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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ハイブリッド車
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/30 20060101AFI20241106BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20241106BHJP
   B60K 6/22 20071001ALI20241106BHJP
   B60W 20/50 20160101ALI20241106BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20241106BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20241106BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B60W10/30 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/22
B60W20/50
B60W20/00
F01P3/18 G
F02D29/06 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022005029
(22)【出願日】2022-01-17
(65)【公開番号】P2023104181
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 晃次
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 典昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 卓弘
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-205448(JP,A)
【文献】特開2017-207023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
F01P 3/18
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機と吸気を冷却するインタークーラーとを有するエンジンと、
モータと、
前記モータを駆動するためのインバータと、
前記インバータを冷却する冷却流路と前記インタークーラーの冷却流路を流路として含む循環流路に冷却媒体を循環ポンプによって循環させることによって前記インバータおよび前記吸気を冷却する冷却装置と、
少なくとも前記冷却装置を制御する制御装置と、
を備えるハイブリッド車であって、
前記制御装置は、
車速が所定車速以下である条件と車両のシステムがオフされている条件とを含む所定条件が成立していないときには、外部からの前記循環ポンプの強制駆動を禁止し、前記循環ポンプの要求駆動指示値を用いて前記循環ポンプを駆動し、
前記所定条件が成立しているときには、外部からの前記循環ポンプの強制駆動を許可し、前記循環ポンプの要求駆動指示値と外部から前記循環ポンプの強制駆動による強制駆動指示値とが併存するときには、前記要求駆動指示値と前記強制駆動指示値のうち大きい方の指示値を用いて前記循環ポンプを駆動する
ことを特徴とするハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記制御装置は、前記循環ポンプに異常が生じているときには、外部からの前記循環ポンプの強制駆動については許可しない、
ハイブリッド車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車に関し、詳しくは、エンジンの吸気系に取り付けられたインタークーラーとモータを駆動するインバータとを循環流路に組み込んだ冷却装置を備えるハイブリッド車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車としては、走行用モータを駆動するインバータとインタークーラーとラジエータとを含む循環流路に冷却水をウォーターポンプによって循環させる冷却装置を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車では、冷却装置の循環流路をエンジンを冷却する冷却水が循環する循環流路とは別に設けており、回路構成の簡単化と装置の小型化を図るものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-79614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にハイブリッド車では、故障診断などの車両整備の際には、停車中に外部ツールからの信号入力によりウォーターポンプを強制駆動する。インバータとインタークーラーとラジエータとを循環流路に含む冷却装置では、停車中でもインバータの温度に基づく冷却要求が生じるときにはウォーターポンプを駆動する必要がある。こうした冷却要求と外部ツールからの信号入力による強制駆動とが同時に行なわれる場合、冷却要求を優先すれば車両整備(故障診断等)に支障が生じ、強制駆動を優先するとインバータの冷却に支障が生じてしまう。
【0005】
本発明のハイブリッド車は、冷却装置における循環ポンプの外部からの強制駆動をより適正に行なうことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド車は、
過給機と吸気を冷却するインタークーラーとを有するエンジンと、
モータと、
前記モータを駆動するためのインバータと、
前記インバータを冷却する冷却流路と前記インタークーラーの冷却流路を流路として含む循環流路に冷却媒体を循環ポンプによって循環させることによって前記インバータおよび前記吸気を冷却する冷却装置と、
少なくとも前記冷却装置を制御する制御装置と、
を備えるハイブリッド車であって、
前記制御装置は、車速が所定車速以下である条件と車両のシステムがオフされている条件とを含む所定条件が成立したときに、外部からの前記循環ポンプの強制駆動を許可する、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明のハイブリッド車では、過給機と吸気を冷却するインタークーラーとを有するエンジンと、モータと、モータを駆動するためのインバータと、インバータを冷却する冷却流路とインタークーラーの冷却流路を流路として含む循環流路に冷却媒体を循環ポンプによって循環させることによってインバータおよび吸気を冷却する冷却装置と、少なくとも冷却装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、車速が所定車速以下である条件と車両のシステムがオフされている条件とを含む所定条件が成立したときに、外部からの循環ポンプの強制駆動を許可する。これにより、所定条件が成立していないときには吸気やインバータの冷却要求による循環ポンプの駆動を行ない、外部からの強制駆動は行なわないから、冷却装置における循環ポンプの外部からの強制駆動をより適正に行なうことができる。
【0009】
本発明のハイブリッド車において、前記制御装置は、前記循環ポンプの要求駆動指示値と外部から前記循環ポンプの強制駆動による強制駆動指示値とが併存するときには、前記要求駆動指示値と前記強制駆動指示値のうち大きい方の指示値を用いて前記循環ポンプを駆動するものとしてもよい。即ち、要求駆動指示値が強制駆動指示値より大きいときには要求駆動指示値を用いて循環ポンプを駆動し、要求駆動指示値が強制駆動指示値より小さいときには強制駆動指示値を用いて循環ポンプを駆動するのである。これにより、インバータ等の過熱を抑制することができる。
【0010】
本発明のハイブリッド車において、前記制御装置は、前記循環ポンプに異常が生じているときには、外部からの前記循環ポンプの強制駆動については許可しないものとしてもよい。循環ポンプに何らかの異常が生じている場合には、循環ポンプを強制駆動しても良好な車両整備(故障診断)を行なうことができないからである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】エンジンECU24により実行されるウォーターポンプ駆動処理の一例を示すフローチャートである。
図3】エンジンECU24により実行されるウォーターポンプ強制駆動許否判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0013】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド車20は、図示するように、エンジン22と、モータ30と、インバータ32と、冷却装置35と、クラッチK0と、自動変速装置40と、高電圧バッテリ60と、低電圧バッテリ62と、DC/DCコンバータ64と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70とを備える。
【0014】
エンジン22は、燃料タンクからのガソリンや軽油などの燃料を用いて動力を出力する内燃機関として構成されている。このエンジン22のクランクシャフト23は、クラッチK0を介してモータ30の回転軸31(回転子)に接続されている。このエンジン22は、排気のエネルギを用いて過給するターボタイプの過給機(いわゆるターボチャージャー)28を備える。
【0015】
過給機28は、エアクリーナ25に接続された吸気管26に配置されたコンプレッサ28aと、排気管27に配置されたタービン28bと、コンプレッサ28aとタービン28bとを連結する連結軸28cと、排気管27にタービン28bをバイパスするように取り付けられたバイパス管28dと、バイパス管28dに設けられたウェイストゲートバルブ28eとを備える。この過給機28では、ウェイストゲートバルブ28eの開度を調整することにより、バイパス管28dを通流する排気の量とタービン28bを通流する排気の量との配分比が調整され(ウェイストゲートバルブ28eの開度が小さいほど、バイパス管28dを通流する排気の量が少なくなると共にタービン28bを通流する排気の量が多くなるように調整され)、タービン28bの回転駆動力が調整され、コンプレッサ28aによる圧縮空気量が調整され、エンジン22の過給圧(吸気圧)が調整されるようになっている。なお、エンジン22は、ウェイストゲートバルブ28eが全開のときには、過給機28を備えない自然吸気タイプのエンジンと同様に動作可能になっている。また、吸気管26のコンプレッサ28aより後段には、吸気を冷却するインタークーラー26aが取り付けられている。
【0016】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24により運転制御されている。エンジンECU24は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト23の回転位置を検出するクランクポジションセンサからのクランク角θcr、吸気管26のコンプレッサ28aよりも上流側に配置されたエアフローメータからの吸入空気量Qaなどが入力ポートを介して入力されている。エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号、例えば、スロットルバルブや燃料噴射弁、点火プラグ、ウェイストゲートバルブ28eなどへの制御信号、後述するウォーターポンプ38への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサからのエンジン22のクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算したり、エアフローメータからの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の割合)KLを演算したりしている。
【0017】
エンジン22のクランクシャフト23には、エンジン22をクランキングするためのスタータモータ29aや、エンジン22からの動力を用いて発電するオルタネータ29bが接続されている。スタータ29aおよびオルタネータ29bは、低電圧バッテリ62と共に低電圧側電力ライン63に接続されており、HVECU70により制御される。
【0018】
モータ30は、同期発電電動機として構成されており、回転子コアに永久磁石が埋め込まれた回転子と、固定子コアに三相コイルが巻回された固定子とを有する。このモータ30の回転子が固定された回転軸31は、クラッチK0を介してエンジン22のクランクシャフト23に接続されていると共に自動変速機45の入力軸41に接続されている。インバータ32は、モータ30の駆動に用いられると共に高電圧側電力ライン61に接続されている。モータ30は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)34によってインバータ32の複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
【0019】
モータECU34は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。モータECU34には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。モータECU34に入力される信号としては、例えば、モータ30の回転子(回転軸31)の回転位置を検出する回転位置センサ30aからの回転位置θmや、モータ30の各相の相電流を検出する電流センサからの相電流Iu,Ivを挙げることができる。モータECU34からは、インバータ32への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU34は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU34は、回転位置センサ30aからのモータ30の回転子(回転軸31)の回転位置θmに基づいてモータ30の回転数Nmを演算している。
【0020】
冷却装置35は、インタークーラー26aの冷却流路とインバータ32の冷却流路を流路として含む循環流路36と、循環流路36に組み込まれたラジエータ37と、循環流路36に冷却水を循環させるウォーターポンプ38と、を備え、吸気とインバータ32とを冷却する。ウォーターポンプ38は低電圧側電力ライン63に接続されており、エンジンECU24により駆動制御される。
【0021】
クラッチK0は、例えば油圧駆動の摩擦クラッチとして構成されており、HVECU70によって制御され、エンジン22のクランクシャフト23とモータ30の回転軸31との接続および接続の解除を行なう。クラッチK0は、HVECU70により制御される。
【0022】
自動変速装置40は、トルクコンバータ43と、6段変速の自動変速機45とを有する。トルクコンバータ43は、一般的な流体伝動装置として構成されており、モータ30の回転軸31に接続された入力軸41の動力を自動変速機45の入力軸である変速機入力軸44にトルクを増幅して伝達したり、トルクを増幅することなくそのまま伝達したりする。自動変速機45は、変速機入力軸44と、駆動輪49にデファレンシャルギヤ48を介して連結された出力軸42と、複数の遊星歯車と、油圧駆動の複数の摩擦係合要素(クラッチ,ブレーキ)とを有する。複数の摩擦係合要素は、何れも、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレ ート)、作動油が供給される油室などにより構成される油圧サーボを有する。自動変速機45は、複数の摩擦係合要素の係脱により、第1速から第6速までの前進段や後進段を形成して、変速機入力軸44と出力軸42との間で動力を伝達する。クラッチK0や自動変速機45には、図示しない油圧制御装置により、機械式オイルポンプや電動オイルポンプからの作動油の油圧が調圧されて供給される。油圧制御装置は、複数の油路が形成されたバルブボディや、複数のレギュレータバルブ、複数のリニアソレノイドバルブなどを有する。この油圧制御装置は、HVECU70により制御される。
【0023】
高電圧バッテリ60は、例えば定格電圧が数百V程度のリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、インバータ32と共に高電圧側電力ライン61に接続されている。低電圧バッテリ62は、例えば定格電圧が12Vや14V程度の鉛蓄電池として構成されており、スタータモータ25やオルタネータ26と共に低電圧側電力ライン63に接続されている。DC/DCコンバータ64は、高電圧側電力ライン61と低電圧側電力ライン63とに接続されている。このDC/DCコンバータ64は、高電圧側電力ライン61の電力を低電圧側電力ライン63に電圧の降圧を伴って供給する。
【0024】
HVECU70は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、自動変速装置40の入力軸41に取り付けられた回転数センサ41aからの回転数Ninや、自動変速装置40の変速機入力軸44に取り付けられた回転数センサ44aからの回転数Nmi、自動変速装置40の出力軸42に取り付けられた回転数センサ42aからの回転数Noutを挙げることができる。高電圧バッテリ60の端子間に取り付けられた電圧センサからの高電圧バッテリ60の電圧Vbhや、高電圧バッテリ60の出力端子に取り付けられた電流センサからの高電圧バッテリ60の電流Ibh、低電圧バッテリ62の端子間に取り付けられた電圧センサからの電圧Vblも挙げることができる。イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ87からの車速Vも挙げることができる。また、インタークーラー26aに取り付けられた図示しない温度センサからのIC温度Ticやインバータ32に取り付けられた図示しない温度センサからのインバータ温度Tinvなども挙げることができる。さらに、冷却装置35のウォーターポンプ38を強制駆動するための外部入力88からの強制駆動指示値Dtfも挙げることができる。
【0025】
HVECU70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。HVECU70から出力される信号としては、例えば、スタータモータ25への制御信号や、オルタネータ26への制御信号を挙げることができる。クラッチK0や自動変速装置40(油圧制御装置)への制御信号、DC/DCコンバータ64への制御信号も挙げることができる。HVECU70は、エンジンECU24やモータECU34と通信ポートを介して接続されている。HVECU70は、回転数センサ41aからの自動変速装置40の入力軸41の回転数Ninを回転数センサ42aからの自動変速装置40の出力軸42の回転数Noutで除して自動変速装置40の回転数比Gtを演算している。
【0026】
こうして構成された実施例のハイブリッド車20では、HVECU70とエンジンECU24とモータECU34との協調制御により、ハイブリッド走行モード(HV走行モード)や電動走行モード(EV走行モード)で走行するように、エンジン22とクラッチK0とモータ30と自動変速装置40とを制御する。ここで、HV走行モードは、クラッチK0を係合状態としてエンジン22の動力を用いて走行するモードであり、EV走行モードは、クラッチK0を解放状態としてエンジン22の動力を用いずに走行するモードである。
【0027】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド車20の動作、特に、ウォーターポンプ38の駆動処理や外部入力88からのウォーターポンプ38への強制駆動の許否判定処理の動作について説明する。図2はエンジンECU24により実行されるウォーターポンプ38の駆動処理の一例を示すフローチャートであり、図3はエンジンECU24により実行されるウォーターポンプ38の強制駆動許否判定処理の一例を示すフローチャートである。図2のウォーターポンプ38の駆動処理や図3のウォーターポンプ38の強制駆動許否判定処理はそれぞれに予め定められた所定時間毎に繰り返し実行される。
【0028】
図2のウォーターポンプ38の駆動処理が実行されると、エンジンECU24は、まず、外部入力88からの強制駆動指示値Dtfによるウォーターポンプ38の強制駆動が許可されているか否かを判定する(ステップS100)。ウォーターポンプ38の強制駆動が許可されているか否かの判定は、図3の強制駆動許否判定処理によりウォーターポンプ38の強制駆動の許否判定が行なわれるから、その結果を用いてることにより行なうことができる。図3の強制駆動許否判定処理については後述する。
【0029】
ステップS100でウォーターポンプ38の強制駆動が許可されていないと判定したときには、インタークーラー26aの温度(IC温度)Ticやインバータ32の温度(インバータ温度)Tinvに基づいて設定される要求駆動指示値Dtrを入力し(ステップS110)、入力した要求駆動指示値Dtrを実行用指示値Dt*として設定する(ステップS120)。そして、実行用指示値Dt*を用いてウォーターポンプ38を駆動制御し(ステップS150)、本処理を終了する。ここで、要求駆動指示値Dtrとしては、ウォーターポンプ38の図示しないモータをデューチィ駆動するためのデューティを用いることができる。
【0030】
ステップS100でウォーターポンプ38の強制駆動が許可されていると判定したときには、要求駆動指示値Dtrと外部入力88からの強制駆動指示値Dtfとを入力し(ステップS130)、入力した要求駆動指示値Dtrと強制駆動指示値Dtfとのうち大きい方を実行用指示値Dt*として設定する(ステップS140)。そして、実行用指示値Dt*を用いてウォーターポンプ38を駆動制御し(ステップS150)、本処理を終了する。ここで、強制駆動指示値Dtfとしても、ウォーターポンプ38の図示しないモータをデューチィ駆動するためのデューティを用いることができる。
【0031】
図3のウォーターポンプ38の強制駆動許否判定処理が実行されると、エンジンECU24は、ウォーターポンプ38の強制駆動要求があるか否かを判定する(ステップS200)。ウォーターポンプ38の強制駆動要求の有無の判定は、外部入力88から強制駆動指示値Dtfが入力されているか否かにより行なうことができる。即ち、外部入力88から強制駆動指示値Dtfが入力されているときにはウォーターポンプ38の強制駆動要求が存在すると判定し、外部入力88から強制駆動指示値Dtfが入力されていないときにはウォーターポンプ38の強制駆動要求は存在しないと判定するのである。ウォーターポンプ38の強制駆動要求は存在しないと判定したときには、ウォーターポンプ38の強制駆動を許可する必要がないため、ウォーターポンプ38の強制駆動を禁止し(ステップS250)、本処理を終了する。
【0032】
ステップS200でウォーターポンプ38の強制駆動要求が存在すると判定したときには、ウォーターポンプ38の強制駆動を許可する条件が成立しているか否かを判定する(ステップS210~S230)。ウォーターポンプ38の強制駆動を許可する条件としては、ウォーターポンプ38は異常ではない条件(ステップS210)、車両のシステムがレディオフ(システム停止状態)である条件(ステップS220)、車速Vが閾値Vref以下である条件(ステップS230)などを挙げることができ、実施例では、これらの全ての条件が成立しているときにウォーターポンプ38の強制駆動を許可する条件が成立していると判定するものとした。ウォーターポンプ38は異常ではない条件としては、特にウォーターポンプ38のロックフェイル状態である異常ではないことを挙げることができる。車両のシステムがレディオフ(システム停止状態)である条件は、外部入力88からのウォーターポンプ38の強制駆動は車両の販売店などによりウォーターポンプ38の性能チェックなどのために行なわれるため、車両のシステムがレディオフの状態であることが望ましいことに基づいている。車速Vが閾値Vref以下である条件は、具体的には停車状態であることを意図している。このため、閾値Vrefは小さな値、例えば2km/hや3km/hなどを用いられる。
【0033】
ステップS210~S230でウォーターポンプ38の強制駆動を許可する条件が成立していないと判定したときには、ウォーターポンプ38の強制駆動を禁止し(ステップS250)、本処理を終了する。ステップS210~S230でウォーターポンプ38の強制駆動を許可する条件が成立していると判定したときには、ウォーターポンプ38の強制駆動を許可し(ステップS240)、本処理を終了する。
【0034】
以上説明した実施例のハイブリッド車20では、ウォーターポンプ38は異常ではない条件や、車両のシステムがレディオフ(システム停止状態)である条件、車速Vが閾値Vref以下である条件(停車している条件)などのウォーターポンプ38の強制駆動を許可する条件が成立しているときに外部入力88からのウォーターポンプ38の強制駆動を許可する。これにより、外部入力88からのウォーターポンプ38の強制駆動をより適正に行なうことができる。
【0035】
実施例のハイブリッド車20では、ウォーターポンプ38の強制駆動が許可されているときに要求駆動指示値Dtrと外部入力88からの強制駆動指示値Dtfとが併存するときには、要求駆動指示値Dtrと強制駆動指示値Dtfとのうち大きい方を実行用指示値Dt*として設定してウォーターポンプ38を駆動制御する。これにより、インタークーラー26aやインバータ32の過熱を抑制することができる。
【0036】
実施例のハイブリッド車20では、6段変速の自動変速機45を備えるものとした。しかし、4段変速や5段変速、8段変速などの自動変速機を備えるものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド車20では、エンジンECU24とモータECU34とHVECU70とを備えるものとした。しかし、これらのうちの少なくとも2つを一体に構成するものとしてもよい。
【0038】
実施例では、過給機28と吸気を冷却するインタークーラー26aとを有するエンジン22と、モータ30と、インバータ32と、インバータ32と吸気を冷却する冷却装置35と、クラッチK0と、自動変速装置40とを備えるハイブリッド車20に本発明を適用した。しかし、過給機と吸気を冷却するインタークーラーとを有するエンジンと、モータと、インバータと、インバータと吸気を冷却する冷却装置とを備える構成であれば、如何なる構成のハイブリッド車にも本発明を適用することができる。
【0039】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、過給機28が「過給機」に相当し、インタークーラー26aが「インタークーラー」に相当し、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータ30が「モータ」に相当し、インバータ32が「インバータ」に相当し、冷却装置35が「冷却装置」に相当し、HVECU70とエンジンECU24とモータECU34とが「制御装置」に相当する。
【0040】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0041】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
20 ハイブリッド車、22 エンジン、23 クランクシャフト、23a クランクポジションセンサ、24 エンジンECU、25 エアクリーナ、26 吸気管、26a インタークーラー、27 排気管、28 過給機、28a コンプレッサ、28b タービン、28c 連結軸、28d バイパス管、28e ウェイストゲートバルブ、29a スタータモータ、29b オルタネータ、30 モータ、30a 回転位置センサ、31 回転軸、32 インバータ、34 モータECU、40 自動変速装置、41 入力軸、41a 回転数センサ、42 出力軸、42a 回転数センサ、43 トルクコンバータ、44 変速機入力軸、44a 回転数センサ、45 自動変速機、48 デファレンシャルギヤ、49 駆動輪、60 高電圧バッテリ、61 高電圧側電力ライン、62 低電圧バッテリ、63 低電圧側電力ライン、64 DC/DCコンバータ、70 HVECU、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、87 車速センサ、88 外部入力。
図1
図2
図3