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特許7582298ソフトコンタクトレンズ用都市大気粉塵(PM2.5)及び黄砂吸着抑制剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ソフトコンタクトレンズ用都市大気粉塵(PM2.5)及び黄砂吸着抑制剤
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20241106BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20241106BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G02C13/00
G02C7/04
C08F220/36
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022510461
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011609
(87)【国際公開番号】W WO2021193491
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2020056720
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 久
(72)【発明者】
【氏名】土田 衛
(72)【発明者】
【氏名】原田 英治
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-060917(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140242(WO,A1)
【文献】特開2016-074629(JP,A)
【文献】特開2011-075943(JP,A)
【文献】特開2019-043970(JP,A)
【文献】特開平10-177152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 13/00
G02C 7/04
C08F 220/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量10,000~5,000,000であり、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)10~90モル%と、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B1)、4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B2)、及び(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(B3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位90~10モル%を含有する共重合体(P)を含有するソフトコンタクトレンズ用都市大気粉塵(PM2.5)及び黄砂吸着抑制剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。式(B1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数4~18のアルキル基を示す。式(B2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基を示し、Xはハロゲンイオンもしくは酸残基を示す。式(B3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の構造を有する共重合体を含むソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野におけるアレルギー性結膜炎の主な原因は、スギ花粉やヒノキ花粉等の花粉粒子やハウスダストなどによるものであるとされている。しかし、近年の世界的な大気汚染の影響によって、黄砂、PM10やPM2.5といった無機系の微小粒子状物質によってもアレルギー性結膜炎を引き起こすことが報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。これら大気汚染物質が結膜や角膜等へ付着、吸着することでアレルギー症状を発症させ、充血、目やに、涙目などの症状が現れる。そこで、これらアレルギー症状を治療、緩和、予防するための技術開発は様々行われており、例えば、薬学的・化学的な手法として、抗アレルギー薬を配合した医薬品や点眼剤により治療、緩和を行うもの(特許文献1)や、物理的な手法として眼鏡やマスクなどを装着し、そもそも大気汚染物質等を結膜や角膜への接触を抑制するもの(特許文献2、特許文献3)などが知られている。薬学的・化学的な手法は高い有効性を発現するものの眠気を誘発するなどの副作用が生じることも知られており、また、物理的な手法については結膜や角膜に大気汚染物質が付着、吸着する前であれば有効であるものの、一旦、結膜や角膜に大気汚染物質が付着、吸着すると、その有効性は失われてしまうと考えられる。
更に、ソフトコンタクトレンズ装用者に至っては、これら大気汚染物質が、一度、ソフトコンタクトレンズ表面に付着、吸着すると、涙液や人工涙液等で洗い流すことは難しく、長時間にわたって、アレルギー症状が持続する懸念もあった。
このため、結膜や角膜、更にはソフトコンタクトレンズの表面に対して、大気汚染物質の付着、吸着を抑制することで、アレルギー症状の緩和や不快感の緩和、軽減できる技術開発が求められていたものの、これらに対する技術開発は十分行われておらず、これまでに有効な手法等は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-203791号公報
【文献】特開2017-134100号公報
【文献】特開2014-111147号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】三村達哉、トピックス1.眼科領域におけるアレルギーと環境因子、アレルギー、63(7), 901-906, 2014.
【文献】Tatsuya Mimura et al., Airborne particulate matter (PM2.5) and the prevalence of allergic conjunctivitis in Japan, Science of the Total Environment, 493-499, 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ソフトコンタクトレンズの表面に対し、無機系微粒子でPM10、PM5、PM2.5といった微粒子の吸着を抑制することで、アレルギー性結膜炎の症状を緩和、低減し、さらには、不快感を改善するソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ソフトコンタクトレンズに対して、特定の重量平均分子量を有し、かつ特定構造の共重合体を含む材料を用いることで、PM10、PM5、PM2.5といった無機系有害微粒子の吸着を抑制できることが分かった。これによりアレルギー性結膜炎の症状を緩和、低減し、さらには、不快感を改善できるソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤としてソフトコンタクトレンズ用都市大気粉塵(PM2.5)及び黄砂吸着抑制剤を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤であるソフトコンタクトレンズ用都市大気粉塵(PM2.5)及び黄砂吸着抑制剤は以下のとおりである。
【0007】
[1]重量平均分子量10,000~5,000,000であり、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)10~90モル%と、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B1)、4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B2)、(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(B3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位90~10モル%を含有する共重合体(P)を含有するソフトコンタクトレンズ用都市大気粉塵(PM2.5)及び黄砂吸着抑制剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。式(B1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数4~18のアルキル基を示す。式(B2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基を示し、Xはハロゲンイオンもしくは酸残基を示す。式(B3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤を用いることで、ソフトコンタクトレンズの装着後にPM2.5やPM5、PM10の無機系微粒子の吸着を抑制できアレルギー性結膜炎の症状の緩和、低減を行うことができるので、不快感も改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤は、共重合体(P)を含有する。
以下に本発明の詳細を説明する。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、濃度や重量平均分子量の範囲など)を段階的に記載した場合、各下限値及び上限値は、それぞれ独立して組合せることができる。例えば、「好ましくは10以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは90以下」という記載において、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90」とを組合せて、「10以上90以下」とする事ができる。例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載においても、同様に「10~90」とすることができる。
本発明において、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタアクリル(メタクリル)を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタアクリロイル(メタクリロイル)を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレート(メタクリレート)を意味する。
【0010】
<ソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤>
本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)と、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B1)、4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B2)および(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(B3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位とを含有する共重合体(P)を含有する。
【0011】
<2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)>
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)は、下記の式(A)で表され、より具体的には式(A’)で表される単量体の重合によって得られる。
【化5】

【化6】

式(A)及び式(A’)において、Rは水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくはメチル基である。
【0012】
本発明に用いる共重合体(P)は、分子鎖中に構成単位(A)を有することによって、ソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子吸着抑制効果を発現することができる。
本発明に用いる共重合体(P)中の構成単位(A)の含有量は、10~90モル%である。含有量が10モル%未満であると無機系微粒子吸着抑制効果の発現が期待できず、90モル%より多いと、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのセグメントが有する超親水性のためにソフトコンタクトレンズへの吸着性が低下し、ソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子吸着抑制効果の付与が望めなくなる。
共重合体(P)中の構成単位(A)の含有量は、好ましくは20~90モル%、より好ましくは30~90%である。
【0013】
<アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B1)>
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B1)は、下記の式(B1)で表され、より具体的には式(B1’)で表される単量体の重合によって得られる。本発明に用いる共重合体(P)は、分子鎖中に構成単位(B1)を有することによって、ソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子の吸着抑制効果を高めることができる。
【化7】

【化8】

式(B1)および式(B1’)において、Rは水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくはメチル基である。Rは炭素数4~18のアルキル基であり、直鎖状または分岐状のアルキル基のいずれでも良い。
【0014】
具体的には、炭素数4~18の直鎖状のアルキル基としては、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンダデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基が挙げられる。炭素数4~18の分岐状のアルキル基としては、t-ブチル基、イソブチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基が挙げられる。
共重合体(P)のソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子の吸着抑制効果の観点から、n-ブチル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基が好ましい。
【0015】
構成単位(B1)を満たす構造を有しておれば、共重合体のソフトコンタクトレンズへの吸着性を損なう恐れが無いため、いずれでも用いることができるが、共重合体のソフトコンタクトレンズへの吸着効果をより高める観点から、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体の好適な例として、ブチル(メタ)アクリルレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが挙げられ、中でもステアリル(メタ)アクリレートがより好適である。
【0016】
<4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B2)>
4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B2)は、下記の式(B2)で表され、より具体的には式(B2’)で表される単量体の重合によって得られる。本発明に用いる共重合体(P)は、分子鎖中に構成単位(B2)を有することによって、ソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子の吸着抑制効果を高めることができる。
【化9】

【化10】
【0017】
式(B2)及び式(B2’)において、Rは水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくはメチル基である。R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基を示し、アルキル基は直鎖状、分岐状および環状のいずれであっても良い。
【0018】
具体的には、R、RおよびRとしてメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
、RおよびRとして好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、より好ましくはメチル基である。
としては、例えば、クロライドイオンなどのハロゲンイオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオンなどの酸残基が挙げられる。好ましくは、ハロゲンイオンである。
共重合体のソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子の吸着抑制効果を高める観点から、4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体の好適な例として、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0019】
<(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(B3)>
(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(B3)は、下記の式(B3)で表され、より具体的には式(B3’)で表される単量体の重合によって得られる。本発明に用いる共重合体(P)は、分子鎖中に構成単位(B3)を有することによって、共重合体を高分子量化し、共重合体のソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子の吸着抑制効果をより高めることができる。
【化11】

【化12】
【0020】
式(B3)および式(B3’)において、Rは水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくは水素原子である。RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示し、アルキル基は直鎖状、分岐状および環状のいずれであっても良い。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。RおよびR10として好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基もしくはイソプロピル基であり、より好ましくはメチル基である。
共重合体を高分子量化し、共重合体のソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子の吸着抑制効果をより高める観点から、(メタ)アクリルアミド系単量体の好適な例として、N、N-ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0021】
本発明に用いる共重合体(P)は、分子鎖中に(B1)、(B2)および(B3)からなる群から選択される少なくとも1つの構成単位を有する。本発明に用いる共重合体は、分子鎖中に(B1)、(B2)および(B3)からなる群から選択されるいずれか1つの構成単位のみを有していてもよく、(B1)、(B2)および(B3)からなる群から選択される2つの構成単位(例えば、(B1)および(B2)の組み合わせ、(B2)および(B3)の組み合わせ、(B3)および(B1)の組み合わせ)を有していてもよく、(B1)、(B2)および(B3)の全ての構成単位を有していても良い。
【0022】
本発明に用いる共重合体(P)は、構成単位(B1)~(B3)だけでなく、構成単位(A)をも同一高分子鎖中に有することによって、本発明に用いる共重合体(P)は、ソフトコンタクトレンズに対して無機系微粒子吸着抑制効果を発現するソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤となる。
【0023】
本発明に用いる共重合体(P)中の構成単位(B1)~(B3)の含有量((B1)~(B3)のうち一つの構成単位のみを含有する場合は当該構成単位の含有量、(B1)~(B3)のうち2つもしくは3つの構成単位を含有する場合は、これらの構成単位の含有量の合計)は10~90モル%であり、好ましくは10~80モル%であり、より好ましくは10~70モル%である。含有量が10モル%未満であると共重合体の親水性が高くなり、ソフトコンタクトレンズへの吸着性もしくは密着性が乏しくなり、無機系微粒子吸着抑制効果が望めなくなる恐れがあり、含有量が90モル%より多いと水への溶解性が低下し、ソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤を製することが困難となる恐れがある。
【0024】
本発明に用いる共重合体(P)の分子鎖中に含まれる構成単位(A)と構成単位(B1)~(B3)の組み合わせの好適な例は、ソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子吸着抑制効果の発現の観点から、以下の組み合わせが挙げられる。
【0025】
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびブチル(メタ)アクリレート;
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびステアリル(メタ)アクリレート;
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド;
ならびに、
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N,N-ジメチルアクリルアミドおよびステアリル(メタ)アクリレート。
【0026】
本発明に用いる共重合体は、構成単位(A)および構成単位(B1)~(B3)以外の構成単位を含んでいても良いが、好ましくは、構成単位(A)および、構成単位(B1)、(B2)並びに(B3)からなる群より選択される1つ、2つまたは3つの構成単位からなる。このうち、(A)及び(B1)の組み合わせ、(A)及び(B2)の組み合わせ、(A)、(B1)及び(B3)の組み合わせが好ましく、中でも(A)及び(B1)の組み合わせ、(A)、(B1)及び(B3)の組み合わせがより好ましく、(A)及び(B1)の組み合わせがよりさらに好ましい。
【0027】
本発明に用いる共重合体の重量平均分子量は10,000~5,000,000であり、好ましくは20,000~2,000,000である。重量平均分子量が10,000未満であるとソフトコンタクトレンズへの吸着性もしくは密着性が低下し、無機系微粒子吸着抑制効果が望めなくなり、重量平均分子量が5,000,000より大きいと粘度が急激に上昇し、ソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤を製することが困難となる恐れがある。
【0028】
なお、共重合体(P)の重量平均分子量は、GPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)測定により、ポリエチレングリコール換算で求められる。
本発明の共重合体(P)は、特定の重量平均分子量の1種を用いてもよいが、相異なる重量平均分子量の2種以上を混合して、用いてもよい。相異なる重量平均分子量の2種以上を混合して用いることで、これら共重合体(P)のソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子吸着抑制効果が向上する。
【0029】
2種を併用する場合は、重量平均分子量が200,000~800,000である共重合体(P1)と重量平均分子量900,000~1,500,000である共重合体(P2)との組み合わせ、または、重量平均分子量が250,000~800,000である共重合体(P1’)と重量平均分子量10,000~200,000である共重合体(P3)との組み合わせが好ましい。
共重合体(P1)と共重合体(P2)の配合比率は重量比で、1:9~9:1、好ましくは3:7~7:3、さらに好ましくは4:6~6:4である。
共重合体(P1’)と共重合体(P3)の配合比率は重量比で、1:9~9:1、好ましくは3:7~7:3、さらに好ましくは4:6~6:4である。
【0030】
本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤は、共重合体(P)0.001~5.0w/v%と、溶媒として水を含有することが好ましい。また、溶媒として、水とアルコールとの混合溶媒を用いてもよい。該アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。この場合、共重合体(P)を、水又は上記混合溶媒に0.001~5.0w/v%となるように溶解させることにより、本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤を得ることができる。共重合体(P)の濃度が0.001w/v%未満では、十分な無機系微粒子吸着抑制作用を得られなくなり、共重合体(P)の濃度が5.0w/v%を超えても、配合量に見合った無機系微粒子吸着抑制作用を得られない恐れがある。
共重合体(P)の濃度は、好ましくは0.01~5.0w/v%であり、より好ましくは0.01~4.0w/v%であり、さらに好ましくは0.01~3.0w/v%である。
【0031】
本発明に用いる水は、医薬品製造用もしくはこれと同等程度の品質を持つ水であれば、いずれを用いてもよく、たとえば、日本薬局方に記載の水等を用いることができる。
本発明の共重合体(P)をソフトコンタクトレンズに用いることにより、ソフトコンタクトレンズ装用中における無機系微粒子の吸着を抑制できアレルギー性結膜炎の緩和、低減が可能となり、ソフトコンタクトレンズ装用中の不快感の改善効果を付与することができる。
【0032】
本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤は、無機系微粒子(PM10〔粒子径がおおむね10μm以下のもので、粒子径10μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子。〕など)に対して、吸着抑制作用を発現できる。
具体的には、無機系の微粒子である微小粒子状物質(PM10〔粒子径がおおむね10μm以下のもので、粒子径10μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子。〕、PM5〔粒子径がおおむね5μm以下のもので、粒子径5μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子。〕、PM2.5〔粒子径がおおむね2.5μm以下のもので、粒子径2.5μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子〕)、黄砂、降下煤塵に対して有効である。
【0033】
本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤は、共重合体(P)、及び、水以外にも必要に応じて一般に眼科用製剤に使用できる充血除去成分、消炎・収斂成分、ビタミン類、アミノ酸類、サルファ剤、糖類、清涼化剤、無機塩、有機酸の塩、酸、塩基、酸化防止剤、安定化剤、防腐剤、ムチン分泌促進剤等を配合することが出来る。
【0034】
充血除去成分としては、例えば、エピネフリンまたはその塩、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリンまたはその塩、フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリンが挙げられる。
【0035】
消炎・収斂成分としては、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリンまたはその塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸またはその塩、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化リゾチームが挙げられる。
【0036】
ビタミン類としては、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウムが挙げられる。
【0037】
アミノ酸類としては、例えば、アスパラギン酸またはその塩、アミノエチルスルホン酸が挙げられる。
【0038】
サルファ剤としては、例えば、スルファメキサゾールまたはその塩、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウムが挙げられる。
【0039】
糖類としては、例えば、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロースが挙げられる。
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフルが挙げられる。
【0040】
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ砂、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
【0041】
有機酸の塩としては、例えば、クエン酸ナトリウムが挙げられる。
酸としては、例えば、ホウ酸、リン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、塩酸が挙げられる。
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、モノエタノールアミンが挙げられる。
【0042】
酸化防止剤としては、例えば、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンが挙げられる。
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、グリシンが挙げられる。
防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジングルコン酸塩、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、塩酸ポリヘキサニドが挙げられる。
ムチン分泌促進剤としては、例えば、ジクアホソルナトリウム、レバミピドが挙げられる。
【0043】
本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤を含む具体的な製品形態としては、眼科用製剤であれば特に制限はないが、次のようなものを挙げることができる。たとえば、点眼剤、コンタクトレンズ用装着液、コンタクトレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用洗浄保存液、コンタクトレンズ用充填液などのソフトコンタクトレンズ用ケア用品が挙げられる。
【0044】
本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤は、その無機系微粒子吸着抑制作用を高める観点から、FDA分類におけるグループIII及びグループIVのソフトコンタクトレンズ(イオン性ソフトコンタクトレンズ)へ適用することが好ましい。なお、FDA分類とは、米国食品医薬品局(FDA)にて規定されるソフトコンタクトレンズの分類であり、グループI:含水率50%未満で非イオン性のソフトコンタクトレンズ、グループII:含水率50%以上で非イオン性のソフトコンタクトレンズ、グループIII:含水率50%未満でイオン性のソフトコンタクトレンズ、グループIV:含水率50%以上でイオン性のソフトコンタクトレンズである、と定められている。
【0045】
グループIIIまたはグループIVに分類されるソフトコンタクトレンズとして具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。(括弧内の数値は含水率を示し、これに続き、ソフトコンタクトレンズを構成する主成分を示す。)
【0046】
(グループIIIのソフトコンタクトレンズ)
balafilcon A(36%、Tris-VC、NVP)
【0047】
(グループIVのソフトコンタクトレンズ)
etafilcon A(58%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・メタクリル酸)、ocufilcon B(52%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・メタクリル酸)、ocufilcon D(55%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・メタクリル酸)、phemefilcon A(55%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・エトキシエチルメタクリレート・メタクリル酸)、vifilcon A(55%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・ポリビニルピロリドン・メタクリル酸)、methafilcon A(55%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・メタクリル酸)、bufilcon A(55%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸)、perfilcon A(71%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・N-ビニルピロリドン・メタクリル酸)、シードワンデーピュアうるおいプラス(58%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・4級アンモニウム基含有メタクリレート系化合物・カルボキシル基含有メタクリレート系化合物・メタクリル酸・エチレングリコールジメクリレート)
【0048】
これらの中でも、ソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子吸着抑制作用の観点から、グループIVのソフトコンタクトレンズが好ましく、更に好ましくは、グループIVのソフトコンタクトレンズで、かつ、含水率55%以上のソフトコンタクトレンズである。
【実施例
【0049】
以下、本発明について実施例及び比較例により、本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、本実施例及び比較例に用いた共重合体は次の通りである。
【0050】
共重合体(P1): 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔構成単位(A)80モル%、構成単位(B1)20モル%、重量平均分子量:600,000〕である。
共重合体(P2): 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔構成単位(A)80モル%、構成単位(B1)20モル%、重量平均分子量:1,100,000〕である。
共重合体(P3): 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔構成単位(A)80モル%、構成単位(B1)20モル%、重量平均分子量:150,000〕である。
共重合体(P4): 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔構成単位(A)30モル%、構成単位(B1)70モル%、重量平均分子量:142,000〕である。
共重合体(P5): 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ステアリルメタクリレート共重合体〔構成単位(A)80モル%、構成単位(B1)20モル%、重量平均分子量:60,000〕である。
共重合体(P6):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体〔構成単位(A)70モル%、構成単位(B2)30モル%、重量平均分子量:450,000〕である。
共重合体(P7):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・N,N-ジメチルアクリルアミド・ステアリルメタクリレート共重合体〔構成単位(A)50モル%、構成単位(B3)45モル%、構成単位(B1)5モル%、重量平均分子量:200,000〕である。
【0051】
比較例用重合体(Q1): ブチルメタクリレートの重合体〔重量平均分子量:180,000〕であり、富士フィルム和光純薬(株)(製品名:ポリ(メタクリル酸n-ブチル))より購入して用いた。
比較例用重合体(Q2):2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムの重合体〔重量平均分子量:300,000〕であり、特開平8-258403の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
比較例用重合体(Q3):N,N-ジメチルアクリルアミドの重合体〔数平均分子量:10,000〕であり、シグマアルドリッチジャパン(製品名:Poly(N,N-dimethylacrylamido)、DDMAT terminated)より購入して試験に用いた。
【0052】
上記した各共重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)により測定した。GPCの測定条件は、以下のとおりである。
GPCシステム:高速液体クロマトグラフィーシステムCCP&8020シリーズ(東ソー株式会社製)
カラム:Shodex OHpak SB-802.5HQ(昭和電工株式会社製)、及びSB-806HQ(昭和電工株式会社製)を直列に接続
展開溶媒:20mM りん酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)
検出器:示差屈折率検出器、UV検出器(波長210nm)
分子量標準:EasiVial PEG/PEO(Agilent Technologies社製)
流速:0.5mL/分
カラム温度:45℃
サンプル:得られた共重合体を終濃度0.1重量%となるよう展開溶媒で希釈した
【0053】
<リン酸緩衝液>
以下の無機系微粒子吸着性試験には、リン酸緩衝液(以下、「PBS」という)を用いた。PBS(組成:塩化カリウム0.02w/v%、リン酸二水素カリウム0.02w/v%、塩化ナトリウム0.8w/v%、リン酸水素二ナトリウム0.115w/v%)は、シグマ-アルドリッチ製を使用した。
【0054】
<無機系微粒子吸着性試験>
以下の手順に従い、ソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子吸着性試験を実施した。
(1)ブリスターパックよりソフトコンタクトレンズを1枚取り出し、PBSで洗浄した。洗浄したソフトコンタクトレンズを24ウェルプレートへと入れ、各実施例もしくは各比較例の溶液 2mLを入れた。
(2)この後、1時間振とうした。
(3)都市大気粉塵(PM2.5、国立環境研究所製を用いた)、PBS及び超音波型ホモジナイザー(ホモジナイザーによる処理:1分間)を用いて、都市大気粉塵濃度1mg/mLとなるように調製した(以下、「大気粉塵溶液」という)。
(4)新たに24ウェルプレートを準備し、これに大気粉塵溶液1.5mLを入れ、更に、(2)で準備したソフトコンタクトレンズを1時間浸漬した。
(5)浸漬の後、ソフトコンタクトレンズを取り出し、10mLのPBSで3回洗浄した。
(6)洗浄後、ソフトコンタクトレンズの透過率を測定し、ソフトコンタクトレンズ表面に吸着した大気粉塵量(無機系微粒子吸着量)を測定した。
【0055】
なお、無機系微粒子吸着性試験については、以下の基準を用いて、無機系微粒子吸着抑制効果を判断した。
比較例1-4、比較例3-1~比較例3-2を基準とし、以下の式を用いて無機系微粒子吸着抑制率を算出し、無機系微粒子吸着抑制効果の有無を判断した。
(無機系微粒子吸着抑制率)={1-((各実施例もしくは各比較例の無機系微粒子吸着量)/(対応するソフトコンタクトレンズ・微粒子種を用いた各比較例の無機系微粒子吸着量))}×100
【0056】
(判断基準)
無機系微粒子吸着抑制率70%以上 :無機系微粒子吸着抑制効果が極めて優れている
無機系微粒子吸着抑制率50%以上、70%未満:無機系微粒子吸着抑制効果が優れている
無機系微粒子吸着抑制率30%以上、50%未満:無機系微粒子吸着抑制効果を有している
無機系微粒子吸着抑制率30%未満 :無機系微粒子吸着抑制効果を有していない
【0057】
[実施例1-1]
精製水約80gを量り、これに共重合体(P1)1.0gを量り、加えて、攪拌した。この後、全量100mLとなるように精製水を加えた。更に、無菌ろ過を行い、実施例1-1の溶液とした。その性状を表1に示す。
【0058】
[実施例1-2~実施例1-9、比較例1-1~比較例1-4]
表1に記載の成分、分量にて、実施例1-1と同様に操作し、実施例1-2~実施例1-9、及び、比較例1-1~比較例1-4の溶液を調製した。
【0059】
[実施例2-1]
実施例1-1の溶液、及び、シードワンデーピュアうるおいプラス(シード製ソフトコンタクトレンズ)を用いて、上記の無機系微粒子吸着性試験を実施した。その結果を表2に示す。
【0060】
[実施例2-2~実施例2-9、比較例2-1~比較例2-4]
表2に記載の実施例もしくは比較例の溶液、及び、ソフトコンタクトレンズを用いて、無機系微粒子吸着性試験を実施した。無機系微粒子吸着性試験は、実施例2-1と同様に操作した。実施例2-2~実施例2-9、及び、比較例2-1~比較例2-4の無機系微粒子吸着性試験結果を表2に示す。
【0061】
[実施例3-1]
実施例1-5の溶液を用い、ソフトコンタクトレンズを、ボシュロムメダリストフレッシュフィット(ボシュロム・ジャパン製ソフトコンタクトレンズ)へと変更した以外は、実施例2-1と同様に操作して、無機系微粒子吸着性試験を実施した。その結果を表3に示す。
【0062】
[実施例3-2~実施例3-6、比較例3-1~比較例3-2]
表3に記載した実施例の溶液、ソフトコンタクトレンズ、及び、微粒子種を用いて無機系微粒子吸着性試験を実施した。無機系微粒子吸着性試験は、実施例3-1と同様に操作した。実施例3-2~実施例3-6、比較例3-1~比較例3-2の無機系微粒子吸着性試験結果を表3に示す。
【0063】
【表1】

水:日本薬局方 精製水、健栄製薬製
*:不溶であったため、調製不可
【0064】
【表2】

レンズ(1):シードワンデーピュアうるおいプラス:シード製、度数:-3.00D、ベースカーブ:8.8、直径:14.2、含水率:58%、構成モノマー:2-HEMA・4級アンモニウム基含有メタクリレート・カルボキシル基含有メタクリレート・MAA・EGDMA、FDA分類:グループIV(イオン性ソフトコンタクトレンズ)
【0065】
実施例2-1~実施例2-9、及び、比較例2-1~比較例2-4の結果より、共重合体(P)を配合することで、ソフトコンタクトレンズへの無機系微粒子(都市大気粉塵)の吸着が抑制されることが分かった。また、その無機系微粒子吸着抑制作用は、共重合体(P)の配合濃度に依存して向上した。更に、実施例2-4~実施例2-9の結果より、共重合体(P)の種類や配合を変えても、その無機系微粒子吸着抑制効果が発現することが分かった。
【0066】
【表3】

レンズ(2):ボシュロムメダリストフレッシュフィット:ボシュロム・ジャパン製、度数:-3.00D、ベースカーブ:8.6、直径:14.0、含水率:36%、構成モノマー:TrisVC・NVP、FDA分類:グループIII(イオン性ソフトコンタクトレンズ)
黄砂:ゴビ黄砂(国立環境研究所製)を用いた。
【0067】
実施例3-1~実施例3-6の結果より、共重合体(P)による無機系微粒子吸着抑制作用は、都市大気粉塵のみならず、黄砂等の他の大気汚染物質についても同様に作用を発現することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のソフトコンタクトレンズ用無機微粒子吸着抑制剤を用いることで、コンタクトレンズへの無機系微粒子の吸着抑制し、アレルギー性結膜炎の症状を緩和、低減でき、不快感を改善できるソフトコンタクトレンズ用ケア用品を製造することができる。