(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
H02M3/155 C
H02M3/155 H
(21)【出願番号】P 2022054646
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】麻生 由哉
(72)【発明者】
【氏名】福原 啓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】中西 五輪生
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0296981(US,A1)
【文献】特開2020-178503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される入力電圧を所定の直流電圧に変換する電源装置であって、
前記電源から前記電源装置に突入電流が流れることを抑制する降圧コンバータ方式の突
入電流防止回路と、
前記所定の直流電圧を出力する昇圧型コンバータ回路と、
第1モードと第2モードとを切り替えるモード制御回路と、
第1FETのドレイン-ソース間の電圧値を検出可能な電圧検出器と、
を備え、
前記突入電流防止回路は、前記電源から前記突入電流防止回路に電流を流すか否かを切
り替え可能な前記第1FETを備え、
前記突入電流防止回路が備えるチョークコイルと、前記昇圧型コンバータ回路が備える
チョークコイルとは、共通のチョークコイルであり、
前記突入電流防止回路が備える平滑コンデンサと、前記昇圧型コンバータ回路が備える
平滑コンデンサとは、共通の平滑コンデンサであ
り、
前記第1モードは、前記突入電流防止回路が突入電流防止動作を実行し、前記昇圧型コンバータ回路が昇圧型コンバータ動作を実行しないモードであり、
前記第2モードは、前記突入電流防止回路が突入電流防止動作を実行せず、前記昇圧型コンバータ回路が昇圧型コンバータ動作を実行するモードであり、
前記モード制御回路は、前記電圧検出器が検出した前記第1FETのドレイン-ソース間の電圧値の平均値が所定の閾値以下になると、前記第1モードから前記第2モードに切り替える、電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記昇圧型コンバータ回路は、オン/オフのデューティ比によって当該昇圧型コンバー
タ回路の出力電圧を調整可能な第2FETをさらに備え、
前記モード制御回路は、
前記第1モードにおいては、前記第2FETを常時オフになるように制御し、
前記第2モードにおいては、前記第1FETを常時オンになるように制御する、電源
装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置において、
前記突入電流防止回路の前段にダンピング回路をさらに備える、電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源投入時の突入電流を抑制するための突入電流防止回路を備える電源装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
また、電源装置がDC-DCコンバータのようなコンバータに電圧を供給する場合、コンバータの動作に適した直流電圧を供給することが望ましい。電源装置が昇圧型コンバータ回路を備えていると、電源装置は、所望の電圧に昇圧した直流電圧を出力することができるため、コンバータの動作に適した直流電圧を出力することができる。
【0004】
このように、電源装置は、突入電流防止回路及び昇圧型コンバータ回路を備えていることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-183069号公報
【文献】特開2018-29415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
突入電流防止回路及び昇圧型コンバータ回路を備える電源装置において、回路素子にかかるコストには改善の余地がある。
【0007】
そこで、本開示は、突入電流防止回路及び昇圧型コンバータ回路を備えると共に回路素子にかかるコストを低減することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態に係る電源装置は、電源から供給される入力電圧を所定の直流電圧に変換する電源装置であって、前記電源から前記電源装置に突入電流が流れることを抑制する降圧コンバータ方式の突入電流防止回路と、前記所定の直流電圧を出力する昇圧型コンバータ回路と、を備え、前記突入電流防止回路が備えるチョークコイルと、前記昇圧型コンバータ回路が備えるチョークコイルとは、共通のチョークコイルであり、前記突入電流防止回路が備える平滑コンデンサと、前記昇圧型コンバータ回路が備える平滑コンデンサとは、共通の平滑コンデンサである。このような電源装置によれば、突入電流防止回路及び昇圧型コンバータ回路を備えると共に回路素子にかかるコストを低減することが可能である。
【0009】
一実施形態に係る電源装置において、第1モードと第2モードとを切り替えるモード制御回路をさらに備え、前記第1モードは、前記突入電流防止回路が突入電流防止動作を実行し、前記昇圧型コンバータ回路が昇圧型コンバータ動作を実行しないモードであり、前記第2モードは、前記突入電流防止回路が突入電流防止動作を実行せず、前記昇圧型コンバータ回路が昇圧型コンバータ動作を実行するモードであってもよい。このように、第1モードと第2モードとを切り替えることにより、電源装置が突入電流防止回路又は昇圧型コンバータ回路のいずれかとして動作することができる。
【0010】
一実施形態に係る電源装置において、前記突入電流防止回路は、前記電源から前記突入電流防止回路に電流を流すか否かを切り替え可能な第1FETをさらに備え、前記電源装置は、前記第1FETのドレイン-ソース間の電圧値を検出可能な電圧検出器をさらに備え、前記モード制御回路は、前記電圧検出器が検出した前記第1FETのドレイン-ソース間の電圧値が所定の閾値以下になると、前記第1モードから前記第2モードに切り替えてもよい。このように、第1FETのドレイン-ソース間の電圧値が所定の閾値以下になったときに第1モードから第2モードに切り替えることにより、適切なタイミングで、突入電流防止回路としての動作から、昇圧型コンバータ回路としての動作に移行できる。
【0011】
一実施形態に係る電源装置において、前記昇圧型コンバータ回路は、オン/オフのデューティ比によって当該昇圧型コンバータ回路の出力電圧を調整可能な第2FETをさらに備え、前記モード制御回路は、前記第1モードにおいては、前記第2FETを常時オフになるように制御し、前記第2モードにおいては、前記第1FETを常時オンになるように制御してもよい。このような制御をすることにより、第1モードと第2モードとを適切に切り替えることができる。
【0012】
一実施形態に係る電源装置において、前記突入電流防止回路の前段にダンピング回路をさらに備えてもよい。このように、ダンピング回路を備えることにより、LC共振を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、突入電流防止回路及び昇圧型コンバータ回路を備えると共に回路素子にかかるコストを低減することができる電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来の突入電流防止回路の概略構成を示す図である。
【
図2】従来の昇圧型コンバータ回路の概略構成を示す図である。
【
図3】比較例に係る電源装置の概略構成を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る電源装置の概略構成を示す図である。
【
図5】
図4の電源装置のうち突入電流防止回路を構成する部分を示す図である。
【
図6】
図4の電源装置のうち昇圧型コンバータ回路を構成する部分を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る電源装置が第1モードで動作しているときの動作を説明する図である。
【
図8】一実施形態に係る電源装置が第2モードで動作しているときの動作を説明する図である。
【
図9】第1の変形例に係る電源装置の概略構成を示す図である。
【
図10】第2の変形例に係る電源装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(突入電流防止回路)
最初に、従来の突入電流防止回路について説明する。
【0016】
突入電流防止回路にはいくつかの方式の突入電流防止回路がある。例えば、以下のような方式の突入電流防止回路がある。
・トライアックと温度ヒューズ抵抗器との並列接続方式
・パワーサーミスタ方式
・FET(Field Effect Transistor)と温度ヒューズ抵抗器との並列接続方式
・降圧コンバータ方式
【0017】
それぞれの方式の突入電流防止回路について説明する。
【0018】
<トライアックと温度ヒューズ抵抗器との並列接続方式>
電源から電圧を印加される入力部に、トライアックと温度ヒューズ抵抗器とが並列に接続された回路が配置されている構成である。
【0019】
電源投入時は、トライアックはオフに制御されており、温度ヒューズ抵抗器に電流が流れる。この際、温度ヒューズ抵抗器の有する抵抗値によって、突入電流が抑制される。また、温度ヒューズ抵抗器は、所定値以上の電流が流れると溶断するため、大電流によって電源装置が故障することを防ぐことができる。
【0020】
電源から流れる電流によって充電される平滑コンデンサの充電が完了すると、トライアックはオンに制御される。トライアックの抵抗値は温度ヒューズ抵抗器の抵抗値よりも小さいため、電源から流れる電流はトライアックを流れるようになる。
【0021】
この方式は、部品点数が多いためコストが高いという問題点がある。また、トライアックは、導通時の電圧降下が1V程度と大きいため、定常状態において突入電流防止回路の損失が大きいという問題点がある。
【0022】
<パワーサーミスタ方式>
電源から電圧を印加される入力部に、パワーサーミスタが配置されている構成である。パワーサーミスタは、低温時の抵抗値が大きく、高温時の抵抗値が小さいという特性を有する。
【0023】
電源投入時はパワーサーミスタの温度が低いため、パワーサーミスタの抵抗値は大きい。そのため、電源投入時に発生する突入電流を、パワーサーミスタの大きい抵抗値によって抑制することができる。しばらく時間が経過して定常状態になる頃には、パワーサーミスタは自己発熱して温度が上昇している。そのため、定常状態において、パワーサーミスタの抵抗値は小さくなっており、パワーサーミスタによる損失を低減することができる。
【0024】
この方式は、電源をオフした後に早いタイミングで電源をオンした場合、パワーサーミスタの温度が高いままなので、パワーサーミスタの抵抗値が小さいままとなり、突入電流を抑制できないという問題点がある。また、定常状態となりパワーサーミスタの温度が高い状態になっても、パワーサーミスタの抵抗値は数100mΩ程度と比較的大きいため、定常状態において突入電流防止回路の損失が大きいという問題点がある。
【0025】
<FETと温度ヒューズ抵抗器との並列接続方式>
電源から電圧を印加される入力部に、FETと温度ヒューズ抵抗器とが並列に接続された回路が配置されている構成である。
【0026】
電源投入時は、FETはオフに制御されており、温度ヒューズ抵抗器に電流が流れる。この際、温度ヒューズ抵抗器の有する抵抗値によって、突入電流が抑制される。また、温度ヒューズ抵抗器は、所定値以上の電流が流れると溶断するため、大電流によって電源装置が故障することを防ぐことができる。
【0027】
電源から流れる電流によって充電される平滑コンデンサの充電が完了すると、FETはオンに制御される。FETのオン抵抗は温度ヒューズ抵抗器の抵抗値よりも小さいため、電源から流れる電流はFETを流れるようになる。
【0028】
この方式は、部品点数が多いためコストが高いという問題点がある。
【0029】
<降圧コンバータ方式>
図1は、降圧コンバータ方式の突入電流防止回路210を備える電源装置200aを示す図である。
【0030】
電源装置200aは、交流電源1から供給される入力電圧を直流電圧に変換して、コンバータ2に出力する。コンバータ2は、例えば、DC-DCコンバータであってよい。
【0031】
電源装置200aは、フィルタ201と、整流器202と、降圧コンバータ方式の突入電流防止回路210とを備える。
【0032】
フィルタ201は、交流電源1からの入力電圧に含まれる不要な周波数成分の電圧を除去する。フィルタ201は、例えば、ローパスフィルタ、バンドバスフィルタなどであってよい。
【0033】
整流器202は、電流を一方向だけに流す回路である。
【0034】
突入電流防止回路210は、チョークコイル211と、ダイオード212と、平滑コンデンサ213と、FET214と、電流検出器215と、電流制御回路216とを備える。
【0035】
降圧コンバータ方式である突入電流防止回路210の動作について説明する。
【0036】
交流電源1から電圧が投入される際、FET214はオンに制御されている。交流電源1から電圧が投入されると、突入電流防止回路210には、実線矢印で示すように電流が流れる。すなわち、チョークコイル211、平滑コンデンサ213、FET214、電流検出器215の順で電流が流れる。このように電流が流れることにより、平滑コンデンサ213は充電される。
【0037】
電流検出器215は、FET214に流れる電流値を検出する。電流検出器215は、検出した電流値を電流制御回路216に出力する。
【0038】
電流制御回路216は、電流検出器215から取得した電流値が所定の電流値以上になると、FET214をオフにする。
【0039】
FET214がオフすると、チョークコイル211に蓄積された磁気エネルギーが解放され、破線矢印で示すように電流が流れる。すなわち、チョークコイル211、平滑コンデンサ213、ダイオード212の順で電流が流れる。このように電流が流れることにより、平滑コンデンサ213は充電される。
【0040】
その後、電流制御回路216は、電流検出器215から取得した電流値が所定の電流値より小さくなると、FET214をオンにする。
【0041】
このように、FET214のオン/オフを繰り返すことによって、突入電流防止回路210は、突入電流を抑制しながら平滑コンデンサ213を充電することができる。
【0042】
平滑コンデンサ213の充電が完了すると、FET214には電流は流れなくなる。この状態では、電流制御回路216は、FET214を常時オンに制御している。
【0043】
降圧コンバータ方式は、部品点数が少ないため、他の方式と比較してコストがかからない。また、降圧コンバータ方式は、損失が小さいという特徴がある。したがって、降圧コンバータ方式は、上述のその他の方式の突入電流防止回路と比較して、有利な構成の突入電流防止回路であるといえる。
【0044】
(昇圧型コンバータ回路)
続いて、従来の昇圧型コンバータ回路について説明する。
【0045】
電源装置に交流電圧が入力される際、平滑コンデンサのみで整流すると、入力電流が歪み高調波電流が発生する。高調波電流が発生すると効率が悪化する。また、高調波電流が発生すると機器の誤動作を引き起こすことがある。そのため、高調波は、IEC(International Electrotechnical Commission)で規定される値以下に抑制される必要がある。
【0046】
また、電源装置がコンバータに直流電圧を供給する際、コンバータの動作に適した直流電圧を供給することが望ましい。
【0047】
高調波の低減及びコンバータの動作に適した直流電圧の出力を実現するため、電源装置が、APFC(Active Power Factor Correction)機能を有する昇圧型コンバータ回路を備える構成とすることが一般的である。
【0048】
図2は、昇圧型コンバータ回路220を備える電源装置200bを示す図である。昇圧型コンバータ回路220は、APFC機能を有する昇圧型コンバータ回路である。
【0049】
電源装置200bは、交流電源1から供給される入力電圧を直流電圧に変換して、コンバータ2に出力する。コンバータ2は、例えば、DC-DCコンバータであってよい。電源装置200bは、コンバータ2の動作に適した直流電圧を出力することができる。
【0050】
電源装置200bは、フィルタ201と、整流器202と、昇圧型コンバータ回路220とを備える。
【0051】
フィルタ201は、交流電源1からの入力電圧に含まれる不要な周波数成分の電圧を除去する。フィルタ201は、例えば、ローパスフィルタ、バンドバスフィルタなどであってよい。
【0052】
整流器202は、電流を一方向だけに流す回路である。
【0053】
昇圧型コンバータ回路220は、チョークコイル221と、ダイオード222と、FET223と、平滑コンデンサ224と、電圧制御回路225とを備える。
【0054】
昇圧型コンバータ回路220の動作について説明する。
【0055】
FET223がオンのとき、昇圧型コンバータ回路220には、実線矢印で示すように電流が流れる。すなわち、チョークコイル221、FET223の順で電流が流れる。このとき、チョークコイル221に磁気エネルギーが蓄積される。
【0056】
FET223がオフになると、チョークコイル221において電圧の向きが逆転し、チョークコイル221に蓄積された磁気エネルギーが解放され、破線矢印で示すように電流が流れる。すなわち、チョークコイル221、ダイオード222、平滑コンデンサ224の順に電流が流れる。
【0057】
このようなFET223のオン/オフ動作を繰り返すことにより、昇圧型コンバータ回路220は、昇圧動作を実行する。
【0058】
電圧制御回路225は、平滑コンデンサ224の電圧値を検出し、検出した電圧値がコンバータ2に適した電圧に近づくように、FET223がオン/オフするデューティ比を制御する。
【0059】
このように、FET223がオン/オフするデューティ比を制御することによって、昇圧型コンバータ回路220は、所定の直流電圧を出力することができる。また、昇圧型コンバータ回路220は、高調波を低減することができる。
【0060】
(比較例)
図3は、比較例に係る電源装置200cの概略構成を示す図である。
【0061】
比較例に係る電源装置200cは、フィルタ201と、整流器202と、
図1を参照して説明した突入電流防止回路210と、
図2を参照して説明した昇圧型コンバータ回路220とを備える。
【0062】
このように、降圧コンバータ方式の突入電流防止回路210を備えることにより、電源装置200cは、交流電源1からの電圧投入時に、交流電源1から電源装置200cに突入電流が流れることを抑制することができる。また、突入電流防止回路210は、降圧コンバータ方式であるため、低コストという特徴及び損失が小さいという特徴がある。
【0063】
また、昇圧型コンバータ回路220を備えることにより、電源装置200cは、所定の直流電圧を出力することができる。また、電源装置200cは、高調波を低減することができる。
【0064】
(本開示の電源装置)
図4は、一実施形態に係る電源装置100の概略構成を示す図である。
図1を参照して、一実施形態に係る電源装置100の構成及び機能について説明する。
【0065】
電源装置100は、交流電源1から供給される入力電圧を所定の直流電圧に変換して、コンバータ2に出力する。
【0066】
コンバータ2は、例えば、DC-DCコンバータであってよい。コンバータ2がDC-DCコンバータである場合、コンバータ2は、例えば、絶縁型のDC-DCコンバータであってよい。
【0067】
電源装置100が出力する所定の直流電圧は、コンバータ2の動作に適した直流電圧である。このように、電源装置100がコンバータ2の動作に適した直流電圧を出力してコンバータ2に供給することにより、コンバータ2は、最適な条件で動作することができる。
【0068】
電源装置100は、フィルタ101と、整流器102と、第1整流器103と、チョークコイル104と、第2整流器105と、第2FET106と、平滑コンデンサ107と、第1FET108と、電流検出器109と、電流制御回路110と、電圧検出器111と、電圧制御回路112と、モード制御回路113とを備える。
【0069】
フィルタ101は、交流電源1からの入力電圧に含まれる不要な周波数成分の電圧を除去する。フィルタ101は、例えば、ローパスフィルタ、バンドバスフィルタなどであってよい。
【0070】
整流器102は、電流を一方向だけに流す回路である。整流器102の入力部は、フィルタ101に接続されている。整流器102の出力部の一方は、第1整流器103の一端とチョークコイル104の一端とに接続されている。整流器102の出力部の他方は、電流検出器109と接続されている。
【0071】
電源装置100は、
図1を参照して説明した降圧コンバータ方式の突入電流防止回路に相当する回路と、
図2を参照して説明した昇圧型コンバータ回路に相当する回路とを備えている。
【0072】
まず、
図5を参照して、
図4に示す電源装置100が降圧コンバータ方式の突入電流防止回路を備えていることを説明する。
図5は、
図4に示す電源装置100のうち、突入電流防止回路に関連する回路素子を抜き出して示した図である。
【0073】
図5を参照すると、電源装置100が備える、第1整流器103、チョークコイル104、平滑コンデンサ107、第1FET108、電流検出器109及び電流制御回路110は、突入電流防止回路120を構成する。
【0074】
図5に示した突入電流防止回路120を
図1に示した突入電流防止回路210と対比すると、
図5に示す突入電流防止回路120の第1整流器103、チョークコイル104、平滑コンデンサ107、第1FET108、電流検出器109及び電流制御回路110は、それぞれ、
図1に示した突入電流防止回路210のダイオード212、チョークコイル211、平滑コンデンサ213、FET214、電流検出器215及び電流制御回路216に対応する。
【0075】
次に、
図6を参照して、
図4に示す電源装置100が昇圧型コンバータ回路を備えていることを説明する。
図6は、
図4に示す電源装置100のうち、昇圧型コンバータ回路に関連する回路素子を抜き出して示した図である。
【0076】
図6を参照すると、電源装置100が備える、チョークコイル104、第2整流器105、第2FET106、平滑コンデンサ107及び電圧制御回路112は、昇圧型コンバータ回路130を構成する。
【0077】
図6に示した昇圧型コンバータ回路130を
図2に示した昇圧型コンバータ回路220と対比すると、
図6に示す昇圧型コンバータ回路130のチョークコイル104、第2整流器105、第2FET106、平滑コンデンサ107及び電圧制御回路112は、それぞれ、
図2に示した昇圧型コンバータ回路220のチョークコイル221、ダイオード222、FET223、平滑コンデンサ224及び電圧制御回路225に対応する。
【0078】
図5及び
図6を参照して説明したように、電源装置100は、降圧コンバータ方式の突入電流防止回路120と、昇圧型コンバータ回路130とを備える。ここで、
図5に示す突入電流防止回路120が備えるチョークコイル104と、
図6に示す昇圧型コンバータ回路130が備えるチョークコイル104とは、共通のチョークコイルである。また、
図5に示す突入電流防止回路120が備える平滑コンデンサ107と、
図6に示す昇圧型コンバータ回路130が備える平滑コンデンサ107とは、共通の平滑コンデンサである。したがって、一実施形態に係る電源装置100と、
図3に示した比較例に係る電源装置200cとを比較すると、一実施形態に係る電源装置100は、比較例に係る電源装置200cよりもチョークコイルが1つ少なく、平滑コンデンサが1つ少ない。すなわち、一実施形態に係る電源装置100は、比較例に係る電源装置200cよりも回路素子が少ない構成で、降圧コンバータ方式の突入電流防止回路120と、昇圧型コンバータ回路130とを備えることが実現できている。
【0079】
【0080】
第1整流器103は、電流を一方向だけに流す回路である。第1整流器103は、例えば、ダイオード、FETなどであってよい。第1整流器103は、
図4において、下側から上側に向かう方向に電流を流す。
【0081】
第1整流器103の一端は、整流器102の出力部と、チョークコイル104の一端とに接続されている。第1整流器103の他端は、第2FET106のソースと、平滑コンデンサ107の負極と、第1FET108のドレインとに接続されている。
【0082】
チョークコイル104は、任意のコイルであってよい。チョークコイル104の一端は、整流器102の出力部と、第1整流器103の一端とに接続されている。チョークコイル104の他端は、第2整流器105の一端と、第2FET106のドレインとに接続されている。
【0083】
第2整流器105は、電流を一方向だけに流す回路である。第2整流器105は、例えば、ダイオード、FETなどであってよい。第2整流器105は、
図4において、左側から右側に向かう方向に電流を流す。
【0084】
第2整流器105の一端は、チョークコイル104の他端と、第2FET106のドレインとに接続されている。第2整流器105の他端は、平滑コンデンサ107の正極に接続されている。
【0085】
第2FET106は、任意のFETであってよい。第2FET106のドレインは、チョークコイル104の他端と、第2整流器105の一端とに接続されている。第2FET106のソースは、第1整流器103の他端と、平滑コンデンサ107の負極と、第1FET108のドレインとに接続されている。第2FET106のゲートは、電圧制御回路112に接続されている。
【0086】
平滑コンデンサ107は、リップル成分を低減する機能を有する。平滑コンデンサ107は、任意のコンデンサであってよい。平滑コンデンサ107の正極は、第2整流器105の他端に接続されている。平滑コンデンサ107の負極は、第1整流器103の他端と、第2FET106のソースと、第1FET108のドレインとに接続されている。
【0087】
第1FET108は、任意のFETであってよい。第1FET108のドレインは、第1整流器103の他端と、第2FET106のソースと、平滑コンデンサ107の負極とに接続されている。第1FET108のソースは、電流検出器109に接続されている。第1FET108のゲートは、電流制御回路110に接続されている。
【0088】
第1FET108は、交流電源1から突入電流防止回路120に電流を流すか否かを切り替えるという機能を有する。第1FET108がオンのとき、交流電源1から突入電流防止回路120に電流が流れる。第1FET108がオフのとき、交流電源1から突入電流防止回路120に電流が流れない。
【0089】
電流検出器109は、第1FET108に流れる電流値を検出する。電流検出器109は、例えば、抵抗であってよい。電流検出器109は、検出した電流値を電流制御回路110に出力する。
【0090】
電流制御回路110は、電流検出器109から取得した電流値が所定の電流値以上になると、第1FET108をオフにする。また、電流制御回路110は、電流検出器109から取得した電流値が所定の電流値より小さくなると、第1FET108をオンにする。この際、第1FET108のオン/オフが頻繁に切り替わらないようにするため、第1FET108をオンさせる閾値と、第1FET108をオフさせる閾値とを異なる閾値としてよい。
【0091】
なお、電流制御回路110が第1FET108をオンにする制御は、上述の制御に限定されない。例えば、電流制御回路110は、第1FET108をオフにしてから所定の時間が経過すると第1FET108をオンにしてよい。所定の時間は、例えば数10μsなどであってよい。
【0092】
電圧検出器111は、第1FET108のドレイン-ソース間の電圧値を検出する。
【0093】
電圧制御回路112は、平滑コンデンサ107の電圧値を検出し、検出した電圧値が所定の直流電圧に近づくように、第2FET106がオン/オフするデューティ比を制御する。所定の直流電圧は、コンバータ2の動作に適した直流電圧である。すなわち、電圧制御回路112は、コンバータ2の動作に適した直流電圧をコンバータ2に出力するように、第2FET106のオン/オフをフィードバック制御する。
【0094】
電圧制御回路112は、平滑コンデンサ107の電圧値が所定の直流電圧より小さい場合、第2FET106がオンしている期間が長くなるように、第2FET106がオン/オフするデューティ比を制御する。電圧制御回路112は、平滑コンデンサ107の電圧値が所定の直流電圧より大きい場合、第2FET106がオンしている期間が短くなるように、第2FET106がオン/オフするデューティ比を制御する。
【0095】
モード制御回路113は、第1モードと第2モードとを切り替える。
【0096】
第1モードは、
図5に示した、電源装置100が備える突入電流防止回路120が、突入電流防止動作を実行し、
図6に示した、電源装置100が備える昇圧型コンバータ回路130が、昇圧型コンバータ動作を実行しないモードである。第1モードにおける電源装置100の動作については後述する。
【0097】
第2モードは、
図5に示した、電源装置100が備える突入電流防止回路120が突入電流防止動作を実行せず、
図6に示した、電源装置100が備える昇圧型コンバータ回路130が、昇圧型コンバータ動作を実行するモードである。第2モードにおける電源装置100の動作については後述する。
【0098】
モード制御回路113は、電源投入時は、電源装置100を第1モードで動作させる。第1モードで動作させているとき、モード制御回路113は、電流制御回路110を通常動作させる。すなわち、電流制御回路110は、電流検出器109から取得した電流値が所定の電流値以上になると、第1FET108をオフにする。また、電流制御回路110は、電流検出器109から取得した電流値が所定の電流値より小さくなると、第1FET108をオンにする。これにより、電源装置100が備える突入電流防止回路120は、突入電流防止動作を実行する。
【0099】
また、第1モードで動作させているとき、モード制御回路113は、電圧制御回路112を制御し、第2FET106を常時オフさせる。これにより、電源装置100が備える昇圧型コンバータ回路130は、昇圧型コンバータ動作を実行しない。
【0100】
モード制御回路113は、電圧検出器111が検出した、第1FET108のドレイン-ソース間の電圧値が所定の閾値以下になると、第1モードから第2モードに切り替える。
【0101】
モード制御回路113は、例えば、所定の期間の第1FET108のドレイン-ソース間の電圧値の平均値を算出し、算出した平均値が所定の閾値以下になったときに、第1モードから第2モードに切り替えてよい。第1モードにおいて、平滑コンデンサ107の充電が進んでいくと、第1FET108に流れる電流が小さくなっていくため第1FET108がオフになる頻度が減ってくる。したがって、第1FET108のドレイン-ソース間の電圧値の平均値は、徐々に小さくなる。モード制御回路113は、算出した平均値が所定の閾値以下になると、第1モードから第2モードに切り替える。
【0102】
第2モードで動作させているとき、モード制御回路113は、電流制御回路110を制御し、第1FET108を常時オンさせる。これにより、電源装置100が備える突入電流防止回路120は、突入電流防止動作を実行しない。
【0103】
また、第2モードで動作させているとき、モード制御回路113は、電圧制御回路112を通常動作させる。すなわち、電圧制御回路112は、平滑コンデンサ107の電圧値を検出し、検出した電圧値が所定の直流電圧に近づくように、第2FET106がオン/オフするデューティ比を制御する。これにより、電源装置100が備える昇圧型コンバータ回路130は、昇圧型コンバータ動作を実行する。
【0104】
図7を参照して、第1モードで動作しているときの電源装置100の動作について説明する。
【0105】
第1モードで動作しているとき、モード制御回路113は、電圧制御回路112を制御し、第2FET106を常時オフにしている。
【0106】
交流電源1から電圧が投入される際、第1FET108はオンに制御されている。交流電源1から電圧が投入されると、電源装置100には、実線矢印で示すように電流が流れる。すなわち、チョークコイル104、第2整流器105、平滑コンデンサ107、第1FET108、電流検出器109の順で電流が流れる。このように電流が流れることにより、平滑コンデンサ107は充電される。
【0107】
電流検出器109は、第1FET108に流れる電流値を検出する。電流検出器109は、検出した電流値を電流制御回路110に出力する。
【0108】
電流制御回路110は、電流検出器109から取得した電流値が所定の電流値以上になると、第1FET108をオフにする。
【0109】
第1FET108がオフすると、チョークコイル104に蓄積された磁気エネルギーが解放され、破線矢印で示すように電流が流れる。すなわち、チョークコイル104、第2整流器105、平滑コンデンサ07、第1整流器103の順で電流が流れる。このように電流が流れることにより、平滑コンデンサ107は充電される。
【0110】
その後、電流制御回路110は、電流検出器109から取得した電流値が所定の電流値より小さくなると、第1FET108をオンにする。
【0111】
このように、第1FET108のオン/オフを繰り返すことによって、電源装置100は、突入電流を抑制しながら平滑コンデンサ107を充電することができる。
【0112】
平滑コンデンサ107の充電電圧が上昇すると、平滑コンデンサ107に流れる電流が小さくなってくる。これに伴い、第1FET108のドレイン-ソース間の電圧が小さくなる。モード制御回路113は、電圧検出器111が検出した、第1FET108のドレイン-ソース間の電圧値が所定の閾値以下になると、第1モードから第2モードに切り替える。
【0113】
図8を参照して、第2モードで動作しているときの電源装置100の動作について説明する。
【0114】
第2モードで動作しているとき、モード制御回路113は、電流制御回路110を制御し、第1FET108を常時オンにしている。
【0115】
第2FET106がオンのとき、電源装置100には、実線矢印で示すように電流が流れる。すなわち、チョークコイル104、第2FET106、第1FET108、電流検出器109の順で電流が流れる。このとき、チョークコイル104に磁気エネルギーが蓄積される。
【0116】
第2FET106がオフになると、チョークコイル104において電圧の向きが逆転し、チョークコイル104に蓄積された磁気エネルギーが解放され、破線矢印で示すように電流が流れる。すなわち、チョークコイル104、第2整流器105、平滑コンデンサ107、第1FET108、電流検出器109の順に電流が流れる。このような動作により、電源装置100は、昇圧動作を実行する。
【0117】
電圧制御回路112は、平滑コンデンサ107の電圧値を検出し、検出した電圧値が所定の直流電圧に近づくように、第2FET106がオン/オフするデューティ比を制御する。
【0118】
電源装置100は、このように、電圧制御回路112によって調整された所定の直流電圧をコンバータ2に出力する。
【0119】
以上のような一実施形態に係る電源装置100によれば、突入電流防止回路及び昇圧型コンバータ回路を備えると共に回路素子にかかるコストを低減することが可能である。より具体的には、電源装置100は、突入電流防止回路120と、昇圧型コンバータ回路130とを備え、突入電流防止回路120が備えるチョークコイル104と、昇圧型コンバータ回路130が備えるチョークコイル104とは、共通のチョークコイルである。また、突入電流防止回路120が備える平滑コンデンサ107と、昇圧型コンバータ回路130が備える平滑コンデンサ107とは、共通の平滑コンデンサである。そのため、一実施形態に係る電源装置100は、
図3に示した比較例に係る電源装置200cの構成と比べて、チョークコイルと平滑コンデンサを1つずつ削減することができ、回路素子にかかるコストを低減することができる。
【0120】
(第1の変形例)
図9は、第1の変形例に係る電源装置100aの概略構成を示す図である。
図4に示した電源装置100は、交流電源1から電圧を供給される構成であったが、第1の変形例に係る電源装置100aは、直流電源3から電圧を供給される構成である。
【0121】
第1の変形例に係る電源装置100aは、整流器102を備えていないという点で、
図4に示した電源装置100と相違する。
【0122】
第1の変形例に係る電源装置100aのように、直流電源3から電圧を供給される構成であっても、
図4に示した電源装置100と同様の機能を実現することができる。
【0123】
(第2の変形例)
図10は、第2の変形例に係る電源装置100bの概略構成を示す図である。
【0124】
第2の変形例に係る電源装置100bは、フィルタ101の後段、すなわち、突入電流防止回路120の前段にダンピング回路114を備えるという点で、
図9に示した電源装置100aと相違する。
【0125】
例えば、
図9に示した電源装置100aにおいて、入力部に接続されるケーブルが長い場合、及びフィルタ101のインダクタンス成分が非常に大きい場合などのような特殊な場合、LC共振が発生して電源装置100aの動作が不安定になるおそれがある。
【0126】
このような場合においても、第2の変形例に係る電源装置100bは、ダンピング回路114によって入力部の交流的なインピーダンスを低減することができるため、LC共振を抑制することが可能となる。したがって、第2の変形例に係る電源装置100bは、LC共振が発生して電源装置100bの動作を不安定にすることを抑制することができる。
【0127】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。従って、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含される。
【0128】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 交流電源
2 コンバータ
3 直流電源
100、100a、100b 電源装置
101 フィルタ
102 整流器
103 第1整流器
104 チョークコイル
105 第2整流器
106 第2FET
107 平滑コンデンサ
108 第1FET
109 電流検出器
110 電流制御回路
111 電圧検出器
112 電圧制御回路
113 モード制御回路
114 ダンピング回路
120 突入電流防止回路
130 昇圧型コンバータ回路
200a、200b、200c 電源装置
201 フィルタ
202 整流器
210 突入電流防止回路
211 チョークコイル
212 ダイオード
213 平滑コンデンサ
214 FET
215 電流検出器
216 電流制御回路
220 昇圧型コンバータ回路
221 チョークコイル
222 ダイオード
223 FET
224 平滑コンデンサ
225 電圧制御回路