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特許7582279電力制御装置、電力制御方法、及び電力制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電力制御装置、電力制御方法、及び電力制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20241106BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241106BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241106BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H02J3/14 160
H02J3/00 180
H02J3/38 130
H02J3/38 110
H02J7/35 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022147175
(22)【出願日】2022-09-15
(65)【公開番号】P2024042448
(43)【公開日】2024-03-28
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】有村 利信
(72)【発明者】
【氏名】稲村 彰信
(72)【発明者】
【氏名】小西 美沙子
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 謙一
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-035917(JP,A)
【文献】特開2021-040437(JP,A)
【文献】特開2015-070744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力市場との電力の授受が可能であって、1以上の電力機器の動作を制御する電力制御装置であって、
前記電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、前記電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定する授受電力量決定部と、
決定された前記授受電力量に基づいて、前記1以上の電力機器への動作指令を決定する動作指令決定部と、
を有し、
前記授受電力量決定部は、事前に定めた電力市場単価にかかる単価設定値と、前記電力市場単価とを比較し、その結果に基づいて前記授受電力量を決定し、
前記単価設定値が、過去の電力市場単価の時間帯毎の平均値に基づいて、時間帯ごとに設定される、
電力制御装置。
【請求項2】
前記1以上の電力機器の動作状況に係る情報は、前記1以上の電力機器による電力の需要を予測した需要予測値である、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記1以上の電力機器の動作状況に係る情報は、前記1以上の電力機器による電力の需要計画に係る需要計画値である、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記1以上の電力機器は、蓄電装置を含み、
前記授受電力量決定部は、前記蓄電装置の充電量に係る情報にも基づいて、前記授受電力量を決定する、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記動作指令決定部により決定された前記動作指令を、前記1以上の電力機器に対して出力する出力部をさらに有する、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項6】
電力市場との電力の授受が可能であって、1以上の電力機器の動作を制御する電力制御方法であって、
前記電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、前記電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定することであって、事前に定めた電力市場単価にかかる単価設定値と、前記電力市場単価とを比較し、その結果に基づいて前記授受電力量を決定することと、
決定された前記授受電力量に基づいて、前記1以上の電力機器への動作指令を決定することと、
を含み、
前記単価設定値が、過去の電力市場単価の時間帯毎の平均値に基づいて、時間帯ごとに設定される、
電力制御方法。
【請求項7】
電力市場との電力の授受が可能であって、1以上の電力機器の動作の制御をコンピュータに実行させる電力制御プログラムであって、
前記電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、前記電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定することであって、事前に定めた電力市場単価にかかる単価設定値と、前記電力市場単価とを比較し、その結果に基づいて前記授受電力量を決定することと、
決定された前記授受電力量に基づいて、前記1以上の電力機器への動作指令を決定することと、
を前記コンピュータに実行させ、
前記単価設定値が、過去の電力市場単価の時間帯毎の平均値に基づいて、時間帯ごとに設定される、
電力制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力制御装置、電力制御方法、及び電力制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクログリッドのようなエネルギーコミュニティにおけるエネルギーの運用制御方法について種々の検討が行われている中、電力価格に着目した制御を行う手法が検討されている。例えば、特許文献1では、コミュニティ内に設定された需要家グループにおいて、分散電源装置及び/またはエネルギー貯蔵装置の運用計画を作成する際に、コミュニティ内での時系列の現時点以降の予定の電力価格のパターンである電力価格パターンを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3980541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、電力価格パターンの精度によっては、実際の取引額とは異なる電力価格に基づいて外部の電力系統との電力授受を行う可能性があるため、経済性の観点で改善の余地があった。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、外部の電力市場との間での電力の授受を含む電力制御において経済性を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る電力制御装置は、電力市場との電力の授受が可能であって、1以上の電力機器の動作を制御する電力制御装置であって、前記電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、前記電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定する授受電力量決定部と、決定された前記授受電力量に基づいて、前記1以上の電力機器への動作指令を決定する動作指令決定部と、を有する。
【0007】
本開示の一形態に係る電力制御方法は、電力市場との電力の授受が可能であって、1以上の電力機器の動作を制御する電力制御方法であって、前記電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、前記電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定することと、決定された前記授受電力量に基づいて、前記1以上の電力機器への動作指令を決定することと、を含む。
【0008】
本開示の一形態に係る電力制御プログラムは、電力市場との電力の授受が可能であって、1以上の電力機器の動作の制御をコンピュータに実行させる電力制御プログラムであって、前記電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、前記電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定することと、決定された前記授受電力量に基づいて、前記1以上の電力機器への動作指令を決定することと、を前記コンピュータに実行させる。
【0009】
上記の電力制御装置、電力制御方法及び電力制御プログラムによれば、電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報と、に基づいて、電力市場との間で授受を行う授受電力量が決定され、決定された授受電力量に基づいて、1以上の電力機器への動作指令が決定される。このように電力市場単価を考慮して授受電力量を決定し、授受電力量に基づいて動作指令が決定されることから、外部の電力市場との間での電力の授受を含む電力制御において経済性を向上させることができる。
【0010】
前記1以上の電力機器の動作状況に係る情報は、前記1以上の電力機器による電力の需要を予測した需要予測値である態様としてもよい。
【0011】
上記の構成とすることで、電力の需要予測値と電力市場単価とに基づいて授受電力量が決定されることから、需要予測値を考慮した授受電力量を利用した電力制御を行うことができる。
【0012】
前記1以上の電力機器の動作状況に係る情報は、前記1以上の電力機器による電力の需要計画に係る需要計画値である態様としてもよい。
【0013】
上記の構成とすることで、電力の需要計画値と電力市場単価とに基づいて授受電力量が決定されることから、需要計画値を考慮した授受電力量を利用した電力制御を行うことができる。
【0014】
前記授受電力量決定部は、事前に定めた電力市場単価にかかる単価設定値と、前記電力市場単価とを比較し、その結果に基づいて前記授受電力量を決定する態様としてもよい。
【0015】
上記の構成とすることで、電力市場単価と単価設定値とを比較した結果に基づいて授受電力量を決定することができるため、例えば、電力市場単価が単価設定値に比べて高額であるときに電力購入量を抑制する等の経済性を考慮した電力制御をより適切に行うことができる。
【0016】
前記1以上の電力機器は、蓄電装置を含み、前記授受電力量決定部は、前記蓄電装置の充電量に係る情報にも基づいて、前記授受電力量を決定する態様としてもよい。
【0017】
上記の構成とすることで、蓄電装置の充電量を考慮した授受電力量を決定することができるため、例えば、電力市場単価が高額であるときに、蓄電装置の充電量が多く確保されている場合には電力購入量を抑制する等の経済性を考慮した電力制御をより適切に行うことができる。
【0018】
前記動作指令決定部により決定された前記動作指令を、前記1以上の電力機器に対して出力する出力部をさらに有する態様としてもよい。
【0019】
上記の構成とすることで、1以上の電力機器における動作指令を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、外部の電力市場との間での電力の授受を含む電力制御において経済性を向上させることが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施形態に係る電力制御装置としてのEMSを含むマイクログリッドの概略図である。
図2図2は、EMSの機能について説明するブロック図である。
図3図3は、EMSの上位制御部の機能について説明するブロック図である。
図4図4は、EMSのグリッド内制御部の機能について説明するブロック図である。
図5図5は、電力制御方法について説明するシーケンス図である。
図6図6は、EMSのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
[マイクログリッド]
本実施形態に係る電力制御装置、電力制御方法、及び電力制御プログラムは、マイクログリッドに用いられる。
【0024】
図1を参照して、マイクログリッドについて説明する。図1は、一実施形態に係るマイクログリッドの構成を概略的に示す図である。マイクログリッド1は、発電設備2と、負荷装置3と、蓄電装置4と、配電装置(配電盤)5と、これらを接続する送電網6と、これらを制御するEMS10(Energy Management System:電力制御装置)と、を含んで構成される。マイクログリッド1では、発電設備2が出力する発電電力を負荷装置3が消費する。図1では、発電設備2、負荷装置3、及び蓄電装置4がそれぞれ1つずつのみ示されているが、これらの装置の数は適宜変更される。
【0025】
マイクログリッド1は、理想的には、発電設備2から発生する発電電力と、負荷装置3が消費する負荷電力と、が等しくなるように運用する。そのため、EMS10は、発電電力と負荷電力との調整を行う。また、EMS10は、発電電力と負荷電力との間のバッファとして、蓄電装置4における蓄電池の充放電を調整してもよい。また、マイクログリッド1は、電力系統90に接続される。そのため、不足する電力を電力系統90から購入することができると共に、マイクログリッド1から電力系統90へ余剰電力を売電することができる。EMS10はこの電力系統90との間での電力の授受に係る制御も行う。本実施形態では、外部の電力系統90とは、複数の電力の売り手及び買い手の間で電力の取引(売買)が行われる電力市場における取引き結果に基づく電力の授受が可能な系統である。つまり、電力系統90との間で授受される電力は、電力市場での取引きに基づくものであるため、EMS10は電力市場での電力の取引きにも関与し得る。なお、マイクログリッド1は、図示しないリソースアグリゲータやバランシンググループを介して、間接的に電力市場と電力の授受を行う形態としてもよい。
【0026】
なお、マイクログリッド1は、その運用形態を柔軟に変更してもよい。マイクログリッド1は、要求される電力の全てを発電設備2によって賄ってもよいし、要求される電力の一部を電力系統90から受けてもよい。また、マイクログリッド1は、内部で発電した全ての電力を負荷装置3によって消費してもよい。
【0027】
発電設備2は、再生可能エネルギーを利用して発電を行う設備である。本実施形態では、発電設備2は、太陽光(Photovoltaic:PV)発電装置であり、複数の太陽光パネル2a及び複数のPCS2b(Power Conditioning System:パワーコンディショナ)を含む。発電設備2は、例えば太陽光発電装置を含んで構成され得るが、他の種類の再生可能エネルギー発電装置によって構成されていてもよい。図1では一例として、太陽光発電装置において使用される2つのPCS2bを示している。PCS2bは、太陽光パネル2aで発電した電力を変換する電力変換装置である。PCS2bは、発電設備2の中に複数設けられて、1以上の太陽光パネル2aと接続され得る。PCS2bは、太陽光パネル2aからの直流電力を交流電力に変換し、送電網6に対して出力する。
【0028】
負荷装置3は、送電網6を介して発電設備2、蓄電装置4及び電力系統90に接続されている。負荷装置3は、発電設備2からの発電電力及び電力系統90からの供給電力を消費して、所望の動作を行う。なお、負荷装置3はマイクログリッド1の外部に設けられた負荷装置等と連携して動作する構成であってもよい。
【0029】
蓄電装置4は、発電設備2による発電電力に伴うエネルギーを蓄える。本実施形態において蓄電装置4は、発電設備2により発電された電力を充電する。蓄電装置4は、例えば、負荷装置3に対して一定量の出力電力を出力(放電)する。なお、マイクログリッド1は、蓄電装置4に代えて、発電設備2により発電された発電電力を、電気以外のエネルギキャリア(例えば、水素またはアンモニア等)を製造して貯蔵又は供給する装置を備えていてもよい。
【0030】
配電装置5は、例えば、発電設備2、負荷装置3、蓄電装置4及び電力系統90に接続され、EMS10の制御により、発電設備2からの発電電力、蓄電装置4からの出力電力、及び電力系統90からの供給電力を組み合わせた所定の電力を、負荷装置3に出力する。例えば、配電装置5は、蓄電装置4から出力される一定量の出力電力と、発電設備2による発電電力の一部と、を負荷装置3に出力する。配電装置5が負荷装置3に出力する発電電力の一部は、負荷電力に対する蓄電装置4からの出力電力の不足分に相当する電力である。配電装置5は、発電設備2からの発電電力及び蓄電装置4からの出力電力だけでは負荷電力に満たない場合に、不足分を電力系統90から購入した供給電力によって補ってもよい。配電装置5は、常に電力系統90からの供給電力を負荷装置3に出力してもよい。これらの配電装置5による電力の分配に係る動作は、上述のようにEMS10の制御によって行われる。
【0031】
以下の実施形態では、マイクログリッド1内において電力運用に関係し得る発電設備2、負荷装置3、蓄電装置4、及び、配電装置5を包含して電力機器という場合がある。
【0032】
[EMS]
EMS10は、発電設備2による発電電力と、負荷装置3による負荷電力と、蓄電装置4による出力電力と、電力系統90との間で授受(売買)を行う電力と、を管理する。なお、以下の実施形態では、EMS10が電力系統90からマイクログリッド1内での不足分の電力を購入する場合について、主に説明する。
【0033】
上述のように、マイクログリッド1内での電力使用量に対する余剰電力または不足電力は、電力系統90との間での電力の授受によって補填される。電力系統90から電力を購入する際の電力の単価(電力市場単価)は、例えば、売り手及び買い手の事前の入札によって決定され、売り手及び買い手に公表される。上述したように、本実施形態において説明するマイクログリッド1(EMS10)も売り手または買い手となることから、自グリッド内での電力需要を鑑みて入札に参加する。そして、公表された電力市場単価に基づいてEMS10は電力系統90との間で電力の授受(売買)を行う。電力市場単価は、1日を48コマ(30分間)に分割したコマ毎で設定される。また、コマ毎の市場価格はコマの1日前に取引所等によって一般公表される。
【0034】
マイクログリッド1との電力系統90との電力の取引は、事前に入札した電力量とは関係なく行うことができる。ただし、決定された電力市場単価が事前に想定していた価格と異なる場合、その差額(インバランス)を解消するように取引が発生する。例えば、決定された電力市場単価が、入札した電力量に対応する電力単価よりも高い場合は、事前に想定していた購入量を購入すると、差額の支払い(インバランス料金)が発生し、想定外の費用が嵩む。そこで、EMS10は、マイクログリッド1が電力系統90との間で取引きする電力量を、決定された電力市場単価に基づいて調整を行う機能を有する。例えば、マイクログリッド1内の蓄電装置4が電力を十分に蓄えている場合には、電力系統90からの購入量を減らして代わりに蓄電装置4からの放電量を増やすことで、マイクログリッド1内で消費する電力を賄うという対応が考えられる。一方、電力市場への電力の売価が低くなっている場合には、発電設備2において発電された電力を蓄電装置4で一旦蓄電するというような制御を行うことが考えられる。つまり、電力市場への電力の売価が下落した場合には、電力系統90への電力の供給(売電)タイミングを調整するという制御を行うことが考えられる。このように、EMS10は、電力市場単価と、マイクログリッド1内での各装置の状況等を考慮して、電力系統90との間での電力の授受量を調整する機能を有する。
【0035】
図2は、EMS10の機能的な構成を示す図である。EMS10は、発電設備2、負荷装置3、蓄電装置4を制御する。図2に示されるように、EMS10は、機能部として、上位制御部20とグリッド内制御部30とを備える。なお、これらの機能部は、1台のコンピュータにまとめられていてもよく、複数台のコンピュータに分散していてもよい。なお、これらのコンピュータは、クラウド環境やマイクログリッド外部にあってもよい。
【0036】
上位制御部20は、電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定する授受電力量決定部としての機能を有する。より具体的には、上位制御部20は、電力系統90との間で授受を行う場合の電力市場単価と、マイクログリッド1内での電力機器の動作情報に基づいて算出される電力の需要予測値とに基づいて、マイクログリッド1と電力系統90との間での電力の授受量を決定する。電力の授受量の決定には、上述の電力市場単価及び需要予測値に加えて、グリッド内制御部30から提供される電力需要の現在値に係る情報、蓄電装置4における蓄電量に係る情報(SOC:State of Charge)、外部から提供される電力需要の変動に係る予測データ等も使用され得る。上位制御部20の機能及び上位制御部20において実行される処理の詳細については後述する。
【0037】
グリッド内制御部30は、上位制御部20において決定された授受電力量に基づいて、1以上の電力機器への動作指令を決定する動作指令決定部としての機能を有する。具体的には、グリッド内制御部30は、上位制御部20において決定される電力系統90との間での電力の授受量に基づいて、マイクログリッド1内の発電設備2、負荷装置3、蓄電装置4への制御内容を決定する機能を有する。また、グリッド内制御部30は、動作指令決定部により決定された動作指令を、1以上の電力機器に対して出力する出力部としての機能を有する。発電設備2への動作指令としては、例えば、発電量の抑制指令が挙げられる。また、負荷装置3へは運転の開始・停止、または、負荷の上げ下げに係る指令、蓄電装置4へは充放電指令が行われ得る。ただし、負荷装置3には、EMS10の制御対象から外れる装置も含まれ得る。したがって、EMS10が制御可能な負荷装置3のみを対象として動作指令が行われる。さらに、グリッド内制御部30は、電力系統90との間で授受を行っている電力量の現在値、及び、蓄電装置4の蓄電量に係る情報(SOC)を上位制御部20へ通知する。
【0038】
なお、グリッド内制御部30は、マイクログリッド1と外部の電力系統90との間で電力の授受のルールが決まっている場合には、当該ルールを考慮して各装置の制御内容を決定する。例えば、マイクログリッド1から電力系統90への送電(逆潮流)が禁止されている場合には、逆潮流が発生しない条件で、各部の制御内容を決定する。グリッド内制御部30の機能及びグリッド内制御部30において実行される処理の詳細については後述する。
【0039】
次に、上位制御部20及びグリッド内制御部30の各部の機能について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0040】
図3は、上位制御部20の機能を説明する図である。図3に示されるように、上位制御部20は、市場単価評価部21、設定値保持部22、指令値設定部23、及びインバランス算出部24を含んで構成される。
【0041】
市場単価評価部21は、電力市場単価データを取得し、市場単価と想定していた価格との関係を評価する機能を有する。また、設定値保持部22は、市場単価評価部21が市場単価を評価する際の基準となる情報である設定値を保持する機能を有する。
【0042】
市場単価評価部21が評価する対象となる電力市場単価に係るデータ(電力市場単価データ)は、上述のように電力系統90における電力の売買を管理する取引所等から一般公表されるので、市場単価評価部21は一般公開される電力市場単価データを取得する。そして、市場単価評価部21は、取得した電力市場単価データに記載された、対象となる時間帯の電力市場単価が予め設定した設定値と比べて高いか低いかを評価する。この際の評価の基準となる情報を設定値保持部22が保持している。設定値は、コマ毎に設定される値であり、過去の電力市場単価のコマ毎の平均値等に基づいて設定されてもよい。また、設定値は、ユーザの手動入力で設定されていてもよいし、過去の電力市場単価データなどから自動入力されてもよい。なお、設定値は、季節または電力調達の状況変動に応じて変更され得る。例えば、原油価格の高騰によって電力市場価格が軒並み高くなっている場合は、設定値を高めに調節することが考えられる。また、春・夏など太陽光発電量が多くなると想定される時期は、日中の電力単価が低くなることから、日中の時間帯の電力市場単価の設定値を低めに調節することが考えられる。このように、電力市場単価の設定値は、電力調達に関係する種々の状況を考慮して設定され得る。
【0043】
なお、市場単価評価部21は、電力市場単価データに含まれる電力市場単価が、設定値に比べて、どの程度高い/低いかを評価し、その結果をコマ毎に求める。評価結果は、例えば、設定値との差分を算出した結果などの数値として表すこととしてもよいし、設定値との差分に基づいて段階的に表す(例えば、A~Eの5段階で評価する、など)こととしてもよい。評価結果は、市場単価評価部21から指令値設定部23に渡される。
【0044】
指令値設定部23は、市場単価評価部21における評価結果に基づいて、需要予測値に対して電力系統90との間で授受する電力量の指令値を決定する機能を有する。
【0045】
需要予測値とは、マイクログリッド1内での各装置の発電量または電力消費量等に基づいて算出された、電力系統90との間で授受する電力量の予測値を示すものである。需要予測値は、過去の電力需要の実績値を用いたパターンマッチングなどで作成されていてもよい。また、需要予測値は、EMS10において作成されていてもよいし、他の装置で作成されたデータを使用してもよい。また、需要予測値についても、ユーザ等の手動入力によって準備されてもよい。
【0046】
指令値設定部23は、市場単価評価部21による評価結果を用いて、上記の需要予測値に対して、実際に電力系統90との間で授受する電力量を補正する。例えば、市場単価評価部21において電力市場単価が設定値より高いことを示す評価結果が得られている場合に、需要予測値として電力系統90から所定量の電力を購入することを示す予測値が得られていたとする。市場単価評価部21による評価結果を利用しない場合には、需要予測値に基づいて、電力系統90から電力を購入するように、指令値が設定される。これに対して、本実施形態では、指令値設定部23において電力市場単価が設定値より高いことをふまえて、電力系統90からの電力購入量を小さくするように補正した指令値が設定される。このように、指令値設定部23では、需要予測値と同値となるように指令値を設定するのではなく、電力市場単価の評価結果をふまえて電力系統90からの電力購入量を調節する。調節の方法は、指令値設定部23において予め決定されていてもよい。調節の方法の具体例としては、例えば、電力市場単価と設定値との差分に応じて調節量(購入を控える量)を決定する、評価結果の段階に応じて調節量を決定する、等の方法が挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0047】
なお、電力系統90との間での電力授受量の調節の際には、マイクログリッド1内の蓄電装置4におけるSOCも考慮される。例えば、需要予測値に対して電力購入量を少なくする場合、マイクログリッド1内で使用可能な電力が需要に比べて少なくなる可能性がある。その場合、蓄電装置4に充電されている電力をマイクログリッド1内で使用することで、電力不足になるリスクを回避する。つまり、電力授受量をどの程度調節してよいかは、蓄電装置4において充電されている電力量によっても変動し得る。したがって、指令値設定部23は、グリッド内制御部30から提供される蓄電装置4のSOCに係る情報も利用して、指令値を調節する。
【0048】
さらに、指令値設定部23は、需要予測値に対して、実際のマイクログリッド1内の電力需要がどの程度変動するかを示唆するデータである変動予測データも利用して、指令値を調節してもよい。変動予測データとは、例えば、日射量予測データ、風速予測データ等の、マイクログリッド1内での電力需要に影響を与える可能性がある要素の予測データである。変動予測データが取得できる場合には、指令値設定部23は、変動予測データも利用して設定値の調整を行ってもよい。指令値設定部23によって設定された授受電力の指令値は、グリッド内制御部30に対して送られる。
【0049】
インバランス算出部24は、指令値設定部23によって設定された授受電力指令値に基づいてインバランス量を算出し、さらに、必要に応じてインバランス料金を算出する。インバランス料金とは、事前に入札した電力授受量に対して実際に授受した電力が逸脱している場合に発生する料金である。インバランス料金は、入札量に対して実際に授受した電力量が不足している場合(入札量よりも授受量が多い場合)、及び、余剰している場合(入札量よりも授受量が少ない場合)の両方に発生する。なお、インバランス料金の計算に必要な単価情報は後日公表されるため、購入するタイミングでは確定されることができない。ただし、インバランス料金の単位情報に対して、速報値や予測値、過去の平均値などを用いることで、仮のインバランス料金(インバランス料金の予測値)をリアルタイムに算出することは可能である。インバランス算出部24は、指令値設定部23により設定された授受電力指令値と、実際の授受電力量(現在値)とから、インバランス量を算出し、インバランス料金を算出する機能を有する。なお、インバランス算出部24によって算出されたインバランス量及びインバランス料金に係る情報は、例えば、EMS10によるマイクログリッド1における電力授受の制御を評価する際などに使用され得る。
【0050】
なお、本実施形態のEMS10では、上述のように入札量とは異なる電力量の授受を行うことによって、インバランスが発生する可能性がある。特に、電力市場単価が設定値よりも高額である場合には、授受電力量が入札量に対して小さくなるように制御されることが想定される。この場合、入札量と実際の授受電力量との差分が余剰電力となり、電力市場に対して、市場から電力を調達する際と比べて安価に売電することになる。ただし、この売価が低くなることによる損失は、授受電力量が入札量よりも大きくなる場合に発生するインバランス料金による損失と比べると少ない。したがって、EMS10では、電力市場単価を考慮して授受電力を入札量に比べて小さくする際の損失は考慮しないこととする。ただし、指令値設定部23において、授受電力を入札量に比べて小さくする際に生じると予測される損失を考慮した上で、授受電力量を算出する構成としてもよい。
【0051】
図4は、グリッド内制御部30の機能を説明する図である。図4に示されるように、グリッド内制御部30は、授受電力指令値取得部31、動作情報取得部32、指令内容決定部33、制御指令部34、及び、動作情報通知部35を含んで構成される。
【0052】
授受電力指令値取得部31は、上位制御部20から授受電力指令値を取得する機能を有する。取得した授受電力指令値は、指令内容決定部33へ送られる。
【0053】
動作情報取得部32は、マイクログリッド1内の各装置から、動作情報を取得する機能を有する。動作情報とは、例えば、発電設備2における発電量に係る情報、負荷装置3における電力使用量に係る情報、蓄電装置4の蓄電量に係る情報(SOC)としての電力系統90との間での電力授受量の現在値等が挙げられる。これらの動作情報は、指令内容決定部33へ送られる。また、上記の情報のうち、授受電力の現在値、及び、蓄電装置4のSOCは、動作情報通知部35へも送られる。
【0054】
指令内容決定部33は、授受電力指令値取得部31から取得する授受電力指令値と、動作情報取得部32から取得する動作情報に基づいて、マイクログリッド1内の各装置への指令内容を決定する機能を有する。授受電力指令値取得部31からの授受電力指令値によって、電力系統90との間で授受する電力量が確定する。一方、動作情報取得部32の動作情報によって、マイクログリッド1内の各装置の現在状況が分かる。そこで、指令内容決定部33では、電力系統90との間での授受電力量を所定の値とした条件で、各装置への電力供給が円滑に行えるように、各装置における動作内容を決定する。この際に決定される動作内容の一例として、蓄電装置4からの放電量の調整、発電設備2での発電量の調整、負荷装置3の負荷の調整等が挙げられる。指令内容決定部33において決定された指令内容に基づく、配下の各装置への動作指令に係る情報は、指令内容決定部33から制御指令部34へ送られる。
【0055】
制御指令部34は、動作指令をマイクログリッド1内の各装置に対して送信する機能を有する。つまり、制御指令部34は、動作指令を1以上の電力機器に対して出力する出力部として機能する。
【0056】
動作情報通知部35は、動作情報取得部32から送られた、授受電力の現在値及び蓄電装置4のSOCを上位制御部20に対して受け渡す機能を有する。
【0057】
[電力制御方法]
次に、図5を参照しながらEMS10の上位制御部20及びグリッド内制御部30の電力制御に関する動作を説明する。
【0058】
まず、グリッド内制御部30では、動作情報取得部32において、マイクログリッド1内の各装置の動作情報の取得が行われる(ステップS01)。動作情報取得部32による動作情報の収集は、例えば、所定のタイミング(例えば、1分~1コマ毎)に行われる。取得された情報はグリッド内の動作情報として、動作情報取得部32から指令内容決定部33へ送られる。
【0059】
一方、上位制御部20では、市場単価評価部21によって電力市場単価データが取得される(ステップS02)。次に、市場単価評価部21では、取得された電力市場単価データと、設定値保持部22において保持される設定値とに基づいて、需要予測値から授受電力指令値を算出するための電力市場単価の評価を行う(ステップS03)。このときに、市場単価評価部21では、授受電力指令値を算出するための需要予測値の市場単価の補正内容を決定してもよい。
【0060】
次に、上位制御部20では、指令値設定部23によって需要予測値が取得される(ステップS04)。一方、グリッド内制御部30の動作情報通知部35によって、蓄電装置4のSOCと、授受電力現在値が、グリッド内制御部30から上位制御部20に送られる(ステップS05,S06)。上位制御部20では、指令値設定部23によってこれらの情報が取得される(ステップS07)。
【0061】
次に、上位制御部20では、指令値設定部23によって、授受電力指令値が決定されると共に、授受電力指令値が上位制御部20からグリッド内制御部30に対して送られる(ステップS08,S09)。その後、上位制御部20では、授受電力指令値に基づいて、インバランス算出部24においてインバランス量の算出が行われる(ステップS10)。なお、インバランス算出部24は、インバランス量に基づくインバランス料金の算出を行ってもよい。
【0062】
一方、グリッド内制御部30では、授受電力指令値取得部31において、授受電力指令値が取得された後、指令内容決定部33によって、授受電力指令値に基づいて動作指令における指令内容が決定される(ステップS11)。そして、指令内容決定部33において決定された指令内容に基づく動作指令が、制御指令部34からマイクログリッド1内の各装置(電力機器)に対して出力される。その後各装置は制御指令に基づいて動作することになる。
【0063】
電力市場単価に基づくこれらの手順は、例えば、電力市場単価を設定する際の単位時間となるコマ毎(30分毎)に行われてもよい。また、ステップS01、ステップS02~S03、ステップS04、ステップS05~S07はそれぞれが連携することなく独立して行われる動作である。したがって、これらの手順の順序は入れ替わってもよい。
【0064】
[ハードウェア構成]
図6を参照して、EMS10のハードウェア構成について説明する。図6は、EMS10のハードウェア構成の一例を示す図である。EMS10は、1又は複数のコンピュータ100を含む。コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、通信制御部104と、入力装置105と、出力装置106とを有する。EMS10は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1又は複数のコンピュータ100によって構成される。
【0065】
EMS10が複数のコンピュータ100によって構成される場合には、これらのコンピュータ100はローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つのEMS10が構築される。
【0066】
CPU101は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶部102は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶部103は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶部103は、一般的に主記憶部102よりも大量のデータを記憶する。通信制御部104は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。EMS10における他の装置との通信機能の少なくとも一部は、通信制御部104によって実現されてもよい。入力装置105は、キーボード、マウス、タッチパネル、及び、音声入力用マイクなどにより構成される。出力装置106は、ディスプレイ及びプリンタなどにより構成される。
【0067】
補助記憶部103は、予め、プログラム110及び処理に必要なデータを格納している。プログラム110は、EMS10の各機能要素をコンピュータ100に実行させる。プログラム110によって、例えば、上述した電力制御方法に係る処理がコンピュータ100において実行される。例えば、プログラム110は、CPU101又は主記憶部102によって読み込まれ、CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、通信制御部104、入力装置105、及び出力装置106の少なくとも1つを動作させる。例えば、プログラム110は、主記憶部102及び補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。
【0068】
プログラム110は、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記憶媒体に記録された上で提供されてもよい。プログラム110は、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0069】
本実施形態に係る電力制御プログラムとは、例えば、電力市場との電力の授受が可能であって、1以上の電力機器の動作の制御をコンピュータ100に実行させる電力制御プログラムである。具体的には、電力制御プログラムとは、例えば、電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定することと、決定された授受電力量に基づいて、1以上の電力機器への動作指令を決定することと、をコンピュータ100に実行させるものである。
【0070】
[実施形態の作用効果]
上記の電力制御装置としてのEMS10、電力制御方法及び電力制御プログラムでは、授受電力量決定部として機能する上位制御部20において、電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報と、に基づいて、電力市場との間で授受を行う授受電力量が決定される。また、動作指令決定部として機能するグリッド内制御部30において、授受電力量に基づいて、1以上の電力機器への動作指令が決定される。このように電力市場単価を考慮して授受電力量を決定し、授受電力量に基づいて動作指令が決定されることから、外部の電力市場との間での電力の授受を含む電力制御において経済性を向上させることができる。
【0071】
電力市場との間で電力の授受を行いながら電力制御を行うことは従来から行われている。ただし、従来は電力市場における実際の単価を考慮した電力制御は行われていなかった。そのため、入札の結果電力単価が高額になっていたとしても、入札した通りの取引きが行われることが一般的であった。この場合、電力の調達に想定外の費用が嵩んだりする可能性があり、経済性の観点では改善の余地があった。これに対して、本実施形態のEMS10による電力制御の手法によれば、配下の1以上の電力機器の動作状況だけでなく、電力市場単価にも基づいて授受電力量が決定される。したがって、電力市場単価の変動を考慮して授受電力量を調整することが可能となるため、経済性が向上した電力制御を実現することができる。
【0072】
上記の電力機器の動作状況に係る情報は、例えば、1以上の電力機器による電力の需要を予測した需要予測値であってもよい。この場合、電力の需要予測値と電力市場単価とに基づいて授受電力量が決定されることから、需要予測値を考慮した授受電力量を利用した電力制御を行うことができる。
【0073】
一方、電力機器の動作状況に係る情報は、1以上の電力機器による電力の需要計画に係る需要計画値であってもよい。ここでいう需要計画値とは、消費電力が計画的になっているものを指す。たとえば、電力機器が工場等の製造装置である場合、一般に、生産計画からその製造装置が消費しうる電力が推定可能であるため、その推定される電力が需要計画値となる。この場合、電力の需要計画値と電力市場単価とに基づいて授受電力量が決定されることから、需要計画値を考慮した授受電力量を利用した電力制御を行うことができる。
【0074】
授受電力量決定部として機能するEMS10の上位制御部20は、事前に定めた電力市場単価にかかる単価設定値と、電力市場単価とを比較し、その結果に基づいて授受電力量を決定してもよい。この場合、電力市場単価と単価設定値とを比較した結果に基づいて授受電力量を決定することができるため、例えば、電力市場単価が単価設定値に比べて高額であるときに電力購入量を抑制する等の経済性を考慮した電力制御をより適切に行うことができる。
【0075】
1以上の電力機器は、蓄電装置4を含んでいてもよい。このとき、授受電力量決定部としての上位制御部20は、蓄電装置4の充電量に係る情報にも基づいて、授受電力量を決定してもよい。この場合、上位制御部20では、蓄電装置4の充電量を考慮した授受電力量を決定することができるため、例えば、電力市場単価が高額であるときに、蓄電装置の充電量が多く確保されている場合には電力購入量を抑制することができる。このように、上記の構成とすることにより、EMS10では、経済性を考慮した電力制御をより適切に行うことができる。
【0076】
動作指令決定部として機能するグリッド内制御部30において決定された動作指令を、1以上の電力機器に対して出力する出力部をさらに有していてもよい。具体的には、グリッド内制御部30の制御指令部34が動作指令を1以上の電力機器に対して出力する構成であってもよい。上記の構成とすることで、1以上の電力機器における動作指令を適切に行うことができる。
【0077】
[変形例]
本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態で説明したマイクログリッド1内の電力機器の構成は適宜変更され得る。電力機器の構成に応じて、EMS10において決定される授受電力量及び動作指令の決定手法等も変更され得る。
【0079】
また、上記実施形態では、マイクログリッド1が電力系統90から電力を購入する際に、電力市場単価が想定より高額である場合には購入量を抑制する、という制御を行うことについて説明した。しかしながら、上記実施形態で説明した手法は、マイクログリッド1が電力系統90に対して電力を売電することを前提とした場合にも適用ができる。例えば、上記の手法を用いると、電力市場単価が想定より低額である場合には売電量を抑制する、という制御を行うことによって、経済性を向上した売電の制御も可能となる。このように、上記実施形態で説明した手法は、電力系統90からの電力の購入及び売電の両方に適用ができる。
【0080】
[付記1]
本発明は、再生可能エネルギーの不安定な発電を含むマイクログリッドの系統運用における課題を解決するため、再生可能エネルギーの普及に貢献するものである。そのため、本発明は、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の以下のターゲットにも貢献するものである。
・ターゲット7.2「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。」
・ターゲット9.3「2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。」
【0081】
[付記2]
本開示は以下に示す構成を含む。
[1]電力市場との電力の授受が可能であって、1以上の電力機器の動作を制御する電力制御装置であって、
前記電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、前記電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定する授受電力量決定部と、
決定された前記授受電力量に基づいて、前記1以上の電力機器への動作指令を決定する動作指令決定部と、
を有する、電力制御装置。
[2]前記1以上の電力機器の動作状況に係る情報は、前記1以上の電力機器による電力の需要を予測した需要予測値である、[1]に記載の電力制御装置。
[3]前記1以上の電力機器の動作状況に係る情報は、前記1以上の電力機器による電力の需要計画に係る需要計画値である、[1]に記載の電力制御装置。
[4]前記授受電力量決定部は、事前に定めた電力市場単価にかかる単価設定値と、前記電力市場単価とを比較し、その結果に基づいて前記授受電力量を決定する、[1]~[3]のいずれかに記載の電力制御装置。
[5]前記1以上の電力機器は、蓄電装置を含み、
前記授受電力量決定部は、前記蓄電装置の充電量に係る情報にも基づいて、前記授受電力量を決定する、[1]~[4]のいずれかに記載の電力制御装置。
[6]前記動作指令決定部により決定された前記動作指令を、前記1以上の電力機器に対して出力する出力部をさらに有する、[1]~[5]のいずれかに記載の電力制御装置。
[7]電力市場との電力の授受が可能であって、1以上の電力機器の動作を制御する電力制御方法であって、
前記電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、前記電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定することと、
決定された前記授受電力量に基づいて、前記1以上の電力機器への動作指令を決定することと、
を含む、電力制御方法。
[8]電力市場との電力の授受が可能であって、1以上の電力機器の動作の制御をコンピュータに実行させる電力制御プログラムであって、
前記電力市場における電力市場単価と、1以上の電力機器の動作状況に係る情報とに基づいて、前記電力市場との間で授受を行う電力量である授受電力量を決定することと、
決定された前記授受電力量に基づいて、前記1以上の電力機器への動作指令を決定することと、
を前記コンピュータに実行させる、電力制御プログラム。
【符号の説明】
【0082】
1 マイクログリッド
2 発電設備
3 負荷装置
4 蓄電装置
5 配電装置(配電盤)
6 送電網
10 EMS(電力制御装置)
20 上位制御部(授受電力量決定部)
21 市場単価評価部
22 設定値保持部
23 指令値設定部
24 インバランス算出部
30 グリッド内制御部(動作指令決定部)
31 授受電力指令値取得部
32 動作情報取得部
33 指令内容決定部
34 制御指令部(出力部)
35 動作情報通知部
90 電力系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6