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  • 特許-低誘電積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】低誘電積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/085 20060101AFI20241106BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20241106BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B32B15/085 Z
B32B7/12
B32B15/092
B32B27/18 B
B32B27/20 Z
B32B27/32 101
B32B27/38
H05K3/38 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021519686
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2020044900
(87)【国際公開番号】W WO2021112134
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2019219824
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】入澤 隼人
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/077912(WO,A1)
【文献】特開2009-084507(JP,A)
【文献】国際公開第2014/148155(WO,A1)
【文献】特開2019-127501(JP,A)
【文献】特開2006-045388(JP,A)
【文献】特開平10-242607(JP,A)
【文献】特開2016-192397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
H05K3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材、接着剤層、樹脂基材がこの順で積層された積層体であって、
接着剤層にフィラー(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)およびエポキシ樹脂(C)の硬化物を含有し、
前記フィラー(A)の含有量は、酸変性ポリオレフィン(B)100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であり、
前記フィラー(A)の長径は15nm以上5μm以下であり、
前記積層体の表面に垂直な方向における前記接着剤層の断面において、中間点から前記金属基材の表面に近い方の領域に含まれる前記フィラー(A)の個数a1が、中間点から前記樹脂基材の表面に近い方の領域に含まれる前記フィラー(A)の個数b1よりも多いものである積層体。
【請求項2】
前記a1とb1の比率がa1/b1=100未満/0超~50超/50未満である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記フィラー(A)がリン含有難燃フィラー、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化チタンおよびカーボンブラックからなる群より選ばれた1種以上である請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
さらに前記接着剤層の硬化物成分に数平均分子量3000以下のオリゴフェニレンエーテル(D)を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
さらに前記接着剤層の硬化物成分にポリカルボジイミド(E)を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記接着剤層の1GHzにおける比誘電率(εc)が3.0以下、誘電正接(tanδ)が0.02以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体を構成要素として含むプリント配線板
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電特性を有する積層体に関する。より詳しくは、フレキシブルプリント配線板、カバーレイフィルム、ボンディングシートに用いることのできる積層体に関する。
【0002】
フレキシブルプリント配線板(FPC)は、優れた屈曲性を有することから、パソコンやスマートフォンなどの多機能化、小型化に対応することができ、そのため狭く複雑な内部に電子回路基板を組み込むために多く使用されている。近年、電子機器の小型化、軽量化、高密度化、高出力化が進み、これらの流行から配線板(電子回路基板)の性能に対する要求がますます高度なものとなっている。特にFPCにおける伝送信号の高速化に伴い、信号の高周波化が進んでおり、これに伴い、FPCには高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の要求が高まっている。特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂と、カルボジイミド樹脂と、多官能エポキシ樹脂と、フィラーとを含む熱硬化性接着剤組成物からなる熱硬化性接着剤層を有するカバーレイフィルム(積層体)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-127501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のカバーレイフィルム(積層体)は、フィラーを含有させているものの、接着剤層におけるフィラーの分散性を考慮していないため、積層体の線膨張性が十分でなかった。本発明は、上記のような問題に着目してなされたものであって、その目的は、接着剤層の接着性、誘電特性および線膨張性が優れた積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
金属基材、接着剤層、樹脂基材がこの順で積層された積層体であって、
接着剤層にフィラー(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)およびエポキシ樹脂(C)の硬化物を含有し、
前記積層体の表面に垂直な方向における前記接着剤層の断面において、中間点から前記金属基材の表面に近い方の領域に含まれる前記フィラー(A)の個数a1が、中間点から前記樹脂基材の表面に近い方の領域に含まれる前記フィラー(A)の個数b1よりも多いものである積層体。
【0006】
前記a1とb1の比率は、a1/b1=100未満/0超~50超/50未満であることが好ましい。
【0007】
前記フィラー(A)は、リン含有難燃フィラー、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化チタンおよびカーボンブラックからなる群より選ばれた1種以上であることが好ましい。さらに前記接着剤層の硬化物成分に数平均分子量3000以下のオリゴフェニレンエーテル(D)および/またはポリカルボジイミド(E)を含有することが好ましい。
【0008】
前記接着剤層の1GHzにおける比誘電率(εc)が3.0以下、誘電正接(tanδ)が0.02以下であることが好ましい。
【0009】
前記積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体は、接着剤層におけるフィラーの分散性を適切に設定しているため、接着剤層の接着性、誘電特性に優れ、かつ線膨張性が優れているため、寸法安定性のよい積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、積層体の表面に垂直な方向における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0013】
<積層体>
本発明の積層体は、金属基材と接着剤層と樹脂基材とがこの順で積層されてなるものである。金属基材と接着剤層は直接積層されていても良く、その間に別の基材(層)が積層されていても良い。金属基材と接着剤層は直接積層されていることが好ましい。また、接着剤層と樹脂基材は直接積層されていても良く、その間に別の基材(層)が積層されていても良い。接着剤層と樹脂基材は直接積層されていることが好ましい。すなわち、金属基材と接着剤層と樹脂基材が直接積層されている(金属基材/接着剤層/樹脂基材の3層)ことが好ましい。
【0014】
また、積層体にさらに接着剤層を介して別の基材が積層されていても良い。例えば、接着剤層/金属基材/接着剤層/樹脂基材の4層、金属基材/接着剤層/樹脂基材/接着剤層の4層、接着剤層/金属基材/接着剤層/樹脂基材/接着剤層の5層などが挙げられる。
【0015】
積層体の例示を図1に示す。図1の積層体10は、金属基材1、接着剤層3および樹脂基材2とが、この順で積層されたものであり、接着剤層3は金属基材の表面に近い方の領域3a(以下、接着剤層3aともいう。)と樹脂基材の表面に近い方の領域3b(以下、接着剤層3bともいう。)を含んでいる。
【0016】
積層体の作製方法は特に限定されないが、例えば以下の方法により行うことができる。まず金属基材1の表面に、フィラー(A)、酸変性ポリオレフィン(B)およびエポキシ樹脂(C)を含有する接着剤組成物aを塗布し、乾燥させて、接着剤層3aを作製する。次いでその表面に接着剤組成物aよりもフィラー(A)の含有量が少ない接着剤組成物bを塗布し、乾燥させて、接着剤層3bを作製する。次いで樹脂基材2を積層し、加熱処理(硬化)させて積層体を得ることができる。また反対に、樹脂基材2の表面に接着剤組成物bを塗布し、乾燥させて接着剤層3bを作製した後に、接着剤組成物aを塗布、乾燥させて接着剤層3aを作製し、次いで金属基材1を積層し、加熱処理(硬化)することでも得ることができる。
【0017】
積層体をプリント配線板の構成要素として使用する場合は、導体回路を形成しておくことが好ましい。
【0018】
<接着剤層>
本発明の接着剤層は、フィラー(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)およびエポキシ樹脂(C)の硬化物を含有し、接着剤層3aの前記フィラー(A)の個数a1が、接着剤層3bの前記フィラー(A)の個数b1よりも多いものである。
【0019】
接着剤層3aの個数a1と接着剤層3bの個数b1の比率(a1/b1)は、100未満/0超~50超/50未満であることが好ましい。線膨張性が良好となることから、より好ましくは99/1~51/49であり、さらに好ましくは98/2~52/48であり、よりさらに好ましくは97/3~53/47であり、特に好ましくは96/4~54/46であり、最も好ましくは95/5~55/45である。
【0020】
接着剤層における接着剤層3aと接着剤層3bの領域は、積層体の表面に垂直な方向の長さ(接着剤層3の膜厚)の中間点から金属基材1側を接着剤層3a、樹脂基材2側を3bとする。ここで中間点とは、接着剤層において、金属基材1に接する面と樹脂基材2に接する面の中間の位置であり、接着剤層の膜厚を100%としたとき、金属基材1から50%の位置であり、樹脂基材2からも50%の位置をいう。すなわち、接着剤層3aの領域は、接着剤層3の金属基材1から50%以内の範囲である。また、接着剤層3bの領域は、接着剤層3の樹脂基材2から50%以内の範囲である。なお、接着剤層3aと接着剤層3bの境界面は明確になっていても良く、明確にならず一体化していても良い。
【0021】
接着剤層の膜厚(厚み)は、接着強度が良好となることから、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上であり、特に好ましくは20μm以上である。また、接着剤層に柔軟性を付与することができることから、200μm以下であることが好ましく、より好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは50μmである。
【0022】
フィラー(A)の個数は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。具体的には、積層体の表面に垂直な方向に切断し、その切断面における接着剤層3aの領域と接着剤層3bの領域に含まれるフィラー(A)の数を目視でカウントする。接着剤層に含有するフィラー(A)の個数は、樹脂基材または金属基材に塗布する接着剤組成物に含まれるフィラー(A)の含有量に比例する。なお、長径が15nm未満のフィラー(A)は線膨張性の影響が微弱なものであるため、カウントしないものとする。
【0023】
<フィラー(A)>
本発明に用いられるフィラー(A)(以下、単に(A)成分ともいう。)は、接着剤層内での分散性を適切に設定した際に、低線膨張性の効果を奏するものであれば特に限定されない。中でもリン含有難燃フィラー、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化チタンおよびカーボンブラックからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0024】
リン含有難燃フィラーとしては、構造中にリン原子を含むフィラーであれば特に限定されない。ホスフィン酸誘導体またはホスファゼン化合物が挙げられ、ホスフィン酸誘導体が好ましく、フェナントレン型のホスフィン酸誘導体がより好ましい。フェナントレン型のホスフィン酸誘導体としては、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10ホスファフェナントレン-10-オキシド(三光(株)、商品名:HCA)、10-ベンジル-10-ヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(三光(株)、商品名:BCA)、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(三光(株)、商品名:HCA-HQ)、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイドの微粉砕品(三光(株)、商品名:HCA-HQ-HS)等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上併用することができる。中でもHCA-HQ-HSが好ましい。
【0025】
水酸化アルミニウムの市販品としては、昭和電工(株)製のハイジライト(登録商標)H42M、ハイジライトH43M、ハイジライトH42STV、日本軽金属(株)製のB1403、B1403T等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上併用することができる。中でも昭和電工(株)製のハイジライトH42Mが好ましい。
【0026】
シリカの市販品としては、アドマッテクス(株)製のS0-C1、S0-C2、S0-C3、S0-C4、S0-C5、S0-C6、デンカ(株)製のFB-3SDC等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上併用することができる。中でもデンカ(株)製のFB-3SDCが好ましい。
【0027】
酸化チタンの市販品としては、石原産業(株)製のTIPAQUE(登録商標)CR-60、テイカ(株)製のJR-403等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上併用することができる。中でもテイカ(株)製のJR-403が好ましい。
【0028】
カーボンブラックの市販品としては、三菱ケミカル(株)製の良流動性#MA100、汎用カラー#44等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上併用することができる。中でも良流動性#MA100が好ましい。
【0029】
フィラー(A)の含有量は、酸変性ポリオレフィン(B)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましい。線膨張性が良好となることから、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上である。また、接着性が良好となることから、50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは40質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0030】
フィラー(A)の形状は特に限定されないが、球状フィラー、針状フィラー、棒状フィラー、繊維状フィラー、扁平状フィラー、鱗片状フィラー、及び板状フィラーよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。このうち、球状フィラーを用いると応力集中の偏在を低減でき、更に熱膨張時の歪みも低減され易くなる。また、球状フィラー、針状フィラー、棒状フィラー、繊維状フィラー、扁平状フィラー、鱗片状フィラー、及び板状フィラーよりなる群から選択されれば、1種でもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
フィラー(A)は、長径が15nm以上であることが好ましい。長径が15nm以上であることにより、線膨張性が向上し易くなる。そのためフィラー(A)の長径は、より好ましくは20nm以上であり、更に好ましくは50nm以上であり、更により好ましくは0.1μm以上である。一方、フィラー(A)の長径の上限は特に限定されないが、例えば、50μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよく、3μm以下であってもよい。
【0032】
<酸変性ポリオレフィン(B)>
本発明で用いる酸変性ポリオレフィン(B)(以下、単に(B)成分ともいう。)は限定的ではないが、ポリオレフィン樹脂にα,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン等に例示されるオレフィンモノマーの単独重合、もしくはその他のモノマーとの共重合、および得られた重合体の水素化物やハロゲン化物など、炭化水素骨格を主体とする重合体を指す。すわなち、酸変性ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン及びプロピレン-α-オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものが好ましい。
【0033】
プロピレン-α-オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα-オレフィンを共重合したものである。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、酢酸ビニルなどを1種又は数種用いるこができる。これらのα-オレフィンの中では、エチレン、1-ブテンが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体のプロピレン成分とα-オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0034】
α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。具体的には、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等が挙げられ、これら酸変性ポリオレフィンを1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
酸変性ポリオレフィン(B)の酸価は、耐熱性および樹脂基材や金属基材との接着性の観点から、下限は5mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは6mgKOH/g以上であり、さらに好ましくは7mgKOH/g以上である。前記下限値以上とすることでエポキシ樹脂(C)との相溶性が良好となり、優れた接着強度を発現することができる。また、架橋密度が高くハンダ耐熱性が良好となる。上限は40mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは30mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは20mgKOH/g以下である。前記上限値以下とすることで接着性が良好となる。
【0036】
酸変性ポリオレフィン(B)の数平均分子量(Mn)は、10,000~50,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは15,000~45,000の範囲であり、さらに好ましくは20,000~40000の範囲であり、特に好ましくは22,000~38,000の範囲である。前記下限値以上とすることで凝集力が良好となり、優れた接着性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで流動性に優れ、操作性が良好となる。
【0037】
酸変性ポリオレフィン(B)は、結晶性の酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。本発明でいう結晶性とは、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、-100℃から250℃ まで20℃/分で昇温し、該昇温過程に明確な融解ピークを示すものを指す。
【0038】
酸変性ポリオレフィン(B)の融点(Tm)は、50℃~120℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは60℃~100℃の範囲であり、最も好ましくは70℃~90℃の範囲である。前記下限値以上とすることで結晶由来の凝集力が良好となり、優れた接着性やハンダ耐熱性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで溶液安定性、流動性に優れ、接着時の操作性が良好となる。
【0039】
酸変性ポリオレフィン(B)の融解熱量(ΔH)は、5J/g~60J/gの範囲であることが好ましい。より好ましくは10J/g~50J/gの範囲であり、最も好ましくは20J/g~40J/gの範囲である。前記下限値以上とすることで結晶由来の凝集力が良好となり、優れた接着性やハンダ耐熱性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで溶液安定性、流動性に優れ、接着時の操作性が良好となる。
【0040】
酸変性ポリオレフィン(B)の製造方法としては、特に限定されず、例えばラジカルグラフト反応(すなわち主鎖となるポリマーに対してラジカル種を生成し、そのラジカル種を重合開始点として不飽和カルボン酸および酸無水物をグラフト重合させる反応)、などが挙げられる。
【0041】
ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、有機過酸化物を使用することが好ましい。有機過酸化物としては、特に限定されないが、ジ-tert-ブチルパーオキシフタレート、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類等が挙げられる。
【0042】
<エポキシ樹脂(C)>
本発明で用いるエポキシ樹脂(C)(以下、単に(C)成分ともいう。)としては、分子中にグリシジル基を有するものであれば、特に限定されないが、好ましくは分子中に2個以上のグリシジル基を有するものである。具体的には、特に限定されないが、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、およびエポキシ変性ポリブタジエンからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。好ましくは、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂またはエポキシ変性ポリブタジエンである。より好ましくは、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂またはノボラック型エポキシ樹脂である。
【0043】
エポキシ樹脂(C)の含有量は、酸変性ポリオレフィン(B)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上であり、特に好ましくは2質量部以上である。前記下限値以上とすることで、十分な硬化効果が得られ、優れた接着性およびハンダ耐熱性を発現することができる。また、60質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以下であり、特に好ましくは35質量部以下である。前記上限値以下とすることで、低誘電特性が良好となる。すなわち、上記範囲内とすることで、優れた接着性、ハンダ耐熱性および低誘電特性を有する接着剤層を得ることができる。
【0044】
酸変性ポリオレフィン(B)とエポキシ樹脂(C)との硬化物(以下、単に硬化物ともいう。)は、(B)成分と(C)成分が反応した硬化物をいう。接着剤層全体を100質量%としたとき、硬化物は40質量%以上含有していることが好ましい。接着剤層の強度が向上することから、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、よりさらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは75質量%以上である。
【0045】
(B)成分と(C)成分の硬化条件は、特に限定されないが、100~200℃であることが好ましく、より好ましくは110~180℃であり、さらに好ましくは120~150℃である。また、時間は適宜設定すれば良く、1~10時間程度であることが好ましく、より好ましくは2~8時間であり、さらに好ましくは3~5時間である。
【0046】
接着剤層の硬化成分には、さらに数平均分子量3000以下のオリゴフェニレンエーテル(D)およびポリカルボジイミド(E)を含有していることが好ましい。
【0047】
<オリゴフェニレンエーテル(D)>
本発明で用いるオリゴフェニレンエーテル(D)(以下、単に(D)成分ともいう。)は数平均分子量(Mn)が3000以下のものであり、好ましくは下記一般式(1)で表される構造単位および/または一般式(2)の構造単位を有する化合物を用いることができる。(D)成分を含有することで接着剤層のハンダ耐熱性が良好となる。
【0048】
【化1】
一般式(1)中、R,R,R,Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基であることが好ましい。置換されていてもよいアルキル基の「アルキル基」は、例えば、炭素数が1以上6以下、好ましくは炭素数が1以上3以下の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアルケニル基の「アルケニル基」としては、例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられ、エテニル基または1-プロペニル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアルキニル基の「アルキニル基」としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル(プロパルギル)基、3-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられ、エチニル基、1-プロピニル基または2-プロピニル(プロパルギル)基であることがより好ましい。置換されていてもよいアリール基の「アリール基」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアラルキル基の「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、α-メチルベンジル基、2-ビニルフェネチル基、4-ビニルフェネチル基等が挙げられ、ベンジル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアルコキシ基の「アルコキシ基」は、例えば炭素数が1以上6以下、好ましくは炭素数が1以上3以下の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基である。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、メトキシ基またはエトキシ基であることがより好ましい。上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、及びアルコキシ基が置換されている場合、置換基を1または2以上有していてよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アルケニル基(例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)等が挙げられる。なかでもRおよびRがメチル基であり、RおよびRが水素であることが好ましい。
【0049】
【化2】
一般式(2)中、R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17,R18は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基であることが好ましい。なお、各置換基の定義は、前記のとおりである。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基であることが好ましい。なかでもR13、R14、R17およびR18がメチル基であり、R11、R12、R15およびR16が水素であることが好ましい。また、-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、または酸素であることが好ましい。Aの炭素数は1以上15以下であることがより好ましく、さらに好ましくは2以上10以下である。また、Aの2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基等が挙げられ、なかでもフェニレン基であることが好ましい。特に好ましくは酸素である。
【0050】
(D)成分は、一部又は全部を、ビニルベンジル基等のエチレン性不飽和基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、及びシリル基等で官能基化された変性ポリフェニレンエーテルとしてもよい。さらに両末端が、ヒドロキシ基、エポキシ基、またはエチレン性不飽和基を有することが好ましい。エチレン性不飽和基としては、エテニル基、アリル基、メタアクリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、ビニルベンジル基、ビニルナフチル基等のアルケニルアリール基が挙げられる。また、両末端は、同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。低誘電正接及び樹脂残渣の低減のバランスを高度に制御する観点から、両末端が、ヒドロキシ基、またはビニルベンジル基であることが好ましく、両末端のいずれもが、ヒドロキシ基、またはビニルベンジル基であることがより好ましい。
【0051】
一般式(1)で表される構造単位を有する化合物としては、一般式(3)の化合物であることが特に好ましい。
【化3】
一般式(3)において、nは3以上であることが好ましく、より好ましくは5以上であり、23以下であることが好ましく、より好ましくは21以下であり、さらに好ましくは19以下である。
【0052】
また、一般式(2)で表される構造単位を有する化合物としては、一般式(4)の化合物であることが特に好ましい。
【化4】
一般式(4)において、nは2以上であることが好ましく、より好ましくは4以上であり、23以下であることが好ましく、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは18以下である。
【0053】
(D)成分の数平均分子量は、3000以下であることが必要であり、2700以下であることがより好ましく、2500以下であることがさらに好ましい。また(D)成分の数平均分子量は500以上であることが好ましく、700以上であることがより好ましい。(D)成分の数平均分子量を下限値以上とすることにより、接着剤層の可撓性を良好にできる。一方、(D)成分の数平均分子量を上限値以下とすることにより、有機溶剤に対する溶解性を良好にできる。
【0054】
(D)成分の含有量は、(B)成分100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは15質量部以上である。また、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは80質量部以下であり、さらに好ましくは60質量部以下であり、特に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内とすることで、接着性およびハンダ耐熱性に優れた接着剤層を得ることができる。
【0055】
<ポリカルボジイミド(E)>
本発明で用いるポリカルボジイミド(E)(以下、単に(E)成分ともいう。)としては、分子内にカルボジイミド基を有するものであれば、特に限定されない。好ましくは分子内にカルボジイミド基を2個以上有するポリカルボジイミドである。ポリカルボジイミドを使用することによって、酸変性ポリオレフィン(B)のカルボキシル基とカルボジイミド基とが反応し、接着剤層と基材との相互作用を高め、接着性を向上することができる。また、接着剤層のハンダ耐熱性が良好となる。
【0056】
(E)成分の含有量は、(B)成分100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上である。前記下限値以上とすることで基材との相互作用が発現し、接着性が良好となる。また、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。前記上限値以下とすることで優れた誘電特性を発現することができる。すなわち、上記範囲内とすることで、接着性およびハンダ耐熱性に加え、優れた低誘電特性を有する接着剤層を得ることができる。
【0057】
本願発明の接着剤層は、周波数1GHzにおける比誘電率(εc)が3.0以下であることが好ましい。より好ましくは2.6以下であり、さらに好ましくは2.3以下である。下限は特に限定されないが、実用上は2.0である。また、周波数1GHz~30GHzの全領域における誘電率(εc)が3.0以下であることが好ましく、2.6以下であることがより好ましく、2.3以下であることがさらに好ましい。
【0058】
本願発明の接着剤層は、周波数1GHzにおける誘電正接(tanδ)が0.02以下であることが好ましい。より好ましくは0.01以下であり、さらにより好ましくは0.008以下である。下限は特に限定されないが、実用上は0.0001である。また、周波数1GHz~30GHzの全領域における誘電正接(tanδ)が0.02以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましく、0.05以下であることがさらに好ましい。
【0059】
本発明において、比誘電率(εc)および誘電正接(tanδ)は、以下のとおり測定することができる。例えば、接着剤層の両面に蒸着、スパッタリング法などの薄膜法、または導電性ペーストの塗布などの手法により金属層を形成してコンデンサとし、静電容量を測定して厚さと面積から比誘電率(εc)および誘電正接(tanδ)を算出することができる。また、積層体から接着剤層の比誘電率と誘電正接を測定する場合は、金属基材および/または樹脂基材を除去してから測定しても良いし、積層体、接着剤層/金属基材または接着剤層/樹脂基材のまま測定し、その後、金属基材および/または樹脂基材の比誘電率および誘電正接の値を差し引いても構わない。
【0060】
<樹脂基材>
樹脂基材は、接着剤組成物を塗布、乾燥し、積層体を作製できる樹脂素材の基材であれば、特に限定されない。例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂等を例示することができる。好ましくはフィルム状樹脂である。
【0061】
樹脂基材の厚みは特に限定されないが、積層体の強度が向上することから、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは、10μm以上であり、さらに好ましくは20μm以上である。また、回路作製時の加工能率等が向上することから、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下ある。
【0062】
<金属基材>
金属基材としては、回路基板に使用可能な任意の従来公知の導電性材料が使用可能である。素材としては、SUS、銅、アルミニウム、鉄、スチール、亜鉛、ニッケル等の各種金属、及びそれぞれの合金、めっき品、亜鉛やクロム化合物など他の金属で処理した金属等を例示することができる。好ましくは金属箔であり、より好ましくは銅箔である。
【0063】
金属基材の厚みは特に限定されないが、回路の充分な電気的性能が得られることから、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは、3μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。また、回路作製時の加工能率等が向上することから、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下ある。
【0064】
金属基材は、通常、ロール状の形態で提供されている。本発明のプリント配線板を製造する際に使用される金属基材の形態は特に限定されない。リボン状の形態の金属基材(金属箔)を用いる場合、その長さは特に限定されない。また、その幅も特に限定されないが、250~500cm程度であるのが好ましい。
【0065】
金属基材には表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、イトロ処理、プラズマ処理、ブラスト処理、プライマー処理、アンカー剤処理等が挙げられる。
【0066】
<プリント配線板>
本発明におけるプリント配線板は、本発明の積層体を構成要素として含むものである。プリント配線板は、例えば、金属張積層体を用いてサブトラクティブ法などの従来公知の方法により製造される。必要に応じて、金属箔によって形成された導体回路を部分的、または全面的にカバーフィルムやスクリーン印刷インキ等を用いて被覆した、いわゆるフレキシブル回路板(FPC)、フラットケーブル、テープオートメーティッドボンディング(TAB)用の回路板などを総称している。
【0067】
本発明のプリント配線板は、プリント配線板として採用され得る任意の積層構成とすることができる。例えば、積層体(樹脂基材/接着剤層/金属基材)/接着剤層/カバーフィルム層から構成されるプリント配線板とすることができる。
【0068】
<実施例>
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。実施例中および比較例中に単に部とあるのは質量部を示す。
【0069】
(物性評価方法)
【0070】
酸価:酸変性ポリオレフィン(B)
本発明における酸価(mgKOH/g)は、酸変性ポリオレフィン(B)をトルエンに溶解し、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として滴定した。
【0071】
数平均分子量(Mn)
本発明における数平均分子量は(株)島津製作所製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC、標準物質:ポリスチレン樹脂、移動相:テトラヒドロフラン、カラム:Shodex KF-802 + KF-804L + KF-806L、カラム温度:30℃、流速:1.0ml/分、検出器:RI検出器)によって測定した値である。
【0072】
融点、融解熱量
本発明における融点、融解熱量は示差走査熱量計(以下、DSC、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン製、Q-2000)を用いて、20℃/分の速度で昇温融解、冷却樹脂化して、再度昇温融解した際の融解ピークのトップ温度および面積から測定した値である。
【0073】
剥離強度(接着性)
後述する接着剤組成物bを厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカル(登録商標))に、乾燥後の厚みが12.5μmとなるように塗布し、130℃で3分間乾燥した。次いで接着剤組成物b面に、接着剤組成物aを乾燥後の厚さが12.5μmとなるように塗布し、130℃で3分間乾燥した。この様にして得られた接着性フィルム(Bステージ品)を厚さ18μmの圧延銅箔(JX金属株式会社製、BHYシリーズ)と貼り合わせた。貼り合わせは、圧延銅箔の光沢面が接着剤層と接する様にして、160℃で40kgf/cmの加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、剥離強度評価用サンプルを得た。剥離強度評価用サンプルを25℃において、引張速度50mm/minで90°剥離試験を行ない、剥離強度を測定した。この試験は常温での接着強度を示すものである。
<評価基準>
◎:1.0N/mm以上
○:0.8N/mm以上1.0N/mm未満
△:0.5N/mm以上0.8N/mm未満
×:0.5N/mm未満
【0074】
ハンダ耐熱性
上記剥離強度試験と同じ方法でサンプルを作製し、2.0cm×2.0cmのサンプル片を23℃で2日間エージング処理を行い、280℃で溶融したハンダ浴に10秒フロートし、膨れなどの外観変化の有無を確認した。
<評価基準>
◎:膨れ無し
○:一部膨れ有
△:多くの膨れ有
×:膨れ、かつ変色有
【0075】
比誘電率(εc)及び誘電正接(tanδ)
後述する接着剤組成物bを厚さ100μmのテフロン(登録商標)シートに、乾燥硬化後の厚みが12.5μmになるように塗布し、130℃で3分間乾燥した。次いで接着剤組成物b面に、接着剤組成物aを乾燥後の厚さが12.5μmとなるように塗布し、130℃で3分間乾燥した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させた後、テフロン(登録商標)シートを剥離して試験用の接着剤層シートを得た。得られた試験用接着剤層シートを8cm×3mmの短冊状に裁断し、試験用サンプルを得た。誘電率(εc)及び誘電正接(tanδ)は、ネットワークアナライザー(アンリツ社製)を使用し、空洞共振器摂動法で、温度23℃、周波数1GHzの条件で測定した。得られた比誘電率、誘電正接について、以下の通りに評価した。
<比誘電率の評価基準>
◎:2.3以下
○:2.3を超え2.6以下
△:2.6を超え3.0以下
×:3.0を超える
<誘電正接の評価基準>
◎:0.008以下
○:0.008を超え0.01以下
△:0.01を超え0.02以下
×:0.02を超える
【0076】
フィラー(A)の個数
積層体の表面に垂直な方向に切断し、切断面を電子顕微鏡で撮影する。切断面における接着剤層3aの領域と接着剤層3bの領域に含まれるフィラーを目視でカウントした。。なお、長径が15nm未満のフィラー(A)は線膨張性の影響が微弱なものであるため、カウントしないものとした。
【0077】
線膨張性
熱機械分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、「TMA-7100」)を用いて、上記比誘電率測定に用いた合計膜厚25μmの試験用サンプルを長さ1.5cmに裁断し、装置に導入した。荷重5g、昇温速度10℃/分の条件で20℃から250℃まで昇温した。得られた温度と寸法変化のデータを基に、30℃における平均線膨張係数を求め、試験用サンプルの低膨張性の評価とした。
<線膨張係数の評価基準>
評価基準は30℃における値とする。
◎:500ppm以下
○:500ppmを超え550ppm以下
△:550ppmを超え600ppm以下
×:600ppmを超える
【0078】
樹脂組成物(F-1)の製造例
フィラー(A-1)を30質量部、酸変性ポリオレフィン(B-1)を100質量部、エポキシ樹脂(C-1)を20質量部、メチルシクロヘキサン382質量部、メチルエチルケトン39質量部、トルエン11質量部を配合し、均一にかき混ぜることで樹脂組成物(F-1)を得た。
【0079】
樹脂組成物(F-2)~(F-23)の製造例
樹脂組成物(F-1)と同様に、樹脂組成物(F-2)~(F-23)を製造した。配合量を表1に示す。
【0080】
実施例1
ポリイミド(PI)フィルム(東レ・デュポン社製 商品名カプトンEN50)に、樹脂組成物(F-12)を乾燥後の厚みが12.5μmとなるように塗布し、130℃で3分間乾燥した。次いで、樹脂組成物(F-11)を乾燥後の厚みが12.5μmとなるように塗布し、130℃で3分間乾燥した。次いで、銅箔(JX日鉱日石製 BHY 厚み18μm)の光沢面が樹脂組成物(F-11)層と接するように貼り合わせて、160℃で40kgf/cmの加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、積層体を得た。接着剤層3aと接着剤層3bに含まれるフィラー(A)の個数の比率は、a1/a2=52/48(30/28)であった。結果を表2に示す。
【0081】
実施例2~13、比較例1~3
実施例1と同様に実施例2~13、比較例1~3を行った。結果を表2に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表1で用いたフィラー(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、エポキシ樹脂(C)、オリゴフェニレンエーテル(D)およびポリカルボジイミド(E)は以下のものである。
<フィラー(A)>
フィラー(A-1):リン系難燃フィラー(三光(株)製HCA-HQ-HS、球状、粒径:1.5μm)
フィラー(A-2):水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製ハイジライトH42M、粒径:1.0μm)
フィラー(A-3):シリカ(デンカ(株)製FB-3SDC、球状、粒径:3μm)
フィラー(A-4):酸化チタン(石原産業(株)製TIPAQUE CR-50、粒径:0.25μm)
フィラー(A-5):カーボンブラック(三菱化学(株)製カーボンブラック良流動性#MA100、球状、粒径:24nm)
<エポキシ樹脂(C)>
エポキシ樹脂(C-1):ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:HP-7200(DIC社製 エポキシ当量 259g/eq)
エポキシ樹脂(C-2):エポキシ変性ポリブタジエン樹脂:JP-100(日本曹達社製)
<オリゴフェニレンエーテル(D)>
オリゴフェニレンエーテル(D-1):オリゴフェニレンエーテルスチレン変性品:OPE-2St 1200(三菱ガス化学社製 Mn1000の一般式(4)の構造を有する化合物)
オリゴフェニレンエーテル(D-2):オリゴフェニレンエーテル:SA90(SABIC社製 Mn1800の一般式(3)の構造を有する化合物)
<ポリカルボジイミド(E)>
ポリカルボジイミド樹脂(E-1):V-09GB(日清紡ケミカル社製 カルボジイミド当量 216g/eq)
【0085】
<酸変性ポリオレフィン(B)>
製造例1
1Lオートクレーブに、プロピレン-ブテン共重合体(三井化学社製「タフマー(登録商標)XM7080」)100質量部、トルエン150質量部及び無水マレイン酸19質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド6質量部を加え、140℃まで昇温した後、更に3時間撹拌した。その後、得られた反応液を冷却後、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、当該樹脂を含有する液を遠心分離することにより、無水マレイン酸がグラフト重合した酸変性プロピレン-ブテン共重合体と(ポリ)無水マレイン酸および低分子量物とを分離、精製した。その後、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(B-1、酸価19mgKOH/g、数平均分子量25,000、Tm80℃、△H35J/g)を得た。
【0086】
製造例2
無水マレイン酸の仕込み量を6質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(B-2、酸価7mgKOH/g、数平均分子量35,000、Tm82℃、△H25J/g)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の積層体は、接着性および誘電特性に加え、線膨張性が良好であるため、フレキシブルプリント配線板用途、特に高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が求められるFPC用途において有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 金属基材
2 樹脂基材
3 接着剤層
3a 接着剤層3a
3b 接着剤層3b
10 積層体


図1