(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】紡機の繊維束集束装置
(51)【国際特許分類】
D01H 5/72 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
D01H5/72
(21)【出願番号】P 2022009027
(22)【出願日】2022-01-25
【審査請求日】2024-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】林 久秋
(72)【発明者】
【氏名】河合 基宏
(72)【発明者】
【氏名】芦崎 哲也
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-530055(JP,A)
【文献】特開平05-279927(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015014421(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1473388(EP,A2)
【文献】国際公開第98/039505(WO,A2)
【文献】特開2014-1840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 5/72
F16C 35/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デリベリトップローラとデリベリボトムローラからなり繊維束を搬送するデリベリローラ対、前記繊維束に吸引作用を及ぼす吸引部、及び前記吸引部に沿って回転される通気エプロンを有し、ドラフトされた繊維束を集束するコンデンスユニットと、
ローラスタンドに固定され、前記コンデンスユニットを支承するサポートプレートと、
前記デリベリボトムローラを回転駆動するカウンターシャフトと、
を備え、
前記サポートプレートは、前記カウンターシャフトを通す開口部を備え、
前記開口部は、ベアリングの外径より小さく構成され、前記開口部の縁で前記ベアリングの軸方向の位置を規制する、
紡機の繊維束集束装置。
【請求項2】
前記サポートプレートは、前記軸方向の両側から前記ベアリングの位置を規制する、
請求項1に記載の紡機の繊維束集束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡機の繊維束集束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラフト装置によってドラフトされた繊維束を撚り掛けの前に予め集束し、毛羽の低減や糸強力等の糸品質の向上を目的とした繊維束集束装置が種々提案されている。
【0003】
この種の繊維束集束装置は、繊維束を送出するデリベリローラ対を回転駆動するカウンターシャフトを備えている。繊維束集束装置においては、このカウンターシャフトを回転可能に支持するベアリングを、精度良く配置することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、カウンターシャフトを回転可能に支持するベアリングを、半径方向内向きのセットねじを用いて、固定することが開示されている。
【0006】
紡機において、繊維束集束装置は、機台長手方向に所定の間隔で複数の錘に対応して配置されている。そして、各繊維束集束装置は、共通のカウンターシャフトを介して回転駆動される構成となっている。
このため、カウンターシャフトを回転可能に支持するベアリングには軸方向の荷重(以下、スラスト荷重)が発生することがある。特許文献1のセットねじによる固定だけでは、セットネジとベアリングとの摩擦力よりも大きなスラスト荷重が発生した場合にはベアリングが位置ずれを起こす可能性がある。
【0007】
本開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、繊維束を搬送するデリベリローラを回転駆動するカウンターシャフトを回転可能に支持するベアリングを軸方向に精度良く配置することが可能な紡機の繊維束集束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この開示における紡機の繊維束集束装置は、デリベリトップローラとデリベリボトムローラからなり繊維束を搬送するデリベリローラ対、繊維束に吸引作用を及ぼす吸引部、及び吸引部に沿って回転される通気エプロンを有し、ドラフトされた繊維束を集束するコンデンスユニットと、ローラスタンドに固定され、コンデンスユニットを支承するサポートプレートと、デリベリボトムローラを回転駆動するカウンターシャフトとを備え、サポートプレートは、カウンターシャフトを通す開口部を備え、開口部は、ベアリングの外径より小さく構成され、開口部の縁でベアリングの軸方向の位置を規制する。
【0009】
この開示における紡機の繊維束集束装置において、サポートプレートは、軸方向の両側からベアリングの位置を規制することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
この開示によれば、紡機の繊維束集束装置において、繊維束を搬送するデリベリローラを回転駆動するカウンターシャフトを回転可能に支持するベアリングを軸方向に精度良く配置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1における紡機の繊維束集束装置の構成をドラフト装置の一部の構成と共に示す構成図である。
【
図2】実施の形態1における紡機の繊維束集束装置において、カウンターシャフトの位置決めの様子を示す構成図である。
【
図3】実施の形態1における紡機の繊維束集束装置において、カウンターシャフトの位置決めの変形例の様子を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、紡機の繊維束集束装置の実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0013】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1における紡機の繊維束集束装置100の基本的な構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、実施の形態1における紡機の繊維束集束装置100の構成をドラフト装置90の一部の構成と共に示す構成図である。
【0014】
繊維束集束装置100は、ドラフト装置90の最終送出ローラ98及び99の下流側に設けられ、ドラフトされた繊維束を撚り掛けの前に予め集束し、毛羽の低減等の処理を行う。
【0015】
繊維束集束装置100は、主に、コンデンスユニット110と、サポートプレート120と、カウンターシャフト130とを備えている。
コンデンスユニット110には、デリベリボトムローラ112と、吸引部114と、案内部115と、通気エプロン116と、デリベリトップローラ118とが設けられている。
【0016】
デリベリボトムローラ112には、カウンターシャフト130のギヤに対応する図示されないギヤが設けられている。デリベリボトムローラ112は、カウンターシャフト130のギヤにより回転駆動されて、通気エプロン116を回転駆動すると共に繊維束Fを搬送する。
【0017】
吸引部114は、複数の吸引孔を備えている。吸引部114は、搬送される繊維束Fに対して、通気エプロン116を介して吸引作用を及ぼす。
通気エプロン116は、通気性を確保できる無端状の織布により形成され、デリベリボトムローラ112と吸引部114と案内部115とに巻掛けられている。
デリベリトップローラ118は、通気エプロン116を介して圧接されるデリベリボトムローラ112と共に回転する。デリベリトップローラ118とデリベリボトムローラとはデリベリローラ対を構成する。
【0018】
以上のコンデンスユニット110の各部は、サポートプレート120、または図示されない追加の支承部材を介してサポートプレート120により支承されている。サポートプレート120は、ローラスタンド10の所定の位置に固定されている。
繊維束Fは、カウンターシャフト130により駆動されたデリベリボトムローラ112の回転に従って、デリベリボトムローラ112及びデリベリトップローラ118に挟まれ、通気エプロン116を介して吸引部114に吸引されつつ、搬送される。
カウンターシャフト130は、ローラスタンド10に収容されたベアリング140により、回転可能に支持されている。
【0019】
つぎに、繊維束集束装置100におけるカウンターシャフト130の位置決めについて、
図2を参照して説明する。
図2は、実施の形態1における紡機の繊維束集束装置100において、カウンターシャフト130の位置決めの様子を示す構成図である。
【0020】
図2の(a)は、カウンターシャフト130の軸方向を紙面垂直方向とした状態で、サポートプレート120とカウンターシャフト130との関係を示している。
図2の(b)は、
図2の(a)のIIb-IIb断面により、サポートプレート120と、カウンターシャフト130と、ベアリング140との位置関係を示している。
【0021】
サポートプレート120は、複数のボルト160によりローラスタンド10の所定の位置に固定されている。
ローラスタンド10は、紡機の基台に支持されたドラフトロッドにより支持されており、前述したドラフト装置90を支承している。ローラスタンド10は、ベアリング140を収容するための収容部12を備えている。
ベアリング140は、ローラスタンド10に設けられた収容部12に収容され、カウンターシャフト130を回転可能に支持している。
【0022】
サポートプレート120は、
図2の(b)に示すように、ローラスタンド10をその幅方向両側から挟み込むように固定されている。すなわち、一対のサポートプレート120a,120bは、ローラスタンド10の両側にそれぞれ固定されている。ベアリング140は、一対のサポートプレート120a,120bにより所定量以上の軸方向の移動が規制されている。すなわち、サポートプレート120は、カウンターシャフト130の軸方向の両側からベアリング140の軸方向の位置を規制する。
【0023】
本実施形態では、サポートプレート120は一対のサポートプレート120a,120bにより軸方向の両側からベアリング140の軸方向の位置を規制しているが、カウンターシャフト130に加わるスラスト荷重が一方向にしか働かないことが予め分かっている場合は、スラスト荷重が加わる方向のみを規制するようにしてもよい。
本実施の形態において「軸方向の位置を規制」とは、はじめからサポートプレート120とベアリングとを接触させておいてもよいし、
図2のようにギャップ以上の軸方向変位があった場合に接触して、それ以上の移動を規制するものでもよい。
【0024】
なお、カウンターシャフト130に対して複数のローラスタンド10が存在している場合、複数のローラスタンド10のうちの少なくとも1つのローラスタンド10にベアリング140が設けられていてもよい。この場合、ベアリング140が存在しないローラスタンド10においては、サポートプレート120は、コンデンスユニット110を支承するために存在している。
【0025】
一対のサポートプレート120a,120bには、それぞれカウンターシャフト130を通すため、カウンターシャフト130の外径より大きい内径を有する円形の開口部122が設けられている。開口部122の内径は、ベアリング140の外径より小さく構成されており、開口部122の縁でベアリング140の軸方向の位置を規制する。
これにより、サポートプレート120において、開口部122の縁の領域が、ベアリング140のケースまたはアウタレースのいずれかに接触し、ベアリング140の軸方向の位置を規制する。なお、開口部122の縁の領域は、ベアリング140のケースまたはアウタレースのいずれかに接触するため、カウンターシャフト130の回転を妨げない。
【0026】
開口部122は、カウンターシャフト130を通し、ベアリング140の軸方向の位置を規制できればよい。このため、開口部122は、円形以外の形状であってもよい。例えば、開口部122は、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形の形状であってもよい。
【0027】
ここで、繊維束集束装置100におけるカウンターシャフト130の位置決めの変形例について、
図3を参照して説明する。
図3は、実施の形態1における紡機の繊維束集束装置100において、カウンターシャフト130の位置決めの変形例の様子を示す構成図である。
【0028】
図3の(a)は、カウンターシャフト130の軸方向を紙面垂直方向とした状態で、サポートプレート120とカウンターシャフト130との関係を示している。
図3の(b)は、
図3の(a)のIIIb-IIIb断面により、サポートプレート120と、カウンターシャフト130と、ベアリング140との位置関係を示している。
図3において、
図2と同一部分には同一符号を付している。
図3において、
図2と重複した説明を省略し、
図2と異なる部分について説明する。
【0029】
一対のサポートプレート120a,120bには、それぞれカウンターシャフト130を通すため、カウンターシャフト130の外径より大きい開口幅を有するU字形状の開口部122aが設けられている。
開口部122aの開口幅は、ベアリング140の外径より狭い構成とされ、一端が開放されている。
これにより、サポートプレート120において、U字形状の開口部122aの縁の領域が、ベアリング140のケースまたはアウタレースのいずれかに接触し、ベアリング140の軸方向の位置を規制する。なお、開口部122aの縁の領域は、ベアリング140のケースまたはアウタレースのいずれかに接触するため、カウンターシャフト130の回転を妨げない。
【0030】
開口部122aは、カウンターシャフト130を通し、ベアリング140の軸方向の位置を規制できればよい。このため、開口部122aは、U字形以外の形状であってもよい。例えば、開口部122aは、一端が開放されたV字形、一端が開放された多角形の形状であってもよい。
【0031】
このように、紡機において、機台長手方向の複数の錘に対応して繊維束集束装置100が、共通のカウンターシャフト130を介して回転駆動される構成において、カウンターシャフト130を回転可能に支持するベアリング140にスラスト荷重が加わったとしても、ベアリング140の軸方向の位置はサポートプレート120により規制される。この結果、スラスト荷重による位置ずれを防止し、精度良くベアリング140を配置できる。
【0032】
そして、セットねじ、及び単純な嵌め合い等と比較して、より大きなスラスト荷重を受けることができる。また、セットねじ、セットねじ用ねじ穴、止め輪、止め輪のための弾付き加工などの、追加部品と追加部品用加工とが不要になる。
ベアリング140は、ローラスタンド10の収容部12に収容されているため、本来のアライメントの精度を確保することができる。
サポートプレート120は、コンデンスユニット110の各部を支承すると共にベアリング140の軸方向の位置を規制しているため、カウンターシャフト130とコンデンスユニット110の各部との間の相対的位置の精度も確保される。
【0033】
以上のように、本開示の紡機の繊維束集束装置によれば、繊維束を搬送するデリベリボトムローラ112を回転駆動するカウンターシャフト130を回転可能に支持するベアリング140を軸方向に精度良く配置することができる。
【0034】
[実施の形態により得られる効果]
以上説明したように、実施の形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0035】
本開示における紡機の繊維束集束装置100は、デリベリトップローラ118とデリベリボトムローラ112からなり繊維束を搬送するデリベリローラ対、繊維束Fに吸引作用を及ぼす吸引部114、及び吸引部114に沿って回転される通気エプロン116を有し、紡機のドラフト装置90の下流側において、ドラフトされた繊維束Fを集束するコンデンスユニット110と、ローラスタンド10に固定され、コンデンスユニット110を支承するサポートプレート120と、デリベリボトムローラ112を回転駆動するカウンターシャフト130と、を備え、サポートプレート120は、カウンターシャフト130を通す開口部122を備え、開口部122は、カウンターシャフト130を回転可能に支持するベアリングの外径より小さく構成され、開口部の縁でベアリング140の軸方向の位置を規制する。
これにより、繊維束集束装置100において、繊維束Fを搬送するデリベリボトムローラ112を回転駆動するカウンターシャフト130を回転可能に支持するベアリング140を軸方向に精度良く配置することが可能になる。
【0036】
この開示における紡機の繊維束集束装置100において、サポートプレート120は、カウンターシャフト130の軸方向の両側からベアリング140の軸方向の位置を規制する。なお、カウンターシャフト130に加わるスラスト荷重が一方向にしか働かないことが予め分かっている場合は、スラスト荷重が加わる方向のみを規制するしてもよい。これにより、カウンターシャフト130を回転可能に支持するベアリング140を、軸方向に精度良く、確実に配置することが可能になる。
【0037】
この開示における紡機の繊維束集束装置100において、サポートプレート120は、カウンターシャフト130を通す開口部122を備え、開口部の縁が、ベアリング140のケースまたはアウタレースに接触し、ベアリング140の軸方向の位置を規制する。これにより、カウンターシャフト130を回転可能に支持するベアリング140を、軸方向に精度良く、確実に配置することが可能になる。
【符号の説明】
【0038】
10 ローラスタンド、12 収容部、90 ドラフト装置、98,99 最終送出ローラ、100 繊維束集束装置、110 コンデンスユニット、112 デリベリボトムローラ、114 吸引部、115 案内部、116 通気エプロン、118 デリベリトップローラ、120,120a,120b サポートプレート、122,122a 開口部、130 カウンターシャフト、140 ベアリング、160 ボルト、F 繊維束。