9)
実施例7において、第3の不織布として不織布Cの代わりに不織布Iまたは不織布Bを用いた以外は実施例6と同様にして、吸収体および衛生材料製品を得た。得られた吸収体および衛生材料製品の評価結果を表4に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
実施例1と実施例7および実施例8との比較により、第3の不織布として、バイレックス試験の吸水高さが本願の好ましい範囲の不織布を用いることにより、優れた繰り返し使用時の逆戻り防止性を有するものとなることがわかる。
【0111】
(実施例10)
第1の不織布および第2の不織布が一体につながったコアラップシートとして不織布Aを用いた。不織布Aを長辺30cm×短辺20cmの略長方形状にカットした。不織布Aのウェブaに由来する側の面を第1a面として、第1a面にスチレン系ホットメルト接着剤を1g/mとなるようにスプレー状に塗布し、さらにその上から吸水ポリマーAを150g/mとなるように均一に散布した。続いて不織布Aの1組の短辺の中点を結ぶことにより得られる中心線で、不織布Aの1組の長辺が重なるにように不織布Aを折り畳み、吸水ポリマーAが不織布Aで包まれた態様とし、圧着することにより30cm×10cmの略長方形状の吸収体を得た。以降、実施例1と同様の方法で、衛生材料製品とした。得られた吸収体および衛生材料製品の評価結果を表5に示す。
【0112】
(実施例11)
第1の不織布および第2の不織布が一体につながったコアラップシートとして不織布Aを用いた。不織布Aを長辺30cm×短辺20cmの略長方形状にカットした。不織布Aのウェブaに由来する側の面を第1a面として、第1a面にスチレン系ホットメルト接着剤を1g/mとなるようにスプレー状に散布し、さらにその上から吸水ポリマーAを150g/mとなるように均一に散布した。続いて、第3の不織布として不織布Cを長辺30cm×短辺10cmにカットし、その片面にスチレン系ホットメルト接着剤を1g/mとなるようにスプレー状に散布した。不織布Aの中心線と第3の不織布の中心線が重なるように、第3の不織布のホットメルト接着剤散布面が吸水ポリマーと接するように被せた。以降、実施例10と同様にして、吸収体および衛生材料製品とした。得られた吸収体および衛生材料製品の評価結果を表5に示す。
【0113】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の吸収体は、吸水ポリマーの脱落防止性に優れ、かつ、吸収特性に優れる吸収体であり、テープタイプ紙おむつ、パンツタイプ紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド等の種々の衛生材料製品として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0115】
1 第1の不織布
1a 第1の不織布の吸水ポリマー群の側の面
1b 第1の不織布の吸水ポリマー群と反対側の面
2 第2の不織布
3 第3の不織布
4 コアラップシート
4a コアラップシートの吸水ポリマー群の側の面
4b コアラップシートの吸水ポリマー群と反対側の面
5 吸水ポリマー群
5a 第1の吸水ポリマー群
5b 第2の吸水ポリマー群
6 被覆材料
7 吸収体
8 表面シート
9 裏面シート
10 衛生材料製品
c 吸収体の断面を観察した位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6