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特許7582273電池診断システム、それを備えた車両、および、電池診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電池診断システム、それを備えた車両、および、電池診断方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20241106BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20241106BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241106BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241106BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20241106BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20241106BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/42 P
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
B60L3/00 S
B60L58/10
G01R31/378
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022116349
(22)【出願日】2022-07-21
(65)【公開番号】P2023134324
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2022039154
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 娜
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-055044(JP,A)
【文献】特開2021-111584(JP,A)
【文献】特開平10-142268(JP,A)
【文献】特開2005-249582(JP,A)
【文献】特表2010-539642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0088992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 10/42
H02J 7/00
B60L 3/00
B60L 58/10
G01R 31/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電圧を測定するセンサと、
充放電期間と充放電休止期間との両方を含む診断対象期間中に前記センサにより測定された電圧の時間変化を示す電圧カーブに基づいて、前記二次電池が正規品であるかどうかを診断するプロセッサとを備え
前記プロセッサは、前記充放電期間中の第1タイミングにおける前記電圧カーブの変化の割合が、前記診断対象期間中における前記正規品の電圧の時間変化を示す正規カーブに基づいて定められる第1基準範囲内であり、かつ、前記充放電休止期間中の第2タイミングにおける前記電圧カーブの変化の割合が、前記正規カーブに基づいて定められる第2基準範囲内である場合に、前記二次電池が正規品であると診断する、電池診断システム。
【請求項2】
二次電池の電圧を測定するセンサと、
充放電期間と充放電休止期間との両方を含む診断対象期間中に前記センサにより測定された電圧の時間変化を示す電圧カーブに基づいて、前記二次電池が正規品であるかどうかを診断するプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、前記電圧カーブと、ノイズ干渉を模擬して作成された、前記診断対象期間中における前記正規品の電圧の時間変化を示す正規カーブとの比較結果に基づいて、前記二次電池が正規品であるかどうかを診断する、電池診断システム。
【請求項3】
二次電池の電圧を測定するセンサと、
充放電期間と充放電休止期間との両方を含む診断対象期間中に前記センサにより測定された電圧の時間変化を示す電圧カーブに基づいて、前記二次電池が正規品であるかどうかを診断するプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、前記充放電期間中における前記電圧カーブと前記診断対象期間中における前記正規品の電圧の時間変化を示す正規カーブとの複数回の比較結果と、前記充放電休止期間中における前記電圧カーブと前記正規カーブとの複数回の比較結果とに基づいて、前記二次電池が正規品であるかどうかを診断する、電池診断システム。
【請求項4】
警告を発する警告装置をさらに備え、
前記プロセッサは、前記二次電池が前記正規品でないと診断された場合、警告を発するように前記警告装置を制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池診断システム。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の電池診断システムを備える、車両。
【請求項6】
充放電期間と充放電休止期間との両方を含む診断対象期間中にセンサにより測定された二次電池の電圧の時間変化を示す電圧カーブをコンピュータが取得するステップと、
前記電圧カーブに基づいて、前記二次電池が正規品であるかどうかを前記コンピュータにより診断するステップとを含み、
前記診断するステップは、前記充放電期間中の第1タイミングにおける前記電圧カーブの変化の割合が、前記診断対象期間中における前記正規品の電圧の時間変化を示す正規カーブに基づいて定められる第1基準範囲内であり、かつ、前記充放電休止期間中の第2タイミングにおける前記電圧カーブの変化の割合が、前記正規カーブに基づいて定められる第2基準範囲内である場合に、前記二次電池が正規品であると診断するステップを含む、電池診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池診断システム、それを備えた車両、および、電池診断方法に関し、より特定的には、二次電池を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池パックが搭載された車両の普及が進んでいる。正規の製造業者以外によって製造された、電池パックの模倣品が流通する可能性がある。また、正規品の電池パックに対して不正な改造が行われる可能性もある。模倣品、不正改造品などの非正規品には、粗悪な二次電池が使用されていたり、制御回路に不備があったりする可能性がある。そのため、電池パックが正規品であるかどうかを診断する技術が提案されている。
【0003】
たとえば特開2012-174367号公報(特許文献1)に開示された電池識別装置は、第1特性値と第2特性値とに基づいて、組電池が正規品であるかどうかを監視する。第1特性値とは、車両の走行運転が終了したとき、または、組電池への充電が終了したときに複数の電池セルの各々から取得される出力電圧値である。第2特性値とは、その後、最初に、車両の走行運転が開始されるとき、または、組電池への充電が開始されるときに複数の電池セルの各々から取得される出力電圧値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-174367号公報
【文献】特開2012-174487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池が正規品であるかどうかを高精度に診断する技術に対する要望が常に存在する。本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的の1つは、二次電池が正規品であるかどうかを高精度に診断することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示のある局面に係る電池診断システムは、二次電池の電圧を測定するセンサと、充放電期間と充放電休止期間との両方を含む診断対象期間中にセンサにより測定された電圧の時間変化を示す電圧カーブに基づいて、二次電池が正規品であるかどうかを診断するプロセッサとを備える。
【0007】
(2)プロセッサは、電圧カーブと、診断対象期間中における正規品の電圧の時間変化を示す正規カーブとの比較結果に基づいて、二次電池が正規品であるかどうかを診断する。
【0008】
(3)プロセッサは、充放電期間中の第1タイミングにおける電圧カーブ上の電圧が、正規カーブに基づいて定められる第1電圧範囲内であり、かつ、充放電休止期間中の第2タイミングにおける電圧カーブ上の電圧が、正規カーブに基づいて定められる第2電圧範囲内である場合に、二次電池が正規品であると診断する。
【0009】
(4)プロセッサは、充放電期間中の第1タイミングにおける電圧カーブの変化の割合が、正規カーブに基づいて定められる第1基準範囲内であり、かつ、充放電休止期間中の第2タイミングにおける電圧カーブの変化の割合が、正規カーブに基づいて定められる第2基準範囲内である場合に、二次電池が正規品であると診断する。
【0010】
(5)プロセッサは、電圧カーブと、ノイズ干渉を模擬して作成された正規カーブとの比較結果に基づいて、二次電池が正規品であるかどうかを診断する。
【0011】
(6)プロセッサは、充放電期間中における電圧カーブと正規カーブとの複数回の比較結果と、充放電休止期間中における電圧カーブと正規カーブとの複数回の比較結果とに基づいて、二次電池が正規品であるかどうかを診断する。
【0012】
(7)電池診断システムは、警告を発する警告装置をさらに備える。プロセッサは、二次電池が正規品でないと診断された場合、警告を発するように警告装置を制御する。
【0013】
(8)本開示の他の局面に係る車両は、上記の電池診断システムを備える。
【0014】
(9)本開示のさらに他の局面に係る電池診断方法は、充放電期間と充放電休止期間との両方を含む診断対象期間中にセンサにより測定された電圧の時間変化を示す電圧カーブをコンピュータが取得するステップと、電圧カーブに基づいて、二次電池が正規品であるかどうかをコンピュータにより診断するステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、二次電池が正規品であるかどうかを高精度に診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1に係る電池診断システムが搭載された車両の全体構成を概略的に示す図である。
図2】バッテリの構造を概略的に示す斜視図である。
図3】セルの構成の一例を示す透視斜視図である。
図4】診断対象期間の第1の例を示す図である。
図5】診断対象期間の第2の例を示す図である。
図6】正規品の電圧変化カーブと非正規品の電圧変化カーブとを示す図である。
図7】実施の形態1におけるバッテリの正規品の診断手法を説明するための図である。
図8】バッテリの内部抵抗のインピーダンス成分を説明するための図である。
図9】実施の形態1における電池診断処理を示すフローチャートである。
図10】実施の形態2におけるバッテリの正規品の診断手法を説明するための図である。
図11】実施の形態2における電池診断処理を示すフローチャートである。
図12】ノイズを説明するための概念図である。
図13】電圧変化カーブへのノイズ干渉の影響を説明するための図である。
図14】ノイズ干渉が発生した場合の正規カーブと非正規品の電圧変化カーブとを示す図である。
図15】実施の形態3における電池診断処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0018】
以下の実施の形態では、本開示に係る電池診断システムが車両に搭載された例について説明する。しかし、本開示に係る電池診断システムの用途は車両用に限定されず、たとえば定置用であってもよい。
【0019】
[実施の形態1]
<システム構成>
図1は、実施の形態1に係る電池診断システムが搭載された車両の全体構成を概略的に示す図である。車両1は、本実施の形態では電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。ただし、車両1の種類は、電池パックが搭載される車両であれば、これに限定されない。車両1は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)であってもよいし、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であってもよいし、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)であってもよい。
【0020】
車両1は、インレット10と、AC/DCコンバータ20と、充電リレー(CHR:Charge Relay)30と、電池パック40と、電力制御装置(PCU:Power Control Unit)51と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)52と、警告装置60と、統合電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)70とを備える。電池パック40は、バッテリ41と、監視ユニット42と、電池ECU43とを備える。
【0021】
インレット10は、充電ケーブル91の先端に設けられた充電コネクタを挿入可能に構成されている。車両1と、車両1の外部に設置された充電装置92とが充電ケーブル91を介して電気的に接続される。これにより、充電装置92から供給される電力を用いてバッテリ41が充電される(プラグイン充電)。
【0022】
AC/DCコンバータ20は、インレット10と充電リレー30との間に電気的に接続されている。AC/DCコンバータ20は、充電装置92からインレット10を介して供給される交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を充電リレー30に出力する。また、AC/DCコンバータ20は、バッテリ41(またはPCU51)から充電リレー30を介して供給される直流電力を交流電力に変換し、その交流電力をインレット10に出力する。
充電リレー30は、AC/DCコンバータ20とバッテリ41とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。充電リレー30は、統合ECU70からの制御信号に応じて開放/閉成される。
【0023】
バッテリ41は、モータジェネレータ52を駆動するための電力を蓄え、PCU51を通じてモータジェネレータ52へ電力を供給する。また、バッテリ41は、プラグイン充電時にはAC/DCコンバータ20から出力された電力により充電される。さらに、バッテリ41は、モータジェネレータ52の発電時(回生発電時など)にもPCU51を通じて発電電力を受けて充電される。
【0024】
監視ユニット42は、電圧センサ421と、電流センサ422と、温度センサ423とを含む。電圧センサ421は、バッテリ41(より詳細には各セル)の電圧Vを検出する。電流センサ422は、バッテリ41に入出力される電流Iを検出する。温度センサ423は、バッテリ41(より詳細には特定のセル)の温度Tを検出する。各センサは、その検出結果を示す信号を電池ECU43に出力する。電圧センサ421は、本開示に係る「センサ」に相当する。
【0025】
電池ECU43は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ431と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリ432と、各種信号を入出力する入出力ポート(図示せず)とを含む。電池ECU43は、監視ユニット42の各センサからの信号の入力ならびにメモリ432に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、統合ECU70と協調しながらバッテリ41を管理する。本実施の形態において電池ECU43により実行される主要な処理としては、バッテリ41が正規品であるかどうかを診断する「電池診断処理」が挙げられる。電池ECU43による電池診断処理については後述する。
【0026】
PCU51は、たとえば、インバータと、コンバータ(いずれも図示せず)とを含む。PCU51は、統合ECU70からの制御信号に従って、バッテリ41とモータジェネレータ52との間で双方向の電力変換を実行する。
【0027】
モータジェネレータ52は、たとえば永久磁石がロータ(図示せず)に埋設された三相交流回転電機である。モータジェネレータ52は、バッテリ41からの供給電力を用いて駆動軸を回転させる。また、モータジェネレータ52は回生制動によって発電することも可能である。モータジェネレータ52によって発電された交流電力は、PCU51により直流電力に変換されてバッテリ41に充電される。
【0028】
警告装置60は、たとえば、インストルメントパネルに点灯される警告灯である。警告装置60は、警告メッセージを表示可能なナビゲーションシステムのディスプレイであってもよいし、警告音を発生可能なスピーカであってもよい。
【0029】
統合ECU70は、電池ECU43と同様に、プロセッサ701と、メモリ702と、入出力ポート(図示せず)とを含む。統合ECU70は、車両1に設けられた各センサからの信号の入力ならびにメモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両1が所望の状態となるように機器類(AC/DCコンバータ20、充電リレー30およびPCU51)を制御する。統合ECU70は、たとえば、AC/DCコンバータ20および/またはPCU51を制御することによってバッテリ41の充放電を制御する。
【0030】
電池ECU43に代えて統合ECU70が電池診断処理を実行してもよい。また、電池ECU43が電池診断処理のうちの一部の処理を実行し、統合ECU70が残りの処理を実行してもよい。電池ECU43のプロセッサ431および統合ECU70のプロセッサ701のうちの一方または両方が本開示に係る「プロセッサ」に相当する。
【0031】
<電池構成>
図2は、バッテリ41の構造を概略的に示す斜視図である。バッテリ41は、複数のスタック410(モジュールまたはブロックとも呼ばれる)を含む組電池である。複数のスタック410は、互いに直列接続されていてもよいし並列接続されていてもよい。図1には複数のスタック410うちの1つが代表的に示されている。
【0032】
スタック410は、複数のセル81と、複数の樹脂枠82と、一対のエンドプレート83と、一対の拘束バンド84とを含む。スタック410では、複数のセル81と複数の樹脂枠82とが積層されることにより積層体が形成されている。以下では、積層体の高さ方向をHGと記載し、積層体の長さ方向(積層方向)をLNと記載し、積層体の幅方向をWDと記載する。
【0033】
複数のセル81の各々は、本実施の形態ではリチウムイオン電池である。しかし、各セル81は、ニッケル水素電池などの他の二次電池であってもよい。スタック410に含まれるセルの数は特に限定されるものではない。各セル81の構成は共通である。セル81の構成については図3にて説明する。
【0034】
複数の樹脂枠82の各々は、積層方向に隣り合う2つのセル81の間に配置されている。一対のエンドプレート83は、積層体の積層方向の一方端と他方端とに配置されている。つまり、エンドプレート83は、積層体を積層方向に両側から挟み込むように配置されている。一対の拘束バンド84は、樹脂枠82の上面と下面とに配置されている。拘束バンド84は、積層体を挟み込んだ状態の一対のエンドプレート83を互いに拘束する。
【0035】
図3は、セル81の構成の一例を示す透視斜視図である。前述のように、この例ではセル81はリチウムイオン電池である。
【0036】
セル81は、略直方体形状を有する角型セルである。セル81のケース上面は蓋体811によって封止されている。蓋体811には、正極端子812および負極端子813が設けられている。正極端子812および負極端子813の各々の一方端は、蓋体811から外部に突出している。正極端子812および負極端子813の各々の他方端は、ケース内部において、内部正極端子および内部負極端子(いずれも図示せず)にそれぞれ電気的に接続されている。図示しないが、隣り合う2つのセル81は、バスバーにより互いに電気的に接続されている。
【0037】
ケース内部には電極体814が収容されている。電極体814は、たとえば、正極815と負極816とがセパレータ817を介して積層され、さらに筒状に捲回されることにより形成されている。電解液は、正極815、負極816およびセパレータ817等に保持されている。なお、電極体814として捲回体に代えて積層体を採用することも可能である。
【0038】
正極815、負極816、セパレータ817および電解液には、リチウムイオン二次電池の正極、負極、セパレータおよび電解液として従来公知の構成および材料を用いることができる。一例として、正極815は、正極合剤であるNCM(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)と、正極箔であるアルミニウム(Al)箔とを含む。負極816は、負極合剤である黒鉛(C)と、負極箔である銅(Cu)箔とを含む。セパレータには、ポリオレフィン(たとえばポリエチレン、ポリプロピレン)を用いることができる。電解液は、有機溶媒(たとえばDMC(dimethyl carbonate)とEMC(ethyl methyl carbonate)とEC(ethylene carbonate)との混合溶媒)と、リチウム塩(たとえばLiPF)と、添加剤(たとえばLiBOB(lithium bis(oxalate)borate)またはLi[PF(C])とを含む。
【0039】
<電圧変化カーブ>
以上のように構成された車両1において、バッテリ41は、その使用に伴い、または時間の経過とともに劣化する。バッテリ41の劣化が相当程度進んだ場合には、バッテリ41を新たなバッテリ(または劣化が進行していない中古のバッテリ)に交換することが考えられる。その際、模倣品または不正改造品などの非正規品のバッテリに交換される可能性がある。非正規品のバッテリに交換された場合、車両1の各種性能が低下し得る。したがって、バッテリ41が正規品であるかどうかを高精度に診断することが求められる。
【0040】
そこで、本実施の形態においては、以下に説明する特定の期間中に測定される「電圧変化カーブ」を用いて、バッテリ41が正規品であるかどうかが診断される。この期間を「診断対象期間」と記載する。なお、前述のように、複数のセル81の構成は互いに等しいため、どのセル81の電圧を測定して電圧変化カーブを取得してもよい。以下では、簡単のためセルを区別せず、バッテリ41の電圧変化カーブと記載する。
【0041】
<診断対象期間>
図4は、診断対象期間の第1の例を示す図である。図5は、診断対象期間の第2の例を示す図である。図4および図5において、横軸は経過時間を表す。縦軸は、電圧センサ421により測定された電圧Vを表す。後述する図6図7図10図13図14に関しても同様である。
【0042】
図4に示すように、診断対象期間は、バッテリ41が放電される放電期間と、バッテリ41の充放電が休止される休止期間とを含む。放電期間の長さは数秒間~数十秒間であってもよい。休止期間の長さは数十秒間であってもよい。たとえば、車両1が登坂走行後、信号待ちのために停止した状態が一定時間継続した場合に、図4に示すような電圧変化カーブL1が測定される。
【0043】
あるいは、図5に示すように、診断対象期間は、バッテリ41が充電される充電期間と、バッテリ41の充放電が休止される休止期間とを含んでもよい。充電期間の長さは数秒間~数十秒間であってもよい。休止期間の長さは数十秒間であってもよい。たとえば、車両1が降坂走行後、信号待ちのために停止した状態が一定時間継続した場合に、図5に示すような電圧変化カーブL2が測定される。車両1のプラグイン充電時にも充電を一旦休止することで、同様の電圧変化カーブL2を測定できる。
【0044】
診断対象期間中に測定された電圧変化カーブL1またはL2は、電池ECU43のメモリ432に格納される。そして、電圧変化カーブL1またはL2と、バッテリ41の正規品から予め取得された電圧カーブとが比較される。以下、正規品の電圧変化カーブを「正規カーブ」とも略す。
【0045】
図6は、正規カーブと非正規品の電圧変化カーブとを示す図である。図6に示すように、バッテリ41の正規品と非正規品との間では電圧変化カーブの形状が異なる。したがって、電圧変化カーブL1(またはL2)と正規カーブとを比較することによって、バッテリ41が正規品か非正規品かを診断可能である。すなわち、電圧変化カーブL1が正規カーブと一致する場合、バッテリ41が正規品と診断できる。一方、電圧変化カーブL1が正規カーブと一致しない場合、バッテリ41は非正規品と診断できる。
【0046】
正規カーブは(SOC,電流I)の組み合わせ毎に準備することが望ましい。たとえば、初期条件でのSOCが所定量ずつ異なり、かつ、電流Iが所定値ずつ異なる条件下で電圧変化を測定することで、多数の正規カーブが準備される。多数の正規カーブは、この例では、電池ECU43のメモリ432に格納されている。電池ECU43は、電圧変化カーブL1の比較対象とされる正規カーブを(SOC,電流I)の組み合わせに応じて選択する。
【0047】
図7は、実施の形態1におけるバッテリ41の正規品の診断手法を説明するための図である。図7では、図4に示した電圧変化カーブL1を例に説明するが、図5に示した電圧変化カーブL2によっても同様に診断できる。
【0048】
正規品であっても一定程度の電圧ばらつきが生じ得る。したがって、正規カーブを含む電圧範囲VRが予め設定される。電圧範囲VRの上限電圧をULで示し、下限電圧をLLで示す。実施の形態1では、電圧変化カーブL1が電圧範囲VR内であるかどうかが判定される。より詳細には、放電期間中の少なくとも1回の電圧と、休止期間中の少なくとも1回の電圧とが用いられる。
【0049】
図7に示す例では、放電期間中の時刻t11(本開示に係る「第1タイミング」に相当)における電圧V(t11)が上限電圧ULと下限電圧LLとの間の第1電圧範囲内であるかが判定されるとともに、休止期間中の時刻t21(本開示に係る「第2タイミング」に相当)における電圧V(t21)が上限電圧と下限電圧LLとの間の第2電圧範囲内であるかが判定される。
【0050】
ある電圧変化カーブL1Aについては、電圧V(t11)が第1電圧範囲の上限電圧ULを超えており、かつ、電圧V(t21)が第2電圧範囲の上限電圧ULを超えている。この場合、電圧変化カーブL1Aからはバッテリ41が非正規品であると診断される。これに対し、他の電圧変化カーブL1Bについては、電圧V(t11)が第1電圧範囲内であり、かつ、電圧V(t21)が第2電圧範囲内である。この場合、電圧変化カーブL1Bからはバッテリ41が正規品であると診断される。
【0051】
なお、ここでは理解を容易にするため、放電期間中の1回の電圧値と休止期間中の1回の電圧値とに基づく診断が実施される例について説明した。しかし、放電期間中の複数回の電圧値と休止期間中の複数回の電圧値とに基づいて診断が実施されてもよい。複数回の電圧値に基づいて診断することにより、診断精度を向上させることができる。
【0052】
<内部抵抗のインピーダンス成分>
本実施の形態では、放電期間中の電圧値および休止期間中の電圧値の両方が用いられる。その理由について説明する。
【0053】
図8は、バッテリ41の内部抵抗のインピーダンス成分を説明するための図である。図6には、バッテリ41(各セル81)の正極、負極およびセパレータの等価回路図の一例が示されている。バッテリ41のインピーダンス成分は、直流抵抗RDCと、反応抵抗Rcと、拡散抵抗Rdとに分類できる。
【0054】
直流抵抗RDCとは、正極と負極との間でのリチウムイオンおよび電子の移動に関連するインピーダンス成分である。直流抵抗RDCは、バッテリ41に高負荷が印加された場合(高電圧が印加されたり大電流が流れたりした場合)の電解液の塩濃度分布等の偏りによる増加する。直流抵抗RDCは、等価回路図において、正極の活物質抵抗Ra1、負極の活物質抵抗Ra2およびセパレータの電解液抵抗R3として表される。
【0055】
反応抵抗Rcとは、電解液と活物質界面との界面(正極活物質および負極活物質の表面)における電荷の授受(電荷移動)に関連するインピーダンス成分である。反応抵抗Rcは、高SOC状態のバッテリ41が高温環境下にある場合に活物質/電解液界面に被膜が成長することなどにより増加する。反応抵抗Rcは、等価回路図において、正極の抵抗成分Rc1および負極の抵抗成分Rc2として表される。
【0056】
拡散抵抗Rdとは、電解液中での塩または活物質中の電荷輸送物質の拡散に関連するインピーダンス成分である。拡散抵抗Rdは、高負荷印加時の活物質割れなどにより増加する。拡散抵抗Rdは、正極に発生する平衡電圧Veq1と、負極に発生する平衡電圧Veq2と、セル内に発生する塩濃度過電圧Vov3(セパレータ内で活物質の塩濃度分布が生じることに起因する過電圧)とから定まる。
【0057】
電圧センサ421により測定される電圧V(CCV:Closed Circuit Voltage)と、OCV(Open Circuit Voltage)と、電流Iと、上記の各インピーダンス成分RDC,Rc,Rdと、分極電圧ΔVpとの間には、下記の関係式(1)が成立する。
V=OCV-I×(RDC+Rc+Rd)-ΔVp ・・・(1)
【0058】
前述のように、電圧変化カーブL1と正規カーブとは(SOC,電流I)の組み合わせが等しいもの同士が比較される。また、SOCとOCVとの間には対応関係が存在する。よって、電圧変化カーブL1と正規カーブとの間で、式(1)中のOCVおよび電流Iの違いは十分に小さいと近似してよい。
【0059】
放電期間中に測定される電圧Vには、各インピーダンス成分RDC,Rc,Rdと分極電圧ΔVpとが反映されている。放電期間中には、各インピーダンス成分RDC,Rc,Rdによる電圧降下量の方が分極電圧ΔVpよりも顕著に大きい。よって、放電期間中に測定された電圧V(t11)を正規カーブ上の対応する電圧(第1電圧範囲)と比較することは、診断対象のバッテリ41と正規品との間で、主に、各インピーダンス成分RDC,Rc,Rdを比較することに相当する。
【0060】
一方、休止期間中はI=0であるため、休止期間中に測定される電圧Vには、分極電圧ΔVpが反映されている。よって、休止期間中に測定された電圧V(t21)を正規カーブ上の対応する電圧(第2電圧範囲)と比較することは、診断対象のバッテリ41と正規品との間で分極電圧ΔVpを比較することに相当する。
【0061】
正規品と非正規品との間では、仕様が異なり、抵抗RDC,Rc,Rdも分極電圧ΔVpも異なる。したがって、放電期間中に測定される電圧変化カーブ上の電圧Vと、正規カーブ上の対応する電圧と比較することで、バッテリ41が正規品かどうかを診断できる。特に、抵抗RDC,Rc,Rdおよび分極電圧ΔVpの両方を比較することによって、診断対象のバッテリ41が正規品であるかどうかを高精度に診断できる。
【0062】
<電池診断フロー>
図9は、実施の形態1における電池診断処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、予め定められた条件成立時(たとえば電池パック40が交換された場合)に、メインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。各ステップは、電池ECU43によるソフトウェア処理により実現されるが、電池ECU43内に作製されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0063】
このフローチャートでは、バッテリ41に含まれる複数のスタック410のうちのいずれか1つのスタック410が診断対象とされる。当該スタック以外のスタック410に対しても同様の処理を実行することで、2以上のスタック410も診断可能である。
【0064】
S101において、電池ECU43は、図4または図5にて説明した診断対象期間(たとえば、数秒間~数十秒間の放電期間と、それに続く数十秒間の休止期間)が経過したかどうかを判定する。電池ECU43は、電圧センサ421から電圧Vを逐次取得しており、取得された電圧V(すなわち、電圧Vの時系列データ)をメモリ432に一時的に格納している。診断対象期間が経過していない場合(S101においてNO)、電池ECU43は、電圧Vの一時的な格納を継続する。この場合、予め定められた記憶容量を超えた分の古い電圧Vの時系列データはメモリ432から消去される。一方、診断対象期間が経過した場合(S101においてYES)、電池ECU43は、診断対象期間中の電圧Vの時系列データを消去することなく保持しておく(S102)。
【0065】
S103において、電池ECU43は、保持された電圧Vの時系列データ(電圧変化カーブ)の中から、充放電期間中(充電期間中または放電期間中)の所定タイミングにおける電圧V1を取得する。図7の例では、時刻t11における電圧V(t11)が電圧V1に相当する。なお、ここでの所定タイミングとしては、たとえば、充放電開始時刻t10からX秒が経過された時刻のように事前の実験結果に基づいて定めることができる。
【0066】
S104において、電池ECU43は、保持された電圧Vの時系列データの中から、休止期間中の所定タイミングにおける電圧V2を取得する。図7の例では、時刻t21における電圧V(t21)が電圧V2に相当する。ここでの所定タイミングは、たとえば休止開始時刻(充放電停止時刻)t20からY秒が経過された時刻のように定めることができる。YはXと同じであってもよいし、異なってもよい。
【0067】
S105において、電池ECU43は、電圧V1が第1電圧範囲内であるかどうかを判定する。また、S106において、電池ECU43は、電圧V2が第2電圧範囲内であるかどうかを判定する。前述のように、正規カーブは(SOC,電流I)の組み合わせに応じて選択される。よって、第1電圧範囲も第2電圧範囲も(SOC,電流I)の組み合わせに応じて変わり得る。
【0068】
電圧V1が第1電圧範囲内であり、かつ、電圧V2が第2電圧範囲内である場合(S105においてYESかつS106においてYES)、電池ECU43は、バッテリ41が正規品であると診断する(S107)。
【0069】
これに対し、電圧V1が第1電圧範囲内でない場合(S105においてNO)、または、電圧V2が第2電圧範囲内でない場合(S106においてNO)、電池ECU43は、バッテリ41が非正規品であると診断する(S108)。この場合、電池ECU43は、統合ECU70と協調して動作することで、警告灯が点灯したり、警告メッセージが表示されたり、警告音が発生したりするように、警告装置60を制御する(S109)。電池ECU43は、統合ECU70と協調して動作することで車両1の走行を禁止してもよい。
【0070】
以上のように、実施の形態1においては、充放電期間と休止期間との両方を含む診断対象期間中に電圧センサ421により測定された電圧変化カーブ(電圧Vの時系列データ)の電圧値に基づいて、バッテリ41が正規品であるかどうかが診断される。充放電期間および休止期間の両方における電圧に基づいて診断が実施されるため、バッテリ41の仕様の違いを精確に検出できる。よって、実施の形態1によれば、バッテリ41が正規品であるかどうかを高精度に診断できる。
【0071】
なお、図7での説明と同様に、図8に示すフローチャートにおいても、充放電期間中に測定された複数回の電圧V1と、休止期間中に測定された複数回の電圧V2とに基づいて、正規品/非正規品の診断が実施されてもよい。その場合、電圧V1,V2が電圧範囲内(第1電圧範囲内または第2電圧範囲内)である比率が所定値以上である場合に、バッテリ41が正規品であると診断し、当該比率が所定値未満である場合に、バッテリ41が非正規品であると診断してもよい。複数回の電圧V1,V2に基づいて診断することにより、診断精度をさらに向上させることができる。
【0072】
[実施の形態2]
実施の形態1では、電圧変化カーブ上の電圧値に基づいて診断が実施される例について説明した。実施の形態2においては、電圧変化カーブの変化の割合(言い換えると、電圧変化カーブに引かれる接線の傾き)に基づいて診断が実施される例について説明する。なお、実施の形態2における車両の構成は、実施の形態1における車両1の構成(図1図3参照)と同等であるため、説明は繰り返さない。
【0073】
図10は、実施の形態2におけるバッテリ41の正規品の診断手法を説明するための図である。実施の形態2では、所定タイミングにおける電圧変化カーブL1の変化の割合(接線の傾き)が、正規カーブに基づいて予め定められた基準範囲内であるかどうかが判定される。より詳細には、放電期間中の少なくとも1回の接線の傾きと、休止期間中の少なくとも1回の接線の傾きとが用いられる。図10に示す例では、放電期間中の時刻t31における接線T1の傾きSL1が第1基準範囲(図示せず)内であるかが判定されるとともに、休止期間中の時刻t41における接線T2の傾きSL2(図示せず)が第2基準範囲内であるかが判定される。
【0074】
図11は、実施の形態2における電池診断処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、電圧V1,V2に代えて接線の傾きSL1,SL2を用いる点以外は実施の形態1におけるフローチャート(図9参照)と同等である。よって、詳細な説明は繰り返さない。
【0075】
以上のように、実施の形態2においては、充放電期間と休止期間との両方を含む診断対象期間中に電圧センサ421により測定された電圧変化カーブ(電圧Vの時系列データ)の変化の割合(接線の傾き)に基づいて、バッテリ41が正規品であるかどうかが診断される。充放電期間および休止期間の両方における変化の割合に基づいて診断が実施されるため、実施の形態1と同様に、バッテリ41の仕様の違いを精確に検出できる。よって、実施の形態2によれば、バッテリ41が正規品であるかどうかを高精度に診断できる。
【0076】
[実施の形態3]
実施の形態3においては、電池パック40の周囲の電子機器により発生するノイズを考慮して診断が実施される例について説明する。なお、実施の形態3における車両の構成は、実施の形態1,2における車両1の構成(図1図3参照)と同等であるため、説明は繰り返さない。
【0077】
図12は、ノイズを説明するための概念図である。横軸は時間時間を表す。縦軸は電流を表す。電池パック40の周囲には様々な電子機器が存在し得る。図1の車両構成では、PCU51(インバータおよび/またはコンバータ)、充電装置92などが電池パック40の周囲に存在する。これらの電子機器(またはその電源)により発生するノイズが図12に示すように断続的に電流(電流センサ422の検出結果)に重畳し得る。ノイズは電圧(電圧センサ421の検出結果)にも重畳し得る。以下、この現象を「ノイズ干渉」と呼ぶ。
【0078】
図13は、電圧変化カーブへのノイズ干渉の影響を説明するための図である。図13にはノイズ干渉が発生している場合の電圧変化カーブと、ノイズ干渉が発生していない場合の電圧変化カーブとが対比して示されている。図13から明らかなように、ノイズ干渉が発生すると、電圧変化カーブの形状が変化し得る。図示しないが、正規カーブの形状も変化し得る。そうすると、バッテリ41が正規品であるかどうかの診断精度が低下する可能性がある。
【0079】
そこで、本実施の形態においては、車両1にて発生し得るノイズ干渉を想定して正規カーブが予め準備される。すなわち、事前にリップル電流生成回路(図示せず)を用いて、ノイズ干渉を模擬した多様なリップル電流を生成して正規品に印加する。充放電時および休止時を含む様々な条件下でノイズ干渉を模擬することにより、多数の正規カーブが作成される。作成された正規カーブは、電池ECU43のメモリ432に格納される。
【0080】
図14は、ノイズ干渉が発生した場合の正規カーブと非正規品の電圧変化カーブとを示す図である。図14に示すように、ノイズ干渉が発生した場合にもバッテリ41の正規品と非正規品との間では電圧変化カーブの形状が異なる。したがって、電圧変化カーブと正規カーブとを比較することによって、バッテリ41が正規品か非正規品かを診断可能である。
【0081】
図15は、実施の形態3における電池診断処理を示すフローチャートである。S301~S304の処理は、実施の形態1におけるS101~S104の処理(図9参照)と同様である。
【0082】
S305において、電池ECU43は、ノイズ干渉が発生しているかどうかを判定する。電池ECU43は、たとえば、電圧センサ421により検出される電流Vまたは電流センサ422により検出される電流Iにノイズが重畳しているかどうか(ノイズの振幅が所定量よりも大きいかどうか、ノイズの重畳時間が所定時間よりも長いかどうかなど)に基づいて、ノイズ干渉の発生の有無を判定できる。
【0083】
ノイズ干渉が発生している場合(S305においてYES)、電池ECU43は、ノイズ干渉を模擬した環境下での正規カーブから設定された第1電圧範囲および第2電圧範囲をメモリ432から読み出す(S306)。一方、ノイズ干渉が発生していない場合(S305においてNO)、電池ECU43は、通常時の正規カーブ(ノイズ干渉の非発生時の正規カーブであって実施の形態1と同じもの)から設定された第1電圧範囲および第2電圧範囲をメモリ432から読み出す(S307)。S308以降の処理は、実施の形態1におけるS105以降の処理と同様であるため、説明は繰り返さない。
【0084】
なお、ここでは実施の形態1のように電圧変化カーブ上の電圧値に基づいて診断が実施される例について説明した。しかし、実施の形態2のように電圧変化カーブの変化の割合(接線の傾き)に基づいて診断が実施されてもよい。
【0085】
以上のように、実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様に充放電期間および休止期間の両方における電圧に基づいて診断が実施されるため、バッテリ41の仕様の違いを精確に検出できる。よって、バッテリ41が正規品であるかどうかを高精度に診断できる。さらに、実施の形態3においては、バッテリ41が正規品であるかどうかの診断に使用される電圧範囲(S308,S309の処理における第1電圧範囲および第2電圧範囲)がノイズ干渉の発生時と非発生時(通常時)とで切り替えられる。ノイズ干渉発生時にはノイズ干渉を模擬した環境下で作成された正規カーブを使用することによって、ノイズ干渉発生時にもバッテリ41が正規品であるかどうかを高精度に診断できる。
【0086】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 車両、10 インレット、20 コンバータ、30 充電リレー、40 電池パック、41 バッテリ、410 スタック、42 監視ユニット、421 電圧センサ、422 電流センサ、423 温度センサ、43 電池ECU、431 プロセッサ、432 メモリ、51 PCU、52 モータジェネレータ、60 警告装置、70 統合ECU、701 プロセッサ、702 メモリ、81 セル、811 蓋体、812 正極端子、813 負極端子、814 電極体、815 正極、816 負極、817 セパレータ、82 樹脂枠、83 エンドプレート、84 拘束バンド、91 充電ケーブル、92 充電装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15