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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
H02K15/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022098697
(22)【出願日】2022-06-20
(65)【公開番号】P2024000124
(43)【公開日】2024-01-05
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】徳山 晶大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友大
(72)【発明者】
【氏名】磯部 正人
(72)【発明者】
【氏名】足立 博成
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-228435(JP,A)
【文献】特開2021-80844(JP,A)
【文献】特開平4-282017(JP,A)
【文献】特開2008-160946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0273536(US,A1)
【文献】中国実用新案第218868069(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102018106980(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角材の曲げ方向に回転する回転軸を有するホルダと、
前記平角材を前記ホルダと挟んで拘束するとともに前記曲げ方向に回転する前記回転軸を有するクランプと、
を備え、
前記クランプは、
前記平角材を前記ホルダとの間に挟んで拘束するフランジと、
前記フランジに接続し、前記ホルダに設けられた貫通孔を通るシャフトと、
前記シャフトの表面に形成されたコーティング膜と、
を有し、
前記コーティング膜及び前記シャフトの硬度は、前記ホルダの前記硬度よりも高い、
加工装置。
【請求項2】
前記コーティング膜の前記硬度は、前記シャフトの前記硬度よりも高い、
請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記シャフトは、前記貫通孔内を摺動する嵌合部と、前記貫通孔から突出した支持部と、を有し、
前記コーティング膜は、前記嵌合部に形成された、
請求項1または2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、平角材の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平角材を曲げるための加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-228435号公報
【文献】特開2003-013710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クランプシャフトとホルダとで平角材をクランプすることにより、平角材を曲げる加工装置において、シャフトにコーティング膜を形成することが知られている。シャフトやコーティング膜に比べて、ホルダの硬度が高いため、ホルダの摺動によって、シャフトが凝着し、加工装置が劣化する場合がある。そこで、耐久性の優れた加工装置が求められている。
【0005】
本開示の目的は、このような課題を解決するためになされたものであり、シャフトの凝着を抑制することができる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る加工装置は、平角材の曲げ方向に回転する回転軸を有するホルダと、前記平角材を前記ホルダと挟んで拘束するとともに前記曲げ方向に回転する前記回転軸を有するクランプと、を備え、前記クランプは、前記平角材を前記ホルダとの間に挟んで拘束するフランジと、前記フランジに接続し、前記ホルダに設けられた貫通孔を通るシャフトと、前記シャフトの表面に形成されたコーティング膜と、を有し、前記コーティング膜及び前記シャフトの硬度は、前記ホルダの前記硬度よりも高い。
【0007】
上記加工装置において、前記コーティング膜の前記硬度は、前記シャフトの前記硬度よりも高くてもよい。
【0008】
上記加工装置において、前記シャフトは、前記貫通孔内を摺動する嵌合部と、前記貫通孔から突出した支持部と、を有し、前記コーティング膜は、前記嵌合部に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、シャフトの凝着を抑制することができる加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る加工装置を例示した斜視図である。
図2】実施形態に係る加工装置のホルダ及びクランプを例示した斜視図である。
図3】実施形態に係る加工装置におけるホルダの貫通孔内のシャフト及びコーティング膜を例示した断面図である。
図4】実施形態に係る加工装置の動作を例示した図である。
図5】実施形態に係るコイルを例示した上面図である。
図6】比較例に係る加工装置におけるホルダの貫通孔内のシャフト及びコーティング膜を例示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本開示の好適な実施形態を示すものであって、本開示の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
(実施形態)
本実施形態に係る加工装置を説明する。図1は、実施形態に係る加工装置を例示した斜視図である。図2は、実施形態に係る加工装置のホルダ及びクランプを例示した斜視図であり、図2Aは、ホルダを示し、図2Bは、クランプを示す。図3は、実施形態に係る加工装置におけるホルダの貫通孔内のシャフト及びコーティング膜を例示した断面図である。図1図3に示すように、加工装置1は、ホルダ10及びクランプ20を備えている。加工装置1は、例えば、平角材60等のコイルの導線を曲げる加工を行う。
【0013】
ここで、加工装置1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。例えば、Z軸方向を鉛直方向とし、上方を+Z軸方向、下方を-Z軸方向とする。また、XY平面を水平面とする。なお、XYZ直交座標軸系は、説明の便宜のために導入されたものであり、実際の加工装置1が配置される方向を示すものではない。
【0014】
ホルダ10は、例えば、円盤状の形状を有している。ホルダ10は、上面に平面状のホルダ面11を有している。なお、ホルダ10は、ホルダ面11を有していれば、円盤状の形状に限らず、板状、半球状等でもよい。ホルダ10は、ホルダ面11にホルダ10を貫通する貫通孔12を有している。よって、ホルダ面11は、中心に貫通孔12が形成された円環状でもよい。貫通孔12の中心軸は、Z軸方向に延びている。
【0015】
クランプ20は、フランジ30及びシャフト40を有している。フランジ30及びシャフト40は、一体成形されてもよい。フランジ30は、例えば、円盤状の形状をしている。フランジ30は、下面に平面状のフランジ面31を有している。なお、フランジ30は、フランジ面31を有していれば、円盤状の形状に限らず、板状、半球状等でもよい。
【0016】
シャフト40は、例えば、丸棒状の形状を有している。シャフト40の一端は、フランジ30のフランジ面31に接続されている。シャフト40は、フランジ面31に直交している。よって、フランジ面31は、中心にシャフト40が接続された円環状でもよい。シャフト40の中心軸は、Z軸方向に延びている。
【0017】
シャフト40は、嵌合部41及び支持部42を有してもよい。嵌合部41は、支持部42に接続している。嵌合部41は、シャフト40の一端側、すなわち、シャフト40の+Z軸方向側の部分である。支持部42は、シャフト40の-Z軸方向側の部分である。嵌合部41は、貫通孔12内を摺動する。支持部42は、貫通孔12から突出している。嵌合部41の直径は、支持部42の直径よりも大きくてもよい。
【0018】
シャフト40は、ホルダ10に設けられた貫通孔12を通っている。例えば、シャフト40の嵌合部41は、貫通孔12内に嵌合される。フランジ面31とホルダ面11とは対向している。平角材60は、フランジ面31とホルダ面11との間に配置されている。シャフト40は、ホルダ10に対して、Z軸方向に移動する。シャフト40は、フランジ面31とホルダ面11との間の距離を変化させるように、Z軸方向に移動する。この場合には、嵌合部41は、貫通孔12内でZ軸方向に摺動する。
【0019】
また、シャフト40は、ホルダ10に対して、中心軸を回転軸として回転する。この場合には、嵌合部41は、貫通孔12内で回転軸の周りで回転する方向に摺動する。ホルダ10及びクランプ20は、一体となって、中心軸を回転軸として回転してもよい。
【0020】
シャフト40の表面にはコーティング膜50が形成されている。よって、クランプ20は、フランジ30及びシャフト40の他に、シャフト40の表面に形成されたコーティング膜50をさらに有している。コーティング膜50は、フランジ30には形成されず、シャフト40の全体の表面に形成されてもよいし、フランジ30及びシャフト40を含むクランプ20全体に形成されてもよい。また、コーティング膜50は、シャフト40の嵌合部41のみに形成され、シャフト40の支持部42に形成されなくてもよい。コーティング膜50を必要とする部分だけに形成することにより、材料及び処理時間等のコストを低減することができる。
【0021】
コーティング膜50及びシャフト40の硬度は、ホルダ10の硬度よりも高い。また、コーティング膜50の硬度は、シャフト40の硬度よりも高くてもよい。コーティング膜50、シャフト40及びホルダ10における硬度の相互の関係は、比較例とともに後述する。
【0022】
次に、加工装置1の動作を説明する。図4は、実施形態に係る加工装置1の動作を例示した図であり、図4Aは、平角材60の配置を示し、図4Bは、平角材60のクランプ及び曲げを示し、図4Cは、平角材60のアンクランプを示す。図4A図4B及び図4Cの上段は、下段におけるA-A面の断面を示す。
【0023】
図4Aに示すように、平角材60を加工装置1に配置する。具体的には、フランジ30のフランジ面31と、ホルダ10のホルダ面11との間に平角材60を通す。平角材60の曲げ前の高さHは、例えば、高さH1である。平角材60の曲げ前の幅Wは、例えば、幅W1である。平角材60の高さHは、ホルダ面11上におけるZ軸方向の長さである。平角材60の幅Wは、ホルダ面11上における水平方向の長さである。
【0024】
次に、図4Bに示すように、クランプ20に-Z軸方向の力Fを加える。これにより、平角材60をフランジ面31とホルダ面11との間でクランプする。このように、クランプ20は、平角材60をホルダ10と挟んで拘束する。具体的には、フランジ30は、平角材60をホルダ10との間で挟んで拘束する。この際に、シャフト40は、平角材60をクランプするために、貫通孔12内で-Z軸方向に摺動する。平角材60のクランプ後の高さHは、例えば、高さH2に変化する。平角材60の高さH2は、高さH1よりも小さい。次に、平角材60をフランジ面31とホルダ面11との間でクランプしたまま、ホルダ10及びクランプ20は、回転軸の周りで回転する。これにより、加工装置1は、平角材60を回転軸の周りで曲げる。このように、ホルダ10及びクランプ20は、平角材60の曲げ方向に回転する回転軸を有している。よって、ホルダ10及びクランプ20は、平角材60の曲げ方向に回転可能である。
【0025】
次に、図4Cに示すように、クランプ20を+Z軸方向に移動させる。これにより、加工装置1は、平角材60をアンクランプする。そして、加工装置1は、曲げ加工を行う平角材60の次の部分をホルダ面11とフランジ面31との間に送り出す。加工装置1は、このような動作を繰り返すことにより、平角材60を曲げる加工を行う。図5は、実施形態に係るコイルを例示した上面図である。図5に示すように、加工装置1は、例えば、平角材60の曲げ加工を繰り返し、鉛直方向にらせん状に積層させることにより、コイル61を形成する。
【0026】
次に、本実施形態の効果を説明する前に、比較例に係る加工装置を説明する。そして、比較例と対比させながら、本実施形態の効果を説明する。
【0027】
平角材60からコイル61等を生産する設備である巻き線機等の加工装置は、生産性の向上のため、高速摺動を要求される。高速摺動を円滑にする機械油をコイル61へ付着させると、後工程でコイル61に悪影響を及ぼすことが考えられる。したがって、このような加工装置は、機械油を使用していない。そこで、機械油を使用しない無潤滑で高速摺動するシャフト40の凝着対策として、シャフト40の表面に、低摩擦係数(μ)のコーティング膜50を形成している。
【0028】
しかしながら、コーティング膜50の耐久性が不十分の場合には、コーティング膜50が脱落する。そうすると、ホルダ10とシャフト40との間で金属摺動となる。これにより、ホルダ10とシャフト40との間で凝着が発生し、破損が避けられない。よって、加工装置の耐久性が低下することになる。
【0029】
図6は、比較例に係る加工装置におけるホルダの貫通孔内のシャフト及びコーティング膜を例示した断面図であり、図6Aは、コーティング膜が摩耗した場合を示し、図6Bは、コーティング膜が剥離した場合を示す。図6A及び図6Bに示すように、ホルダ10aとシャフト40aとの間で発生する凝着の原因としては、コーティング膜50aの摩耗と剥離があげられる。具体的には、シャフト40aの母材及びコーティング膜50aの硬度がホルダ10aの硬度よりも低い場合には、ホルダ10aとの摺動によりシャフト40aのコーティング膜50aが摩耗及び剥離し、金属摺動となることで凝着が発生する。比較例の加工装置の場合には、ホルダ10a、コーティング膜50a及びシャフト40aの硬度の関係は、下記の(1)式の関係となっている。
【0030】
硬度(ホルダ)>硬度(コーティング膜)≧硬度(シャフト) (1)
【0031】
この関係は、一般的な加工点における部品の硬度関係にも適用することができる。すなわち、比較例の加工装置においては、ホルダ10a等の摺動相手部品、コーティング膜50a及びシャフト40a等のコーティングされた部品の硬度は、以下の(2)式となっている。
【0032】
硬度(摺動相手部品)>硬度(コーティング膜)≧硬度(コーティングされた部品)
(2)
【0033】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の加工装置1においては、比較例と異なり、コーティング膜50及びシャフト40の硬度を、ホルダ10の硬度よりも大きくする。すなわち、本実施形態では、コーティング膜50、シャフト40及びホルダ10の硬度の関係は、下記の(3)式の関係となっている。
【0034】
硬度(コーティング膜)≧硬度(シャフト)>硬度(ホルダ) (3)
【0035】
これにより、摺動外力でホルダ10が変形するため、凝着を抑制することができる。この関係は、一般的な加工点における部品の硬度関係にも適用することができる。すなわち、本実施形態の加工装置1を一般化し、コーティング膜50、シャフト40等のコーティングされた部品、及び、ホルダ10等の摺動相手部品の硬度の関係は、以下の(4)式を満たすようにしてもよい。
【0036】
硬度(コーティング膜)≧硬度(コーティングされた部品)>硬度(摺動相手部品)
(4)
【0037】
また、シャフト40の凝着の原因は、上述したように、摩耗及び剥離の2点が考えられるが、剥離よりも摩耗による凝着への進展懸念が大きい。特に、摺動が支配的な動作の場合には、剥離よりも摩耗による凝着への進展懸念が大きい。このため、コーティング膜50の硬度を、シャフト40の硬度よりも高くすることが望ましい。すなわち、下記の(5)及び(6)式を満たすようにすることが望ましい。
【0038】
硬度(コーティング膜)>硬度(シャフト) (5)
硬度(コーティング膜)>硬度(コーティングされた部品) (6)
【0039】
本実施形態の加工装置1は、このような対策を行うことで、耐久性を向上させ、シャフトの凝着を抑制することができる。
【0040】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。また、実施形態における各構成は、適宜、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 加工装置
10、10a ホルダ
11 ホルダ面
12 貫通孔
20 クランプ
30 フランジ
31 フランジ面
40、40a シャフト
41 嵌合部
42 支持部
50、50a コーティング膜
60 平角材
61 コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6