(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/89 20130101AFI20241106BHJP
【FI】
A61F2/89
(21)【出願番号】P 2022507224
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009327
(87)【国際公開番号】W WO2021182475
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2020043037
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】山本 彩佳
(72)【発明者】
【氏名】福瀧 修司
(72)【発明者】
【氏名】西原 愛美
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10103000(DE,A1)
【文献】特表2019-520116(JP,A)
【文献】特開2019-155178(JP,A)
【文献】国際公開第2020/196911(WO,A1)
【文献】欧州特許第1909710(EP,B1)
【文献】欧州特許第0918496(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状部材によって複数の開口を有する筒状に形成されて軸方向に延び、縮径した状態から拡径した状態に変形可能なステントであって、
前記ステントは、軸方向に視た場合に多角形の環状に形成された複数の多角形環状部を、軸方向に屈曲又は湾曲した状態で、軸方向に並べて接続されることで形成され、
軸方向に隣り合う前記多角形環状部を構成する線状部材は、それぞれ、軸方向に貫通する貫通孔を有し、隣り合う前記多角形環状部を構成する線状部材の2つの前記貫通孔を貫通する接合部材により接続されるステント。
【請求項2】
線状部材によって複数の開口を有する筒状に形成されて軸方向に延び、縮径した状態から拡径した状態に変形可能なステントであって、
前記ステントは、軸方向に視た場合に多角形の環状に形成された複数の多角形環状部を、軸方向に屈曲又は湾曲した状態で、軸方向に並べて接続されることで形成され、
前記多角形環状部は、線状部材の一端部及び他端部が接合されることで環状に形成され、
前記多角形環状部の一端部及び他端部は、それぞれ、軸方向に貫通する貫通孔を有し、隣り合う前記多角形環状部を構成する線状部材の2つの前記貫通孔を貫通する接合部材により接続されるステント。
【請求項3】
前記接合部材は、前記2つの貫通孔を貫通して軸方向に延びる請求項1又は2に記載のステント。
【請求項4】
前記ステントを構成する線状部材及び前記接合部材の少なくとも一方は、生分解性繊維により形成される請求項1~3のいずれかに記載のステント。
【請求項5】
前記貫通孔は、針又はレーザーで形成される請求項1~4のいずれかに記載のステント。
【請求項6】
前記接合部材は、直線状又は輪状に形成される請求項1~5のいずれかに記載のステント。
【請求項7】
前記接合部材は、線状に延びると共に、前記ステントの周方向に離れて複数設けられ、
1の前記接合部材は、前記ステントの軸方向に隣り合う前記多角形環状部を構成する前記線状部材を、前記2つの貫通孔を貫通すると共に交差することで接合し、かつ、前記2つの貫通孔を前記ステントの軸方向に沿った複数箇所において接合する請求項1~6のいずれかに記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管や消化管等の生体管路の狭窄性疾患(腫瘍や炎症等)において、狭窄部にステントを留置して、狭窄部を拡張する治療が行われている。ステントとしては、例えば金属製や合成樹脂製のステントが知られている。
例えば、ステントとして、軸方向に視た場合に多角形の環状に線状部材により形成された複数の多角形環状部を、軸方向に屈曲又は湾曲した状態で、前記ステントの軸方向に並べて接続されることで形成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のステントは、隣り合う多角形環状部の接続部分を短い筒状のチューブに通した状態で、チューブ部分を接着剤等により固定することで接合される。この場合には、隣り合う多角形環状部の接続部分において、チューブが筒状に形成されるため、ステントの径方向のかさばりが生じて、デリバリーシステムへの収納が困難であった。
【0005】
本発明は、デリバリーシステムへの収納性を向上できるステントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、線状部材によって複数の開口を有する筒状に形成されて軸方向に延び、縮径した状態から拡径した状態に変形可能なステントであって、前記ステントは、軸方向に視た場合に多角形の環状に形成された複数の多角形環状部を、軸方向に屈曲又は湾曲した状態で、前記ステントの軸方向に並べて接続されることで形成され、軸方向に隣り合う前記多角形環状部を構成する線状部材は、それぞれ、軸方向に貫通する貫通孔を有し、隣り合う前記多角形環状部を構成する線状部材の2つの前記貫通孔を貫通する接合部材により接続されるステントに関する。
【0007】
また、本発明は、線状部材によって複数の開口を有する筒状に形成されて軸方向に延び、縮径した状態から拡径した状態に変形可能なステントであって、前記ステントは、軸方向に視た場合に多角形の環状に形成された複数の多角形環状部を、軸方向に屈曲又は湾曲した状態で、前記ステントの軸方向に並べて接続されることで形成され、前記多角形環状部は、線状部材の一端部及び他端部が接合されることで環状に形成され、前記多角形環状部の一端部及び他端部は、それぞれ、軸方向に貫通する貫通孔を有し、隣り合う前記多角形環状部を構成する線状部材の2つの前記貫通孔を貫通する接合部材により接続されるステントに関する。
【0008】
また、前記接合部材は、前記2つの貫通孔を貫通して軸方向に延びることが好ましい。
【0009】
また、前記ステントを構成する線状部材及び前記接合部材の少なくとも一方は、生分解性繊維により形成されることが好ましい。
【0010】
また、前記接合部材は、線状に延びると共に、前記ステントの周方向に離れて複数設けられ、1の前記接合部材は、前記ステントの軸方向に隣り合う前記多角形環状部を構成する前記線状部材を、前記2つの貫通孔を貫通すると共に交差することで接合し、かつ、前記2つの貫通孔を前記ステントの軸方向に沿った複数箇所において接合することが好ましい。
【0011】
また、前記貫通孔は、針又はレーザーで形成されることが好ましい。
【0012】
また、前記接合部材は、直線状又は輪状に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、デリバリーシステムへの収納性を向上できるステントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るステントを示す斜視図である。
【
図3】隣り合う多角形環状部の接合状態を示す図である。
【
図4】多角形環状部の一端部及び他端部の接合状態を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係るステントを示す斜視図である。
【
図7】ステントの軸方向に沿った複数箇所において接合する線状接合部材を示す図である。
【
図8】ステントの軸方向の中間側において所定箇所を接合する線状接合部材の接合状態を示す図である。
【
図9】ステントの軸方向の端部側において接合する線状接合部材の接合状態を示す図である。
【
図10】第2実施形態の変形形態であって、ステントの軸方向の端部側において接合する線状接合部材の接合状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明のステントの第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の説明においては、ステント1が全体として延びる方向を軸方向Jという。
図1は、本発明の第1実施形態に係るステント1を示す斜視図である。
図2は、本実施形態のステント1の分解図である。
図3は、隣り合う多角形環状部2の接合状態を示す図である。
図4は、多角形環状部2の一端部25及び他端部26の接合状態を示す図である。
【0016】
本実施形態のステント1は、生分解性繊維(線状部材)によって複数の開口を有して構成されるステント1である。ステント1は、
図1に示すように、全体として軸方向Jに延びる筒状に形成され、縮径した状態(軸方向Jに伸長した状態)と拡径した状態(軸方向Jに収縮した状態)との間で変形可能である。
【0017】
ステント1は、
図2に示すように、複数の多角形環状部2を軸方向Jに並べて接続することにより、複数の開口を有する筒状に形成される。複数の多角形環状部2は、それぞれ、合成樹脂製の繊維によって環状に形成される。多角形環状部2は、周方向の途中において、軸方向Jの一方側及び他方側に交互に屈曲して形成される屈曲部21,22を有する。屈曲部21,22は、多角形環状部2の山部及び谷部を構成する。本実施形態においては、多角形環状部2の山部の数は、例えば、3である。屈曲部21は、軸方向Jの一方側(
図1及び
図2における左側)に凸となるように形成されており、屈曲部22は、軸方向Jの他方側(
図1及び
図2における右側)に凸となるように形成されている。
【0018】
軸方向に隣り合う多角形環状部2は、接合部材3により、軸方向Jに接続される。隣り合う多角形環状部2は、軸方向に互いが近づく側に凸形状である屈曲部21及び屈曲部22において、接合部材3により接続される。
【0019】
図3に示すように、軸方向Jに隣り合う多角形環状部2を構成する生分解性繊維(線状部材)には、屈曲部21及び屈曲部22において、それぞれ、軸方向Jに貫通する貫通孔23が形成されている。貫通孔23は、例えば、針やレーザー等により生分解性繊維に形成される。貫通孔23の形状は、例えば、円形や四角形等で形成される。貫通孔23には、直線状の接合部材3の接合部材直線状部31が挿入され、接合部材直線状部31が延びる方向の両端部に形成される加工端部32において、熱で溶かされる加工が施されている。これにより、加工端部32は、貫通孔23よりも太径となっている。接合部材3は、貫通孔23を貫通して軸方向Jに延びる。接合部材3は、隣り合う多角形環状部2を構成する生分解性繊維の2つの貫通孔23を貫通する。
【0020】
各多角形環状部2を構成する生分解性繊維(線状部材)は、
図1及び
図2に示すように、一端部25及び他端部26が接合されることで、軸方向Jに延びる中心軸を中心に環状に形成される。
本実施形態においては、多角形環状部2を構成する生分解性繊維の一端部25及び他端部26は、生分解性繊維が延びる方向に対して傾斜して切断され、傾斜した切断面が互いに合わされることで接合されている。なお、多角形環状部2を構成する生分解性繊維の一端部25及び他端部26は、生分解性繊維が延びる方向に対して傾斜して切断されずに、生分解性繊維が延びる方向に対して直交して切断されていてもよい。この場合に、一端部25及び他端部26を、軸方向Jにおいて重なるように配置してもよい。
【0021】
図4に示すように、多角形環状部2を構成する生分解性繊維(線状部材)の一端部25及び他端部26には、軸方向Jに貫通する貫通孔27が形成されている。貫通孔27には、直線状の接合部材4の接合部材直線状部41が挿入され、接合部材直線状部41が延びる方向の両端部に形成される加工端部42において、熱で溶かされる加工が施されている。これにより、加工端部42は、貫通孔27よりも太径となっている。接合部材4は、貫通孔27を貫通して軸方向Jに延びる。接合部材4は、隣り合う多角形環状部2を構成する生分解性繊維の2つの貫通孔23を貫通する。
【0022】
多角形環状部2を構成する線状部材及び接合部材3,4の材質に特に制限はないが、例えば、本実施形態においては、生分解樹脂が用いられる。生分解性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)や、ポリジオキサノン(PDO)が使用される。なお、多角形環状部2を構成する線状部材及び接合部材3,4の材質は、これらに限定されず、例えば、非生分解性樹脂を使用してもよいし、マグネシウム等の生分解性を有する金属を使用してもよい。
【0023】
以上のステント1を構成する合成樹脂製の繊維のファイバー径は、例えば、0.05mm~0.7mmであり、好ましくは、0.4mm~0.6mmである。ステント1を構成する合成樹脂製の繊維のファイバー径が、例えば0.4mm~0.6mmである場合には、貫通孔23の孔径は、0.2mm~0.3mmが好ましい。
また、ステント1の大きさは特に制限されないが、例えば、拡径した状態において直径が10~25mmであり、長さが、30mm~250mmである。
【0024】
本実施形態において、例えば、次のようなステント1を作成した。
PDOファイバー(ファイバー径0.4mm~0.6mm)を使用して、3つの多角形環状部2を軸方向Jに繋げることで、ステント1を作成した。
ここで、PDOファイバー(ファイバー径0.4mm~0.6mm)の屈曲部21,22に、径0.2mmの針で丸い貫通孔23を形成した。この場合、貫通孔23の実測径は0.197mmであった。
各多角形環状部2を、屈曲部21,22に形成された貫通孔23において、PLAファイバー(ファイバー径0.2mm)の接合部材3を用いて接合した。PLAファイバー(ファイバー径0.2mm)の接合部材3の両端部は、貫通孔23に挿入した後に、熱で溶かすことで抜けないように加工した。
【0025】
なお、貫通孔23を針で形成することには限定されず、レーザーを使用して形成してもよい。この場合、PDOファイバー(ファイバー径0.56mm)を使用して、PDOファイバー(ファイバー径0.56mm)の屈曲部21,22に、レーザーで貫通孔23を形成した。貫通孔23の実測径の平均(6カ所の平均)は、0.186mmであった。
【0026】
以上説明した本実施形態のステント1によれば、以下のような効果を奏する。
【0027】
(1)ステント1を、軸方向Jに視た場合に多角形の環状に生分解性繊維により形成された複数の多角形環状部2を、軸方向Jに屈曲又は湾曲した状態で、ステント1の軸方向Jに並べて接続することで形成した。そして、軸方向Jに隣り合う多角形環状部2を構成する生分解性繊維を、それぞれ、軸方向Jに貫通する貫通孔23を有するように構成し、貫通孔23を貫通して軸方向Jに延びる接合部材3により接続した。
これにより、軸方向Jに貫通する貫通孔23において、隣り合う多角形環状部2を軸方向Jに延びる接合部材3により接合することで、ステント1の径方向のかさばりを低減できる。よって、例えば、ステントデリバリーシステムにおいて、ステント1を消化管内に留置する場合、ステントデリバリーシステムへの収納性を向上させることができる。また、デリバリーシステムへの収納性が向上されることで、より径の大きいファイバーを使用することが可能となり、ステント1の強度を向上させることができる。また、より径の大きいファイバーを使用することが可能となることで、貫通孔23の径を大きくすることができる。
また、隣り合う多角形環状部2がチューブや接着剤等で固定されていないため、複数の多角形環状部2の接合部分において、ファイバーが柔軟に動くことができるため、消化管への蠕動運動への追従性を向上させることができる。
【0028】
(2)ステント1を、軸方向Jに視た場合に多角形の環状に生分解性繊維により形成された複数の多角形環状部2を、軸方向Jに屈曲又は湾曲した状態で、ステント1の軸方向Jに並べて接続することで形成した。そして、多角形環状部2を、生分解性繊維の一端部25及び他端部26を接合することで環状に形成し、多角形環状部2の一端部25及び他端部26を、それぞれ、軸方向Jに貫通する貫通孔27を有するように構成し、貫通孔27を貫通して軸方向Jに延びる接合部材4により接続した。
これにより、例えば、ステントデリバリーシステムにおいて、ステント1を消化管内に留置する場合、本実施形態のステント1は、軸方向Jに貫通する貫通孔27において、多角形環状部2の一端部25及び他端部26を接合部材4により接合するため、ステント1の径方向のかさばりを低減でき、ステントデリバリーシステムへの収納性を向上させることができる。また、ステントデリバリーシステムへの収納性が向上されることで、より径の大きいファイバーを使用することが可能となり、ステント1の強度を向上させることができる。また、より径の大きいファイバーを使用することが可能となることで、貫通孔27の径を大きくすることができる。
【0029】
(3)ステント1を構成する線状部材及び接合部材3,4の少なくとも一方を、生分解性繊維により形成した。これにより、ステント1を複数の多角形環状部2を軸方向Jに並べて接合部材3により接続することにより、線状部材又は接合部材3,4において破断させてステント1を分解させるタイミングをコントロールできる。よって、より狙ったタイミングで、ステント1を分解させることができる。
【0030】
(変形形態)
接合部材の変形形態について説明する。
図5Aは、第1変形形態の接合部材3Aを示す図である。
図5Bは、第2変形形態の接合部材3Bを示す図である。
図5Cは、第3変形形態の接合部材3Cを示す図である。なお、変形形態の接合部材3A,3B,3Cにおいて、多角形環状部2を軸方向Jに接続する場合について説明するが、前述の実施形態における多角形環状部2の一端部25及び他端部26を軸方向Jに接続する場合も同様である。
【0031】
第1変形形態の接合部材3Aは、
図5Aに示すように、直線状の接合部材本体31Aの両端部に結び目32A,32Aを形成することで構成される。
第2変形形態の接合部材3Bは、
図5Bに示すように、貫通孔23に貫通された状態で輪状に形成することで構成される。
第3変形形態の接合部材3Cは、
図5Cに示すように、直線状の接合部材本体31Cの両端部に返し部32C,32Cが形成されており、接合部材本体31Cの両端部を加工することなく、返し部32C,32Cを折り畳んで貫通孔23に接合部材本体31Cを挿入した後に、多角形環状部2を構成する生分解性繊維(線状部材)に返し部32Cを引っ掛かるように広げることで構成される。
第1変形形態の接合部材3A、第2変形形態の接合部材3B及び第3変形形態の接合部材3Cによれば、前記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0032】
以上、本発明のステントの好ましい一実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0033】
例えば、前記実施形態では、ステントの線状部材として、生分解性の繊維を用いたがこれに限らない。即ち、生分解性を有さない合成樹脂繊維を用いてステントを構成してもよい。また、ステントの線状部材として、例えば、マグネシウム等の生分解性を有する金属材料を用いてステントを構成してもよい。
【0034】
また、前記実施形態では、多角形環状部2を軸方向Jに複数並べて接続したステント1について説明した。ここで、本発明において、「ステントは、・・・複数の多角形環状部を、・・・軸方向に並べて接続される」とは、ステントが、複数の多角形環状部を軸方向に並べた形状に形成されていればよく、例えば、前記実施形態のように、複数の多角形環状部を別々に作成して軸方向に並べて形成して、接続が必要な箇所において、軸方向に延びる接合部材により接続してもよいし、前記実施形態の構成に限定されず、例えば、1本又は2本以上の線状部材を螺旋状に編むことで複数の多角形環状部を並べた形状に形成して、接続が必要な箇所において、軸方向に延びる接合部材により接続してもよい。また、線状部材の数は制限されない。
【0035】
また、前記実施形態では、多角形環状部2を軸方向Jに3つ並べて接続したステント1について説明したが、これに限定されない。例えば、多角形環状部2を軸方向Jに4つ以上並べて接続したステントとしてもよい。また、多角形環状部2の角の数は、限定されない。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態のステント1Aについて説明する。第2実施形態において説明しない部分については、第1実施形態の説明を援用できる。
本実施形態のステント1Aは、生分解性繊維(線状部材)によって複数の開口を有して構成されるステント1Aである。ステント1Aは、
図6及び
図7に示すように、全体として軸方向J1に延びる筒状に形成され、縮径した状態(軸方向J1に伸長した状態)と拡径した状態(軸方向J1に収縮した状態)との間で変形可能である。
【0037】
ステント1Aは、複数の多角形環状部6を軸方向J1に並べて接続することにより、複数の開口を有する筒状に形成される。複数の多角形環状部6は、それぞれ、合成樹脂製の繊維によって環状に形成される。多角形環状部6は、周方向の途中において、軸方向J1の一方側及び他方側に交互に屈曲して形成される屈曲部61,62を有する。屈曲部61,62は、多角形環状部6の山部及び谷部を構成する。屈曲部61は、軸方向J1の一方側(
図6における左側)に凸となるように形成されており、屈曲部62は、軸方向J1の他方側(
図6における右側)に凸となるように形成されている。
【0038】
軸方向に隣り合う多角形環状部6は、軸方向に互いが近づく側に凸形状である屈曲部61及び屈曲部62において、複数の線状接合部材7(接合部材)により、軸方向J1に接続される。
【0039】
複数の線状接合部材7は、それぞれ、1本の線状の部材により、2つの貫通孔63をステント1Aの軸方向に沿った複数箇所において接合する。1本の線状接合部材7は、それぞれ、ステント1Aの周方向の位置を一方側及び他方側に交互にずらしたジグザグ形状で、ステント1Aの軸方向に延びる線状に形成される。線状接合部材7は、ステント1Aの周方向に離れて複数設けられる。
【0040】
図8及び
図9に示すように、屈曲部61及び屈曲部62において、軸方向J1に隣り合う多角形環状部6を構成する生分解性繊維には、それぞれ、軸方向J1に貫通する貫通孔63が形成されている。貫通孔63は、例えば、針やレーザー等により生分解性繊維に形成される。貫通孔63の形状は、例えば、円形や四角形等で形成される。貫通孔63には、線状接合部材7が挿入される。
【0041】
複数の線状接合部材7は、
図7に示すように、いずれも、ステント1Aの軸方向の両端部よりも内側に配置される複数の中間接合部71において、軸方向に隣り合う多角形環状部6を構成する生分解性繊維を接合し、ステント1Aの軸方向の両端部側に配置される端部側接合部72において、軸方向に隣り合う多角形環状部6を接合する。
【0042】
より具体的には、中間接合部71においては、
図8に示すように、線状接合部材7は、隣り合う多角形環状部6を構成する生分解性繊維の2つの貫通孔63を貫通すると共に交差することで、軸方向に隣り合う多角形環状部6を構成する生分解性繊維を接合する。線状接合部材7は、中間接合部71における2つの貫通孔63を貫通する部分において、軸方向に延びる。
【0043】
また、端部側接合部72においては、
図9に示すように、線状接合部材7は、隣り合う多角形環状部6を構成する生分解性繊維の2つの貫通孔63を貫通すると共に、線状接合部材7の端部に貫通孔63よりも外径の大きいチューブ73を接着剤により固定することで、軸方向に隣り合う多角形環状部6を構成する生分解性繊維を接合する。線状接合部材7は、端部側接合部72における2つの貫通孔63を貫通する部分において、軸方向に延びる。
【0044】
なお、端部側接合部72における線状接合部材7による接合状態は、これに限定されない。例えば、
図10に示すように、線状接合部材7Aは、2つの貫通孔63を貫通すると共に、線状接合部材7Aの端部側を8の字となるように交差させて結ぶことで、軸方向に隣り合う多角形環状部6を構成する生分解性繊維を接合してもよい。
【0045】
第2実施形態のステント1Aによれば、第1実施形態のステント1と同様の効果を奏する。具体的には、第2実施形態によれば、軸方向J1に隣り合う多角形環状部6を構成する生分解性繊維を、線状接合部材7が2つの貫通孔63を貫通して接合することで、ステント1の径方向のかさばりを低減できる。よって、例えば、ステントデリバリーシステムにおいて、ステント1を消化管内に留置する場合、ステントデリバリーシステムへの収納性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態においては、1本の線状接合部材7により、ステント1の軸方向に隣り合う多角形環状部6を構成する生分解性繊維を、2つの貫通孔63を貫通すると共に交差することで接合し、かつ、2つの貫通孔63をステント1の軸方向に沿った複数箇所において接合した。これにより、線状接合部材7を複数の部材により構成しなくてよいため、取り扱いが容易となり、隣り合う多角形環状部6を構成する生分解性繊維を容易に接合できる。
【0047】
また、第1実施形態では、2つの貫通孔23を両端部が熱で溶かされて加工された短い長さの接合部材3で接合した。これに対して、第2実施形態では、1本の線状接合部材7により、2つの貫通孔63を、ステント1の軸方向に沿った複数箇所において接合するため、多角形環状部6を構成する生分解性繊維が引っ張られた際の引張強度を向上できる。
【実施例】
【0048】
ここで、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の実施例及び比較例のステントをステントデリバリーシステムに収容する実験を行った。実施例及び比較例のステントは、ともに、PDOファイバー(ファイバー径0.40mm~0.499mm)、ステント径18mm、山数3の多角形環状部2を用いて、
図1に示すように、3つの多角形環状部2を軸方向Jに接続したものである。
実施例のステント1においては、
図1に示すように、隣り合う多角形環状部2を接合部材3で接続した。
比較例においては、隣り合う多角形環状部2の互いに向かい合う屈曲部をチューブに挿入して接着剤により固定することで、隣り合う多角形環状部2を接続した。
【0049】
実施例及び比較例のステントを用いて、ステントデリバリーシステムに収納する実験を行った。ステントは、一般的に、次のようなステントデリバリーシステムに収納されて、消化管の内部に留置される。例えば、ステントデリバリーシステムは、消化管の内部に挿入される筒状のアウターシース部材(外筒)(図示せず)と、押し子部材(図示せず)と、を備える。アウターシース部材の内側には、ステントを収納可能である。ステントは、アウターシース部材の内側において、縮径された状態(軸方向に伸長された状態)で配置される。この状態で、アウターシース部材の内側の基端側に配置された押し子部材により、アウターシース部材の先端側からステントを押し出す。ステントは、アウターシース部材の先端側から押し出されて、消化管の内部において拡径されて、消化管の内部に留置される。
【0050】
このようなステントデリバリーシステムを用いて、アウターシース部材の内径が3.1mmである場合に、実施例のステントをアウターシース部材の内部に、実施例及び比較例のステントを収納する実験を行った。
実施例のステントを用いた場合には、径方向のかさばりが低減されて、消化管内に配置されたアウターシース部材の内部にステントを収納するができた。比較例のステントを用いた場合には、消化管内に配置されたアウターシース部材の内部にステントを収納することができなかった。
以上の結果により、本発明によれば、ステントデリバリーシステムへの収納性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ステント
2 多角形環状部
3 接合部材
4 接合部材
23 貫通孔
25 一端部
26 他端部
27 貫通孔
J 軸方向