(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】画像解析装置、機械の評価装置、及び機械の診断方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241106BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20241106BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G01N1/10 W
G01N1/28 F
(21)【出願番号】P 2022079700
(22)【出願日】2022-05-13
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中川 真実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇仁
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-069275(JP,A)
【文献】特開2020-155086(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175308(WO,A1)
【文献】特開2002-188627(JP,A)
【文献】特許第6970946(JP,B1)
【文献】特表2016-529570(JP,A)
【文献】特開2021-157725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G01N 1/10
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の種類の解析要素が映し出されている可能性がある解析対象の画像において、上記2以上の種類の解析要素の少なくとも一つの解析要素が占有する占有割合を算出する画像解析装置であって、
予め取得した学習用の解析対象の画像を複数の画像に等分割し、分割した各画像それぞれに解析要素の種類の情報を付加して、当該情報付加後の各分割した画像を教師データとして機械学習して求めた学習済みモデルであって、画像を入力し、入力した画像に対応する解析要素の種類の分類情報を出力する学習済みモデルと、
解析を行う解析対象の画像を、複数の画像に等分割する画像分割部と、
上記学習済みモデルに対し、上記画像分割部が分割した各画像を順次入力して、上記画像分割部が分割した各画像それぞれについて、画像に対応する解析要素の種類の分類情報を取得する画像処理部と、
上記画像処理部が取得した画像毎の分類情報に基づき、解析する解析要素の種類に対応する上記分割した画像の数から、当該解析する解析要素が、上記解析対象とする画像中で占有する割合を求める占有割合算出部と、
を備えることを特徴とする画像解析装置。
【請求項2】
上記2以上の種類の解析要素は、少なくとも、形状を特徴量として分類され、
上記画像の分割数は、上記画像分割部で分割した画像に、解析要素の輪郭の少なくとも一部が映り込む大きさとする、
ことを特徴とする請求項1に記載した画像解析装置。
【請求項3】
上記画像分割部で分割された画像の面積を正方形に換算したときの一辺の長さは、上記解析対象の画像での占有割合を求める上記解析要素の平均粒径以上とする、
ことを特徴とする請求項1に記載した画像解析装置。
【請求項4】
上記画像分割部で分割された画像の面積を正方形に換算したときの一辺の長さは、上記解析対象の画像での占有割合を求める上記解析要素の平均粒径の、1.0倍以上2.5倍以下である、
ことを特徴とする請求項3に記載した画像解析装置。
【請求項5】
上記2以上の種類の解析要素に優先度を設定し、上記学習済みモデルの生成の際に、付加した解析要素の種類の分類情報は、一の画像に2種以上の解析要素が写り込んでいる場合、優先度の高い解析要素の種類の分類情報とした、
ことを特徴とする請求項1に記載した画像解析装置。
【請求項6】
上記解析対象とする画像は、潤滑油中から収集した摩耗粉の顕微鏡画像である、
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載した画像解析装置。
【請求項7】
機械の可動部で使用されている潤滑油から収集した摩耗粉の顕微鏡画像から、機械の状態を評価する機械の評価装置であって、
上記顕微鏡画像を解析対象の画像とする、請求項6に記載した画像解析装置と、
上記画像解析装置が求めた解析する解析要素が、上記解析対象とする画像中で占有する割合から、機械の状態を評価する評価部と、
を備える機械の評価装置。
【請求項8】
機械の可動部で使用されている潤滑油から収集した摩耗粉の顕微鏡画像を、請求項6に記載の画像解析装置で解析して、収集した摩耗粉の種類毎の占有割合を求め、
求めた摩耗粉の種類の占有割合から、機械の状態を評価する、
機械の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習を用いて、画像に映し出されている複数の解析要素の少なくとも1つの解析要素の、画像中で占有する割合を求めるための画像解析の技術、及びその画像解析の技術を用いた機械の評価・診断に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
分析フェログラフィは、サンプリングした潤滑油中の摩耗粉(摩耗粒子)を収集(捕集)し、収集した摩耗粉を対象とし、その対象の量や形などを顕微鏡で調べることで、その潤滑油を使用していた機械の状態を診断(評価)する技術である。
例えば、対象について顕微鏡を用いて観察し、それぞれの種類の摩耗粉を見つけ、その各種の摩耗粉の割合から機械の状態(回転機構の潤滑状態)を判断する。
同様に、ミリポアフィルター等を利用した濾過により摩耗粉の捕集を行った場合も、顕微鏡による上記のような摩耗粉の観察が行われている。
また、従来、フェログラフィを簡便に行う方法として、回転式フェログラフィ装置を用いた方法もある(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】安部田秦 他 著「回転式フェログラフィ-装置の開発と実機適応の事例」、日本機械学会[No.13‐24]シンポジウム講演論文集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に行われている分析フェログラフィでは、摩耗粉を磁力によって捕集(収集)しフェログラムを作成した後、顕微鏡を用いて観察することで、それぞれの種類の摩耗粉を見つけ、各摩耗粉の割合から,機械の状態の判断(診断)を下すような方法がとられている。しかし、その各摩耗粉の割合は、定量的評価ではなく、観察員の定性的評価で行われているという問題点があった。
また、非特許文献2に記載の技術は、フェログラフィを簡便に行うことを可能にする。しかし、非特許文献2に記載の技術は、摩耗粉の量のみを分析する定量フェログラフィを対象としており、摩耗粉の種類毎に割合を分析する分析フェログラフィを対象とはしていない。すなわち、摩耗粉の種類毎に、各種類の占有割合によって機械の状態を診断することには、適していない。
【0005】
また、組織の断面写真など、細かな要素(組織)が多数映り込んでいる写真(画像)から、解析対象の要素の割合を、顕微鏡観察で求めるのは、大変手間が掛かる。そして、顕微鏡画像から簡易に解析対象の占有割合を求めることは、顕微鏡観察の手間を大幅に減らすことに繋がる。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、より簡易且つ定量的に、画像から各要素の占有割合を求めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、解析対象の要素を含む画像から、画像中における各要素の占有割合を、機械学習による学習済みモデルを用いて、簡易に且つ定量的に求めることを考えた。
ここで、通常、機械学習を利用した分類・占有面積計算に用いられるモデルとしては、セグメンテーションモデル等の物体検出モデルが挙げられる。しかし、物体検出モデルは、学習モデルを生成する際、画像上で要素が存在する領域(範囲)を個別に指定する必要があり、教師データ作成のための工数が非常に多く掛かるため、摩耗粉の検出用のモデル生成が実用的でないという課題がある。例えば、セグメンテーションモデルで使用する教師データの場合、各要素の領域を指定する必要があり手間が掛かる。
これに対し、学習済みモデルを簡易に生成可能な方法を検討して、本発明をなした。
【0007】
すなわち、課題解決のために、本発明の態様によれば、2以上の種類の解析要素が映し出されている可能性がある解析対象の画像において、上記2以上の種類の解析要素の少なくとも一つの解析要素が占有する占有割合を算出する画像解析装置であって、予め取得した学習用の解析対象の画像を複数の画像に等分割し、分割した各画像それぞれに解析要素の種類の情報を付加して、当該情報付加後の各分割した画像を教師データとして機械学習して求めた学習済みモデルであって、画像を入力し、入力した画像に対応する解析要素の種類の分類情報を出力する学習済みモデルと、解析を行う解析対象の画像を、複数の画像に等分割する画像分割部と、上記学習済みモデルに対し、上記画像分割部が分割した各画像を順次入力して、上記画像分割部が分割した各画像それぞれについて、画像に対応する解析要素の種類の分類情報を取得する画像処理部と、上記画像処理部が取得した画像毎の分類情報に基づき、解析する解析要素の種類に対応する上記分割した画像の数から、当該解析する解析要素が、上記解析対象とする画像中で占有する割合を求める占有割合算出部と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、学習モデルを作成する際、画像上で各種類の要素が存在する領域を、矩形や自由形などで領域を指定する手間が必要なくなり、単純に分割した分割画像毎の分類のみの作業で学習用の教師データを簡便に作成することが出来る。
この結果、本発明の態様によれば、そのような簡易に生成された学習済みモデルを使用して、分割した画像に対応する要素の種別が容易に求められ、各種別毎の画像数から簡易に、要素の種類毎の占有面積割合を簡便に定量的に求めることが出来る。
このように、本発明の態様によれば、簡便にかつ定量的に、摩耗粉等の要素の種類毎の占有面積割合を求めることが出来るようになる。
例えば、機械の軸受部などの可動部に用いられる潤滑油に含まれる摩耗粉を、本開示の画像解析によって解析して、摩耗粉等の要素の種類毎の占有面積割合を求めることで、簡易に、機械の状態の診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る評価装置及び画像解析装置の構成例を示す図である。
【
図2】解析要素の例を示す摩耗形態を示す図である。
【
図3】学習済みモデルの生成例を説明する図である。
【
図4】(分割画像の1辺の長さ/摩耗粉の平均粒径)と判定精度の関係を示す図である。
【
図5】学習済みモデルを使用した判定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に基づく実施形態について図面を参照して説明する。
(装置構成)
本実施形態の評価装置1は、
図1に示すように、画像解析装置2と評価部1Aとを備える。評価装置1は、対象とする機械の、潤滑油が供給される、軸受などの可動部の状態を評価(診断)する装置である。
画像解析装置2は、
図1に示すように、モデル生成部2A、画像入力部2B、画像分割部2C、画像処理部2D、及び占有割合算出部2Eを備える。モデル生成部2Aは、画像解析装置2の構成に含まれなくても良い。
画像解析装置2の各処理は、コンピュータが実行する。例えば、画像解析装置2を構成する各部の処理は、それぞれソフトウェア(プログラム)として記憶部に記憶されている。
【0011】
<解析対象の画像>
解析対象の画像は、画像解析装置2が解析対象とする画像であって、2以上の種類の解析要素が映し出されている可能性がある画像である。画像は、画像データでもよいし、印刷された画像でもよい。
この解析対象の画像を、以下、解析画像3とも呼ぶ。また、解析画像3を分割した複数の画像を、以下、分割画像5とも呼ぶ。
本実施形態の画像解析装置2は、解析画像3に映し出されている可能性がある複数の解析要素の各解析要素が、それぞれ画面上で占有する占有割合(占有する占有割合)を算出する処理を実行する。
【0012】
以下の説明では、潤滑油に含有されている種々の摩耗粉を解析要素として説明する。また、潤滑油から収集した摩耗粉の集合を撮像した顕微鏡画像を解析画像3する。
具体的には、本実施形態では、診断対象の機械の可動部で使用していた潤滑油から、分析する油をサンプリングする。次に、サンプリングした油に対し、フェログラフィ又は濾過によって、当該油に含有している摩耗粉を捕集して収集して、プレパラートを作成する。
そして、プレパラートについて、顕微鏡で摩耗粉を探して撮像して顕微鏡画像を取得する。なお、以上の顕微鏡画像の生成の処理は、従来、公知の方法を適用すれば良い。
【0013】
ここで、機械の可動部としては、軸受機構が例示出来る。摩耗粉は、可動部での摺動によって発生する要素であって、例えば、
図2に示すような摩耗粉の形態が例示出来る。
図2における、摩耗形態が各解析要素としての、摩耗粉の種類(分類情報)の例示である。
また、摩耗粉には、可動部での正常な摺動状態(正常潤滑状態)で発生する摩耗粉と、異常な摺動状態(異常潤滑状態)を示す摩耗粉とに分類される。
図2の例では、「正常」、の摩耗形態が、正常潤滑状態の摩耗粉であり、「フレッチング」「平板状」「薄片状」「傷片」「切削」の摩耗形態を、異常潤滑状態の摩耗粉としたものである。摩耗形態が「空白」とは、対象とする分割画像5に、摩耗粉がないことを示すための要素である。なお、上記の異常潤滑状態の摩耗粉の全ての摩耗粉形態を解析する摩耗粉の形態としなくてもよい。また分類も、他の形態で分類させても良い。
【0014】
また、本実施形態では、解析要素である、摩耗形態に検出すべき判定優先度を設けている。
図2の例では、機械の可動部での不具合(異常)の大きさから、判定優先度を設定し、数字が小さいほど、優先度が高いとする。ここで、「フレッチング」「平板状」「薄片状」「傷片」「切削」の摩耗形態は、それぞれ、その摩耗形態の摩耗粉が発生する原因が異なる。例えば、「切削」は、摺動部に異物が混入した場合や異常な突起が形成されると発生しやすくなり、可動部の異常としては検出すべき優先度が高い。
【0015】
<モデル生成部2A>
モデル生成部2Aは、画像分割部2Cで使用する学習済みモデル4を生成する処理を行う。
前処理として、予め取得した学習用の複数の解析画像3を入力し(
図3(a))、入力した解析画像3を、予め設定した分割条件にて、同じ大きさの複数の画像に等分割して、学習用の分割画像5を作成する。本実施形態では、縦線と横線で画像を分割して、分割画像を矩形形状とした。
そして、モデル生成部2Aは、(学習用の分割画像5、要素の種類)からなる教師データ(学習データ)を用いて、機械学習を実行して学習済みモデル4を生成する(
図3(b))。
【0016】
ここで、各分割画像5について、それぞれどの摩耗粉形態(解析要素の種類)に属するかの分類情報を、要素の種類として設定する。このとき、解析画像3を、単純に複数の画像に等分割するため、分割処理が簡易に実行出来る。そして、各分割画像5について、択一的に要素の種類を対応させていく。
ここで、本実施形態では、1の分割画像5に、2以上の摩耗粉形態が含まれる場合もあるが、原則として優先度が高い摩耗粉形態として択一的に摩耗粉形態の種類が対応付けられる。1の分割画像5に、分類情報として、2以上の摩耗粉形態を対応させても良い。
【0017】
機械学習は、深層学習その他の公知の画像分類アルゴリズム(画像分類モデル)を用いて実行すれば良い。
生成した学習済みモデル4は、分割画像5からなる画像を入力し、入力した画像に対応する解析要素の種類の分類情報を出力する学習モデルである。生成した学習済みモデル4は、記憶部に記憶しておく。
また、精度検証のために、
図3(c)のように、生成した学習済みモデル4に、他の解析画像を分割した分割画像5を入力して、学習済みモデル4の判定精度を確認するとよい。なお、
図3(d)は、摩耗粉形態を「正常」「切削」「平板状」の3種類とし、摩耗形態の対応関係を模式的に図示したものである。
【0018】
そして、精度が高くなるように、画像の分割数(分割条件)を更新する。
ここで、摩耗粉の摩耗形態は、主に、その形状(輪郭形状)によって分類出来る。このため、各分割画像5に、判定したい摩耗粉の輪郭の一部が映り込んでいることが好ましい。一方、分割画像5が大きすぎると、複数の摩耗粉が映り込み易くなり、判定精度が下がると共に、占有割合の精度も粗くなる。その観点から、分割画像5の面積の上限が規定される。
ここで、解析画像上での、判定する摩耗粉の平均粒径(直径)に対する、分割画像5の面積を正方形形状に換算した1辺の長さの割合と、学習済みモデル4の判定精度との関係を求めてみたところ、
図4に示すような結果を得た。
【0019】
この結果から、解析要素が、少なくとも形状を特徴量として分類される場合、画像の分割数は、分割画像5に、解析要素の輪郭の少なくとも一部が映り込む大きさとすることが好ましい。
具体的には、分割画像5の面積を正方形に換算したときの一辺の長さは、解析画像上での占有割合を求める上記解析要素の、平均粒径以上とすることが好ましい。この場合、分割画像5に異常摩耗形態の特徴点が含まれやすくなると推定される。平均粒径は、以上潤滑を示す摩耗粉形態の平均粒径とすることが好ましい。
【0020】
ただし、分割画像5の面積を正方形に換算したときの一辺の長さは、解析画像上での占有割合を求める上記解析要素の平均粒径の、2.5倍以下が好ましい。2.5倍超であると、複数種類の摩耗粉形態が1つの分割画像5に含まれ易くなって、異常摩耗粉を見落とす可能性が高くなる。
ここで、平均粒径は、各摩耗粉の面積を円に換算した際の円の直径である。経験的に、異常摩耗粉とみなされる種類の摩耗粉の平均粒径は、約20μmであるので、分割画像5の1辺の大きさは20μm~50μmに顕微鏡倍率を掛けた値とすると良い。
なお、上述のように判定精度の検証を行って、分割面積を補正することが好ましい。
【0021】
<画像入力部2B>
画像入力部2Bは、対象とする解析画像3の画像データを取得する処理を実行する。本実施形態では、上記の顕微鏡画像を入力する。
画像入力部2Bは、対象とする解析画像3を撮像する撮像装置であっても良い。
【0022】
<画像分割部2C>
画像分割部2Cは、画像入力部2Bが入力した解析画像3を、予め設定した条件によって、複数の画像に等分割して、複数の分割画像5を取得する処理を実行する(
図5(a))。
本実施形態では、解析画像3を、等間隔の複数の横線と等間隔の複数の縦線とからなる分割(区画)されて、複数の矩形の分割画像5とする。例えば、7本の横線と7本の縦線で区画した場合には、49分割されて、49の分割画像5となる。
ここで、モデル生成部2Aでの学習用の解析画像と、画像入力部2Bが入力した解析画像の倍率が同じであれば、画像分割部2Cは、モデル生成部2Aでの精度が高い分割条件と同じ条件で、分割して分割画像を取得すれば良い。モデル生成部2Aでの学習用の解析画像と、画像入力部2Bが入力した解析画像3の倍率が異なる場合には、倍率の違いに応じた補正を行って分割すればよい。
【0023】
<画像処理部2D>
画像処理部2Dは、学習済みモデル4に対し、画像分割部2Cが分割した各画像を順次入力して、画像分割部2Cが分割した各画像それぞれについて、画像に対応する解析要素の種類の分割情報を取得する(
図5(b))。49分割した場合には、49個の分割画像5を順次入力して、各分割画像5に応じた分割情報が49個出力される。
【0024】
<占有割合算出部2E>
占有割合算出部2Eは、画像処理部2Dが取得した画像毎の分類情報に基づき、解析する解析要素の種類に対応する分割した画像の数から、当該解析する解析要素が、解析画像3中で占有する割合を求める。
占有割合算出部2Eは、例えば、画像処理部2Dが求めた複数の分割情報をソーティング処理を実行して摩耗形態毎(解析要素毎)の分割情報を演算する。そして、全分割情報の数で除することで、解析要素毎の解析画像3中で占有する占有割合を求める。具体的には、各解析要素の占有面積を求める。
【0025】
<評価部1A>
評価部1Aは、占有割合算出部2Eが求めた、各解析要素が、解析対象とする解析画像3中で占有する割合から、機械の状態を評価する。
ここで、上述のように、摩耗粉は、潤滑正常で発生する摩耗粉と、潤滑異常で発生する摩耗粉とに分類される。
評価部1Aの処理は、例えば、ソフトウェア(プログラム)として記憶部に記憶され、コンピュータが実行する。
評価部1Aは、例えば、潤滑異常と推定される摩耗粉が、解析画像3中で占有する割合が、予め設定した閾値異常の場合、機械の可動部の部品交換などのメンテナンスが必要であると診断する。
【0026】
この観点から、占有する割合を求める解析要素は、解析画像3中に映り込む要素の全てである必要は無い。例えば、上記のような異常性を示す解析要素だけを、占有する割合を求める解析要素としても良い。そして、潤滑異常の摩耗形態毎に占有割合が、設定した閾値以上か否かを判定し、閾値以上の潤滑異常の摩耗形態に応じて、異常状態の情報を出力しても良い。なお、異常の原因が異なるので、閾値は、各摩耗粉形態毎に個別に設定する。
【0027】
(動作その他)
本実施形態では、画像分割と画像分類アルゴリズムの組合せにより、機械学習による学習済みモデル4の生成時の負荷削減と摩耗粉の種類毎の占有面積割合の定量的評価を行うことが出来るようになる。
ここで、以上の実施形態では、潤滑油から収集した摩耗粉の集合を撮像した顕微鏡画像を解析画像3とした場合を例示しているが、これに限定されない。
例えば、組織断面の画像を解析画像3として、その解析画像3を構成する各組織の占有割合を求めるために、本実施形態の画像解析装置2を用いても良い。各組織が細かいほど、本実施形態の装置は有効に効果を奏する。
本実施形態は、解析画像3中に、多数の解析要素が映り込んでいて、各解析要素の輪郭を個別に設定することが大変手間となる場合に好適な技術である。
また、上記実施形態では、解析要素の主な分類(特徴量)が形状である場合を例示しているが、色その他の特徴量で分類される解析要素の占有割合を簡易に求める場合であっても、適用可能である。
【0028】
(実施例)
本実施形態に基づく一実施例について説明する。
本実施例では、フェログラフィにより作成したフェログラムを、顕微鏡を通して撮影した画像を解析画像3とした。本実施例では、その摩耗粉を映した一枚の解析画像3を、縦7枚、横7枚の合計49枚に分割して分割画像5とした(
図3(a))。そして、それぞれ分割画像5を摩耗粉の種類(形態)毎に分類し学習用データセット(教師データ)を作成し、その学習用データセットを入力とし、ニューラルネットワークを用いたアルゴリズムの1つであるGoogLeNetを使用して、画像分類学習モデル(学習済みモデル4)を作成した(
図3(b))。分割画像5の1辺の長さは、摩耗形態が切削の推定される平均粒径の約1.5倍の大きさとなっていた。
【0029】
次に、学習用データセットで使用した摩耗粉画像とは異なる摩耗粉を映した解析画像3をそれぞれ縦7枚、横7枚の合計49枚に分割後、画像分類学習モデルに入力し、出力された各摩耗粉の種類への分類結果を人間による判定と比較した。このとき、全49の分割画像5のうちの45の分割画像5が、人間による分類判定と一致し、合致率91.8%となった。同様にして20枚合致率の検証を行ったが、平均合致率は92%となる良好な結果が得られた。
このように、本開示を用いる場合、単純に画像分割を行い、少ない学習用データセットでも、精度の良い学習済みモデル4が生成出来ることが分かった。
【0030】
なお、上記実施例では、フェログラフィによって作成したフェログラムを顕微鏡で撮影した画像に適応した場合について説明したが、本開示はこれに限るものでなく、ミリポアフィルターなどで濾過を行い捕集した摩耗粉でもよい。
また、上記実施例では、画像分類学習モデルの作成にGoogLeNetを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)やオートエンコーダ等のニューラルネットワークを用いて学習モデルを作成してもよい。
【0031】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)2以上の種類の解析要素が映し出されている可能性がある解析対象の画像において、上記2以上の種類の解析要素の少なくとも一つの解析要素が占有する占有割合を算出する画像解析装置であって、
予め取得した学習用の解析対象の画像を複数の画像に等分割し、分割した各画像それぞれに解析要素の種類の情報を付加して、当該情報付加後の各分割した画像を教師データとして機械学習して求めた学習済みモデルであって、画像を入力し、入力した画像に対応する解析要素の種類の分類情報を出力する学習済みモデルと、
解析を行う解析対象の画像を、複数の画像に等分割する画像分割部と、
上記学習済みモデルに対し、上記画像分割部が分割した各画像を順次入力して、上記画像分割部が分割した各画像それぞれについて、画像に対応する解析要素の種類の分類情報を取得する画像処理部と、
上記画像処理部が取得した画像毎の分類情報に基づき、解析する解析要素の種類に対応する上記分割した画像の数から、当該解析する解析要素が、上記解析対象とする画像中で占有する割合を求める占有割合算出部と、を備える。
【0032】
(2)上記2以上の種類の解析要素は、少なくとも、形状を特徴量として分類され、
上記画像の分割数は、上記画像分割部で分割した画像に、解析要素の輪郭の少なくとも一部が映り込む大きさとする。
(3)上記画像分割部で分割された画像の面積を正方形に換算したときの一辺の長さは、上記解析対象の画像での占有割合を求める上記解析要素の平均粒径以上とする。
(4)上記画像分割部で分割された画像の面積を正方形に換算したときの一辺の長さは、上記解析対象の画像での占有割合を求める上記解析要素の平均粒径の1.0倍以上2.5倍以下である。
(5)上記2以上の種類の解析要素に優先度を設定し、上記学習済みモデルの生成の際に、付加した解析要素の種類の分類情報は、一の画像に2種以上の解析要素が写り込んでいる場合、優先度の高い解析要素の種類の分類情報とした。
(6)上記解析対象とする画像は、潤滑油中から収集した摩耗粉の顕微鏡画像である。
【0033】
(7)機械の可動部で使用されている潤滑油から収集した摩耗粉の顕微鏡画像から、機械の状態を評価する機械の評価装置であって、
上記顕微鏡画像を解析対象の画像とする、本開示の画像解析装置と、
上記画像解析装置が求めた解析する解析要素が、上記解析対象とする画像中で占有する割合から、機械の状態を評価する評価部と、
を備える機械の評価装置。
(8)機械の可動部で使用されている潤滑油から収集した摩耗粉の顕微鏡画像を、本開示の画像解析装置で解析して、収集した摩耗粉の種類毎の占有割合を求め、
求めた摩耗粉の種類の占有割合から、機械の状態を評価する、
ことを特徴とする機械の診断方法。
【符号の説明】
【0034】
1 評価装置
1A 評価部
2 画像解析装置
2A モデル生成部
2B 画像入力部
2C 画像分割部
2D 画像処理部
2E 占有割合算出部
3 解析画像
4 学習済みモデル
5 分割画像