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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ステアリングハンドル
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/14 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
B62D1/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022011598
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2023110257
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】家田 将旭
(72)【発明者】
【氏名】森田 文平
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-34849(JP,A)
【文献】特開2005-161922(JP,A)
【文献】特開2005-246987(JP,A)
【文献】特開2008-68814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線を有し且つ前記第1軸線を中心として正逆両方向へ回転するステアリングシャフトを備える乗物に適用され、前記ステアリングシャフトに一体回転可能に取り付けられるボス部と、前記ボス部に支持され且つ前記乗物の直進時に前記ボス部から互いに前記乗物の幅方向における反対方向へ延びる第2軸線を有する一対のスポーク部と、一対の前記スポーク部にそれぞれ設けられて前記第2軸線を中心として正逆両方向へ回転可能に構成された一対の把持部とを備えるステアリングハンドルであって、
前記直進時における前記第2軸線の周りでの前記把持部の位置を中立位置とした場合、前記直進時に前記把持部を前記中立位置に復帰させる回転制御機構を備え、
前記回転制御機構は、前記スポーク部に取り付けられ且つ前記第2軸線に沿う方向の一方の面にカム面を有する回転カムと、前記カム面に接触する接触部を有するプッシャと、前記プッシャ及び前記回転カムのうちの一方を他方側へ付勢する金属製のコイルばねと、前記コイルばねを前記プッシャ側または前記回転カム側とは反対側から支持する金属製の支持部とを備え、
前記カム面は、前記第2軸線の周りに形成され且つ前記第2軸線に直交する面に対してそれぞれ反対方向に傾斜する一対の傾斜面を有し、一対の前記傾斜面は境界部を介して互いに繋がっており、前記直進時には前記接触部と前記境界部とが接触し、
前記コイルばねと前記支持部との間には、非金属製の介在物が介在していることを特徴とするステアリングハンドル。
【請求項2】
前記介在物の表面には、シボ加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングハンドル。
【請求項3】
前記プッシャは、合成樹脂によって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステアリングハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両等の乗物を操舵する際に運転者によって操作されるステアリングハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の乗物には、操舵装置の一部として、第1軸線を有し且つ当該第1軸線を中心として正逆両方向へ回転するステアリングシャフトが設けられている。このステアリングシャフトには、乗物の運転者が把持して操作するステアリングハンドルが取り付けられる。特許文献1には、車両の直進時の位置から、第1軸線の周りに大きく、例えば90°以上回転された場合であっても、運転者の手首に負荷が掛かり難いステアリングハンドルが記載されている。
【0003】
このステアリングハンドルは、ボス部、一対のスポーク部、及び一対の把持部を備えている。ボス部は、ステアリングシャフトに一体回転可能に取り付けられる。両スポーク部は、車両の直進時に、ボス部から互いに車両の幅方向における反対方向へ延びる第2軸線を有している。両スポーク部は、第2軸線を中心として正逆両方向へ回転可能にボス部に支持されている。両把持部は、両スポーク部のボス部から遠い側の端部に固定されている。
【0004】
上記ステアリングハンドルでは、両把持部を第2軸線の周りで回転させることが可能になっている。このため、運転者は、両把持部を第2軸線の周りで回転させながらステアリングシャフトの第1軸線の周りで回転させることで、手首を自然な角度に維持することができる。これにより、ステアリングハンドルを第1軸線の周りで90°以上回転させる場合であっても、手首を不自然な角度で曲げる必要がないので、手首に負荷が掛かり難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-34849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1のステアリングハンドルは、車両直進時に両把持部を中立位置に復帰させる機構を備えていないので、操作性の点で改善の余地がある。このため、このステアリングハンドルの操作性を改善するべく、ステアリングハンドルに上記機構を設けることが考えられる。しかしながら、このようにすると、次のような問題が生じる。すなわち、上記機構は、ある程度の強度が必要であるため、その構成部品の大半を金属製にする必要がある。このため、上記機構が作動した場合に、金属製の構成部品同士が擦れ合って異音が発生するおそれがあるという問題がある。
【0007】
こうした問題は、上記した従来のステアリングハンドルが設けられた乗物であれば、車両に限らず共通して起こり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するステアリングハンドルは、第1軸線を有し且つ前記第1軸線を中心として正逆両方向へ回転するステアリングシャフトを備える乗物に適用され、前記ステアリングシャフトに一体回転可能に取り付けられるボス部と、前記ボス部に支持され且つ前記乗物の直進時に前記ボス部から互いに前記乗物の幅方向における反対方向へ延びる第2軸線を有する一対のスポーク部と、一対の前記スポーク部にそれぞれ設けられて前記第2軸線を中心として正逆両方向へ回転可能に構成された一対の把持部とを備えるステアリングハンドルであって、前記直進時における前記第2軸線の周りでの前記把持部の位置を中立位置とした場合、前記直進時に前記把持部を前記中立位置に復帰させる回転制御機構を備え、前記回転制御機構は、前記スポーク部に取り付けられ且つ前記第2軸線に沿う方向の一方の面にカム面を有する回転カムと、前記カム面に接触する接触部を有するプッシャと、前記プッシャ及び前記回転カムのうちの一方を他方側へ付勢する金属製のコイルばねと、前記コイルばねを前記プッシャ側または前記回転カム側とは反対側から支持する金属製の支持部とを備え、前記カム面は、前記第2軸線の周りに形成され且つ前記第2軸線に直交する面に対してそれぞれ反対方向に傾斜する一対の傾斜面を有し、一対の前記傾斜面は境界部を介して互いに繋がっており、前記直進時には前記接触部と前記境界部とが接触し、前記コイルばねと前記支持部との間には、非金属製の介在物が介在していることを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、乗物の直進時には、一対のスポーク部及び一対の把持部が、乗物の幅方向におけるボス部の両側に位置する。一対の把持部は、第2軸線を中心とする回転方向における中立位置に位置する。回転制御機構では、コイルばねの付勢力により、一例としてプッシャの接触部が回転カムのカム面の境界部に押し付けられている。
【0010】
上述の状態から、運転者により把持部に対して第1軸線の周りの正逆いずれかの方向に回転させようとする力が加えられると、この力がスポーク部及びボス部を介してステアリングシャフトに伝達される。これにより、把持部、スポーク部、ボス部、及びステアリングシャフトが第1軸線の周りを回転する。このようにして乗物の操舵が行われて乗物の進行方向が変更される。上記第1軸線を中心とする把持部の回転は、当該把持部を把持した運転者の手首の構造から、第2軸線を中心とする把持部の正逆両方向の回転を伴いながら行われる。
【0011】
回転制御機構では、一例として把持部が回転カムと一体となって正逆両方向へ回転する。この回転カムの回転に伴いカム面が第2軸線の周りを正逆両方向へ回転する。すると、カム面におけるプッシャの接触部の接触位置が変化する。この接触位置が境界部から傾斜面に移ると、コイルばねを圧縮するように弾性変形させながらプッシャを回転カムから遠ざけようとする力が発生する。この力は、回転カムの回転に伴って傾斜面における接触部との接触位置が境界部から回転カムの周方向へ遠ざかるに連れて大きくなる。加えて、上記力は、把持部を第2軸線の周りで回転させる際の操舵荷重として、当該把持部を把持した手を通じて運転者に伝わる。
【0012】
上述の状態から、運転者により、把持部に加えられる上記方向の力が弱められるか又は把持部に対して上記直進時の位置に戻そうとする力が加えられると、把持部、スポーク部、ボス部、及びステアリングシャフトが第1軸線の周りを上記とは逆方向へ回転する。これにより、乗物の進行方向が直進方向に戻される。上記第1軸線を中心とする把持部の回転は、第2軸線を中心とする把持部の上記とは逆方向の回転を伴いながら行われる。
【0013】
回転制御機構では、把持部が回転カムと一体となって上記とは逆方向へ回転する。この回転カムの回転に伴いカム面が第2軸線の周りを上記とは逆方向へ回転する。すると、カム面の傾斜面におけるプッシャの接触部との接触位置が境界部に近づく。これに伴ってコイルばねを圧縮するように弾性変形させながらプッシャを回転カムから遠ざけようとする上記力が減少するため、運転者に伝わる上記操舵荷重が減少する。上記力及び上記操舵荷重は、乗物の直進時に、カム面の境界部とプッシャの接触部とが接触することで最小となる。このとき、把持部は中立位置にある。
【0014】
このように、把持部を第2軸線の周りで回転させる際の操舵荷重が、中立位置からの把持部の回転量に応じて変化する。このため、上記操舵荷重が把持部の回転量に関係なく一定である場合に比べて操舵感が向上する。
【0015】
加えて、上述のようにコイルばねを圧縮するように弾性変形させる際には、コイルばねが多少なりとも回転したりスライドしたりする。このとき、コイルばねと支持部とが直接接触していると、金属部品同士であるコイルばねと支持部とが擦れ合って異音が発生するおそれがある。
【0016】
この点、この構成では、コイルばねと支持部との間に非金属製の介在物が介在しているため、コイルばねと支持部とが直接擦れ合うことを抑制できる。このため、金属部品同士であるコイルばねと支持部との擦れ合いに伴う異音の発生を抑制できる。この場合、コイルばねと介在物とは、直接接触した状態で擦れ合うが、介在物が非金属製である。このため、コイルばねと介在物との擦れ合いに伴う異音は、ほとんど発生しない。
【0017】
上記ステアリングハンドルにおいて、前記介在物の表面には、シボ加工が施されていることが好ましい。
この構成によれば、介在物の表面に細かな凹凸が形成されて当該表面の摩擦係数が大きくなるので、コイルばねが介在物の表面を滑り難くなる。このため、介在物に対してコイルばねの位置がずれることを抑制できる。
【0018】
上記ステアリングハンドルにおいて、前記プッシャは、合成樹脂によって構成されていることが好ましい。
この構成によれば、プッシャが金属製のコイルばねと擦れ合った場合に異音が発生することを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、異音の発生を抑制できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態のステアリングハンドルの骨格部分の斜視図である。
図2図1の要部を示す正面図である。
図3図1の要部を示す断面図である。
図4図1の要部を示す分解斜視図である。
図5】回転カムをプッシャ側から見たときの斜視図である。
図6】回転カムを回転部側から見たときの斜視図である。
図7】回転部を回転カム側から見たときの斜視図である。
図8】回転カムをプッシャ側から見たときの側面図である。
図9】回転カムの正面図である。
図10】中立位置にあるときの把持部の正面図である。
図11】把持部が中立位置から手前方向へ最大回転角度回転されたときのステアリングハンドルの要部を示す正面図である。
図12図11における回転カムをプッシャ側から見たときの側面図である。
図13図11の側面図である。
図14】把持部が中立位置から奥方向へ最大回転角度回転されたときのステアリングハンドルの要部を示す正面図である。
図15図14における回転カムをプッシャ側から見たときの側面図である。
図16図14の側面図である。
図17】変更例のステアリングハンドルの骨格部分の要部を示す断面図である。
図18】別の変更例のステアリングハンドルの骨格部分の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、ステアバイワイヤシステムが適用された車両の操舵装置に用いられるステアリングハンドルに具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
ステアバイワイヤシステムとは、ステアリング操作を機械的な連結ではなく、電気信号でアクチュエータを介して操舵するシステムである。このシステムが適用された車両では、ステアリングハンドルを、ステアリングシャフトの周りで大きく、例えば最大で150°程度回転させることがある。
【0022】
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向(乗物の幅方向)であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。
【0023】
図1に示すように、乗物の一例としての車両の室内の運転席の前方には、車両を操舵する際に運転者(図示略)によって操作される操舵装置10が設けられている。操舵装置10は、第1軸線L1を有するステアリングシャフト11及びステアリングハンドル12を備えている。ステアリングシャフト11は、第1軸線L1を中心として正逆両方向へ回転可能に構成されている。ステアリングシャフト11は、後方ほど高くなるように車両の前後方向に対して傾斜した状態で配置されている。
【0024】
本実施形態では、ステアリングハンドル12の各部について説明する際には、第1軸線L1を基準とする。この第1軸線L1に沿う方向を単に「前後方向」という。また、第1軸線L1に沿う方向の前方を単に「前方」、「前」等といい、第1軸線L1に沿う方向の後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0025】
図1では、ステアリングハンドル12の骨格部分のみを示している。ステアリングハンドル12は、ボス部13、一対のスポーク部14、及び一対の把持部15を備えている。
<ボス部13>
図1に示すように、ボス部13は、筒状部16及びケース部17を備えている。筒状部16は、ステアリングシャフト11の後端部に一体回転可能に取り付けられている。ケース部17は、前壁18、下壁19、右壁20、及び左壁21を備えている。ケース部17の前壁18は、筒状部16の後端部に固定されている。ケース部17内には、例えばエアバッグ装置(図示略)などが収容される。
【0026】
<スポーク部14>
図1及び図2に示すように、一対のスポーク部14は、第2軸線L2を有するシャフトによってそれぞれ構成されている。両スポーク部14の基端部は、ケース部17の左壁21及び右壁20にそれぞれ支持されている。この場合、両第2軸線L2は、車両の直進時に、ボス部13から互いに左右方向における反対方向へ延びた状態となる。換言すれば、両第2軸線L2は、ボス部13から左右方向における両側へ放射状に延びた状態となる。
【0027】
なお、ここでの「放射状に延びた状態」には、第1軸線L1に対し直交する面に沿って延びる状態が含まれるほか、第1軸線L1に対し直交に近い状態で交差する面に沿って延びる状態も含まれる。例えば、第1軸線L1から径方向外方へ遠ざかるに従い運転者に近づくように、第1軸線L1に対し直交に近い状態で交差する面に沿って延びる状態が、上記「放射状に延びた状態」に含まれる。
【0028】
一対のスポーク部14は、第1軸線L1を挟んで互いに面対称の関係を有する形状をなしている。このため、ここでは右方のスポーク部14についてのみ説明する。
図1及び図4に示すように、スポーク部14の一部は、円柱状の一般部22によって構成されている。スポーク部14のうち、一般部22よりも第1軸線L1から遠い部分は、それぞれ一般部22よりも外径の小さい円柱状をなす第1軸部23及び第2軸部24によって構成されている。
【0029】
第1軸部23の外径は、第2軸部24の外径よりも大きくなっている。第2軸部24の先端面には、ねじ孔24aが形成されている。第1軸部23の先端部の周面の一部には、平面部23aが形成されている。すなわち、第1軸部23の先端部は、断面視D字状をなしている。
【0030】
一般部22における第1軸線L1側の端面の中央部には、断面視D字状をなす突出部25が形成されている。突出部25は、スポーク部14の基端部を構成している。突出部25は、ケース部17の右壁20に形成されるとともに突出部25と対応するD字状をなす貫通孔(図示略)に嵌合した状態で固定されている。したがって、スポーク部14は、突出部25において第2軸線L2を中心として回転しない状態でケース部17の右壁20に固定されている。
【0031】
<把持部15>
図1及び図3に示すように、一対の把持部15は、運転者の手によって把持される箇所であるとともに、第1軸線L1を挟んで互いに面対称の関係を有する形状をなしている。各把持部15は、スポーク部14に対して第1軸部23及び第2軸部24を覆うように設けられている。各把持部15は、スポーク部14に対して第2軸線L2を中心として正逆両方向へ回転可能に設けられている。すなわち、各把持部15は、回転しないスポーク部14を回転中心としてスポーク部14の周りを正逆両方向へ回転可能に構成されている。
【0032】
ここで、図2及び図10に示すように、車両の直進時における各把持部15の第2軸線L2の周りにおける位置を「中立位置」とする。各把持部15のうち、図2において第2軸線L2よりも上方部分が、運転者に近づく側へ回転する方向を「手前方向」とする。各把持部15のうち、図2において第2軸線L2よりも上方部分が、運転者から遠ざかる側へ回転する方向を「奥方向」とする。
【0033】
図2及び図3に示すように、各把持部15内には、回転制御機構26が備えられている。すなわち、各把持部15には、スポーク部14の第1軸部23及び第2軸部24に取り付けられた回転制御機構26を収容する収容凹部27が設けられている。収容凹部27は、第2軸線L2に沿って延びるとともにケース部17側から見て略六角形状をなしている。回転制御機構26の構造は、第1軸線L1を挟んで互いに面対称の関係を有している。このため、ここでは、右方の回転制御機構26についてのみ説明する。
【0034】
<回転制御機構26>
回転制御機構26は、次の3つの機能を有している(図8参照)。
・把持部15の中立位置から手前方向への最大回転角度θ2を規定する。
【0035】
・把持部15の中立位置から奥方向への最大回転角度θ1を規定する。
・車両の直進時に把持部15を中立位置に復帰させる。
図2図4に示すように、回転制御機構26は、スポーク部14における先端側(ケース部17から遠い側)から基端側(ケース部17に近い側)に向かって順に配置される次のような複数の部材を備えている。すなわち、回転制御機構26は、回転部28、回転カム29、プッシャ30、コイルばね31、及び支持部32を主要な部材として備えている。次に、回転制御機構26を構成する各部材について説明する。なお、回転制御機構26を構成する各部材の基端側及び先端側は、スポーク部14の先端側及び基端側と一致するものとする。
【0036】
<回転部28>
図3図4及び図7に示すように、回転部28は、中心部に円形の孔33を有した筒状をなしている。第2軸線L2方向から見たときの回転部28の輪郭は、把持部15の収容凹部27と対応する略六角形状をなしている。回転部28における基端側の端面には、孔33を囲む環状の突部34が設けられている。突部34を構成する周壁における中心を挟んで対向する2箇所には、当該周壁の外面を平面状にした平面部34aが形成されている。したがって、第2軸線L2方向から見たときの突部34の輪郭は、非真円形状をなしている。
【0037】
回転部28の孔33の両端部には、第1ベアリング35及び第2ベアリング36がそれぞれ嵌入されている。基端側に位置する第1ベアリング35における基端側の端面は、突部34の端面と面一になっている。先端側に位置する第2ベアリング36における先端側の端面は、回転部28における先端側の端面及び孔33に挿通された第2軸部24の端面と面一になっている。
【0038】
第1ベアリング35及び第2ベアリング36は、同一の構成になっている。各ベアリング35,36は、環状の外輪37と、環状の内輪38と、外輪37と内輪38との間に配置された複数の転動体39とを備えている。転動体39は、玉またはころによって構成される。第2軸部24のねじ孔24aには、ワッシャ40を介してボルト41が螺入されている。
【0039】
ワッシャ40の外径は、第2ベアリング36の内輪38の外径とほぼ同じになっている。したがって、第2ベアリング36は、内輪38がワッシャ40によって押さえられることで、回転部28の孔33から抜けないようになっている。回転部28の孔33には、第1ベアリング35の外輪37における先端側の端部が当接する第1段差面42及び第2ベアリング36の外輪37における基端側の端部が当接する第2段差面43がそれぞれ形成されている。
【0040】
第1段差面42及び第2段差面43は、それぞれ第1ベアリング35及び第2ベアリング36の第2軸線L2方向における位置決めをする。各ベアリング35,36の内輪38は、スポーク部14の第2軸部24と嵌合している。各ベアリング35,36の外輪37は、回転部28の孔33と嵌合している。
【0041】
把持部15における回転部28と対応する位置には、把持部15の内外を貫通する段付ねじ孔44が形成されている。段付ねじ孔44は、第2軸線L2と略直交するように延びている。段付ねじ孔44には、把持部15の外側からボルト45が螺入されている。このボルト45を締めることで、回転部28がボルト45によって第2軸線L2と略直交する方向に押圧されて収容凹部27の側面に押し付けられる。
【0042】
これにより、回転部28が収容凹部27の内面とボルト45とで挟持されるので、収容凹部27から回転部28が抜けないようになる。したがって、回転部28は、第2軸線L2を中心として把持部15と一体回転する。
【0043】
ボルト45を締めた後は、ボルト45の上から段付ねじ孔44に目隠し部材46を嵌入することによって、外部からボルト45が見えなくなる。収容凹部27から回転部28が抜けるようにしたい場合には、段付ねじ孔44から目隠し部材46を取り外した後、ボルト45を緩めればよい。目隠し部材46は、例えば、エラストマによって構成される。
【0044】
<回転カム29>
図3図6に示すように、回転カム29は、第2軸線L2に沿う方向へ延びる円形の挿通孔47を有するとともに、全体として円環状をなしている。挿通孔47には、第2軸部24が挿通されている。この挿通により、回転カム29は、第2軸部24によって回転可能に支持される。回転カム29における先端側の面には、回転部28の突部34の輪郭と対応する形状の凹部48が形成されている。
【0045】
凹部48の周面には、突部34の2つの平面部34aと対応する2つの平面部48aが形成されている。凹部48には、2つの平面部48aが回転部28の突部34の2つの平面部34aとそれぞれ対向するように、突部34が挿入されている。この形態の挿入により、回転部28と回転カム29とが一体回転可能に連結される。したがって、回転カム29は、把持部15の回転に伴って第2軸線L2を中心として回転部28と一体回転する。
【0046】
図5図8及び図9に示すように、回転カム29は、第2軸線L2に沿う方向の両方の面のうちの一方の面の一例としての基端側の面(ケース部17に近い側の面)にカム面49を有している。カム面49は、回転カム29の全周にわたって形成されている。カム面49は、傾斜面50,51の組合わせを2組有している。各組における傾斜面50,51は、第2軸線L2の周りの半分(180°)の角度の領域に形成されている。傾斜面50,51は、それぞれ回転カム29の径方向の外側へ膨らむ円弧状をなしている。
【0047】
各組における傾斜面50は、把持部15が手前方向へ回転されたときに、後述するプッシャ本体53の接触部56が接触する面である。各組における傾斜面51は、把持部15が奥方向へ回転されたときに接触部56が接触する面である。各組における傾斜面50,51は、第2軸線L2に直交する面P1に対し、それぞれ反対方向に傾斜している。
【0048】
傾斜面50,51のそれぞれの傾斜角度は、第2軸線L2の周りの位置に拘らず同一に設定されている。換言すれば、各傾斜面50,51は、面P1に対し単一の角度で傾斜している。各組における傾斜面50,51が面P1に対してそれぞれなす傾斜角度は、互いに同一に設定されている。各組における傾斜面50,51は、第2軸線L2の周りにおいて互いに隣り合っている。
【0049】
各傾斜面50,51は、先端側(ケース部17から遠い側)の端部において互いに境界部52を介して繋がっている。各境界部52は、第2軸線L2に沿う方向において、各傾斜面50,51におけるケース部17から最も遠い位置に位置する。各傾斜面50,51は、境界部52から第2軸線L2の周りに遠ざかるにつれて、回転部28から第2軸線L2に沿う方向に遠ざかる。一方の組における傾斜面50と、他方の組における傾斜面51とは、第2軸線L2の周りに互いに隣り合っている。
【0050】
<プッシャ30>
図3図4及び図9に示すように、プッシャ30は、プッシャ本体53と保持部54とを備えている。プッシャ本体53は、第2軸線L2に沿う方向へ延びる挿通孔55を有するとともに、全体として円環状をなしている。プッシャ本体53は、例えばポリアセタール(POM)などの合成樹脂によって構成されている。挿通孔55の多くの部分は、第2軸線L2を中心として円弧状に湾曲している。挿通孔55は、平面部55aを一部に有している。つまり、挿通孔55は、D字状をなしている。
【0051】
第1軸部23は、その平面部23aがプッシャ本体53の挿通孔55の平面部55aに対向するように、挿通孔55に挿通されている。この形態の挿通により、プッシャ本体53が第1軸部23(スポーク部14)に対して回転不能に取り付けられる。この場合、プッシャ本体53は、回転を規制された状態で第2軸線L2に沿う方向にスライド可能に、第1軸部23に取り付けられている。
【0052】
プッシャ本体53は、一対の接触部56を有している。一対の接触部56は、プッシャ本体53における第2軸線L2を挟んで対向する位置に位置している。各接触部56は、第2軸線L2に沿って回転カム29側へ突出している。各接触部56の先端面は、球面状をなしている。各接触部56は、球面状の先端面において回転カム29のカム面49に接触している。各接触部56は、車両の直進時に、回転カム29のカム面49の境界部52に接触する。
【0053】
<保持部54>
図3及び図4に示すように、保持部54は、例えばポリアセタール(POM)などの合成樹脂によって構成されている。保持部54は、円筒状の本体部57と、本体部57の先端部に設けられるとともに外径が本体部57よりも大きい円環状のフランジ部58とを備えている。保持部54には、第1軸部23が挿通されている。
【0054】
すなわち、保持部54は、回転を許容された状態で第2軸線L2に沿う方向にスライド可能に、第1軸部23に取り付けられている。フランジ部58の外径は、プッシャ本体53の外径と同じになっている。フランジ部58は、プッシャ本体53における基端側の面に接触している。
【0055】
<コイルばね31>
図3及び図4に示すように、コイルばね31は、金属によって構成されている。コイルばね31には、第1軸部23及び保持部54の本体部57が挿通されている。コイルばね31は、プッシャ30の外部に配置されている。すなわち、コイルばね31は、プッシャ本体53の外部であって且つ保持部54の本体部57の径方向における外側に配置されている。この場合、保持部54の本体部57は、コイルばね31の中心軸線と第2軸線L2とが一致するように、コイルばね31の位置を保持する。
【0056】
これにより、コイルばね31を形成している螺旋状に巻かれた線材の中心線とプッシャ本体53の一対の接触部56の中心線とが直交する。すなわち、コイルばね31を構成する螺旋状に巻かれた線材と一対の接触部56とが、第2軸線L2の延びる方向において、対向する。
【0057】
コイルばね31の先端部と保持部54のフランジ部58との間には、円環状の介在物59が介在している。介在物59は、例えばゴムや合成樹脂などの非金属材料によって構成される。介在物59には、保持部54の本体部57が挿入されている。介在物59の表面全体には、シボ加工が施されている。
【0058】
コイルばね31の先端部は、介在物59に接触している。コイルばね31は、介在物59を介してプッシャ30を回転カム29側へ付勢可能に構成されている。すなわち、コイルばね31は、介在物59及び保持部54のフランジ部58を介してプッシャ本体53を回転カム29側へ付勢可能に構成されている。
【0059】
<支持部32>
図3及び図4に示すように、支持部32は、金属製のフランジ付きワッシャによって構成されている。すなわち、支持部32は、円筒状のワッシャ部60と、ワッシャ部60の基端部に設けられるとともに外径がワッシャ部60よりも大きい円環状のフランジ部61とを備えている。支持部32には、第1軸部23が挿通されている。ワッシャ部60の外径は、保持部54の本体部57の外径と同じになっている。
【0060】
コイルばね31の基端部と支持部32のフランジ部61との間には、円環状の介在物62が介在している。この介在物62は、上述した介在物59と全く同一の構成になっている。支持部32のワッシャ部60は、介在物62に挿入されている。ワッシャ部60とフランジ部61との間の段差は、介在物62の厚さと同じになっている。したがって、ワッシャ部60の先端側の端面と介在物62における先端側の面とは、面一になっている。
【0061】
コイルばね31の基端部は、介在物62に接触している。支持部32のワッシャ部60と保持部54の本体部57との間には、隙間が形成されている。支持部32における基端側の面は、スポーク部14の一般部22における先端側の端面に接触している。支持部32は、介在物62を介してコイルばね31をプッシャ30側とは反対側から支持している。
【0062】
回転制御機構26は、さらに、中立位置に位置する把持部15の正逆各方向への最大回転角度θ1,θ2を規定する規制部を備えている。規制部は、第1規制部63及び第2規制部64からなる。
【0063】
<第1規制部63>
図3及び図14図16に示すように、第1規制部63は、把持部15が中立位置から奥方向へ回転されたときの最大回転角度θ1を規定する機能を有している。第1規制部63は、保持部54のスライドを規制することで、上記機能を実現している。
【0064】
第1規制部63は、保持部54の本体部57と、支持部32のワッシャ部60とによって構成されている。第1規制部63は、保持部54の支持部32側の方向へのスライドに伴って本体部57がワッシャ部60に接触することにより、保持部54の当該方向へのスライドを規制する。第1規制部63は、この保持部54のスライドの規制により、把持部15が最大回転角度θ1を越えて奥方向へ回転するのを規制する。この場合、支持部32のワッシャ部60と保持部54の本体部57との間の隙間は無くなる。
【0065】
<第2規制部64>
図11図13に示すように、第2規制部64は、把持部15が中立位置から手前方向へ回転されたときの最大回転角度θ2を規定する機能を有している。第2規制部64は、回転カム29の手前方向への回転を規制することによって、上記機能を実現している。
【0066】
第2規制部64は、図5図8及び図9に示すように、回転カム29に形成された平らな2つの規制壁面65を備えている。各規制壁面65は、各組の傾斜面50のうち、上記境界部52側とは反対側の端縁を起点として第2軸線L2に沿って回転部28から遠ざかる側へ延びている。傾斜面50,51が2組設けられて一方の組の傾斜面50と他方の組の傾斜面51とが隣り合っている構造の本実施形態では、規制壁面65が、一方の組の傾斜面50と、他方の組の傾斜面51との間の面によって構成される。
【0067】
図12に示すように、第2規制部64は、回転カム29の回転に伴って各規制壁面65が、対応する接触部56に接触することにより、把持部15が最大回転角度θ2を越えて手前方向へ回転するのを規制する。
【0068】
さらに、図8に示すように、第1規制部63によって規制される把持部15の奥方向への最大回転角度θ1は、第2規制部64によって規制される把持部15の手前方向への最大回転角度θ2よりも大きく設定されている。本実施形態では最大回転角度θ1が約130°に設定されるとともに最大回転角度θ2が約50°に設定されているが、最大回転角度θ1,θ2は適宜変更してもよい。したがって、第2軸線L2の周りにおける各傾斜面50,51の長さを周長とすると、傾斜面51の周長は傾斜面50の周長よりも長く設定されている。
【0069】
図1及び図4に示すように、上記の構成を有する回転制御機構26のうち、支持部32、コイルばね31、プッシャ30、及び回転カム29によって、回転トルク発生機構部66が構成されている。回転トルク発生機構部66は、把持部15が第2軸線L2の周りで正逆各方向へ回転されたときに回転トルクをそれぞれ発生して把持部15に作用させる機能を担っている。
【0070】
図8及び図9に示すように、回転トルク発生機構部66は、把持部15が中立位置に位置するときに、すなわち接触部56が境界部52に接触するときに、回転トルクを最小にする。回転トルク発生機構部66は、把持部15が奥方向へ回転されたときに、中立位置からの回転角度が大きくなるにつれて、すなわち傾斜面51の接触部56との接触位置が境界部52から遠ざかるにつれて、回転トルクを徐々に増大させる。そして、図14図16に示すように、回転トルク発生機構部66は、把持部15が奥方向へ最大回転角度θ1回転されたときに、すなわち第1規制部63によって回転が規制されたときに回転トルクを最大にする。
【0071】
図8及び図9に示すように、回転トルク発生機構部66は、把持部15が手前方向へ回転されたときに、中立位置からの回転角度が大きくなるにつれて、すなわち傾斜面50の接触部56との接触位置が境界部52から遠ざかるにつれて、回転トルクを徐々に増大させる。そして、図11図13に示すように、回転トルク発生機構部66は、把持部15が手前方向へ最大回転角度θ2回転されたときに、すなわち第2規制部64によって回転が規制されたときに回転トルクを最大にする。
【0072】
なお、上記回転トルクは、把持部15が手前方向へ回転されたときにも奥方向へ回転されたときにも、回転角度の増加とともに、0.1[N・m]~1.5[N・m]の範囲で増加する特性となるように設定されることが好ましい。回転トルクが上記の範囲にあると、把持部15が少しの力で回転することが起こり難くなるので、把持部15を安定して回転させることができる。加えて、回転トルクが上記の範囲にあると、把持部15を回転させるのに過大な力を加えなくてもよいので、手首に過大な負荷がかかるのを抑制できる。
【0073】
<ステアリングハンドル12の作用>
図1及び図2に示すように、車両の直進時において、各スポーク部14及び各把持部15は、ボス部13のケース部17の左右両側方に位置する。また、図2図3及び図10に示すように、各把持部15は、第2軸線L2を中心とする回転方向において、中立位置に位置する。各回転制御機構26では、コイルばね31によって回転カム29側へ付勢されたプッシャ本体53の各接触部56が、カム面49の対応する境界部52に押し付けられる(図8及び図9の各二点鎖線参照)。
【0074】
このときには、各把持部15に作用する回転トルクは最小となる。この回転トルクは、各把持部15を第2軸線L2の周りで回転させる際の操舵荷重として、各把持部15を把持した手を通じて運転者に伝わる。運転者が感じる操舵荷重は、最小となる。
【0075】
上記の状態から、運転者により各把持部15に対し、上記回転トルクに抗して第1軸線L1の周りの正逆いずれかの方向に回転させようとする力、すなわち時計回り方向又は反時計回り方向へ向かう力が加えられると、各回転制御機構26が次のように作用する。
【0076】
図1に示すように、運転者が各把持部15に加えた上記力は、各スポーク部14及びボス部13を介してステアリングシャフト11に伝達される。この伝達により、各把持部15、各スポーク部14、ボス部13、及びステアリングシャフト11が第1軸線L1の周りを回転する。これにより、操舵装置10が作動して車両の操舵が行なわれ、車両の進行方向が変更される。
【0077】
上記第1軸線L1を中心とする各把持部15の回転は、当該把持部15を把持した運転者の手首の構造から、第2軸線L2を中心とする各把持部15の正逆両回転を伴いながら行なわれる。このように、各把持部15が第2軸線L2の周りで回転するため、回転しないものに比べて、運転者は、各把持部15を把持したままでステアリングハンドル12を第1軸線L1の周りで大きく(90°以上)回転させることができる。
【0078】
ここで、例えば、右側の把持部15に着目した場合、当該把持部15が第1軸線L1の周りを反時計回り方向へ回転されると、図11図13に示すように、当該把持部15が上記回転トルクに抗して手前方向へ回転される。回転制御機構26では、把持部15の回転に伴って回転カム29が把持部15と同一方向である手前方向へ回転する。この回転カム29の回転に伴ってカム面49が第2軸線L2の周りを手前方向へ回転する。
【0079】
すると、カム面49におけるプッシャ本体53の各接触部56に接触する位置が変化する。カム面49における各接触部56の接触位置が各境界部52から各傾斜面50に移ると、コイルばね31を弾性圧縮変形させながらプッシャ本体53を支持部32側へ押し返す力が発生する。この力により、プッシャ本体53及び保持部54、すなわちプッシャ30が第2軸線L2に沿って支持部32側へスライドする。
【0080】
上記力は、回転カム29の回転に伴って各傾斜面50の各接触部56との接触位置が、各境界部52から周方向へ遠ざかるにつれて増加する。また、回転カム29の回転に伴ってコイルばね31の圧縮量が増加すると、回転トルクが増加する。したがって、回転トルクは、把持部15の回転角度に応じて変化する特性となる。操舵荷重は、把持部15の中立位置から手前方向への回転角度が大きくなるにつれて増加する。
【0081】
第2軸線L2の周りにおける把持部15の回転に伴って回転カム29が最大回転角度θ2回転すると、各規制壁面65がプッシャ本体53の対応する接触部56に接触する(図12参照)。これらの接触により、回転カム29がそれ以上手前方向へ回転することが規制される。
【0082】
これにより、把持部15が最大回転角度θ2を越えて回転することが規制される。このとき、コイルばね31の圧縮量が最大となるので、回転トルク及び操舵荷重が最大となる。さらにこのとき、保持部54の本体部57と支持部32のワッシャ部60との間には、隙間が形成されている。
【0083】
一方、右側の把持部15が第1軸線L1の周りを時計回り方向へ回転されると、図14図16に示すように、把持部15が上記回転トルクに抗して奥方向へ回転する。回転制御機構26では、把持部15の回転に伴って回転カム29が把持部15と同一方向である奥方向へ回転する。この回転カム29の回転に伴ってカム面49が第2軸線L2の周りを奥方向へ回転する。
【0084】
すると、カム面49におけるプッシャ本体53の各接触部56に接触する位置が変化する。カム面49における各接触部56の接触位置が各境界部52から各傾斜面51に移ると、コイルばね31を弾性圧縮変形させながらプッシャ本体53を支持部32側へ押し返す力が発生する。この力により、プッシャ本体53及び保持部54、すなわちプッシャ30が第2軸線L2に沿って支持部32側へスライドする。
【0085】
上記力は、回転カム29の回転に伴って各傾斜面51の各接触部56との接触位置が、各境界部52から周方向へ遠ざかるにつれて増加する。また、回転カム29の回転に伴ってコイルばね31の圧縮量が増加すると、回転トルクが増加する。したがって、回転トルクは、把持部15の回転角度に応じて変化する特性となる。操舵荷重は、把持部15の中立位置から奥方向への回転角度が大きくなるにつれて増加する。
【0086】
把持部15の上記奥方向への回転に伴って回転カム29が回転すると、プッシャ本体53及び保持部54、すなわちプッシャ30が回転カム29によって押されて支持部32に接近する。把持部15が回転カム29を伴って最大回転角度θ1回転すると、保持部54の本体部57が支持部32のワッシャ部60に接触する。これらの接触により、回転カム29がそれ以上奥方向へ回転することが規制される。これにより、把持部15が最大回転角度θ1を越えて回転することが規制される。このとき、コイルばね31の圧縮量が最大となるので、回転トルク及び操舵荷重が最大となる。
【0087】
上述のように、把持部15の回転に伴って回転カム29が回転される度にコイルばね31の弾性圧縮変形量が変化するので、コイルばね31が繰り返し伸縮する。このとき、例えば、コイルばね31と支持部32とが直接接触していると、コイルばね31も支持部32も金属製であるため、コイルばね31の伸縮に伴ってコイルばね31と支持部32とが擦れ合うことで異音が発生してしまう。
【0088】
この点、本実施形態の回転制御機構26では、コイルばね31と支持部32のフランジ部61との間に非金属製の介在物62が介在しているため、コイルばね31と支持部32とが直接擦れ合うことが抑制される。このため、金属部品同士であるコイルばね31と支持部32との擦れ合いに伴う異音の発生が抑制される。
【0089】
この場合、コイルばね31と介在物62とは直接接触した状態で擦れ合うこともあるが、介在物62が非金属製であるため、コイルばね31と介在物62との擦れ合いに伴う異音の発生が効果的に抑制される。特に、介在物62をゴム製にした場合には、コイルばね31と介在物62とが擦れ合っても異音が発生することは、ほとんどなくなる。
【0090】
また、コイルばね31が繰り返し伸縮すると、コイルばね31が介在物62の表面を滑ることで、コイルばね31と介在物62との擦れ合いに伴う異音が僅かながら発生するおそれがある。この点、本実施形態の介在物62は、表面にシボ加工が施されているため、介在物62とコイルばね31との間の摩擦力が大きくなる。このため、介在物62に対するコイルばね31の位置ずれが効果的に抑制される。
【0091】
したがって、コイルばね31と介在物62との擦れ合いが抑制されるとともに、介在物62に対するコイルばね31の位置が大きくずれてコイルばね31が支持部32に直接接触することが抑制される。この結果、上述したコイルばね31の伸縮に伴う異音の発生がより一層効果的に抑制される。
【0092】
さらに、プッシャ30は、合成樹脂によって構成されている。このため、金属製のコイルばね31の位置がずれて当該コイルばね31がプッシャ30に接触した状態で擦れ合った場合でも、異音の発生が抑制される。
【0093】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)ステアリングハンドル12の回転制御機構26において、金属製のコイルばね31と金属製の支持部32との間に、非金属製の介在物62が介在している。
【0094】
上述のようにコイルばね31を圧縮するように弾性変形させる際には、コイルばね31が多少なりとも回転したりスライドしたりする。このとき、コイルばね31と支持部32とが直接接触していると、金属部品同士であるコイルばね31と支持部32とが擦れ合って異音が発生するおそれがある。この点、この構成では、コイルばね31と支持部32との間に非金属製の介在物62が介在しているため、コイルばね31と支持部32とが直接擦れ合うことを抑制できる。このため、金属部品同士であるコイルばね31と支持部32との擦れ合いに伴う異音の発生を抑制できる。この場合、コイルばね31と介在物62とは、直接接触した状態で擦れ合うこともあるが、介在物62が非金属製である。このため、コイルばね31と介在物62との擦れ合いに伴う異音は、ほとんど発生しない。
【0095】
(2)ステアリングハンドル12の回転制御機構26において、介在物62の表面には、シボ加工が施されている。
この構成によれば、介在物62の表面に細かな凹凸が形成されて当該表面の摩擦係数が大きくなるので、コイルばね31が介在物62の表面を滑り難くなる。このため、介在物62に対してコイルばね31の位置がずれることを抑制できる。
【0096】
(3)ステアリングハンドル12の回転制御機構26において、プッシャ30は、合成樹脂によって構成されている。
この構成によれば、プッシャ30が金属製のコイルばね31と擦れ合った場合に異音が発生することを抑制できる。
【0097】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0098】
図17に示すように、回転制御機構26において、プッシャ本体53と回転カム29との位置を入れ替えてもよい。この場合、把持部15の回転に伴って回転部28と共にプッシャ本体53はスポーク部14に対して回転するが、回転カム29はスポーク部14に対して回転せずにスライドするように構成される。
【0099】
図18に示すように、回転制御機構26の向きを逆にしてもよい。すなわち、回転制御機構26を構成する各部品の並び順を逆にしてもよい。この場合、把持部15の回転に伴って回転部28と共に回転カム29はスポーク部14に対して回転するが、プッシャ本体53はスポーク部14に対して回転せずにスライドするように構成される。
【0100】
・プッシャ30は、必ずしも合成樹脂によって構成する必要はない。すなわち、プッシャ30は、例えば、金属によって構成してもよい。
・プッシャ30は、プッシャ本体53と保持部54とが一体形成された構成であってもよい。
【0101】
・介在物59は、省略してもよい。
・介在物59,62の表面には、必ずしもシボ加工を施す必要はない。
・支持部32におけるワッシャ部60とフランジ部61との間の段差を介在物62の厚さよりも大きくしてもよい。このようにすれば、ワッシャ部60の先端部がコイルばね31の基端部に挿入されるので、ワッシャ部60によってコイルばね31の位置ずれを抑制できる。
【0102】
・回転制御機構26は、必ずしも把持部15内に配置する必要はない。すなわち、回転制御機構26は、例えば、ボス部13とスポーク部14との間に配置してもよい。この場合、把持部15とスポーク部14とが一体回転するように構成される。
【0103】
・ステアリングハンドル12は、車両以外の乗物、例えば、航空機、船舶等における操舵装置のステアリングハンドルに適用してもよい。
【符号の説明】
【0104】
10…操舵装置
11…ステアリングシャフト
12…ステアリングハンドル
13…ボス部
14…スポーク部
15…把持部
16…筒状部
17…ケース部
18…前壁
19…下壁
20…右壁
21…左壁
22…一般部
23…第1軸部
23a,34a,48a,55a…平面部
24…第2軸部
24a…ねじ孔
25…突出部
26…回転制御機構
27…収容凹部
28…回転部
29…回転カム
30…プッシャ
31…コイルばね
32…支持部
33…孔
34…突部
35…第1ベアリング
36…第2ベアリング
37…外輪
38…内輪
39…転動体
40…ワッシャ
41,45…ボルト
42…第1段差面
43…第2段差面
44…段付ねじ孔
46…目隠し部材
47,55…挿通孔
48…凹部
49…カム面
50,51…傾斜面
52…境界部
53…プッシャ本体
54…保持部
56…接触部
57…本体部
58,61…フランジ部
59,62…介在物
60…ワッシャ部
63…第1規制部
64…第2規制部
65…規制壁面
66…回転トルク発生機構部
θ1…最大回転角度
θ2…最大回転角度
L1…第1軸線
L2…第2軸線
P1…第2軸線L2に直交する面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18