(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】被回転物の支持装置及び支持方法、並びに、ロールの整備方法
(51)【国際特許分類】
B21B 28/02 20060101AFI20241106BHJP
B21B 31/08 20060101ALI20241106BHJP
B21B 39/00 20060101ALI20241106BHJP
B65H 16/08 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B21B28/02 Z
B21B31/08 B
B21B39/00 G
B65H16/08
(21)【出願番号】P 2022024690
(22)【出願日】2022-02-21
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】新留 英峰
(72)【発明者】
【氏名】経塚 敏勝
(72)【発明者】
【氏名】池永 智親
(72)【発明者】
【氏名】林田 英治
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-050287(JP,U)
【文献】実開昭53-080891(JP,U)
【文献】実開昭57-141597(JP,U)
【文献】登録実用新案第3132627(JP,U)
【文献】特開平01-170505(JP,A)
【文献】特開2002-103487(JP,A)
【文献】特開2017-140597(JP,A)
【文献】国際公開第98/049454(WO,A1)
【文献】中国実用新案第214191800(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 27/00 - 35/14
39/00 - 41/12
B24B 5/00 - 7/30
B65H 16/00 - 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能で且つ互いに離間して設けられ、円形断面を有する被回転物を当該被回転物の軸心周りに回転可能に支持する少なくとも一対の支持ローラと、
前記支持ローラの外周の一部を露出させる切り欠き部が形成されており、前記支持ローラを覆うとともに前記支持ローラと同軸周りに前記支持ローラと独立して回転可能に設けられたカバーと、
を有
し、
前記カバーにおける前記切り欠き部の形成範囲は、前記支持ローラの回転軸心を中心とする中心角が10°以上180°以下である、被回転物の支持装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記切り欠き部が
当該カバーの上部に位置する初期位置に位置決めされている、請求項1に記載の被回転物の支持装置。
【請求項3】
前記支持ローラにより前記被回転物を支持する前においては、前記カバーは、前記初期位置に自動的に位置決めされ、
前記支持ローラにより前記被回転物を支持する際においては、前記カバーは、前記切り欠き部が前記初期位置よりも載置された前記被回転物が存在する側に位置するように自動で回転する、請求項2に記載の被回転物の支持装置。
【請求項4】
前記カバーにおける前記切り欠き部の形成範囲は、前記支持ローラの回転軸心を中心とする中心角が10°以上135°以下である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の被回転物の支持装置。
【請求項5】
前記切り欠き部は、前記支持ローラの径方向外側に向けて幅が大きくなるテーパー形状または湾曲形状である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被回転物の支持装置。
【請求項6】
前記カバーの前記切り欠き部の先端の高さは、前記支持ローラの頂点の高さと同等または前記支持ローラの頂点の高さ以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の被回転物の支持装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の被回転物の支持装置を用い、前記支持ローラによって被回転物を支持する際に、前記カバーの前記切り欠き部の先端を前記被回転物に当接させることで、前記被回転物の位置に合わせて前記カバーを回転させ、前記支持ローラに対して前記カバーを位置決めする、被回転物の支持方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の被回転物の支持装置を用い、被回転物としてのロールを整備する際に、前記支持ローラによって前記ロールを支持しながら前記ロールの外周面の整備を行う、ロールの整備方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形断面を有する構造物を被回転物として回転可能に支持する支持装置及び支持方法、並びに、被回転物としてのロールの整備方法に関し、特に、製鉄プロセスで使用されるロールなどの円形断面を有する被回転物の整備作業において、被回転物を安定的に回転可能に支持することができ、被回転物の外周面全周の整備を安全に行う被回転物の支持装置及び支持方法、並びに、ロールの整備方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスなどの産業設備では、被回転物の一例であるロールが多数使用されており、各設備のメンテナンスにおいては、ロールの検査や手入れ作業をオフラインで実施する必要がある。ロールは円形断面を有しており、自重や僅かな衝撃でロール自体が容易に動いてしまうため、ロール自体を安定して設置する必要がある。一方で、ロールの外周面全周の検査や手入れが必要であることから、ロールの検査対象の面(位置)を平易且つ安全に変更できる必要がある。
【0003】
従来、ロール整備の際は平坦な置台の上にロールを並列に設置し、各ロールの両端に輪留めなどを置くことで転がり防止をしていた。あるいは、V字状の形状をした専用置台を使用し、溝部にロールを置くことで転がりを防止していた。
【0004】
一般的に、整備するための作業スペースや作業員には限りがあることが多く、一ヵ所のロール整備場において、多種多様な径を有するロールを整備する必要があるため、それぞれのロール寸法に対応したロール置台が必要であった。そのため、ロール置台の交換などが必要となり、整備効率が低下するとともに、整備コストが増大していた。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1には、走行軌道上を独立移動する一対の台車と、各台車上に設けられ、整備するロールを受ける一対のロール受台と、各ロール受台をロール軸方向に沿ってスライド移動させる受台スライド機構とを備えたロール載置装置が提案されている。特許文献1では、一対のロール受台が互いに同一のレール上に位置する台車となっており、各台車を走行させることで、多種のロール長さに対応した構造となっている。また、V字のロールクランプが角度調整できる構造となっており、多種のロール径に対応した構造となっている。
【0006】
また、特許文献2には、ロール受け架台のロール支持部にローラを使用することで、支持架台上でロールを回転させることができる構造のロール支持架台が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-286610号公報
【文献】特開平9-76005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
【0009】
すなわち、特許文献1は、ロールを支持するクランプの角度を調整できる機構になっており、多様なロール径に対応できる構成となっているが、整備するロールは自重及び摩擦で回転することができないため、全周整備をするためには、一旦、天井クレーンなどでロールを吊上げ、ロールを回転させて再度設置しなければならないという問題がある。
【0010】
特許文献2は、ロール架台に1対の支持ローラを有し、支持ローラ上にロールを設置する構成になっていることから、ロールの吊直しをせずにロールの回転ができ、全周整備が可能となっている。しかしながら、回転体どうしで重量物を支持する構造においては、それぞれの回転により挟まれや巻き込まれなどの災害が生じやすく、特許文献2は、災害の対策を言及していない。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、種々の径を有する被回転物(ロール)を安定して設置することができ、且つ、整備対象である被回転物(ロール)を容易に回転させて全周の整備をすることを可能とし、被回転物及び被回転物を支持するローラの運動により生じる挟まれや巻き込まれといった危険性を自動で防止することを可能とする、被回転物の支持装置及び支持方法、並びに、ロールの整備方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
【0013】
[1] 回転可能で且つ互いに離間して設けられ、円形断面を有する被回転物を当該被回転物の軸心周りに回転可能に支持する少なくとも一対の支持ローラと、
前記支持ローラの外周の一部を露出させる切り欠き部が形成されており、前記支持ローラを覆うとともに前記支持ローラと同軸周りに前記支持ローラと独立して回転可能に設けられたカバーと、
を有する、被回転物の支持装置。
【0014】
[2] 前記カバーは、前記切り欠き部が上部に位置する初期位置に位置決めされている、上記[1]に記載の被回転物の支持装置。
【0015】
[3] 前記カバーにおける前記切り欠き部の形成範囲は、前記支持ローラの回転軸心を中心とする中心角が10°以上180°以下である、上記[1]または上記[2]に記載の被回転物の支持装置。
【0016】
[4] 前記カバーにおける前記切り欠き部の形成範囲は、前記支持ローラの回転軸心を中心とする中心角が10°以上135°以下である、上記[3]に記載の被回転物の支持装置。
【0017】
[5] 前記切り欠き部は、前記支持ローラの径方向外側に向けて幅が大きくなるテーパー形状または湾曲形状である、上記[1]から上記[4]のいずれかに記載の被回転物の支持装置。
【0018】
[6] 前記カバーの前記切り欠き部の先端の高さは、前記支持ローラの頂点の高さと同等または前記支持ローラの頂点の高さ以下である、上記[1]から上記[5]のいずれかに記載の被回転物の支持装置。
【0019】
[7] 上記[1]から上記[6]のいずれかに記載の被回転物の支持装置を用い、前記支持ローラによって被回転物を支持する際に、前記カバーの前記切り欠き部の先端を前記被回転物に当接させることで、前記被回転物の位置に合わせて前記カバーを回転させ、前記支持ローラに対して前記カバーを位置決めする、被回転物の支持方法。
【0020】
[8] 上記[1]から上記[6]のいずれかに記載の被回転物の支持装置を用い、被回転物としてのロールを整備する際に、前記支持ローラによって前記ロールを支持しながら前記ロールの外周面の整備を行う、ロールの整備方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、整備対象である被回転物(ロール)を支持ローラによって支持することで、整備対象の被回転物(ロール)の回転を容易にし、且つ、支持ローラと同心回転するカバーを装備しているので、複数の径の整備対象の被回転物(ロール)に対応した回転体養生を平易に行うこと、つまり、作業者の挟まれや巻き込まれを未然に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る被回転物の支持装置の実施形態の一例を示す平面概略図である。
【
図2】
図1に示す支持装置を図中矢印方向から見た側面概略図である。
【
図3】本発明に係る被回転物の支持装置の他の実施形態の一例を示す平面概略図である。
【
図4】支持装置の支持ローラ及びカバーを拡大して示す図である。
【
図5】
図1に示す支持装置の支持ローラの上に整備対象のロールを設置した際の側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0024】
[支持装置の構成]
図1及び
図2に、本発明に係る被回転物の支持装置の実施形態の一例を示す。
図1は平面概略図で、
図2は、
図1に示す支持装置を図中矢印方向から見た側面概略図である。
【0025】
本発明に係る被回転物の支持装置1は、支持ローラ2と、支持ローラ2を覆うカバー4と、支持ローラ固定用部材5と、を有している。支持ローラ2は、支持軸3に回転可能に取り付けられており、支持軸3は、支持ローラ固定用部材5に設置される軸支持部6及び軸支持部6’に固定して取り付けられている。この支持ローラ2とは支持軸が異なる支持ローラ2aが、その回転面を支持ローラ2の回転面に相対し、互いに離間して設置されている。支持ローラ2aはカバー4aで覆われており、支持ローラ2aは、支持軸3aに回転可能に取り付けられており、支持軸3aは、支持ローラ固定用部材5に設置される軸支持部6a及び軸支持部6a’に固定して取り付けられている。支持軸3及び支持軸3aは、同一水平方向及び同一高さに平行に設置されている。
【0026】
また、支持軸3には、支持ローラ固定用部材5を挟んで、支持ローラ2と相対する位置に、支持ローラ2’が設置されており、同様に、支持軸3aには、支持ローラ固定用部材5を挟んで、支持ローラ2aと相対する位置に、支持ローラ2a’が設置されている。つまり、
図1に示す被回転物の支持装置1は、4つの支持ローラ2、2a、2’、2a’を有しており、それぞれの支持ローラは、カバー4、4a、4’、4a’で覆われている。支持ローラ2、2a、2’、2a’、カバー4、4a、4’、4a’、及び、支持ローラ固定用部材5は、基本的には鋼製であるが、他の金属でもよい。カバー4、4a、4’、4a’は、作業者の被回転物と支持ローラとの間での挟まれや巻き込まれを防止するためのものである。
【0027】
図3に、本発明に係る被回転物の支持装置の実施形態の他の一例を示す。
図3は平面概略図であり、図中の矢印方向から見た支持装置の側面概略図は
図2と同一である。
図3に示す支持装置1Aは、
図1に示す支持装置1と類似しており、説明が重複することがあるが、以下、その構成を説明する。
【0028】
本発明に係る被回転物の支持装置1Aは、支持ローラ2と、支持ローラ2を覆うカバー4と、支持ローラ固定用部材5aと、を有している。支持ローラ2は、支持軸3’に回転可能に取り付けられており、支持軸3’は、支持ローラ固定用部材5aに設置される軸支持部6に固定して取り付けられている。この支持ローラ2とは支持軸が異なる支持ローラ2aが、その回転面を支持ローラ2の回転面に相対し、互いに離間して設置されている。支持ローラ2aはカバー4aで覆われており、支持ローラ2aは、支持軸3a’に回転可能に取り付けられており、支持軸3a’は、支持ローラ固定用部材5aに設置される軸支持部6aに固定して取り付けられている。支持軸3’及び支持軸3a’は、同一水平方向及び同一高さに平行に設置されている。
【0029】
つまり、
図3に示す被回転物の支持装置1Aは、2つの支持ローラ2、2aを有しており、それぞれの支持ローラは、カバー4、4aで覆われている。支持ローラ2、2a、カバー4、4a、及び、支持ローラ固定用部材5aは、基本的には鋼製であるが、他の金属でもよい。カバー4、4aは、作業者の被回転物と支持ローラとの間での挟まれや巻き込まれを防止するためのものである。
【0030】
本発明に係る支持装置1及び支持装置1Aは、整備対象である、円形断面を有する被回転物としてのロールを軸心周りに回転可能に支持し、支持したロールの全周整備を容易に行うために、被回転物としてのロールを、相対する一対の支持ローラによって回転可能に支持するものである。
図1に示す支持装置1は、4つの支持ローラを有しており、被回転物としてのロールを、相対する支持ローラ2と支持ローラ2aとの間、及び、相対する支持ローラ2’と支持ローラ2a’との間の二箇所で、回転可能に支持している。
図3に示す支持装置1Aは、2つの支持ローラを有しており、被回転物としてのロールを、相対する支持ローラ2と支持ローラ2aとの間の一箇所で、回転可能に支持している。また、支持ローラ2、2aどうしの間隔W(
図2を参照)は、整備するロールの径以下に設定すればロールの支持が可能であるが、より安定して設置するためには、整備するロールの半径以下とすることが望ましい。
【0031】
このように、本発明に係る支持装置1及び支持装置1Aは、相対して互いに離間する、少なくとも一対(2個)の支持ローラを有している。なお、支持ローラ固定用部材5及び支持ローラ固定用部材5aは、ロール整備場に設置されたローラ置台(図示せず)に、部材固定用ボルト7及び部材固定用ナット8などによって着脱可能に取り付けられる。
図1中の符号9、9a、9’、9a’、及び、
図3中の符号9、9aは、支持ローラ固定用ピンである。
【0032】
図3に示す支持装置1Aは、ロールを支持する箇所が一箇所であるので、支持するロールの軸心方向の両端側に、少なくとも1基ずつ設置される。また、
図1に示す支持装置1も、被回転物としてのロールの軸方向長さが、支持ローラ2と支持ローラ2’との間の寸法(長さ)よりも十分に長い場合には、被回転物としてのロールを安定して支持するために、支持するロールの軸心方向の両端側に、少なくとも1基ずつ設置される。
【0033】
また、支持装置1の各々の支持ローラ2、2a、2’、2a’には、作業者の挟まれや巻き込まれを防止するためのカバー4、4a、4’、4a’がそれぞれ取り付けられている。同様に、支持装置1Aの支持ローラ2、2aには、カバー4、4aがそれぞれ取り付けられている。それぞれの支持ローラ及びカバーは構造が同一であるので、以下、支持装置1の支持ローラ2とカバー4との組み合わせを代表として説明する。
【0034】
図4に、支持装置1の支持ローラ2及びカバー4を拡大して示す。
図4に示すように、カバー4は、支持ローラ2よりも一回り大きく、支持ローラ2の全体(特に外周面)を覆っている。カバー4及び支持ローラ2は同一のピン構造の物で支持軸3に取り付けられ、同軸周りに(同一回転軸心で)回転する構造となっており、且つ、互いに独立に回転できる構造となっている。支持ローラ2の径は、任意の径とすることができる。支持ローラ2の径が小さいほど、小規模な構成にすることができるが、重量物を支持する強度を有する必要があるため、整備対象のロールの重量に合わせて寸法を決定することが好ましい。
【0035】
カバー4には、切り欠き部4KIが形成されており、切り欠き部4KIから支持ローラ2の外周面の一部が露出する構成となっている。カバー4における切り欠き部4KIの形成範囲は、狭いほど支持ローラ2の露出面積を低減することができる一方、整備するロールがカバー4に当接した際に、カバー4の回転がスムーズに促されない(カバー4が回転し難い)ことがある。また、切り欠き部4KIの形成範囲が広すぎると、カバー4による挟まれや巻き込まれの防止効果が低減する。このため、カバー4における切り欠き部4KIの形成範囲は、支持ローラ2及びカバー4の回転軸心Oを中心とする中心角θが10°以上180°以下が好ましく、10°以上135°以下がより好ましい。切り欠き部4KIの形成範囲は、整備対象であるロールの径に合わせて適宜決定される。
【0036】
また、切り欠き部4
KIは、支持ローラ2の径方向外側に向けて幅Lが広がる構成とすることが好ましい。具体的には、切り欠き部4
KIが先端へ向かって幅Lが広くなるテーパー形状または湾曲形状であることが好ましい。このように切り欠き部4
KIをテーパー形状または湾曲形状とすることで、切り欠き部4
KIの先端が整備対象のロールの外周面に当接した際に、切り欠き部4
KIの先端に応力が集中することを抑制することができ、整備対象のロールによるカバー4の回転をよりスムーズに促すことが可能となる。なお、
図4に示す符号H
Rは、支持ローラ2の頂点の高さで、符号H
Kは、カバー4の切り欠き部4
KIの先端の高さである。
【0037】
図5に、支持ローラ2及び支持ローラ2aの上に整備対象のロール10を設置した際の概要を示す。支持ローラ2とカバー4及び支持ローラ2aとカバー4aとは、互いに独立して回転できるため、ロール10及び支持ローラ2、2aの回転運動を阻害することなく、回転体どうしの隙間を閉塞することができる。
【0038】
ここで、カバー4の切り欠き部4KIの先端の高さHKが支持ローラ2の頂点の高さHRより高い場合には、ロール10の支持ローラ2との当接がカバー4によって阻害されてしまう虞があるため、カバー4の切り欠き部4KIの高さHKは、支持ローラ2の頂点の高さHRと同等か、または支持ローラ2の頂点の高さHR以下とすることが好ましい。特に、支持ローラ2の頂点HRと同等の高さの方がロール10との隙間を閉塞できるので望ましい。
【0039】
[整備対象のロールの支持方法]
支持装置1及び支持装置1Aでは、
図2に示すように、整備対象のロール10を支持する前の初期位置において、カバー4は自重によって初期位置に位置決めされている。この時、切り欠き部4
KIは切り欠き部以外の部分に比べて重量が軽いため、切り欠き部4
KIがカバー4の上部に位置し、カバー4は鉛直線に対して左右で線対称の形状となる。この状態で、支持ローラ2の上にロール10が載置されると、ロール10によってカバー4の位置が自動で移動する。
【0040】
具体的には、ロール10を支持ローラ2の上に降ろすと、ロール10の外周面がカバー4の切り欠き部4
KIの先端に当接し、ロール10の降下に合わせてカバー4がロール10に押されて回転する。すなわち、
図2に示すように、初期位置に位置決めされていたカバー4が、
図5に示すように、切り欠き部4
KIが初期位置よりも内側(載置されたロール10の主体が存在する側)に位置するように回転する。これにより、ロール10の外周面が支持ローラ2の外周面に当接した際、カバー4は、支持ローラ2のロール10との接点を露出させつつ、接点以外の外周面を覆った状態で自動的に位置決めされる。なお、ロール10を持ち上げた際には、カバー4は自重によって再び初期位置へ戻る。
【0041】
上記のように、ロール10を支持していない時は、カバー4を初期位置に位置決めすることができるとともに、ロール10を支持する時には、ロール10の位置及び大きさに合わせてカバー4の位置を自動で調整することができ、カバー4によって作業者の挟まれや巻き込まれを防止しつつ、ロール10を容易に回転可能に支持することができる。
【0042】
[変形例]
上記の実施形態では、カバー4を自重によって初期位置に位置決めしているが、例えば、バネなどの付勢部材によって、切り欠き部4KIが上部に位置するように、カバー4を初期位置に位置決めする構成としてもよい。この場合、カバー4を左右非線対称な位置などの所望の初期位置で位置決めすることが可能である。また、支持ローラ2の内側(載置されたロール10の主体が存在する側)は挟まれや巻き込まれの虞が少ないので、必ずしもカバー4を設ける必要がない。このため、支持ローラ2の内側(載置されたロール10の主体が存在する側)にはカバー4を設けず、支持ローラ2の外側に相当する範囲のみにカバー4を形成する構成とすることも可能である。
【0043】
また、上記の実施形態では、カバー4が回転自由となっているが、ストッパーなどの回転規制部材を設けることで、カバー4が特定の範囲のみに位置するように、カバー4の回転範囲を規制する構成とすることも可能である。
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、整備対象であるロール10を支持ローラ2によって支持することで、整備対象のロール10の回転を容易にし、且つ、支持ローラ2と同心回転するカバー4を装備しているので、複数のロール径の整備対象のロール10に対応した回転体養生を平易に行うこと、つまり、作業者の挟まれや巻き込まれを未然に防止することが可能になる。
【0045】
また、本発明の支持装置1、1Aは、ローラ置台上に適宜着脱可能な構造であるので、設備構成が簡易で済み、多数のロール10を同時に整備するような整備方法においても、コストやスペースの消費を抑えることができるという効果も発揮される。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。
【0047】
図1に示す支持装置1を製作し、製作した支持装置1を圧延用のロール10の軸心方向の両端側に1基ずつ設置し、圧延用のロール10をそれぞれの支持装置1の上に載置し、ロール10の整備を実施した。支持ローラ2は直径を52mmとし、カバー4の厚みは3mmとし、カバー4と支持ローラ2との間隙は1.0mmとした。尚、カバー4の厚みは3mmに限るわけではなく、3mm以上としてもよい。一方、カバー4と支持ローラ2との間隙を大きくすると、作業者の挟まれや巻き込まれの虞が増大するので、カバー4と支持ローラ2との間隙は2.0mm以下とすることが好ましく、1.0mm以下とすることがより好ましい。
【0048】
整備対象のロール10のうちの最小のロール10の半径をRとし、支持ローラ2の半径をrとしたとき、支持ローラ2、2aどうしの間隔W(間隔Wは
図2を参照)が2
0.5×(R+r)程度となるように、支持ローラ2を設置した。この場合には、ロール10の中心と支持ローラ2の中心とを結ぶ線分と、水平線とのなす角度が45°程度となり、ロール10を安定的に載置することが可能になる。
【0049】
また、カバー4の切り欠き部4KIの寸法は、切り欠き部4KIの幅が20.5×r程度になるように製作した。すなわち、カバー4における切り欠き部4KIの形成範囲は、支持ローラ2(カバー4)の回転軸心を中心とする中心角θが90°程度になるように製作した。これにより、ロール10とカバー4との共通接線が水平線となす角度が45°程度となり、ロール10がカバー4に当接した際にカバー4の回転を促すことができる。
【0050】
なお、本実施例では、ロール10の中心と支持ローラ2の中心とを結ぶ線分と、水平線とのなす角度が約45°となるように、支持ローラ2、2aどうしの間隔Wを設定したが、このなす角度がより大きくなるほど、ロール10によるカバー4の回転をスムーズに促すことができる。一方で、ロール10の半径が変化して支持ローラ2、2aどうしの間隔Wに対して大きくなっていくと、ロール10が転倒する危険が増すので、整備対象のロール10の半径に応じて支持ローラ2、2aどうしの間隔Wの寸法を設定することが好ましい。
【0051】
また、本実施例では、支持ローラ2、2a、2’、2a’の4つの支持ローラを1つのローラ固定用部材5にまとめて設置しているが、支持ローラ2、2’と、支持ローラ2a、2a’とを分離し、支持ローラ2、2’と支持ローラ2a、2a’とをそれぞれ別の支持ローラ固定用部材に固定し、ロール10のロール径に合わせて、それぞれの支持ローラ固定用部材の設置位置を調整して支持ローラ2、2aどうしの間隔Wを調整することで、常に安定してロール10を支持することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 支持装置
1A 支持装置
2 支持ローラ
3 支持軸
4 カバー
4KI 切り欠き部
5 支持ローラ固定用部材
6 軸支持部
7 部材固定用ボルト
8 部材固定用ナット
9 支持ローラ固定用ボルト
10 ロール