(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂硬化物、プリプレグ及び繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241106BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20241106BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241106BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08L101/00
C08J5/24 CFG
C08L63/00 A
C08L77/00
(21)【出願番号】P 2021567403
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2020047472
(87)【国際公開番号】W WO2021132091
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019231132
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅野 到
(72)【発明者】
【氏名】新井 厚仁
(72)【発明者】
【氏名】渡 遼平
(72)【発明者】
【氏名】中村 友彦
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/016138(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/033998(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/115844(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/019965(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207728(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/095702(WO,A1)
【文献】特開平05-001159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
C08J 5/24
C08L 63/00
C08L 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも[A]、[B]、[C]からなる
熱硬化性樹脂組成物であって、[C]ポリアミド粒子の配合量は、前記熱硬化性樹脂組成物を100質量部とした場合、1~30質量部であることを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
[A]熱硬化性樹脂
[B]硬化剤
[C]下記(c1)~(c5)を満たすポリアミド粒子
(c1)ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂の融点が200~300℃である
(c2)ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂の結晶化温度が150℃~250℃である
(c3)ポリアミド粒子の数平均粒子径が1~100μmである
(c4)ポリアミド粒子の真球度が80~100である
(c5)ポリアミド粒子のアマニ油吸油量が10~100mL/100gである
【請求項2】
[C]のポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂が一般式(1)の構成単位を60質量%以上含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式中のnは4~7の整数を示す。)
【請求項3】
[C]ポリアミド粒子の粒子径分布指数が1.00~3.00である、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
一般式(1)のnが5である、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
[C]ポリアミド粒子の真球度が90~100であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
[C]ポリアミド粒子を100質量%とした時、重量平均分子量が20,000以下の第2成分を0.5質量%以下含む、請求項1~5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
[A]熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1~6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる、熱硬化性樹脂硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の熱硬化性樹脂硬化物と強化繊維を含む繊維強化複合材料。
【請求項10】
請求項1~7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を強化繊維に含侵させた、プリプレグ。
【請求項11】
請求項10に記載のプリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、航空宇宙用途に適した繊維強化複合材料、これを得るためのプリプレグ、さらには、そのマトリックス樹脂として好適に用いられる熱硬化性樹脂硬化物、および熱硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料、中でも炭素繊維強化複合材料(以下、CFRPと称することもある)は、比強度や比剛性に優れていることから、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開されている。
【0003】
CFRPは、強化繊維である炭素繊維とマトリックス樹脂を必須の構成要素とするプリプレグを成形してなる不均一材料である。そのため、CFRPは、強化繊維の配列方向の物性とそれ以外の方向の物性に大きな差が存在する。特に、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする炭素繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂の靭性が低いため、強化繊維の配列方向以外からの応力に対しては破壊され易い。熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする炭素繊維強化複合材料に関し、種々の靭性向上技術が提案されている。
【0004】
その靭性向上技術の一つとして、樹脂粒子を熱硬化性樹脂に配合することによりで、プリプレグの成形性を保ちつつ炭素繊維強化複合材料に高度の靭性と良好な耐熱性を与えることが提案されている。例えば、樹脂粒子として、特定の構造のポリアミド粒子を使用することで、耐衝撃性と引っ張り強度を両立する技術が開示されている(特許文献1)。ナイロン12とナイロン6の共重合粒子により、粒子を低融点の範囲に制御することで、靭性を改良する技術が開示されている(特許文献2)。また、ポリアミド1010粒子やポリアミド12粒子などによって、耐衝撃性(衝撃後圧縮強度)と、更なる重要な特性である湿熱圧縮性能を両立する技術が開示されている(特許文献3)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、十分な衝撃後圧縮強度を付与することができなかった。特許文献2や特許文献3に記載の技術では、衝撃後圧縮強度を付与できるが、湿熱圧縮性能が低いという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-162619号公報
【文献】国際公開第2018/174250号公報
【文献】特開2018-66016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、衝撃後圧縮強度と湿熱圧縮性能を両立できる繊維強化複合材料を得ることを目的としている。繊維強化複合材料を得るためのプリプレグ、さらには、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として好適に用いられる熱硬化性樹脂硬化物、および熱硬化性樹脂組成物を検討した結果、達成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は次の構成を有する。
【0009】
少なくとも[A]、[B]、[C]からなることを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
[A]熱硬化性樹脂
[B]硬化剤
[C]下記(c1)~(c5)を満たすポリアミド粒子
(c1)ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂の融点が200~300℃である
(c2)ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂の結晶化温度が150℃~250℃である
(c3)ポリアミド粒子の数平均粒子径が1~100μmである
(c4)ポリアミド粒子の真球度が80~100である
(c5)ポリアミド粒子のアマニ油吸油量が10~100mL/100gである
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、繊維強化複合材料に使用することができる。特に、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、十分な衝撃後圧縮強度と湿熱圧縮性能を持つ繊維強化複合材料を好適に製造することができる。
【0011】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグ、さらには、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂である熱硬化性樹脂硬化物として好適に使用することができる。
【0012】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造された繊維強化複合材料は、高い引張強度と高い耐衝撃性、及び高い耐薬品性を有することから、高い機械特性が必要な航空宇宙用途をはじめ、風車、自動車、自転車等の一般産業用途に広く用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細を説明する。
【0014】
本発明において、[A]熱硬化性樹脂は、加熱によって3次元架橋体を形成する化合物を示す。熱硬化性樹脂は、具体的には、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂および尿素樹脂などが挙げられる。これらの中で、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂およびこれらの樹脂の混合物は、高い力学特性を有し、熱硬化性樹脂として、好ましく用いられる。特に、エポキシ樹脂は力学特性に優れ、かつ、強化繊維との接着にも優れているため、特に好ましく用いられる。
【0015】
エポキシ樹脂としては、一分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物が使用される。本発明におけるエポキシ樹脂の具体例としては、水酸基を複数有するフェノール化合物から得られる芳香族グリシジルエーテル、水酸基を複数有するアルコールから得られる脂肪族グリシジルエーテル、アミンから得られるグリシジルアミン、カルボキシル基を複数有するカルボン酸から得られるグリシジルエステル、オキシラン環を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0016】
中でも、低粘度で強化繊維への含浸性に優れ、また繊維強化複合材料とした際の耐熱性と弾性率等の力学物性に優れることから、グリシジルアミン型のエポキシ樹脂を好適に使用できる。かかるグリシジルアミン型のエポキシ樹脂は、多官能アミン型エポキシ樹脂と2官能アミン型エポキシ樹脂に大別できる。
【0017】
多官能アミン型エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂1分子内に3つ以上のエポキシ基を含むグリシジルアミン型エポキシ樹脂が使用できる。多官能アミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシリレンジアミンや、これらのハロゲン置換体、アルキル基置換体、アラルキル基置換体、アルケニル基置換体、アルコキシ基置換体、アラルコキシ基置換体、アリロキシ基置換体、ならびにこれらの水添品などを使用することができる。2官能アミン型エポキシも使用でき、このような化合物としては、ジグリシジルアニリンや、これらのハロゲン置換体、アルキル基置換体、アラルキル基置換体、アリル基置換体、アルコキシ基置換体、アラルコキシ基置換体、アリロキシ基置換体、ならびにこれらの水添品などを使用することができる。
【0018】
多官能アミン型エポキシ樹脂は、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその置換体、水添品などが好適に使用される。
【0019】
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとしては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学工業(株)製)、YH434L(新日鉄住金化学(株)製)、“jER(登録商標)”604(三菱化学(株)製)、“アラルダイド(登録商標)”MY720、MY721(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等を使用することができる。トリグリシジルアミノフェノールおよびそのアルキル置換体としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM100、ELM120(住友化学工業(株)製)、“アラルダイド(登録商標)”MY0500、MY0510、MY0600(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)等を使用することができる。テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその水素添加品として、“TETRAD(登録商標)”-X、“TETRAD(登録商標)”-C(三菱ガス化学(株)製)等を使用することができる。
【0020】
多官能アミン型エポキシ樹脂は、得られる樹脂硬化物の耐熱性や、弾性率等の力学物性とのバランスに優れることから、本発明におけるエポキシ樹脂として好ましく用いられる。多官能アミン型エポキシ樹脂は、全エポキシ樹脂中に40~70質量%含まれることが望ましい。
【0021】
本発明においてエポキシ樹脂は、グリシジルアミン以外のエポキシ樹脂や、エポキシ樹脂と熱硬化性樹脂の共重合体等を含んでも良い。エポキシ樹脂と共重合させて用いられる上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂組成物や化合物は、単独で用いてもよいし適宜配合して用いてもよい。
【0022】
グリシジルアミン以外のエポキシ樹脂として用いられるエポキシ樹脂のうち、2官能のエポキシ樹脂としては、フェノールを前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。このようなエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ヒダントイン型およびレゾルシノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
本発明における熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、航空機材料に必要とされる耐熱性および湿熱下圧縮強度を十分に確保する観点から、好ましくは、120~250℃、より好ましくは、140~210℃である。
【0024】
本発明における[B]硬化剤とは、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合は、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物のことを指す。エポキシ樹脂の硬化剤としては、具体的には、例えば、ジシアンジアミド、芳香族ポリアミン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。
【0025】
芳香族ポリアミンを硬化剤として用いることにより、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られる。特に、芳香族ポリアミンの中でも、ジアミノジフェニルスルホンもしくはその誘導体、またはその各種異性体は、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物を得るため最も適している硬化剤である。
【0026】
また、ジシアンジアミドと尿素化合物、例えば、3,4-ジクロロフェニル-1,1-ジメチルウレアとの組合せ、あるいはイミダゾール類を硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながら高い耐熱耐水性が得られる。酸無水物を用いてエポキシ樹脂を硬化することは、アミン化合物硬化に比べ吸水率の低い硬化物を与える。その他、これらの硬化剤を潜在化したもの、例えば、マイクロカプセル化したものを用いることにより、プリプレグの保存安定性、特にタック性やドレープ性が室温放置しても変化しにくい。
【0027】
硬化剤の添加量の最適値は、熱硬化性樹脂と硬化剤の種類により異なるが、化学量論的に当量となるように添加することが好ましい。これらの硬化剤は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
【0028】
芳香族ポリアミン硬化剤の市販品としては、セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製)、MDA-220(三井化学(株)製)、“jERキュア(登録商標)”W(三菱化学(株)製)、および3,3’-DAS(三井化学(株)製)、Lonzacure(登録商標)M-DEA(Lonza(株)製)、Lonzacure(登録商標)M-DIPA(Lonza(株)製)、Lonzacure(登録商標)M-MIPA(Lonza(株)製)およびLonzacure(登録商標)DETDA 80(Lonza(株)製)などが挙げられる。
【0029】
また、これらエポキシ樹脂と硬化剤、あるいはそれらの一部を予備反応させた物を組成物中に配合することもできる。この方法は、粘度調節や保存安定性向上に有効な場合がある。
【0030】
本発明における[C]ポリアミド粒子とは、下記(c1)~(c5)を満たすポリアミド粒子である。
(c1)ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂の融点が200℃~300℃である
(c2)ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂の結晶化温度が150℃~250℃である
(c3)ポリアミド粒子の数平均粒子径が1~100μmである
(c4)ポリアミド粒子の真球度が80~100である
(c5)ポリアミド粒子のアマニ油吸油量が10~100mL/100gである
本発明者らは、ポリアミド粒子が前記(c1)~(c5)の条件を満たすことで、従来のトレードオフの関係にあった熱硬化性樹脂硬化物の弾性率、強度、靱性をバランス良く発現し、さらには高い耐薬品性と耐熱性でありながら、衝撃後圧縮強度と湿熱圧縮性能がよいCFRPを提供できることを見出した。
【0031】
本発明において、ポリアミド微粒子を構成するポリアミド樹脂とは、アミド基を含む構造のポリマーを示す。
【0032】
本発明において、ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂は、融点が200℃~300℃である。かかる高い融点を有することにより、熱硬化性樹脂硬化物の耐熱性や耐薬品性を高め、CFRPの優れた湿熱圧縮性能を発現することができる。また、熱硬化性樹脂硬化物やCFRPの耐薬品性も高くすることができる。さらには、本発明のポリアミド粒子を配合した熱硬化性樹脂組成物をプリプレグに成形する際などに、加熱による粒子変形を抑制でき、高い流動性を維持できる。融点の好ましい範囲は205℃以上であり、より好ましくは210℃以上である。融点が高すぎると、熱硬化性樹脂硬化物の靱性やCFRPの衝撃後圧縮強度が低下するため、上限は、300℃以下であり、好ましくは270℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは230℃以下である。
【0033】
ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂の融点は、好ましくは、205℃~270℃、より好ましくは、210℃~250℃である。
【0034】
ポリアミド粒子を構成するポリアミドの融点は、DSC法を用いて、窒素雰囲気下、30℃から20℃/分で昇温した際の吸熱ピークの頂点である。
【0035】
本発明において、ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂は、結晶化温度が150℃~250℃である。特定の温度領域を有する結晶化温度を持つことによって、極めて高い強度を持つ熱硬化性樹脂硬化物を得ることができ、さらには、熱硬化性樹脂硬化物を用いた繊維強化複合材料は湿熱条件下においても圧縮性能を保持できる。また、熱硬化性樹脂硬化物やCFRPの耐薬品性も高くすることができる。ポリアミド樹脂の結晶化温度は、好ましくは、160℃以上、より好ましくは165℃以上、更に好ましくは170℃以上である。結晶化温度が高すぎると熱硬化性樹脂硬化物の剛性が高くなりすぎ靱性が低下する場合やCFRPの衝撃後圧縮強度低下する場合があるため、上限は250℃以下であり、210℃以下が好ましく、195℃以下がより好まく、さらに好ましくは180℃以下である。
【0036】
ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂の結晶化温度は、好ましくは、160℃~210℃、より好ましくは、165℃~195℃、さらに好ましくは、170℃~180℃である。
【0037】
ポリアミド粒子を構成するポリアミドの結晶化温度は、融点と同じくDSC法を用いて測定する。結晶化温度は、窒素雰囲気下、30℃からポリアミドの融点を示す吸熱ピークから30℃高い温度まで20℃/分の速度で昇温した後に1分間保持し、20℃/分の速度で30℃まで温度を冷却させる際に出現する発熱ピークの頂点である。結晶化温度を有しない場合は、発熱ピークが出現しない。
【0038】
このようなポリアミド樹脂は、具体例を示すならば、ポリアミド4、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリカプリルアミド(ポリアミド8)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミド共重合体(ポリアミド6/66)、ポリカプロアミド/ポリドデカアミド共重合体(ポリアミド6/12)などが挙げられる。CFRPの優れた湿熱圧縮性能を発現することができるため、好ましくは、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリカプリルアミド(ポリアミド8)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミド共重合体(ポリアミド6/66)、ポリカプロアミド/ポリドデカアミド共重合体(ポリアミド6/12)であり、CAIの点から特に好ましくは、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリカプリルアミド(ポリアミド8)、ポリカプロアミド/ポリドデカアミド共重合体(ポリアミド6/12)である。
【0039】
本発明のポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂は、好ましくは、次の一般式(1)の構成単位を60質量%以上含む。かかる範囲の構造単位を有することにより、熱硬化性樹脂硬化物の高弾性率、高強度を発現しながらも靱性を保持でき、繊維強化複合材料としたときに衝撃後圧縮強度と湿熱圧縮性能を良いバランスで発現することが可能となる。
【0040】
【0041】
(式中のnは4~7の整数を示す。)
CFRPとした際の衝撃後圧縮強度と湿熱圧縮性能を良好なバランスで発現するという観点からnが5の整数、すなわちポリアミド6が最も好ましい。ポリアミド樹脂における一般式(1)の構成単位の含有率が高いほど、衝撃後圧縮強度と湿熱圧縮性能を両立できるため、構成単位は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0042】
ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂における一般式(1)の構成単位量は、次のように測定した値である。すなわち、ポリアミド粒子を塩酸などで加水分解後、ガスクロマトグラフィーを用いてその単量体であるε-カプロラクタム量を定量することによって、質量%を算出する。
【0043】
本発明において、ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂は、構成単位以外の成分を含んでよい。共重合できる成分であれば制限は無く、ポリウンデカアミド(ポリアミド11)、ポリラウロアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、非晶ポリアミドなどが挙げられる。
【0044】
本発明において、ポリアミド粒子を構成するポリアミド樹脂の重量平均分子量は、5,000~500,000である。重量平均分子量が低すぎるとCFRPの衝撃後圧縮強度が低下するため、10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、30,000以上がさらに好ましい。重量平均分子量が高すぎると熱硬化性樹脂組成物中での分散性が不良となるため、300,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下が特に好ましい。
【0045】
ポリアミド粒子を構成するポリアミドの重量平均分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒にゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した値をポリメチルメタクリレートで換算した重量平均分子量を示す。
【0046】
本発明において、ポリアミド粒子の数平均粒子径は、熱硬化性樹脂硬化物やCFRPの機械特性や成形性を得るため、1~100μmの範囲であることが重要となる。数平均粒子径が100μmを超えると、プリプレグへの成形性が悪化する。ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、80μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。数平均粒子径が1μm未満であると、CFRPの衝撃後圧縮強度が低下する。粒子同士の凝集が発生する。ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。
【0047】
ポリアミド粒子の数平均粒子径は、好ましくは、2μm~80μm、より好ましくは、3μm~50μm、さらに好ましくは、5μm~30μmである。
【0048】
ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に100個の粒子直径を特定し、その算術平均を求めることにより算出することが出来る。上記写真において、真円状でない場合、即ち楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子径とする。粒子径を正確に測定するためには、少なくとも1,000倍以上、好ましくは、5,000倍以上の倍率で測定する。また粒子径分布指数は、上記で得られた粒子径の値を、下記数値変換式に基づき、決定される。
【0049】
本発明において、ポリアミド粒子の真球度は、熱硬化性樹脂硬化物の靱性向上やCFRPの衝撃後圧縮強度を向上させるため、80~100の範囲であることが重要となる。真球度が80に満たない場合には、CFRPの衝撃後圧縮強度が低下する。真球度は、好ましくは90以上、より好ましくは94以上、さらに好ましくは97以上である。またその上限値は、100である。
【0050】
ポリアミド粒子の真球度は、好ましくは、90~100、より好ましくは、94~100、さらに好ましくは、97~100である。
【0051】
ポリアミド粒子の真球度は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に30個の粒子を観察し、その短径と長径から下記数式に従い、決定される。
【0052】
【0053】
なお、S:真球度、a:長径、b:短径、n:測定数30とする。
【0054】
本発明において、ポリアミド粒子は、粒子の表面平滑性や内部が多孔質では無い中実性を有する。かかる表面平滑性や中実性は、ポリアミド粒子がアマニ油を吸収する量で表すことが可能である。すなわち、アマニ油の吸収量を示すアマニ油吸油量が少ないほど、孔が存在しない、平滑表面で中実な粒子となる。ここで、ポリアミド粒子のアマニ油吸油量は、10mL~100mL/100gである。ポリアミド粒子のアマニ油吸油量が、10mL~100mL/100gであれば、特に衝撃後圧縮強度が保たれる。アマニ油吸油量上限は90mL/100g以下が好ましく、80mL/100g以下がより好ましく、70mL/100g以下がさらに好ましく、60mL/100g以下が特に好ましい。アマニ油吸油量の下限は10mL/100g以上が好ましい。
【0055】
ポリアミド粒子のアマニ油吸油量は、好ましくは、10~90mL/100g、より好ましくは、10~80mL/100g、さらに好ましくは、10~70mL/100gである。
【0056】
アマニ油吸油量は、日本工業規格(JIS規格)JIS K 5101(2004)「顔料試験方法 精製あまに油法」に準じて測定される。
【0057】
本発明の[C]ポリアミド粒子の配合量は、熱硬化性樹脂組成物を100質量部とした場合、1~30質量部であることが好ましい。配合量は適宜調整できるが、多量であると湿熱圧縮特性が低下し、少量であると衝撃後圧縮強度が低下する場合がある。
【0058】
本発明におけるポリアミド粒子の粒子径分布指数は、1.00~3.00であることが好ましい。ここで、かかる粒子径分布指数とは粒子径分布のことを指す。粒子径分布指数が3.00を超えるとプリプレグの成形性が低下する場合がある。粒子径分布指数は2.00以下が好ましく、1.50以下がより好ましく、1.30以下がさらに好ましく、1.20以下が最も好ましい。また、その下限値は、理論上1.00である。
【0059】
【0060】
Di:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
【0061】
本発明におけるポリアミド粒子は、熱硬化性硬化物の靱性やCFRPの衝撃後圧縮強度を発現する上で、[A]熱硬化性樹脂に不溶であることが好ましい。ここで、[A]熱硬化性樹脂に不溶とは、ポリアミド粒子を分散した熱硬化性樹脂を加熱硬化した際に、ポリアミド粒子が熱硬化性樹脂中に実質的に溶解していなことを指す。例えば、透過型電子顕微鏡を用い、熱硬化性硬化物の中でポリアミド粒子が元のサイズから実質的に収縮することなく、ポリアミド粒子と熱硬化性樹脂の間に明確な界面をもって観察できるものであることから判断する。または、ポリアミド粒子と熱硬化性樹脂を180℃で加熱した後に、熱硬化性樹脂を除去した後のポリアミド粒子の回収量やサイズが変化しないことなどから判定する。
【0062】
本発明におけるポリアミド粒子は、[C]ポリアミド粒子を100質量%とした時、重量平均分子量が20,000以下の第2成分を0.5質量%以下含むことが好ましい。
【0063】
第2成分のポリマーの重量平均分子量が高すぎる場合は、洗浄による除去が困難となるため、第2成分のポリマーの重量平均分子量は、好ましくは、20,000以下、より好ましくは、10,000以下、特に好ましくは、8,000以下である。
【0064】
第2成分のポリマーの重量平均分子量は、水を溶媒にゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した値をポリエチレングリコールで換算した重量平均分子量を示す。水に溶解しない場合は、テトラヒドロフランなど適した溶媒を選択することが可能である。
【0065】
第2成分のポリマーとしては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの極性基の含有量が少ない方が、第2成分ポリマー同士によるポリアミド粒子の凝集や、湿熱特性の低下を抑制できるため好ましい。特に、水酸基で分子の両末端のみに含有することが好ましい。第2成分のポリマーは、具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、およびこれらのアルキルエーテル体からなる群より選ばれる1以上の化合物である。洗浄などで水を使用でき、粒子の製造から洗浄まで全て水のみで処理できることから、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、およびこれらのアルキルエーテル体が好ましく、ポリエチレングリコール、およびこれらのアルキルエーテル体が最も好ましい。これらは、本発明を損なわない範囲で第2成分のポリマーは、2種以上を同時に使用してもよい。
【0066】
ポリアミド粒子の不純物となる第2成分のポリマーの含有量が少ないほど、熱硬化性樹脂中でのポリアミド粒子の分散性の向上やCFRPの湿熱圧縮性能の低下を防げる傾向にある。ポリアミド粒子の不純物の含有量は、ポリアミド粒子を100質量%とした時、好ましくは、0.5質量%以下、より好ましくは、0.05質量%以下、特に好ましくは、0.005質量%以下、更に好ましくは、0.002質量%以下である。
【0067】
第2成分のポリマーの含有量は、ポリマー粉末から水または有機溶媒で抽出後、溶媒を除去した後に、水を溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで定量した数値を示す。
【0068】
本発明に適しているポリアミド粒子の製造方法としては、例えば、国際公開WO2018/207728号公報に記載された、ポリアミドの単量体を第2成分となるポリマーの存在下で、単量体を重合して得られるポリアミドの結晶化温度より高い温度で重合後、粉末を洗浄、乾燥して作製する手法を好適に用いることができる。本手法によって、本発明の要件である融点の高いポリアミド粒子を真球形状で作製することが可能である。
【0069】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を配合してもよい。添加剤には、硬化促進剤、難燃剤、流動剤、滑剤、酸化防止剤、粘度調整剤、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、またはポリフェニレンエーテルなどの靭性改質剤用の熱可塑性樹脂など公知の物質が挙げられる。
【0070】
本発明の熱硬化性樹脂硬化物は、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて製造する。
【0071】
本発明における熱硬化性樹脂硬化物のガラス転移温度は、航空機材料に必要とされる耐熱性および湿熱下圧縮強度を十分に確保する観点から、好ましくは、120~250℃、より好ましくは、140~210℃である。
【0072】
本発明の繊維強化複合材は、熱硬化性樹脂硬化物と強化繊維を含む。
【0073】
本発明の繊維強化複合材料に用いられる強化繊維として、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維などが好ましく用いられ、特に軽量かつ高性能であり、優れた力学特性の繊維強化複合材料が得られる点で、炭素繊維が好ましく用いられる。
【0074】
強化繊維として好ましく用いられる炭素繊維は、具体的にはアクリル系、ピッチ系およびレーヨン系等の炭素繊維が例示され、特に引張強度の高いアクリル系の炭素繊維が好ましく用いられる。
【0075】
かかるアクリル系の炭素繊維は、例えば、アクリロニトリルを主成分とするモノマーから得られるポリアクリロニトリルを含む紡糸原液を、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、または溶融紡糸法により紡糸し、紡糸後の凝固糸は、製糸工程を経て、プリカーサーとし、続いて耐炎化および炭化などの工程を経て得ることができる。
【0076】
炭素繊維の形態としては、有撚糸、解撚糸および無撚糸等を使用することができるが、有撚糸の場合は強化繊維束を構成するフィラメントの配合が平行ではないため、繊維強化複合材料の力学特性の低下の原因となる場合があることから、繊維強化複合材料の成形性と強度特性のバランスが良い解撚糸または無撚糸が好ましく用いられる。
【0077】
本発明の繊維強化複合材料をオートクレーブやオーブン内で成形する場合の硬化温度、時間としては、選択した硬化剤や硬化触媒の種類と量により最適な温度、時間が異なる。130℃以上の耐熱性が必要な用途では、120~220℃の温度で、0.5~8時間かけて硬化させることが好ましい。昇温速度は、0.1~10℃/分昇温が好ましく用いられる。昇温速度が0.1℃/分未満では、目標とする硬化温度までの到達時間が非常に長くなり作業性が低下することがある。また、昇温速度が10℃/分を超えると、強化繊維各所での温度差が生じてしまうため、均一な硬化物が得られなくなることがある。
【0078】
この際、得られた繊維強化複合材中でポリアミド粒子の真球度が80~100であることが重要となる。本発明のポリアミド粒子は、高い融点と結晶化温度であるため、熱硬化性樹脂の加熱硬化中に変形することなく、真球形状を維持することが可能である。また加熱硬化中に溶解したとしても、硬化物中で真球状に相分離すれば、同様に特性を発現する。繊維強化複合材中でポリアミド粒子が真球かどうかは、断面写真の観察から粒子と同様の測定方法で確認できる。
【0079】
本発明の繊維強化複合材料を成形する際は、加減圧は必須ではないが、必要に応じて加減圧してもよい。加減圧することで、表面の品位向上や、内部ボイドの抑制、硬化時に接着させる金属やプラスチック、繊維強化複合材料製の部品との密着性向上などの効果が得られる場合がある。
【0080】
本発明の繊維強化複合材料は、高い引張強度と高い耐衝撃性、及び高い耐薬品性を有することから、高い機械特性が必要な航空宇宙用途をはじめ、風車、自動車、自転車等の一般産業用途に広く用いることができる。
【0081】
本発明のプリプレグは、熱硬化性樹脂組成物を強化繊維に含侵させる。
【0082】
本発明のプリプレグに用いられる強化繊維として、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維などが好ましく用いられ、特に軽量かつ高性能であり、優れた力学特性の繊維強化複合材料が得られる点で、炭素繊維が好ましく用いられる。
【0083】
強化繊維として好ましく用いられる炭素繊維は、具体的にはアクリル系、ピッチ系およびレーヨン系等の炭素繊維が例示され、特に引張強度の高いアクリル系の炭素繊維が好ましく用いられる。
【0084】
かかるアクリル系の炭素繊維は、例えば、アクリロニトリルを主成分とするモノマーから得られるポリアクリロニトリルを含む紡糸原液を、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、または溶融紡糸法により紡糸し、紡糸後の凝固糸は、製糸工程を経て、プリカーサーとし、続いて耐炎化および炭化などの工程を経て得ることができる。
【0085】
炭素繊維の形態としては、有撚糸、解撚糸および無撚糸等を使用することができるが、有撚糸の場合は強化繊維束を構成するフィラメントの配合が平行ではないため、繊維強化複合材料の力学特性の低下の原因となる場合があることから、繊維強化複合材料の成形性と強度特性のバランスが良い解撚糸または無撚糸が好ましく用いられる。
【0086】
本発明のプリプレグに用いられる熱硬化性樹脂組成物の混練方法は、一般的にエポキシ樹脂組成物の調製に使用されるものであれば、どのような方法でもよい。例えば、ニーダーやプラネタリーミキサーなどが用いられる。
【0087】
本発明のプリプレグは、以下に説明するウェット法、ホットメルト法などにより製造することができる。
【0088】
ウェット法とは、強化繊維をエポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法であり、ホットメルト法とは、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙等の上にコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上皆無となるため好ましい。
【0089】
本発明の繊維強化複合材料は、好ましくは、プリプレグを硬化させてなる。
【0090】
このような比較的高い耐熱性を有する熱硬化性樹脂およびそれを用いたプリプレグの硬化成形には、比較的高い硬化温度が必要となる。また、硬化成形させてなる繊維強化複合材料の強度を十分に発現させるため、プリプレグ積層体の硬化成形は1気圧以上の加圧条件下で行うことが一般的である。得られたプリプレグを積層後、積層物に圧力を付与しながら加熱硬化させる方法等により、例えば、熱硬化性樹脂組成物の硬化物と強化繊維からなる、本発明の繊維強化複合材料が作製される。熱および圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等が挙げられる。
【0091】
本発明の繊維強化複合材料は、高い引張強度と高い耐衝撃性、及び高い耐薬品性を有することから、高い機械特性が必要な航空宇宙用途をはじめ、風車、自動車、自転車等の一般産業用途に広く用いることができる。
【実施例】
【0092】
以下本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
<原料>
<熱硬化性樹脂[A]:エポキシ樹脂>
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学株式会社製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0600(m-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ株式会社社製)
・“エピクロン(登録商標)”830(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC株式会社製)
<硬化剤[B]:エポキシ樹脂硬化剤>
・3,3’-DAS(3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン株式会社製)。
【0094】
<その他の成分>
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)。
【0095】
<ポリアミド粒子[C]>
(1)平均粒子径および粒子径分布指数
ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に100個の粒子直径を特定し、その算術平均を求めることにより算出した。上記写真において、真円状でない場合、即ち楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子径とした。また粒子径分布指数は、上記で得られた粒子径の値を、下記数値変換式に基づき算出した。
【0096】
【0097】
なお、Di:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
【0098】
(2)真球度
ポリアミド粒子の真球度は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に30個の粒子を観察し、その短径と長径から下記数式に従い算出した。
【0099】
【0100】
なお、S:真球度、a:長径、b:短径、n:測定数30とする。
【0101】
(3)アマニ油吸油量
日本工業規格(JIS規格)JISK5101 「顔料試験方法 精製あまに油法」に準じ、ポリアミド微粒子約100mgを時計皿の上に精秤し、精製アマニ油(関東化学株式会社製)をビュレットで1滴ずつ徐々に加え、パレットナイフで練りこんだ後に、試料の塊ができるまで滴下-練りこみを繰り返し、ペーストが滑らかな硬さになった点を終点とし、滴下に使用した精製アマニ油の量から吸油量(mL/100g)を算出した。
【0102】
(4)ポリアミド粒子を構成するポリアミドの融点と結晶化温度
TAインスツルメント社製示差走査熱量計(DSCQ20)を用いて、窒素雰囲気下、30℃から20℃/分で昇温した際の吸熱ピークの頂点を融点とした。結晶化温度を有するかどうかは、同装置で窒素雰囲気下、30℃からポリアミドの融点を示す吸熱ピークから30℃高い温度まで20℃/分の速度で昇温した後に1分間保持し、20℃/分の速度で30℃まで温度を冷却させる際に出現する発熱ピークの有無で判断した。発熱ピークが存在する場合は、結晶性と判断する。測定に要したポリアミド微粒子は約8mgである。
【0103】
(5)ポリアミド粒子を構成するポリアミドの分子量
ポリアミドの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリメチルメタクリレートによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。測定サンプルは、ポリアミド微粒子約3mgをヘキサフルオロイソプロパノール約3gに溶解し調整した。
装置:Waters e-Alliance GPC system
カラム:昭和電工株式会社製HFIP-806M×2
移動相:5mmol/Lトリフルオロ酢酸ナトリウム/ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:1.0ml/min
温度:30℃
検出:示差屈折率計。
【0104】
(6)ポリアミド粒子中の不純物(第2成分ポリマー)の含有率
ポリアミド粒子1000gに水1000gを加え、80℃に加熱後、水を単離した。水を除去した後に、得られた固形物を水5gに溶解させ、(7)と同様のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い第2成分のポリマーの重量を測定した。第2成分のポリマーの重量をポリアミド粒子の量で除することで、含有率(質量%)を算出した。
【0105】
(7)不純物(第2成分ポリマー)の分子量
不純物のポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。測定サンプルは約3mgを水約6gに溶解し調整した。
装置:株式会社島津製作所製 LC-10Aシリーズ
カラム:東ソー株式会社製TSKgelG3000PWXL
移動相:100mmol/L塩化ナトリウム水溶液
流速:0.8ml/min
温度:40℃
検出:示差屈折率計。
【0106】
(8)一般式(1)の構成単位の測定方法
ポリアミド粒子10gを塩酸90gに溶解後、100℃で12時間加熱撹拌した。その後、ガスクロマトグラフィーでε-カプロラクタム量を定量し、構成単位中の質量%を算出した。
【0107】
・粒子1(製造例1)
国際公開WO2018/207728号公報を参考に、3Lのヘリカルリボン型の撹拌翼が付属したオートクレーブに、ε-カプロラクタム(東レ株式会社製)200g、第2成分のポリマーとしてポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、重量平均分子量18,600)800g、水1000gを加え均一な溶液を形成後に密封し、窒素で置換した。その後、撹拌速度を100rpmに設定し、温度を240℃まで昇温させた。この際、系の圧力が10kg/cm2に達した後、圧が10kg/cm2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御した。温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm2・分の速度で放圧させた。その後、窒素を流しながら1時間温度を維持し重合を完了させ、2000gの水浴に吐出しスラリーを得た。溶解物を溶かした後に、ろ過を行い、ろ上物に水2000gを加え、80℃で洗浄を行った。その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、ポリアミド6粉末を140g作製した。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の218℃、結晶化温度は170℃であり、分子量は40,000であった。数平均粒子径は12μm、粒子径分布指数は1.35、真球度は96、アマニ油吸油量は56mL/100g、ポリエチレングリコールの含有率は0.004質量%であった。
【0108】
・粒子2(製造例2)
撹拌速度を50rpmに変更すること以外は製造例1と同様の方法で、数平均粒子径30μmの真球ポリアミド6粒子を調整した。
【0109】
・粒子3(製造例3)
撹拌速度を250rpmに変更すること以外は製造例1と同様の方法で、数平均粒子径5μmの真球ポリアミド6粒子を調整した。
【0110】
・粒子4(製造例4)
ε-カプロラクタムをカプリルラクタム(和光純薬工業株式会社製)に変更した以外は、製造例1と同様の方法で、ポリアミド8粒子を得た。本粒子の融点は200℃、結晶化温度は150℃、分子量は40,000、数平均粒子径は13μm、粒子径分布指数は1.40、真球度は98、アマニ油吸油量は60mL/100gであった。
【0111】
・粒子5(製造例5)
ε-カプロラクタム(東レ株式会社製)140g、ラウロラクタム(和光純薬工業株式会社製)60gに変更すること以外は製造例1と同様の方法で、ポリアミド6/12共重合体粒子(ポリアミド6が80モル%)を得た。本粒子の融点は205℃、結晶化温度は156℃、分子量は35,000、数平均粒子径は15μm、粒子径分布指数は1.25、真球度は98、アマニ油吸油量は55mL/100gであった。
【0112】
・粒子6(製造例6)
ε-カプロラクタムをアジピン酸170g(東京化成工業株式会社製、SP値25.4)、ヘキサメチレンジアミン50%水溶液220g(東京化成工業株式会社製、SP値19.2)、温度を260℃に変更した以外は、製造例1と同様の方法でポリアミド66粒子を得た。本粒子の融点は267℃、結晶化温度は211℃、分子量は40,000、数平均粒子径は20μm、粒子径分布指数は1.52、真球度は98、アマニ油吸油量は60mL/100gであった。
【0113】
・粒子7(製造例7)
国際公開第2012/043509号を参考に、1000mlの耐圧ガラスオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)ハイパーグラスターTEM-V1000N)の中に、ポリアミド“TROGAMID(登録商標)”CX7323(重量平均分子量 17,000、ダイセル・エボニック社製)を21g、有機溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン 287g、酢酸ナトリウム含量が0.1%以下のポリビニルアルコール 42g(重量平均分子量 29,000)を加え、99体積%以上の窒素置換を行った後、180℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで4時間攪拌を行った。その後、貧溶媒として350gのイオン交換水を、送液ポンプを経由して、2.91g/分のスピードで滴下した。約30gのイオン交換水を加えた後に攪拌したまま降温させ、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水 700gを加えてリスラリー洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体を20.0g得た。得られた粉末の融点は250℃、結晶化温度は無く、数平均粒子径は12.4μm、粒子径分布指数は1.30、真球度は95、アマニ油吸油量65mL/100gであった。
【0114】
・粒子8
市販のポリアミド6粒子(アルケマ製“オルガソル(登録商標)”1002D、数平均粒子径18μm、真球度68、融点212℃、結晶化温度165℃、重量平均分子量34,400、アマニ油吸油量90mL/100g)
・粒子9
市販のポリアミド6粒子(東レ製TR-1、数平均粒子径13μm、真球度82、融点217℃、結晶化温度170℃、アマニ油吸油量120mL/100g)
・粒子10
市販のポリアミド12粒子(東レ製SP-500、数平均粒子径5μm、真球度97、融点175℃、結晶化温度140℃、アマニ油吸油量60mL/100g)
<強化繊維:炭素繊維>
・“トレカ(登録商標)”T800G-24K-31E(フィラメント数24,000本、引張強度5.9GPa、引張弾性率294GPa、引張伸度2.0%の炭素繊維、東レ株式会社製)。
【0115】
(9)熱硬化性樹脂組成物の調製
熱硬化性樹脂[A]として、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434を10質量部、“アラルダイト(登録商標)”MY0600を70質量部、“エピクロン(登録商標)”830を20質量部、および“スミカエクセル(登録商標)”5003Pを15質量部、硬化剤[B]として3,3’-DASを40質量部、粒子成分(ポリアミド粒子[C])を65質量部添加した後に混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0116】
(10)プリプレグの作製
(9)の熱硬化性樹脂組成物を、熱硬化性樹脂[A]と硬化剤[B]の合計が、目付け35g/m2となるように離型紙上にフィルムコーティングしたものを2枚作製した。コーティング面を向かい合わせにした間に、フィラメント数が24000本である炭素繊維(東レ(株)製、“トレカ(登録商標)”T800G)を一方向に整列させ、加熱加圧して樹脂を含浸させ、炭素繊維目付250g/m2、樹脂含有率が21.9質量%の1次プリプレグを得た。次に、(9)の熱硬化性樹脂組成物を目付け35g/m2となるように離型紙上にフィルムコーティングしたものを2枚作製した。この2次樹脂コーティングフィルムを向かい合わせにした間に、先ほどの1次プリプレグを通し、1次と同じように加熱加圧し、炭素繊維目付250g/m2、樹脂含有率が35.9質量%の2次プリプレグを作製した。
【0117】
(11)熱硬化性樹脂硬化物の曲げ弾性率測定、曲げ歪み測定
(9)で調製した熱硬化性樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中に注入した。180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの熱硬化性樹脂硬化物を得た。次に、得られた熱硬化性樹脂硬化物の板から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、スパン間32mmの3点曲げを測定し、JIS K7171-1994に従い、曲げ弾性率、曲げ強度、曲げ歪みを求めた。曲げ歪みは、熱硬化性樹脂硬化物の靱性を示す指標である。
【0118】
(12)繊維強化複合材料の湿熱時圧縮強度測定
(10)で調整したプリプレグを、繊維方向を圧縮方向と平行に揃えて12プライ積層し、オートクレーブ中で、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で、180℃の温度で2時間硬化して積層体を作製した。この積層体から厚み2mm、幅15mm、長さ78mmのタブ付き試験片を作成し、71℃の温水に14日間浸漬した。この試験片を、JIS K 7076(1991)に従い、恒温槽付き万能試験機を用いて、82℃における0°圧縮強度を測定した。サンプル数はn=5とした。なお、82℃における0°圧縮強度は、湿熱時の圧縮性能を示す指標となる。
【0119】
(13)繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度測定
(10)で調整したプリプレグを[45°/0°/-45°/90°]3s(記号sは、鏡面対称を示す) の構成で積層し、オートクレーブ中で温度177℃ 、圧力0.6MPaで2時間加熱硬化し、CFRPを得た。このCFRPについて、JIS K7089(1996)に従い、0度方向が152.4mm、90度方向が101.6mmの長方形に切り出し、この中央に落下高さ571mmで5.4kgの落錘衝撃を与え平均衝撃後圧縮強度を求めた。また、測定については、室温乾燥状態(25℃±2℃、相対湿度50%)で行った。
【0120】
[実施例1~6、比較例1~4]
(9)の手順で熱硬化性樹脂組成物を作製後に(10)の手順でプリプレグを得た。得られた樹脂組成物およびプリプレグを用い、上記の(12)繊維強化複合材料の湿熱時圧縮強度測定、(13)繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度測定、(14)繊維強化複合材料中のポリアミド粒子の真球度測定を実施した。用いたポリアミド粒子[C]、物性の測定結果を表1、表2に示す。
【0121】
【0122】
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、十分な衝撃後圧縮強度と湿熱圧縮性能を持つ繊維強化複合材料を好適に製造することができる。
【0124】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグ、さらには、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂である熱硬化性樹脂硬化物として好適に使用することができる。
【0125】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造された繊維強化複合材料は、高い引張強度と高い耐衝撃性、及び高い耐薬品性を有することから、高い機械特性が必要な航空宇宙用途をはじめ、風車、自動車、自転車等の一般産業用途に広く用いることができる。