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7582181露光装置、照明光学系、およびデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】露光装置、照明光学系、およびデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G03F7/20 501
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2021511275
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009124
(87)【国際公開番号】W WO2020203002
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019069147
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】井田 真高
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 琢己
(72)【発明者】
【氏名】松橋 佑介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 暢章
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-199800(JP,A)
【文献】特開2001-297975(JP,A)
【文献】特開2001-305745(JP,A)
【文献】特開2002-258489(JP,A)
【文献】特開2017-198990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被露光基板を走査方向へ移動させながら第1時間に前記被露光基板上の前記走査方向に延びる第1露光領域を露光する第1露光と、前記被露光基板を前記走査方向と平行な方向へ移動させながら前記第1時間とは異なる第2時間に前記被露光基板上の前記走査方向に直交する非走査方向に前記第1露光領域と並び前記走査方向に延び、前記第1露光領域と重複する重複領域を含む第2露光領域を露光する第2露光とが行われる露光装置において、
照明光を供給する照明光学系と、
前記照明光が入射する投影光学系と、
前記前記第1露光領域および前記第2露光領域に照射される前記照明光を減光する照度変更部材と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記照度変更部材による前記第1露光領域に照射される前記照明光の減光量と、前記照度変更部材による前記第2露光領域に照射される前記照明光の減光量とを異ならせることにより、前記非走査方向に関して、前記重複領域における露光量分布を、前記重複領域の中心に対して非対称な分布とする、露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記照度変更部材による前記第1露光領域に照射される前記照明光の減光量と、前記照度変更部材による前記第2露光領域に照射される前記照明光の減光量と、が異なるように、前記照度変更部材の前記走査方向に光学的に対応する第1方向における位置、または、前記光軸方向および前記第1方向と直交する第2方向における前記照度変更部材の幅を調整する、露光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の露光装置において、
前記照度変更部材は、前記重複領域における露光量を、前記第1露光領域の前記重複領域以外の非重複領域および前記第2露光領域の前記重複領域以外の非重複領域における露光量に対して相対的に変更する、露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置において、
前記照度変更部材は、前記第1露光領域の前記非重複領域における前記露光量および前記第2露光領域の前記非重複領域における前記露光量を、前記重複領域における前記露光量に対して低くする、露光装置。
【請求項5】
照明光を供給する照明光学系と、
前記照明光が入射する投影光学系と、
被露光基板上に所定パターンが露光されるよう、前記被露光基板を前記投影光学系に対して走査方向に相対的に移動させる基板ステージと、
前記露光において、前記投影光学系の走査露光視野により時間的に連続的に露光される前記被露光基板上の前記走査方向に延びる第1領域に照射される第1照明光の一部を遮光することにより前記第1照明光による露光量を変更する第1照度変更部材と、前記走査露光視野により時間的に離散的に露光される前記被露光基板上の前記走査方向に直交する非走査方向に前記第1領域と並び前記走査方向に延び、前記第1領域と重複する重複領域を含む第2領域に照射される第2照明光の一部を遮光することによりの前記第2照明光による露光量を変更する第2照度変更部材と2つの照度変更部材を有し、前記第1照度変更部材による遮光量と、前記第2照度変更部材による遮光量とを異ならせることにより、前記第1領域における露光量を前記第2領域における露光量に比べて少なく設定し、かつ、前記非走査方向における前記第2領域の露光量分布が、前記第2領域の中心に対して非対称な分布となるように設定する照度変更と、
を備える、露光装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記照度変更部材は、前記照明光学系の中の前記被露光基板の共役面または前記共役面の近傍に配置される、露光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の露光装置において、
前記照度変更部材の位置を制御する制御部をさらに備え、
前記照明光学系は、オプチカルインテグレーターを有し、
前記オプチカルインテグレーターは、前記照明光の入射面が前記被露光基板上の前記投影光学系の走査露光視野に対して共役面となる位置に設けられ、
前記制御部は、前記オプチカルインテグレーターへ入射される前記照明光の照度を変更するように、前記照度変更部材を前記オプチカルインテグレーターに対して、前記照明光学系の光軸方向と略直交する方向であって前記走査方向に光学的に対応する第1方向へ移させる、露光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の露光装置において、
前記制御部は、前記照度変更部材を前記オプチカルインテグレーターに対して、前記照明光学系の前記光軸方向へ移動させる、露光装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の露光装置において、
前記制御部は、前記照度変更部材を前記オプチカルインテグレーターに対して、前記第1方向および前記照明光学系の前記光軸方向と直交する第2方向へ移動させる、露光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の露光装置において、
前記制御部は、前記投影光学系に対する前記被露光基板の前記第1方向に関する移動方向に応じて、前記照度変更部材を前記第2方向へ移動させる、露光装置。
【請求項11】
請求項7から請求項10までのいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御部は、前記照度変更部材の、前記第1方向および前記照明光学系の前記光軸方向と直交する第2方向の実効幅を制御する、露光装置。
【請求項12】
請求項11に記載の露光装置において、
前記制御部は、前記投影光学系と前記被露光基板との前記移動の向きに応じて、前記照度変更部材の前記実効幅を制御する、露光装置。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の露光装置において、
前記照度変更部材は、少なくとも一部が前記照明光学系の前記光軸方向に重なって配置される第1減光部材と第2減光部材とを含み、
前記制御部は、前記第1および第2減光部材のうち一方の減光部材を他方の減光部材に対して、前記第2方向へ相対移動させ、前記実効幅を制御する、露光装置。
【請求項14】
請求項7から請求項11までのいずれか一項に記載の露光装置であって、
前記照度変更部材は、前記投影光学系の走査露光視野により時間的に連続的に露光される前記被露光基板上の前記走査方向に延びる第1領域と重複する重複領域を含む第2領域の前記走査方向と直交する非走査方向の幅、前記共役面と前記被露光基板との横倍率、および前記共役面における照明光の開口数に応じて定まる所定の範囲の距離だけ、前記共役面から前記照明光学系の光軸方向に離れた位置に設けられている、露光装置。
【請求項15】
請求項7から請求項14のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記オプチカルインテグレーターは、前記第1方向に配列されている複数のレンズエレメントを含むレンズブロックが、前記第1方向と交差する方向に複数配列されているフライアイレンズであり、
前記照度変更部材は、少なくとも1つの前記レンズブロックの中に配置されている1つ以上のレンズエレメントの、前記投影光学系の走査露光視野により時間的に連続的に露光される前記被露光基板上の前記走査方向に延びる第1領域に対応する部分の少なくとも一部を減光する、
露光装置。
【請求項16】
請求項15に記載の露光装置において、
前記照度変更部材は、複数の前記レンズブロックのうちのm個(mは2以上の自然数)のレンズブロックのそれぞれに対応して、m個配置される、露光装置。
【請求項17】
請求項16に記載の露光装置において、
前記m個の前記照度変更部材の前記第1方向の一方の端部は、前記レンズブロック内の前記レンズエレメントの前記第1方向の配列の周期をPとして、前記第1方向にそれぞれP/mだけ異なる位置に設定されている、露光装置。
【請求項18】
請求項17に記載の露光装置において、
前記m個の前記照度変更部材は、それぞれ前記第1方向と直交する方向の幅が異なり、
前記制御部は、前記m個の前記照度変更部材のそれぞれについて、前記第1方向の位置を制御する、露光装置。
【請求項19】
請求項7から請求項18までのいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御部は、前記被露光基板上において、露光された所定パターンの一部と前記走査露光視野の一部とが、前記走査方向と直交する方向に重複するように、前記照度変更部材の位置を変更する、露光装置。
【請求項20】
請求項3に記載の露光装置において、
前記照度変更部材の位置を制御する制御部をさらに有し、
前記投影光学系および前記照明光学系は、前記走査方向と交差する方向に複数並列して配置され、
前記被露光基板上の、前記投影光学系の走査露光視野により時間的に連続的に露光される前記被露光基板上の前記走査方向に延びる第1領域と重複する重複領域を含む第2領域は、前記露光において、前記複数の投影光学系のうち第1投影光学系の走査露光視野により露光される前記第1露光領域の一部と、前記第1投影光学系に対して前記走査方向および前記走査方向と交差する方向に離間して設けられた第2投影光学系の走査露光視野により露光される前記第2露光領域の一部とが重複された領域であり、
前記複数の照明光学系のそれぞれは、
前記照明光が入射する入射面が前記被露光基板と共役な位置に位置するフライアイレンズと、
前記フライアイレンズを照射する前記照明光の光量を増減する光量調整部材と、
前記フライアイレンズの前記入射面側に位置し、前記フライアイレンズの少なくとも一部を遮光する前記照度変更部材と、を有し、
前記制御部は、前記複数の照明光学系のうちの第1照明光学系が有する前記照度変更部材による減光比率が、前記複数の照明光学系のうちの第2照明光学系が有する前記照度変更部材による減光比率よりも大きくなるように、前記照度変更部材の位置を制御し、かつ、前記第1照明光学系が有する前記光量調整部材による減光量が、前記第2照明光学系が有する前記光量調整部材による減光量よりも小さくなるように、前記光量調整部材を制御する、
露光装置。
【請求項21】
請求項4に記載の露光装置において、
前記投影光学系および前記照明光学系は、前記走査方向と交差する方向に複数並列して配置され、
前記被露光基板上の、前記投影光学系の走査露光視野により時間的に連続的に露光される前記被露光基板上の前記走査方向に延びる第1領域と重複する重複領域を含む第2領域は、前記露光において、前記複数の投影光学系のうち第1投影光学系の走査露光視野により露光される前記第1露光領域の一部と、前記第1投影光学系に対して前記走査方向および前記走査方向と交差する方向に離間して設けられた第2投影光学系の走査露光視野により露光される前記第2露光領域の一部とが重複された領域である、
露光装置。
【請求項22】
請求項5に記載の露光装置において、
前記照度変更部材の位置を制御する制御部をさらに有し、
前記投影光学系および前記照明光学系は、前記走査方向と交差する方向に複数並列して配置され、
前記被露光基板上の前記第2領域は、前記露光において、前記複数の投影光学系のうち第1投影光学系の走査露光視野により露光される第1露光領域の一部と、前記第1投影光学系に対して前記走査方向および前記走査方向と交差する方向に離間して設けられた第2投影光学系の走査露光視野により露光される第2露光領域の一部とが重複された領域であり、
前記複数の照明光学系のそれぞれは、
前記照明光が入射する入射面が前記被露光基板と共役な位置に位置するフライアイレンズと、
前記フライアイレンズを照射する前記照明光の光量を増減する光量調整部材と、
前記フライアイレンズの前記入射面側に位置し、前記フライアイレンズの少なくとも一部を遮光する前記照度変更部材と、を有し、
前記制御部は、前記複数の照明光学系のうちの第1照明光学系が有する前記照度変更部材による減光比率が、前記複数の照明光学系のうちの第2照明光学系が有する前記照度変更部材による減光比率よりも大きくなるように、前記照度変更部材の位置を制御し、かつ、前記第1照明光学系が有する前記光量調整部材による減光量が、前記第2照明光学系が有する前記光量調整部材による減光量よりも小さくなるように、前記光量調整部材を制御する、
露光装置。
【請求項23】
請求項6に記載の露光装置において、
前記投影光学系および前記照明光学系は、前記走査方向と交差する方向に複数並列して配置され、
前記被露光基板上の、前記投影光学系の走査露光視野により時間的に連続的に露光される前記被露光基板上の前記走査方向に延びる第1領域と重複する重複領域を含む第2領域は、前記露光において、前記複数の投影光学系のうち第1投影光学系の走査露光視野により露光される第1露光領域の一部と、前記第1投影光学系に対して前記走査方向および前記走査方向と交差する方向に離間して設けられた第2投影光学系の走査露光視野により露光される第2露光領域の一部とが重複された領域である、
露光装置。
【請求項24】
請求項7に記載の露光装置において、
前記投影光学系および前記照明光学系は、前記走査方向と交差する方向に複数並列して
配置され、
前記被露光基板上の、前記投影光学系の走査露光視野により時間的に連続的に露光される前記被露光基板上の前記走査方向に延びる第1領域と重複する重複領域を含む第2領域は、前記露光において、前記複数の投影光学系のうち第1投影光学系の走査露光視野により露光される第1露光領域の一部と、前記第1投影光学系に対して前記走査方向および前記走査方向と交差する方向に離間して設けられた第2投影光学系の走査露光視野により露光される第2露光領域の一部とが重複された領域である、
露光装置。
【請求項25】
請求項20に記載の露光装置において、
前記被露光基板上の、前記投影光学系の走査露光視野により時間的に連続的に露光される前記被露光基板上の前記走査方向に延びる第1領域は、前記露光において、前記第1投影光学系の走査露光視野により前記被露光基板上の露光される前記第1露光領域の他部の領域、または、前記第2投影光学系の走査露光視野により前記被露光基板上の露光される第2露光領域の他部の領域である、露光装置。
【請求項26】
請求項20又は21に記載の露光装置において、
前記複数の照明光学系のそれぞれは、対応する前記投影光学系の視野の全面に渡って前記照明光の光量を増減する光量調整部材を有する、露光装置。
【請求項27】
請求項1から請求項26のいずれか一項に記載の露光装置で前記被露光基板を露光処理することと、
露光された前記被露光基板を現像処理することと、
を含むデバイス製造方法。
【請求項28】
基板を露光する露光装置に用いられる照明光学系であって、第1時間に走査方向へ移動される物体上の前記走査方向に延びる第1照明領域に対して照明光を照射し、前記第1時間とは異なる第2時間に前記走査方向へ移動される前記物体上の前記走査方向に直交する非走査方向に前記第1照明領域と並び前記走査方向に延びる第2照明領域に対して前記照明光を照射する照明光学系において、
照度変更部材のうち、前記第1照明領域に供給される第1照明光の一部を遮光することにより前記第1照明光の光量を変更する第1照度変更部材と、前記第2照明領域に供給される第2照明光の一部を遮光することによりの前記第2照明光の光量を変更する第2照度変更部材とを有し、前記第1照度変更部材による遮光量と、前記第2照度変更部材による遮光量とを異ならせることにより、前記非走査方向に関して、前記第1照明領域および前記第2照明領域のそれぞれの一部が重複するオーバーラップ領域を介して露光される前記基板上の領域における露光量分布前記領域の中心に対して非対称な分布となるように設定する設定部材を備える照明光学系。
【請求項29】
請求項28に記載の照明光学系において、
前記設定部材は、前記第1照明領域を介して露光される前記基板上の第1領域における露光量分布と、前記第2照明領域を介して露光される前記基板上の第2領域における露光量分布とを異ならせる照度変更部材を有する、照明光学系。
【請求項30】
請求項29に記載の照明光学系において、
前記照度変更部材は、前記オーバーラップ領域を照明する前記照明光の照度を、前記第1照明領域の他部および前記第2照明領域の他部の領域である非オーバーラップ領域を照明する前記照明光の照度に対して相対的に変更する、照明光学系。
【請求項31】
請求項30に記載の照明光学系において、
前記照度変更部材は、前記非オーバーラップ領域を介して露光される基板上の第3領域における露光量を、前記領域における露光量に対して低くする、照明光学系。
【請求項32】
請求項30又は請求項31に記載の照明光学系において、
前記照度変更部材は、前記照明光学系の中の前記物体の共役面または前記共役面の近傍に配置される、照明光学系。
【請求項33】
請求項32に記載の照明光学系において、
前記照度変更部材の位置を制御する制御部と、
オプチカルインテグレーターと、を備え、
前記オプチカルインテグレーターは、前記照明光の入射面が前記物体上の前記第1照明領域または前記第2照明領域に対して共役面となる位置に設けられ、
前記制御部は、前記オプチカルインテグレーターへ入射される前記照明光の照度を変更するように、前記照度変更部材を前記オプチカルインテグレーターに対して、前記照明光学系の光軸方向と略直交する方向であって前記走査方向に光学的に対応する第1方向へ移動させる、照明光学系。
【請求項34】
請求項33に記載の照明光学系において、
前記制御部は、前記照度変更部材を前記オプチカルインテグレーターに対して、前記照明光学系の前記光軸方向へ移動させる、照明光学系。
【請求項35】
請求項28から請求項34のいずれか一項に記載の照明光学系において、
前記物体に対する共役面に設けられ、前記第1照明領域に対応する位置を照明する前記照明光の一部を遮光する遮光部を備え、
前記遮光部は、前記第1照明領域内において、前記走査方向と直交する方向の位置に応じて、前記照明光の照度が異なるように、前記一部の照明光を遮光する、照明光学系。
【請求項36】
請求項28から請求項35のいずれか一項に記載の照明光学系を複数と、
前記照度変更部材の位置を制御する制御部をさらに有し、
前記基板を保持し、前記基板上に前記物体が有する所定パターンが露光されるように、前記照明光に対して、前記基板を前記走査方向へ相対的に移動させる基板ステージと、を有し、
前記オーバーラップ領域は、前記照射において、前記複数の照明光学系のうち第1照明光学系の照明視野により照明される前記第1照明領域の一部と、前記第1照明光学系に対して前記走査方向および前記走査方向と交差する方向に離間して設けられた第2照明光学系の照明視野により照明される前記第2照明領域の一部とが重複された領域であり、
前記複数の照明光学系のそれぞれは、
前記照明光が入射する入射面が前記被露光基板と共役な位置に位置するフライアイレンズと、
前記フライアイレンズを照射する前記照明光の光量を増減する光量調整部材と、
前記フライアイレンズの前記入射面側に位置し、前記フライアイレンズの少なくとも一部を遮光する前記照度変更部材と、を有し、
前記制御部は、前記複数の照明光学系のうちの第1照明光学系が有する前記照度変更部材による減光比率が、前記複数の照明光学系のうちの第2照明光学系が有する前記照度変更部材による減光比率よりも大きくなるように、前記照度変更部材の位置を制御し、かつ、前記第1照明光学系が有する前記光量調整部材による減光量が、前記第2照明光学系が有する前記光量調整部材による減光量よりも小さくなるように、前記光量調整部材を制御する、
露光装置。
【請求項37】
請求項33から請求項36のいずれか一項に記載の照明光学系を複数と、
前記基板を保持し、前記基板上に前記物体が有する所定パターンが露光されるように、前記照明光に対して、前記基板を前記走査方向へ相対的に移動させる基板ステージと、を有し、
前記オーバーラップ領域は、前記照射において、前記複数の照明光学系のうち第1照明光学系の照明視野により照明される前記第1照明領域の一部と、前記第1照明光学系に対して前記走査方向および前記走査方向と交差する方向に離間して設けられた第2照明光学系の照明視野により照明される前記第2照明領域の一部とが重複された領域である、
露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、照明光学系、およびデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスク上のパターン原版を大型基板に露光転写するための装置として、マスクおよび基板を、投影光学系に対して相対走査して露光を行なうスキャン型露光装置が知られている。スキャン露光により、露光視野はスキャン方向(走査方向)に拡大されるが、さらにスキャン方向と交差する方向(非スキャン方向)にも露光視野を拡大するために、複数回のスキャン露光を、その露光領域を非スキャン方向にオーバーラップさせて行う露光装置も知られている。
さらに、複数の投影光学系を非スキャン方向に並列的に備え、複数の投影光学系が露光する露光視野の一部をオーバーラップさせつつ露光を行うことで、一回の走査により基板上に電子回路を露光転写する方法も知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2016-54230号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、露光装置は、被露光基板を走査方向へ移動させながら第1時間に前記被露光基板上の第1露光領域を露光する第1露光と、被露光基板を走査方向へ移動させながら前記第1時間とは異なる第2時間に前記被露光基板上の第2露光領域を露光する第2露光とが行われる露光装置において、照明光を供給する照明光学系と、投影光学系と、前記走査方向に直交する非走査方向に関して、前記第1露光領域および前記第2露光領域のそれぞれの一部が重複する第2領域における露光量分布が、前記第2領域の中心に対して非対称な分布となるように設定する設定部材と、を備える。
第2の態様によると、露光装置は、照明光を供給する照明光学系と、投影光学系と、被露光基板上に所定パターンが露光されるよう、前記被露光基板を前記投影光学系に対して走査方向に相対的に移動させる基板ステージと、前記露光において、前記投影光学系の走査露光視野により時間的に連続的に露光される前記被露光基板上の第1領域における露光量を、前記走査露光視野により時間的に離散的に露光される前記被露光基板上の第2領域における露光量に比べて少なく設定し、かつ、前記走査方向と直交する方向における前記第2領域の露光量分布が、前記第2領域の中心に対して非対称な分布となるように設定する照度変更部材と、を備える。
第3の態様によると、デバイス製造方法は、第1または第2の態様の露光装置で被露光基板を露光処理することと、露光された前記被露光基板を現像処理することと、を含む。
第4の態様によると、照明光学系は、基板を露光する露光装置に用いられる照明光学系であって、第1時間に走査方向へ移動される物体上の第1照明領域に対して照明光を照射し、前記第1時間とは異なる第2時間に前記走査方向へ移動される前記物体上の第2照明領域に対して前記照明光を照射する照明光学系において、前記走査方向に直交する非走査方向に関して、前記第1照明領域および前記第2照明領域のそれぞれの一部が重複するオーバーラップ領域を介して露光される前記基板上の領域における露光量分布が、前記領域の中心に対して非対称な分布となるように設定する設定部材を備える。
第5の態様によると、露光装置は、第4の態様の照明光学系と、前記基板を保持し、前記基板上に前記物体が有する所定パターンが露光されるように、前記照明光に対して、前記基板を第1方向へ相対的に移動させる基板ステージと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】第1実施形態の露光装置の構成を示す側面図。
図2】第1実施形態の露光装置の一部分を示す斜視図。
図3】第1実施形態の露光装置のフライアイレンズからマスクまでを拡大して示した斜視図。
図4】第1実施形態の露光装置のマスク上の視野と基板上の視野との関係を表す図。図4(a1)、図4(a2)および図4(a3)は、それぞれ図1中の投影光学系19cにおけるマスク上の視野、投影光学系内の視野絞り、基板上の視野を示す図、図4(b1)、図4(b2)および図4(b3)は、それぞれ図1中の投影光学系19bにおけるマスク上の視野、投影光学系内の視野絞り、基板上の視野を示す図。
図5】光量調整部材の一例を示す図。
図6】第1実施形態の露光装置が基板に対して走査露光する際に、基板上に照射される露光量、および感光材料における実効感光量の一例を示す図。図6(a)は各投影光学系の基板上の露光視野を示す図、図6(b)は基板22上に形成される露光領域を示す図、図6(c)は基板上に照射される露光量の一例を示す図、図6(d)は感光材料における実効感光量の一例を示す図。
図7】オーバーラップ部Ocおよびその近傍における露光量Eと実効感光量EEとの関係を示す図。図7(a)は基板上の露光視野PIcおよび露光視野PIdの一部を示す図、図7(b)は露光視野PIcにより基板22上に走査露光された露光量の分布Ecを示す図、図7(c)は露光視野PIdにより基板22上に走査露光された露光量の分布Edを示す図、図7(d)は感光材料における実効感光量の一例を示す図。
図8】第1実施形態の露光装置のフライアイレンズ、減光部材および減光部材保持部を、インプットレンズ側から見た図。
図9】オーバーラップ部の露光量の分布の他の一例を示す。図9(a)は減光部材が挿入されず、露光視野PIcおよび露光視野PIdにより基板22上に走査露光された露光量の分布を示す図、図9(b)は減光部材による減光比率を表す図、図9(c)は減光部材が挿入された状態で、露光視野PIcおよび露光視野PIdにより基板22上に走査露光された露光量の分布を示す図。
図10】第1実施形態の露光装置が基板に対して走査露光する際に、基板上に照射される露光量、および感光材料における実効感光量の他の一例を示す図。図10(a)は各投影光学系の基板上の露光視野を示す図、図10(b)は基板上に照射される露光量の一例を示す図、図10(c)は感光材料における実効感光量の一例を示す図。
図11】変形例1の減光部材および減光部材保持部を、インプットレンズ側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(露光装置の第1実施形態)
図1は、第1実施形態の露光装置100を示す側面図である。後述するように露光装置100は、5本の投影光学系19a~19eを備えているが、図1には、そのうちの2本である投影光学系19a、19bのみが示されている。
投影光学系19a~19eは、投影倍率(横倍率)が+1倍の正立正像を形成する光学系であり、マスク15に描画されているパターンを、基板22の上面に形成されている感光材料に露光転写する。なお、感光材料が形成された基板22は、被露光基板と解釈することができる。
【0007】
基板22は、不図示の基板ホルダーを介して基板ステージ27により保持される。基板ステージ27は、不図示のリニアモータ等により、基板ステージ定盤28上をX方向(に走査するとともに、Y方向に移動可能となっている。基板ステージ27のX方向の位置は、基板ステージ27に取り付けられている移動鏡24の位置を介してレーザー干渉計25により計測される。同様に基板ステージ27のY方向の位置も、不図示のレーザー干渉計により計測される。
位置検出光学系23は、基板22上に形成されているアライメントマーク等の既存のパターンの位置を検出する。
【0008】
マスク15は、マスクステージ16により保持される。マスクステージ16は、不図示のリニアモータ等により、マスクステージ定盤17上をX方向に走査するとともに、Y方向に移動可能となっている。マスクステージ16のX方向の位置は、マスクステージ16に取り付けられている移動鏡13の位置を介してレーザー干渉計14により計測される。同様にマスクステージ16のY方向の位置も、不図示のレーザー干渉計により計測される。
【0009】
制御部50は、レーザー干渉計14,25等の計測値に基づいて、マスクステージ16に制御信号SigMSを送り、不図示のリニアモータ等を制御して、マスクステージ16のXY位置を制御する。同様に、基板ステージ27に制御信号SigPSを送り、不図示のリニアモータ等を制御して、基板ステージ27のXY位置を制御する。制御部50は、基板22へのマスクパターンの露光に際しては、マスク15と基板22とを、投影光学系19a~19eによる結像関係を保ったまま、投影光学系19a~19eに対して相対的に、X方向に略同一速度で走査させる。
【0010】
本明細書では、露光に際して、基板22が走査される方向(X方向)を「走査方向」および「スキャン方向」とも呼ぶ。また、基板22の面内に含まれる方向であってX方向と直交する方向(Y方向)を「非走査方向」および「非スキャン方向」とも呼ぶ。Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向である。
なお、図1および以下の各図に矢印で示したX方向、Y方向、およびZ方向は、その矢印の指し示す方向を+方向とする。
【0011】
図2は、第1実施形態の露光装置100の照明光学系ILa~ILeの下流部から基板22までの部分を示す斜視図である。以下、図2も参照して説明を続ける。
図2に示したとおり、5つの投影光学系19a~19eのうち、3つの投影光学系19a、19c、19e(以下、総称してまたは個々に「第1列の投影光学系19F」とも呼ぶ)は、Y方向に並んで配置されている。そして、2つの投影光学系19b、19d(以下、総称してまたは個々に「第2列の投影光学系19R」とも呼ぶ)は、Y方向に並んで、第1列の投影光学系19Fよりも+X側に配置されている。
【0012】
第1列の投影光学系19Fの各投影光学系は、その光軸がY方向に所定の間隔で離れて配置される。第2列の投影光学系19Rの各光学系も第1列の投影光学系19Fと同様に配置される。また、投影光学系19bは、その光軸のY方向の位置が、投影光学系19aと投影光学系19cのそれぞれの光軸を結んだ直線の略中心と一致するように、配置される。また、投影光学系19dも、投影光学系19bと同様に、配置される。
【0013】
第1実施形態の露光装置100は、各投影光学系19a~19eのそれぞれに対応して、複数の照明光学系ILa~ILeを備えている。第1列の投影光学系19F(19a、19c、19e)に対応する照明光学系ILa、ILc、ILeを第1列の照明光学系とも呼び、第2列の投影光学系19R(19b、19d)に対応する照明光学系ILb、ILdを第2列の照明光学系とも呼ぶ。
【0014】
一例として、図1に示されるように、投影光学系19aに対応する照明光学系ILaは、光軸IXaに沿って、インプットレンズ8a、フライアイレンズ11aおよびコンデンサーレンズ12aを備えている。他の照明光学系ILb~ILeも同様に、インプットレンズ8b~8e、フライアイレンズ11b~11e、およびコンデンサーレンズ12b~12eを含んでいる。なお、上述のように図2には、各照明光学系ILa~ILeのうち、フライアイレンズ11a~11e、およびコンデンサーレンズ12a~12eのみが示されている。
なお、側面図である図1には、投影光学系19c~19eは、投影光学系19aまたは19bとX方向の位置が重なるため示していない。同様に、照明光学系ILc~ILeも、照明光学系ILaまたはILbとX方向の位置が重なるため示していない。
【0015】
ランプ等の光源1から供給される照明光は、楕円ミラー2、折り曲げミラー3、リレーレンズ4、折り曲げミラー5、リレーレンズ6、光ファイバー7等の導光光学系を介して、各照明光学系ILa~ILeに供給される。光ファイバー7は、1つの入射側71に入射した照明光を略均等に分岐して、5つの射出側72a~72eに射出する。光ファイバー7の5つの射出側72a~72eのそれぞれから射出された照明光は、各照明光学系ILa~ILeの中の光量調整部材ATa~ATeを経て、インプットレンズ8a~8eに入射する。光量調整部材ATa~ATeおよび駆動部CAa~CAeについては後述する。インプットレンズ8a~8eを射出した照明光は、フライアイレンズ11a~11e、およびコンデンサーレンズ12a~12eを経て、マスク15上の各照明領域MIa~MIeに照射される。
【0016】
フライアイレンズ11a~11eの入射面(インプットレンズ8b~8e側の面)は、投影光学系19a~19e、コンデンサーレンズ12a~12eおよびフライアイレンズ11a~11eを介して、基板22の上面(基板22が載置される基板ホルダーの上面もしくはその近傍)と共役(結像関係)である共役面CPに配置されている。
【0017】
図3は、一例として、照明光学系ILcに含まれるフライアイレンズ11c、およびコンデンサーレンズ12cと、マスク15上の照明領域MIcを拡大して示した斜視図である。
フライアイレンズ11cは、照明領域MIcと相似形の、Y方向に長い長方形の断面形状(XY面内の形状)を有するレンズエレメント110が、X方向およびY方向に複数個配列されて形成されている。各レンズエレメント110の入射面(図3中の上方の面、すなわち+Z側の面)は、各レンズエレメント110およびコンデンサーレンズ12cからなる光学系により、マスク15上の照明領域MIc(マスク15が載置されるマスクステージの上面もしくはその近傍)に対する共役面CPとなっている。従って、基板22上の露光視野PIcに対する共役面CPでもある。それぞれのレンズエレメント110の入射面に照射される照明光は、マスク15上の照明領域MIcに重畳して照射される。これにより、照明領域MIc内の照明光の照度が略均一化される。
【0018】
照明光学系ILcを除く他の照明光学系ILa~ILeの構成も、図3に示した構成と同様である。
フライアイレンズ11a~11eは、それぞれの照明領域MIa~照明領域MIeに照明光を重畳して照射するオプチカルインテグレーターの一例である。
フライアイレンズ11a~11eの入射面側(インプットレンズ8a~8e側)には、後述する減光部材10a~10eが、減光部材保持部9a~9eにより保持され、配置されている。
【0019】
投影光学系19a~19eのそれぞれは、正立正像の像を形成するために、例えば2回結像型の光学系により構成される。この場合、各投影光学系19a~19eの上半分を構成する光学系により、各投影光学系19a~19eの光軸PAXa~PAXeの方向(Z方向)の中間付近にある中間像面20に、マスク15のパターンの中間像が形成される。中間像は、各投影光学系19a~19eの下半分を構成する光学系により再度結像され、基板22上に、マスク15のパターンの像が形成される。
【0020】
中間像面20は基板22と共役であるため、各投影光学系19a~19e内の中間像面20にそれぞれ視野絞り21a~21eを配置することにより、基板22上の各投影光学系19a~19eによる露光視野PIa~PIeを規定することができる。
【0021】
図4は、マスク15上の照明領域MIa~MIeと、視野絞り21a~21eと、露光視野PIa~PIeとの関係を示す図である。
図4(a1)は、投影光学系19cに対応するマスク15上の照明領域MIcを示す図であり、照明領域MIcは、フライアイレンズ11cのレンズエレメント110の断面形状と相似な長方形となっている。
【0022】
図4(a2)は、投影光学系19c内の視野絞り21cと、そこに照射される照明光MIc2を示す図である。視野絞り21cには、マスク15上の照明領域MIcの中間像である破線で示した照明光MIc2が照射される。照明光MIc2のうち、視野絞り21cの遮光部(斜線で示した部分)に照射された照明光は視野絞り21cにより遮光される。 一方、視野絞り21cの開口部21coを透過した照明光は、投影光学系19cの下半分を構成する光学系により基板22上で再度結像し、基板22上に露光視野PIcを形成する。
【0023】
図4(a3)は、基板22上の露光視野PIcを示すである。
一例として、投影光学系19c~19eが全屈折光学系から成るとき、中間像である照明光MIC2は照明領域MIcに対する倒立正像(像のX方向およびY方向が共に反転し、鏡像ではない像)であり、露光視野PIcは視野絞り21cに対する倒立正像となる。従って、図4(a2)および図4(a3)に示したとおり、視野絞り21cの開口部21coの形状と、露光視野PIcの形状は、相互にZ軸回りに180度回転したものと一致する。
【0024】
露光視野PIcは、一例として、Y方向に平行な2辺のうちの短辺が+X側に、長辺が-X側にある台形である。ここで、露光視野PIcのうち、+X側の短辺の全てと-X側の長辺の一部で囲まれた長方形の領域を、中心領域PIccと呼ぶ。一方、露光視野PIcのうち、中心領域PIccに含まれない+Y方向の端部を左端領域PIclと呼び、露光視野PIcのうち、中心領域PIccに含まれない-Y方向の端部を右端領域PIcrと呼ぶ。
中心領域PIccのY方向の長さ(幅)を幅Wsと呼び、左端領域PIclおよび右端領域PIcrのY方向の長さ(幅)は等しく、これを幅Woと呼ぶ。
【0025】
一方、図4(b1)~図4(b3)は、それぞれ投影光学系19bに対応する、マスク15上の照明領域MIbと、視野絞り21bと、露光視野PIbとを示す図である。図4(b2)に示すとおり、投影光学系19bにおいては、視野絞り21bの開口部21boの形状は、投影光学系19cの視野絞り21cの開口部21coの形状をX方向に反転した形状となっている。その結果、図4(b3)に示すとおり、投影光学系19bの露光視野PIbの形状は、投影光学系19cの露光視野PIcの形状をX方向に反転した形状となっている。
【0026】
上述の露光視野PIcと同様に、露光視野PIbについても、-X側の短辺の全てと+X側の長辺の一部で囲まれた長方形の領域を、中心領域PIbcと呼ぶ。露光視野PIbのうち、中心領域PIbcに含まれない+Y方向の端部を左端領域PIblと呼び、露光視野PIbのうち、中心領域PIbcに含まれない-Y方向の端部を右端領域PIcrと呼ぶ。
【0027】
図5は、照明光学系ILcに設けられている光量調整部材ATcおよび駆動部CAcを、光ファイバー7側から見た図である。なお、照明光学系ILc以外の他の照明光学系ILa~ILeに設けられている光量調整部材ATa~ATeおよび駆動部CAa~CAeについても、図5に示したものと同様である。
以下では、第1列の照明光学系ILa、ILc、ILdに設けられている光量調整部材ATa、ATc、ATeを第1列の光量調整部材とも呼び、第2列の照明光学系ILb、ILdに設けられている光量調整部材ATb、ATdを第2列の光量調整部材とも呼ぶ。
【0028】
光量調整部材ATcは、XY面に平行な面を持つ平板ガラスPGの表面に、X方向に長く、かつY方向の幅がX方向の位置に応じて異なる遮光部材Swが、Y方向に複数配列されているものである。
光ファイバー7(射出側72c)からの照明光は、照射領域IFcに照射され、その一部は、遮光部材Swにより遮光される。光量調整部材ATc上の各遮光部材SwのY方向の幅は、X方向の位置に応じて変化しているので、駆動部CAcにより光量調整部材ATcを照明領域IFcに対して±X方向に相対移動すると、各遮光部材Swにより遮光される照明光の光量が変化する。
【0029】
なお、光量調整部材ATcを透過した直後の照明光の照度はY方向に不均一である。しかし、光量調整部材ATcよりも下流側(マスク15側)に設けられているフライアイレンズ11cにより、マスク15上および基板22上の照明光の照度分布は略均一化される。
従って、光量調整部材ATcは、対応する投影光学系19cの視野の全面に渡って、照明光学系ILcが供給する照明光の光量を、略均一に増減する。
駆動部CAcによる光量調整部材ATcのX方向の位置の制御は、制御部50からの制御信号Sig1Cにより制御される。
【0030】
図6(a)は、基板22上での、5つの投影光学系19a~19eの各露光視野PIa~PIeを示す図である。第1列の投影光学系19Fである投影光学系19a、19eの露光視野PIa、PIeは、上述した投影光学系19cの露光視野PIcと同様に、Y方向に平行な2辺のうちの短辺が+X側に、長辺が-X側にある台形である。一方、第2列の投影光学系19Rである投影光学系19dの露光視野PIdは、上述した投影光学系19bの露光視野PIbと同様に、Y方向に平行な2辺のうちの短辺が-X側に、長辺が+X側にある台形である。
【0031】
投影光学系19a、19d、19eの露光視野PIa、PId、PIeについても、上述の露光視野PIb、PIcと同様に、中心領域PIac、PIdc、PIec、および左端領域PIal、PIdl、PIel、右端領域PIar、PIdr、PIerを定義できる。ただし、-Y方向の端に配置されている露光視野PIaは、視野絞り21aにより、その-Y方向の端部がX方向に平行となるように照明光を遮光するため右端領域PIarは存在しない。また、+Y方向の端に配置されている露光視野PIeは、視野絞り21aにより、その+Y方向の端部がX方向に平行となるように照明光を遮光するため左端領域PIalは存在しない。なお、視野絞り21aと21eとの形状を、視野絞り21cの形状と異ならせるようにしても良いし、別の部材を用いて、露光視野PIaでは右端領域PIarが存在しないよう、照明光を遮光するようにしてもよい。
【0032】
各露光視野PIa~PIeの各中心領域PIac~PIecのY方向の長さはいずれも幅Wsに等しく、左端領域PIal~PIdlおよび右端領域PIbr~PIerの長さは、いずれも幅Woに等しい。そして、露光視野PIa~PIeのうちY方向に隣接する2つの露光視野において、隣接する左端領域PIal~PIdlと右端領域PIbr~PIerのY方向の位置は、一致している。
各露光視野PIa~PIeのこのような形状および位置の設定は、投影光学系19a~19eの配置位置、および視野絞り21a~21eの開口部21ao~21eoの形状および位置を設定することにより行なう。
【0033】
図6(b)は、基板22が基板ステージ27により+X方向に走査され、図6(a)に示した露光視野PIa~PIeにより露光された際に、基板22上に形成される露光領域を示す図である。基板22上には、走査露光により各露光視野PIa~PIeにより露光される走査露光視野SIa~SIeが形成される。図6(b)において、第1列の投影光学系19a、19c、19eが形成する走査露光視野SIa、SIc、SIeは2点鎖線で示し、第2列の投影光学系19b、19dが形成する走査露光視野SIb、SIdは1点鎖線で示している。
【0034】
これらの走査露光視野SIa~SIeは、露光視野PIa~PIeがX方向への走査露光によりX方向に延長されたものである。各走査露光視野SIa~SIeのY方向(非走査方向)の端部は、それぞれ隣接する他の走査露光視野SIa~SIeの非走査方向の端部とオーバーラップしている。たとえば、左端領域PIalによる露光領域と右端領域PIbrによる露光領域とが一致する。他の露光領域においても同様であるため、説明は省略する。
【0035】
以下では、Y方向のうち、各走査露光視野SIa~SIeの1つにより露光された部分を非オーバーラップ部Sa~Seとも呼び、各走査露光視野SIa~SIeの2つがオーバーラップして露光された部分をオーバーラップ部Oa~Odとも呼ぶ。
露光視野PIa~PIeのうち、左端領域PIal~PIdlと右端領域PIbr~PIerは、オーバーラップ部Oa~Odに対応する露光視野であり、中心領域PIac~PIecは、非オーバーラップ部Sa~Seに対応する露光視野である。
【0036】
図6(c)は、X方向への走査露光により基板22上に露光される露光量Eを示すグラフである。グラフの縦軸は露光量、横軸はY方向の座標である。図6(a)に示したとおり、Y方向の各微小区間で各露光視野PIa~PIeをX方向に積算した値は等しく、かつ、フライアイレンズ11の作用等により各露光視野PIa~PIe内の照度は均一であるため、基板22上の露光量Eは一定の値E1となる。
すなわち、Y方向のうち、非オーバーラップ部Sa~Seにおける露光量Eと、オーバーラップ部Oa~Odにおける露光量Eとは、共に露光量Eの値がE1となり等しくなる。
【0037】
電子デバイス等の製造工程で使用されているフォトレジスト等の感光材料では、実効的な感光量(以下、「実効感光量」とも呼ぶ)は露光量に比例する。すなわち露光量が同一であれば、その露光が時間的に連続して行われた場合であっても、時間的に複数に分割して行われた場合であっても、感光材料の実効感光量は変わらない。
従って、露光量が一定値であれば、フォトレジスト等の感光材料への実効感光量も一定値となる。
【0038】
しかし、一部の感光材料では、露光が時間的に連続して行われた場合と、時間的に複数に分割して行われた場合では、露光量が同一であっても感光材料の実効感光量が変化する。具体的には、露光が時間的に複数に分割して行われた場合には、時間的に連続して行われた場合に比べて、実効感光量が低下する。
【0039】
図6(d)は、このような一部の感光材料(以下、「非加算性感光材料」とも呼ぶ)に対して、図6(a)に示した露光視野PIa~PIeを用いてX方向に走査露光した場合の、非加算性感光材料の実効感光量EEを示すグラフである。
各走査露光視野SIa~SIeの2つがオーバーラップして露光されたオーバーラップ部Oa~Odは、始めに第1列の投影光学系19a、19c、19eにより露光され、その後第2列の投影光学系19b、19dにより露光されるため、露光が時間的に分割されて行われている。換言すると、オーバーラップ部Oa~Odは、時間的に離散的に露光が行われる。従って、各走査露光視野SIa~SIeの1つにより時間的に分割されずに露光された非オーバーラップ部Sa~Seの実効感光量EEに対して、オーバーラップ部Oa~Odの実効感光量EEが低下している。具体的には、非オーバーラップ部Sa~Seの実効感光量EEの値がEE1に対して、オーバーラップ部Oa~Odの実効感光量EEの値はEE1よりも小さくなる。
【0040】
この結果、非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合には、オーバーラップ部Oa~Odと非オーバーラップ部Sa~Seとで、実効感光量EEが異なることから、転写されたパターンの線幅や厚さが変化してしまうことになる。
時間的に連続的に露光が行われる非オーバーラップ部Sa~Seを、第1領域と解釈することもできる。一方、時間的に離散的に露光が行われるオーバーラップ部Oa~Odを、第2領域と解釈することもできる。
【0041】
図7は、オーバーラップ部Ocおよびその近傍における露光量Eと実効感光量EEとの関係を示す図である。図6に示したとおり、オーバーラップ部Ocは、露光視野PIcによる走査露光視野SIcと、露光視野PIdによる走査露光視野SIdとが、オーバーラップされて露光される領域である。
図7(a)は、基板22上の2つの露光視野PIcと露光視野PIdを示す図である。 露光視野PIcの方が、露光視野PIdよりも-X側にあるため、基板22が投影光学系19a~19eに対して+X方向に走査されて露光される場合、オーバーラップ部Ocには、始めに第1列の投影光学系19cの露光視野PIcによる露光が行われる。
【0042】
図7(b)は、露光視野PIcによる露光が行われた後の、オーバーラップ部Ocおよびその近傍における露光量の分布Ecを表す図である。露光視野PIcの左端部の形状に応じて、露光量の分布Ecは、オーバーラップ部Ocの-Y側(右側)で大きく、オーバーラップ部Ocの+Y側(左側)で小さくなっている。
この結果、基板22上の感光材料(非加算性感光材料)は、オーバーラップ部Ocの-Y側では例えば温度が大きく上昇する。このため、熱による活性化により非加算性感光材料はさらなる感光が進み易い(実効感度が高い)状態となる。一方、オーバーラップ部Ocの+Y側では非加算性感光材料の温度の上昇が小さく、さらなる感光が進みにくい(実効感度が低い)状態となっている。
【0043】
続いて、オーバーラップ部Ocおよびその近傍には、第2列の投影光学系19dの露光視野PIdによる露光が行われる。図7(c)は、露光視野PIdによる露光が行われた後の、オーバーラップ部Ocおよびその近傍における露光視野PIdによる露光量の分布Edを表す図である。なお、図7(c)には、図7(b)に示した露光量の分布Ecも併せて示している。
図6(c)に示したとおり、露光量の分布Ecと露光量の分布Edの和は、オーバーラップ部Ocおよびその近傍において一定である。
【0044】
しかし、非加算性感光材料の非加算特性により、非加算性感光材料の実効感光量EEcは、オーバーラップ部Ocおよびその近傍において一定とはならない。さらに、図6(d)に示すように、実効感光量EEcは、オーバーラップ部OcのY方向の中心CLに対して非対称な特性を有する。これは、上述したように、始めの露光視野PIcによる露光が終了した段階での、オーバーラップ部Ocの各部の非加算性感光材料の実効感度が異なることに起因する。
【0045】
すなわち、露光視野PIcによる露光後の非加算性感光材料の実効感度は、露光量ECが小さいオーバーラップ部Ocの+Y側(左側)では、-Y側(右側)に比べて低いため、露光視野PIdによる露光時の反応が進みにくい。この結果、実効感光量EEcは、オーバーラップ部Ocの+Y側(左側)では、-Y側(右側)に比べて低くなる。よって、仮にオーバーラップ部Ocに対応する位置に形成されたマスク15上のパターンの線幅や厚さが同じであったとしても、オーバーラップ部Ocの実効感光料EEcがY方向の位置に応じて異なることから、基板22上に転写されたパターンの線幅や厚さが変化してしまう。
【0046】
なお、オーバーラップ部Ocにおいては、露光が時間的に分割されて行われている。従って、最初の露光視野PIcによる露光量が比較的大きいオーバーラップ部Ocの-Y側(右側)においても、実効感光量EEcは、時間的に連続して露光が行われる非オーバーラップ部Sc、Sdでの値よりも小さくなる。その1つの理由としては、露光視野PIcによる露光の後、露光視野PIdによる露光が開始されるまでの間に、非加算性感光材料の温度が低下してしまうことによる。
【0047】
なお、以上においては、非加算性感光材料の非加算特性を、一例として、非加算性感光材料の温度変化に基づくものとして説明した。しかし、全ての非加算性感光材料が上述のように温度変化に基づく非加算特性を有しているわけではなく、他の原因による非加算特性を有する非加算性感光材料も存在している。
【0048】
以上で説明した通り、オーバーラップ部Ocと非オーバーラップ部Sc、Sdとにおいて、転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止する、より具体的には実効感光料EEcを略等しくするには、オーバーラップ部Ocにおける露光量を、非オーバーラップ部Sc、Sdの露光量に比べて増大させる必要がある。さらに、オーバーラップ部Ocにおける露光量は、オーバーラップ部OcのY方向の中心CLに対して、非対称な分布であることが好ましい。
【0049】
そこで、第1実施形態の露光装置100では、照明光学系ILa~ILeのそれぞれのフライアイレンズ11a~11eの入射面側、つまりインプットレンズ8a~8eとフライアイレンズ11a~11eとの間の位置、且つフライアイレンズ11a~11eの入射面の近傍に、照度変更部材の一例である減光部材10a~10eを設けている。減光部材10a~10eのX方向の位置は、制御部50からの制御信号SigA~SigEにより制御される。
以下では、第1列の照明光学系ILa、ILc、ILdに設けられている減光部材10a、10c、10eを第1列の減光部材とも呼び、第2列の照明光学系ILb、ILdに設けられている減光部材10b、10dを第2列の減光部材とも呼ぶ。
【0050】
図8は、照明光学系ILcに設けられているフライアイレンズ11c、減光部材10c(10c1a、10c1b、10c2a、10c2b)、および減光部材保持部9c(9c1、9c2)を、インプットレンズ8c側から見た図である。以下、図8を参照して、照明光学系ILcに設けられている減光部材10c、および減光部材保持部9cについて説明するが、他の照明光学系ILa~ILeに設けられている減光部材10a~10e、および減光部材保持部9a~9eについても同様である。
【0051】
フライアイレンズ11cは、断面がY方向に長い長方形であるレンズエレメント110がX方向に複数配列されたレンズブロックが、Y方向に複数配列されている。上述のとおり、図8は、フライアイレンズ11cを入射面側であるインプットレンズ8c側から見た図である。そして、各レンズエレメント110の入射面は、基板22上に形成される露光視野PIcに対する共役面CPとなっている。そのため、図8には、各レンズエレメント110の中に、露光視野PIcに対応する領域である露光視野対応領域IPIcを破線で示している。なお、露光視野PIcに対する露光視野対応領域IPIcの横倍率はβ倍であり、露光視野対応領域IPIcのうち、露光視野PIcの中心領域PIccに対応する部分のY方向の幅IWsは、β×Wsであるとする。
【0052】
減光部材10cのうち、Y方向の幅が幅W1である減光部材10c1a、10c1bは、フライアイレンズ11cの-X側に配置され、減光部材保持部9c1の一部であるスライダー9c10に保持され、X方向及びZ方向に可動となっている。減光部材10c1a、10c1bのX方向の位置(フライアイレンズ11cへの挿入量)、およびZ方向の位置は、制御部50から減光部材保持部9c1に伝達される制御信号Sigc1に従って制御される。
【0053】
Y方向の幅が幅W2である減光部材10c2a、10c2bは、フライアイレンズ11cの+X側に配置され、減光部材保持部9c2の一部であるスライダー9c20に保持され、減光部材10c1a、10c1bとは独立してX方向及びZ方向に可動となっている。減光部材10c2a、10c2bのX方向の位置、およびZ方向の位置は、制御部50から減光部材保持部9c2に伝達される制御信号Sigc2に従って制御される。スライダー9c10と減光部材保持部9c1の本体との相対位置関係、およびスライダー9c20と減光部材保持部9c2の本体との相対位置関係は、エンコーダー等により計測される。
【0054】
一例として、減光部材10c1a、10c1bの幅W1は減光部材10c2a、10c2bの幅W2より僅かに大きいが、幅W1と幅W2は、幅IWsと概ね同程度の幅である。従って、減光部材10c1a、10c1bを、いくつかのレンズエレメント110の露光視野対応領域IPIcの中の露光視野PIcの中心領域PIccに対応する部分を覆って配置することで、照明光が減光され、基板22上の非オーバーラップ部Scの露光量を減らすことができる。
【0055】
また、スライダー9c10をX方向に移動させることにより、減光部材10c1a、10c1bが覆うレンズエレメント110の数、および1つのレンズエレメント110内の遮光された部分の比率を変更することができる。これにより、露光視野PIcのうち中心領域PIccの照度を、左端領域PIclおよび右端領域PIcrの照度に対して、略連続して可変に低下させることができる。
【0056】
スライダー9c20をX方向に移動させることにより、減光部材10c2a、10c2bをX方向に移動させることによっても、同様の効果が得られる。
従って、減光部材10c(10c1a、10c1b、10c2a、10c2b)は、基板22上の非オーバーラップ部Scへの露光量を、オーバーラップ部への露光量に対して小さくする、照度変更部材と解釈することができる。
【0057】
なお、減光部材10cは、フライアイレンズ11cの入射面からZ方向に所定距離だけ離れた位置に配置することが好ましい。これにより、フライアイレンズ11cの入射面においては、減光部材10cのXY方向のエッジは、ぼやけて投影される。逆に言えば、減光部材10cをフライアイレンズ11cの入射面からZ方向にどれだけ離して配置すれば良いかは、基板22上における減光部材10cのエッジの半影ボケの量を決定するパラメータである、フライアイレンズ11cの入射面と基板22との横倍率、およびフライアイレンズ11cの入射面における照明光の開口数に基づいて、決定することができる。
【0058】
一例として、オーバーラップ部Oa~OdのY方向の幅をDW、フライアイレンズ11cの入射面に対する基板22の横倍率をβ、フライアイレンズ11cの入射面における照明光の開口数をNAとするとき、減光部材10cの、フライアイレンズ11cの入射面からのZ方向の距離Dは、
0 ≦ D ≦ 1.2×DW/(β・NA) ・・・(1)
とするのが良い。
距離Dが式(1)を満たす場合、減光部材10cのエッジによる基板22上の露光量変化(露光量ムラ)の影響をさらに低減することができ、かつ、オーバーラップ部Oa~Odの露光量が必要以上に低下することを防止できる。
【0059】
減光部材10cは、金属製の薄板であっても良く、透明なガラス板上に減光部材により形成された遮光膜であってもよい。減光部材10cは、金属板のように照明光を完全に遮光するものに限られず、一部の照明光のみを遮光、透過させる部材であっても良い。つまり減光部材10cは、照度を変更するための照度変更部材であればよい。
他の照明光学系ILa~ILeが備える減光部材10a~10e、および減光部材保持部9a~9eについても、上述の減光部材10cおよび減光部材保持部9cの構造と、同様である。
【0060】
図9は、上述の減光部材10a~10eおよび光量調整部材ATa~ATeを備えた第1実施形態の露光装置100を用いて走査露光を行なう際に、基板22上のオーバーラップ部Ocおよびその近傍に露光される露光量の一例を示す図である。図9においては、一例として、オーバーラップ部OcのY方向の幅を10mmとしている。また、図9においては、横軸の原点(Y=0)を、オーバーラップ部OcのY方向の中心とし、図6等の他の図に合わせて、左側を+Y方向としている。
【0061】
図9(a)は、説明のために、フライアイレンズ11の入射面に減光部材10a~10eを挿入せず、光量調整部材ATa~ATeの位置のみを調整した状態でスキャン露光を行った際の露光量を示す図である。露光量Ec1は第1列の投影光学系19cの露光視野PIcの走査露光による露光量を示し、露光量Ed1は第2列の投影光学系19dの露光視野PIdの走査露光による露光量を示す。
第2列の光量調整部材ATdは照明光を減光しない状態(調光量=1)に設定されている。一方、第1列の光量調整部材ATcは、照明光を0.68倍に減光する状態(調光量=0.68)に設定されている。
【0062】
図9(b)は、図9(a)に示した露光量Ec1、Ed1に対し、減光部材10c、10dをフライアイレンズ11c、11dに対して+X方向へ移動させ、所定数のレンズエレメント110の露光視野対応領域IPIcの中の露光視野PIcの中心領域PIccに対応する部分を覆った状態で、走査露光を行った際の露光量の減光比率を示す図である。減光比率Tcは、Y方向の各位置における、減光部材10cをフライアイレンズ11cへ挿入しない状態で走査露光を行った際の露光量Ec1に対する、減光部材10cをフライアイレンズ11cへ挿入後の露光量との比率を表す。減光比率Tdは、Y方向の各位置における、減光部材10cをフライアイレンズ11cへ挿入しない状態で走査露光を行った際の露光量Ed1に対する、減光部材10cをフライアイレンズ11cへ挿入後の露光量との比率を表す。
【0063】
図9(b)は、照明光学系ILdの減光部材10dのフライアイレンズ11dへの挿入量が、照明光学系ILcの減光部材10cのフライアイレンズ11cへの挿入量より大きくなるように設定した状態を示している。つまり、照明光学系ILdの減光部材10dが覆うレンズエレメント110の数が、照明光学系ILcの減光部材10cが覆うレンズエレメント110の数よりも多い状態を示している。露光視野PIdにより露光される非オーバーラップ部Sdにおいて、減光部材10dによる減光比率Tdは、減光無しの場合の0.64倍である。一方、露光視野PIcにより露光される非オーバーラップ部Scにおいて、減光部材10cによる減光比率Tdは減光無しの場合の0.94倍である。
【0064】
上述のように、減光部材10c、10dは、フライアイレンズ11c、11dの入射面からZ方向に所定距離だけ離れた位置に配置されている。従って、フライアイレンズ11c、11dの入射面と共役な基板22上においても、減光部材10c、10dのエッジはぼやけて投影される。従って、減光部材10cによる減光比率Tcは、オーバーラップ部OcにおいてY方向の位置の増加に伴って緩やかに増加し、減光部材10dによる減光比率Tdは、オーバーラップ部OcにおいてY方向の位置の減少に伴って緩やかに増加する。図9(b)においては、基板22上における減光部材10cのエッジの半影ボケの量、すなわち、減光比率TcおよびTdが増減する範囲の幅は、一例として、オーバーラップ部Ocの幅10mmの半分の5mmとしている。
【0065】
図9(c)は、光量調整部材ATc、ATdが図9(a)で述べた状態にあり、かつ減光部材10c、10dが図9(b)で述べた状態にある場合の、走査露光による基板22上のオーバーラップ部Ocの近傍の露光量を示す図である。すなわち、露光量Ec2は図9(a)の露光量Ec1に図9(b)の減光比率Tcを乗じた露光量を表し、露光量Ed2は図9(a)の露光量Ed1に図9(b)の減光比率Tdを乗じた露光量を表わす。また、露光量ET2は、露光量Ec2と露光量Ed2との和である。
【0066】
非オーバーラップ部Sdの露光量は、光量調整部材ATdの調光量=1と、減光部材10dの減光比率Td(0.64)との積であり、0.64となる。一方、非オーバーラップ部Scの露光量は、光量調整部材ATcの調光量=0.68と、減光部材10cの減光比率Tc(0.94)との積であり、同じく0.64となる。従って、非オーバーラップ部Sdの露光量と非オーバーラップ部Scの露光量は等しい。
【0067】
なお、図9(c)に示したとおり、露光量ET2は、オーバーラップ部Ocにおいて、非オーバーラップ部Sc、Sdよりも多く、かつ、オーバーラップ部Ocの+Y側(左側)において、オーバーラップ部Ocの-Y側(右側)よりも多くなる。
すなわち、オーバーラップ部Ocにおいて露光量ET2を、オーバーラップ部Ocの中心(Y=0)に対して、非対称な分布とすることができる。その結果、露光量ET2は、図7(d)で示した実効感光量EEのY方向の分布において、オーバーラップ部Ocの+Y側(左側)が、オーバーラップ部Ocの-Y側(右側)よりも低い状態とは、反転した状態となる。オーバーラップ部Oa~Odの露光量をそれぞれの中心に対して非対称な量とすることにより、非加算性感光材料の非加算特性を相殺することができる。
従って、第1実施形態の露光装置100においては、光量調整部材ATc、ATdと減光部材10c、10dとを併用することにより、非加算性感光材料を用いてパターンの露光転写を行う際に生じる、オーバーラップ部の線幅および膜厚の変化を防止することができる。
【0068】
図10は、光量調整部材ATa~ATeと減光部材10c~10eとを備えた第1実施形態の露光装置100において、非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合の基板22上の全面における結果を説明する図である。
図10(a)は、図6(a)と同様に、基板22上の各露光視野PIa~PIeを示す。
【0069】
図10(b)は、図6(c)と同様に、X方向への走査露光により基板22上に露光される露光量Eを示すグラフである。
減光部材10a~10eがフライアイレンズ11a~11eの入射面内に挿入されているため、各走査露光視野SIa~SIeの1つにより露光された非オーバーラップ部Sa~Seの露光量E2は、各走査露光視野SIa~SIeの2つがオーバーラップして露光されたオーバーラップ部Oa~OdのY方向の位置のうち露光量が最も多い露光量E3と比較して少ない。
また、光量調整部材ATa~ATeと減光部材10c~10eとにより、オーバーラップ部Oa~Odの露光量は、それぞれのY方向の位置の中心に対して非対称な分布となっている。
【0070】
ここで、第1列の光量調整部材ATa、ATeの調光量、および第1列の減光部材10a、10eによる減光比率は、上述の光量調整部材ATcの調光量、および減光部材10cによる減光比率とそれぞれ同じ値に設定されている。一方、第2列の光量調整部材ATbの調光量、および第2列の減光部材10bによる減光比率は、上述の光量調整部材ATdの調光量、および減光部材10dによる減光比率とそれぞれ同じ値に設定されている。 従って、オーバーラップ部Oaの露光量およその非対称性は、オーバーラップ部Ocの露光量およびその非対称性と同様になる。
【0071】
なお、オーバーラップ部Ob、Odでは、それぞれの+Y側の露光視野PIc、PIeによる露光が、それぞれの-Y側の露光視野PIb、PIdによる露光よりも先に行われる。これに合わせて、オーバーラップ部Ob、Odの露光量の非対称性は、オーバーラップ部Oa、Ocの露光量の非対称性がY方向に反転したもの(中心より-Y側が、中心より+Y側より多い)であるため、オーバーラップ部Ob、Odにおいても線幅および膜厚の変化を防止することができる。
【0072】
図10(c)は、図10(b)に示した露光量により、上述の非加算性感光材料に生じる実効感光量EEを示すグラフである。非オーバーラップ部Sa~Seの露光量E2を、オーバーラップ部Oa~Odの露光量E3に比べて低減し、かつオーバーラップ部Oa~Odの露光量をそれぞれの中心に対して非対称な量とすることにより、非加算性感光材料の非加算特性が相殺され、実効感光量EEをほぼ一定の値EE2とすることができる。
これにより、非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合であっても、オーバーラップ部Oa~Odと非オーバーラップ部Sa~Se部との間での、転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止することができる。
【0073】
なお、上述の図7図9図10を参照した説明は、全て基板22を投影光学系19a~19eに対して+X方向に走査して露光する場合を前提とした説明である。しかし、基板22を投影光学系19a~19eに対して-X方向に走査して露光する場合には、基板22上の各オーバーラップ部Oa~Odにおける露光順も上述とは逆になる。すなわち、オーバーラップ部Oa、Ocにおいては、それぞれの+Y側の露光視野PIb、PIdによる露光が、それぞれの-Y側の露光視野PIa、PIcによる露光よりも先に行われるこことなる。また、オーバーラップ部Ob、Odにおいては、それぞれの-Y側の露光視野PIb、PIdによる露光が、それぞれの+Y側の露光視野PIc、PIeによる露光よりも先に行われるこことなる。
【0074】
従って、基板22を投影光学系19a~19eに対して-X方向に走査して露光する場合には、各オーバーラップ部Oa~Odの露光量の分布の非対称性は、上述の+X方向に走査して露光する場合に対して、それぞれY方向に反転していることが好ましい。これは、基板22を+X方向に走査して露光する場合と-X方向に走査して露光する場合とで、第1列の光量調整部材ATa、ATc、ATeの調光量および減光部材10a、10c、10eの減光比率と、第2列の光量調整部材ATb、ATdの調光量と減光部材10b、10dの減光比率とを,相互に入れ替えることで実現できる。
従って、制御部50は、露光時の基板ステージ27およびマスクステージ16の走査方向に応じて、光量調整部材ATa~ATeおよび減光部材10a~10eの位置を制御することが望ましい。
【0075】
非加算性感光材料の非加算特性は、個々の非加算性感光材料に固有であるともに、基板22上に非加算性感光材料を形成してからの時間等によっても変動する。従って、露光対象である非加算性感光材料の非加算特性を正確に相殺するためには、オーバーラップ部Oa~Odにおける露光量の分布を、非加算特性に合わせて正確に制御する必要がある。
【0076】
第1実施形態の露光装置100では、図8に示したとおり、Y方向の幅が異なる2種類の減光部材10c1a、10c1b、および減光部材10c2a、10c2bを備えている。そして、制御部50からの制御信号SigC1、SigC2により、幅W1の減光部材10c1a、10c1bと、幅W2の減光部材10c2a、10c2bとのX方向の位置(フライアイレンズ11cへの挿入量)を制御する。これにより、オーバーラップ部Oa~Odにおける露光量の分布を、正確に制御することができる。
【0077】
ただし、露光対象となる非加算性感光材料の非加算特性が比較的共通している場合には、Y方向の幅が異なる2種類の減光部材を用いる必要性は低くなるため、Y方向の幅が1種類である減光部材10c1a、10c1bのみを使用すれば十分である場合もある。
【0078】
なお、減光部材10cを、照明光学系ILc、ILdの光軸IXcの方向(光軸方向)に移動することによっても、フライアイレンズ11cの入射面における減光部材10cのXY方向のエッジの半影ボケの量を変更することができる。従って、照明光学系ILc、ILd内の減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bのZ方向位置(光軸方向の位置)をそれぞれ制御することによっても、オーバーラップ部Ocにおける露光量の分布を調整することができる。なお、照明光学系ILc、ILd内の減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bのZ方向位置(光軸方向の位置)の一方のみを制御、もしくは一方の制御量(Z方向への移動距離を変更)と他方の制御量とを異ならせることで、一方の半影ボケの量が他方の半影ボケの量よりも大きくなり、オーバーラップ部Ocにおける露光量の分布を非対称とすることができる。この場合、光量調整部材ATを省く装置構成としてもよい。第1実施形態で示した方法と、減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bのZ方向位置の位置を調整する方法とを併用してもよい。また照明光学系ごとに、オーバーラップ部Ocにおける露光量の分布を非対称とする方法を変更してもよい。減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bの光軸方向の位置は、制御部50からの制御信号SigC、SigDにより、それぞれ制御することができる。
【0079】
なお、時間的に分割して行う露光に対する非加算性感光材料の実効感光量と積算露光量との関係は、それぞれの非加算性感光材料により異なる。従って、特定の非加算性感光材料に対して実際の露光を行う前に、例えば、減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bの挿入量(X方向の位置)を異なる数段階に設定した複数の条件でテスト露光を行うと良い。そして、テスト露光の結果から減光部材10c1a、10c1bおよび減光部材10c2a、10c2bの最適な挿入量を決定すると良い。
また、減光部材10cの挿入量の決定に際しては、基板ステージ27上に設けた照度センサ26を使用して、露光視野PIc内の中心領域PIcc、左端領域PIcl、および右端領域PIcrの照度を計測しながら行うと良い。
【0080】
なお、図8に示した幅W1の2本の減光部材10c1a、10c1bの+X方向の端部は、それぞれフライアイレンズ11cのレンズエレメント110のX方向の配列のピッチPXの半分だけずれている。幅W2の2本の減光部材10c2a、10c2bについても同様である。上述のとおり、各レンズエレメント110中には、露光視野PIcに対応する露光視野対応領域IPIcwが存在するが、露光視野対応領域IPIcwは、レンズエレメント110のX方向の全面に渡って広がっているわけではない。すなわち、レンズエレメント110のX方向の両端部は、基板22上の露光視野PIcとは対応せず、投影光学系19c内の視野絞り21c上に投影され、視野絞り21cにより遮光される部分である。
【0081】
従って、例えば減光部材10c1aの+X方向の端部が、レンズエレメント110のX方向の両端部の近傍にある場合には、減光部材10c1aをX方向に移動しても、基板22上の露光量を変更することができない。
そこで、第1実施形態においては、2本の減光部材10c1a、10c1b、および2本の減光部材10c2a、10c2bのそれぞれの+X方向の端部を、レンズエレメント110のX方向の配列のピッチPXの半分だけずらしている。
【0082】
このような配置により、2本の減光部材10c1a、10c1bのうちの一方の+X方向端部が、レンズエレメント110のX方向の両端部の近傍にある場合には、他方の+X方向端部はレンズエレメント110のX方向の中心の近傍に配置される。よって、2本の減光部材10c1a、10c1bをともにX方向に移動することにより、常に基板22上の露光量を変更することができる。なお、2本の減光部材10c1a、10c1bをそれぞれX方向に独立して移動させられる構成としても良い。2本の減光部材10c2a、10c2bについても同様である。
【0083】
なお、減光部材10c1a、10c1bは上述の2本に限られるわけではなく3本以上であって、それぞれが異なるレンズブロックに配置されていてもよい。この場合にも、減光部材の本数がm本(mは2以上の自然数)であれば、各減光部材の+X方向の端部は、ピッチPXに対して、PX/mだけずれて設定されていることが好ましい。
【0084】
なお、減光部材10c(10c1a、10c1b、10c2a、10c2b)は、フライアイレンズ11cの入射面からZ方向に所定距離だけ離れた位置に配置されるとしたが、これに限定されない。減光部材10cは、フライアイレンズ11cの入射面、つまり基板22の上面に対する共役面CPに設けられても良い。減光部材10cが照明光を完全に遮光するものであると、それを共役面CPに一致して配置した場合には、オーバーラップ部Oa~Odの露光量と、非オーバーラップ部Sa~Se部の露光量とが不連続的に変化してしまう恐れがある。従って、この場合には、減光部材10cは、形状を変形させたり、フィルタのようなY方向の位置に応じて照明光の遮光率が連続的に変化させたりするものであると良い。
【0085】
(変形例1)
図11(a)は、変形例1の減光部材10c(10c3a、10c4a、10c3b、10c4b)および減光部材保持部9c(9c3、9c4)を、インプットレンズ8c側から見た図(上面図)である。図11(b)は、変形例1の減光部材10cおよび減光部材保持部9cの側面図である。以下では、上述の第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付すとともに、以下では相違点のみを説明する。
【0086】
変形例1の減光部材10cは、Y方向の端部がZ方向(照明光学系IL9の光軸IXcの方向)に重なって配置されている2つの減光部材10c3a、10c4aの組と、2つの減光部材10c3b、10c4bの組とを備えている。減光部材10c3aと減光部材10c3bは、スライダー9c30を介して、減光部材保持部9c3により、X方向、Z方向およびY方向に移動自在に保持されている。減光部材10c4aと減光部材10c4bも同様に、スライダー9c40を介して、減光部材保持部9c4により、X方向、Z方向およびY方向に移動自在に保持されている。
【0087】
図11(b)に示すように、2つの減光部材10c3a、10c4aの組の全体としてのY方向の幅W3は、それぞれを保持するスライダー9c30が+Y方向に移動し、スライダー9c40が-Y方向に移動すると増大する。一方、幅W3は、スライダー9c30が-Y方向に移動し、スライダー9c40が+Y方向に移動すると減少する。
従って、変形例1の減光部材10cにおいては、そのY方向の実質的な幅W3(実効幅)を可変とすることができる。これにより、オーバーラップ部Oa~Odにおける露光量の分布を制御することができる。この幅W3は、制御部50からの制御信号SigC3、SigC4が減光部材保持部9c3および減光部材保持部9c4を制御することにより、設定することができる。
【0088】
変形例1においても、制御部50は、スライダー9c30およびスライダー9c40の位置を介して、減光部材10cをZ方向に制御することもできる。
なお、制御部50は、減光部材10c3aと減光部材10c4aの+X方向の端部の位置が一致するように、および、減光部材10c3bと減光部材10c4bの+X方向の端部の位置が一致するように、スライダー9c30およびスライダー9c40のX方向の位置を制御する。
【0089】
以上の第1実施形態および変形例1においては、露光装置100は、5つの投影光学系19a~19eを有するものとしたが、投影光学系の本数は5つに限られるわけではなく、3つや8つなど、いくつであってもよい。
また、以上の第1実施形態および変形例1においては、複数の投影光学系19a~19eを有し、1度のX方向の走査により、各投影光学系が形成する複数の走査露光視野SIa~SIeが相互にY方向にオーバーラップするとしている。
【0090】
しかし、投影光学系19は1つであり、基板22のX方向への走査露光を、基板22およびマスク15をY方向に移動させつつ複数回行い、各走査露光により形成される複数の露光視野を相互にY方向にオーバーラップさせてもよい。以下、このような構成の露光装置を、スキャンアンドスティッチ露光装置と呼ぶ。
【0091】
スキャンアンドスティッチ露光装置においても、1つの投影光学系19に対応する照明光学系ILは、上述の照明光学系ILa~ILeと同様の構成を備えることが望ましい。 ただし、スキャンアンドスティッチ露光装置においては、例えば、走査露光時の基板ステージ27およびマスクステージ16の走査速度を変更することにより、走査露光視野内の露光量を一括して増減することができる。従って、上述の光量調整部材ATを照明光学系IL中に設ける代わりに、制御部50は、基板ステージ27およびマスクステージ16の走査速度を制御することによって、各走査露光視野内の露光量を一括して増減してもよい。
【0092】
また、スキャンアンドスティッチ露光装置においては、基板22のX方向の走査により形成される露光視野のうち、例えば+Y方向の端部は過去の走査露光により露光された露光視野とオーバーラップし、+Y方向の端部は今後の走査露光により露光される露光視野とオーバーラップする。従って、走査露光視野の非走査方向(Y方向)の両端の近傍において、露光量を異ならせることが必要になる場合がある。
【0093】
従って、図8に示した照度変更部材10cおよび減光部材保持部9cをスキャンアンドスティッチ露光装置に採用する場合には、スライダー9c10、9c20は、X方向およびZ方向だけでなく、Y方向にも可動であることが好ましい。制御部50からの制御信号Sig2C1、Sig2C2により照度変更部材10c(10c1a、10c1b、10c2a、10c2b)をY方向に移動させることにより、走査露光視野の非走査方向(Y方向)の両端の近傍の光量を変化させることができる。
【0094】
なお、上述の第1実施形態のように複数の投影光学系19a~19eを有する装置は、一度の走査露光で基板22上の、より多くの面積を露光することができ、処理能力に優れている。
【0095】
以上の第1実施形態および各変形例においては、複数の投影光学系19a~19eは全屈折光学系から成るとしたが、これに限らず、反射屈折光学系や全反射光学系を採用することもできる。
また、以上の第1実施形態および各変形例においては、露光視野PIa~PIeの形状は台形であるとしたが、これは台形に限られるものではなく、例えば、その上記中心部分に相当する部分の形状が円弧であり、円弧の両端に三角形の右端領域および左端領域を備える視野であってもよい。
【0096】
以上の第1実施形態および各変形例においては、各投影光学系19a~19eの光軸PAXa~PAXe、および各照明光学系ILa~ILeの光軸IXa~IXeは、基本的にはZ方向と平行に設定されているものとしている。ただし、いずれかの光学系の中に折り曲げミラーが採用されている場合には、光軸の向きはZ方向とは並行ではなくなる。
また、いずれかの光学系の中に折り曲げミラーが採用されている場合には、減光部材10a~10eの移動方向も基板22の走査方向(X方向)とは異なる方向になる。しかし、この場合であっても、減光部材10a~10eは、折り曲げミラーを含めた基板22とフライアイレンズ11a~11eの共役関係に基づいて基板22の走査方向に光学的に対応する方向(第1方向)に移動自在とすれば良い。さらに、減光部材10a~10eを、照明光学系ILの光軸IXの方向と、第1方向および光軸IXの方向と直交する方向との、計3方向に移動自在とすれば良い。
【0097】
また、以上の実施形態においては、各投影光学系19a~19eは、X方向に第1列の投影光学系19Fおよび第2列の投影光学系19Rの2列の光学系が配置されているものとしたが、これは2列に限られるものではなく、X方向に3列以上の光学系が配置されていてもよい。
【0098】
オプチカルインテグレーターとして、上述のフライアイレンズ11に代えて、ロッドインテグレーターを採用することもできる。ロッドインテグレーターを採用した場合には、基板22およびマスク15との共役面CPは、ロッドインテグレーターの射出側(マスク15の側)になるので、減光部材10もロッドインテグレーターの射出側の近傍に配置する。
そして、ロッドインテグレーターの射出面のX側の一端の近傍を部分的に減光する構成とする。
【0099】
減光部材10a~10eを照明光学系ILa~ILe内に配置する代わりに、投影光学系19a~19eの中間像面20近傍に配置してもよい。この場合にも、減光部材は、中間像面20近傍において、露光視野PIa~PIeの中心領域PIac~PIecに対応する部分を減光する構成とする。
【0100】
投影光学系19a~19e内に視野絞り21a~21eを配置する代わりに、照明光学系ILa~ILeの内部に中間像面(マスク15に対する共役面)を設け、照明光学系ILa~ILe内の中間像面に基板22上の露光視野PIa~PIeの形状を規定する視野絞り設けてもよい。
さらに、照明光学系ILa~ILe内の絞りの形状を変形し、マスク15上および基板22上のオーバーラップ領域Oa~OdにおけるY方向の露光量分布が、非対称となるようにしてもよい。すなわち、照明光学系ILa~ILe内の絞りの形状を、これに対応する露光視野PIa~PIeの左端領域PIal~PIdlおよび右端領域PIbr~PIerをY方向の各微小区間でX方向に積算した値が、各オーバーラップ領域Oa~Odの中心CLに対して、非対称になるようにしてもよい。
【0101】
光量調整部材ATは、上述の第1実施形態に示した構成に限定されない。光量調整部材ATは、照明光の一部を遮光し一部を透過するフィルタであってもよい。フィルタは、X方向の位置に応じて、照明光の遮光量を増減するように形成されているとよい。
【0102】
以上の実施形態においては、投影光学系19a~19eおよび照明光学系ILa~ILeは固定され、基板22が基板ステージ27により移動するものとしたが、代わりに、投影光学系19a~19eおよび照明光学系ILa~ILeが基板ステージ上に設けられ、基板22に対して走査する構成としてもよい。
また、マスク15は、ガラス基板上にパターンが形成されたマスクに限らず、デジタルマルチミラーデバイスや液晶デバイスからなる可変整形マスクであってもよい。
【0103】
露光装置100の用途としては、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置であり、例えば有機EL(Electro―Luminescence)パネル製造用の露光装置にも適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。
露光装置100により露光された基板(ガラスプレート等)は、不図示の現像装置により現像処理され、必要に応じて、露光および現像処理により形成された感光材料のパターンに基づいてエッチング加工等が行われる。
【0104】
また、露光対象はガラス基板に限られず、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。また、露光対象の基板が可撓性を有するシート状である場合には、該シートがロール状に形成されていても良い。
【0105】
上述した第1実施形態および変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(1)第1実施形態または各変形例の露光装置100は、被露光基板22を走査方向(X方向)へ移動させながら第1時間に被露光基板22上の第1露光領域(走査露光視野SIa、SIc、SIe)を露光する第1露光と、被露光基板22を走査方向(X方向)へ移動させながら第1時間とは異なる第2時間に被露光基板22上の第2露光領域(走査露光視野SIb、SId)を露光する第2露光とが行われる露光装置において、照明光を供給する照明光学系ILa~ILeと、投影光学系19a~19eと、走査方向に直交する非走査方向(Y方向)に関して、第1露光領域および第2露光領域のそれぞれの一部が重複する第2領域(オーバーラップ部Oa~Od)における露光量分布が、第2領域の中心CLに対して非対称な分布となるように設定する設定部材10a~10eと、を備えている。
この構成により、露光が時間的に複数に分割して行われた場合に時間的に連続して行われた場合に比べて実効感光量が低下する非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合であっても、第2領域(オーバーラップ部Oa~Od)内での転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止することができる。
【0106】
(2)第1実施形態または変形例の露光装置は、照明光を供給する照明光学系ILa~ILeと、投影光学系19a~19eと、被露光基板22上に所定パターンが露光されるよう、被露光基板22を投影光学系19a~19eに対して走査方向(X方向)に相対的に移動させる基板ステージ27と、を備えている。さらに、露光において、投影光学系19a~19eの走査露光視野SIa~SIeにより時間的に連続的に露光される前記被露光基板22上の第1領域(非オーバーラップ部Sa~Se)における露光量を、走査露光視野SIa~SIeにより時間的に離散的に露光される被露光基板22上の第2領域(オーバーラップ部Oa~Od)における露光量に比べて少なく設定し、かつ、走査方向と直交する方向(Y方向)における第2領域(オーバーラップ部Oa~Od)の露光量分布が、第2領域の中心CLに対して非対称な分布となるように設定する照度変更部材10a~10eとを備えている。
この構成により、露光が時間的に複数に分割して行われた場合に時間的に連続して行われた場合に比べて実効感光量が低下する非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合であっても、第2領域(オーバーラップ部Oa~Od)と、第1領域(非オーバーラップ部Sa~Se部)との間での、転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止することができる。また、第2領域(オーバーラップ部Oa~Od)内での転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止することができる。
【0107】
(3)照度変更部材10a~10eを照明光学系ILa~ILeの中の被露光基板22の共役面CPまたは前記共役面CPの近傍に配置することで、第1領域(非オーバーラップ部Sa~Se)の露光量を、正確に制御することができる。
(4)照度変更部材10a~10eの位置を制御する制御部50をさらに備え、照明光学系ILa~ILeはオプチカルインテグレーター11a~11eを有し、オプチカルインテグレーター11a~11eは、照明光の入射面が投影光学系19a~19eの走査露光視野SIa~SIeに対して共役面CPとなる位置に設けられた構成とすることもできる。さらに、制御部50が、オプチカルインテグレーター11a~11eへ入射される照明光の照度を変更するように、照度変更部材10a~10eをオプチカルインテグレーター11a~11eに対して、照明光学系ILa~ILeの光軸方向と略直交する方向であって走査方向に光学的に対応する第1方向へ移動させることにより、オーバーラップ部Oa~Odにおける露光量の分布を、正確に制御することができる。
【0108】
(5)制御部50が、照度変更部材10a~10eの、X方向(第1方向)および照明光学系ILa~ILeの光軸IXa~IXe方向とそれぞれ直交するY方向(第2方向)の実効幅を制御する構成とすることで、第2領域(オーバーラップ部Oa~Od)における露光量の分布を、一層正確に制御することができる。
【0109】
上述では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0110】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特願2019-069147号(2019年3月29日出願)
【符号の説明】
【0111】
100:露光装置、1:光源、ILa~ILe:照明光学系、ATa~ATe:光量調整部材、10a~10e:減光部材(照度変更部材)、11a~11e:フライアイレンズ、12a~12e:コンデンサーレンズ、15:マスク、MIa~MIe:照明視野、19a~19e:投影光学系、21a~21e:視野絞り、22:基板、SIa~SIe:走査露光視野、Sa~Se:非オーバーラップ部(第1領域)、Oa~Od:オーバーラップ部(第2領域)、50:制御部
図1
図2
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図11