(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ウエハ保持体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241106BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241106BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
(21)【出願番号】P 2022186144
(22)【出願日】2022-11-22
(62)【分割の表示】P 2019508697の分割
【原出願日】2018-02-08
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2017062458
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 功一
(72)【発明者】
【氏名】三雲 晃
(72)【発明者】
【氏名】先田 成伸
(72)【発明者】
【氏名】島尾 大介
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-213455(JP,A)
【文献】特開2012-089694(JP,A)
【文献】特開2005-197391(JP,A)
【文献】特開2002-231798(JP,A)
【文献】特開2016-092215(JP,A)
【文献】特開2014-075525(JP,A)
【文献】特開2015-018704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ載置面を上面に有するセラミック基部と、
前記セラミック基部に埋設された導電部材と、
電極端子部と、を備え、
前記導電部材は、前記ウエハ載置面と平行に設けられた回路部と、前記ウエハ載置面と平行かつ前記ウエハ載置面と反対の方向に前記回路部と離間して設けられた引出部と、前記回路部と前記引出部とを接続する接続部と、を含み、
前記回路部の1つには、1層の前記引出部が接続されており、
前記引出部は、平面視において円形、円環形、円形を周方向に分割した形状、円環形を周方向に分割した形状のいずれかの形状であり、
前記電極端子部は、前記引出部に接続されており、
前記電極端子部は、前記セラミック基部の下面側から給電するための端子であり、
前記接続部
の全ては、平面視において、前記電極端子部とは異なる場所に設けられて
おり、
前記接続部と前記電極端子部との距離は、前記電極端子部の直径よりも大きい、ウエハ保持体。
【請求項2】
前記セラミック基部の下面を支持する筒状支持部をさらに備え、
前記電極端子部の一部は、前記筒状支持部内に収容されている、請求項1に記載のウエハ保持体。
【請求項3】
前記導電部材はRF電極又は抵抗発熱体を構成する、請求項1または請求項2に記載のウエハ保持体。
【請求項4】
複数の前記導電部材を備え、複数の前記導電部材はそれぞれがRF電極または抵抗発熱体を構成する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のウエハ保持体。
【請求項5】
前記セラミック基部に埋設され前記ウエハ載置面と平行に設けられた第2回路部と、
前記第2回路部と接続される第2電極端子部と、をさらに備え、
前記第2電極端子部は、前記セラミック基部の下面側から給電するための端子である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のウエハ保持体。
【請求項6】
前記第2回路部はRF電極又は抵抗発熱体又は静電チャック電極である、請求項5に記載のウエハ保持体。
【請求項7】
前記接続部は金属層で覆われたセラミック部材である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のウエハ保持体。
【請求項8】
前記セラミック部材は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、および酸化アルミニウムからなる群から選択されるいずれか1つのセラミック材料で構成されている、請求項7に記載のウエハ保持体。
【請求項9】
前記セラミック部材を構成するセラミック材料は、前記セラミック基部を構成するセラミック材料とほぼ同じ熱膨張係数を有する、請求項7または請求項8に記載のウエハ保持体。
【請求項10】
前記セラミック基部と前記セラミック部材とは同じセラミック材料で構成されている、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載のウエハ保持体。
【請求項11】
前記セラミック基部は円板形状であり、
前記接続部は、前記円板形状の周方向に均等な間隔を空けて配置されている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のウエハ保持体。
【請求項12】
前記筒状支持部は円筒形状である、請求項2に記載のウエハ保持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はウエハ保持体に関する。本出願は、2017年3月28日出願の日本出願2017-062458号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIなどの半導体デバイスを製造する半導体製造装置では、半導体ウエハに対してCVD、スパッタリングなどの成膜処理やエッチング処理など、各種の薄膜処理が施される。これら薄膜処理はプラズマ雰囲気下で行う場合があり、そのため、半導体製造装置ではチャンバー内に搭載するサセプタとも称するウエハを載置して加熱するウエハ保持体に高周波(RF)電極の一方(下部電極)を埋設すると共に、ウエハ保持体の上方にもう一方の高周波電極(上部電極)を設けて該下部電極に対向させ、これら電極間に高周波(RF)電圧を印加することが行われている。これにより、チャンバー内に導入した原料ガスを電離させてウエハ保持体の上方の空間にプラズマを発生させることができる。
【0003】
例えば特許文献1には、下部電極及び抵抗発熱体を備えたサセプタとして、上面に平坦なウエハ載置面を備えた円板状のセラミック基部と、これを下面中央部から支持する筒状支持部とからなるウエハ保持体が開示されており、下部電極としての2種類の高周波(RF)電極は、該セラミック基部の内部においてウエハ載置面からの深さが互いに異なる位置に埋設されている。このセラミック基部の内部には、更に半導体ウエハを電気的に吸着固定する静電チャック(ESC)電極を設けてもよいことも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示のウエハ保持体は、ウエハ載置面を上面に有するセラミック基部と、セラミック基部に埋設された導電部材と、を備える。導電部材は、ウエハ載置面と平行に設けられた回路部と、ウエハ載置面と平行かつウエハ載置面と反対の方向に回路部と離間して設けられた引出部と、回路部と引出部とを電気的に接続する接続部と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】
図1Aは、第1実施形態のウエハ保持体の模式的な縦断面図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aのセラミック基部をA1-A1及びB1-B1で切断したときの矢視図である。
【
図2A】
図2Aは、第2実施形態のウエハ保持体の模式的な縦断面図である。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aのセラミック基部をA2-A2、B2-B2及びC2-C2で切断したときの矢視図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態のウエハ保持体の代替例が有するセラミック基部の
図2Bに対応する矢視図である。
【
図4A】
図4Aは、第2実施形態のウエハ保持体の更に他の代替例の模式的な縦断面図である。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aのセラミック基部をA3-A3及びB3-B3で切断したときの矢視図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態のウエハ保持体の更に他の代替例が有するセラミック基部の
図4Bに対応する矢視図である。
【
図6A】
図6Aは、第3実施形態のウエハ保持体の模式的な縦断面図である。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aのセラミック基部をA4-A4及びB4-B4で切断したときの矢視図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態のウエハ保持体の更に他の代替例が有するセラミック基部の
図6Bに対応する矢視図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態のウエハ保持体の更に他の代替例が有するセラミック基部の
図4Bに対応する矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上記したように、ウエハ保持体ではセラミック基部の上面がウエハ載置面となるため、セラミック基部の内部に埋設されているRF電極や抵抗発熱体等に給電する端子部はセラミック基部の下面側に設ける必要がある。これら端子部は、半導体ウエハの処理の際にセラミック基部と共に高温状態になるので、CVDやエッチング時の反応性ガスとしてチャンバー内に導入されるハロゲンガス等の腐食性ガスから保護することが必要となる。
【0008】
そこで、RF電極や抵抗発熱体等の端子部、及びそれらに接続される給電線を上記筒状支持部の内側に収納すると共に、該筒状支持部の両端部をそれぞれセラミック基部の下面及びチャンバーの床面に気密シールすることが一般的に行われている。かかる構造により上記端子部が腐食により破損するのを防ぐことができるが、セラミック基部の下面のうち筒状支持部が取り付けられる中央部に端子部を配置することが必要になる。その結果、セラミック基部内においてウエハ載置面に平行な面内にほぼ全面に亘って敷き詰められているRF電極や抵抗発熱体等に対して中央部の端子部から給電するので、当該端子部とRF電極や抵抗発熱体等との接続部に過度の電気的な負荷がかかりやすくなり、セラミック基部の当該接続部において局所的な過熱が生じてウエハ載置面の均熱性が低下したり、セラミック基部自体が破損したりすることがあった。
【0009】
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。本開示のウエハ保持体は、ウエハ載置面を上面に有するセラミック基部と、前記セラミック基部に埋設された導電部材と、を備え、
前記導電部材は、前記ウエハ載置面と平行に設けられた回路部、前記ウエハ載置面と平行かつ前記ウエハ載置面と反対の方向に前記回路部と離間して設けられた引出部および前記回路部と前記引出部とを電気的に接続する接続部を含む。また前記セラミック基部は円板形状であってもよい。これにより、セラミック基部に埋設されているRF電極等の導電部材に対してその端子部から過度の電気的な負荷をかけることなく給電することができる。
【0010】
上記のウエハ保持体においては、前記セラミック基部の下面中央部から前記セラミック基部を支持する筒状支持部と、前記引出部と接続される電極端子部とをさらに備え、前記電極端子部の一部は前記セラミック基部の下面側から突出し、かつ、前記筒状支持部内に収容されていてもよい。また、前記筒状支持部は円筒形状であってもよい。これにより、電極端子部及びこれに接続される給電線を筒状支持部の内側に収容することができるので、これらを腐食環境から隔離することができる。
【0011】
上記のウエハ保持体においては、前記導電部材はRF電極又は抵抗発熱体を構成してもよい。またウエハ保持体は、複数の前記導電部材を備え、複数の前記導電部材はそれぞれがRF電極または抵抗発熱体を構成してもよい。これにより、RF電極における導電部材に対してその端子部への過度の電気的な負荷を低減することができるため、長期に亘って高い信頼性を維持することができる。また、抵抗発熱体においては回路パターンの設計の自由度が増すため、均熱性を向上させることができる。更に、RF電極や抵抗発熱体に従来のものより高い電圧を印加することができるので、処理速度を高めることができる。
【0012】
上記のウエハ保持体においては、前記セラミック基部に埋設され前記ウエハ載置面と平行に設けられた第2回路部と、前記回路部と接続される第2電極端子部とを、さらに備え、前記第2電極端子部の一部は前記セラミック基部の下面側から突出していてもよい。また、前記第2回路部はRF電極又は抵抗発熱体又は静電チャック電極にすることができる。これにより、セラミック基部内に埋設する電極の種類やそれらの形状の自由度を高めることができる。
【0013】
上記のウエハ保持体においては、前記接続部は金属層で覆われたセラミック部材であってもよい。これにより、ウエハ保持体にヒートサイクルによる熱膨張と収縮が繰り返される場合であっても破損しにくくすることが可能になる。
【0014】
次に、
図1A、
図1Bを参照しながら第1実施形態のウエハ保持体について説明する。
図1Aに示す第1実施形態のウエハ保持体10は、半導体ウエハに対してプラズマCVDなどのプラズマ雰囲気下での薄膜処理が行われる図示しないチャンバー内に搭載されるものである。ウエハ保持体10は、ウエハ載置面11aを上面に備えた円板形状のセラミック基部11と、セラミック基部11をセラミック基部11の下面中央部から支持する円筒形状の筒状支持部12とを有する。本開示において円板形状とは幾何学的に厳密な円板を意味するものではなく加工誤差等が含まれる。本開示において円筒形状とは幾何学的に厳密な円筒を意味するものではなく加工誤差等が含まれる。筒状支持部12の材質としてはセラミックスが好ましい。
【0015】
セラミック基部11や筒状支持部12の好適な材質であるセラミックスとしては、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム等を挙げることができる。これらの中では熱伝導率が高く耐腐食性にも優れた窒化アルミニウムが最も好ましい。
【0016】
筒状支持部12の両端部は例えば外側に屈曲したフランジ形状になっている。筒状支持部12の上端面をセラミック基部11の下面に対して焼結により接合してもよい。また、上記フランジ形状の屈曲部を貫通するネジ等の結合手段によって筒状支持部12をセラミック基部11の下面に接合してもよい。筒状支持部12の下端部については、上端部と同様にチャンバーの底面に接合してもよい。しかし、下端部は、クランプ等の結合手段により取外し自在に固定することが好ましい。
【0017】
セラミック基部11の内部には、RF電極の下部電極としての1組の導電部材13が埋設されている。導電部材13は、ウエハ載置面11aに対して平行な回路部14と、該ウエハ載置面11aに対して平行で且つ上記回路部14とはセラミック基部11の厚み方向に離間する引出部15と、回路部14と引出部15とを互いに電気的に接続する6個の接続部16とで構成されている。つまり、セラミック基部11は、ウエハ載置面11aと反対の方向に回路部14と離間して設けられた引出部15を有している。回路部14と引出部15は、
図1Aのセラミック基部11をA1-A1及びB1-B1でそれぞれ切断したときの矢視図を示す
図1Bから分かるように、いずれも円形パターンを有している。回路部14と引出部15は、セラミック基部11の中心部に関して同心円状となるように配されている。引出部15の外径は回路部14の外径よりも小さくなっている。引出部15の外周部に、周方向に均等な間隔をあけて6個の接続部16が配されている。
【0018】
回路部14と引出部15の材質は、導電性を有するものであれば特に制約はない。例えばステンレス箔などの金属箔を敷いてもよい。例えば、タングステン等の金属粉を含んだペーストをスクリーン印刷及び焼成して形成してもよい。接続部16の材質も導電性を有するものであれば特に制約はない。一例としては、円柱状のセラミック部材の外表面を金属層で覆ったものが好ましい。金属層の形成方法としては、例えば、セラミック部材の表面に金属ペーストを塗布した後、脱脂及び焼成することが挙げられる。金属層の他の例としては、セラミック部材に外嵌させるべく予め筒状に成形した金属製スリーブを用いてもよい。また、上記のセラミック部材は、上記のセラミック基部11とほぼ同じ熱膨張係数を有するものが好ましく、同じ材質であることがより好ましい。これにより、ヒートサイクルによる熱膨張や熱収縮が繰り返されても当該セラミック部材をセラミック基部11と同様に膨張・収縮させることができる。したがって、均熱性の低下や破損等の問題が生じにくくなる。
【0019】
引出部15の中央部には金属製の1個の電極端子部17が接続されている。電極端子部17の先端部は、セラミック基部11の下面中央部において突出している。つまり電極端子部17の一部はセラミック基部11の下面側から突出している。これにより、電極端子部17及び電極端子部17に接続される給電線(図示せず)を筒状支持部12の内側に収容することができる。なお、セラミック基部11の内部には、図示しない熱電対等の温度センサー、抵抗発熱体、静電チャック用電極等を設けてもよい。この場合は、これらの端子部もセラミック基部11の下面中央部から突出させることで上記電極端子部17と共に筒状支持部12の内側に収容することができる。筒状支持部12の内側で下方に向かって延在する給電線は、チャンバーの底面の貫通孔を通ってチャンバーの外部に引き出すことができる(図示せず)。
【0020】
かかる構成により、導電部材13に高周波電圧を印加する際に電極端子部との接続部において生じやすい電気的な過負荷の問題を抑えることができる。特に、RF電極の場合は、その回路部とウエハ載置面との間隔が狭いほど好ましい。よって、回路部に過度の電気的負荷がかかるとセラミック基部のうち回路部よりもウエハ載置面側の薄板部分が破損する恐れがあった。しかし、本開示のウエハ保持体10のように複数個の接続部16を用いることで電流を適度に分配することができる。したがって、局所的な過負荷の問題を抑えることができる。これによりウエハ保持体10を搭載した半導体製造装置の信頼性を高めることができる。
【0021】
次に
図2A、
図2Bを参照しながら第2実施形態のウエハ保持体20について説明する。
図2Aに示すように、円板形状のセラミック基部21と、これを下面中央部から支持する筒状支持部22とからなるウエハ保持体20は、セラミック基部21内に複数の導電部材が設けられていることを除いて、第1実施形態のウエハ保持体10と基本的に同じである。したがって以降はセラミック基部21について具体的に説明する。
【0022】
セラミック基部21の内部には、RF電極としての2組の導電部材23A、23Bが埋没されている。1組目の導電部材23Aは、ウエハ載置面21aに対して平行な回路部24Aと、ウエハ載置面21aに対して平行で且つ回路部24Aとはセラミック基部21の厚み方向に離間する引出部25Aと、回路部24Aと引出部25Aとを互いに電気的に接続する6個の接続部26Aとで構成されている。つまり、セラミック基部21は、ウエハ載置面21aと反対の方向に回路部24Aと離間して設けられた引出部25Aを有している。2組目の導電部材23Bも上記1組目と同様にウエハ載置面21aに対して平行な回路部24Bと、ウエハ載置面21aに対して平行で且つ回路部24Bとはセラミック基部21の厚み方向に離間する引出部25Bと、回路部24Bと引出部25Bとを互いに電気的に接続する4個の接続部26Bとで構成されている。つまり、セラミック基部21は、ウエハ載置面21aと反対の方向に回路部24Bと離間して設けられた引出部25Bを有している。
【0023】
図2Bから分かるように、回路部24Aと24Bは、ウエハ載置面21aに最も近い同じ層内に埋設されている。よって、回路部24Aはウエハ載置面21aの外径よりも外径の小さい同心円状の円形パターンを有している。回路部24Bは回路部24Aの外周をとり囲むように同心円状の環状パターンを有している。引出部25Aはセラミック基部21の厚み方向の略中央に位置する層内に埋設されている。引出部25Aの外径は回路部24Aの外径よりも小さい外径を有する円形パターンを有している。引出部25Aの外周部に、周方向に均等な間隔をあけて6個の接続部26Aが配されている。また、引出部25Aの中央部には金属製の1個の電極端子部27Aが接続している。その先端部は後述する引出部25Bの中央部の開口部を貫通してセラミック基部21の下面中央部から突出している。つまり、電極端子部27Aの一部はセラミック基部21の下面側から突出している。
【0024】
引出部25Bはセラミック基部21の最も下側に位置する層内に埋設されている。引出部25Bは、回路部24Bと略同径若しくはこれよりやや小さな外径を有する。引出部25Bは、中央部に円形の開口部を有する円形パターンを有している。引出部25Bの外周部に周方向に均等な間隔で4個の接続部26Bが配されている。また、引出部25Bの開口部の周りには金属製の4個の電極端子部27Bが接続している。電極端子部27Bの先端部はセラミック基部21の下面中央部において突出している。つまり、電極端子部27Bの一部はセラミック基部21の下面側から突出している。
【0025】
このように本発明の第2実施形態のウエハ保持体20は2組の導電部材23A及び23Bを有している。よって、2組の導電部材に別々にRF電圧を印加することができる。したがってウエハ載置面21a上方のプラズマ雰囲気を内側と外側で異なるように制御することができる。なお、第2実施形態はウエハ載置面21aをその径方向に2分割した内側円形パターンと外側環状パターンとからなる2ゾーン構造の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、様々なゾーン数や分割パターンが考えられる。
【0026】
例えば、
図3に示す第2実施形態の代替例では、上記した
図2A、
図2Bに示す2組の導電部材のうち内側の導電部材については同様である。しかし、外側の導電部材がウエハ載置面21aの周方向に均等に4つに分割されている。すなわち、セラミック基部121内に5組の導電部材が、埋設された5ゾーン構造になっている。具体的には、
図3に示すセラミック基部121では、
図2Bの環状パターンを周方向に略4等分した形状を有する4つの外側回路部124B、124C、124D、及び124Eが同じ層内の内側に位置する円形パターンの回路部124Aを外側からとり囲んでいる。そして、これら4つの外側回路部124B~124Eは、4つの略同形状の扇形パターンを有する引出部125B、125C、125D、及び125Eにそれぞれ接続部126B、126C、126D、及び126Eを介して電気的に接続している。これにより、ウエハ載置面121aの上方のプラズマ雰囲気をよりきめ細かく制御することが可能になる。
【0027】
あるいは
図4A、
図4Bに示す第2実施形態の他の代替例のように、ウエハ載置面をその中心を通る直線で2分割した2ゾーンに2組の同形状の導電部材をそれぞれ埋設した構造でもよい。すなわち、
図4Aに示すセラミック基部221の内部には、RF電極としての2組の導電部材223A、223Bが埋没されている。
【0028】
1組目の導電部材223Aは、ウエハ載置面221aに対して平行な回路部224Aと、該ウエハ載置面221aに対して平行で且つ回路部224Aとはセラミック基部221の厚み方向に離間する引出部225Aと、これら回路部224Aと引出部225Aとを互いに電気的に接続する2個の接続部226Aとで構成されている。つまり、セラミック基部221は、ウエハ載置面221aと反対の方向に回路部224Aと離間して設けられた引出部225Aを有している。2組目の導電部材223Bも上記1組目と同様にウエハ載置面221aに対して平行な回路部224Bと、該ウエハ載置面221aに対して平行で且つ回路部224Bとはセラミック基部221の厚み方向に離間する引出部225Bと、これら回路部224Bと引出部225Bとを互いに電気的に接続する2個の接続部226Bとで構成されている。つまり、セラミック基部221は、ウエハ載置面221aと反対の方向に回路部224Bと離間して設けられた引出部225Bを有している。
【0029】
図4Aのセラミック基部221をA3-A3及びB3-B3でそれぞれ切断したときの矢視図を示す
図4Bから分かるように、ウエハ載置面221aに最も近い同じ層内に埋設されている回路部224Aと224Bは、セラミック基部221の中心部を通る直線で2分割した半円形状パターンを有している。また、セラミック基部221の下面側に近い同じ層内に埋設されている引出部225Aと225Bも、上記と同様に2分割した半円形状パターンを有している。回路部224Aと引出部225Aは、それらの外周部に位置する2個の接続部226Aで互いに電気的に接続されている。回路部224Bと引出部225Bも同様に2個の接続部226Bを介して互いに電気的に接続されている。各組における2個の接続部は、回路部に均一な電圧を印加できるように、上記半円形状パターン内の線対象の位置であって且つセラミック基部221の中心部からそれらに延在する2本の線分のなす角が略直角となる位置に配されている。
【0030】
図4A、
図4Bに示すセラミック基部221では、ウエハ載置面をその中心部を通る直線で略2等分した2ゾーンに2組の同形状の導電部材をそれぞれ設けた2ゾーン構造であった。しかし、本開示のセラミック基部は、これに限定されるものではなく、ウエハ載置面を3ゾーン以上に分割した構造でもよい。例えば
図5に示す第2実施形態の更に他の代替例のウエハ保持体では、セラミック基部321のウエハ載置面を周方向に4等分して4組の同形状の導電部材をそれぞれ埋設した4ゾーン構造の例が示されている。
【0031】
具体的には、ウエハ載置面に最も近い同じ層内に埋設されている4つの回路部324A、324B、324C、及び324Dは、セラミック基部321のウエハ載置面をその中心を通る2本の互いに直交する直線で4分割した中心角90°の扇形パターンを有している。また、セラミック基部321の下面側に近い同じ層内に埋設されている引出部325A、325B、325C、及び325Dも、上記と同じ角度位置で同様に4分割した中心角90°の扇形パターンを有している。そして、各対の回路部と引出部とは、それらの外周部に位置する1個の接続部326A、326B、326C、又は326Dで互いに電気的に接続されている。かかる構造により、ウエハ載置面の上方のプラズマ雰囲気を周方向により精密に制御することが可能になる。
【0032】
次に
図6A、
図6Bを参照しながら第3実施形態のウエハ保持体について説明する。
図6Aに示す略円板形状のセラミック基部31と、セラミック基部31をセラミック基部31の下面中央部から支持する筒状支持部32とからなるウエハ保持体30は、セラミック基部31内に1組の導電部材と、引出部を介さずに直接電極端子部に接続する回路部とが設けられていることを除いて上記した第2実施形態のウエハ保持体20と基本的に同じである。従って以降はセラミック基部31について具体的に説明する。
【0033】
セラミック基部31の内部には、ウエハ載置面31aを径方向に分割した内側円形部と外側環状部の2ゾーンに、それぞれRF電極としての第2回路部34Aと回路部34Bが設けられている点において、第2実施形態の
図2Bの左側に示す分割パターンと同様である。また、回路部34Bは第2実施形態と同様に接続部36Bを介して引出部35Bに電気的に接続されている。しかし、第2回路部34Aが直接第2電極端子部37Aに接続している点が第2実施形態と異なっている。
【0034】
すなわち、
図6Aのセラミック基部31をA4-A4及びB4-B4でそれぞれ切断したときの矢視図を示す
図6Bから分かるように、第2回路部34Aは引出部やその接続のための接続部を介さずに直接第2電極端子部37Aに電気的に接続している。第2電極端子部37Aは一部がセラミック基部31の下面から突出している。第2電極端子部37Aの一部は、筒状支持部32の内部に収容されている。他方、1組の導電部材33Bは、
図2Bと同様に、ウエハ載置面31aに対して平行な回路部34Bと、ウエハ載置面31aに対して平行で且つ回路部34Bとはセラミック基部31の厚み方向に離間する引出部35Bと、回路部34Bと引出部35Bとを互いに電気的に接続する4個の接続部36Bとで構成されている。つまり、セラミック基部31は、ウエハ載置面31aと反対の方向に回路部34Bと離間して設けられた引出部35Bを有している。このように、ウエハ載置面31aの中央部に位置する第2回路部34Aは引出部を介さずに第2電極端子部37Aに直接接続している。よって、セラミック基部31内に導電部材を埋設する層の数を2層に抑えることができ、簡易に製造することが可能になる。
【0035】
尚、上記の第3実施形態ではウエハ載置面31aをその径方向に2分割した内側円形パターンと外側環状パターンとからなる2ゾーン構造の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、様々なゾーン数や分割パターンが考えられる。例えば
図7に示す第3実施形態の代替例では、上記した
図6A、
図6Bに示す内側の回路部については同様である。しかし、外側の導電部材がウエハ載置面131aの周方向に均等に4つに分割された5ゾーン構造になっている。
【0036】
具体的には、
図7に示す代替例のセラミック基部131では、
図6Bの環状パターンを周方向に略4等分した形状を有する4つの外側回路部134B、134C、134D、及び134Eが同じ層内の内側に位置する円形パターンの第2回路部134Aを外側からとり囲んでいる。そして、これら4つの外側回路部134B~134Eは、4つの略同形状の扇形パターンを有する引出部135B、135C、135D、及び135Eにそれぞれ接続部136B、136C、136D、及び136Eを介して電気的に接続している。これによりウエハ載置面131aの上方のプラズマ雰囲気をよりきめ細かく制御することが可能になる。
【0037】
上記の第1~第3の実施形態では、いずれも回路部がRF電極であるとして説明を行った。しかし、本開示はこれに限定されるものではなく、回路部が抵抗発熱体であってもよい。また、導電部材が2組以上の場合は、それらのうちの1組がRF電極であり、残りが抵抗発熱体でもよい。例えば
図8には、第2実施形態の2ゾーン構造において、セラミック基部421のウエハ載置面に最も近い同じ層内に回路部424A、424Bとして2個の発熱抵抗体が埋設されている例が示されている。
【0038】
すなわち、セラミック基部421の内部には、ウエハ載置面をその中心を通る直線で2分割した略半円形状パターンの2ゾーンのそれぞれに、同心円状の湾曲部と直線部とが一筆書き状に連結した形状の回路パターンを有する回路部424A、424Bが埋設されている。そして、これら回路部はセラミック基部421の厚み方向に離間する半円形状パターンを有する引出部425A、425Bにそれぞれ接続部426A、426Bを介して電気的に接続している。つまり、セラミック基部421は、ウエハ載置面と反対の方向に回路部424A、424Bと離間して設けられた引出部425A、425Bを有している。引出部425A、425Bの各々は、図示しない電極端子部に電気的に接続しており、その先端部がセラミック基部421の下面中央部で突出している。尚、引出部425A、425Bにおいてウエハ載置面の中心部に対応する部分は、各抵抗発熱体の1対の電極のうちの一方に干渉しないように半円状に切り欠かれている。
【0039】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0040】
窒化アルミニウム粉末99.5質量部に焼結助剤として酸化イットリウム0.5質量部を加え、更にバインダー、有機溶剤を加えて、ボールミル混合することにより、スラリーを作製した。得られたスラリーをスプレードライ法で噴霧することにより顆粒を作製し、これをプレス成形して3枚の同形状の成形体を作製した。これら成形体を窒素雰囲気中にて700℃の条件で脱脂した後、窒素雰囲気中において1850℃で焼結して、3枚の窒化アルミニウム焼結体を得た。得られた焼結体を、直径330mm、厚み8mmの円板状に加工した。このときの表面粗さはRaで0.8μm、平面度は50μmであった。
【0041】
上記3枚の窒化アルミニウムの焼結体のうち、中間部となる焼結体の中央部に内径8.0mmの貫通孔を周方向に均等な間隔をあけて6か所穿孔した。更に上記と同様の条件で作製した外径7.9mmの円柱状の窒化アルミニウム焼結体の外表面にWペーストを塗布し、窒素雰囲気中にて700℃で脱脂した後、窒素雰囲気中にて1830℃で焼成して外径8.0mm、高さ8mmの6個の接続部16を作製し、上記の貫通孔に嵌め込んだ。この中間部となる焼結体の一方の面に、
図1Bの左側の回路部14用円形パターンを、もう一方の面に右側の引出部15用円形パターンを形成すべくWペーストをスクリーン印刷により塗布し、窒素雰囲気中にて700℃で脱脂した後、窒素雰囲気中にて1830℃で焼成した。
【0042】
次に最上部及び最下部となる2枚の焼結体のそれぞれ片面に、接着用の窒化アルミニウムを主成分とする接着材料を塗布してから脱脂を行った。これら最上部及び最下部の接着材料を塗布した面が、上記の中間部となる焼結体に向き合うように挟み込んで接合させた。このようにして得た接合体に対して、その下面側に引出部15の中央部に達する1個の穴をザグリ加工し、そこに該引出部15に当接するようにW製の電極端子部17を嵌入した。
【0043】
このようにして作製したセラミック基部11の下面側に、両端部にフランジ部を有する内径60mm、高さ150mm、肉厚2mmのAlN製の筒状支持部12の一端部をネジで接合した。尚、フランジ部とセラミック基部11の接合面との間はO-リングを用いて気密にシールした。そして、筒状支持部12の内側でセラミック基部11の下面側から突出している電極端子部17に給電線を接続した。このようにして作製した試料1のウエハ保持体10をCVD装置のチャンバー内に搭載し、筒状支持部12の他端部をチャンバーの底部にO-リングで気密シールした状態でクランプを用いて固定した。
【0044】
比較のため、厚み8mmの3枚の円板状焼結体に代えて厚み8mmと16mmの2枚の円板状焼結体を作製し、厚み8mmの焼結体の片面に回路部14を成膜し、厚み16mmの焼結体の片面に上記と同様の接着材料を塗布、脱脂してから両焼結体を重ね合わせて接合すること以外は上記試料1と同様にして引出部及びこれとの接続用の接続部を介さずに回路部の中央部に直接電極端子部が接続された試料2のウエハ保持体を製作し、チャンバー内に搭載した。これら試料1及び2のウエハ保持体の各々に対して、ウエハ載置面にセンサレー社製の300mm17点ウエハ測温計を載置した状態で13.56MHzの高周波電圧を印加する運転を行った。その結果、試料1ではウエハ記載面の均熱性に変化がなく高い均熱性が保たれていたが、試料2では中央部での局所発熱により中央部の温度が上昇し均熱が悪化する結果となった。これは電極端子部との接続部分において過負荷になっていたことによるものと考えられる。
【符号の説明】
【0045】
10、20、30 ウエハ保持体
11、21、31、121、131、221、321、421 セラミック基部
11a、21a、31a、221a ウエハ載置面
12、22、32、222 筒状支持部
13、23A、23B、33B、223A、223B 導電部材の組
14、24A、24B、34B、224A、224B、124A、124B、124C、124D、124E、134B、134C、134D、134E、224A、224B、324A、324B、324C、324D、424A、424B 回路部
34A、134A 第2回路部
15、25A、25B、35B、225A、225B、125A、125B、125C、125D、125E、135B、135C、135D、135E、225A、225B、325A、325B、325C、325D、425A、425B 引出部
16、26A、26B、36B、226A、226B、126A、126B、126C、126D、126E、136B、136C、136D、136E、226A、226B、326A、326B、326C、326D、426A、426B 接続部
17、27A、27B、37B、227A、227B 電極端子部
37A 第2電極端子部