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特許7582212被覆状態検出方法、被覆状態検出装置、および、光ファイバ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】被覆状態検出方法、被覆状態検出装置、および、光ファイバ製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/6226 20180101AFI20241106BHJP
   C03C 25/104 20180101ALI20241106BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20241106BHJP
   G01N 21/95 20060101ALI20241106BHJP
   G01M 11/00 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
C03C25/6226
C03C25/104
G02B6/44 301B
G02B6/44 301A
G01N21/95 Z
G01M11/00 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021574712
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003337
(87)【国際公開番号】W WO2021153765
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020013921
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】榎本 正
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 崇広
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-107046(JP,A)
【文献】特開2005-162524(JP,A)
【文献】特開平08-091878(JP,A)
【文献】特開平04-313705(JP,A)
【文献】特開平03-016938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00-25/70
G01M 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が被覆された光ファイバからの放出光を利用して、ファイバ軸を中心とする円周方向に沿った前記樹脂の被覆状態を検出するための被覆状態検出方法であって、
像面と前記像面に対して共役関係にある物体面との間の光路上に配置され、前記光ファイバが通過するガイド孔を有する反射ミラーを含む結像光学系を用意し、
前記結像光学系によって、前記反射ミラーの前記ガイド孔を通過した前記光ファイバのうち前記物体面と交差する部位からの前記放出光を前記像面上に結像させることにより、前記像面上における各部の光強度を、前記物体面上における位置情報に対応付けて検出する、
被覆状態検出方法。
【請求項2】
検出された前記光強度および対応する前記位置情報に基づいて、前記樹脂の被覆状態を視覚的に表現する二次元画像をモニタ上に表示する、
請求項1に記載の被覆状態検出方法。
【請求項3】
前記二次元画像は、前記光ファイバの断面を表す濃淡画像、前記ファイバ軸に相当する前記像面上の軸と前記像面との交点で互いに直交する前記像面上の2本の直交軸それぞれに沿って表示される光強度分布、および、前記ファイバ軸に相当する前記像面上の軸を中心とした円周方向に沿った光強度分布のうち、少なくともいずれか一つを含む、
請求項2に記載の被覆状態検出方法。
【請求項4】
前記反射ミラーは、軸外放物面ミラーを含み、
前記軸外放物面ミラーは、前記ガイド孔である孔を有し、
前記光ファイバが前記軸外放物面ミラーの前記孔を通過した後に前記軸外放物面ミラーの焦点を通過するように、前記結像光学系が配置される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の被覆状態検出方法。
【請求項5】
前記反射ミラーは、楕円面ミラーを含み、
前記楕円面ミラーは、前記ガイド孔である孔を有し、
前記光ファイバが前記楕円面ミラーの前記孔を通過した後に前記楕円面ミラーの一方の焦点を通過し、かつ、前記楕円面ミラーの他方の焦点が前記像面上または前記楕円面ミラーと前記像面との間の光路上に位置するように、前記結像光学系が配置される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の被覆状態検出方法。
【請求項6】
前記光ファイバから放出される前記放出光は、前記反射ミラーに対して前記物体面の反対側空間において前記樹脂に照射される樹脂硬化用の光を含む、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の被覆状態検出方法。
【請求項7】
前記光ファイバから放出される前記放出光は、前記反射ミラーに対して前記物体面の反対側空間において、前記光ファイバに対して照射される樹脂硬化用の光以外の外部光源からの光を含む、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の被覆状態検出方法。
【請求項8】
樹脂が被覆された光ファイバからの放出光を利用して、ファイバ軸を中心とする円周方向に沿った前記樹脂の被覆状態を検出するための被覆状態検出装置であって、
前記放出光の一部を受光するための受光装置と、
前記受光装置の受光面に投影されるべき像面と前記像面に対して共役関係にある物体面との間の光路上に配置され、前記光ファイバが通過するガイド孔を有する反射ミラーを含む結像光学系と、
を備え、
前記受光装置は、前記反射ミラーの前記ガイド孔を貫通した前記光ファイバのうち前記物体面と交差する部位からの前記放出光が結像された前記像面上における各部の光強度を、前記物体面上における位置情報に対応付けて検出する、
被覆状態検出装置。
【請求項9】
前記受光装置により検出された前記光強度および対応する前記位置情報に基づいて、前記樹脂の被覆状態を視覚的に表現する二次元画像をモニタ上に表示させる制御部を、更に備えた、
請求項8に記載の被覆状態検出装置。
【請求項10】
前記反射ミラーは、軸外放物面ミラーを含み、
前記軸外放物面ミラーは、前記ガイド孔である孔を有し、
前記光ファイバが前記軸外放物面ミラーの前記孔を通過した後に前記軸外放物面ミラーの焦点を通過するように、前記結像光学系が配置される、
請求項8または請求項9に記載の被覆状態検出装置。
【請求項11】
前記反射ミラーは、楕円面ミラーを含み、
前記楕円面ミラーは、前記ガイド孔である孔を有し、
前記光ファイバが前記楕円面ミラーの前記孔を通過した後に前記楕円面ミラーの一方の焦点を通過し、かつ、前記楕円面ミラーの他方の焦点が前記像面上または前記楕円面ミラーと前記像面との間の光路上に位置するように、前記結像光学系が配置される、
請求項8または請求項9に記載の被覆状態検出装置。
【請求項12】
前記反射ミラーに対して前記物体面の反対側空間において、前記樹脂を含む前記光ファイバ内を伝搬可能な光を前記光ファイバに対して照射する光源を、含む、
請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の被覆状態検出装置。
【請求項13】
光ファイバ母材を線引きすることにより得られる裸ファイバを、前記裸ファイバの表面に樹脂を被覆した状態で巻き取る光ファイバ製造方法であって、
前記裸ファイバの表面に樹脂を被覆するためのダイスを有する樹脂被覆装置の下流側に請求項8から請求項12のいずれか一項に記載の被覆状態検出装置を配置し、
前記被覆状態検出装置から得られる検出結果に基づいて、樹脂被覆条件を変更する、
光ファイバ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被覆状態検出方法、被覆状態検出装置、および、光ファイバ製造方法に関するものである。
本願は、2020年1月30日に出願された日本特許出願第2020-013921号による優先権を主張するものであり、その内容に依拠すると共に、その全体を参照して本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
母材線引き時にガラスファイバ(裸ファイバ:bared fiber)の表面に樹脂を被覆することにより得られる被覆ファイバ(coated fiber)の偏心測定方法として、特許文献1から特許文献4には、被覆ファイバの側面にレーザ光源からのレーザビームを照射し、その前方散乱光(透過光)により形成される濃淡画像を検出し、樹脂層の偏肉状態から被覆ファイバ内におけるガラスファイバの偏心を測定する光ファイバの偏心測定装置および測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許平4-315939号公報
【文献】特開平4-319642号公報
【文献】特開平5-107046号公報
【文献】特開平5-087681号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態に係る被覆状態検出方法は、樹脂が被覆された光ファイバ(被覆ファイバ)からの放出光を利用して、ファイバ軸を中心とする円周方向に沿った該樹脂の被覆状態を検出する方法であって、当該被覆状態検出方法は、その一態様として、結像光学系を用意し、該結像光学系により結像された、像面(受光面)上における各部の光強度を、物体面上の位置情報に対応付けて検出する。具体的に、用意される結像光学系は、像面と該像面に対して共役関係にある物体面との間の光路上に配置された反射ミラーを含む。該反射ミラーは、被覆ファイバが通過するガイド孔を有する。また、像面側では、反射ミラーのガイド孔を通過した被覆ファイバのうち物体面と交差する部位からの放出光を結像光学系によって像面上に結像させることにより、該像面上における各部の光強度が、物体面上における位置情報に対応付けて検出される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示の実施形態に係る被覆状態検出装置に適用可能な結像光学系であって、平坦面を有する反射ミラーを含む、種々の例を示す図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る被覆状態検出装置に適用可能な結像光学系であって、曲面を有する反射ミラーを含む、種々の例を示す図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係る光ファイバ製造方法を実施するための光ファイバ製造装置(線引き装置)の一例を示す図である。
図4図4は、母材線引き後に得られた被覆ファイバの外周面上に更に樹脂を被覆する樹脂被覆装置に適用された例を示す図である。
図5図5は、線引きされた光ファイバから光が放出されるメカニズムを説明するための図である。
図6図6は、図2の結像光学系2Bが適用された被覆状態検出器が図3の光ファイバ製造装置に適用された例を示す図である。
図7図7は、本開示の実施形態に係る被覆検出装置における制御部(データ加工部)の制御動作の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
発明者らは、上述の従来技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、被覆外径(被覆ファイバの外径)とガラス径(裸ファイバの外径)の比が小さい場合(例えば1.7以下)、被覆された樹脂層の偏肉状態を検出するためのモニタ光により形成される濃淡画像が視認できないか、または、視認しにくくなる。また、ファイバ軸を中心とした円周方向に沿った樹脂層の偏肉状態を被覆ファイバの側面から検出する場合、複数の検出光学系(レーザ光源および受光装置)を用意する必要があり、装置製造の高コスト化のみならず、これら検出光学系のアライメント作業の複雑化、装置の大型化、更には装置構造の複雑化を招くという課題があった。
【0007】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、従来技術と比較してより簡単な装置構成で、被覆外径とガラス径の比が小さい場合でも、被覆ファイバにおける樹脂層の被覆状態を検出することができる、被覆状態検出方法、被覆状態検出装置、および光ファイバ製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
[本開示の効果]
本開示の被覆状態検出方法等によれば、従来技術と比較してより簡単な装置構成で、被覆外径とガラス径の比が小さい場合でも、被覆ファイバにおける樹脂層の被覆状態の検出が可能になる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容をそれぞれ個別に列挙して説明する。
【0010】
(1) 本開示の実施形態に係る被覆状態検出方法は、樹脂が被覆された光ファイバ(裸ファイバの表面に樹脂が被覆された被覆ファイバ)からの放出光を利用して、ファイバ軸を中心とする円周方向に沿った該樹脂の被覆状態を検出する方法であって、当該被覆状態検出方法は、その一態様として、結像光学系を用意し、該結像光学系により結像された、像面(受光面)上における各部の光強度を、物体面上に位置情報に対応付けて検出するものである。具体的に、用意される結像光学系は、像面と該像面に対して共役関係にある物体面との間の光路上に配置された反射ミラーを含む。該反射ミラーは、被覆ファイバが通過するガイド孔を有する。また、像面側では、反射ミラーのガイド孔を通過した被覆ファイバのうち物体面と交差する部位からの放出光を結像光学系によって像面上に結像させることにより、該像面上における各部の光強度が、物体面上における位置情報に対応付けて検出される。
【0011】
なお、「被覆ファイバからの放出光」とは、製造中の光ファイバに照射された光成分のうち、光ファイバ内を伝達した後に光ファイバ外へ放出される光成分であって、一例として、光ファイバの被覆を硬化させるUV光が挙げられる。
【0012】
なお、結像光学系は、物体面と像面との間の光路上に中間結像面を形成するよう構成されてもよい。この場合、中間結像面上に絞りを配置することにより像面上に形成される濃淡画像のコントラストを向上させることが可能になる。
【0013】
上述の構成によれば、より簡単な装置構成によりファイバ軸を中心とした樹脂層の被覆状態の効率的な検出が可能になる。換言すれば、上述の構成によれば、被覆外径(被覆ファイバの外径)とガラス径(裸ファイバの外径)の比に依存することなく、ファイバ軸を中心とした円周方向に沿った被覆状態の検出が可能になる。なお、本明細書において、「樹脂の被覆状態」とは、裸ファイバの外周に設けられる樹脂層の円周方向に沿った厚み変動(樹脂層の偏肉状態、または、被覆ファイバ内における裸ファイバの偏心状態)、樹脂内の気泡混入状態、裸ファイバに対する樹脂層の界面剥離状態等を指す。また、検出対象となる被覆ファイバは、ガラスファイバ(裸ファイバ)の表面に樹脂層が被覆された被覆ファイバであり、樹脂層は、母材線引きに裸ファイバの表面に設けられる単層(一次被覆)または複数層(連続的に設けられる一次被覆、二次被覆等)からなる。また、樹脂層には、母材線引き時にドラムに巻き取られた被覆ファイバを別のドラムに巻き替えながら、該被覆ファイバの表面に被覆される着色樹脂も含まれる。
【0014】
(2) 本開示の一態様として、検出された光強度および対応する位置情報に基づいて、樹脂の被覆状態を視覚的に表現する二次元画像がモニタ上に表示されてもよい。この場合、検出対象である被覆ファイバにおける断面の状態が視覚的に確認できる。
【0015】
(3) 本開示の一態様として、二次元画像は、検出対象である被覆ファイバの断面を表す濃淡画像、ファイバ軸に相当する像面上の軸と該像面との交点で互いに直交する該像面上の2本の直交軸それぞれに沿って表示される光強度分布、および、ファイバ軸に相当する像面上の軸を中心とした円周方向に沿った光強度分布のうち、少なくともいずれか一つを含むのが好ましい。特に、カメラ等の画像取込装置に一旦取り込まれた画像を数値解析することで、被覆状態(樹脂層の円周方向に沿った厚み変動、樹脂層内における気泡混入状態、裸ファイバと樹脂層との界面における剥離状態)を定量的にまたは動的に特定することが可能になる。また、検出データを計測機器に取り込むことで、プロセス制御が可能になる(取り込まれた検出データに基づいて、製造装置等における各部の動作を調整するための制御情報の生成が可能になる)。
【0016】
(4) 本開示の一態様として、上記反射ミラーは、軸外放物面ミラーを含んでもよく、この場合、該軸外放物面ミラーは、ガイド孔である孔を有する。反射ミラーとして軸外放物面ミラーが適用される場合、当該結像光学系は、被覆ファイバが軸外放物面ミラーの孔を通過した後に該軸外放物面ミラーの焦点を通過するように、配置される。軸外放物面ミラーは、焦点からの光をコリメート光として反射する。したがって、反射ミラーとして軸外放物面ミラーが適用されることにより、結像光学系を構成するレンズ要素の数を削減することが可能になる(結像光学系の構造簡単化)。
【0017】
(5) 本開示の一態様として、上記反射ミラーは、楕円面ミラーを含んでもよく、この場合、該楕円面ミラーは、ガイド孔である孔を有する。反射ミラーとして楕円面ミラーが適用される場合、当該結像光学系は、被覆ファイバが楕円面ミラーの孔を通過した後に該楕円面ミラーの一方の焦点を通過し、かつ、該楕円面ミラーの他方の焦点が像面上または該楕円面ミラーと像面との間の光路上に位置するように、配置される。楕円面ミラーは、一方の焦点からの光を他方の焦点に集光する(2つの焦点が共役関係を満たす)。したがって、反射ミラーとして楕円面ミラーが適用されることにより、当該楕円面ミラーのみで結像光学系を構成することが可能になる。また、当該楕円面ミラーとレンズを組み合わせる場合でも、単純構造の結像光学系が実現可能になる(結像光学系の構造簡単化)。
【0018】
(6) 本開示の一態様として、被覆ファイバから放出される放出光は、反射ミラーに対して物体面の反対側空間において樹脂に照射される樹脂硬化用の光を含んでもよい。つまり、被覆ファイバ製造装置(線引き装置)に当該被覆状態検出方法が適用される場合、上述の結像光学系を樹脂被覆装置の下流側に配置することにより、樹脂硬化用の光源を被覆状態検出用の光源として流用することができる。
【0019】
(7) 本開示の一態様として、光ファイバから放出される放出光は、反射ミラーに対して物体面の反対側空間において、該光ファイバに対して照射される樹脂硬化用の光以外の外部光源からの光を含んでもよい。このように、上述の樹脂被覆装置の紫外線光源とは別に外部光源を用意することにより、結像光学系の配置自由度が向上する。また、外部光源を配置することで、被覆ファイバの被覆表面からの放出光により形成される濃淡画像の明瞭化(像面上に形成される濃淡画像のS/N比の改善)を図ることが可能になる。
【0020】
(8) 本開示の実施形態に係る被覆状態検出装置は、上述の被覆状態検出方法を実現する装置であって、樹脂が被覆された光ファイバ(被覆ファイバ)からの放出光を利用して、ファイバ軸を中心とする円周方向に沿った前記樹脂の被覆状態を検出するための構造を備える。具体的に、当該被覆状態検出装置は、その一態様として、受光装置と、結像光学系と、を備える。結像光学系は、受光装置の受光面に投影されるべき像面と該像面に対して共役関係にある物体面との間の光路上に配置された反射ミラーを含む。この反射ミラーは、被覆ファイバが通過するガイド孔を有する。また、受光装置は、反射ミラーのガイド孔を通過した被覆ファイバのうち物体面と交差する部位からの放出光が結像光学系によって結像された像面上における各部の光強度を、物体面上における位置情報に対応付けて検出する。この構成により、上述の被覆状態検出方法を実現可能にする。
【0021】
(9) 本開示の一態様として、当該被覆状態検出装置は、受光装置により検出された光強度および対応する位置情報に基づいて、樹脂の被覆状態を視覚的に表現する二次元画像をモニタ上に表示させる制御部を、更に備えてもよい。この場合、検出対象である被覆ファイバにおける断面の状態が視覚的に確認できる。また、二次元画像は、検出対象である被覆ファイバの断面に相当する濃淡画像、ファイバ軸と像面との交点で互いに直交する該像面上の2本の直交軸それぞれに沿って表示される光強度分布、および、ファイバ軸を中心とした円周方向に沿った光強度分布のうち、少なくともいずれかを含むのが好ましい。例えば、カメラ等の画像取込装置に一旦取り込まれた画像を数値解析することで、被覆状態(樹脂層の円周方向に沿った厚み変動、樹脂層内における気泡混入状態、裸ファイバと樹脂層との界面における剥離状態)を定量的にまたは動的に特定することが可能になる。また、検出データを計測機器に取り込むことで、プロセス制御が可能になる(取り込まれた検出データに基づいて、製造装置等における各部の動作を調整するための制御情報の生成が可能になる)。
【0022】
(10) 本開示の一態様として、上記反射ミラーは、軸外放物面ミラーを含んでもよく、この場合、軸外放物面ミラーは、ガイド孔である孔を有する。反射ミラーとして軸外放物面ミラーが適用される場合、当該結像光学系は、被覆ファイバが軸外放物面ミラーの孔を通過した後に該軸外放物面ミラーの焦点を通過するように、配置される。この場合、上述のように結像光学系の構造簡単化が可能になる。
【0023】
(11) 本開示の一態様として、上記反射ミラーは、楕円面ミラーを含んでもよく、この場合、楕円面ミラーは、ガイド孔である孔を有する。反射ミラーとして楕円面ミラーが適用される場合、当該結像光学系は、被覆ファイバが楕円面ミラーの孔を貫通した後に該楕円面ミラーの一方の焦点を通過し、かつ、該楕円面ミラーの他方の焦点が像面上または該楕円面ミラーと像面との間の光路上に位置するように、配置される。この場合も、上述のように結像光学系の構造簡単化が可能になる。
【0024】
(12) 本開示の一態様として、当該被覆状態検出装置は、反射ミラーに対して物体面の反対側空間において、樹脂を含む光ファイバ内を伝搬可能な光を該光ファイバに対して照射する光源を、含んでもよい。光ファイバ製造装置に当該被覆状態検出装置が適用される場合、樹脂被覆装置の下流に配置することにより、例えば、該樹脂被覆装置の紫外線光源からの光を検出光(放出光)として利用することが可能である。また、樹脂被覆装置の光源(樹脂硬化用の紫外線光源)以外に、別途外部光源を活用することで、像面上に形成される濃淡画像のS/N比を効果的に改善することが可能になる。
【0025】
(13) 本開示の実施形態に係る光ファイバ製造方法は、光ファイバ母材を線引きすることにより得られる裸ファイバを、該裸ファイバの表面に樹脂を被覆した状態で巻き取る。特に、当該光ファイバ製造方法は、その一態様として、上述のような構造を有する被覆状態検出装置(本開示の被覆状態検出装置)を、裸ファイバの表面に樹脂を被覆するためのダイスを有する樹脂被覆装置の下流側に配置し、該被覆状態検出装置から得られる検出結果に基づいて、樹脂被覆条件を変更する。なお、樹脂被覆条件には、ダイスの姿勢の変更(被覆ファイバにおける裸ファイバの偏心解消)の他、フラッシングガス流量の調整(CO調整)、樹脂層内の気泡抑制(具体的には、樹脂被覆装置の上流側に配置される冷却装置の温度調整)等が挙げられる。
【0026】
以上、この[本開示の実施形態の説明]の欄に列挙された各態様は、残りの全ての態様のそれぞれに対して、または、これら残りの態様の全ての組み合わせに対して適用可能である。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示に係る光ファイバの被覆状態検出方法、光ファイバの被覆状態検出装置、および、光ファイバ製造方法の具体例を、以下に添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
まず、本開示の実施形態に係る被覆状態検出方法および本開示の実施形態に係る被覆状態検出装置(本開示の実施形態に係る被覆状態検出方法を実施するための装置)を実現するための結像光学系の代表的な構造を、図1および図2を用いて説明する。なお、図1は、本開示の実施形態に係る被覆状態検出方法および被覆状態検出装置に適用可能な、平坦面を有する反射ミラーを含む結像光学系の種々の例を示す図である。また、図2は、本開示の実施形態に係る被覆状態検出方法および被覆状態検出装置に適用可能な、曲面を有する反射ミラーを含む結像光学系の種々の例を示す図である。
【0029】
図1の結像光学系1Aは、平面反射ミラーを利用した最も単純な構造を有する結像光学系であり、結像レンズ10と平面反射ミラー20により構成されている。被覆ファイバからの放出光の一部を受光する受光装置の受光面は像面IPに設置され、結像レンズ10を介して物体面OPと像面IPは互いに共役関係にある。すなわち、当該結像光学系1Aの光軸AXと物体面OPとの交点C1と、光軸AXと像面IPとの交点C2は、互いに共役点となっている。平面反射ミラー20は、物体面OPと結像レンズ10との間の光路上に配置されており、物体面OPからの放出光は、この平面反射ミラー20によって反射されて像面IP上に集光している。また、平面反射ミラー20は、ガイド部材30の一面に設けられている。さらに、平面反射ミラー20とガイド部材30には、被覆ファイバを通過させるためのガイド孔30aが設けられており、該平面反射ミラー20は、ガイド孔30aの出力側開口21を有する。被覆ファイバは、ガイド孔30aの入力側開口31から平面反射ミラー20に設けられた出力側開口21へ向けて通過する。また、ガイド部材30は、被覆ファイバと平面反射ミラー20との位置関係を固定するため、支持部材32に保持されている。
【0030】
例えば、入力側開口31と出力側開口21を結ぶガイド部材30のガイド孔30aを通過した被覆ファイバが共役点C1で物体面OPと交差するように当該結像光学系1Aが配置された場合、像面IPは被覆ファイバから所定距離だけ離れた位置に形成され、共役点C1に位置する被覆ファイバの部位からの放出光が像面IP上の共役点C2に結像する。これにより、共役点C1における被覆ファイバの断面を表す二次元の濃淡画像が像面IP上に形成される。
【0031】
図1の結像光学系1Bは、2枚のコリメートレンズ11、12と平面反射ミラー20により構成されている。また、当該結像光学系1Bの光軸AXの長さ(光路長)は、コリメートレンズ11、12間の距離Lを変更することにより調節可能である。物体面OPの位置はコリメートレンズ11の焦点の位置により決まり、像面IPの位置はコリメートレンズ12の焦点の位置により決まる。コリメートレンズ11、12を介して物体面OPと像面IPは互いに共役関係にある。すなわち、当該結像光学系1Bの光軸AXと物体面OPとの交点C1と、光軸AXと像面IPとの交点C2は、互いに共役点となっている。平面反射ミラー20は、物体面OPとコリメートレンズ11との間の光路上に配置されており、物体面OPからの放出光は、この平面反射ミラーによって反射されて像面IP上に集光している。また、平面反射ミラー20は、結像光学系1Aと同様に、支持部材32により被覆ファイバに対する相対位置が固定されたガイド部材30の一面に設けられている。ガイド部材30には、平面反射ミラー20に設けられた出力側開口21と入力側開口31を結ぶガイド孔30aが設けられている。
【0032】
この結像光学系1Bにおいても、入力側開口31と出力側開口21を結ぶガイド部材30のガイド孔30aを通過した被覆ファイバが共役点C1で物体面OPと交差するように当該結像光学系1Bが配置された場合、共役点C1に位置する被覆ファイバの部位からの放出光が像面IP上の共役点C2に結像する。これにより、共役点C1における被覆ファイバの断面を表す二次元の濃淡画像が像面IP上に形成される。
【0033】
図1の結像光学系1Cは、2枚の結像レンズ13、14と、平面反射ミラー20と、2枚の結像レンズ13、14の間に配置された絞り15と、により構成されている。この結像光学系1Cでは、結像レンズ13と結像レンズ14との間の光路上に形成される結像面上に絞り15が配置されており、物体面OP、絞り15が配置された面、および像面IPは互いに共役関係にある。すなわち、当該結像光学系1Cの光軸AXと物体面OPとの交点C1と、光軸AXと像面IPとの交点C2、および、C2と、光軸AXと絞り15が配置された結像面との交点C3は、それぞれ互いの共役点となっている。平面反射ミラー20は、物体面OPと結像レンズ13との間の光路上に配置されており、物体面OPからの放出光は、この平面反射ミラー20で反射されて像面IP上に集光している。また、平面反射ミラー20は、結像光学系1Aと同様に、支持部材32により被覆ファイバに対する相対位置が固定されたガイド部材30の一面に設けられている。ガイド部材30には、平面反射ミラー20に設けられた出力側開口21と入力側開口31を結ぶガイド孔30aが設けられている。
【0034】
この結像光学系1Cにおいても、入力側開口31と出力側開口21を結ぶガイド部材30のガイド孔30aを通過した被覆ファイバが共役点C1で物体面OPと交差するように当該結像光学系1Cが配置された場合、共役点C1に位置する被覆ファイバの部位からの放出光が像面IP上の共役点C2に結像する。これにより、共役点C1における被覆ファイバの断面を表す二次元の濃淡画像が像面IP上に形成される。なお、平面反射ミラー20を通過した被覆ファイバが、共役点C1から外れた位置で物体面OPと交差する場合、絞り15の結像面(光軸AXと直行する面)上の位置が調整される。
【0035】
上述の結像光学系1Aから結像光学系1Cは、いずれも平面反射ミラー20を含む結像光学系であるが、この平面反射ミラー20に替えて特殊な曲面ミラーが適用されることにより、結像光学系の構造をより簡単化することが可能である。例えば、図2の結像光学系2Aは、図1の結像光学系1Aまたは図1の結像光学系1Cに回転楕円体の表面52の一部に一致した曲面を有する反射ミラー(以下、「楕円面ミラー」と記す)50を適用することにより得られる。また、図2の結像光学系2Bは、図1の結像光学系1Bに回転放物面62の一部に一致した曲面を有する軸外放物面ミラー60を適用することにより得られる。
【0036】
具体的に、図1の結像光学系1Aの平面反射ミラー20および結像レンズ10に替え、楕円面ミラー50が適用された結像光学系2Aでは、楕円面ミラー50の2つの焦点(回転楕円体の2つの焦点)のうち一方の焦点の位置により物体面OPの位置が決まり、他方の焦点の位置により像面IPの位置が決まる(楕円面ミラー50の2つの焦点が共役点C1、C2)。この場合、結像光学系2Aは光軸AX上にレンズ要素を含むことなく結像光学系1Aと同等に機能し得る。
【0037】
また、図1の結像光学系1Cの平面反射ミラー20および結像レンズ13に替えて、楕円面ミラー50が適用された結像光学系2Aでは、楕円面ミラー50の2つの焦点のうち一方の焦点位置により物体面OPの位置が決まり、他方の焦点の位置が絞り15が配置された結像面の位置と一致する(楕円面ミラー50の2つの焦点が共役点C1、C3)。この場合、結像光学系2Aは、光軸AX上に配置されるレンズの枚数を削減した状態で結像光学系1Cと同等に機能し得る。
【0038】
結像光学系2Aでは、物体面OPからの放出光が楕円面ミラー50により反射されて像面IP上に集光している。また、楕円面ミラー50は、結像光学系1Aおよび結像光学系1Cと同様に、支持部材42により被覆ファイバに対する相対位置が固定されたガイド部材40の一面に設けられている。ガイド部材40には、楕円面ミラー50に設けられた出力側開口51と入力側開口41を結ぶガイド孔40aが設けられている。
【0039】
更に、図1の結像光学系1Bの平面反射ミラー20およびコリメートレンズ11に替え、軸外放物面ミラー60が適用された結像光学系2Bでは、該軸外放物面ミラー60の焦点の位置により物体面OPの位置が決まり、コリメートレンズ12の焦点の位置により像面IPの位置が決まる。この場合、軸外放物面ミラー60の焦点は、光軸AXと像面IPとの交点C2に対して共役である(物体面OP上のミラー焦点が像面IP上の交点C2の共役点C1となる)。したがって、この結像光学系2Bによれば、軸外放物面ミラー60の焦点からの光は該軸外放物面ミラー60によりコリメートされ、コリメートレンズ12により像面IP上に結像される。
【0040】
結像光学系2Bでは、物体面OPからの放出光が軸外放物面ミラー60で反射されて像面IP上に集光している。また、軸外放物面ミラー60は、結像光学系1A等と同様に、支持部材42により被覆ファイバに対する相対位置が固定されたガイド部材40の一面に設けられている。ガイド部材40には、軸外放物面ミラー60に設けられた出力側開口61と入力側開口41を結ぶガイド孔40aが設けられている。
【0041】
図3は、本開示の実施形態に係る光ファイバ製造方法を実施するための光ファイバ製造装置(線引き装置)の一例を示す図である。具体的に、図3の光ファイバ製造装置は、光ファイバ母材100の一端を加熱するためのヒータ150と、光ファイバ母材100を線引きすることにより得られる裸ファイバ(ガラスファイバ)110に樹脂が被覆された被覆ファイバ120を巻き取るためのドラム200と、樹脂被覆装置300と、被覆状態検出装置500と、を備える。光ファイバ母材100は、コア部100aと、クラッド部100bとを備える。なお、コア部100aは、母材線引きにより得られる裸ファイバ110のコア110aとなるべき領域であり、クラッド部100bは、該コア部100aの外周を取り囲み、裸ファイバ110のクラッド110bとなるべき領域である。ドラム200が矢印S1で示された方向に回転することにより被覆ファイバ120がドラム200に巻き取られる。樹脂被覆装置300は、光ファイバ母材100とドラム200との間に配置されており、走行中の裸ファイバ110の外周面上に樹脂を被覆する装置である。裸ファイバ110が樹脂被覆装置300で樹脂を被覆されることにより被覆ファイバ120が得られる。樹脂被覆装置300は、裸ファイバ110の外周面上に紫外線硬化樹脂を被覆するためのダイス310と、ダイス310の姿勢を調節するための姿勢制御装置320と、紫外線照射装置330と、を含む。被覆状態検出装置500は、上流に位置する樹脂被覆装置300の紫外線照射装置330からの紫外線を利用して、被覆ファイバ120の断面を表す二次元の濃淡画像を検出する。
【0042】
なお、光ファイバ母材100と樹脂被覆装置300との間には、図示されていないが、裸ファイバ110を強制的に冷却するための冷却装置が配置される。また、図3の例では、1段の樹脂被覆装置300が示されているが、ドラムに巻き取られる被覆ファイバ120の長手方向に沿って複数段の樹脂被覆装置が配置されてもよい。また、樹脂被覆装置300で用いられる樹脂は、紫外線硬化樹脂でなくてもよい。
【0043】
図4は、母材線引き後に得られた被覆ファイバの外周面上に更に樹脂(例えば、着色樹脂)を被覆する樹脂被覆装置に適用された例を示す図である。図4の例は、被覆ファイバ120をドラム(図3の光ファイバ製造装置により製造された被覆ファイバ120を巻き取ったドラム)200からドラム210に着色しながら巻き直す装置である。樹脂被覆装置400は、矢印S2で示された方向に回転するドラム200から矢印S3で示された方向に回転するドラム210に巻き直される被覆ファイバ120の外周面上に着色樹脂を被覆する。本開示の被覆状態検出装置は、該樹脂被覆装置400の下流側に配置される。
【0044】
図4に示された樹脂被覆装置400は、図3の樹脂被覆装置300と同様の構造を備えており、被覆ファイバ120が樹脂被覆装置400で着色樹脂を被覆することにより着色被覆ファイバ130が得られる。すなわち、樹脂被覆装置400は、被覆ファイバ120の外周面上に紫外線硬化樹脂(着色樹脂)を被覆するためのダイス410と、ダイス410の姿勢を調節するための姿勢制御装置420と、紫外線照射装置430と、を含む。また、図4に示された被覆状態検出装置500も、上流に位置する樹脂被覆装置400の紫外線照射装置430からの紫外線を利用して、着色被覆ファイバ130の断面を表す二次元の濃淡画像を検出する。
【0045】
図5は、図3および図4に示されたように、樹脂被覆装置300の下流側または樹脂被覆装置400の下流側において本開示の被覆状態検出装置500が機能し得るメカニズムを、すなわち、被覆ファイバから光が放出されるメカニズムを説明するための図である。なお、図5には、図3の光ファイバ製造装置における樹脂被覆装置300の内部構造が示されているが、図4に示された樹脂被覆装置400においても同様のメカニズムにより被覆ファイバから紫外線が放出される。
【0046】
母材線引き後に得られる裸ファイバ110は、コア110aと、該コア110aの外周面上に設けられたクラッド110bと、を備える。裸ファイバ110が、矢印S4で示された方向(図3において、光ファイバ母材100からドラム200へ向かう方向)に移動することにより、該裸ファイバ110が樹脂被覆装置300を通過することになる。まず、樹脂被覆装置300に入った裸ファイバ110は、樹脂(紫外線硬化樹脂)が導入されたダイス310を通過することにより、その外周面上に樹脂110cが被覆される。続いて、樹脂110cを有する裸ファイバ110は、紫外線照射装置330を通過する。紫外線照射装置330は、内部に紫外線光源333が配置された筐体331を備える。筐体331には、樹脂110cを有する裸ファイバ110を導入するための入力側開口332aと、出力側開口332bと、を有する。樹脂110cを有する裸ファイバ110には、入力側開口332aから出力側開口332bへ移動している間、紫外線光源333から出力された紫外線UVが照射される。なお、紫外線UVは、一部が反射されながら樹脂110cを有する裸ファイバ110内に侵入し、該樹脂110cを有する裸ファイバ110内において任意方向に伝搬する(散乱光)。このように、紫外線UVが樹脂110cに照射されることにより被覆ファイバ120が得られる。
【0047】
矢印S4で示された方向に沿って筐体331の出力側開口332bから出てきた被覆ファイバ120(樹脂110cが硬化された後)の内部には、筐体331内で照射された紫外線UVが閉じ込められている。そのため、樹脂被覆装置300の下流側に移動した被覆ファイバ120の表面からは、紫外線UVが放出されている。図5には、このように紫外線UVが放出されている部位と、物体面OPおよび反射面(平面反射ミラー20、楕円面ミラー50、および軸外放物面ミラー60)の位置関係が示されている。
【0048】
上述のように本開示の被覆状態検出装置500の上流側に、被覆ファイバ120を透過可能な波長を有する紫外線UV等の光源が既に設置されている場合には、当該被覆状態検出装置500は、反射面を貫通した被覆ファイバ120のうち物体面OPと交差する部位からの放出光(図5の例では紫外線UV)を、反射面を介して検出できる。
【0049】
図6は、図2の結像光学系2Bが適用された被覆状態検出器(本開示の被覆状態検出装置500)が図3の光ファイバ製造装置に適用された具体例を示す図である。なお、図2の結像光学系2B以外の結像光学系の適用も可能である。
【0050】
図5を用いて説明されたように、樹脂被覆装置300(または樹脂被覆装置400)の下流に本開示の被覆状態検出装置500が配置される構成では、外部光源を用意する必要はないが、上流側の樹脂被覆装置300と下流側の当該被覆状態検出装置500とは離れた構成では、十分な光量の放出光を検出することができない場合も想定される。そのような場合は、図6に示されたように、一面に軸外放物面ミラー60が設けられたガイド部材40の近傍に、被覆ファイバ120を透過可能な波長の光を照射する外部光源350を設けてもよい。
【0051】
図6に示されたように、軸外放物面ミラー60は、ガイド部材40の一面に設けられており、ガイド部材40には、軸外放物面ミラー60に設けられた出力側開口61と入力側開口41とを結ぶガイド孔40aが設けられている。樹脂110cを有する被覆ファイバ120は、このガイド孔40aを矢印S5で示された方向に沿って通過した後にドラム200に巻き取られる。支持部材42は、ガイド孔40aを通過した被覆ファイバ120が軸外放物面ミラー60の焦点を通過するように、該被覆ファイバ120に対するガイド部材40の位置を固定する。なお、軸外放物面ミラー60は回転放物面62の一部と一致しているため、その焦点は、物体面OP上に位置することになる。また、この焦点が、光軸AXと像面IP(光軸AX上において受光装置600の受光面610に一致)との交点C2の共役点C1となる。ここで、「受光面に一致」とは、正確に一致する必要はなく、0.1μm程度の、多少のずれは許容される。
【0052】
軸外放物面ミラー60の出力側開口61を通過した被覆ファイバ120のうち該軸外放物面ミラー60の焦点(物体面OPと被覆ファイバ120が交差する位置)近傍において、被覆ファイバ120からの放出光の一部は、軸外放物面ミラー60によりコリメートされた状態で反射される。このコリメートされた反射光は、軸外放物面ミラー60からコリメートレンズ12に向かい、該コリメートレンズ12により、像面IP上の共役点C2に集光される。当該被覆状態検出装置500は、制御部700を備えており、この制御部700は、受光装置600により検出された光強度および対応する位置情報に基づいて、被覆ファイバ120における樹脂110cの被覆状態を視覚的に表現する二次元画像をモニタ上に表示させるため、描画部720を制御する(図7参照)。
【0053】
具体的に、描画部720は、図7に示されたように、検出対象である被覆ファイバ120の断面を表す濃淡画像から、ファイバ軸に相当する像面IP上の軸と該像面IPとの交点で互いに直交する該像面上の2本の直交軸Ix、Iyそれぞれに沿って表示される光強度分布を二次元的に表現するモニタ画面810を生成する。また、描画部720は、ファイバ軸に相当する像面IP上の軸を中心とした円周方向に沿った光強度分布を二次元的に表現するモニタ画面820の生成も可能であり、これらのうちの少なくとも一つを生成する。
【0054】
制御部700は、描画部720に対する描画制御(被覆ファイバ120における樹脂110cの被覆状態を視覚的に表現する二次元画像の生成)の他、種々の制御が可能である。例えば、カメラ等の画像取込装置に一旦取り込まれた画像を数値解析することで、樹脂110cの被覆状態を定量的にまたは動的に特定することが可能になる。なお、検出可能な樹脂110cの被覆状態には、樹脂(樹脂層)110cの偏肉状態(被覆ファイバ120内における裸ファイバ110の偏心状態)、樹脂110c内における気泡混入状態、裸ファイバ110と樹脂110cとの界面における剥離状態等が含まれる。また、検出データを計測機器に取り込むことで、プロセス制御が可能になる。すなわち、取り込まれた検出データに基づいて、製造装置等における各部の動作を調整し、樹脂被覆条件を変更するための制御信号(制御情報)710の生成が可能になる。
【0055】
なお、樹脂被覆条件の変更には、例えば、図3等に示されたダイス310の姿勢を変更するため、制御部700から姿勢制御装置320(または図4の姿勢制御装置420)に対して制御信号710が出力される。具体的に、樹脂被覆装置300に対する制御部700の姿勢制御では、(1) 被覆ファイバ120の進行方向に直交する平面(互いに直交するx軸およびy軸で規定されるx-y平面)に沿ってダイス310を移動させること、(2) x軸を中心として矢印γで示された方向に沿ってダイス310を傾けること、(3) y軸を中心として矢印γで示された方向に沿って、ダイス310を傾けること、などが含まれる。なお、このような姿勢制御は、図4の樹脂被覆装置400においても同様に行われる。
【0056】
更に、制御部700は、姿勢制御のほかに、樹脂被覆装置300の裸ファイバ入口部に吹き付けるフラッシングガス(例えばCOガス)流量の調整を行い、樹脂110c内の気泡を抑制することも可能である。また、制御部700は、樹脂被覆装置300の上流側に配置される冷却装置に対し、温度を変更するための制御信号710を出力することで、樹脂110c内の気泡を抑制することも可能である。
【符号の説明】
【0057】
1A、1B、1C、2A、2B…結像光学系、10、13、14…結像レンズ、11、12…コリメートレンズ、15…絞り、20…平面反射ミラー、21、51、61、332b…出力側開口、30、40…ガイド部材、30a、40a…ガイド孔、31、41、332a…入力側開口、32、42…支持部材、50…楕円面ミラー、52…回転楕円体の表面、60…軸外放物面ミラー、62…回転放物面、100…光ファイバ母材、100a…コア部、100b…クラッド部、110…裸ファイバ、110a…コア、110b…クラッド、110c…樹脂、120…被覆ファイバ、130…着色被覆ファイバ、150…ヒータ、200、210…ドラム、300、400…樹脂被覆装置、310、410…ダイス、320、420…姿勢制御装置、330、430…紫外線照射装置、331…筐体、333…紫外線光源、500…被覆状態検出装置、600…受光装置、610…受光面、700…制御部、710…制御信号、720…描画部、810、820…モニタ画面、OP…物体面、IP…像面、AX…光軸、UV…紫外線、C1、C2、C3…共役点、S1、S2、S3、S4、S5…矢印(方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7