(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電子インナミラー装置及びその通知制御方法及び通知制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60R 1/12 20060101AFI20241106BHJP
B60S 1/62 20060101ALI20241106BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20241106BHJP
【FI】
B60R1/12 Z
B60S1/62 110A
B60S1/62 120A
B60S1/62 120B
B60S1/62 120C
B60R1/26 100
(21)【出願番号】P 2022083328
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金内 直樹
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-50014(JP,A)
【文献】特開2019-18597(JP,A)
【文献】特開平5-185906(JP,A)
【文献】特開2021-98426(JP,A)
【文献】特開2011-240920(JP,A)
【文献】特開2020-79025(JP,A)
【文献】米国特許第10970947(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/12 ; 1/26
B60S 1/00 - 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部に設置され前記車両の後方の画像を取得するカメラと、前記画像を表示する電子ミラーモード及び光学的な反射により前記車両の後方を映す光学ミラーモードにて作動し、切り替え装置が操作されることにより作動モードが切り替えられるよう構成された電子インナミラーと、前記カメラに対し車両の後方の雨滴を除去する雨滴除去装置と、を含む電子インナミラー装置において、
前記車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定される状況において、前記作動モードが前記電子ミラーモードから前記光学ミラーモードへ切り替えられたときには、前記雨滴除去装置による雨滴の除去が可能である旨を乗員に通知するよう構成された制御装置を有する電子インナミラー装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子インナミラー装置において、前記制御装置は、フロントワイパが作動していると判定されたとき、又は前記フロントワイパ用のレインセンサにより雨滴が検出されたときに、前記車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定するよう構成された電子インナミラー装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子インナミラー装置において、前記カメラは車室内にて前記車両の後部に設置されリアウインドウガラスを経て前記車両の後方の画像を取得するよう構成されており、前記雨滴除去装置は、前記カメラに対し前記車両の後方の領域を含む前記リアウインドウガラスの外面を払拭するよう構成されたリアワイパである電子インナミラー装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子インナミラー装置において、前記カメラは車室内にて前記車両の後部に設置されリアウインドウガラスを経て前記車両の後方の画像を取得するよう構成されており、前記雨滴除去装置は、前記カメラに対し前記車両の後方の領域を含む前記リアウインドウガラスの外面に洗浄液を噴射するよう構成されたリア洗浄装置である電子インナミラー装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子インナミラー装置において、前記カメラは車外に露出された状態にて前記車両の後部に設置されており、前記雨滴除去装置は、前記カメラのレンズに気体を噴射するよう構成されたエアジェット装置である電子インナミラー装置。
【請求項6】
車両の後部に設置され前記車両の後方の画像を取得するカメラと、前記画像を表示する電子ミラーモード及び光学的な反射により前記車両の後方を映す光学ミラーモードにて作動し、切り替え装置が操作されることにより作動モードが切り替えられるよう構成された電子インナミラーと、前記カメラに対し車両の後方の雨滴を除去する雨滴除去装置と、を含む電子インナミラー装置の通知制御方法であって、
前記車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定される状況において、前記電子ミラーモードから前記光学ミラーモードへの前記作動モードの切り替えが行われたか否かを判定するステップと、前記切り替えが行われたと判定したときには、前記雨滴除去装置による雨滴の除去が可能である旨を乗員に通知するステップと、を更に含む電子インナミラー装置の通知制御方法。
【請求項7】
車両の後部に設置され前記車両の後方の画像を取得するカメラと、前記画像を表示する電子ミラーモード及び光学的な反射により前記車両の後方を映す光学ミラーモードにて作動し、切り替え装置が操作されることにより作動モードが切り替えられるよう構成された電子インナミラーと、前記カメラに対し車両の後方の雨滴を除去する雨滴除去装置と、を含む電子インナミラー装置の通知制御プログラムであって、
前記車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定される状況において、前記電子ミラーモードから前記光学ミラーモードへの前記作動モードの切り替えが行われたか否かを判定するステップと、前記切り替えが行われたと判定したときには、前記雨滴除去装置による雨滴の除去が可能である旨を乗員に通知するステップと、を更に含み、前記車両に搭載された電子制御装置により実行される電子インナミラー装置の通知制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の電子インナミラー装置及びその通知制御方法及び通知制御プログラムに係る。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両において、車両の後方の視覚情報を運転者に提供する装置の一つとして、電子インナミラー装置が知られている。電子インナミラー装置は、電子インナミラーと、車両の後部に設置され車両の後方の画像を取得するリアカメラとを含んでいる。電子インナミラーは、車両の後方の画像を表示する電子ミラーモード及び光学的な反射により車両の後方を映す光学ミラーモードにて作動し、切り替え装置が操作されることにより作動モードが切り替えられるよう構成されている。
【0003】
リアカメラが車室内に設置され、リヤウインドウガラスを経て車両の後方を撮影する場合には、リアカメラに対し車両の後方側の領域にてリヤウインドウガラスの外面に雨滴が付着すると、リアカメラは車両の後方を正常に撮影することができなくなる。例えば、下記の特許文献1には、この問題に対処することができるよう構成された電子インナミラー装置が記載されている。
【0004】
下記の特許文献1に記載された電子インナミラー装置は、リヤウインドウガラス用の雨滴除去装置及びレインセンサを含んでいる。雨滴除去装置は、リアカメラに対し車両の後方側の領域を含むリヤウインドウガラスの外面を払拭するよう構成されたリアワイパ、又は上記領域を含むリヤウインドウガラスの外面に洗浄液を噴射するよう構成された洗浄液噴射装置である。雨滴除去装置は、リアカメラに対し車両の後方側の領域にてリヤウインドウガラスの外面に付着した雨滴がレインセンサにより検出されると作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
〔発明が解決しようとする課題〕
上記特許文献1に記載された電子インナミラー装置によれば、リアカメラに対し車両の後方側の領域にてリヤウインドウガラスの外面に付着した雨滴を雨滴除去装置によって除去することができる。よって、リアカメラが雨滴に起因して車両の後方を正常に撮影することができなくなることを防止することができるので、電子インナミラーは雨天時にも。電子ミラーモードにて車両の後方の画像を表示することができる。
【0007】
しかし、リアカメラに対し車両の後方側の領域にてリヤウインドウガラスの外面に付着した雨滴を検出するレインセンサが必須である。そのため、電子インナミラー装置が高価になることが避けられない。
【0008】
また、リヤウインドウガラス用のレインセンサが設けられておらず、スイッチが操作されることによりリアワイパが作動される車両の場合には、電子ミラーの作動モードが不必要に電子ミラーモードから光学モードへ切り替えられることがある。即ち、電子ミラーモードに設定された電子ミラーが車両の後方の画像を正常に表示することができなくなると、運転者はリアワイパにより雨滴の除去が可能であることに気づかず、リアワイパを作動させずに電子ミラーの作動モードの上記切り替えを行うことがある。
【0009】
本発明は、電子インナミラー装置が高価になることを回避しつつ、作動モードが不必要に電子ミラーモードから光学モードへ切り替えられる虞を低減することができるよう改良された電子インナミラー装置及びその通知制御方法及び通知制御プログラムを提供する。
【0010】
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、車両(50)の後部(50A)に設置され車両の後方の画像を取得するカメラ(リアカメラ14)と、画像を表示する電子ミラーモード及び光学的な反射により車両の後方を映す光学ミラーモードにて作動し、切り替え装置(16)が操作されることにより作動モードが切り替えられるよう構成された電子インナミラー(12)と、カメラに対し車両の後方の雨滴を除去する雨滴除去装置(リアワイパ26、リア洗浄装置28、エアジェット装置74)と、を含む電子インナミラー装置(100)が提供される。
【0011】
電子インナミラー装置は、車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定される状況において(S10、S20)、作動モードが電子ミラーモードから光学ミラーモードへ切り替えられたときには(S30)、雨滴除去装置による雨滴の除去が可能である旨を乗員に通知する(S60、S65)よう構成された制御装置(インナミラーECU10)を有する。
【0012】
また、本発明によれば、車両(50)の後部(50A)に設置され車両の後方の画像を取得するカメラ(リアカメラ14)と、画像を表示する電子ミラーモード及び光学的な反射により車両の後方を映す光学ミラーモードにて作動し、切り替え装置(16)が操作されることにより作動モードが切り替えられるよう構成された電子インナミラー(12)と、カメラに対し車両の後方の雨滴を除去する雨滴除去装置(リアワイパ26、リア洗浄装置28、エアジェット装置74)と、を含む電子インナミラー装置(100)の通知制御方法が提供される。
【0013】
通知制御方法は、更に、車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定される状況において(S10、S20)、電子ミラーモードから光学ミラーモードへの作動モードの切り替えが行われたか否かを判定するステップ(S30)と、上記切り替えが行われたと判定したときには、雨滴除去装置による雨滴の除去が可能である旨を乗員に通知するステップ(S60、S65)と、を含む。
【0014】
更に、本発明によれば、車両(50)の後部(50A)に設置され車両の後方の画像を取得するカメラ(リアカメラ14)と、画像を表示する電子ミラーモード及び光学的な反射により車両の後方を映す光学ミラーモードにて作動し、切り替え装置(16)が操作されることにより作動モードが切り替えられるよう構成された電子インナミラー(12)と、カメラに対し車両の後方の雨滴を除去する雨滴除去装置(リアワイパ26、リア洗浄装置28、エアジェット装置74)と、を含む電子インナミラー装置(100)の通知制御プログラムが提供される。
【0015】
通知制御プログラムは、更に、車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定される状況において(S10、S20)、電子ミラーモードから光学ミラーモードへの作動モードの切り替えが行われたか否かを判定するステップ(S30)と、上記切り替えが行われたと判定したときには、雨滴除去装置による雨滴の除去が可能である旨を乗員に通知するステップ(S60、S65)と、を含み、車両に搭載された電子制御装置(インナミラーECU10)により実行される。
【0016】
上記の電子インナミラー装置、通知制御方法及び通知制御プログラムによれば、車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定される状況において、電子ミラーモードから光学ミラーモードへの作動モードの切り替えが行われたと判定されたときには、雨滴除去装置による雨滴の除去が可能である旨が乗員に通知される。
【0017】
よって、乗員は雨滴除去装置による雨滴の除去が可能であることを認知することができる。従って、その後リアカメラに対し車両の後方側の領域にてリヤウインドウガラスの外面に雨滴が付着し、電子ミラーが車両の後方の画像を正常に表示することができなくなっても、乗員は雨滴除去装置によって雨滴を除去することができる。よって、電子ミラーの作動モードが不必要に電子ミラーモードから光学モードへ切り替えられる虞を低減することができる。
【0018】
また、例えばリアカメラに対し車両の後方側の領域にてリヤウインドウガラスの外面に付着した雨滴を検出するレインセンサは不要である。よって、リヤウインドウガラスの外面に付着した雨滴を検出するレインセンサが設けられる場合に比して、電子インナミラー装置を低廉にすることができる。
【0019】
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、制御装置(インナミラーECU10)は、フロントワイパ(22)が作動していると判定されたとき(S20)、又はフロントワイパ用のレインセンサ(32)により雨滴が検出されたときに(S10)、車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定するよう構成される。
【0020】
上記態様によれば、フロントワイパが作動していると判定されたとき、又はフロントワイパ用のレインセンサにより雨滴が検出されたときに、車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定される。よって、リアカメラに対し車両の後方側の領域にてリヤウインドウガラスの外面に雨滴が付着した状況において、リヤウインドウガラスの外面に付着した雨滴を検出するレインセンサを要することなく、雨滴の付着を推定することができる。
【0021】
本発明の他の一つの態様においては、カメラ(リアカメラ14)は車室内にて車両の後部に設置されリアウインドウガラス(64)を経て車両の後方の画像を取得するよう構成されており、雨滴除去装置は、カメラに対し車両の後方の領域を含むリアウインドウガラスの外面を払拭するよう構成されたリアワイパ(26)である。
【0022】
上記態様によれば、雨滴除去装置はカメラに対し車両の後方の領域を含むリアウインドウガラスの外面を払拭するよう構成されたリアワイパである。よって、リアワイパを作動させることにより、カメラに対し車両の後方の領域を含むリアウインドウガラスの外面に付着する雨滴を払拭によって除去することができる。
【0023】
更に、本発明の他の一つの態様においては、カメラ(リアカメラ14)は車室内にて車両の後部に設置されリアウインドウガラス(64)を経て車両の後方の画像を取得するよう構成されており、雨滴除去装置は、カメラに対し車両の後方の領域を含むリアウインドウガラスの外面に洗浄液を噴射するよう構成されたリア洗浄装置(28)である。
【0024】
上記態様によれば、雨滴除去装置は、カメラに対し車両の後方の領域を含むリアウインドウガラスの外面に洗浄液を噴射するよう構成されたリア洗浄装置である。よって、リア洗浄装置を作動させることにより、カメラに対し車両の後方の領域を含むリアウインドウガラスの外面に付着する雨滴を洗浄液によって除去することができる。
【0025】
更に、本発明の他の一つの態様においては、カメラ(リアカメラ14)は車外に露出された状態にて車両の後部に設置されており、雨滴除去装置は、カメラのレンズ(12A)に気体を噴射するよう構成されたエアジェット装置(74)である。
【0026】
上記態様によれば、雨滴除去装置は、カメラのレンズに気体を噴射するよう構成されたエアジェット装置である。よって、エアジェット装置を作動させることにより、カメラのレンズに付着する雨滴を噴射された気体によって除去することができる。
【0027】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いられる名称及び/又は符号が括弧書きで添えられている。しかし、本発明の各構成要素は、括弧書きで添えられた名称及び/又は符号に対応する実施形態の構成要素に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第一の実施形態にかかる電子インナミラー装置が搭載された車両を示す図である。
【
図2】作動モードを切り替える切り替え装置を含む電子インナミラーを一部破断して示す図である。
【
図3】車両の後部に設置されたリアカメラ及び雨滴除去装置として機能するリアワイパ及びリア洗浄装置を示す図である。
【
図4】第一の実施形態における通知制御プログラムを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第二の実施形態にかかる電子インナミラー装置が搭載された車両を示す図である。
【
図6】リアスボイラの下側に設置されたリアカメラ及び雨滴除去装置として機能するエアジェット装置を示す図である。
【
図7】第二の実施形態における通知制御プログラムの要部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる電子インナミラー装置及びその通知制御方法及び通知制御プログラムについて詳細に説明する。
【0030】
[第一の実施形態]
図1に示されているように、本発明の第一の実施形態にかかる電子インナミラー装置100は、車両50に適用され、インナミラーECU10を含んでいる。車両50は、ワイパECU20及びメータECU40を備えている。ECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)を意味する。
【0031】
各ECUのマイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、読み書き可能な不揮発性メモリ(N/M)及びインターフェース(I/F)などを含んでいる。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。更に、これらのECUは、CAN(Controller Area Network)52を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。従って、特定のECUに接続されたセンサ(スイッチを含む)の検出値などは、他のECUにも送信されるようになっている。
【0032】
電子インナミラー装置100は、更に電子インナミラー12、リアカメラ14及び切り替え装置16を含んでおり、これらはインナミラーCU10に接続されている。インナミラーECU10は、電子インナミラー12の作動モードを制御する制御装置である。実施形態においては、インナミラーECU10は、後に詳細に説明するように、他のECUと共働して、電子インナミラー12の通知制御プログラムを実行することにより、通知制御方法も実行する。電子インナミラー12は、図には示されていないウィンドシールドガラスの車室内側の中央上部に設置され、運転者に車両50の後方の視覚情報を提供する。
【0033】
図2に示されているように、電子インナミラー12は、表面に配置されたハーフミラー60Aと、ハーフミラーの裏側に配置されたLCD(液晶ディスプレイ)などの画像表示装置60Bと、画像表示装置の裏側に配置されたバックライト60Cとを含んでいる。切り替え装置16は、電子インナミラー12の作動モードを切り替えるためのスイッチ(図示せず)を内蔵しており、切り替え装置16は操作レバー62が操作されることにより、電子ミラー位置と光学ミラー位置とに切り替わるようになっている。
【0034】
バックライト60Cは、例えばLED(発光ダイオード)のアレイ、冷陰極管などのように、通電により発光する光源である。なお、画像表示装置60BがLCDである場合には、バックライト60Cが必須であるが、画像表示装置60Bが有機EL(organic electro-luminescence)である場合は、有機EL自体にLEDなどの光源が内蔵されているので、バックライト60Cは不要である。
【0035】
本実施形態においては、操作レバー62が操作されることにより、切り替え装置16が電子ミラー位置に設定されると、画像表示装置60Bが動作すると共にバックライト60Cが通電により発光する。よって、電子インナミラー12は、リアカメラ14の撮影により取得された画像を表示する電子ミラーモードにて作動する。
【0036】
これに対し、操作レバー62が操作されることにより、切り替え装置16が電子ミラー位置に設定されているときには、画像表示装置60Bは動作せず、バックライト60Cは発光しない。よって、ハーフミラー60Aが入射光を反射する反射鏡として作用するので、電子インナミラー12は、光学的な反射により車両50の後方を映す光学ミラーモードにて作動する。
【0037】
リアカメラ12は、車両50の後部50Aに設置されている。第一の実施形態においては、
図3に示されているように、リアカメラ12は、リアウィンドガラス64の車室内側の中央上部に位置するように設置されている。リアカメラ12は、リアウィンドガラス64を経て車両50の後方を撮影するカメラ部と、カメラ部による撮影により取得された車両50の後方の画像の情報を電気的に処理して電気信号を生成する処理部とを備えている。処理部は、車両50の後方の画像を示す電気信号を所定の時間毎にインナミラーECU10へ供給する。
【0038】
ワイパECU20には、フロントワイパ22、フロント洗浄装置24、リアワイパ26、リア洗浄装置28、設定操作装置30及びレインセンサ32が接続されている。周知のように、フロントワイパ22は、例えば二つのワイパを含み、ウィンドシールドガラス(図示せず)の外面を払拭するよう構成されている。ワイパECU20は、設定操作装置30が操作されることにより設定される動作モードに応じて、フロントワイパ22を連続モード、間欠モード及び自動モードにて作動させる。間欠モードにおける動作の時間間隔も、設定操作装置により可変設定可能である。フロント洗浄装置24も設定操作装置30が操作されることにより動作し、周知のようにウィンドシールドガラスの外面に洗浄液を噴射するよう構成されている。
【0039】
なお、動作モードが自動モードに設定されている状況において、後述のレインセンサにより雨滴が検出されると、ワイパECU20は、検出された雨滴の量が多いほど払拭の間隔が短くなるよう、フロントワイパ22を自動的に作動させる。更に、ワイパECU20は、フロントワイパ22を自動的に作動させている状況において、レインセンサにより雨滴が検出されなくなると、フロントワイパ22の作動を自動的に終了する。
【0040】
リアワイパ26は、リアカメラ12に対し車両の後方の領域を含むリアウィンドガラス64の外面を払拭するよう構成されている。リアワイパ26も、設定操作装置30が操作されることにより設定される動作モードに応じて、ワイパECU20により連続モード及び間欠モードにて作動される。間欠モードにおける動作の時間間隔も、設定操作装置により可変設定可能である。
【0041】
リア洗浄装置28も設定操作装置30が操作されることにより動作し、リアカメラ12に対し車両の後方の領域を含むリアウィンドガラス64の外面に洗浄液を噴射するよう構成されている。よって、リアワイパ26及びリア洗浄装置28は、リアカメラ12に対し車両の後方の領域を含むリアウィンドガラス64の外面に存在する雨滴を除去するリアカメラ用の雨滴除去装置として機能する。
【0042】
レインセンサ32は、電子インナミラー12に近接してウィンドシールドガラスの車室内側の中央上部に配設されている。レインセンサ32は、ウィンドシールドガラスの外面に付着する雨滴を検出し、フロントワイパ用のレインセンサとして機能する。例えば、レインセンサ32は、図には示されていないが、ウィンドシールドガラスへ向けて赤外光を照射する照射素子としてのLEDと、ウィンドシールドガラスからの反射光を受光する受光素子としてのフォトダイオードとを含んでいる。ウィンドシールドガラスの外面に雨滴が付着しているときには、フォトダイオードへ入射する反射光量が少なくなるので、レインセンサ32は反射光量に基づいて雨滴の有無及び雨滴の量を検出する。
【0043】
なお、レインセンサ32は、車両50の後部以外の位置に存在する雨滴を検出することができる限り、当技術分野において公知の任意の構造を有するフロントワイパ用のレインセンサであってよい。
【0044】
メータECU40には、車両50の乗員に対し視覚情報を表示するディスプレイ42と、車両50の乗員に対し聴覚情報を発出するスピーカ44が接続されている。ディスプレイ42は、例えばヘッドアップディスプレイ或いはメータ類及び各種の情報が表示されるマルチインフォーメーションディスプレイであってよく、更にはナビゲーション装置のディスプレイであってもよい。スピーカ44は、例えばオーディオ装置のスピーカであってよい。
【0045】
インナミラーECU10は、フローチャートとして
図4に示された通知制御プログラムに従って通知制御を実行する。即ち、インナミラーECU10は、レインセンサ32により雨滴が検出されている状況において、切り替え装置16の操作レバー62が操作されることにより、電子インナミラー12の作動モードが電子ミラーモードから光学ミラーモードへ切り替えられたか否かを判定する。
【0046】
インナミラーECU10は、上記切り替えを判定したときには、メータECU40へ指令信号を出力し、ディスプレイ42及びスピーカ44を作動させることにより、リアカメラ用の雨滴除去装置として機能するリアワイパ26及び/又はリア洗浄装置28によりリアカメラ12に対し車両の後方の領域に存在する雨滴の除去が可能である旨を乗員に通知する。なお、通知は例えば「リアワイパ及びリア洗浄装置によってリアカメラ後方の雨滴を除去できます」のような表現であってよい。
【0047】
<第一の実施形態における通知制御プログラム>
次に、
図4に示されたフローチャートを参照して第一の実施形態における通知制御プログラムについて説明する。
図4に示されたフローチャートによる通知制御は、
図1には示されていないイグニッションスイッチがオンであるときにインナミラーECU10のCPUにより実行される。なお、第一の実施形態においては、
図4に示されたフローチャートに従って通知制御が実行されることにより、通知制御方法が実行される。
【0048】
まず、ステップS10においては、CPUは、レインセンサ32が雨滴を検出しているか否かの判定を行う。CPUは、肯定判定をしたときには、本制御をステップS30へ進め、否定判定をしたときには、本制御をステップS20へ進める。
【0049】
ステップS20においては、CPUは、フロントワイパ22が作動中であるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、即ちフロントワイパ22が作動していないと判定したときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS30へ進める。
【0050】
よって、ステップS10においてレインセンサ32が雨滴を検出していると判定されたとき、又はステップS20においてフロントワイパ22が作動中であると判定されたときに、車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定され、ステップS30が実行される。なお、ステップS20において否定判定が行われた場合であって、後述のステップS60による通知が行われている場合には、当該通知が終了されてよい。
【0051】
ステップS30においては、CPUは、電子インナミラー12の作動モードが電子ミラーモードから光学ミラーモードへ変化したか否かの判定を行う。CPUは、肯定判定をしたときには、本制御をステップS60へ進め、否定判定をしたときには、本制御をステップS40へ進める。
【0052】
ステップS40においては、CPUは、後述のステップS60による通知、即ちリアワイパ26及び/又はリア洗浄装置28によりリアカメラ12に対し車両の後方の領域に存在する雨滴の除去が可能である旨の通知が行われているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS50へ進める。
【0053】
ステップS50においては、CPUは、後述のステップS60における通知が開始されてから予め設定された通知継続時間が経過したか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、本制御をステップS70へ進め、否定判定をしたときには、本制御をステップS60へ進める。
【0054】
ステップS60においては、CPUは、メータECU40へ指令信号を出力することにより、ディスプレイ42及びスピーカ44を使用して、リアワイパ26及び/又はリア洗浄装置28によりリアカメラ12に対し車両の後方の領域に存在する雨滴の除去が可能である旨を乗員に通知する。
【0055】
ステップS70においては、CPUは、ステップS60の実行により行っていた通知を終了する。よって、リアワイパ26によりリアカメラ12に対し車両の後方の領域に存在する雨滴の除去が可能である旨の通知が不必要に長く行われることに起因して、乗員が煩わしさを覚える虞を低減することができる。
【0056】
[第二の実施形態]
電子インナミラー装置100の第二の実施形態においては、
図6に示されているように、リアカメラ12は、車両50の後部50Aに設けられたリアスポイラ70の下側に車外に露出された状態にて設置されている。
図6において、64はリアウインドガラスを示し、72はリアスポイラ70に設けられたセンタブレーキランプを示している。
【0057】
リアスポイラ70の下側には、雨滴除去装置として機能するエアジェット装置74が、リアカメラ12に近接して設けられている。エアジェット装置74は、
図6には示されていないが、圧縮空気を生成する小型のコンプレッサ又は圧縮空気が充填された小型のエアタンクを含んでいる。
【0058】
エアジェット装置74は、
図5に示されているように、乗員により設定操作器30が操作されることによりエアジェット装置のスイッチがオンになると、ワイパECU20によって作動される。エアジェット装置74は、作動されると、リアカメラ12のレンズ12Aに対し圧縮空気を噴射することにより、リアカメラ12の後方の領域に存在する雨滴、特にレンズ12Aに付着する雨滴を除去するようになっている。なお、噴射される気体は空気以外の気体であってもよい。
【0059】
<第二の実施形態における通知制御プログラム>
図7は、第二の実施形態における通知制御プログラムの要部を示すフローチャートである。
図7に示されたフローチャートによる通知制御も、
図5には示されていないイグニッションスイッチがオンであるときにインナミラーECU10のCPUにより実行される。なお、第二の実施形態においては、ステップS10乃至S50及びS70は、上述の第一の実施形態のステップS10乃至S50及びS70とそれぞれ同様に実行される。また、第二の実施形態においては、
図7に示されたフローチャートに従って通知制御が実行されることにより、通知制御方法が実行される。
【0060】
第二の実施形態においては、インナミラーECU10のCPUは、ステップS50において、肯定判定をしたときには、本制御をステップS70へ進め、否定判定をしたときには、本制御をステップS65へ進める。
【0061】
ステップS65においては、CPUは、メータECU40へ指令信号を出力することにより、ディスプレイ42及びスピーカ44を使用して、エアジェット装置74によりリアカメラ12の後方の領域に存在する雨滴の除去が可能である旨を乗員に通知する。なお、通知は例えば「エアジェット装置によってリアカメラ後方の雨滴を除去できます」のような表現であってよい。
【0062】
第一及び第二の実施形態によれば、レインセンサ32が雨滴を検出していると判定され(S10)、又はフロントワイパ22が作動中であると判定されると(S20)、電子インナミラー12の作動モードが電子ミラーモードから光学ミラーモードへ変化したか否かが判定される(S30)。
【0063】
作動モードが電子ミラーモードから光学ミラーモードへ変化したと判定されると、第一の実施形態においては、予め設定された通知継続時間に亘り、リアワイパ26及び/又はリア洗浄装置28によりリアカメラ12に対し車両の後方の領域に存在する雨滴の除去が可能である旨が乗員に通知される(S40~S70)。第二の実施形態においては、予め設定された通知継続時間に亘り、エアジェット装置74によりリアカメラ12の後方の領域に存在する雨滴の除去が可能である旨が乗員に通知される(S40、S50、S65、S70)。
【0064】
よって、乗員はリアワイパ26などの雨滴除去装置による雨滴の除去が可能であることを認知することができる。従って、その後リアカメラ12に対し車両50の後方側の領域にてリヤウインドウガラス64の外面に雨滴が付着し、電子ミラー12が車両の後方の画像を正常に表示することができなくなっても、乗員は雨滴除去装置によって雨滴を除去することができる。よって、電子ミラーの作動モードが不必要に電子ミラーモードから光学モードへ切り替えられる虞れを低減することができる。
【0065】
また、リアカメラ12に対し車両の後方側の領域にてリヤウインドウガラス64の外面に雨滴が付着したときには、リヤウインドウガラスの外面に付着した雨滴を検出するレインセンサを要することなく、雨滴の付着を推定することができる。従って、例えばリアカメラ12に対し車両の後方側の領域にてリヤウインドウガラスの外面に付着した雨滴を検出するレインセンサは不要である。よって、リヤウインドウガラスの外面に付着した雨滴を検出するレインセンサが設けられる場合に比して、電子インナミラー装置100を低廉にすることができる。
【0066】
特に、第一の実施形態によれば、雨滴除去装置は、リアカメラ12に対し車両の後方の領域を含むリアウインドウガラスの外面を払拭するよう構成されたリアワイパ26及びカメラに対し車両の後方の領域を含むリアウインドウガラスの外面に洗浄液を噴射するよう構成されたリア洗浄装置28である。よって、リアワイパ及び/又はリア洗浄装置を作動させることにより、リアカメラに対し車両の後方の領域を含むリアウインドウガラスの外面に付着する雨滴を除去することができる。
【0067】
また、第二の実施形態によれば、雨滴除去装置は、リアカメラ12のレンズ12Aに気体を噴射するよう構成されたエアジェット装置74である。よって、エアジェット装置を作動させることにより、リアカメラのレンズに付着する雨滴を噴射された圧縮空気によって除去することができる。
【0068】
以上においては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0069】
例えば、上述の各実施形態においては、ディスプレイ42及びスピーカ44を使用して、リアワイパ26などの雨滴除去装置によりリアカメラ12に対し車両の後方の領域に存在する雨滴の除去が可能である旨が、視覚情報及び聴覚情報として乗員に通知される。しかし、雨滴の除去が可能である旨の通知は、視覚情報及び聴覚情報の一方のみにて行われてもよい。また、雨滴の除去が可能である旨の最初の通知は、視覚情報にて行われ、二回目の通知は、聴覚情報にて行われてもよい。また、雨滴の除去が可能である旨の最初の通知は、視覚情報及び聴覚情報の一方にて行われ、二回目の通知は、視覚情報及び聴覚情報の両方にて行われてもよい。
【0070】
また、上述の各実施形態においては、雨滴の除去が可能である旨の最初の通知は、ステップS50乃至S70において、予め設定された通知継続時間に亘り行われる。しかし、通知が開始されてから予め設定された通知継続時間が経過していなくても、乗員によるスイッチ操作により通知が解除されてもよい。
【0071】
また、上述の各実施形態においては、レインセンサ32が雨滴を検出していると判定したとき、又はフロントワイパ22が作動中であると判定したときに、車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定され、ステップS30が実行される。しかし、特にフロントワイパ22の動作モードが自動モードに設定されている場合には、レインセンサ32が雨滴を検出していると判定し且つフロントワイパ22が作動中であると判定したときに、車両の後部以外の位置に雨滴が存在すると推定され、ステップS30が実行されてもよい。
【0072】
更に、上述の第一実施形態においては、リアワイパ26及びリア洗浄装置28がリアカメラ用の雨滴除去装置として機能するようになっている。しかし、リアワイパ26及びリア洗浄装置28の一方が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…インナミラーECU、12…電子インナミラー、14…リアカメラ、16…切り替え装置、20…ワイパECU、26…リアワイパ、28…リア洗浄装置、30…設定操作器、32…レインセンサ、40…メータECU、42…ディスプレイ、44…スピーカ、50……車両、64…リアウインドウガラス、74…エアジェット装置、100…電子インナミラー装置