IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図1
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図2
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図3
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図4
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図5
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図6
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図7
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図8
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図9
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図10
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図11
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図12
  • 特許-サーバ、車両および通信制御方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】サーバ、車両および通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20241106BHJP
   G06Q 10/00 20230101ALI20241106BHJP
   G16Y 10/35 20200101ALI20241106BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20241106BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241106BHJP
   G16Y 20/30 20200101ALI20241106BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20241106BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20241106BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/00
G16Y10/35
G16Y20/10
G16Y20/20
G16Y20/30
G16Y40/20
G16Y40/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022017764
(22)【出願日】2022-02-08
(65)【公開番号】P2023115515
(43)【公開日】2023-08-21
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森島 彰紀
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-72651(JP,A)
【文献】特開2020-170300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16Y 10/35
G16Y 20/10
G16Y 20/20
G16Y 20/30
G16Y 40/20
G16Y 40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両を管理するサーバであって、
前記複数の車両の各々は、電力網に電気的に接続された場合に前記電力網との間で充電および放電のうちの少なくとも一方が可能に構成され、
前記サーバは、
前記複数の車両のうち前記電力網に接続されていない対象車両について、前記対象車両の位置情報を含むデータを通信により取得する通信装置と、
前記対象車両から前記データを取得する通信頻度を決定するプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
前記対象車両から前記データを取得し、
前記対象車両の前記データに基づいて前記対象車両が前記電力網に接続可能になる接続時刻を予測する予測モデルに従って、取得された前記データから前記接続時刻を予測するとともに、予測された前記接続時刻の信頼度を算出し、
前記通信頻度を前記信頼度に応じて決定する、サーバ。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記対象車両が前記電力網に接続されるまでの間、前記通信頻度を前記信頼度に応じて切り替える、請求項1に記載のサーバ。
【請求項3】
前記予測モデルは、前記対象車両の走行履歴の学習結果に基づいて前記接続時刻を確率的に予測する確率モデルであり、
前記プロセッサは、前記予測モデルを用いて予測された前記接続時刻の確率分布の分布幅が広いほど前記信頼度を低く算出する、請求項1または2に記載のサーバ。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記信頼度が高いほど前記通信頻度を低く決定する、請求項1~3のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記信頼度が第1所定値よりも低い場合、前記信頼度が前記第1所定値よりも高い場合と比べて、前記通信頻度を低く決定する、請求項1~3のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記信頼度が第1所定値よりも低い場合、前記信頼度が前記第1所定値である場合と同じ頻度に前記通信頻度を決定する、請求項1~3のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記信頼度が前記第1所定値よりも高い第2所定よりもさらに高い場合には、前記信頼度が第2所定値よりも低い場合と比べて、前記通信頻度を低く決定する、請求項5または6に記載のサーバ。
【請求項8】
前記データは、前記位置情報に加えて、曜日、気象情報および渋滞情報のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項9】
電力網に電気的に接続された場合に前記電力網との間で充電および放電のうちの少なくとも一方が可能に構成された車両であって、
前記車両の位置情報を含むデータをサーバに送信する通信装置と、
前記通信装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記車両が前記電力網に接続されていない場合に、前記車両が前記電力網に接続可能になることが予測される接続時刻の信頼度を取得し、
前記データを前記サーバに送信する通信頻度を前記信頼度に応じて決定する、車両。
【請求項10】
複数の車両とサーバとの間の通信を制御する通信制御方法であって、
前記複数の車両の各々は、電力網に電気的に接続された場合に前記電力網との間で充電および放電のうちの少なくとも一方が可能に構成され、
前記サーバは、前記複数の車両のうちの対象車両が前記電力網に接続されていない場合に、前記対象車両が前記電力網に接続可能になる接続時刻を前記対象車両の位置情報を含むデータに基づいて予測する予測モデルを有し、
前記通信制御方法は、
前記サーバが前記対象車両から前記データを取得するステップと、
前記サーバが前記予測モデルに従って前記データから前記接続時刻を予測するとともに、予測された前記接続時刻の信頼度を算出するステップと、
前記サーバが前記データを取得する通信頻度を前記信頼度に応じて決定するステップとを含む、通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーバ、車両および通信制御方法に関し、より特定的には、車両を管理するための通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-87261号公報(特許文献1)は、デマンドレスポンスのために複数の需要家装置を管理する管理装置を開示する。管理装置は、記憶部と、算出部とを備える。記憶部には、複数の需要家装置の電力需要実績データが格納されている。算出部は、電力需要実績データに基づいて、少なくとも1つのデマンドレスポンス実施シナリオに応じた電量調整可能量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-87261号公報
【文献】特開2019-192165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel-Cell Electric Vehicle)などの車両は、電力網に電気的に接続された場合に電力網との間で充放電が可能に構成されている。これらの車両を電力網に接続して仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)として機能させる技術が提案されている(たとえば特許文献1参照)。この技術によれば、電力網が電力不足である場合には車両から電力網に電力を供給したり、電力網に余剰電力がある場合は電力網から車両に電力を供給したりすることができる。
【0005】
複数の車両をサーバを用いて管理することが考えられる。サーバは、複数の車両のうち電力網に接続されていない車両から位置情報を含むデータを取得する。そして、サーバは車両毎に、取得したデータに基づいて、当該車両が電力網に接続可能になる時刻(接続時刻)を予測する。複数の車両の各々の電力網への接続時刻を正確に予測することによって、各車両をVPPとして機能させるための適切な計画を策定することが可能になる。
【0006】
サーバは複数の車両からデータを通信により取得するが、その通信量が過度に大きくなり得る。この課題は、サーバにより管理される車両の台数が非常に多い場合には特に顕著になり得る。通信量が過度に大きくなると、様々な通信コストが増大する可能性がある。
【0007】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的の1つは、複数の車両をサーバにより管理するための通信コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示のある局面に従うサーバは、複数の車両を管理する。複数の車両の各々は、電力網に電気的に接続された場合に電力網との間で充電および放電のうちの少なくとも一方が可能に構成されている。サーバは、複数の車両のうち電力網に接続されていない対象車両について、対象車両の位置情報を含むデータを通信により取得する通信装置と、対象車両からデータを取得する通信頻度を決定するプロセッサとを備える。プロセッサは、対象車両からデータを取得する。プロセッサは、対象車両のデータに基づいて対象車両が電力網に接続可能になる接続時刻を予測する予測モデルに従って、取得されたデータから接続時刻を予測するとともに、予測された接続時刻の信頼度を算出する。プロセッサは、通信頻度を信頼度に応じて決定する。
【0009】
(2)プロセッサは、対象車両が電力網に接続されるまでの間、通信頻度を信頼度に応じて切り替える。
【0010】
(3)予測モデルは、対象車両の走行履歴の学習結果に基づいて接続時刻を確率的に予測する確率モデルである。プロセッサは、予測モデルを用いて予測された接続時刻の確率分布の分布幅が広いほど信頼度を低く算出する。
【0011】
上記(1)~(3)の構成において、プロセッサは、対象車両が電力網に接続可能になる接続時刻の信頼度を算出する。信頼度は、たとえば、接続時刻の確率分布の分布幅に応じて算出される。そして、プロセッサは、通信頻度を信頼度に応じて決定する。プロセッサは、たとえば、信頼度が高いほど通信頻度を低く決定できる。帰宅時刻の信頼度が高い場合には、高頻度でデータを取得しなくても高精度に接続時刻を予測できるためである。よって、上記(1)~(3)の構成によれば、通信コストを低減できる。
【0012】
(4)プロセッサは、信頼度が高いほど通信頻度を低く決定する。
(5)プロセッサは、信頼度が第1所定値よりも低い場合、信頼度が第1所定値よりも高い場合と比べて、通信頻度を低く決定する。
【0013】
(6)プロセッサは、信頼度が第1所定値よりも低い場合、信頼度が第1所定値である場合と同じ頻度に通信頻度を決定する。
【0014】
(7)プロセッサは、信頼度が第1所定値よりも高い第2所定よりもさらに高い場合には、信頼度が第2所定値よりも低い場合と比べて、通信頻度を低く決定する。
【0015】
上記(4)に示されるように、接続時刻の信頼度が高い場合には、高頻度でデータを取得しなくても高精度に接続時刻を予測できる。よって、通信頻度を低く決定して通信コストを低減できる。また、上記(5)または(6)に示されるように、信頼度が第1所定値よりも低い場合には、信頼度が第1所定値よりも高い場合と比べて、高精度に接続時刻を予測することは困難である。よって、通信頻度を低く決定するか、通信頻度を同じ頻度に決定することで通信コストを低減できる。さらに、上記(7)に示されるように、信頼度が第1所定値よりも高い第2所定よりもさらに高い場合には、上記(4)と同様に通信頻度を低く決定して通信コストを低減できる。
【0016】
(8)データは、位置情報に加えて、曜日、気象情報および渋滞情報のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0017】
上記(8)の構成によれば、接続時刻の予測精度を向上させることができる。
(9)本開示の他の局面に従う車両は、電力網に電気的に接続された場合に電力網との間で充電および放電のうちの少なくとも一方が可能に構成されている。車両は、車両の位置情報を含むデータをサーバに送信する通信装置と、通信装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、車両が電力網に接続されていない場合に、車両が電力網に接続可能になることが予測される接続時刻の信頼度を取得し、データをサーバに送信する通信頻度を信頼度に応じて決定する。
【0018】
(10)本開示のさらに他の局面に従う通信制御方法は、複数の車両とサーバとの間の通信を制御する。複数の車両の各々は、電力網に電気的に接続された場合に電力網との間で充電および放電のうちの少なくとも一方が可能に構成されている。サーバは、複数の車両のうちの対象車両が電力網に接続されていない場合に、対象車両が電力網に接続可能になる接続時刻を対象車両の位置情報を含むデータに基づいて予測する予測モデルを有する。通信制御方法は、サーバが対象車両からデータを取得するステップと、サーバが予測モデルに従ってデータから接続時刻を予測するとともに、予測された接続時刻の信頼度を算出するステップと、サーバがデータを取得する通信頻度を信頼度に応じて決定するステップとを含む。
【0019】
上記(9)の構成または上記(10)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に通信コストを低減できる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、複数の車両をサーバにより管理するための通信コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の実施の形態に係る車両管理システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2】車両および車両管理サーバの構成をより詳細に示す図である。
図3】車両管理サーバの一部の機能を説明するための機能ブロック図である。
図4】時刻予測モデル5を用いた到着時刻の予測結果の確率分布を示す図である。
図5】信頼度の高低を説明するための図である。
図6】車両管理サーバにより取り扱われるデータの具合例を示す図である。
図7】信頼度の区分に応じて通信頻度を決定する手法を説明するための第1図である。
図8】信頼度の区分に応じて通信頻度を決定する手法を説明するための第2図である。
図9】信頼度と通信頻度との間の関係の第1例を示す図である。
図10】信頼度と通信頻度との間の関係の第2例を示す図である。
図11】信頼度と通信頻度との間の関係の第3例を示す図である。
図12】本実施の形態に係る車両管理システムにおける処理手順を示すフローチャートである。
図13】実施の形態の変形例に係る車両管理システムにおける処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0023】
以下の実施の形態では、車両をVPPとして機能させる構成を例に説明する。しかし、VPPの実施は必須ではない。電力網の電力需給バランスとは無関係に、車両と電力網との間で充放電が行われてもよい。なお、本開示において充放電とは、充電および放電のうちの少なくとも一方を意味する。充放電は、充電だけでもよいし放電だけでもよい。
【0024】
[実施の形態]
<システム構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る車両管理システムの全体構成を概略的に示す図である。車両管理システム100は、複数の車両1と、複数のユーザ端末2と、車両管理サーバ3と、VPP(Virtual Power Plant)サーバ4とを備える。複数の車両1と複数のユーザ端末2と車両管理サーバ3とVPPサーバ4とは、インターネット等のネットワーク9を介して双方向に通信可能に接続されている。
【0025】
複数の車両1の各々は、走行用のバッテリ13(図2参照)が搭載された車両である。より具体的には、車両1は、たとえば電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車である。車両1の詳細な構成については図2にて説明する。
【0026】
複数のユーザ端末2の各々は、複数の車両1のうちの対応する車両のユーザが有する情報端末である。ユーザ端末2は、たとえば、スマートホン、タブレット、PC(Personal Computer)である。ユーザ端末2は、ユーザのスケジュール管理に使用される。また、ユーザ端末2は、図示しないGPS(Global Positioning System)受信機を含み、ユーザ端末2の位置を特定できるように構成されている。
【0027】
車両管理サーバ3は、複数の車両1を管理するサーバである。車両管理サーバ3は、車両1毎に、車両1の目的地点への到着時刻を予測する。また、車両管理サーバ3は、車両1毎に、目的地点への到着時刻におけるバッテリ13のSOCを予測する。車両管理サーバ3は、予測された到着時刻および到着時刻におけるSOCをVPPサーバ4に送信する。車両管理サーバ3の詳細な構成については図2にて説明する。なお、車両管理サーバ3は、本開示に係る「サーバ」に相当する。
【0028】
VPPサーバ4は、図示しない様々な分散型エネルギーリソース(DER:Distributed Energy Resource)のVPPとしての利用計画を策定する。より詳細には、VPPサーバ4は、各DERをVPPとして利用する時間帯を決定するとともに、各DERを充放電させる電力量を算出する。
【0029】
なお、DERとは電力網との間で電力の授受が可能な比較的小規模な電力設備である。DER6は、たとえば、発電型DERと、蓄電型DERとを含む。発電型DERは、自然変動電源と、発電機とを含み得る。自然変動電源は、気象条件によって発電出力が変動する発電設備である。自然変動電源は、たとえば、太陽光発電設備、風力発電設備を含む。一方、発電機は、気象条件に依存しない発電設備である。発電機は、たとえば、蒸気タービン発電機、ガスタービン発電機、ディーゼルエンジン発電機、ガスエンジン発電機、バイオマス発電機、定置式の燃料電池、コージェネレーションシステムを含む。蓄電型DERは、電力貯蔵システムと、蓄熱システムとを含み得る。電力貯蔵システムは、自然変動電源などにより発電された電力を蓄える定置式の蓄電装置である。電力貯蔵システムは、電力を用いて気体燃料(水素、メタン等)を製造するパワー・ツー・ガス(Power to Gas)機器であってもよい。蓄熱システムは、熱源により温められた液媒体を保温状態で蓄える蓄熱槽を含む。
【0030】
VPPサーバ4は、上記のDERに加えて、複数の車両1のVPPとしての利用計画を策定する。すなわち、VPPサーバ4は、車両1毎に、車両管理サーバ3からの情報(車両1の目的地点への到着時刻および到着時刻におけるSOC)を基に、当該車両1をVPPとして利用する時間帯を決定するとともに、当該車両1充放電させる電力量を算出する。
【0031】
図2は、車両1および車両管理サーバ3の構成をより詳細に示す図である。車両1は、電力網との間で充電ケーブル(図示せず)を介して電力のやり取り(充放電)が可能に構成されている。車両1は、インレット11と、電力変換装置12と、バッテリ13と、監視ユニット14と、ナビゲーションシステム15と、通信モジュール16と、ECU(Electronic Control Unit)17とを備える。監視ユニット14とナビゲーションシステム15と通信モジュール16とECU17とは、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワーク18により通信可能に接続されている。
【0032】
インレット11は、EVSE(Electric Vehicle Service Equipment)等の充電設備から延びる充電ケーブル(図示せず)が接続されるように構成されている。図示しないが、充電設備は、電力網に電気的に接続されている。なお、ここでの充電設備は、車両1から充電設備への放電も可能に構成されている。
【0033】
電力変換装置12は、インレット11とバッテリ13との間に電気的に接続されている。電力変換装置12は、たとえばAC/DCコンバータ(インバータ)を含む。電力変換装置12は、充電設備からインレット11を介して供給される交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をバッテリ13に供給する。また、電力変換装置12は、バッテリ13に蓄えられた直流電力を交流電力に変換し、その交流電力をインレット11を介して充電設備に供給する。
【0034】
バッテリ13は、複数のセルを含む組電池である。各セルは、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池である。バッテリ13は、車両1の駆動力を発生させるための電力を蓄える。バッテリ13は、モータジェネレータ(図示せず)により発電された電力または充電設備から供給された電力により充電される。バッテリ13は、蓄えられた電力を充電設備に放電することも可能である。
【0035】
監視ユニット14は、電圧センサと、電流センサ(いずれも図示せず)とを含む。電圧センサは、バッテリ13の電圧を検出し、その検出結果をECU17に出力する。電流センサは、バッテリ13を流れる電流を検出し、その検出結果をECU17に出力する。ECU17は、電圧センサおよび電流センサによる検出結果に基づいて、バッテリ13のSOC(State Of Charge)を算出できる。
【0036】
ナビゲーションシステム15は、図示しないが、GPS受信機を含む。GPS受信機は、人工衛星(図示せず)からの電波に基づいて車両1の位置を特定する。ナビゲーションシステム15は、GPS受信機により特定された車両1の位置に応じて、車両1の走行ルートを記録したり走行ルートを探索したりする。
【0037】
通信モジュール16は、車載DCM(Data Communication Module)であって、ECU17と車両管理サーバ3とが双方向に通信可能なように構成されている。以下、車両1の位置を示す情報を「位置情報」とも記載する。位置情報では、車両1の位置と時刻とが関連付けられている。また、バッテリ13のSOCを示す情報を「SOC情報」とも記載する。位置情報とSOC情報とを併せて「VPPデータ」とも記載する。通信モジュール16は、VPPデータを車両管理サーバ3に送信する。なお、位置情報は、車両1からに限らず、ユーザ端末2から車両管理サーバ3に送信されてもよい。
【0038】
ECU17は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等のメモリ(いずれも図示せず)とを含む。ECU17は、センサ群(図示せず)の検出値およびメモリに格納されたプログラムに基づいて、車両1が所望の状態となるように車両1内の各機器を制御する。また、ECU17は、車両管理サーバ3との間でやり取りされる各種データを生成する。
【0039】
車両管理サーバ3は、アプリケーションサーバ31と、データベースサーバ32と、通信装置33とを含む。アプリケーションサーバ31は、プロセッサ311と、メモリ312とを含む。プロセッサ311は、たとえばCPUである。プロセッサ311は、プログラムに記述された所定の演算処理を実行するように構成されている。メモリ312は、たとえば、ROMと、RAMとを含む。メモリ312は、プロセッサ311により実行されるプログラムを格納する。また、メモリ312は、プロセッサ311におけるプログラムの実行により生成されるデータと、通信装置33を介して車両1および/またはユーザ端末2(図1参照)から受信されたデータとを一時的に格納する。
【0040】
アプリケーションサーバ31は、複数の車両1の各々からVPPデータ(位置情報およびSOC情報)を収集する。より詳細には、本実施の形態において、アプリケーションサーバ31は、各車両1にVPPデータを要求する。各車両1は、アプリケーションサーバ31からの要求に応答してVPPデータをアプリケーションサーバ31に送信する。
【0041】
アプリケーションサーバ31は、車両1が走行中である場合に、車両1がVPPとして機能可能な目的地点への到着時刻(典型的には帰宅時刻)を位置情報に基づいて予測できる。車両1の目的地点は、たとえばユーザにより予め設定され得る。この例では、車両1の目的地点は、充電設備が設置された、ユーザの自宅である。帰宅後のユーザは、車両1を充電ケーブルを介して充電設備(電力網)に接続する。これにより、車両1がVPPとして機能することが可能になる。したがって、車両1の目的地点が車両1を電力網に接続可能な場所である場合、車両1の目的地点への到着時刻は、車両1が電力網に接続可能になる時刻(本開示に係る「接続時刻」)に相当する。また、アプリケーションサーバ31は、帰宅後にVPPとして機能する車両1が電力網との間でやり取り可能な電力量をSOC情報(目的地点への到着時刻におけるSOC)に基づいて予測できる。
【0042】
データベースサーバ32は、車両データベース(DB:database)321と、走行履歴データベース322と、時刻予測モデルデータベース323と、信頼度データベース324とを含む。
【0043】
車両データベース321は、各車両1から収集されたSOC情報を格納する。車両データベース321には、各車両1の車種、年式、モデル、仕様(燃費および/または電費など)に関する情報も格納されている。
【0044】
走行履歴データベース322は、各車両1から収集された位置情報を車両1の走行履歴として格納する。走行履歴データベース322には、走行時の曜日(平日/祝日の区別を含む)が格納されているとともに、走行時における走行地域の気象情報(天気、気温、降雨量、風速など)が格納されている。走行履歴データベース322には地図情報(渋滞情報を含む)もさらに格納されている。
【0045】
時刻予測モデルデータベース323は、車両1毎に準備された時刻予測モデルを格納する。時刻予測モデルは、車両1のユーザの行動パターンの学習結果に基づいて、車両1の目的地点への到着時刻を予測するために用いられる。
【0046】
信頼度データベース324は、時刻予測モデルを用いて予測された到着時刻の信頼度を算出するためのデータ(後述する到着時刻の確率分布)を格納する。時刻予測モデルおよび信頼度については後に詳細に説明する。
【0047】
なお、上記すべてのデータベースがデータベースサーバ32に含まれていなくてもよい。すなわち、一部または全部のデータベースが車両管理サーバ3とは別サーバ(たとえばクラウドサーバ)に含まれていてもよい。
【0048】
<通信コストの低減>
車両管理サーバ3の管理下には非常に多くの車両1が含まれ得る。そのような場合には特に、アプリケーションサーバ31が車両1からVPPデータ(位置情報およびSOC情報)を収集するための通信量が過度に大きくなり得る。そうすると、車両1および/または車両管理サーバ3のデータ通信料金、アプリケーションサーバ31のデータ処理能力の増強にかかる費用、通信装置33の通信性能の増強にかかる費用などの様々な通信コストが増大する可能性がある。
【0049】
そこで、本実施の形態においては、車両1からアプリケーションサーバ31へのVPPデータの「通信頻度」を可変に設定する構成を採用する。具体的に説明すると、アプリケーションサーバ31は、車両1毎に、VPPデータの通信頻度を決定する。通信頻度は時間的にも可変に決定される。たとえば、ある車両について第1時間帯での通信頻度が10分に1回と決定された場合、アプリケーションサーバ31は、10分が経過する度にVPPデータを当該車両に要求する。当該車両について第2時間帯での通信頻度が20分に1回と決定された場合、アプリケーションサーバ31は、20分が経過する度にVPPデータを当該車両に要求する。当該車両は、アプリケーションサーバ31からの要求に応答してVPPデータをアプリケーションサーバ31に送信する。
【0050】
このように、車両1からアプリケーションサーバ31へのVPPデータの通信頻度を時間的に切り替えることができる。さらに、VPPデータの通信頻度を車両毎に異なる頻度にも設定できる。以下に説明するように、車両1毎に、ユーザ行動履歴(車両1の走行履歴)に応じた適切な通信頻度を決定することにより、複数の車両1を車両管理サーバ3により管理するための通信コストを低減できる。
【0051】
図3は、車両管理サーバ3の一部の機能を説明するための機能ブロック図である。車両管理サーバ3は、時刻予測部41と、学習部42と、信頼度算出部43とを含む。
【0052】
時刻予測部41は、目的地点への車両1の到着時刻を予測する。より詳細には、時刻予測部41は、たとえば機械学習により準備された時刻予測モデル5を含む。時刻予測モデル5は、確率モデル51と、パラメータ52とを含む。確率モデル51は、複数の事象間の依存関係を確率(条件付の遷移確率)によって表現するモデルであって、たとえばベイジアンネットワーク、N階マルコフ連鎖モデルである。パラメータ52は、確率モデル51の機械学習に用いられる重み付け係数などを含む。
【0053】
時刻予測部41は、車両1から、VPPデータに含まれる車両1の位置情報(出発地点および/または途中経路の位置と時刻とが関連付けられた情報)、曜日、天気などの予測条件を入力として受け付ける。時刻予測部41は、ユーザ端末2(図2参照)を用いて管理されているユーザのスケジュール(たとえば目的地点までの途中に訪問予定の地点を示す情報)を受け付けてもよい。時刻予測部41は、学習済み(この例では学習部42による追加学習が行われる)の時刻予測モデル5を用いて、目的地点への車両1の到着が予測される時刻(予測到着時刻)を算出する。算出された予測到着時刻は、信頼度算出部43および外部(VPPサーバ4)に出力される。
【0054】
時刻予測部41は、車両1から上記の予測条件を受け付ける度に、予測到着時刻を算出する。すなわち、予測到着時刻は、予測条件を受け付ける度(VPPデータを収集する度)に更新される。これにより、車両1が目的地点に近付くにつれて予測到着時刻の予測精度を向上させることができる。
【0055】
学習部42は、例題データおよび正解データを用いて時刻予測モデル5を学習させる。例題データは、たとえば、車両1の位置情報、曜日、天気を含む。正解データは、目的地点に車両1が実際に到着した時刻(実到着時刻)である。学習部42は、例題データ毎に、予測到着時刻が実到着時刻(正解データ)に近づくようにパラメータ52(たとえば重み付け係数)を調整する。このように、車両管理サーバ3は、学習済みの時刻予測モデル5を追加学習により更新できるように構成されている。
【0056】
信頼度算出部43は、車両1の位置情報、曜日、天気を含む予測条件毎に、時刻予測モデル5を用いて予測された到着時刻の信頼度を算出する。信頼度は、VPPデータの通信頻度の決定に用いられる。
【0057】
<信頼度>
信頼度の算出手法について図4および図5を参照しながら説明する。前述のように、時刻予測モデル5は、目的地点への予測到着時刻を確率的に表現するモデルである。そのため、時刻予測モデル5を用いた予測結果は確率分布により表される。
【0058】
図4は、時刻予測モデル5を用いた到着時刻の予測結果(予測到着時刻)の確率分布を示す図である。横軸は、時刻予測モデル5による予測到着時刻を表す。縦軸は時刻毎の確率を表す。時刻予測モデル5を用いることで、たとえば、車両1が時刻t1に目的地点に到着する確率がp1であることが予測される。
【0059】
信頼度は、予測到着時刻の確率分布の広がり度合い(分布幅)を表す指標である。信頼度は、たとえば、確率分布の標準偏差σであってもよい。信頼度は、2σであってもよいし、3σであってもよい。信頼度は、確率分布の半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)であってもよい。
【0060】
図5は、信頼度の高低を説明するための図である。予測到着時刻の確率分布の分布幅は様々である。しかし、分布幅に拘わらず、各時刻における確率を全時刻に亘って足し合わせると(確率分布の面積を積分すると)、同じ値(=100%)である。そのため、確率分布の分布幅が狭くなるほど確率分布の高さは高くなる。したがって、信頼度は、確率分布の高さ(ピーク)であってもよい。図5に示すように、確率分布の分布幅が狭いほど、すなわち確率分布のピークが高いほど、信頼度は高くなる。以下では信頼度が確率分布の標準偏差σである例について説明する。
【0061】
<信頼度と通信頻度>
図6は、車両管理サーバ3により取り扱われるデータの具体例を示す図である。図6に示す例では、たとえば、月曜日に晴れであり、出発地点が会社であり、出発時刻が18時である場合に、到着時刻(確率分布の中央値)が19時と予測されている。このとき、予測到着時刻の確率分布の分布幅が30分と予測される。この分布幅に応じて信頼度が算出される。
【0062】
この例では、信頼度が記号を用いて区分される。区分Aは、分布幅が最も狭く(たとえば15分以下)、信頼度が最も高いことを表す。区分Bは、分布幅が2番目に狭く(たとえば30分以下)、信頼度が2番目に高いことを表す。以降の区分C,D等についても同様である。本実施の形態においては、車両1から車両管理サーバ3へのVPPデータ(位置情報およびSOC情報)の通信頻度が区分に応じて決定される。
【0063】
図7は、信頼度の区分に応じて通信頻度を決定する手法を説明するための第1図である。通信頻度とは、たとえば、あるデータ送信と、それに続くデータ送信との間の時間間隔を意味する。この例では、信頼度が区分Aである場合、通信頻度(時間間隔)は15分に決定される。信頼度が区分Bである場合、通信頻度は10分に決定される。信頼度が区分Cである場合、通信頻度は5分に決定される。時間間隔が短いほど通信頻度は高い。
【0064】
図8は、信頼度の区分に応じて通信頻度を決定する手法を説明するための第2図である。通信頻度は、車両1が出発地点から目的地点まで走行する間のデータ送信回数であってもよい。信頼度が区分Aである場合、通信頻度(データ送信回数)は3回に決定される。信頼度が区分Bである場合、通信頻度は4回に決定される。信頼度が区分Cである場合、通信頻度は5回に決定される。データ送信回数が多いほど通信頻度は高い。
【0065】
図9は、信頼度と通信頻度との間の関係の第1例を示す図である。横軸は信頼度を表す。縦軸は通信頻度を表す。後述する図10および図11についても同様である。
【0066】
図9に示すように、車両管理サーバ3は、信頼度が高いほど通信頻度を低く決定できる。つまり、車両管理サーバ3は、信頼度が高いほど、連続する2回のデータ送信間の時間間隔を長くしたり、出発地点から目的地点までのデータ送信回数を少なくしたりすることができる。
【0067】
信頼度が低い場合、予測到着時刻の確率分布の分布幅が広い。このことは予測到着時刻のばらつきが大きいことを意味する。そうすると、予測到着時刻が実到着時刻から大きく外れる可能性がある。したがって、信頼度が低い場合には、通信頻度を高く決定することが望ましい。前述のように、車両管理サーバ3は、信頼度に応じて決定された通信頻度で車両1からVPPデータを収集し、その度に予測到着時刻を更新する。よって、最新のVPPデータに基づいて予測到着時刻を更新することで到着時刻の予測精度を向上させることができる。
【0068】
これに対し、信頼度が高い場合、予測到着時刻の確率分布の分布幅が狭く、予測到着時刻のばらつきが小さい。そうすると、予測到着時刻が実到着時刻から大きく外れる可能性は低いと言える。したがって、信頼度が低い場合には、通信頻度を低く決定できる。これにより、到着時刻の予測精度を過度に低くすることなく通信コストを低減できる。
【0069】
なお、図9には、通信頻度が信頼度に応じて段階的(ステップ的)に変化する例が示されている。しかし、通信頻度は、信頼度に応じて直点的または曲線的に変化してもよい。
【0070】
図10は、信頼度と通信頻度との間の関係の第2例を示す図である。図10に示すように、車両管理サーバ3は、信頼度がR1よりも低い場合には信頼度が低いほど通信頻度を低く決定する一方で、信頼度がR2よりも高い場合には信頼度が高いほど通信頻度を低く決定してもよい。なお、R2はR1よりも高い値である。
【0071】
信頼度がR2よりも高い場合に信頼度が高いほど通信頻度を低く決定する理由は、図9にて説明した理由と同様である。すなわち、信頼度が高い場合、予測到着時刻が実到着時刻から大きく外れる可能性は低いことから、通信頻度を低く決定して通信コストを低減するためである。
【0072】
一方、信頼度がR1よりも低い場合に信頼度が低いほど通信頻度を低く決定する理由は以下のように説明される。信頼度が低い場合には、予測到着時刻のばらつきが大きく、予測到着時刻が実到着時刻から大きく外れる可能性がある。最新のVPPデータに基づいて予測到着時刻を更新しても、新たなVPPデータに基づく信頼度も大きく上昇せず、その結果、到着時刻の予測精度は低いままである可能性がある。よって、信頼度が低い場合には、必ずしも通信頻度を高くしなくてもよく、通信頻度を低くすることで通信コストを低減できる。これは、信頼度が低い場合には、到着時刻の予測精度向上よりも通信コスト低減を優先するものであるとも言える。
【0073】
図11は、信頼度と通信頻度との間の関係の第3例を示す図である。図10には、信頼度がR1よりも低い場合に信頼度が低いほど通信頻度を低く決定する例を示した(図11の破線参照)。しかし、図11に示すように、信頼度がR1よりも低い場合には信頼度を一定にしてもよい。これにより、信頼度がR2よりも高い場合には、図10と同様に、通信コストを低減できる。一方で、信頼度がR1よりも低い場合には、図10と異なり、通信コストが増大しないようにしつつ到着時刻の予測精度をある程度は確保できる。
【0074】
<処理フロー>
図12は、本実施の形態に係る車両管理システム100における処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、予め定められた条件成立時(たとえば所定の周期毎)に実行される。各ステップは、車両管理サーバ3(アプリケーションサーバ31)によるソフトウェア処理により実現されるが、車両管理サーバ3内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0075】
S11において、車両管理サーバ3は、車両1からVPPデータ(位置情報およびSOC情報)を取得する。車両1は、事前に決定された通信頻度に従って車両1にVPPデータを送信している。事前に決定された通信頻度とは、予め定められた通信頻度の初期値であってもよいし、前回の一連の処理の結果として決定された値であってもよい。なお、図示しないが、車両管理サーバ3は、曜日、車両1の周辺地域の天気などは別に取得するものとする。
【0076】
S12において、車両管理サーバ3は、車両1がVPP参加条件を満たすかどうかを判定する。より具体的には、車両管理サーバ3は、車両1がVPPに参加するとの契約が予め締結されている場合に、車両1がVPP参加条件を満たすと判定できる。この契約に関する情報は、車両データベース321(図2参照)に格納されている。また、車両管理サーバ3は、車両1のユーザによって車両1がVPPに参加するための所定の操作(たとえば、特定の期間または時間帯には車両1がVPPに参加することを許可する操作)がユーザ端末2に対して行われている場合に、車両1がVPP参加条件を満たすと判定できる。車両1がVPP参加条件を満たす場合(S12においてYES)、車両管理サーバ3は、処理をS13に進める。なお、車両1がVPP参加条件を満たさない場合(S12においてNO)、車両管理サーバ3は、以降のステップを実行することなく処理を終了する。
【0077】
S13において、車両管理サーバ3は、車両1が目的地点に向けて走行を開始したかどうか、または、車両1が目的地点に向けて走行中であるかどうかを、車両1の位置情報に基づいて判定する。車両1が目的地点に向けて走行を開始したか走行中である場合(S13においてYES)、車両管理サーバ3は、処理をS14に進める。車両1の出発前(S13においてNO)には以降のステップは実行されない。また、車両1が目的地点に到着すると、S13にてNO判定が行われる。
【0078】
S14において、車両管理サーバ3は、車両1に対応する時刻予測モデル5(図3参照)を用いて、車両1の位置情報、曜日、天気などから、目的地点への車両1の到着時刻(たとえば帰宅時刻)を予測する。
【0079】
S15において、車両管理サーバ3は、到着時刻における車両1のバッテリ13のSOCを予測する。車両管理サーバ3は、車両1の予測走行経路の距離[単位:km]と、車両1の電費[単位:km/kWhまたはWh/km]とに基づいて、目的地点までの車両1の消費電力量[Wh]を算出できる。したがって、車両管理サーバ3は、現時点でのSOCと、目的地点までの消費電力量とから、到着時刻におけるSOCを予測できる。
【0080】
なお、車両管理サーバ3は、予測到着時刻と、その時刻におけるバッテリ13の予測SOCとをVPPサーバ4に送信する。これにより、車両1の予測到着時刻および予測SOCがVPPサーバ4によるVPP計画の策定に用いられる。
【0081】
S16において、車両管理サーバ3は、S14における予測到着時刻の信頼度を算出する。図4および図5にて詳細に説明したように、車両管理サーバ3は、予測到着時刻の確率分布の分布幅または高さに基づいて信頼度を算出できる。
【0082】
S17において、車両管理サーバ3は、到着時刻の信頼度に応じて車両1とのVPPデータの通信頻度を決定する。車両管理サーバ3は、たとえば図9図11に示した対応関係が規定されたマップを用いることによって、信頼度から通信頻度を決定できる。車両管理サーバ3は、マップに代えてデータテーブル、関数、関係式などを用いてもよい。
【0083】
車両管理サーバ3は、決定した通信頻度に応じて、車両1へのVPPデータの要求タイミングを切り替える。すなわち、車両管理サーバ3は、通信頻度が変化すると、車両1にVPPデータを要求する時間間隔(または目的地点に到着するまでの要求回数)を変更する。車両1は、車両管理サーバ3からの要求に応答してVPPデータを車両管理サーバ3に送信する。
【0084】
あるいは、車両管理サーバ3は、決定した通信頻度を車両1に送信してもよい。車両1は、車両管理サーバ3から要求を受ける都度に代えて、通信頻度に応じて自発的にVPPデータを車両管理サーバ3に送信してもよい。
【0085】
以上のように、本実施の形態においては、車両管理サーバ3は、車両1が外出先等で電力網に接続されていない場合に、車両1が電力網に接続可能になる帰宅時刻を予測する。帰宅時刻の予測には、帰宅時刻を確率的に算出する時刻予測モデル5が使用される。時刻予測モデル5を用いて予測された帰宅時刻は確率分布として表現される。車両管理サーバ3は、帰宅時刻の確率分布の分布幅が狭い(確率分布の高さが高い)ほど、帰宅時刻の信頼度を高く算出する。車両管理サーバ3は、帰宅時刻の信頼度に応じてVPPデータの通信頻度を決定する。たとえば、車両管理サーバ3は、帰宅時刻の信頼度が高いほどVPPデータの通信頻度を低く決定する。帰宅時刻の信頼度が高い場合には、高頻度でVPPデータを取得しなくても高精度に帰宅時刻を予測できるためである。よって、本実施の形態によれば、VPPデータの通信にかかる通信コストを低減できる。
【0086】
[変形例]
実施の形態(図12参照)では、すべての処理が車両管理サーバ3により実行される例を説明した。しかし、一部の処理が車両1によって実行されてもよい。
【0087】
図13は、実施の形態の変形例に係る車両管理システム100における処理手順を示すフローチャートである。図中、左側に車両1により実行される処理を示し、右側に車両管理サーバ3により実行される処理を示す。
【0088】
S21において、車両1は、位置情報およびSOC情報を含むVPPデータを車両管理サーバ3に送信する。
【0089】
S31において、車両管理サーバ3は、車両1が目的地点に向けて走行開始または走行中であるか、そうでないかを判定する。車両1が目的地点に向けて走行開始または走行中である場合(S31においてYES)、車両管理サーバ3は、S32~S34の処理を実行する。S32~S34の処理は、実施の形態におけるS14~S16の処理に相当する。車両管理サーバ3は、S34の処理により算出された信頼度を車両1に送信する。
【0090】
車両1は、車両管理サーバ3から受信した信頼度に応じて、車両管理サーバ3へのVPPデータの通信頻度を決定する(S22)。以降の車両1は、自身で決定した通信頻度に応じて自発的にVPPデータを車両管理サーバ3に送信できる。
【0091】
以上のように、車両1と車両管理サーバ3とが協調しながら一連の処理を実行してもよい。本変形例によっても実施の形態と同様に、VPPデータの通信にかかる通信コストを低減できる。
【0092】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
1 車両、11 インレット、12 電力変換装置、13 バッテリ、14 監視ユニット、15 ナビゲーションシステム、16 通信モジュール、17 ECU、18 車載ネットワーク、2 ユーザ端末、3 車両管理サーバ、31 アプリケーションサーバ、311 プロセッサ、312 メモリ、32 データベースサーバ、321 車両データベース、322 走行履歴データベース、323 時刻予測モデルデータベース、324 信頼度データベース、33 通信装置、4 サーバ、41 時刻予測部、42 学習部、43 信頼度算出部、5 時刻予測モデル、51 確率モデル、52 パラメータ、9 ネットワーク、100 車両管理システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13