(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20241106BHJP
B60K 28/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B60W30/08
B60K28/06 A
(21)【出願番号】P 2022061999
(22)【出願日】2022-04-01
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 祐介
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 昌克
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-112983(JP,A)
【文献】特開2021-112982(JP,A)
【文献】特開2008-097446(JP,A)
【文献】特開2013-082298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60K 28/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に作用する加速度を測定するように構成された加速度センサと、
前記車両が衝突した場合に、衝突による被害を軽減するための被害軽減制御を実行するように構成された制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、
前記加速度に基いて取得され且つ前記車両の衝突の程度を表す衝突指標値が所定の衝突条件を満たした場合、前記車両のエアバッグを展開する制御を少なくとも含む展開制御を前記被害軽減制御として実行し、
前記衝突指標値が前記衝突条件を満たさず且つ前記衝突条件よりも軽い衝突の程度で成立する所定の軽衝突条件を満たした場合、前記車両の駆動力を前記車両の運転者の要求駆動力よりも小さくするか、又は、前記車両に制動力を付与する制駆動力制御を前記被害軽減制御として実行し、
前記運転者が正常な運転を行っていない特異状態であるとの特異条件が成立した時点から前記運転者が特異状態のままで経過した時間を表す経過時間が長くなるほど、前記軽衝突条件を成立し易くする、
ように構成された、
運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、
前記衝突指標値が所定の衝突閾値以上である場合、前記衝突条件を成立させ、
前記衝突指標値が前記衝突閾値よりも小さな値に設定されている所定の軽衝突閾値以上であり且つ前記衝突閾値未満であるとの第1条件が少なくとも成立した場合、前記軽衝突条件を成立させ、
前記経過時間が長くなるほど前記軽衝突閾値を小さくすることにより、前記軽衝突条件を成立し易くする、
ように構成された、
運転支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、前記第1条件が成立し、且つ、前記衝突指標値の積分値の大きさが所定の積分閾値以上であるとの第2条件が成立した場合、前記軽衝突条件を成立させるように構成された、
運転支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、前記経過時間が長くなるほど前記軽衝突閾値及び前記積分閾値を小さくすることにより、前記軽衝突条件を成立し易くするように構成された、
運転支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、前記運転者が前記車両を加速させるために操作する加速操作子を誤って操作している誤操作状態であるか、又は、前記運転者が居眠り状態である場合、前記特異条件を成立させるように構成された、
運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が衝突した場合に衝突による被害を軽減するための被害軽減制御を実行する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が衝突した場合に被害軽減制御を実行する運転支援装置が知られている。被害軽減制御としてエアバッグを展開する制御(以下、「展開制御」と称呼する。)が知られている。
【0003】
衝突の程度が「展開制御を実行する程度」よりも軽い軽衝突が発生した場合に制駆動力制御を被害軽減制御として実行することが望ましい。制駆動力制御は、衝突後に車両が移動し他の物体へ更に衝突してしまう二次被害を軽減するために、車両の駆動力を運転者の要求駆動力よりも小さくするか又は車両に制動力を付与する制御である。この制駆動力制御は、「二次被害軽減制御」と称呼される場合もある。
上記制駆動力制御を実行するか否かの判定に用いる閾値(換言すれば、軽衝突が発生したか否かの判定に用いる閾値、以下「軽衝突閾値」と称呼する。)は、車両がガードレール及び縁石等に衝突した場合にも制駆動力制御が実行されるようにするために比較的小さい値に設定されることが望ましい。
【0004】
しかし、軽衝突閾値が比較的小さい値に設定されると、車両が悪路を走行している場合等に軽衝突が発生していないにもかかわらず制駆動力制御が誤って実行される可能性がある。このため、軽衝突閾値は比較的高い値に設定されている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の運転支援装置(以下、「従来装置」と称呼する。)は、衝突の程度を表す衝突指標値が軽衝突閾値以上となった場合において(即ち、軽衝突が発生した場合)、運転者が居眠り状態であれば制駆動力制御を実行し、運転者が居眠り状態でなければ制駆動力制御を実行しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
従来装置において、運転者が居眠り状態であるとの条件は、制駆動力制御を実行するための必要条件である。このため、もし制駆動力制御が誤って実行されたとしても、制駆動力制御が居眠り中の運転者の注意を喚起するので運転者はこの制駆動力制御を煩わしいと感じる可能性は低い。このため、上記軽衝突閾値は比較的低い値に設定されることも可能である。
【0008】
しかし、従来装置は、運転者が居眠り状態でない場合にも居眠り状態であると誤って判定する可能性がある。このような誤判定が行われた上で制駆動力制御が誤って実行されると、運転者は制駆動力制御を煩わしいと感じる可能性が高い。
【0009】
本発明は前述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、車両がガードレール及び縁石等に衝突した場合に制駆動力制御が実行される可能性を高めつつ、運転者が制駆動力制御を煩わしいと感じる可能性を低減できる運転支援装置を提供することにある。
【0010】
本発明の運転支援装置(以下、「本発明装置」と称呼する。)は、
車両(VA)の車体に作用する加速度(G)を測定するように構成された加速度センサ(24)と、
前記車両が衝突した場合に、衝突による被害を軽減するための被害軽減制御を実行するように構成された制御ユニット(20、30、40)と、
を備え、
前記制御ユニットは、
前記加速度に基いて取得され且つ前記車両の衝突の程度を表す衝突指標値が所定の衝突条件を満たした場合(ステップ540「Yes」)、前記車両のエアバッグ(62)を展開する制御を少なくとも含む展開制御を前記被害軽減制御として実行し(ステップ565)、
前記衝突指標値が前記衝突条件を満たさず且つ前記衝突条件よりも軽い衝突の程度で成立する所定の軽衝突条件を満たした場合(ステップ535「Yes」、ステップ545「Yes」)、前記車両の駆動力を前記車両の運転者の要求駆動力よりも小さくするか、又は、前記車両に制動力を付与する制駆動力制御を前記被害軽減制御として実行し(ステップ550、ステップ700乃至ステップ795)、
前記運転者が正常な運転を行っていない特異状態であるとの特異条件が成立した時点から前記運転者が特異状態のままで経過した時間を表す経過時間が長くなるほど、前記軽衝突条件を成立し易くする(ステップ620乃至ステップ640)、
ように構成された、
運転支援装置。
【0011】
本発明装置によれば、特異条件が成立した時点から運転者が特異状態のままで経過した経過時間が長いほど、軽衝突条件が成立し易くなるため、程度の軽い衝突が発生した場合に制駆動力が実行され易くなる。これにより、運転者が特異状態である可能性が高くなるほど、ガードレール及び縁石等に衝突した場合に制駆動力制御が実行される可能性を高めることができる。もし、制駆動力制御が誤って実行されたとしても、この制駆動力制御は、特異状態である可能性が高い運転者に注意を喚起させることになるため、運転者はこの制駆動力を煩わしいと感じる可能性は低くなる。
【0012】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、
前記衝突指標値が所定の衝突閾値(GAth)以上である場合(ステップ540「Yes」)、前記衝突条件を成立させ、
前記衝突指標値が前記衝突閾値よりも小さな値に設定されている所定の軽衝突閾値(GBth)以上であり且つ前記衝突閾値未満であるとの第1条件が少なくとも成立した場合(ステップ535「Yes」)、前記軽衝突条件を成立させ、
前記経過時間が長くなるほど前記軽衝突閾値を小さくすることにより、前記軽衝突条件を成立し易くする(ステップ620、ステップ625、ステップ635)、
ように構成されている。
【0013】
これにより、経過時間が長くなるほど軽衝突閾値を小さくするため、経過時間が長くなるほど軽衝突条件を確実に成立し易くすることができる。
【0014】
上記態様において、
前記制御ユニットは、前記第1条件が成立し(ステップ535「Yes」)、且つ、前記衝突指標値の積分値の大きさが所定の積分閾値以上であるとの第2条件が成立した場合(ステップ545「Yes」)、前記軽衝突条件を成立させるように構成されている。
【0015】
軽衝突が発生した場合の衝突指標値の積分値の大きさは、車両が悪路を走行している場合の衝突指標値の積分値の大きさより大きくなる傾向がある。このため、上記態様によれば、車両が悪路を走行している場合に軽衝突条件が成立したと誤って判定する可能性を低減することができる。
【0016】
上記態様において、
前記制御ユニットは、前記経過時間が長くなるほど前記軽衝突閾値及び前記積分閾値を小さくすることにより(ステップ620乃至ステップ640)、前記軽衝突条件を成立し易くするように構成されている。
【0017】
これにより、経過時間が長くなるほど軽衝突閾値及び積分閾値を小さくするため、経過時間が長くなるほど軽衝突条件を確実に成立し易くすることができる。
【0018】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、前記運転者が前記車両を加速させるために操作する加速操作子を誤って操作している誤操作状態であるか(ステップ410「Yes」)、又は、前記運転者が居眠り状態である場合(ステップ310「Yes」)、前記特異条件を成立させるように構成されている。
【0019】
運転者が誤操作状態又は居眠り状態であるときには、運転者は正常な運転を行っていない可能性が高い。このような場合に特異条件を成立させて特異条件の成立時点からの経過時間が長くなるほど軽衝突条件を成立させ易くするので、より軽い衝突で制駆動力制御を実行でき、且つ、制駆動力制御が誤って実行されたとしても運転者が煩わしいと感じる可能性を低減できる。
【0020】
なお、上記説明においては、発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る運転支援装置の概略システム構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る運転支援装置の作動の概要の説明図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する居眠り判定ルーチンを示したフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する誤操作判定ルーチンを示したフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する衝突判定ルーチンを示したフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する閾値設定サブルーチンを示したフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する第1制動制御ルーチンを示したフローチャートである。
【
図8】
図7は、
図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する第2制動制御ルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る運転支援装置(以下、「本支援装置」と称呼する。)10は車両VAに搭載される。
図1に示したように、本支援装置10は、運転支援ECU(以下、「DSECU」と称呼する。)20、駆動ECU30、ブレーキECU40及び報知ECU50を備える。これらのECUは、図示しないCAN(Controller Area Network)を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。
【0023】
ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称であり、CPU、ROM、RAM及びインターフェース(I/F)等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。ECUを「制御ユニット」、「コントローラ」又は「コンピュータ」と称呼する場合もある。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。上記ECU20乃至50の総て又は幾つかは、一つのECUに統合されてもよい。
【0024】
DSECU20は、複数の車輪速センサ22、加速度センサ24及び運転席カメラ26とデータ交換可能に接続されている。
【0025】
車輪速センサ22は、車両VAの車輪毎に設けられており、対応する車輪が所定角度回転する毎に一つのパルス信号を発生させる。DSECU20は、各車輪速センサ22が発生されたパルス信号の単位時間におけるパルス数を計測し、その計測したパルス数に基いて各車輪の回転速度(車輪速度)を取得する。DSECU20は、各車輪の回転速度に基いて車両VAの速度を示す車速Vsを取得する。一例として、四つの車輪の回転速度の平均値を車速Vsとして取得する。
【0026】
加速度センサ24は、車両VAの車体の加速度G(車両VAの前後方向の加速度及び左右方向の加速度)を測定する。加速度センサ24は、加速度Gを表す検出信号を発生する。DSECU20は、加速度センサ24が発生した検出信号に基いて加速度Gを特定する。
【0027】
運転席カメラ26は、車両VAの運転者が車両VAの運転席に着座したときの運転者の顔の位置を含む領域の風景を撮影することにより運転席画像を取得する。運転席カメラ26は、運転席画像をDSECU20に送信する。
【0028】
DSECU20は、アクセルペダル操作量センサ32及び駆動源アクチュエータ34とデータ交換可能に接続されている。
【0029】
アクセルペダル操作量センサ32は、車両VAのアクセルペダル32aの操作量(運転者のアクセルペダル32aの踏込量)を測定し、この操作量を表す検出信号を発生する。以下では、アクセルペダル32aの操作量を「アクセル操作量AP」と称呼する。アクセルペダル32aは、運転者が車両VAを加速させるために操作する操作子であり、「加速操作子」と称呼する場合もある。
【0030】
駆動源アクチュエータ34は、駆動源(電動機及び内燃機関等)34aと接続されている。駆動ECU30は、駆動源アクチュエータ34を制御することにより駆動源34aの運転状態を変更する。これにより、駆動ECU30は、車両VAに付与される駆動力(駆動源34aが発生する駆動力)を調整できる。駆動ECU30は、アクセル操作量APが大きいほど、車両VAに付与される駆動力が大きくなるように、駆動源アクチュエータ34を制御する。
【0031】
ブレーキECU40は、ブレーキペダル操作量センサ42及びブレーキアクチュエータ44とデータ交換可能に接続されている。
【0032】
ブレーキペダル操作量センサ42は、車両VAのブレーキペダル42aの操作量(ブレーキペダル42aの踏込量)を測定し、この操作量を表す検出信号を発生する。以下では、ブレーキペダル42aの操作量を「ブレーキ操作量BP」と称呼する。
【0033】
ブレーキアクチュエータ44は、周知の油圧式の制動装置44aと接続されている。ブレーキECU40はブレーキアクチュエータ44を制御することにより、制動装置44aが発生する摩擦制動力を変更する。これにより、ブレーキECU40は、車両VAに付与される制動力を調整できる。ブレーキECU40は、ブレーキ操作量BPが大きいほど車両VAに付与される制動力が大きくなるように、ブレーキアクチュエータ44を制御する。
【0034】
報知ECU50は、表示器52、ハザードランプ54及びスピーカ56とデータ交換可能に接続されている。
表示器52は、例えば、マルチインフォメーションディスプレイであり、運転者が運転席に着座したときに運転者と対面する位置に配設されている。表示器52は、図示しない誤操作表示灯及び居眠り表示灯を有している。誤操作表示灯は、運転者がアクセルペダル32aを誤って操作していると判定された場合に点灯し、居眠り表示灯は、運転者が居眠り状態であると判定された場合に点灯する。
ハザードランプ54は、運転者が居眠り状態であると判定された場合に点灯する。
スピーカ56は、運転者が居眠り状態であると判定された場合に警報音を発音する。
【0035】
更に、DSECU20は、インフレータ60とデータ交換可能に接続されている。
インフレータ60は、DSECU20から点火信号を受信した場合、ガスを発生させてエアバッグ62を展開させる(膨らませる)。適切な数のエアバッグ62が車両VAの適切な位置に配設される。
【0036】
(作動の概要)
本支援装置10は、加速度Gの大きさが所定の衝突閾値GAth以上であるとの衝突条件が成立した場合、展開制御を実行する。展開制御は、エアバッグ62を展開する制御と、車両VAに制動力を付与する制動制御と、を含む。なお、上記加速度Gは、車両VAの衝突の程度を表す値であり、「衝突指標値」と称呼される場合がある。衝突指標値は、加速度Gに限定されず、加速度Gに基いて取得される値であればよい。例えば、衝突指標値は車両VAの質量と加速度Gとを乗算した値であってもよい。
【0037】
本支援装置10は、「以下の第1条件及び第2条件が成立したとの軽衝突条件」が成立した場合、「上記衝突条件を成立させる衝突よりも程度が軽い軽衝突」が発生したと判定する。この場合、本支援装置10は、車両VAに制動力を付与する制動制御を実行する。軽衝突条件が成立した場合に実行される制動制御を「第1制動制御」又は「制駆動力制御」と称呼し、衝突条件が成立した場合に実行される展開制御の制動制御を「第2制動制御」と称呼する。
「軽衝突条件が成立した場合に実行される制動制御」及び「衝突条件が成立した場合に実行される展開制御」は、衝突時(又は衝突後)の被害を軽減するための制御であり、被害軽減制御と称呼する場合もある。
【0038】
第1条件:加速度Gの大きさが所定の軽衝突閾値GBth以上であり且つ衝突閾値GAth未満であること。
第2条件:加速度Gの積分値である加速度積分値Vの大きさが積分閾値Vth以上であること。
なお、軽衝突閾値GBthは、衝突閾値GAthよりも小さな値に設定されている。
【0039】
本支援装置10は、運転者が正常に運転できない特異状態であるとの特異条件が成立したか否かを判定している。詳細には、本支援装置10は、以下の条件C1及びC2の何れかが成立した場合、特異条件が成立したと判定する。
条件C1:運転者が居眠り状態であることを検出した時点(
図2に示した時点t1)から居眠り状態のままで所定の判定時間Tdが経過したこと。
条件C2:運転者がアクセルペダル32aを誤って操作したことを検出した時点からアクセルペダル32aを誤って操作したままで判定時間Tdが経過したこと。
【0040】
本支援装置10は、上記特異条件が成立した時点から運転者が特異状態のままで経過した時間(以下、「経過時間」と称呼する。)が長くなるほど、軽衝突条件を成立し易くする。一例として、本支援装置10は、経過時間が長くなるほど、軽衝突閾値GBth及び積分閾値Vthを小さくする。
【0041】
上記経過時間が長いほど運転者が特異状態である可能性が高くなる。更に、軽衝突条件が成立し易くなるほど第1制動制御が誤って実行される可能性が高くなる。
運転者が特異状態である場合に第1制動制御が誤って実行されたとしても、以下の理由から、運転者は煩わしいと感じる可能性は低くなる。
【0042】
運転者がアクセルペダル32aを誤って操作している場合には、運転者の意図に反して車両VAが加速しているため、第1制動制御が実行されても運転者は煩わしいと感じる可能性は低い。
運転者が居眠り状態である場合には、第1制動制御による車両VAの挙動変化により運転者が目覚める可能性があり、運転者は煩わしいと感じる可能性は低い。
【0043】
本支援装置10によれば、運転者が特異状態である可能性が高くなるほど、軽衝突条件を成立し易くするので、展開制御が実行されないような軽衝突(車両VAのガードレール及び縁石等への衝突)が発生した場合であっても第1制動制御が実行される可能性が高まる。これにより、軽衝突の発生後の二次被害を軽減できる可能性を高めることができる。更に、軽衝突条件が成立し易くなると第1制動制御が誤って実行される可能性が高まる。しかし、もし第1制動制御が誤って実行されたとしても、運転者が特定状態である可能性が高いため、運転者はこの第1制動制御を煩わしいと感じる可能性は低くなる。
【0044】
(作動例)
図2を参照しながら、本支援装置10の作動例を説明する。
<時点t1>
時点t1にて、本支援装置10は、運転席画像に基いて運転者が居眠り状態であることを検出し、運転者に対して警告を行う。詳細には、本支援装置10は、表示器52の居眠り表示灯を点灯させ、ハザードランプ54を点灯させ、スピーカ56に警報音を発音させる。
【0045】
<時点t2>
時点t2は、時点t1から「運転者が居眠り状態のままで」判定時間Tdが経過した時点である。時点t2にて、本支援装置10は、上記条件C1が成立したと判定し、特異条件が成立したと判定する。
【0046】
ところで、特異条件が成立していない通常時において、本支援装置10は、軽衝突閾値Gbthを「GBth1」に設定し、積分閾値Vthを「Vth1」に設定している。時点t2にて、本支援装置10は、軽衝突閾値GBthを「GBth2」に設定し、積分閾値Vthを「Vth2」に設定する。「GBth2」は「GBth1」よりも小さな値であり、「Vth2」は「Vth1」よりも小さな値である。
【0047】
<時点t3>
本支援装置10は、特異条件が成立した時点t2から一定時間Tcが経過した時点t3にて、軽衝突閾値Gbthを「GBth3」に設定し、積分閾値Vthを「Vth3」に設定する。「GBth3」は「GBth2」よりも小さな値であり、「Vth3」は「Vth2」よりも小さな値である。
【0048】
<時点t4>
時点t4にて、車両VAがガードレールGRに衝突して、加速度Gが軽衝突閾値GBth3以上となり且つ加速度積分値Vが積分閾値Vth3以上となる。時点t4にて、本支援装置10は、軽衝突条件が成立したと判定し、第1制動制御を実行する。
【0049】
例えば、時点t4における加速度GはGBth3以上でありGBth2未満であり、時点t4における積分値はVth3以上でありVth2未満であると仮定する。本支援装置10は、経過時間が長くなるほど軽衝突条件を成立し易くすることにより、時点t4での車両VAのガードレールGRへの衝突を軽衝突と判定することができ、第1制動制御を実行できる。
【0050】
(具体的作動)
<居眠り判定ルーチン>
DSECU20のCPU(以下、特に断りがない限り、DSECU20のCPUを指す。)は、
図3にフローチャートにより示した居眠り判定ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0051】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図3のステップ300から処理を開始してステップ305に進み、居眠りフラグXC1の値が「0」であるか否かを判定する。
【0052】
居眠りフラグXC1の値は、上記条件C1が成立した場合に「1」に設定され(ステップ315を参照。)、運転者が居眠り状態から通常状態へ復帰したと判定された場合に「0」に設定される(ステップ330を参照。)。更に、図示しないイグニッションスイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときにCPUが実行するイニシャルルーチンにおいて、居眠りフラグXC1の値は「0」に設定される。
【0053】
居眠りフラグXC1の値が「0」である場合、CPUは、ステップ305にて「Yes」と判定し、ステップ310に進む。ステップ310にて、CPUは、運転席画像に基いて、居眠り状態が判定時間Td以上継続したか否か(即ち、上記条件C1が成立したか否か)を判定する。
【0054】
詳細には、CPUは、運転者が眼を閉じている状態が所定時間以上継続した場合に居眠り状態を検出する。そして、CPUは、その検出時点から居眠り状態のままで判定時間Tdが経過したか否かを判定する。なお、CPUは、居眠り状態を検出した場合、上記居眠り表示灯の点灯、ハザードランプ54の点灯及び警報音の発音を開始する。
【0055】
居眠り状態が判定時間Td以上継続していない場合、CPUは、ステップ310にて「No」と判定し、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0056】
居眠り状態が判定時間Td以上継続した場合、CPUは、ステップ310にて「Yes」と判定し、ステップ315に進む。ステップ315にて、CPUは、居眠りフラグXC1の値を「1」に設定するとともに、居眠りタイマTMC1の値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0057】
居眠りタイマTMC1は、上記条件C1が成立した時点からの経過時間をカウントするタイマである。
【0058】
一方、CPUがステップ305に進んだときに居眠りフラグXC1の値が「1」である場合、CPUは、ステップ305にて「No」と判定し、ステップ320に進む。ステップ320にて、CPUは、運転者が眼を開けている状態(以下、「開眼状態」と称呼する。)が所定時間以上継続したか否かを判定する。
【0059】
開眼状態が所定時間以上継続していない場合、CPUは、ステップ320にて「No」と判定し、ステップ325に進む。ステップ325にて、CPUは、居眠りタイマTMC1の値に「1」を加算し、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0060】
開眼状態が所定時間以上継続した場合、CPUは、ステップ320にて「Yes」と判定し、ステップ330に進む。ステップ330にて、CPUは、居眠りフラグXC1の値を「0」に設定するとともに、居眠りタイマTMC1の値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0061】
<誤操作判定ルーチン>
CPUは、
図4にフローチャートにより示した誤操作判定ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0062】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図4のステップ400から処理を開始してステップ405に進み、誤操作フラグXC2の値が「0」であるか否かを判定する。
【0063】
誤操作フラグXC2の値は、上記条件C2が成立した場合に「1」に設定され(ステップ415を参照。)、アクセルペダル32aの誤操作が行われなくなったと判定された場合に「0」に設定される(ステップ430を参照。)。更に、上記イニシャルルーチンにおいて、誤操作フラグXC2の値は「0」に設定される。
【0064】
誤操作フラグXC2の値が「0」である場合、CPUは、ステップ405にて「Yes」と判定し、ステップ410に進む。ステップ410にて、CPUは、アクセル操作量APに基いて、アクセルペダル32aの誤操作が判定時間Td以上継続したか否かを判定する。
【0065】
詳細には、CPUは、アクセル操作速度APVが所定の速度閾値APVth以上となった時点から所定時間以内にアクセル操作量APが所定の第1操作量閾値APth1以上となった場合、アクセルペダル32aの誤操作が行われたことを検出する。そして、CPUは、アクセル操作量APが「第1操作量閾値APth1よりも小さな値に設定された所定の第2操作量閾値APth2」以下とならずに、アクセルペダル32aの誤操作の検出時点から判定時間Tdが経過したか否かを判定する。
【0066】
アクセルペダル32aの誤操作が判定時間Td以上継続していない場合、CPUは、ステップ410にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0067】
一方、アクセルペダル32aの誤操作が判定時間Td以上継続した場合、CPUは、ステップ410にて「Yes」と判定し、ステップ415に進む。ステップ415にて、CPUは、誤操作フラグXC2の値を「1」に設定するとともに、誤操作タイマTMC2の値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0068】
誤操作タイマTMC2は、上記条件C2が成立した時点からの経過時間をカウントするタイマである。
【0069】
CPUがステップ405に進んだときに誤操作フラグXC2の値が「1」である場合、CPUは、ステップ405にて「No」と判定し、ステップ420に進む。ステップ420にて、CPUは、アクセル操作量APが第2操作量閾値APth2以下であるか否かを判定する。
【0070】
アクセル操作量APが第2操作量閾値APth2よりも大きい場合、CPUは、未だアクセルペダル32aの誤操作が未だ継続していると判定する。この場合、CPUは、ステップ420にて「No」と判定し、ステップ425に進む。ステップ425にて、CPUは、誤操作タイマTMC2の値に「1」を加算し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0071】
アクセル操作量APが第2操作量閾値APth2以下である場合、CPUは、アクセルペダル32aの誤操作が終了したと判定する。この場合、CPUは、ステップ420にて「Yes」と判定し、ステップ430に進む。ステップ430にて、CPUは、誤操作フラグXC2の値を「0」に設定するとともに、誤操作タイマTMC2の値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0072】
<衝突判定ルーチン>
CPUは、
図5にフローチャートにより示した衝突判定ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0073】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図5のステップ500から処理を開始してステップ505に進み、衝突フラグXcの値が「0」であるか否かを判定する。
【0074】
衝突フラグXcの値は、衝突が発生した場合に「1」に設定され(ステップ560を参照。)、第2制動制御の後述する終了条件が成立した場合に「0」に設定される(
図8に示したステップ825を参照。)。なお、上記イニシャルルーチンにおいて、衝突フラグXcの値は「0」に設定される。
【0075】
衝突フラグXcの値が「0」である場合、CPUは、ステップ505にて「Yes」と判定し、ステップ510乃至ステップ520を順に実行する。
【0076】
ステップ510:CPUは、加速度センサ24からの検出信号に基いて加速度Gを特定する。
ステップ515:CPUは、加速度Gを積分することにより加速度積分値Vを取得する。
この積分処理は、特開2021-112983号公報の段落0044乃至段落0047に記載されているので、以下に簡単に説明する。
【0077】
CPUは、加速度Gの以下の開始タイミングから終了タイミングまでの積分値を加速度積分値Vとして取得する。
【0078】
開始タイミングは、加速度Gの区間積分値が所定の第1積分閾値以上となったタイミングである。区間積分値は、所定の区間幅における加速度Gの積分値である。
【0079】
終了タイミングは、区間積分値が所定の第2積分閾値以下となってから所定の第1設定時間が経過したタイミング、及び、開始タイミングから所定の第2設定時間が経過したタイミングのうち、早く到来する方のタイミングである。第2設定時間は第1設定時間よりも長くなるように設定されている。
【0080】
ステップ520:CPUは、居眠りフラグXC1及び誤操作フラグXC2の値がともに「0」であるか否かを判定する。
【0081】
居眠りフラグXC1及び誤操作フラグXC2の値がともに「0」である場合、CPUは、ステップ520にて「Yes」と判定し、ステップ525乃至ステップ535を順に実行する。
【0082】
ステップ525:CPUは、軽衝突閾値GBthを「GBth1」に設定する。
ステップ530:CPUは、積分閾値Vthを「Vth1」に設定する。
ステップ535:CPUは、加速度Gの大きさが軽衝突閾値GBth以上であって且つ衝突閾値GAth未満であるか否かを判定する。
【0083】
加速度Gの大きさが軽衝突閾値GBth未満であるか衝突閾値GAth以上である場合、CPUは、ステップ535にて「No」と判定し、ステップ540に進む。ステップ540にて、CPUは、加速度Gの大きさが衝突閾値GAth以上であるか否かを判定する。
【0084】
加速度Gの大きさが衝突閾値GAth未満である場合、CPUは、ステップ540にて「No」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0085】
CPUがステップ535に進んだときに加速度Gの大きさが軽衝突閾値GBth以上であって且つ衝突閾値GAth未満である場合、CPUは、ステップ535にて「Yes」と判定し、ステップ545に進む。
【0086】
ステップ545にて、CPUは、加速度積分値Vの大きさが積分閾値Vth以上であるか否かを判定する。
【0087】
加速度積分値Vの大きさが積分閾値Vth未満である場合、CPUは、軽衝突が発生していないと判定する。この場合、CPUは、ステップ545にて「No」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0088】
加速度積分値Vの大きさが積分閾値Vth以上である場合、CPUは、軽衝突が発生していると判定する。この場合、CPUは、ステップ545にて「Yes」と判定し、ステップ550に進む。ステップ550にて、CPUは、軽衝突フラグXLcの値を「1」に設定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0089】
CPUがステップ540に進んだときに加速度Gの大きさが衝突閾値GAth以上である場合、CPUは、衝突が発生したと判定する。この場合、CPUは、ステップ540にて「Yes」と判定し、ステップ560及びステップ565を順に実行する。
【0090】
ステップ560:CPUは、衝突フラグXcの値を「1」に設定する。
ステップ565:CPUは、点火信号をインフレータ60に送信する。
上記したように、インフレータ60は、点火信号を受信すると、エアバッグ62を展開させる。
その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0091】
CPUがステップ520に進んだときに居眠りフラグXC1及び誤操作フラグXC2の少なくとも一方の値が「1」である場合、CPUは、ステップ520にて「No」と判定し、ステップ570に進んで閾値設定サブルーチンを実行する。その後、CPUは、ステップ535以降の処理に進む。
【0092】
<閾値設定サブルーチン>
CPUは、
図5に示したステップ570に進むと、
図6に示したステップ600から処理を開始し、ステップ605に進む。ステップ605にて、CPUは、居眠りフラグXC1及び誤操作フラグXC2の値がともに「1」であるか否かを判定する。
【0093】
居眠りフラグXC1及び誤操作フラグXC2の少なくとも一方の値が「0」である場合、CPUは、ステップ605にて「No」と判定し、ステップ610に進む。ステップ610にて、CPUは、居眠りフラグXC1の値が「1」である場合、ステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ615及びステップ620を順に実行する。
【0094】
ステップ615:CPUは、経過時間タイマTMの値を居眠りタイマTMC1の値に設定する。
ステップ620:CPUは、経過時間タイマTMの値が所定の一定時間閾値Tcth以下であるか否かを判定する。一定時間閾値Tcthは、経過時間が一定時間Tcに達したときに経過時間タイマTMの値が一定時間閾値Tcthに達するように設定されている。
【0095】
経過時間タイマTMの値が一定時間閾値Tcth以下である場合、CPUは、ステップ620にて「Yes」と判定し、ステップ625及びステップ630を順に実行する。
ステップ625:CPUは、軽衝突閾値GBthを「GBth2」に設定する。
ステップ630:CPUは、積分閾値Vthを「Vth2」に設定する。
その後、CPUは、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了し、
図5に示したステップ535に進む。
【0096】
CPUがステップ620に進んだときに経過時間タイマTMの値が一定時間閾値Tcthよりも大きい場合、CPUは、ステップ620にて「No」と判定し、ステップ635及びステップ640を順に実行する。
【0097】
ステップ635:CPUは、軽衝突閾値GBthを「GBth3」に設定する。
ステップ640:CPUは、積分閾値Vthを「Vth3」に設定する。
その後、CPUは、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了し、
図5に示したステップ535に進む。
【0098】
CPUがステップ610に進んだときに居眠りフラグXC1の値が「0」である場合、
図5に示したステップ520にて「No」と判定されているため、誤操作フラグXC2の値は「1」である。この場合、CPUは、ステップ610にて「No」と判定し、ステップ645に進む。ステップ645にて、CPUは、経過時間タイマTMの値を誤操作タイマTMC2の値に設定する。その後、CPUは、ステップ620以降の処理に進む。
【0099】
CPUがステップ605に進んだときに居眠りフラグXC1及び誤操作フラグXC2の値がともに「1」である場合、CPUは、ステップ605にて「Yes」と判定し、ステップ650に進む。
【0100】
ステップ650にて、CPUは、居眠りタイマTMC1の値が誤操作タイマTMC2の値以上であるか否かを判定する。
【0101】
居眠りタイマTMC1の値が誤操作タイマTMC2の値以上である場合、CPUは、ステップ650にて「Yes」と判定し、ステップ615にて経過時間タイマTMの値を居眠りタイマTMC1の値に設定する。その後、CPUは、ステップ620以降の処理に進む。
【0102】
居眠りタイマTMC1の値が誤操作タイマTMC2の値未満である場合、CPUは、ステップ650にて「No」と判定し、ステップ645にて経過時間タイマTMの値を誤操作タイマTMC2の値に設定する。その後、CPUは、ステップ620以降の処理に進む。
【0103】
<第1制動制御ルーチン>
CPUは、
図7にフローチャートにより示した第1制動制御ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0104】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図7のステップ700から処理を開始してステップ705に進み、軽衝突フラグXLcの値が「1」であるか否かを判定する。
【0105】
軽衝突フラグXLcの値が「0」である場合、CPUは、ステップ705にて「No」と判定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0106】
軽衝突フラグXLcの値が「1」である場合、CPUは、ステップ705にて「Yes」と判定し、ステップ710に進む。
【0107】
ステップ710にて、CPUは、第1制動制御の終了条件が成立したか否かを判定する。
より詳細には、CPUは、以下の条件D1乃至条件D3の何れか一つが成立した場合、上記終了条件が成立したと判定する。
条件D1:運転者が居眠り状態から復帰して居眠りフラグXC1の値が「1」から「0」に変化したこと。
条件D2:アクセルペダル32aの誤操作が終了して誤操作フラグXC2の値が「1」から「0」に変化したこと。
条件D3:車速Vsが「0km/h」となったこと。
【0108】
上記条件D1乃至条件D3の何れも成立しない場合、CPUは、ステップ710にて「No」と判定し、ステップ715及びステップ720を順に実行する。
ステップ715:CPUは、目標加速度Gtgtを所定の第1減速度Gd1(<0)に設定する。
ステップ720:目標加速度Gtgtを含む減速指令を駆動ECU30及びブレーキECU40に送信する。
駆動ECU30及びブレーキECU40は、それぞれ、減速指令を受信した場合、車両の加速度Gの前後方向成分Gxが上記第1減速度Gd1と一致するように、駆動源アクチュエータ34及びブレーキアクチュエータ44を制御する。
その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0109】
上記条件D1乃至条件D3の何れか一つが成立した場合、CPUは、ステップ710にて「Yes」と判定し、ステップ725に進む。ステップ725にて、CPUは、軽衝突フラグXLcの値を「0」に設定する。これにより、上記条件D1乃至条件D3の何れか一つが成立した場合、CPUは減速指令を送信しなくなり、第1制動制御が終了する。
その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0110】
<第2制動制御ルーチン>
CPUは、
図8にフローチャートにより示した第2制動制御ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0111】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図8のステップ800から処理を開始してステップ805に進み、衝突フラグXcの値が「1」であるか否かを判定する。
【0112】
衝突フラグXcの値が「0」である場合、CPUは、ステップ805にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0113】
衝突フラグXcの値が「1」である場合、CPUは、ステップ805にて「Yes」と判定し、ステップ810に進む。ステップ810にて、CPUは、第2制動制御の終了条件が成立したか否かを判定する。
より詳細には、CPUは、上記条件D3が成立した場合、上記終了条件が成立したと判定する。
【0114】
上記条件D3が成立していない場合、CPUは、ステップ810にて「No」と判定し、ステップ815及びステップ820を順に実行する。
ステップ815:CPUは、目標加速度Gtgtを所定の第2減速度Gd2(<0)に設定する。なお、第2減速度Gd2は第1減速度Gd1よりも小さな負の値に設定されている。
ステップ820:目標加速度Gtgtを含む減速指令を駆動ECU30及びブレーキECU40に送信する。
その後、CPUは、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0115】
上記条件D3が成立した場合、CPUは、ステップ810にて「Yes」と判定し、ステップ825に進む。ステップ825にて、CPUは、衝突フラグXcの値を「0」に設定する。これにより、上記条件D3が成立した場合、CPUは減速指令を送信しなくなり、第2制動制御が終了する。
その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0116】
以上により、軽衝突が発生した場合には、軽衝突フラグXLcの値が「1」に設定され、第1制動制御が実行される。一方、衝突が発生した場合には、衝突フラグXcの値が「1」に設定され、展開制御(エアバッグの展開及び第2制動制御)が実行される。運転者が特異状態である場合には、運転者が特異状態となった時点からの経過時間が長いほど、軽衝突の判定に用いられる閾値(軽衝突閾値GBth及び積分閾値Vth)の値が小さくなる(換言すれば、経過時間が長いほど軽衝突条件が成立し易くなるように上記閾値が設定される。)。
【0117】
これにより、車両がガードレール及び縁石等に衝突した場合に第1制動制御が実行される可能性を高めることができ、第1制動制御が誤って実行された場合であっても第1制動制御を煩わしいと感じる可能性を低減できる。
【0118】
本発明は前述した実施形態に限定されることはなく、本発明の種々の変形例を採用することができる。
【0119】
(第1変形例)
本変形例に係る運転支援装置10は、軽衝突が発生した場合に第1制動制御の代わりに駆動力抑制制御を実行する。駆動力抑制制御は、駆動源34aが発生させる駆動力を「アクセル操作量APに基く駆動力である要求駆動力」よりも小さな駆動力に抑制する制御である。駆動力抑制制御は、要求駆動力が閾値駆動力以上である場合、駆動源34aに閾値駆動力を発生させる制御(即ち、駆動源34aが発生させる駆動力が閾値駆動力を超えないように制限する制御)であってもよい。
【0120】
第1制動制御及び上記駆動力抑制制御は、車両VAの制動力及び駆動力を制御するものであるので、「制駆動力制御」と称呼する場合もある。
【0121】
なお、本支援装置10は、衝突が発生した場合に第2制動制御の代わりに上記駆動力抑制制御を実行してもよい。
【0122】
(第2変形例)
本変形例に係る本支援装置10は、上記第2条件が成立せずとも上記第1条件が成立した場合に軽衝突条件が成立したと判定する。
但し、第1条件及び第2条件の両方が成立した場合に軽衝突条件が成立したと判定する方が、車両VAが悪路を走行している場合に軽衝突が発生したと誤って判定する可能性を低減できる。これは、実際に軽衝突が発生した場合の加速度積分値Vの大きさは、車両VAが悪路を走行中の加速度積分値Vの大きさよりも大きくなる傾向があるためである。
【0123】
(第3変形例)
上記実施形態では、特異条件が成立した時点(
図2に示した時点t2)にて軽衝突閾値GBth及び積分閾値Vthを通常時よりも小さくし、特異条件が成立した時点から一定時間Tcが経過した時点(
図3に示した時点t3)にて軽衝突閾値GBth及び積分閾値Vthを更に小さくした。本変形例では、特異条件が成立した時点から一定時間Tcが経過する毎に所定値だけ軽衝突閾値GBth及び積分閾値Vthを小さくしてもよい。
【0124】
(第4変形例)
上記実施形態では、経過時間が長くなるほど軽衝突閾値GBth及び積分閾値Vthを小さくすることにより軽衝突条件を成立し易くしたが、経過時間が長くなるほど軽衝突条件が成立し易くすればよく、上記例に限定されない。例えば、経過時間が長くなるほど、軽衝突閾値GBth及び積分閾値Vthの何れか一方を小さくしてもよい。
【0125】
(第5変形例)
本変形例に係る運転支援装置10は、加速度Gに第1重み係数αを乗算した第1乗算値が軽衝突閾値GBth以上であり且つ加速度積分値Vに第2重み係数βを乗算した第2乗算値が積分閾値Vth以上である場合に、軽衝突条件が成立したと判定してもよい。この場合において、経過時間が長くなるほど第1重み係数α及び第2重み係数βの少なくとも一方を小さくすることにより、軽衝突条件を成立し易くしてもよい。
【0126】
(第6変形例)
本変形例に係る運転支援装置10は、衝突が発生した場合には第2制動制御を実行せずにエアバッグ62の展開のみを行う。
【0127】
(第7変形例)
運転支援装置10は、エンジン自動車、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)及び電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)等の車両に搭載可能である。
【符号の説明】
【0128】
10…運転支援装置、20…運転支援ECU、30…駆動ECU、32a…アクセルペダル、34…駆動源アクチュエータ、34a…駆動源、40…ブレーキECU、44…ブレーキアクチュエータ、44a…制動装置、60…インフレータ、62…エアバッグ。