(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20241106BHJP
H01R 13/64 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01R13/631
H01R13/64
(21)【出願番号】P 2022020221
(22)【出願日】2022-02-14
【審査請求日】2024-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 一視
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-157975(JP,A)
【文献】特開2021-157971(JP,A)
【文献】特開2019-212404(JP,A)
【文献】特開2016-46085(JP,A)
【文献】特開2011-86478(JP,A)
【文献】特開2011-80795(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2338388(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/629
H01R 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フード部を有するハウジングと、
前記フード部内に突出するタブを有する雄端子と、
前記ハウジングに対し、前記フード部内における初期位置と、前記初期位置よりも後方の嵌合位置と、の間を移動可能に配置されるムービングプレートと、を備え、
前記ムービングプレートは、前記フード部内で前記雄端子の前記タブを包囲するプレート本体と、前記プレート本体より後方に突出する突出部と、を有し、
前記ハウジングは、前記突出部が貫通する貫通孔を有し、
前記突出部は、少なくとも前記嵌合位置において、前記ハウジングに対して非係止の状態に維持され、前記貫通孔の後方に後端部を露出させている、コネクタ。
【請求項2】
前記突出部の後端部は、前記初期位置で前記貫通孔内に配置されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記フード部の後方に、前記雄端子を収容するハウジング本体を有し、前記突出部の後端部は、前記嵌合位置で前記ハウジング本体の外面上に沿って配置されている、請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記突出部は、前記プレート本体の後方に複数並んで形成されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記突出部は、前記突出部の後端部から前後方向と交差する方向に突出する引掛部を有している、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングは、後方に突出する撓み変形可能な弾性係止部を有し、
前記弾性係止部の後端部は、前記ムービングプレートが前記初期位置にあるときに、前記引掛部に隣接して前記プレート本体を係止する係止突起を有している、請求項5に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、端子金具用挿入検知部材(以下、ムービングプレートと称する)がフード部内に移動可能に収容されたコネクタを開示している。ムービングプレートは、ハウジング本体の側面上に配置される可撓変形枠部を有している。可撓変形枠部は、仮係止突起および本係止突起を有している。仮係止突起および本係止突起がハウジング本体の側面に係止されることにより、ムービングプレートがハウジング本体に対して仮係止位置および本係止位置に保持される。ムービングプレートを備えるコネクタは、特許文献2~4にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-86950号公報
【文献】特開2003-317870号公報
【文献】特開2006-331925号公報
【文献】特開2016-213084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ムービングプレートは、通常、フード部内において、雄端子のタブを位置決め状態で通す位置決め孔を有し、タブを保護する役割を有している。仮に、ムービングプレートが移動過程で傾くと、タブが位置決め孔の内面と干渉して変形するおそれがあるため、好ましくない。その点、特許文献1の場合、可撓変形枠部がハウジング本体の側面上に露出するため、可撓変形枠部の状態変化(姿勢の変化)を視認することで、ムービングプレートが傾いているかどうかを一応確認することができる。しかし、可撓変形枠部は、ハウジング本体に係止される仮係止突起および本係止突起を有しているため、状態変化を確認しづらいという事情がある。また、可撓変形枠部自体もムービングプレートの移動時に撓み変形するため、ムービングプレートの状態を検知する信頼性に欠けるという問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、ムービングプレートの状態を検知する信頼性を向上させることが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、フード部を有するハウジングと、前記フード部内に突出するタブを有する雄端子と、前記ハウジングに対し、前記フード部内における初期位置と、前記初期位置よりも後方の嵌合位置と、の間を移動可能に配置されるムービングプレートと、を備え、前記ムービングプレートは、前記フード部内で前記雄端子の前記タブを包囲するプレート本体と、前記プレート本体より後方に突出する突出部と、を有し、前記ハウジングは、前記突出部が貫通する貫通孔を有し、前記突出部は、少なくとも前記嵌合位置において、前記ハウジングに対して非係止の状態に維持され、前記貫通孔の後方に後端部を露出させている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ムービングプレートの状態を検知する信頼性を向上させることが可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の本実施形態1において、ムービングプレートが初期位置にあるときのコネクタの正面図である。
【
図3】
図3は、相手コネクタと嵌合状態にあるコネクタの側断面図である。
【
図4】
図4は、相手ハウジングを斜め前上方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、弾性係止部を斜め前下方から見た部分拡大斜視図である。
【
図8】
図8は、ムービングプレートを斜め前上方から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、ムービングプレートを斜め後上方から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、ムービングプレートが嵌合位置にあるときのコネクタを斜め後上方から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、相手ハウジングのプレート係合部がムービングプレートの係合部に係合した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図12】
図12は、ムービングプレートが初期位置にあるときに、治具がムービングプレートの引掛部に引っ掛けられる状態を示す部分拡大断面図である。
【
図13】
図13は、ムービングプレートが嵌合位置にあるときに、係止解除用の治具でランスを撓み変形させる状態を示す部分拡大断面図である。
【
図14】
図14は、ムービングプレートが初期位置にあるときのコネクタの平面図である。
【
図15】
図15は、ムービングプレートが嵌合位置にあるときのコネクタの平面図である。
【
図16】
図16は、ムービングプレートが移動過程で傾いた状態にあるときのコネクタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)フード部を有するハウジングと、前記フード部内に突出するタブを有する雄端子と、前記ハウジングに対し、前記フード部内における初期位置と、前記初期位置よりも後方の嵌合位置と、の間を移動可能に配置されるムービングプレートと、を備え、前記ムービングプレートは、前記フード部内で前記雄端子の前記タブを包囲するプレート本体と、前記プレート本体より後方に突出する突出部と、を有し、前記ハウジングは、前記突出部が貫通する貫通孔を有し、前記突出部は、少なくとも前記嵌合位置において、前記ハウジングに対して非係止の状態に維持され、前記貫通孔の後方に後端部を露出させている。
【0010】
ムービングプレートが初期位置から嵌合位置に移動する際には、突出部の貫通孔からの突出量が増加する。これに対し、ムービングプレートが嵌合位置から初期位置に移動する際には、突出部の貫通孔からの突出量が減少する。作業者は、突出部の貫通孔からの突出量を視認することで、ムービングプレートの嵌合位置からの移動量を検知することができ、さらに、突出部の状態(姿勢)を視認することで、ムービングプレートが正規姿勢から傾いているのかどうかを検知することができる。特に、突出部がハウジングに対して非係止の状態に維持されるため、突出部がハウジングと干渉して撓み変形等するのを防止でき、突出部の視認性に優れる。その結果、ムービングプレートの状態を検知する信頼性を向上させることができる。
【0011】
(2)前記突出部の後端部は、前記初期位置で前記貫通孔内に配置されていると良い。
上記構成によれば、突出部が外側から見える状態では、ムービングプレートが初期位置に配置されていないことがわかる。
【0012】
(3)前記ハウジングは、前記フード部の後方に、前記雄端子を収容するハウジング本体を有し、前記突出部の後端部は、前記嵌合位置で前記ハウジング本体の外面上に沿って配置されていると良い。
上記構成によれば、突出部は、ハウジング本体によって保護されるので、折損、破損される事態を回避することができる。
【0013】
(4)前記突出部は、前記プレート本体の後方に複数並んで形成されていると良い。
上記構成によれば、仮に、作業者が、複数の突出部のうち、いずれか1つの突出部を視認できない状況下であっても、残りの突出部を視認することにより、ムービングプレートの状態を検知することができる。作業者が、複数の突出部を視認できる状況下においては、各突出部の位置関係や各突出部とハウジングとの位置関係に基づいて、ムービングプレートの状態をより精度良く検知することができる。
【0014】
(5)前記突出部は、前記突出部の後端部から前後方向と交差する方向に突出する引掛部を有していると良い。
雄端子をハウジングのキャビティ内から抜き取る際に、前もってムービングプレートを初期位置から嵌合位置に移動させることがある。上記構成によれば、引掛部に治具を引っ掛けて後方に引っ張ることにより、突出部を貫通孔から引き出すことができ、ムービングプレートを嵌合位置に至らすことができる。プレート本体を前方から治具で押圧してムービングプレートを嵌合位置に至らす場合と異なり、上記構成の場合、雄端子のタブに治具が干渉する可能性が低く、タブが折損、破損される事態を防止できる。
【0015】
(6)前記ハウジングは、後方に突出する撓み変形可能な弾性係止部を有し、前記弾性係止部の後端部は、前記ムービングプレートが前記初期位置にあるときに、前記引掛部に隣接して前記プレート本体を係止する係止突起を有していると良い。
上記構成によれば、引掛部に治具を引っ掛け、治具を後方に引っ張ることにより、係止突起に、プレート本体との係止を解除させる力を効率良く伝達することができる。このため、治具を後方に引っ張ることにより、弾性係止部を撓み変形させ、係止突起とプレート本体との係止を解除することができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
<実施形態1>
本開示の実施形態1に係るコネクタ10は、
図1および
図2に示すように、ハウジング11と、ハウジング11に収容される雄端子12と、ハウジング11に対して初期位置と嵌合位置との間を移動可能に組み付けられるムービングプレート13と、を備える。
図3に示すように、コネクタ10は、相手コネクタ90と嵌合される。なお、以下の説明において、前後方向については、コネクタ10と相手コネクタ90とが互いに嵌合される側を前側とする。
図2、
図4および
図7等において、符号Fで示す側が前側で、符号Rで示す側が後側である。上下方向は、
図1~
図3の上下方向を基準とする。上下方向は、高さ方向と同義である。左右方向は、前後方向および上下方向と交差する方向であり、幅方向と同義である。
【0018】
(相手コネクタ)
相手コネクタ90は、合成樹脂製の相手ハウジング91を備える。
図3および
図4に示すように、相手ハウジング91は、複数の相手キャビティ92を有している。
図3に示すように、各相手キャビティ92には、相手端子としての雌端子93が収容されている。相手ハウジング91の上面の左右中間部には、撓み変形可能なロックアーム94が形成されている。ロックアーム94は、ハウジング11を係止し、ハウジング11と相手ハウジング91とを嵌合状態に保持する役割を有している。
図4に示すように、相手ハウジング91の上面および下面の前端部における左右両側には、一対ずつの解除部95が突出して形成されている。各解除部95は、初期位置にあるムービングプレート13とハウジング11との係止を解除する役割を有している。また、相手ハウジング91の左右両側の側面には、それぞれプレート係合部96が突出して形成されている。各プレート係合部96は、相手ハウジング91の側面に高さ方向に対をなして配置されている。各プレート係合部96は、ムービングプレート13を後述する嵌合位置から初期位置に移動させる役割を有している。
【0019】
(コネクタ)
ハウジング11は合成樹脂製であって、
図2に示すように、ハウジング本体14と、ハウジング本体14から前方に突出するフード部15と、を有している。ハウジング本体14は、複数のキャビティ16を有している。各キャビティ16の内壁下面には、前方に突出するランス17が形成されている。各キャビティ16には、雄端子12が収容されている。
【0020】
雄端子12は導電金属製であって、
図2に示すように、筒状の本体部18と、本体部18から前方に突出するタブ19と、本体部18の後方に連なって電線20に圧着して接続されるバレル部21と、を有している。タブ19は、フード部15内に突出している。本体部18は、キャビティ16内でランス17に係止される係止爪22を有している。本体部18の後端は、ハウジング本体14に組み付けられるリテーナ23によって係止される。端子金具は、ランス17によって一次的にキャビティ16内からの抜け出しが規制され、リテーナ23によって二次的にキャビティ16内からの抜け出しが規制される。
【0021】
図10に示すように、フード部15は、前後方向に延びる筒状のフード本体24と、ハウジング本体14の前端からフード本体24の後端にかけて上方および下方に張り出す段部25と、を有している。各段部25は、左右両側にフード本体24から連続するトンネル状の膨出部26を有し、各膨出部26の内側に、一対ずつの貫通孔27を有している。各貫通孔27は、段部25を前後方向に延び、段部25の後方に開放され、
図7に示すように、フード本体24内に連通している。
【0022】
フード本体24は、
図5に示すように、角筒状をなし、上壁の左右中間部の前端に、下向きに突出するロック部28を有している。
図3に示すように、ロック部28は、ロックアーム94に係止される。また、
図5、
図7および
図12に示すように、フード本体24は、上壁および下壁の左右両側の前後中間部から後方に片持ち状に延びる、一対ずつの弾性係止部29(
図7および
図12は1つのみ図示)を有している。
図7および
図12に示すように、弾性係止部29は、貫通孔27内に配置されている。弾性係止部29は、後端部から内側(ハウジング本体14が位置する側)に突出する係止突起31を有している。
図7に示すように、係止突起31は、弾性係止部29の後端部に左右に間隔を置いて配置されている。
図12に示すように、係止突起31の前面は、上下方向に沿って垂直に配置されている。係止突起31の後面は、内側(突出方向の先端側)に行くに従って前傾している。係止突起31は、ムービングプレート13が初期位置から嵌合位置に移動するのを規制する役割を有している。
【0023】
図7および
図12に示すように、弾性係止部29は、前後中間部から内側に突出する本係止突起32を有している。
図7に示すように、本係止突起32は、係止突起31の後方で、且つ左右方向に関して左右の係止突起31の間に配置されている。
図12に示すように、本係止突起32の前面は、内側に行くに従って後傾している。本係止突起32の後面は、左右中間部が内側に行くに従って前傾し、左右両側の端部が上下方向に沿って垂直に配置されている。本係止突起32は、ムービングプレート13が初期位置からフード部15の前方に抜け出るのを規制する役割を有している。
【0024】
ムービングプレート13は合成樹脂製であって、
図8および
図9に示すように、板状のプレート本体33を備える。プレート本体33は、板面を前後に向けて配置されている。
図8に示すように、プレート本体33は、左右中間部に、複数の位置決め孔34を有している。各位置決め孔34は、断面矩形状をなし、プレート本体33を前後方向に貫通している。
図9に示すように、プレート本体33の後面には、各位置決め孔34の開口縁部に、全周に亘って拡開するタブ誘い込み部35が形成されている。雄端子12のタブ19は、タブ誘い込み部35に誘い込まれつつ位置決め孔34に位置決め状態で挿通される(
図2を参照)。また、プレート本体33は、複数の治具挿通孔36を有している。各治具挿通孔36は、断面矩形状をなし、各位置決め孔34の下方に対応して配置されている。プレート本体33の前面には、各治具挿通孔36の開口縁部に、全周に亘って拡開する治具誘い込み部37が形成されている。係止解除用の治具200は、治具誘い込み部37に誘い込まれつつ治具挿通孔36に位置決め状態で挿通され、先端部がランス17に接触可能とされている(
図13を参照)。
【0025】
図8および
図9に示すように、プレート本体33は、各位置決め孔34を挟んだ左右両側の端部に、大型の雄端子12のタブ19を挿通可能な複数の大型位置決め孔39を有している。各大型位置決め孔39の下方には、大型のランス17の係止を解除するための大型治具挿通孔42が形成されている。各大型位置決め孔39は、各大型治具挿通孔42と連通している。
【0026】
ムービングプレート13は、
図8に示すように、プレート本体33の左右両側の端部における上下中間部から前方に突出する一対の係合部43を有している。各係合部43は、矩形板状をなし、板面を左右に向けて配置されている。各係合部43の前端には、内側(互いに対向する側)に突出する係合突起44が形成されている。係合突起44は、係合部43の前端において上下方向にリブ状に延びている。
図11に示すように、係合部43の係合突起44は、相手ハウジング91のプレート係合部96に引っ掛け状態で係合可能とされている。
【0027】
ムービングプレート13は、
図8に示すように、プレート本体33の四隅部から前方に突出する複数のガイド部45を有している。各ガイド部45は、断面L字形をなし、プレート本体33の四隅部をそれぞれ区画する二辺に亘って形成されている。各ガイド部45は、フード本体24の四隅部の内面を摺動し、フード部15内におけるムービングプレート13の移動動作をガイドする役割を有している(
図1を参照)。
【0028】
また、ムービングプレート13は、
図9に示すように、プレート本体33の上下両側の端部における左右両側部から後方に張り出す、一対ずつの枠部46を有している。各枠部46は、平面視矩形の枠状をなし、後端部に、幅方向に沿った梁状の被係止部47を有している。
【0029】
さらに、ムービングプレート13は、各枠部46の被係止部47の左右中間部から後方に突出する、一対ずつの突出部48を有している。各突出部48は、平面視矩形の板状であって、板面を上下に向けて配置されている。各突出部48は、後端部に、外側(上下方向に離反する側)に突出する引掛部49を有している。引掛部49は、突出部48の後端部において、左右方向にリブ状に延びる形状をなしている。引掛部49の前面は、外側(突出方向の先端側)に行くに従って後傾している。引掛部49の後面は、外側に行くに従って前傾している。
【0030】
(コネクタの嵌合および離脱)
ハウジング11および相手ハウジング91の嵌合に先立ち、ハウジング11のフード部15内にムービングプレート13が組み込まれ、ハウジング11に対してムービングプレート13が初期位置に保持される。
図2に示すように、初期位置において、プレート本体33がフード部15内に配置され、各雄端子12のタブ19の前端部がプレート本体33の各位置決め孔34に挿通される。また、
図12に示すように、初期位置では、ムービングプレート13の被係止部47が弾性係止部29における係止突起31と本係止突起32との間に前後に挟まれ、フード部15内におけるムービングプレート13の移動が規制される。さらに、初期位置において、突出部48は、後端部における引掛部49を含め、ハウジング11の各貫通孔27内に配置される。このため、
図14に示すように、ハウジング11を上方から見ても、各突出部48はフード部15内に隠れて視認できない状態になっている。
【0031】
ハウジング11および相手ハウジング91の嵌合開始時、相手ハウジング91がフード部15内に挿入される。すると、相手ハウジング91の各解除部95が各弾性係止部29の本係止突起32の前面(コネクタ10側から見た前面)を摺動し、各弾性係止部29が外側に撓み変形させられ、各係止突起31と各被係止部47との係止が解除される。これにより、ムービングプレート13が移動可能な状態になる。コネクタ10の嵌合の進行とともに、ムービングプレート13は相手ハウジング91に押圧されて嵌合位置に向けて移動させられる。
【0032】
ハウジング11および相手ハウジング91が正規に嵌合されると、ムービングプレート13が嵌合位置に至ることができる。嵌合位置では、
図3に示すように、プレート本体33がフード部15内の奥端側(後端側)においてハウジング本体14と相手ハウジング91との間に前後に挟まるように配置される。各雄端子12は、相手ハウジング91に収容された各雌端子93に電気的に接続される。また、ロックアーム94がロック部28に弾性的に係止され、ハウジング11および相手ハウジング91が嵌合状態に保持される。
【0033】
ムービングプレート13が初期位置から嵌合位置に向かう過程において、各突出部48が各貫通孔27から後方に突出し、ハウジング本体14の外面上に露出して配置される。具体的には、各突出部48は、ハウジング本体14の上面および下面に沿って、上面および下面との間に僅かな隙間を有して配置される(
図13を参照)。つまり、各突出部48は、ハウジング本体14の外面上に非接触状態に配置される。各突出部48の各貫通孔27からの突出量(露出量)は、ムービングプレート13が嵌合位置に近づくに従って次第に大きくなる。嵌合位置では、各突出部48の各貫通孔27からの突出量が最大値となり、各突出部48の引掛部49の全体がハウジング本体14の外面上に露出して配置される(
図10および
図15を参照)。
【0034】
ここで、2つの突出部48は、ハウジング本体14の上面上に配置されている。このため、作業者の通常の視線方向でコネクタ10を上方から見たときに、
図15に示すように、ハウジング本体14の上面上に配置された2つの突出部48の状態(姿勢)を容易に視認することができる。特に、各突出部48が平面視矩形状をなし、複雑な形状を呈していないので、視認性に優れる。ここで、突出部48の貫通孔27からの突出量が最大値に至っていない場合には、ムービングプレート13が未だ嵌合位置に到達していないことがわかる。本実施形態1の場合、ムービングプレート13がハウジング11に対して正規姿勢で組み付けられていると、
図15に示すように、各突出部48と段部25(膨出部26でもある)の後面とが直角に交差する位置関係になる。
【0035】
メンテナンス等の事情によって、ハウジング11および相手ハウジング91を離脱させる際には、ロックアーム94とロック部28との係止を解除し、相手ハウジング91をフード部15内から引き抜く作業を行う。相手ハウジング91が後退する過程では、
図11に示すように、係合部43がプレート係合部96に引っ掛けられ、ムービングプレート13が嵌合位置から初期位置に向けて移動させられる。ムービングプレート13が初期位置に至ると、再び被係止部47が弾性係止部29の係止突起31と本係止突起32との間に挟まり、ムービングプレート13の移動が停止される。その後、相手ハウジング91がフード部15から引き抜かれ、ハウジング11および相手ハウジング91が離脱させられる。
【0036】
仮に、相手ハウジング91の離脱過程において、プレート本体33がフード部15内で傾いた状態になると、各雄端子12のタブ19がプレート本体33の各位置決め孔34の孔面に干渉するため、好ましくない。これに対し、本実施形態1の場合、プレート本体33がフード部15内で傾くと、その傾きに応じて各突出部48も傾くことになり、ハウジング本体14の上面上に露出する2つの突出部48の傾き状態をハウジング11の上方から視認することができる。具体的には、
図16に示すように、2つの突出部48がそれぞれ前後方向に対して傾斜した姿勢をとる。さらに、2つの突出部48のうち、一方の突出部48が段部25の後面から後方に大きく突出する一方、他方の突出部48が段部25の後面から小さく突出し、または段部25の内側(貫通孔27内)に配置されることになる。よって、各突出部48の上記状態を視認することにより、ムービングプレート13が傾いた状態にあることがわかる。
【0037】
ところで、コネクタ10が単体状態にあるときに、雄端子12とランス17との係止を解除する際には、係止解除用の治具200の操作性を考慮して、初期位置のムービングプレート13を嵌合位置に移動させることが望まれる。
【0038】
本実施形態1の場合、
図12に示すように、治具100の先端部を貫通孔27内に挿入して突出部48の引掛部49に引っ掛け、その状態で治具100を後方に引っ張ることにより、ムービングプレート13を嵌合位置に向けて移動させることができる。
【0039】
ムービングプレート13が初期位置にあるときに、突出部48の引掛部49の前方には係止突起31が隣接しているため、治具100の引っ張り力を係止突起31にダイレクトに伝えることができる。よって、プレート本体33の後退に応じて係止突起31とプレート本体33との係止を容易に解除することができる。これにより、ムービングプレート13を嵌合位置に至らすことができる。
【0040】
図13に示すように、ムービングプレート13が嵌合位置にあるときに、係止解除用の治具200がプレート本体33の治具挿通孔36に挿通され、治具200の先端部をランス17に作用させることで、雄端子12の係止爪22に対するランス17の係止を解除することができる。ランス17の係止を解除した状態で、電線20を後方に引っ張ることにより、雄端子12をキャビティ16内から抜き取ることができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態1によれば、作業者が突出部48の貫通孔27からの突出量を視認することで、ムービングプレート13の嵌合位置からの移動量を検知することができる。また、各突出部48の状態(姿勢)、各突出部48同士の位置関係、各突出部48とハウジング11との位置関係を視認することで、ムービングプレート13が傾いているのかどうかを検知することができる。特に、本実施形態1の場合、突出部48がハウジング11に対して非係止の状態に維持され、ハウジング11と干渉することがないのに加え、突出部48自体も帯板状の単純な形状であるため、視認性に優れる。その結果、ムービングプレート13の状態を検知する信頼性を向上させることができる。
【0042】
また、各突出部48の引掛部49(後端部)が初期位置で貫通孔27内に配置されているため、各突出部48が外側に露出している状態では、ムービングプレート13が初期位置に配置されていないことがわかる。
【0043】
また、各突出部48の引掛部49が嵌合位置でハウジング本体14の外面上に沿って配置されているため、突出部48がハウジング本体14によって保護されて折損、破損される事態を回避することができる。
【0044】
さらに、2つの突出部48がハウジング本体14の上面上に左右に間隔を置いて並んでいるため、各突出部48の位置関係や各突出部48とハウジング11との位置関係に基づいて、ムービングプレート13の状態をより精度良く検知することができる。また、2つの突出部48のうち、一方の突出部48を視認できない状況下であっても、他方の突出部48を見ることで、ムービングプレート13の状態を検知することができる。
【0045】
さらに、雄端子12のキャビティ16内からの抜き取り作業を行う際に、突出部48の引掛部49に治具100を引っ掛けて後方に引っ張ることにより、突出部48を貫通孔27から引き出すことができ、ムービングプレート13を嵌合位置に至らすことができる。これによれば、プレート本体33を前方から治具100で押圧してムービングプレート13を嵌合位置に至らす場合と異なり、雄端子12のタブ19に治具100が干渉する可能性が低くなるので、タブ19が折損、破損される事態を防止できる。
【0046】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、突出部は、ムービングプレートに複数設けられていた。しかし、他の実施形態として、突出部は、ムービングプレートに1つ設けられるだけでも良い。この1つの突出部は、視認性を考慮し、少なくとも嵌合位置でハウジング本体の上面上に露出するのが望ましい。
上記実施形態1の場合、突出部の後端部は、初期位置で貫通孔内に配置されていた。しかし、他の実施形態として、突出部の後端部は、初期位置で貫通孔から後方に露出するものであっても良い。
上記実施形態1の場合、突出部の後端部は、初期位置から嵌合位置に向かう嵌合初期の段階で貫通孔から外側に露出していた。しかし、他の実施形態として、突出部の後端部は、嵌合位置に至る直前に貫通孔から外側に露出するものであっても良い。
上記実施形態1の場合、突出部は、後端部に引掛部を有していた。しかし、他の実施形態として、突出部は、引掛部を有していなくても良い。例えば、突出部は、凹凸の無い単なる平板であっても良い。
【符号の説明】
【0047】
10…コネクタ
11…ハウジング
12…雄端子
13…ムービングプレート
14…ハウジング本体
15…フード部
16…キャビティ
17…ランス
18…本体部
19…タブ
20…電線
21…バレル部
22…係止爪
23…リテーナ
24…フード本体
25…段部
26…膨出部
27…貫通孔
28…ロック部
29…弾性係止部
31…係止突起
32…本係止突起
33…プレート本体
34…位置決め孔
35…タブ誘い込み部
36…治具挿通孔
37…治具誘い込み部
39…大型位置決め孔
42…大型治具挿通孔
43…係合部
44…係合突起
45…ガイド部
46…枠部
47…被係止部
48…突出部
49…引掛部
90…相手コネクタ
91…相手ハウジング
92…相手キャビティ
93…雌端子
94…ロックアーム
95…解除部
96…プレート係合部
100…治具
200…係止解除用の治具