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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】アクセスポート
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/02 20060101AFI20241106BHJP
   A61M 39/04 20060101ALI20241106BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61M39/02 100
A61M39/04
A61M37/00 560
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021506595
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2021003854
(87)【国際公開番号】W WO2021166643
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020024533
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆浩
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-265146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0199220(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0105688(US,A1)
【文献】登録実用新案第3142990(JP,U)
【文献】特開2017-012481(JP,A)
【文献】特表2016-504158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/02
A61M 39/04
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルと接続して用いられるアクセスポートであって、
液体収容部を含むポート本体と、
前記ポート本体に保持されて前記液体収容部を覆う隔膜体と、を備え、
前記ポート本体は、前記液体収容部に接続し前記液体収容部を前記カテーテルの内部に連通させる接続通路を含み、
前記接続通路が前記液体収容部へ接続する接続位置での前記接続通路の軸方向に沿った断面における、前記隔膜体の前記液体収容部とは反対側となる面と前記液体収容部の内面との間の前記軸方向に垂直な方向への長さが、前記軸方向に沿って前記液体収容部の半分を超える傾斜領域内にて、前記接続位置から離間するにつれてしだいに小さくなっていき、
前記隔膜体の前記液体収容部とは反対側となる面は、前記軸方向において前記接続位置から離間する側に位置する第1面と、該第1面に対して前記軸方向において前記接続位置に接近する側に位置する前記第1面に対して傾斜した第2面と、を有し、
前記軸方向に沿った前記第1面の長さは前記軸方向に沿った前記第2面の長さよりも長く、
前記第1面は、前記軸方向において前記接続位置に接近するにつれて前記液体収容部の内面から離間する側へ向かうように前記軸方向に対して傾斜し、
前記第1面の前記軸方向に対する傾斜角度は、前記第2面の前記軸方向に対する傾斜角度よりも大きい、アクセスポート。
【請求項2】
前記ポート本体は、前記液体収容部の底面を形成する底壁部と、前記液体収容部の側面を形成する側壁部と、を有し、
前記側壁部は、前記底壁部から離間して設けられ且つ前記底面と対面する対向誘導面を有した突出部を有し、
前記接続通路は、前記対向誘導面と前記底面との間となる位置において前記側面に開口している、請求項1記載のアクセスポート。
【請求項3】
前記対向誘導面は、前記対向誘導面が前記底面と対面する方向と前記軸方向との両方に垂直な幅方向における中央部に、前記底面から離間するように凹んだ凹面を有している、請求項2記載のアクセスポート。
【請求項4】
前記ポート本体は、前記液体収容部の底面を形成する底壁部と、該底壁部から延び出し前記液体収容部の側面を形成する側壁部と、を有し、
前記側壁部は、周方向に並べられた一対の平坦壁部を含み、
前記接続通路は、前記一対の平坦壁部の間となる位置において前記側面に開口し、
前記底壁部は、該底壁部から前記側壁部が延び出す方向と平行な方向からの観察において、前記接続位置に向けて線状に延びる誘導リブを有する、請求項1~3のいずれか一項記載のアクセスポート。
【請求項5】
前記ポート本体は、前記液体収容部の内面と前記接続通路とを形成する表層部材を有し、
前記表層部材は、前記液体収容部の内面と前記接続通路との間を継ぎ目無しで接続されている、請求項1~4のいずれか一項記載のアクセスポート。
【請求項6】
前記接続通路の前記軸方向に垂直な断面において、前記ポート本体の内面は、前記ポート本体の前記内面に対向する下面に沿った方向における両外方において前記隔膜体に接近するように前下面に対して傾斜している、請求項1~5のいずれか一項記載のアクセスポート。
【請求項7】
前記接続通路の前記軸方向に垂直な前記断面において、前記内面はU字状に延びている、請求項6記載のアクセスポート。
【請求項8】
前記ポート本体は、内蔵された金属コイルを有する、請求項1~のいずれか一項記載のアクセスポート。
【請求項9】
前記ポート本体は、前記液体収容部の周囲となる位置に互いから離間して設けられた少なくとも二つの金属コイルと、該金属コイルとそれぞれ電気的に接続した少なくとも二つの発光体と、を有する、請求項1~のいずれか一項記載のアクセスポート。
【請求項10】
前記ポート本体は、前記液体収容部の底面を形成する底壁部と、前記液体収容部の側面を形成する側壁部と、を有し、
前記少なくとも二つの金属コイルは、前記側壁部に内蔵されている、請求項記載のアクセスポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセスポートに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内に留置したカテーテルを用いた治療は、目的の病変部の近傍から薬剤の投与等を行うことができることから、盛んに行われている。カテーテルは、その一端が患者の皮下に埋設されたアクセスポートに接続され、他端が目的の病変部の近傍に配置される。アクセスポートの内腔とカテーテルの内腔とは、接続通路によって接続されており、アクセスポートの内腔に薬剤を導入すると、接続通路及びカテーテルを通じて、薬剤を目的の病変部の近傍まで運ぶことができる。例えばJP6057916B2には、カテーテルと共に用いられるアクセスポートが開示されている。
【0003】
ところで、患者の体内に留置されたカテーテル内に更に径の小さいマイクロカテーテルを通し、マイクロカテーテルの先端を末梢血管領域まで進めて、目的の病変部のさらに近傍から薬剤の投与等を行うことが望まれている。この場合、マイクロカテーテルをカテーテル内に通す方法としては、まず、穿刺針を用いてアクセスポートの隔膜を穿刺し、穿刺針の内腔、アクセスポートの内腔及び接続通路を通じて、マイクロカテーテルをカテーテルの内腔に挿入することが考えられる。あるいは、まず、マイクロカテーテルよりも細くて腰の強いガイドワイヤを、上記穿刺針の内腔、アクセスポートの内腔及び接続通路を通じてカテーテルの内腔に挿入し、ガイドワイヤをガイドにしてマイクロカテーテルをカテーテルの内腔に挿入することが考えられる。
【0004】
マイクロカテーテルやガイドワイヤをカテーテルの内腔に挿入する際は、アクセスポート及びカテーテルは患者の皮下に埋設されている。このため、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端も接続通路も、直接観察することができない。したがって、マイクロカテーテルやガイドワイヤを操作してその先端を回転させながら、接続通路の位置を探る。
【0005】
しかしながら、このような方法では、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路へ挿入することができない。
【発明の開示】
【0006】
本件発明は、以上の点を考慮してなされたものであって、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路へ挿入可能なアクセスポートの提供を目的とする。
【0007】
本発明によるアクセスポートは、カテーテルと接続して用いられるアクセスポートであって、液体収容部を含むポート本体と、上記ポート本体に保持されて上記液体収容部を覆う隔膜体と、を備え、上記ポート本体は、上記液体収容部に接続し上記液体収容部を上記カテーテルの内部に連通させる接続通路を含み、上記接続通路が上記液体収容部へ接続する接続位置での上記接続通路の軸方向に沿った断面における、上記隔膜体の上記液体収容部とは反対側となる面と上記液体収容部の内面との間の上記軸方向に垂直な方向への長さが、上記軸方向に沿って上記液体収容部の半分を超える傾斜領域内にて、上記接続位置から離間するにつれてしだいに小さくなっていく。
【0008】
上記アクセスポートにおいて、上記傾斜領域は、上記接続位置から離間する側となる上記液体収容部の半分の領域を含んでよい。
【0009】
上記アクセスポートでは、上記接続通路の軸方向に沿った上記断面において、上記傾斜領域における上記液体収容部の上記内面が、上記軸方向において上記接続位置に接近するにつれて上記隔膜体から離間する側へ向かうように、上記軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0010】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体の上記内面は、上記液体収容部を形成(区画)する底面及び上記底面から延び出し上記液体収容部を形成(区画)する側面を含み、上記底面は、上記軸方向において上記接続位置に接近するにつれて上記隔膜体から離間する側へ向かうように、上記軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0011】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体の上記底面は、上記接続通路が開口した側壁面に接続した接続底面と、上記軸方向において上記接続底面に対して上記接続位置から離間する側に位置する主底面と、を含み、上記主底面は、上記接続位置に接近するにつれて上記隔膜体から離間する側へ向かうように上記軸方向に対して傾斜し、上記接続底面は、上記接続位置に接近するにつれて上記隔膜体に接近する側へ向かうように上記軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0012】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、上記液体収容部の底面を形成する底壁部を有し、上記底壁部の厚みは、上記軸方向に沿って上記接続位置に接近するにつれてしだいに薄くなっていってもよい。
【0013】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、上記液体収容部の底面を形成する底壁部と、上記液体収容部の側面を形成する側壁部と、を有し、上記側壁部は、上記底壁部から離間して設けられ且つ上記底面と対面する対向誘導面を有した突出部を有し、上記接続通路は、上記対向誘導面と上記底面との間となる位置において上記側面に開口していてもよい。
【0014】
上記アクセスポートにおいて、上記対向誘導面は、上記対向誘導面が上記底面と対面する方向と上記軸方向との両方に垂直な幅方向における中央部に、上記底面から離間するように凹んだ凹面を有していてもよい。
【0015】
上記アクセスポートにおいて、上記凹面は、上記接続通路を形成(区画)する壁面に接続していてもよい。
【0016】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体の上記内面は、上記対向誘導面と対面する位置に設けられた接続底面と、上記軸方向において上記接続底面に対して上記接続位置から離間する側に位置する主底面と、を含み、上記主底面は、上記接続位置に接近するにつれて上記隔膜体から離間する側へ向かうように上記軸方向に対して傾斜し、上記接続底面は、上記接続位置に接近するにつれて上記隔膜体に接近する側へ向かうように上記軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0017】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、上記液体収容部の底面を形成する底壁部と、上記底壁部から延び出し上記液体収容部の側面を形成する側壁部と、を有し、上記側壁部は、周方向に並べて設けられた一対の平坦壁部を含み、上記接続通路は、上記一対の平坦壁部の間となる位置において上記側面に開口し、上記一対の平坦壁部は、上記底壁部から上記側壁部が延び出す方向と平行な方向からの観察において、直線状に延び且つ上記接続通路に向けて先細りするテーパ状側面を形成していてもよい。
【0018】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、上記液体収容部の底面を形成する底壁部と、上記底壁部から延び出し上記液体収容部の側面を形成する側壁部と、を有し、上記側壁部は、周方向に並べられた一対の平坦壁部を含み、上記接続通路は、上記一対の平坦壁部の間となる位置において上記側面に開口し、上記底壁部は、上記底壁部から上記側壁部が延び出す方向と平行な方向からの観察において、上記接続位置に向けて線状に延びる誘導リブを有していてもよい。
【0019】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、上記液体収容部の底面を形成する底壁部と、上記底壁部から延び出し上記液体収容部の側面を形成する側壁部と、を有し、上記隔膜体は、上記底壁部から上記側壁部が延び出す方向と平行な方向に延びて上記液体収容部とは反対側に開口した環状の環状保持溝を形成され、上記ポート本体は、上記底壁部から上記側壁部が延び出す方向と平行な方向に突出した環状保持突起部を有していてもよい。
【0020】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、上記液体収容部の底面及び側面を形成する基部材と、上記基部材に固定され上記基部材との間で上記隔膜体を保持する蓋部材と、を有し、上記基部材は、上記底面を少なくとも形成する底部材と、上記底部材に支持されて上記液体収容部を取り囲む環状の環状部材と、を有し、上記環状部材は、上記接続位置に対応して設けられ上記液体収容部側へと突出した突出部を有していてもよい。
【0021】
上記アクセスポートにおいて、上記環状部材は、X線不透過材料で構成されていてもよい。
【0022】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、上記液体収容部の内面と上記接続通路とを形成する表層部材を有し、上記表層部材は、上記液体収容部の内面と上記接続通路との間を継ぎ目無しで接続されていてもよい。
【0023】
上記アクセスポートにおいて、上記表層部材は、金属で構成されていてもよい。
【0024】
上記アクセスポートにおいて、上記液体収容部の内面は漏斗状となっていてもよい。
【0025】
上記アクセスポートでは、上記接続通路の上記軸方向に垂直な断面において、上記ポート本体の内面は、上記ポート本体の上記内面に対向する下面に沿った方向における両外方において上記隔膜体に接近するように上記下面に対して傾斜していてもよい。
【0026】
上記アクセスポートでは、上記接続通路の上記軸方向に垂直な上記断面において、上記内面はU字状に延びていてもよい。
【0027】
上記アクセスポートでは、上記接続位置を通過する上記接続通路の上記軸方向に沿った断面において、上記底面は上記軸方向と平行に延びていてもよい。
【0028】
上記アクセスポートにおいて、上記接続通路の上記軸方向に沿った上記断面において、上記隔膜体の上記液体収容部とは反対側となる面は、上記軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0029】
上記アクセスポートにおいて、上記隔膜体の上記液体収容部とは反対側となる面は、上記軸方向において上記接続位置から離間する側に位置する第1面と、上記第1面に対して上記軸方向において上記接続位置に接近する側に位置する上記第1面に対して傾斜した第2面と、を有し、上記軸方向に沿った上記第1面の長さは上記軸方向に沿った上記第2面の長さよりも長く、上記第1面は、上記軸方向において上記接続位置に接近するにつれて上記液体収容部の内面から離間する側へ向かうように上記軸方向に対して傾斜し、上記第1面の上記軸方向に対する傾斜角度は、上記第2面の上記軸方向に対する傾斜角度よりも大きくてもよい。
【0030】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、内蔵された金属コイルを有していてもよい。
【0031】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、上記液体収容部の周囲となる位置に互いから離間して設けられた少なくとも二つの金属コイルを有していてもよい。
【0032】
上記アクセスポートにおいて、上記隔膜体の上記液体収容部とは反対側となる面は、上記二つの金属コイルの間となる領域に露出していてもよい。
【0033】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、各金属コイルとそれぞれ電気的に接続した少なくとも二つの発光体を有していてもよい。
【0034】
上記アクセスポートにおいて、上記少なくとも二つの発光体の発光面は露出していてもよい。
【0035】
上記アクセスポートにおいて、上記ポート本体は、上記液体収容部の底面を形成する底壁部と、上記液体収容部の側面を形成する側壁部と、を有し、上記少なくとも二つの金属コイルは、上記側壁部に内蔵されていてもよい。
【0036】
上記アクセスポートにおいて、各金属コイルの軸線は、上記側壁部が上記底壁部から延び上がる方向と平行な方向に延びていてもよい。
【0037】
本発明によれば、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路へ挿入可能なアクセスポートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1の実施形態を説明するための図であって、アクセスポートを示す斜視図。
図2図1に示すアクセスポートを隔膜体の側から見た平面図。
図3図1に示すアクセスポートの分解斜視図。
図4図2のI-I線に沿ったアクセスポートの断面図。
図5図3に示す基部材の分解斜視図。
図6図3に示す隔膜体及び蓋部材を隔膜体他側面の側から見た斜視図。
図7図1に示すアクセスポートと磁場発生装置とによって構成される医療システムを示す回路図。
図8】本発明の第2の実施形態を説明するための図であって、アクセスポートを示す斜視図。
図9図8に示すアクセスポートを隔膜体の側から見た平面図。
図10図8に示すアクセスポートの分解斜視図。
図11図9のII-II線に沿ったアクセスポートの断面図。
図12図9のIII-III線に沿ったアクセスポートの断面図。
図13図10に示す隔膜体及び蓋部材を隔膜体他側面の側から見た斜視図。
図14図2に対応する図であって、アクセスポートの変形例を説明するための平面図。
図15図14のIV-IV線に沿ったアクセスポートの断面図。
図16図4に対応する図であって、アクセスポートの他の変形例を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1図7は、第1の実施形態によるアクセスポート10を説明するための図である。このうち図1及び図2には、アクセスポート10の斜視図及び平面図が示されている。また、図3及び図4には、アクセスポート10の分解斜視図及び断面図が示されている。また、図5には、アクセスポート10の一部をなす基部材12の分解斜視図が示されている。また、図6には、アクセスポート10の隔膜体60及び蓋部材50の斜視図が示されている。また、図7には、アクセスポート10を用いて構成される医療システム90を示す回路図が示されている。
【0040】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0041】
<アクセスポートの全体構成>
アクセスポート10は、カテーテルCと接続された状態で患者の皮下に埋設されて用いられる。図1乃至図4に示すように、アクセスポート10は、液体収容部11aを含むポート本体11と、ポート本体11に保持されて液体収容部11aを覆う隔膜体60と、を備える。隔膜体60に専用の穿刺針を刺して液体収容部11a内に薬剤を導入することで、カテーテルCを介して目的の病変部近傍に薬剤を届けることができる。
【0042】
図4に示すように、ポート本体11は、液体収容部11aの内面(底面11b及び側面11c)を形成(区画)する基部材12と、基部材12に固定され基部材12との間で隔膜体60を保持する蓋部材50と、を有する。
【0043】
図3及び図4に示すように、基部材12は、液体収容部11aの底面11bを形成(区画)する底壁部20と、底壁部20から延び出し液体収容部11aの側面11cを形成(区画)する側壁部30と、を有する。底壁部20は全体として平板な板状に形成されている。側壁部30は、筒状に形成されており、底壁部20の一側面の略中央に立設されている。
【0044】
図4に示すように、基部材12は、さらに、液体収容部11aに接続し液体収容部11aをカテーテルCの内部(内腔)Caに連通させる接続通路40を含む。図示された例では、接続通路40は、基部材12の上記側面11cに開口している。より具体的には、接続通路40の内面40aは、側壁部30に形成された接続通路開口41と、接続通路開口41に接続された接続ポート42とによって形成(区画)されている。接続通路開口41は、環状の側壁部30の内側から外側に向かう方向に沿って延びる貫通孔であり、側壁部30の内面30a及び外面30bに開口している。接続ポート42は、その一端が、側壁部30の外面30bの側から接続通路開口41に挿入されて、側壁部30に対して固定されている。接続ポート42の他端には、カテーテルCの一端が接続される。なお、接続通路40は、接続ポート42を含まなくてもよい。その場合、カテーテルCの一端は、接続通路開口41に挿入されてもよい。
【0045】
蓋部材50は、基部材12の側壁部30を外面30bの側から覆う環状の蓋本体部51を含む。蓋本体部51は、また、側壁部30の外側において、底壁部20を、側壁部30が立設された側から覆う。
【0046】
蓋部材50は、更に、側壁部30の底壁部20とは反対側となる端面(以下、「側壁部一側端面」とも称する)30cに対向して配置される環状の蓋環状縁部52を有する。蓋環状縁部52は、蓋本体部51の底壁部20とは反対側となる端部から、環状の蓋本体部51の内側へ向けて、側壁部一側端面30cに沿って延び出す。
【0047】
図3図4及び図6に示すように、隔膜体60は、全体として平板な板状に形成されている。隔膜体60は、シリコーンゴム等により構成されている。隔膜体60は、側壁部一側端面30c上に、液体収容部11aを覆うように配置される。隔膜体60は、液体収容部11aとは反対側となる面(以下、「隔膜体一側面」とも称する)60aと、液体収容部11aの側となる面(以下、「隔膜体他側面」とも称する)60bとを有する。
【0048】
図4に示すように、隔膜体60の外縁部61は、側壁部一側端面30cと蓋環状縁部52との間に圧縮された状態で保持され、基部材12と蓋部材50との間を液密にシールする。隔膜体60の中央部62は、液体収容部11aに対面して配置される。蓋環状縁部52が環状に形成されていることにより、上記中央部62が露出し、上記中央部62に穿刺針を刺すことができる。
【0049】
ところで、患者の体内に留置されたカテーテル内に更に径の小さいマイクロカテーテルを通し、マイクロカテーテルの先端を末梢血管領域まで進めて、目的の病変部のさらに近傍から薬剤の投与等を行うことが望まれている。この場合、マイクロカテーテルをカテーテル内に通す方法としては、まず、穿刺針を用いてアクセスポートの隔膜体を穿刺し、穿刺針の内腔、アクセスポートの内腔(液体収容部)及び接続通路を通じて、マイクロカテーテルをカテーテルの内腔に挿入することが考えられる。あるいは、まず、マイクロカテーテルよりも細くて腰の強いガイドワイヤを、上記穿刺針の内腔、アクセスポートの内腔(液体収容部)及び接続通路を通じてカテーテルの内腔に挿入し、ガイドワイヤをガイドにしてマイクロカテーテルをカテーテルの内腔に挿入することが考えられる。
【0050】
マイクロカテーテルやガイドワイヤをカテーテルの内腔に挿入する際は、アクセスポート及びカテーテルは患者の皮下に埋設されている。このため、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端も接続通路も、直接観察することができない。したがって、マイクロカテーテルやガイドワイヤを操作してその先端を回転させながら、接続通路の位置を探る。
【0051】
しかしながら、このような方法では、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路へ挿入することができない。
【0052】
このような事情を考慮して、本実施の形態のアクセスポートは、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路へ挿入可能とするための工夫がなされている。
【0053】
<傾斜領域>
具体的には、次のような工夫がなされている。すなわち、アクセスポート10は、接続通路40が液体収容部11aへ接続する接続位置Pでの接続通路40の軸方向D1に沿った断面において(図4参照)、隔膜体一側面60aと液体収容部11aの内面との間の上記軸方向D1に垂直な方向D2への長さLが、上記接続位置Pから離間するにつれてしだいに小さくなっていく傾斜領域Sを有する。言い換えると、傾斜領域S内では、上記軸方向D1に沿った断面における上記垂直な方向D2での隔膜体一側面60aと液体収容部の内面との距離Lは、上記接続位置Pに接近するにつれてしだいに大きくなっていく。
【0054】
このような傾斜領域Sにおいては、隔膜体一側面60aに対して垂直な方向に沿って液体収容部11aに挿入されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端は、上記接続位置Pに近づく方向へ(したがって接続通路40に近づく方向へ)案内されやすくなる。
【0055】
また、傾斜領域Sは、上記軸方向D1に沿って液体収容部11aの半分を超える領域に形成されている。これにより、液体収容部11aに挿入されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端が液体収容部11aの中心から外れた位置に到達した場合であっても、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端は、接続通路40に近づく方向へ案内されやすくなる。
【0056】
以上により、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路40へ挿入することができる。
【0057】
さらに、図示された例では、傾斜領域Sは、上記接続位置Pから離間する側となる液体収容部11aの半分の領域を含んでいる。これにより、液体収容部11aに挿入されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端が液体収容部11aの中心よりも上記接続位置Pから離れた位置に到達しても、当該先端は、接続通路40に近づく方向へ案内されやすくなる。
【0058】
図示された例では、上記軸方向D1に沿った上記断面において(図4参照)、隔膜体一側面60aは、全体として上記軸方向D1に沿って広がっている。これに対し、上記軸方向D1に沿った上記断面において(図4参照)、傾斜領域Sにおける液体収容部11aの内面(ここでは底面11b)は、上記軸方向D1に対して傾斜している。より具体的には、傾斜領域Sにおける液体収容部11aの内面(底面11b)は、上記軸方向D1において上記接続位置Pに接近するにつれて隔膜体60から離間する側へ向かうように、上記軸方向D1に対して傾斜している。
【0059】
より詳しくは、図5に示すように、液体収容部11aの底面11bは、接続通路40が開口した側壁面30dに接続した接続底面11dと、上記軸方向D1において接続底面11dに対して上記接続位置Pから離間する側に位置する主底面11eと、を含む。主底面11eは、接続底面11dに接続している。そして、主底面11eは、上記接続位置Pに接近するにつれて隔膜体60から離間する側へ向かうように上記軸方向D1に対して傾斜している。このような主底面11eにより、上記傾斜領域Sが形成されている。
【0060】
図示された例では、図4に示すように、主底面11eの領域における底壁部20の厚みTが、上記軸方向D1に沿って上記接続位置Pに接近するにつれてしだいに薄くなっている。これにより、主底面11eは、上記接続位置Pに接近するにつれて隔膜体60から離間する側へ向かうように上記軸方向D1に対して傾斜している。
【0061】
<接続底面>
本実施の形態のアクセスポート10は、マイクロカテーテルやガイドワイヤを、さらに安定して且つ容易に接続通路40へ挿入可能とするための、さらなる工夫がなされている。具体的には、次のような工夫がなされている。
【0062】
すなわち、図4に示すように、接続底面11dは、接続位置Pに接近するにつれて隔膜体60に接近する側へ向かうように上記軸方向D1に対して傾斜している。接続底面11dは、上記軸方向D1において主底面11eに対して上記接続位置Pに接近する側に位置する。このような接続底面11dにより、主底面11eによって上記接続位置Pへ向けて案内されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端を、上記接続位置Pにさらに接近するにつれて隔膜体60に接近する方向に(すなわち側壁部30に形成された接続通路開口41に向けて)案内することができる。これにより、マイクロカテーテルやガイドワイヤを、さらに安定して且つ容易に接続通路40へ挿入可能とすることができる。
【0063】
<対向誘導面>
また、本実施の形態のアクセスポート10は、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路40へ挿入可能とするための、さらなる工夫がなされている。具体的には、次のような工夫がなされている。
【0064】
すなわち、図3に示すように、側壁部30は、底壁部20から離間して設けられた突出部31を含む。突出部31は、底面11bと対面する対向誘導面31aを有する。そして、突出部31は、対向誘導面31aと底面11bとの間となる位置に接続通路開口41が開口するように、配置されている。このような突出部31の対向誘導面31aと底面11bの対向誘導面31aに対面する領域とにより、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端を、接続通路開口41へ効率良く向けることができる。具体的には、上記先端の可動領域が対向誘導面31aと底面11bとの間に制限され、上記先端が対向誘導面31aと底面11bとの間となる位置に開口する接続通路開口41へ向けられやすくなる。
【0065】
とりわけ、図示された例では、図4に示すように、対向誘導面31aは、接続底面11dに対面する位置に配置されている。上述したように、接続底面11dは、接続通路開口41に接近するにつれて、隔膜体60に接近する側へ向かうように(したがって、対向誘導面31aに接近する側へ向かうように)、上記軸方向D1に対して傾斜している。対向誘導面31aがこのような接続底面11dと対面して設けられていることにより、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端の可動領域が接続通路開口41に接近するにつれて狭まり、対向誘導面31aと接続底面11dとの間となる位置に開口する接続通路開口41へ向けられやすくなる。
【0066】
さらに、図示された例では、図3に示すように、対向誘導面31aは、対向誘導面31aが底面11bと対面する方向と上記軸方向D1との両方に垂直な幅方向D3における中央部に、底面11bから離間するように凹んだ凹面31bを有している。このような凹面31bで囲まれた領域にマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端が入り込むと、上記先端の可動範囲は、凹面31bで囲まれた領域内に制限される。したがって、上記軸方向D1と平行な方向からの観察において凹面31bによって囲まれる領域と接続通路開口41とが重なっている場合(図4参照)、上記先端がさらに接続通路開口41へ向けられやすくなる。
【0067】
図示された例では、図4に示すように、凹面31bは、接続通路40を形成(区画)する壁面40aに接続している。これにより、凹面31bに沿って接続通路開口41へ向けて移動するマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端を、接続通路40内に向けることが容易である。すなわち、上記先端が、接続通路開口41が開口する側壁面30dと干渉して接続通路40内に進入することが妨げられる、という虞が低減される。
【0068】
なお、図示された例では、図5に示すように、基部材12は、底面11bと側面11cの一部とを形成する底部材13と、底部材13に支持されて液体収容部11aを取り囲む環状の環状部材14と、を有する。環状部材14は、側面11cの他の一部を形成する。そして、上記突出部31は、環状部材14の上記接続位置Pに対応する位置に、液体収容部11a側へと突出して設けられている。底部材13と別体として作製された環状部材14に突出部31を形成することにより、側壁部30に上記突出部31を設けることが容易である。
【0069】
さらに、環状部材14は、X線不透過材料で構成されている。これにより、アクセスポート10が患者の皮下に埋設された状態であっても、X線撮像技術を使用することにより、環状部材14で囲まれた領域(すなわち、マイクロカテーテルやガイドワイヤを液体収容部11aに挿入するための穿刺針を刺すべき領域)を把握することができる。
【0070】
<平坦壁部>
また、本実施の形態のアクセスポート10は、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路へ挿入可能とするための、さらなる工夫がなされている。具体的には、次のような工夫がなされている。
【0071】
すなわち、図5に示すように、側壁部30は、周方向に並べて設けられた一対の平坦壁部32,32を含む。一対の平坦壁部32,32は、接続通路開口41が当該一対の平坦壁部32,32の間となる位置において液体収容部11aの側面11cに開口するように、配置されている。また、一対の平坦壁部32,32は、底壁部20から側壁部30が延び出す方向(図示された例ではD2方向)と平行な方向からの観察において、直線状に延び且つ接続通路開口41に向けて先細りするテーパ状側面を形成している。このような一対の平坦壁部32,32により、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端を、接続通路40へ効率良く向けることができる。具体的には、一対の平坦壁部32,32によって、接続通路開口41に向けて案内されるだけでなく、上記先端の可動領域が接続通路開口41に接近するにつれて狭まる。
【0072】
<誘導リブ>
また、本実施の形態のアクセスポート10は、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路40へ挿入可能とするための、さらなる工夫がなされている。具体的には、次のような工夫がなされている。
【0073】
すなわち、図5に示すように、底壁部20は、底壁部20から側壁部30が延び出す方向と平行な方向(図示された例ではD2方向)からの観察において、接続位置Pに向けて線状に延びる誘導リブ21を有している。図示された例では、3本の誘導リブ21が、接続位置P近傍から放射状に延びている。このような誘導リブ21によって、液体収容部11a内に挿入されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端を、接続位置Pへ向けて(したがって、接続通路開口41へ向けて)効率良く案内することができる。
【0074】
<環状保持溝及び環状保持突起部>
さらに、本実施の形態のアクセスポート10は、隔膜体60がポート本体11から脱落することを防止するための工夫がなされている。具体的には、次のような工夫がなされている。
【0075】
まず、図3及び図4に示すように、隔膜体60の隔膜体一側面60aには、環状の第1環状保持溝63が形成されている。第1環状保持溝63は、隔膜体60の外縁部61に形成されている。第1環状保持溝63は、底壁部20から側壁部30が延び出す方向と平行な方向(図示された例ではD2方向)に延びて液体収容部11aとは反対側に開口している。また、図4及び図6に示すように、ポート本体11の蓋部材50には、環状の第1環状保持突起部53が形成されている。第1環状保持突起部53は、蓋環状縁部52から、底壁部20から側壁部30が延び出す方向と平行な方向に突出している。そして、図4に示すように、第1環状保持突起部53は、第1環状保持溝63内に延び入っている。これにより、隔膜体60に穿刺針を刺す際や隔膜体60から穿刺針を引き抜く際等に隔膜体60に加わる力によって隔膜体60がポート本体11から脱落する、という虞が低減される。
【0076】
また、図4及び図6に示すように、隔膜体60の隔膜体他側面60bには、環状の第2環状保持溝64が形成されている。第2環状保持溝64は、隔膜体60の外縁部61に形成されている。第2環状保持溝64は、底壁部20から側壁部30が延び出す方向と平行な方向に延びて液体収容部11aの側に開口している。また、図3及び図4に示すように、ポート本体11の基部材12には、環状の第2環状保持突起部54が形成されている。第2環状保持突起部54は、側壁部一側端面30cから、底壁部20から側壁部30が延び出す方向と平行な方向に突出している。そして、図4に示すように、第2環状保持突起部54は、第2環状保持溝64内に延び入っている。このことによっても、隔膜体60に穿刺針を刺す際や隔膜体60から穿刺針を引き抜く際等に隔膜体60に加わる力によって隔膜体60がポート本体11から脱落する、という虞が低減される。
【0077】
なお、上述したように、図示された例では、基部材12は、底部材13と、底部材13とは別体として形成された環状部材14とを有する。そして、図5に示すように、第2環状保持突起部54は、環状部材14に形成されている。このように、第2環状保持突起部54を底部材13とは別体の環状部材14に形成することにより、底部材13の形状に影響を与えることなく第2環状保持突起部54の形状や寸法を任意に変更することができる。
【0078】
<金属コイル及び発光体>
また、本実施の形態のアクセスポート10は、皮下に埋設されたアクセスポート10の位置を検出可能とするための工夫がなされている。具体的には、次のような工夫がなされている。
【0079】
すなわち、図4に示すように、ポート本体11は、内蔵された金属コイル70を有する。金属コイル70には、発光体71が電気的に接続されている。図7に示す例では、金属コイル70は、発光体71、コンデンサ72及び抵抗73と共に並列回路74を構成している。そして、金属コイル70に磁場が印加されて回路74に電流が流れると、発光体71が発光するようになっている。
【0080】
このような金属コイル70及び発光体71がアクセスポート10に設けられていることにより、アクセスポート10近傍に磁場を印加して金属コイル70に電流が流れると、発光体71が発光する。そして、発光体71が発光する光によって、患者の皮下に埋設されたアクセスポート10の位置を把握することができる。言い換えると、このようなアクセスポート10によれば、図7に示すように、磁場を発生させる磁場発生装置80と共に、皮下に埋設されたアクセスポート10の位置を検出可能な医療システム90を構築することができる。
【0081】
また、アクセスポート10が金属コイル70を含むので、X線撮像技術を使用することによっても、患者の皮下に埋設されたアクセスポート10の位置を把握することができる。
【0082】
なお、図示された例では、金属コイル70及び発光体71は、蓋部材50に埋設されている。これにより、発光体71の発する光がアクセスポート10の外に届きやすくなる。また、図示された例では、金属コイル70及び発光体71は、その全体が蓋部材50内に埋め込まれており、蓋部材50の表面に露出する部分がない。これにより、金属コイル70及び発光体71が、アクセスポート10が埋設された患者の体液や液体収容部11aに収容された薬剤等と接触する、ということが防止される。ここで、図示された例では、蓋部材50は透光性を有している。これにより、蓋部材50内の発光体71が発する光を、蓋部材50(アクセスポート10)の外に届けることができる。なお、発光体71の発光面71sは、蓋部材50(アクセスポート10)の外表面に可能な限り接近して配置されることが好ましい。発光面71sが上記外表面に接近しているほど、発光体71の発する光がアクセスポート10の外に届きやすくなる。したがって、アクセスポート10が患者の皮下に埋設された状態で、発光体71の発する光を患者の皮膚表面まで届けることが容易になる。すなわち、発光体71の発する光が、患者の周囲の者によって視認され易くなる。
【0083】
また、図示された例では、ポート本体11は、2つの金属コイル70a,70bと、各金属コイル70a,70bとそれぞれ電気的に接続した少なくとも2つの発光体71a,71bと、を有する。一方の金属コイル70a及び当該金属コイル70aに電気的に接続した発光体71aと、他方の金属コイル70b及び当該金属コイル70bに接続した発光体71bとは、液体収容部11aの周囲となる位置に互いから離間して設けられている。そして、隔膜体一側面60aは、金属コイル70a,70b及び発光体71a,71bの二つの組の間となる領域に露出している。したがって、アクセスポート10が患者の皮下に埋設された状態であっても、アクセスポート10の近傍に磁場を印加して発光体71a,71bを発光させれば、露出した隔膜体一側面60aの位置を(すなわちマイクロカテーテルやガイドワイヤを液体収容部11aに挿入するための穿刺針を刺すべき領域を)把握することができる。
【0084】
図示された例では、各金属コイル70の軸線70xは、側壁部30が底壁部20から延び上がる方向(図示された例ではD2方向)と平行な方向に延びている。図4から理解されるように、ポート本体11を構成する基部材12や蓋部材50は、側壁部30や蓋本体部51など、側壁部30が底壁部20から延び上がる方向に沿って延びる部分を有している。したがって、軸線70xの延びる方向を、側壁部30が底壁部20から延び上がる方向に沿わせれば、ポート本体11に金属コイル70を内蔵させることによるポート本体11の寸法の増大を、抑制することができる。さらに、図示された例では、発光体71は、各金属コイル70の軸線70x上に配置されている。このように発光体71を配置すれば、金属コイル70及び発光体71をポート本体11に内蔵させることによるポート本体11の寸法の増大を、抑制することができる。また、側壁部30が底壁部20から延び上がる方向からの観察において、発光体71を、隔膜体60の近傍に配置することができる。この結果、隔膜体60の位置をより正確に把握することができるようになる。
【0085】
図示された例では、金属コイル70及び発光体71を含む回路74は、蓋部材50の蓋本体部51に設けられた収容室55内に配置されている。コンデンサ72や抵抗73は、金属コイル70によって囲まれる空間内に配置されている。これにより、回路74を収容室55内にコンパクトに収容することができる。
【0086】
なお、磁場発生装置80としては、任意の装置を採用可能である。例えば、磁場発生装置80は、図7に示すような金属コイル81と電源82とスイッチ83が電気的に直列に接続された回路84を含む装置であってよい。このような磁場発生装置80によれば、スイッチ83を閉じることにより、金属コイル81に磁場を発生させることができる。
【0087】
次に、図8乃至図13を参照し、アクセスポートの第2の実施形態について説明する。
【0088】
図8乃至図13は、第2の実施形態によるアクセスポート100を説明するための図である。このうち、図8及び図9には、アクセスポート100の斜視図及び平面図が示されている。また、図10には、アクセスポート100の分解斜視図が、図11及び図12には、アクセスポート100の断面図が示されている。また、図13には、アクセスポート100の隔膜体160及び蓋部材150の斜視図が示されている。
【0089】
図8乃至図13に示す第2の実施形態においては、接続通路40の上記軸方向D1に沿った断面において(図11参照)、液体収容部11aの底面が上記軸方向D1と平行に延びている一方、隔膜体160の液体収容部11aとは反対側となる面(隔膜体一側面)160aが上記軸方向D1に対して傾斜している点、が異なる。また、アクセスポート100が液体収容部11aの内面と接続通路40とを形成する表層部材115を含む点、が異なる。しかし、他の構成は、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と略同一である。図8乃至図13に示す第2の実施の形態において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0090】
以下、図8乃至図13を参照して、第2の実施形態によるアクセスポート100についてより詳細に説明する。
【0091】
<アクセスポートの全体構成>
図10乃至図12に示すように、アクセスポート100は、液体収容部11aを含むポート本体111と、ポート本体111に保持されて液体収容部11aを覆う隔膜体160と、を備える。
【0092】
ポート本体111は、基部材112と、基部材112に支持され液体収容部11aの内面を形成(区画)する表層部材115と、基部材112に固定され基部材112及び表層部材115との間で隔膜体160を保持する蓋部材150と、を有する。
【0093】
図10に示すように、基部材112は、全体として平板状の底壁部120と、底壁部120から延び出した側壁部130と、を有する。側壁部130は、全体として筒状に形成されており、底壁部120の一側面の略中央に立設されている。側壁部130には、後述する表層部材115の接続ポート部117を挿通する貫通孔133が形成されている。貫通孔133は、環状の側壁部130の内側から外側に向かう方向に沿って延び、側壁部130の内面130a及び外面130bに開口している。
【0094】
側壁部130の上記軸方向D1において貫通孔133から離間する側では、その底壁部20とは反対側となる端面(側壁部一側端面)130cが、上記軸方向D1において貫通孔133から離間するにつれて底壁部120に接近する側へ向かうように、傾斜している。
【0095】
図10乃至図12に示すように、蓋部材150は、基部材112の側壁部130を外面130bの側から覆う環状の蓋本体部151を含む。蓋本体部151は、側壁部130の外側において、底壁部120を、側壁部130が立設された側から覆う。
【0096】
蓋部材150は、更に、側壁部一側端面130cに対向して配置される環状の蓋環状縁部152を有する。蓋環状縁部152は、蓋本体部151の底壁部120とは反対側となる端部から、環状の蓋本体部151の内側へ向けて、側壁部一側端面130cに沿って延び出す。
【0097】
隔膜体160は、全体として板状に形成されている。隔膜体160は、シリコーンゴム等により構成されている。隔膜体160は、側壁部一側端面130c上に、液体収容部11aを覆うように配置される。隔膜体160は、液体収容部11aとは反対側となる面(隔膜体一側面)160aと、液体収容部11aの側となる面(隔膜体他側面)160bとを有する。
【0098】
隔膜体160の外縁部161は、側壁部一側端面130cと蓋環状縁部152との間に圧縮された状態で保持され、基部材112と蓋部材150との間を液密にシールしている。隔膜体160の中央部162は、液体収容部11aに対面して配置される。蓋環状縁部152が環状に形成されていることにより、上記中央部162が露出し、上記中央部162に穿刺針を刺すことができる。
【0099】
図10に示すように、表層部材115は、底壁部120及び側壁部130の内面を覆い、液体収容部11aの内面を形成する表層部材本体部116と、表層部材本体部116に接続され接続通路40を形成する接続ポート部117と、を含む。接続ポート部117の一端は、表層部材本体部116に接続している。接続ポート部117は、表層部材本体部116の内面116a上の接続部位置Pにおいて、液体収容部11aに開口している。また、図11に示すように、接続ポート部117は、側壁部130に設けられた貫通孔133に挿通されている。接続ポート部117の他端は、側壁部130の外側に配置されている。接続ポート部117の他端には、カテーテルCの一端が接続される。
【0100】
なお、図示された例では、上記軸方向D1に沿った断面において(図11参照)、表層部材本体部116の内面116aは上記軸方向D1と平行に延びている。
【0101】
<隔膜体>
本実施の形態のアクセスポート100も、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路へ挿入可能とするための工夫がなされている。具体的には、次のような工夫がなされている。
【0102】
図9及び図11に示すように、隔膜体160は、接続通路40の上記軸方向D1に沿った断面に垂直な方向(図示された例では、後述する方向D4)に沿って延びる屈曲部165を有する。隔膜体160の中央部162において、隔膜体一側面160aは、上記軸方向D1において上記屈曲部165の一側に位置する第1面160cと、上記軸方向D1において上記屈曲部165の他側に位置し第1面160cに対して傾斜する第2面160dと、を有する。第1面160cは、上記軸方向D1において上記接続位置Pから離間する側に位置している。一方、第2面160dは、第1面160cに対して上記軸方向D1において上記接続位置Pに接近する側に位置している。
【0103】
第1面160cは、上記軸方向D1に対して傾斜している。第1面160cは、上記軸方向D1において上記接続位置Pに接近するにつれて液体収容部11aの内面から離間する側へ向かうように上記軸方向D1に対して傾斜している。
【0104】
上述したように、アクセスポート100の上記軸方向D1に沿った断面において(図11参照)、表層部材本体部116の内面116aは、上記軸方向D1と平行に延びている。一方で、上記軸方向D1に沿った断面において、隔膜体一側面160aの一部である第1面160cは、上記軸方向D1に対して傾斜している。このような上記内面116a及び第1面160cによって、アクセスポート100に傾斜領域Sが形成される。そして、このような傾斜領域Sにおいては、隔膜体一側面160aに対して垂直な方向に沿って液体収容部11aに挿入されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端は、上記接続位置Pに近づく方向へ(したがって接続通路40に近づく方向へ)案内されやすい。
【0105】
図示された例では、第2面160dの上記軸方向D1に対する傾斜角度は、第1面160cの上記軸方向D1に対する傾斜角度よりも小さい。これにより、アクセスポート100が患者の皮下に埋設された状態であっても、第1面160cの位置を把握することができる。
【0106】
また、上記軸方向D1に沿った第2面160dの長さLdは、上記軸方向D1に沿った第1面160cの長さLcよりも短い。これにより、第1面160cを(すなわち、マイクロカテーテルやガイドワイヤを液体収容部11aに挿入するための穿刺針を刺すべき領域を)広く確保することができる。
【0107】
<表層部材>
本実施の形態のアクセスポート100は、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路へ挿入可能とするための、さらなる工夫がなされている。具体的には、次のような工夫がなされている。
【0108】
すなわち、図11に示すように、表層部材本体部116の内面116a(液体収容部11aの内面)と接続ポート部117の内面(接続通路40を形成する壁面40a)とは、継ぎ目無しで接続されている。言い換えると、表層部材115は、液体収容部11aの内面と接続通路40との間を継ぎ目無しで接続している。これにより、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端が、表層部材本体部116の内面116aや接続ポート部117と干渉して接続通路40内に進入することが妨げられる、という虞が低減される。
【0109】
また、表層部材本体部116の内面116aは、漏斗状となっている。そして、図12に示すように、接続通路40の上記軸方向D1に垂直な断面において、表層部材本体部116の内面116aは、隔膜体他側面160bに沿った方向D4における両外方において隔膜体160に接近するように隔膜体他側面160bに対して傾斜している。言い換えると、接続通路40の上記軸方向D1に垂直な上記断面において、表層部材本体部116の内面116aはU字状に延びている。このような表層部材本体部116の内面116aによって、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端の可動領域が、上記方向D4において狭められ、上記接続位置Pへ向けられやすくなる。
【0110】
なお、図示された例では、表層部材115は金属で構成されている。これにより、アクセスポート100が患者の皮下に埋設された状態であっても、X線撮像技術を使用することで、表層部材本体部116によって形成される液体収容部11aの位置(すなわち、マイクロカテーテルやガイドワイヤを液体収容部11aに挿入するための穿刺針を刺すべき領域を)及び、接続ポート部117の位置(すなわち接続位置P)を把握することができる。
【0111】
<環状保持溝及び環状保持突起部>
さらに、本実施の形態のアクセスポート100も、隔膜体160がポート本体111から脱落することを防止するための工夫がなされている。具体的には、次のような工夫がなされている。
【0112】
まず、図10乃至図12に示すように、隔膜体160の隔膜体一側面160aには、環状の第1環状保持溝163が形成されている。第1環状保持溝163は、隔膜体160の外縁部161に形成されている。第1環状保持溝163は、基部材112の底壁部120から側壁部130が延び出す方向と平行な方向に延びて液体収容部11aとは反対側に開口している。また、図11乃至図13に示すように、ポート本体111の蓋部材150には、環状の第1環状保持突起部153が形成されている。第1環状保持突起部153は、蓋環状縁部152から、底壁部120から側壁部130が延び出す方向と平行な方向に突出している。そして、図11及び図12に示すように、第1環状保持突起部153は、第1環状保持溝163内に延び入っている。これにより、隔膜体160に穿刺針を刺す際や隔膜体160から穿刺針を引き抜く際等に隔膜体160に加わる力によって隔膜体160がポート本体111から脱落する、という虞が低減される。
【0113】
また、図11乃至図13に示すように、隔膜体160の隔膜体他側面160bには、環状の第2環状保持溝164が形成されている。第2環状保持溝164は、隔膜体160の外縁部161に形成されている。第2環状保持溝164は、基部材112の底壁部120から側壁部130が延び出す方向と平行な方向に延びて液体収容部11aの側に開口している。また、図10乃至図12に示すように、表層部材本体部116の縁部は、底壁部120から側壁部130が延び出す方向と平行な方向に延びる第2環状保持突起部154をなしている。そして、図11及び図12に示すように、第2環状保持突起部154は、第2環状保持溝164内に延び入っている。このことによっても、隔膜体160に穿刺針を刺す際や隔膜体160から穿刺針を引き抜く際等に隔膜体160に加わる力によって隔膜体160がポート本体111から脱落する、という虞が低減される。
【0114】
以上、図1乃至図13を参照して、第1及び第2の実施形態によるアクセスポート10,100について説明してきたが、アクセスポート10,100の構成は上述したものに限られない。図1乃至図13に示すアクセスポートの構成には、種々の変更を施すことが可能である。
【0115】
例えば、第2の実施形態によるアクセスポート100において、隔膜体160は屈曲部165を有していなくてもよい。言い換えると、隔膜体一側面160aは、第1面160cに対して傾斜する第2面160dを有していなくてもよい。
【0116】
また、第1及び第2の実施形態によるアクセスポート10,100は、発光体71を含まなくてもよい。この場合、磁場発生装置80は、磁場発生装置80によって磁場を印加した際にアクセスポート10,100の金属コイル70による上記磁場の乱れを検出して報知する報知機能を有していればよい。このようにすれば、磁場発生装置80の報知機能によって、磁場発生装置80の近傍に金属コイル70が存在することを(したがって、アクセスポート10,100の隔膜体60,160が存在することを)、把握することができる。
【0117】
また、第1及び第2の実施形態によるアクセスポート10,100は、3以上の金属コイル70、又は、3組以上の金属コイル70及び発光体71を有していてもよい。液体収容部11aの周囲となる位置に、3以上の金属コイル70、又は、3組以上の金属コイル70及び発光体71が互いから離間して設けられていれば、液体収容部11aの位置(すなわちマイクロカテーテルやガイドワイヤを液体収容部11aに挿入するための穿刺針を刺すべき領域)を、より容易に把握することができる。
【0118】
また、第1及び第2の実施形態によるアクセスポート10,100は、図14に示すように、ただ1つの金属コイル70を有していてもよい。この場合、金属コイル70には、2以上の発光体71a,71bが電気的に接続され、発光体71a,71bは隔膜体60,160を取り囲むように配置されていることが好ましい。また、この場合、図14及び図15に示すように、底壁部20から側壁部30が延び出す方向と平行な方向からの観察において液体収容部11aを取り囲むように、金属コイル70を配置してもよい。
【0119】
また、金属コイル70は、ポート本体11のどの部分に内蔵されていてもよい。例えば、図16に示すように、金属コイル70は、基部材12に内蔵されていてもよい。この場合、金属コイル70は、側壁部30に内蔵されてもよい。この場合、図16に示すように、基部材12を底部材13と底部材13とは別体の環状部材14とで構成し、金属コイル70を環状部材14に内蔵させてもよい。このようにすれば、金属コイル70が上記患者の体液や液体収容部11aに収容される薬剤に接触することのないように、金属コイル70を基部材12に内蔵させることが容易である。
【0120】
また、発光体71の発光面71sは、アクセスポート10,100の表面(液体収容部11aの側を向く面とは反対側の面)に露出していてもよい。この場合、アクセスポート10,100が患者の皮下に埋設された状態で、発光体71の発する光を患者の皮膚表面まで届けることが容易である。すなわち、発光体71の発する光が、患者の周囲の者によって視認され易くなる。なお、発光体71の発光面71sがアクセスポート10,100の表面に露出している場合、金属コイル70及び発光体71を含む回路74を収容する空間のうち金属コイル70を含む金属部材を収容する部分は、液密にシールされていることが望ましい。これにより、上記金属部材と、アクセスポート10,100が埋設された患者の体液や液体収容部11aに収容された薬剤等と、の接触が防止される。
【0121】
以上のように、第1及び第2の実施の形態によれば、アクセスポート10,100は、カテーテルCと接続して用いられるアクセスポートであって、液体収容部11aを含むポート本体11,111と、ポート本体11,111に保持されて液体収容部11aを覆う隔膜体60,160と、を備えている。ポート本体11,111は、液体収容部11aに接続し液体収容部11aをカテーテルCの内部に連通させる接続通路40を含む。そして、接続通路40が液体収容部11aへ接続する接続位置Pでの接続通路40の軸方向D1に沿った断面における、隔膜体60,160の液体収容部11aとは反対側となる面60a,160aと液体収容部11aの内面との間の上記軸方向D1に垂直な方向への長さLが、上記軸方向D1に沿って液体収容部11aの半分を超える傾斜領域S内にて、上記接続位置Pから離間するにつれてしだいに小さくなっていく。
【0122】
このようなアクセスポート10,100によれば、傾斜領域Sにおいて、隔膜体一側面60a,160aに対して垂直な方向に沿って液体収容部11aに挿入されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端は、上記接続位置Pに近づく方向へ(したがって接続通路40に近づく方向へ)案内されやすくなる。また、傾斜領域Sが上記軸方向D1に沿って液体収容部11aの半分を超える領域に形成されていることにより、液体収容部11aに挿入されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端が液体収容部11aの中心から外れた位置に到達した場合であっても、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端は、接続通路40に近づく方向へ案内されやすくなる。以上により、マイクロカテーテルやガイドワイヤを安定して且つ容易に接続通路40へ挿入することができる。
【0123】
また、第1及び第2の実施の形態によるアクセスポート10,100において、傾斜領域Sは、上記接続位置Pから離間する側となる液体収容部11aの半分の領域を含んでいる。これにより、液体収容部11aに挿入されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端が液体収容部11aの中心よりも上記接続位置Pから離れた位置に到達しても、当該先端は、接続通路40に近づく方向へ案内されやすくなる。
【0124】
第1の実施の形態によるアクセスポート10では、接続通路40の上記軸方向D1に沿った断面において、傾斜領域Sにおける液体収容部11aの内面が上記軸方向D1に対して傾斜している。このような液体収容部11aにより、傾斜領域Sが形成される。
【0125】
また、第1の実施の形態によるアクセスポート10において、ポート本体11の内面は、液体収容部11aを形成(区画)する底面11b及び上記底面11bから延び出し液体収容部11aを形成(区画)する側面11cを含み、上記底面11bは上記軸方向D1に対して傾斜している。このような底面11bにより、傾斜領域Sが形成される。
【0126】
また、第1の実施の形態によるアクセスポート10において、ポート本体11は、液体収容部11aの底面11bを形成する底壁部20を有している。そして、底壁部20の厚みTは、上記軸方向D1に沿って上記接続位置Pに接近するにつれてしだいに薄くなっている。これにより、上記底面11bは上記軸方向D1に対して傾斜している。
【0127】
また、第1の実施の形態によるアクセスポート10において、ポート本体11の上記底面11bは、接続通路40が開口した側壁面30dに接続した接続底面11dと、上記軸方向D1において接続底面11dに対して上記接続位置Pから離間する側に位置する主底面11eと、を含む。そして、主底面11eは、上記接続位置Pに接近するにつれて隔膜体60から離間する側へ向かうように上記軸方向D1に対して傾斜している。このような主底面11eにより、傾斜領域Sが形成される。
【0128】
また、第1の実施の形態によるアクセスポート10において、接続底面11dは、上記接続位置Pに接近するにつれて隔膜体60に接近する側へ向かうように上記軸方向D1に対して傾斜している。このような接続底面11dにより、主底面11eによって上記接続位置Pへ向けて案内されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端を、上記接続位置Pにさらに接近するにつれて隔膜体60に接近する方向に(すなわち側壁部30に形成された接続通路40の開口41に向けて)案内することができる。これにより、マイクロカテーテルやガイドワイヤを、さらに安定して且つ容易に接続通路40へ挿入可能とすることができる。
【0129】
また、第1の実施の形態によるアクセスポート10において、ポート本体11は、液体収容部11aの底面11bを形成する底壁部20と、液体収容部11aの側面11cを形成する側壁部30と、を有している。そして、側壁部30は、底壁部20から離間して設けられ且つ底面11bと対面する対向誘導面31aを有した突出部31を有している。また、接続通路40は、対向誘導面31aと上記底面11bとの間となる位置において上記側面11cに開口している。
【0130】
このような突出部31の対向誘導面31aと底面11bの対向誘導面31aに対面する領域とにより、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端が、接続通路開口41へ効率良く向けられる。具体的には、上記先端の可動範囲が対向誘導面31aと底面11bとの間に制限され、上記先端が対向誘導面31aと底面11bとの間となる位置に開口する接続通路40の開口41へ向けられやすくなる。
【0131】
また、第1の実施の形態によるアクセスポート10において、対向誘導面31aは、対向誘導面31aが上記底面11bと対面する方向と上記軸方向D1との両方に垂直な幅方向D3における中央部に、上記底面11bから離間するように凹んだ凹面31bを有している。このような凹面31bで囲まれた領域にマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端が入り込むと、上記先端の可動範囲は、凹面31bで囲まれた領域内に制限される。したがって、上記先端がさらに接続通路40の開口41へ向けられやすくなる。
【0132】
また、第1の実施の形態によるアクセスポート10において、上記凹面31bは、接続通路40を形成(区画)する壁面40aに接続している。これにより、凹面31bに沿って接続通路開口41へ向けて移動するマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端を、接続通路40内へ向けることが容易である。すなわち、上記先端が、接続通路開口41が開口する側壁面30dと干渉して接続通路40内に進入することが妨げられる、という虞が低減される。
【0133】
また、第1の実施の形態によるアクセスポート10において、ポート本体11の内面は、対向誘導面31aと対面する位置に設けられた接続底面11dと、上記軸方向D1において接続底面11dに対して上記接続位置Pから離間する側に位置する主底面11eと、を含む。そして、主底面11eは、上記接続位置Pに接近するにつれて隔膜体60から離間する側へ向かうように上記軸方向D1に対して傾斜している。また、接続底面11dは、上記接続位置Pに接近するにつれて隔膜体60に接近する側へ向かうように上記軸方向D1に対して傾斜している。対向誘導面31aがこのような接続底面11dと対面して設けられていることにより、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端の可動領域が上記接続位置Pに接近するにつれて狭まり、対向誘導面31aと底面11bとの間となる位置に開口する接続通路40へ向けられやすくなる。
【0134】
また、第1の形態によるアクセスポート10において、ポート本体11は、液体収容部11aの底面11b及び側面11cを形成する基部材12と、基部材12に固定され基部材12との間で隔膜体60を保持する蓋部材50と、を有している。基部材12は、底面11bを少なくとも形成する底部材13と、底部材13に支持されて液体収容部11aを取り囲む環状の環状部材14と、を有している。そして、環状部材14は、上記接続位置Pに対応して設けられ液体収容部11a側へと突出した突出部31を有している。このように底部材13と別体として作製された環状部材14に突出部31を形成することにより、側壁部30に上記突出部31を設けることが容易である。
【0135】
また、第1の形態によるアクセスポート10において、環状部材14は、X線不透過材料で構成されている。これにより、アクセスポート10が患者の皮下に埋設された状態であっても、X線撮像技術を使用することにより、環状部材14で囲まれた領域(すなわち、マイクロカテーテルやガイドワイヤを液体収容部11aに挿入するための穿刺針を刺すべき領域)を把握することができる。
【0136】
また、第1の実施の形態によるアクセスポート10において、ポート本体11は、液体収容部11aの底面11bを形成する底壁部20と、底壁部20から延び出し液体収容部11aの側面11cを形成する側壁部30と、を有している。そして、側壁部30は、周方向に並べて設けられた一対の平坦壁部32,32を含む。また、接続通路40は、一対の平坦壁部32,32の間となる位置において上記側面11cに開口している。また、一対の平坦壁部32,32は、底壁部20から側壁部30が延び出す方向と平行な方向からの観察において、直線状に延び且つ接続通路40に向けて先細りするテーパ状側面を形成している。このような一対の平坦壁部32,32により、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端を、接続通路40へ効率良く向けることができる。具体的には、一対の平坦壁部32,32によって、上記先端の可動領域が接続通路40に接近するにつれて狭まり、且つ、接続通路40に向けて案内される。
【0137】
また、第1の実施の形態によるアクセスポート10において、ポート本体11は、液体収容部11aの底面11bを形成する底壁部20と、底壁部20から延び出し液体収容部11aの側面11cを形成する側壁部30と、を有している。側壁部30は、周方向に並べられた一対の平坦壁部32,32を含み、接続通路40は、一対の平坦壁部32,32の間となる位置において上記側面11cに開口している。そして、底壁部20は、底壁部20から側壁部30が延び出す方向と平行な方向からの観察において、上記接続位置Pに向けて線状に延びる誘導リブ21を有している。このようなアクセスポート10によれば、誘導リブ21によって、液体収容部11a内に挿入されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端を、接続位置Pへ向けて効率良く案内することができる。
【0138】
また、第1の形態によるアクセスポート10において、ポート本体11は、液体収容部11aの底面11bを形成する底壁部20と、底壁部20から延び出し液体収容部11aの側面11cを形成する側壁部30と、を有している。そして、隔膜体60は、底壁部20から側壁部30が延び出す方向と平行な方向に延びて液体収容部11aとは反対側に開口した環状の環状保持溝63を形成されている。また、ポート本体11は、底壁部20から側壁部30が延び出す方向と平行な方向に突出した環状保持突起部53を有している。環状保持溝63に環状保持突起部53を嵌め込むことにより、隔膜体60に穿刺針を刺す際や隔膜体60から穿刺針を引き抜く際等に隔膜体60に加わる力によって隔膜体60がポート本体11から脱落する、という虞が低減される。
【0139】
また、第2の形態によるアクセスポート100において、ポート本体111は、液体収容部11aの内面と接続通路40とを形成する表層部材115を有している。そして、表層部材115は、液体収容部11aの内面と接続通路40との間を継ぎ目無しで接続されている。これにより、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端が、液体収容部11aの内面や接続ポート部117と干渉して接続通路40内に進入することが妨げられる、という虞が低減される。
【0140】
また、第2の形態によるアクセスポート100において、表層部材115は、金属で構成されている。これにより、アクセスポート100が患者の皮下に埋設された状態であっても、X線撮像技術を使用すれば、表層部材115によって形成される液体収容部11aの位置を(すなわち、マイクロカテーテルやガイドワイヤを液体収容部11aに挿入するための穿刺針を刺すべき領域を)把握することができる。
【0141】
また、第2の形態によるアクセスポート100では、接続通路40の上記軸方向D1に垂直な断面において、ポート本体111の内面は、隔膜体160の表層部材本体部116の内面に対向する面160bに沿った方向D4における両外方において隔膜体160に接近するように上記内面に対向する面に対して傾斜している。より具体的には、接続通路40の軸方向D1に垂直な断面において、ポート本体111の内面116aはU字状に延びている。このようなポート本体111の内面116aによって、マイクロカテーテルやガイドワイヤの先端の可動領域が狭まり、上記接続通路40へ向けられやすくなる。
【0142】
また、第2の形態によるアクセスポート100において、接続通路40の上記軸方向D1に沿った断面において、隔膜体160の液体収容部11aとは反対側となる面160aは、上記軸方向D1に対して傾斜している。このような面160aによって、アクセスポート100に傾斜領域Sが形成される。そして、隔膜体160の上記反対側となる面160aに対して垂直な方向に沿って液体収容部11aに挿入されたマイクロカテーテルやガイドワイヤの先端は、上記接続通路40に近づく方向へ案内されやすくなる。
【0143】
また、第2の形態によるアクセスポート100において、隔膜体160の液体収容部11aとは反対側となる面160aは、上記軸方向D1において上記接続位置Pから離間する側に位置する第1面160cと、第1面160cに対して上記軸方向D1において上記接続位置Pに接近する側に位置する第1面160cに対して傾斜した第2面160dと、を有する。そして、上記軸方向D1に沿った第1面160cの長さLcは、上記軸方向D1に沿った第2面160dの長さLdよりも長い。また、第1面160cは、上記軸方向D1において上記接続位置Pに接近するにつれて液体収容部11aの内面から離間する側へ向かうように上記軸方向D1に対して傾斜している。また、第1面160cの上記軸方向D1に対する傾斜角度は、第2面160dの上記軸方向D1に対する傾斜角度よりも大きい。
【0144】
第1面160cの上記傾斜角度が第2面160dの上記傾斜角度よりも大きいことにより、アクセスポート100が患者の皮下に埋設された状態であっても、第1面160cの位置を把握することができる。また、第1面160cの上記長さLcが第2面160dの上記長さLdよりも長いことにより、第1面160cを(すなわち、マイクロカテーテルやガイドワイヤを液体収容部11aに挿入するための穿刺針を刺すべき領域を)広く確保することができる。
【0145】
また、第1及び第2の実施の形態によるアクセスポート10,100において、ポート本体11,111は、内蔵された金属コイル70を有している。これにより、患者の皮下に埋設されたアクセスポート10,100の位置を、磁場発生装置80又はX線撮像技術を使用して把握することができる。
【0146】
また、第1及び第2の実施の形態によるアクセスポート10,100において、ポート本体11,111は、液体収容部11aの周囲となる位置に互いから離間して設けられた少なくとも二つの金属コイル70a,70bを有している。これにより、患者の皮下に埋設されたアクセスポート10,100の位置を、磁場発生装置80又はX線撮像技術を使用して、より正確に把握することができる。
【0147】
また、第1及び第2の実施の形態によるアクセスポート10,100において、隔膜体60,160の液体収容部11aとは反対側となる面60a,160aは、上記二つの金属コイル70a,70bの間となる領域に露出している。これにより、患者の皮下に埋設されたアクセスポート10,100の隔膜体60,160の位置を(すなわちマイクロカテーテルやガイドワイヤを液体収容部11aに挿入するための穿刺針を刺すべき領域を)、磁場発生装置80又はX線撮像技術を使用して、より正確に把握することができる。
【0148】
また、第1及び第2の実施の形態によるアクセスポート10,100において、ポート本体11,111は、各金属コイル70a,70bとそれぞれ電気的に接続した少なくとも二つの発光体71a,71bを有している。これにより、アクセスポート10,100の近傍に磁場を印加すると、金属コイル70a,70bと発光体71a,71bとを含む回路74に電流が流れ、発光体71a,71bが発光する。そして、発光体71a,71bが発光する光によって、患者の皮下に埋設されたアクセスポート10,100の位置を把握することができる。
【0149】
また、変形例によるアクセスポート10,100において、上記少なくとも二つの発光体71a,71bの発光面71sは露出している。これにより、アクセスポート10が患者の皮下に埋設された状態で、発光体71の発する光を患者の皮膚表面まで届けることが容易である。すなわち、発光体71の発する光が、患者の周囲の者によって視認され易くなる。
【0150】
また、変形例によるアクセスポート10において、ポート本体11は、液体収容部11aの底面11bを形成する底壁部20と、液体収容部11aの側面11cを形成する側壁部30と、を有している。そして、上記少なくとも二つの金属コイル70a,70bは、側壁部30に内蔵されている。これにより、液体収容部11aの位置を、より正確に把握することができる。
【0151】
また、第1及び第2の実施の形態によるアクセスポート10,100において、各金属コイル70a,70bの軸線70xは、側壁部30,130が底壁部20,120から延び上がる方向と平行な方向に延びている。ここで、ポート本体11,111を構成する基部材12、112や蓋部材50,150は、側壁部30が底壁部20から延び上がる方向に沿って延びる部分を有している。したがって、軸線70xの延びる方向を、側壁部30,130が底壁部20,120から延び上がる方向に沿わせれば、ポート本体11,111に金属コイル70を内蔵させることによるポート本体11,111の寸法の増大を、抑制することができる。
【0152】
以上において、複数の実施の形態とその変形例を説明してきたが、当然に、異なる実施形態や異なる変形例として説明された複数の構成を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0153】
10及び100・・・アクセスポート、11及び111・・・ポート本体、11a・・・液体収容部、11b・・・底面、11c・・・側面、11d・・・接続底面、11e・・・主底面、12・・・基部材、13・・・底部材、14・・・環状部材、20・・・底壁部、21・・・誘導リブ、30・・・側壁部、31・・・突出部、31a・・・対向誘導面、31b・・・凹面、32・・・平坦壁部、40・・・接続通路、40a・・・壁面、50及び150・・・蓋部材、60及び160・・・隔膜体、70,70a及び70b・・・金属コイル、71,71a及び71b・・・発光体、115・・・表層部材、160c・・・第1面、160d・・・第2面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16