(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/46 20060101AFI20241106BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
F04D29/46 C
F04D29/42 K
(21)【出願番号】P 2022524889
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005340
(87)【国際公開番号】W WO2021235026
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020087638
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米村 淳
(72)【発明者】
【氏名】崎坂 亮太
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0298953(US,A1)
【文献】実開昭61-102334(JP,U)
【文献】実開昭55-055606(JP,U)
【文献】特開2004-066307(JP,A)
【文献】特開昭58-185999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/46
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に設けられるインペラと、
前記ハウジングのうち、前記インペラの正面側に設けられる絞り部材と、
アクチュエータに接続され、先端に平面を有するプレート部が形成されたアクチュエータロッドと、
前記絞り部材に連結され、前記アクチュエータロッドの軸方向において前記プレート部を挟んで対向する一対の突起部を有する連結部材と、
を備え、
前記プレート部は、前記一対の突起部の間に形成された溝部と係合し、
前記一対の突起部は、前記連結部材から前記インペラの回転軸方向に突出する軸部に設けられ
、
前記連結部材は、円弧形状を有し、
前記軸部は、前記インペラの径方向に平行な前記連結部材の幅方向において、中央部に対して内側および外側の双方にまたがって位置し、
前記軸部は、前記連結部材のうち、吸気の上流側の面である吸気上流面から前記回転軸方向に突出する、
遠心圧縮機。
【請求項2】
前記一対の突起部の互いに近接する側の面の突出高さは、前記一対の突起部の互いに離隔する側の面の突出高さより小さい、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記一対の突起部の間には、前記アクチュエータロッドの軸方向に沿った断面がU字形状の溝部が設けられる、請求項1または2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記プレート部は、前記アクチュエータロッドの軸方向と直交する断面が円形状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記プレート部は、前記アクチュエータロッドのうち前記プレート部以外の部位に比べ、硬度の高い材料を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
前記アクチュエータロッドは、ダブルナットにより前記アクチュエータに取り付けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機に関する。本出願は2020年5月19日に提出された日本特許出願第2020-87638号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、コンプレッサハウジングを備える。コンプレッサハウジングには、吸気流路が形成される。吸気流路には、コンプレッサインペラが配される。コンプレッサインペラに流入する空気の流量が減少すると、コンプレッサインペラで圧縮された空気が吸気流路を逆流し、サージングと呼ばれる現象が発生する。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、コンプレッサハウジングに絞り機構を設けた遠心圧縮機について開示がある。絞り機構は、絞り部材を吸気流路に突出させる。絞り部材は、吸気流路を絞る。吸気流路が絞られることで、サージングが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第3530954号明細書
【文献】国際公開第2020/031507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2の絞り機構は、複数の絞り部材と、連結部材と、アクチュエータロッドと、アクチュエータとを含む。アクチュエータロッドは、アクチュエータに接続される。アクチュエータは、アクチュエータロッドを軸方向に移動させる。連結部材は、アクチュエータロッドと、複数の絞り部材とを連結する。アクチュエータロッドが軸方向に移動すると、連結部材は、複数の絞り部材を、吸気流路に突出した突出位置と、吸気流路から退避した退避位置とに移動させる。
【0006】
アクチュエータロッドの外周面には、径方向内側に窪む1つの窪み部(あるいは貫通孔)が形成される。連結部材には、1つの窪み部(あるいは貫通孔)に挿通される1つの突起が形成される。アクチュエータロッドが移動すると、連結部材の1つの突起には、アクチュエータロッドの1つの窪み部(あるいは貫通孔)から力が加えられ、応力が集中する。
【0007】
このように、特許文献1および特許文献2の絞り機構では、アクチュエータロッドが移動した際に、連結部材の1つの突起に応力集中が発生する。1つの突起に応力集中が発生すると、連結部材の耐久性が低下する要因となる。
【0008】
本開示の目的は、連結部材に発生する応力集中を緩和させることが可能な遠心圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る遠心圧縮機は、ハウジング内に設けられるインペラと、ハウジングのうち、インペラの正面側に設けられる絞り部材と、アクチュエータに接続され、先端に平面を有するプレート部が形成されたアクチュエータロッドと、絞り部材に連結され、アクチュエータロッドの軸方向においてプレート部を挟んで対向する一対の突起部を有する連結部材と、を備え、プレート部は、一対の突起部の間に形成された溝部と係合し、一対の突起部は、連結部材からインペラの回転軸方向に突出する軸部に設けられ、連結部材は、円弧形状を有し、軸部は、インペラの径方向に平行な連結部材の幅方向において、中央部に対して内側および外側の双方にまたがって位置し、軸部は、連結部材のうち、吸気の上流側の面である吸気上流面から回転軸方向に突出する。
【0010】
一対の突起部の互いに近接する側の面の突出高さは、一対の突起部の互いに離隔する側の面の突出高さより小さくてもよい。
【0011】
一対の突起部の間には、アクチュエータロッドの軸方向に沿った断面がU字形状の溝部が設けられてもよい。
【0012】
プレート部は、アクチュエータロッドの軸方向と直交する断面が円形状であってもよい。
【0013】
プレート部は、アクチュエータロッドのうちプレート部以外の部位に比べ、硬度の高い材料を含んでもよい。
【0014】
アクチュエータロッドは、ダブルナットによりアクチュエータに取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、連結部材に発生する応力集中を緩和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】
図3は、リンク機構を構成する部材の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、リンク機構の動作を説明するための第1の図である。
【
図6】
図6は、リンク機構の動作を説明するための第2の図である。
【
図7】
図7は、リンク機構の動作を説明するための第3の図である。
【
図8】
図8は、比較例における連結部材およびアクチュエータロッドの構成を説明するための概略斜視図である。
【
図9】
図9は、連結部材の軸部の概略断面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態における連結部材およびアクチュエータロッドの構成を説明するための概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、過給機TCの概略断面図である。
図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。
図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。
図1に示すように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング2と、タービンハウジング3と、コンプレッサハウジング(ハウジング)100とを含む。ベアリングハウジング2の左側には、締結ボルト4によってタービンハウジング3が連結される。ベアリングハウジング2の右側には、締結ボルト5によってコンプレッサハウジング100が連結される。
【0019】
ベアリングハウジング2には、収容孔2aが形成される。収容孔2aは、過給機TCの左右方向に貫通する。収容孔2aには、軸受6が配される。
図1では、軸受6の一例としてフルフローティング軸受を示す。ただし、軸受6は、セミフローティング軸受や転がり軸受など、他のラジアル軸受であってもよい。収容孔2aには、シャフト7の一部が配される。シャフト7は、軸受6によって回転自在に軸支される。シャフト7の左端部には、タービンインペラ8が設けられる。タービンインペラ8は、タービンハウジング3内に回転自在に収容される。シャフト7の右端部には、コンプレッサインペラ(インペラ)9が設けられる。コンプレッサインペラ9は、コンプレッサハウジング100内に回転自在に収容される。
【0020】
コンプレッサハウジング100には、吸気口10が形成される。吸気口10は、過給機TCの右側に開口する。吸気口10は、不図示のエアクリーナに接続される。吸気口10には、不図示のエアクリーナから空気が流入する。ベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング100の間には、ディフューザ流路11が形成される。ディフューザ流路11は、空気を昇圧する。ディフューザ流路11は、シャフト7(コンプレッサインペラ9)の径方向(以下、単に径方向という)の内側から外側に向けて環状に形成される。ディフューザ流路11の径方向内側は、コンプレッサインペラ9を介して吸気口10に連通している。
【0021】
コンプレッサハウジング100には、コンプレッサスクロール流路12が形成される。コンプレッサスクロール流路12は、環状に形成される。コンプレッサスクロール流路12は、コンプレッサインペラ9の径方向外側に形成される。コンプレッサスクロール流路12は、例えば、ディフューザ流路11よりも径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路12は、不図示のエンジンの吸気口、および、ディフューザ流路11と連通している。コンプレッサインペラ9が回転すると、吸気口10からコンプレッサハウジング100内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ9の翼間を流通する過程において、加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路11およびコンプレッサスクロール流路12で昇圧される。昇圧された空気は、不図示の吐出口から流出し、エンジンの吸気口に導かれる。
【0022】
タービンハウジング3には、排気口13と、連通流路14と、タービンスクロール流路15とが形成される。排気口13は、過給機TCの左側に開口する。排気口13は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。連通流路14は、タービンインペラ8とタービンスクロール流路15との間に位置する。タービンスクロール流路15は、例えば、連通流路14よりも径方向外側に位置する。
【0023】
タービンスクロール流路15は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。連通流路14は、タービンインペラ8を介してタービンスクロール流路15と排気口13とを連通させる。ガス流入口からタービンスクロール流路15に導かれた排気ガスは、連通流路14およびタービンインペラ8の翼間を介して排気口13に導かれる。排気ガスは、その流通過程においてタービンインペラ8を回転させる。
【0024】
タービンインペラ8の回転力は、シャフト7を介してコンプレッサインペラ9に伝達される。上記のとおりに、空気は、コンプレッサインペラ9の回転力によって昇圧されて、エンジンの吸気口に導かれる。
【0025】
本実施形態の過給機TCは、タービンTと、遠心圧縮機(コンプレッサ)CCとを備える。タービンTは、ベアリングハウジング2と、軸受6と、シャフト7と、タービンハウジング3と、タービンインペラ8とを含む。遠心圧縮機CCは、ベアリングハウジング2と、軸受6と、シャフト7と、コンプレッサハウジング100と、コンプレッサインペラ9とを含む。本実施形態では、遠心圧縮機CCは、タービンインペラ8により駆動されるものとして説明する。ただし、これに限定されず、遠心圧縮機CCは、不図示のエンジンにより駆動されてもよいし、不図示の電動機(モータ)により駆動されてもよい。このように、本実施形態の遠心圧縮機CCは、過給機TC以外の装置に組み込まれてもよいし、単体であってもよい。
【0026】
図2は、
図1の破線部分の抽出図である。
図2に示すように、コンプレッサハウジング100は、第1ハウジング部材110と、第2ハウジング部材120とを含む。第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120よりも、ベアリングハウジング2から離隔する側(
図2中、右側)に位置する。第2ハウジング部材120は、ベアリングハウジング2に接続される。第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120のうちベアリングハウジング2側と反対側に接続される。
【0027】
第1ハウジング部材110は、大凡円筒形状である。第1ハウジング部材110には、貫通孔111と、端面112と、端面113とが形成される。貫通孔111は、シャフト7(コンプレッサインペラ9)の回転軸方向(以下、単に回転軸方向という)に沿って、端面112から端面113まで延在する。つまり、貫通孔111は、第1ハウジング部材110を回転軸方向に貫通している。貫通孔111は、端面113において吸気口10を有する。
【0028】
貫通孔111は、平行部111aと、縮径部111bとを有する。平行部111aは、縮径部111bよりも端面113側に位置する。平行部111aの内径は、回転軸方向に亘って大凡一定である。縮径部111bは、平行部111aよりも端面112側に位置する。縮径部111bは、平行部111aと連続する。縮径部111bは、平行部111aと連続する部位の内径が、平行部111aの内径と大凡等しい。縮径部111bの内径は、平行部111aから離隔するほど(端面112に近づくほど)、小さくなる。
【0029】
端面112は、第1ハウジング部材110のうち第2ハウジング部材120と近接(接続)する側の端面である。端面112は、シャフト7の回転中心軸に対し大凡直交する平面である。端面113は、第1ハウジング部材110のうち第2ハウジング部材120から離隔する側の端面である。端面113は、シャフト7の回転中心軸に対し大凡直交する平面である。
【0030】
端面112には、切り欠き部112aおよび収容溝112bが形成される。切り欠き部112aは、端面112から端面113側に窪む。切り欠き部112aは、端面112の外周部に形成される。切り欠き部112aは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。
【0031】
収容溝112bは、切り欠き部112aよりも径方向内側に形成される。収容溝112bの径方向内側は、貫通孔111と連通する。収容溝112bは、端面112から端面113側に窪む。収容溝112bは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。収容溝112bは、端面113側に壁面112cを有する。壁面112cは、シャフト7の回転中心軸に対し大凡直交する平面である。
【0032】
壁面112cには、軸受穴112dおよび収容穴112e(
図3参照)が形成される。軸受穴112dは、壁面112cから端面113側に向かって回転軸方向に延在する。軸受穴112dは、シャフト7(コンプレッサインペラ9)の回転方向(以下、単に回転方向、周方向という)に離隔して2つ設けられる。2つの軸受穴112dは、回転方向に180度ずれた位置に配されている。収容穴112eについては、
図3を用いて後述する。
【0033】
収容溝112b、壁面112c、軸受穴112d、収容穴112eにより、収容室ACが形成される。収容室ACは、第1ハウジング部材110と第2ハウジング部材120との間に形成される。収容室ACは、コンプレッサインペラ9の羽根の前縁端(リーディングエッジ)LEよりも吸気口10側に形成される。収容室ACは、後述する複数の可動部材(第1可動部材210および第2可動部材220)を収容する。
【0034】
第2ハウジング部材120には、貫通孔121と、端面122と、端面123とが形成される。貫通孔121は、回転軸方向に沿って、端面122から端面123まで延在する。つまり、貫通孔121は、第2ハウジング部材120を回転軸方向に貫通する。貫通孔121は、第1ハウジング部材110の貫通孔111と連通する。
【0035】
貫通孔121のうち端面122側の端部の内径は、貫通孔111のうち端面112側の端部の内径と大凡等しい。貫通孔121の内壁には、シュラウド部121aが形成される。シュラウド部121aは、コンプレッサインペラ9と径方向に対向する。コンプレッサインペラ9の外径は、回転軸方向において、リーディングエッジLEから離隔するほど大きくなる。シュラウド部121aの内径は、端面122から端面123に向かって大きくなる。
【0036】
端面122は、第2ハウジング部材120のうち第1ハウジング部材110と近接する側の端面である。端面122は、シャフト7の回転中心軸に対し大凡直交する平面である。端面123は、第2ハウジング部材120のうち第1ハウジング部材110から離隔する側(ベアリングハウジング2と接続する側)の端面である。端面123は、シャフト7の回転中心軸に対し大凡直交する平面である。
【0037】
端面122には、収容溝122aが形成される。収容溝122aは、端面122から端面123側に窪む。収容溝122aは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。収容溝122aには、第1ハウジング部材110が挿入される。収容溝122aは、端面123側に壁面122bを有する。壁面122bは、シャフト7の回転中心軸に対し大凡直交する平面である。
【0038】
壁面122bには、第1ハウジング部材110の端面112が当接する。このとき、第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120に連結される。第1ハウジング部材110(壁面112c)と第2ハウジング部材120(壁面122b)との間には、収容室ACが形成される。
【0039】
第1ハウジング部材110の貫通孔111と、第2ハウジング部材120の貫通孔121によって、吸気流路130が形成される。つまり、吸気流路130は、コンプレッサハウジング100に形成される。吸気流路130は、不図示のエアクリーナから吸気口10を介してディフューザ流路11まで連通する。吸気流路130のエアクリーナ側(吸気口10側)を吸気の上流側とし、吸気流路130のディフューザ流路11側を吸気の下流側とする。
【0040】
コンプレッサインペラ9は、吸気流路130に配される。吸気流路130(貫通孔111、121)は、回転軸方向に垂直な断面形状が、例えば、コンプレッサインペラ9の回転軸を中心とする円形である。ただし、吸気流路130の断面形状は、これに限定されず、例えば、楕円形状であってもよい。
【0041】
第1ハウジング部材110の切り欠き部112aには、不図示のシール材が配される。シール材により、第1ハウジング部材110と第2ハウジング部材120との隙間を流通する空気の流量が抑制される。ただし、切り欠き部112aおよびシール材の構成は、必須ではない。
【0042】
図1に戻り、本実施形態では、コンプレッサハウジング100にリンク機構200が設けられる。リンク機構200は、第1ハウジング部材110に設けられる。ただし、これに限定されず、リンク機構200は、第2ハウジング部材120に設けられてもよい。
【0043】
図3は、リンク機構200を構成する部材の分解斜視図である。
図3では、コンプレッサハウジング100のうち、第1ハウジング部材110のみが示される。
図3に示すように、リンク機構200は、第1可動部材210、第2可動部材220、連結部材230、アクチュエータロッド240、アクチュエータ250を含む。リンク機構200は、回転軸方向において、コンプレッサインペラ9より吸気流路130の上流側に配される。
【0044】
第1可動部材210は、収容溝112b(収容室AC)に配される。具体的には、第1可動部材210は、回転軸方向において、収容溝112bの壁面112cと、収容溝122aの壁面122b(
図2参照)との間に配される。
【0045】
第1可動部材210は、吸気上流面S1と、吸気下流面S2と、径方向外面S3と、径方向内面S4とを有する。吸気上流面S1は、第1可動部材210のうち吸気の上流側の面である。吸気下流面S2は、第1可動部材210のうち吸気の下流側の面である。径方向外面S3は、第1可動部材210のうち径方向外側の面である。径方向内面S4は、第1可動部材210のうち径方向内側の面である。
【0046】
第1可動部材210は、本体部B1を有する。本体部B1は、湾曲部211と、アーム部212とを含む。湾曲部211は、コンプレッサインペラ9の周方向に延在する。湾曲部211は、大凡半円弧形状である。湾曲部211のうち、周方向の第1端面211aおよび第2端面211bは、径方向および回転軸方向に平行に延在する。ただし、第1端面211aおよび第2端面211bは、径方向および回転軸方向に対し、傾斜していてもよい。
【0047】
湾曲部211の第1端面211a側には、アーム部212が設けられる。アーム部212は、湾曲部211の径方向外面S3から径方向の外側に延在する。また、アーム部212は、径方向に対して傾斜する方向(第2可動部材220側)に延在する。
【0048】
第2可動部材220は、収容溝112b(収容室AC)に配される。具体的には、第2可動部材220は、回転軸方向において、収容溝112bの壁面112cと、収容溝122aの壁面122b(
図2参照)との間に配される。
【0049】
第2可動部材220は、吸気上流面S5と、吸気下流面S6と、径方向外面S7と、径方向内面S8とを有する。吸気上流面S5は、第2可動部材220のうち吸気の上流側の面である。吸気下流面S6は、第2可動部材220のうち吸気の下流側の面である。径方向外面S7は、第2可動部材220のうち径方向外側の面である。径方向内面S8は、第2可動部材220のうち径方向内側の面である。
【0050】
第2可動部材220は、本体部B2を有する。本体部B2は、湾曲部221と、アーム部222とを含む。湾曲部221は、コンプレッサインペラ9の周方向に延在する。湾曲部221は、大凡半円弧形状である。湾曲部221のうち、周方向の第1端面221aおよび第2端面221bは、径方向および回転軸方向に平行に延在する。ただし、第1端面221aおよび第2端面221bは、径方向および回転軸方向に対し、傾斜していてもよい。
【0051】
湾曲部221の第1端面221a側には、アーム部222が設けられる。アーム部222は、湾曲部221の径方向外面S7から径方向の外側に延在する。また、アーム部222は、径方向に対して傾斜する方向(第1可動部材210側)に延在する。
【0052】
湾曲部211は、湾曲部221とコンプレッサインペラ9の回転中心(吸気流路130)を挟んで対向する。湾曲部211の第1端面211aは、湾曲部221の第2端面221bと周方向に対向する。湾曲部211の第2端面211bは、湾曲部221の第1端面221aと周方向に対向する。第1可動部材210および第2可動部材220は、詳しくは後述するように、湾曲部211、221が径方向に移動可能に構成される。
【0053】
連結部材230は、第1可動部材210および第2可動部材220と、アクチュエータロッド240とを連結する。連結部材230は、第1可動部材210、第2可動部材220よりも吸気口10側に位置する。連結部材230は、大凡円弧形状である。
【0054】
連結部材230は、吸気上流面S9と、吸気下流面S10と、径方向外面S11と、径方向内面S12とを有する。吸気上流面S9は、連結部材230のうち吸気の上流側の面である。吸気下流面S10は、連結部材230のうち吸気の下流側の面である。径方向外面S11は、連結部材230のうち径方向外側の面である。径方向内面S12は、連結部材230のうち径方向内側の面である。
【0055】
連結部材230は、周方向における一端側に第1軸受穴231が形成され、他端側に第2軸受穴232が形成される。第1軸受穴231および第2軸受穴232は、吸気下流面S10に開口する。第1軸受穴231および第2軸受穴232は、吸気下流面S10から回転軸方向に窪む。ここでは、第1軸受穴231および第2軸受穴232は、非貫通の穴で構成される。ただし、第1軸受穴231および第2軸受穴232は、連結部材230を回転軸方向に貫通してもよい。
【0056】
連結部材230は、第1軸受穴231と第2軸受穴232の間に、軸部233が形成される。軸部233は、連結部材230の吸気上流面S9に形成される。軸部233は、吸気上流面S9から回転軸方向に突出する。軸部233は、例えば、中心軸と直交する断面形状が角丸長方形状である。ただし、これに限定されず、軸部233は、例えば、中心軸と直交する断面形状が、円形状、楕円形状、矩形状などであってもよい。軸部233の詳細については、後述する。
【0057】
図4は、
図2のIV-IV線断面図である。
図4に破線で示すように、第1可動部材210は、連結軸部213および回転軸部214を有する。連結軸部213および回転軸部214は、第1可動部材210のアーム部212のうち壁面112cと対向する吸気上流面S1(
図2参照)から、回転軸方向に突出する。連結軸部213および回転軸部214は、
図4中、紙面奥側に延在する。回転軸部214は、連結軸部213と大凡平行に延在する。連結軸部213および回転軸部214は、円柱形状である。
【0058】
連結軸部213の外径は、連結部材230の第1軸受穴231の内径よりも小さい。連結軸部213は、第1軸受穴231に挿通される。連結軸部213は、第1軸受穴231に回転自在に軸支される。回転軸部214の外径は、第1ハウジング部材110の軸受穴112dの内径よりも小さい。回転軸部214は、2つの軸受穴112dのうち鉛直上側の軸受穴112dに挿通される。回転軸部214は、軸受穴112dに回転自在に軸支される。
【0059】
第2可動部材220は、連結軸部223および回転軸部224を有する。連結軸部223および回転軸部224は、第2可動部材220のアーム部222のうち壁面112cと対向する吸気上流面S5(
図2参照)から、回転軸方向に突出する。連結軸部223および回転軸部224は、
図4中、紙面奥側に延在する。回転軸部224は、連結軸部223と大凡平行に延在する。連結軸部223および回転軸部224は、円柱形状である。
【0060】
連結軸部223の外径は、連結部材230の第2軸受穴232の内径よりも小さい。連結軸部223は、第2軸受穴232に挿通される。連結軸部223は、第2軸受穴232に回転自在に軸支される。回転軸部224の外径は、第1ハウジング部材110の軸受穴112dの内径よりも小さい。回転軸部224は、2つの軸受穴112dのうち鉛直下側の軸受穴112dに挿通される。回転軸部224は、軸受穴112dに回転自在に軸支される。
【0061】
図3に戻り、アクチュエータロッド240は、大凡円柱形状である。アクチュエータロッド240は、一端にプレート部241が形成され、他端に締結部243が形成される。プレート部241は、板状に形成される。プレート部241のうち締結部243と反対側の端面は、アクチュエータロッド240の中心軸と直交する平面241aを有する。つまり、アクチュエータロッド240の先端は、アクチュエータロッド240の中心軸と直交する平面241aを有する。
【0062】
本実施形態のプレート部241は、アクチュエータロッド240の中心軸方向と直交する断面が円形状である。ただし、これに限定されず、プレート部241の断面は、矩形状、楕円形状、多角形状であってもよい。
【0063】
締結部243は、アクチュエータ250に締結される。締結部243には、例えば、雄ネジ243aが形成される。アクチュエータ250には、例えば、雌ネジ250aが形成される。アクチュエータ250の雌ネジ250aに締結部243の雄ネジ243aが螺合することで、アクチュエータロッド240がアクチュエータ250に取り付けられる。アクチュエータロッド240が取り付けられたアクチュエータ250は、例えば、コンプレッサハウジング100に設けられる。
【0064】
アクチュエータ250は、例えば、直動アクチュエータである。ただし、アクチュエータ250は、アクチュエータロッド240を軸方向に駆動できればよく、例えばモータや油圧シリンダなどで構成されてもよい。
【0065】
第1ハウジング部材110には、挿通穴114が形成される。挿通穴114の一端114aは、第1ハウジング部材110の外部に開口する。挿通穴114は、例えば、鉛直方向に延在する。挿通穴114は、貫通孔111(吸気流路130)よりも径方向の外側に位置する。挿通穴114には、アクチュエータロッド240のプレート部241側が挿通される。
【0066】
収容穴112eは、壁面112cから吸気口10側に窪む。収容穴112eは、挿通穴114よりも吸気口10から離隔する側(第2ハウジング部材120側)に位置する。収容穴112eは、回転軸方向から見たとき、大凡円弧形状である。収容穴112eは、連結部材230よりも周方向に長く延在する。収容穴112eは、軸受穴112dから周方向に離隔する。
【0067】
収容穴112eには、連通孔115が形成される。連通孔115は、挿通穴114と収容穴112eとを連通させる。連通孔115は、収容穴112eのうち、周方向の大凡中央部分に形成される。連通孔115は、例えば、挿通穴114の延在方向に大凡平行に延在する長孔である。連通孔115は、長手方向の幅が、短手方向の幅よりも大きい。
【0068】
連結部材230は、収容穴112eに収容される。収容穴112eは、連結部材230よりも周方向の長さが長く、連結部材230よりも径方向の幅が大きい。そのため、連結部材230は、収容穴112eの内部で、回転軸方向に垂直な面方向への移動が許容される。
【0069】
軸部233は、連通孔115から挿通穴114に挿通される。挿通穴114には、アクチュエータロッド240のプレート部241が挿通されている。プレート部241は、コンプレッサインペラ9の回転軸方向において、連通孔115と対向している。軸部233は、プレート部241と係合する。軸部233とプレート部241との係合については、
図10を用いて後述する。軸部233とプレート部241が係合することで、アクチュエータロッド240と連動して連結部材230が駆動される。また、連結部材230と連動して、第1可動部材210および第2可動部材220が駆動される。
【0070】
第1可動部材210および第2可動部材220は、収容溝112bに収容される。つまり、第1可動部材210および第2可動部材220は、コンプレッサインペラ9の正面側(上流側)に設けられる。このように、第1可動部材210、第2可動部材220、連結部材230は、第1ハウジング部材110と第2ハウジング部材120との間に形成された収容室ACに収容される。
【0071】
以上のように、リンク機構200は、第1可動部材210、第2可動部材220、連結部材230を含む。第1可動部材210、第2可動部材220、第1ハウジング部材110、連結部材230は、4つのリンク(節)を備える。第1可動部材210、第2可動部材220、第1ハウジング部材110、連結部材230により、4節リンク機構が構成される。4節リンク機構は、自由度が1であり、従動節が1通りの運動に制限される(限定連鎖)。4節リンク機構を用いることで、リンク機構200の制御が容易になる。
【0072】
図5は、リンク機構200の動作を説明するための第1の図である。以下の
図5、
図6、
図7では、リンク機構200を吸気口10側から見た図が示される。
【0073】
図5に示す配置では、第1可動部材210と第2可動部材220は、互いに当接する。このとき、
図2および
図4に示すように、第1可動部材210のうち、径方向の内側の部位である突出部215は、吸気流路130内に突出(露出)する。第2可動部材220のうち、径方向の内側の部位である突出部225は、吸気流路130内に突出(露出)する。この状態における第1可動部材210、第2可動部材220の位置を、突出位置(あるいは絞り位置)という。
【0074】
図5に示すように、突出位置では、突出部215のうち周方向の端部215a、215bと、突出部225のうち周方向の端部225a、225bとが当接する。突出部215と突出部225によって環状孔260が形成される。環状孔260の内径は、吸気流路130のうち、突出部215、225が突出する部位の内径よりも小さい。環状孔260の内径は、例えば、吸気流路130のいずれの部位の内径よりも小さい。
【0075】
図6は、リンク機構200の動作を説明するための第2の図である。
図7は、リンク機構200の動作を説明するための第3の図である。アクチュエータ250は、コンプレッサインペラ9の回転軸方向と交差する方向(
図6、
図7中、上下方向)にアクチュエータロッド240を直動させる。アクチュエータ250は、アクチュエータロッド240の中心軸方向に、アクチュエータロッド240を駆動させる。
図6および
図7では、アクチュエータロッド240は、
図5に示す位置から上側に移動する。
図6の配置よりも
図7の配置の方が、
図5の配置に対するアクチュエータロッド240の移動量が大きい。
【0076】
アクチュエータロッド240が
図6、
図7中、上側に移動すると、連結部材230は、軸部233を介して、
図6、
図7中、上側に移動する。このとき、連結部材230は、軸部233の中心軸を中心とする回転が僅かに許容される。また、コンプレッサインペラ9の回転軸方向に垂直な面内において、連結部材230と収容穴112eとの間には、隙間が設けられている。そのため、連結部材230は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が僅かに許容される。
【0077】
上述したように、リンク機構200は、4節リンク機構である。連結部材230、第1可動部材210および第2可動部材220は、第1ハウジング部材110に対して、1自由度の挙動を示す。具体的には、連結部材230は、上記の許容範囲内で、
図6、
図7中、反時計回りに僅かに回転しつつ、左右方向に僅かに揺れ動く。
【0078】
第1可動部材210のうち、回転軸部214は、第1ハウジング部材110に軸支される。回転軸部214は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が規制される。連結軸部213は、連結部材230に軸支される。連結部材230の移動が許容されることから、連結軸部213は、回転軸方向に垂直な面方向に移動可能に設けられる。その結果、連結部材230の移動に伴って、第1可動部材210は、回転軸部214を回転中心として、
図6、
図7中、時計回り方向に回転する。
【0079】
同様に、第2可動部材220のうち、回転軸部224は、第1ハウジング部材110に軸支される。回転軸部224は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が規制される。連結軸部223は、連結部材230に軸支される。連結部材230の移動が許容されることから、連結軸部223は、回転軸方向に垂直な面方向へ移動可能に設けられる。その結果、連結部材230の移動に伴って、第2可動部材220は、回転軸部224を回転中心として、
図6、
図7中、時計回り方向に回転する。
【0080】
こうして、第1可動部材210と第2可動部材220は、
図6、
図7の順に、互いに離隔する方向に移動する。突出部215、225は、突出位置よりも径方向の外側に移動する(退避位置)。退避位置では、例えば、突出部215、225は、吸気流路130の内壁面と面一となるか、吸気流路130の内壁面よりも径方向の外側に位置する。退避位置から突出位置に移動するときは、
図7、
図6、
図5の順に、第1可動部材210と第2可動部材220が互いに近づいて当接する。このように、第1可動部材210、第2可動部材220は、回転軸部214、224を回転中心とする回転角度に応じて、突出位置と退避位置とに切り替わる。
【0081】
このように、第1可動部材210および第2可動部材220は、吸気流路130内に突出する突出位置と、吸気流路130内に露出(突出)しない退避位置とに移動可能に構成される。本実施形態では、第1可動部材210および第2可動部材220は、コンプレッサインペラ9の径方向に移動する。ただし、これに限定されず、第1可動部材210および第2可動部材220は、コンプレッサインペラ9の回転軸周り(周方向)に回転し、突出位置と退避位置とに移動してもよい。例えば、第1可動部材210および第2可動部材220は、2以上の羽根を有するシャッター羽根であってもよい。
【0082】
第1可動部材210および第2可動部材220は、退避位置に位置するとき(以下、退避位置状態ともいう)、吸気流路130内に突出しない。そのため、吸気流路130を流れる吸気(空気)の圧損が小さくなる。
【0083】
また、
図2に示すように、第1可動部材210および第2可動部材220は、突出位置に位置するとき(以下、突出位置状態ともいう)、突出部215、225が吸気流路130内に突出する。このとき、突出部215、225が吸気流路130内に配される。突出部215、225が吸気流路130内に突出すると、吸気流路130の流路断面積が小さくなる。
【0084】
ここで、コンプレッサインペラ9に流入する空気の流量が減少するに従い、コンプレッサインペラ9で圧縮された空気が吸気流路130を逆流する(すなわち、下流側から上流側に向かって空気が流れる)場合がある。つまり、コンプレッサインペラ9に流入する空気の流量が減少するに従い、サージングと呼ばれる逆流現象が発生する場合がある。
【0085】
図2に示す突出位置状態では、突出部215、225は、コンプレッサインペラ9の前縁端LEの最外径端よりも径方向内側に位置する。これにより、吸気流路130内を逆流する空気は、突出部215、225に堰き止められる。したがって、突出位置状態の第1可動部材210および第2可動部材220は、吸気流路130内の空気の逆流を抑制することができる。
【0086】
また、吸気流路130の流路断面積が小さくなるに従い、コンプレッサインペラ9に流入する空気の流速が増大する。これにより、コンプレッサインペラ9の羽根に対する入射角が減少し、空気の流れを安定化させることができる。その結果、遠心圧縮機CCのサージングの発生を抑制することができる。つまり、本実施形態の遠心圧縮機CCは、突出部215、225を吸気流路130内に突出させることにより、遠心圧縮機CCの作動領域を小流量側に拡大することができる。
【0087】
このように、第1可動部材210および第2可動部材220は、吸気流路130を絞る絞り部材として構成される。つまり、本実施形態において、リンク機構200は、吸気流路130を絞る絞り機構として構成される。第1可動部材210および第2可動部材220は、リンク機構200が駆動されることで、吸気流路130の流路断面積を変化させることができる。
【0088】
つぎに、リンク機構200における連結部材230とアクチュエータロッド240との係合関係について詳細に説明する。まず、比較例におけるリンク機構300の連結部材330とアクチュエータロッド340との係合関係について説明する。その後、本実施形態におけるリンク機構200の連結部材230とアクチュエータロッド240との係合関係について説明する。
【0089】
図8は、比較例における連結部材330およびアクチュエータロッド340の構成を説明するための概略斜視図である。上記実施形態の過給機TCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。比較例のリンク機構300は、連結部材330およびアクチュエータロッド340の形状が、上記実施形態の連結部材230およびアクチュエータロッド240の形状と異なっている。それ以外の過給機TCの構成は、上記実施形態の過給機TCと同じである。
【0090】
図8に示すように、比較例の連結部材330は、第1軸受穴231と、第2軸受穴232と、軸部333とを有する。比較例の連結部材330は、軸部333の形状のみが、上記実施形態の連結部材230の軸部233と異なっている。軸部333は、大凡円柱形状である。なお、比較例の軸部333の中心軸方向の長さは、上記実施形態の軸部233の中心軸方向の長さと等しいものとする。
【0091】
比較例のアクチュエータロッド340は、貫通孔341と、締結部343とを有する。貫通孔341は、アクチュエータロッド340を径方向に貫通する。貫通孔341の中心軸と直交する断面の形状は、大凡円形状である。締結部343は、アクチュエータ250に締結される。締結部343には、例えば、雄ネジ343aが形成される。アクチュエータ250には、例えば、雌ネジ250aが形成される。アクチュエータ250の雌ネジ250aに締結部343の雄ネジ343aが螺合することで、アクチュエータロッド340がアクチュエータ250に取り付けられる。
【0092】
図8に示すように、アクチュエータロッド340の貫通孔341には、連結部材330の軸部333が挿通される。そのため、アクチュエータ250がアクチュエータロッド340を駆動させると、アクチュエータロッド340の中心軸方向の移動に伴い、連結部材330がアクチュエータロッド340の中心軸方向に移動する。このとき、連結部材330の軸部333には、アクチュエータロッド340の貫通孔341から押圧力が付加される。
【0093】
図9は、連結部材330の軸部333の概略断面図である。
図9中、D1は、アクチュエータロッド340が軸部333を押圧する第1方向である。
図9中、D2は、アクチュエータロッド340が軸部333を押圧する第2方向である。第1方向D1および第2方向D2は、アクチュエータロッド340の中心軸方向である。第1方向D1は、第2方向D2と反対方向である。
【0094】
図9に示すように、軸部333がアクチュエータロッド340により第1方向D1に押圧されると、軸部333は、第1方向D1に僅かに変形する。また、軸部333がアクチュエータロッド340により第2方向D2に押圧されると、軸部333は、第2方向D2に僅かに変形する。
【0095】
このとき、
図9中、二点鎖線で示す連結部材330の吸気上流面S9と軸部333との境界部R1、R2には、応力集中が発生する。つまり、軸部333の第1方向D1側と第2方向D2側の2箇所(境界部R1、R2)に応力集中が発生する。境界部R1、R2に応力集中が発生すると、連結部材330の耐久性が低下する要因となる。
【0096】
また、
図8で説明したように、アクチュエータロッド340は、雄ネジ343aと雌ネジ250aが螺合することで、アクチュエータ250に取り付けられる。しかし、アクチュエータロッド340が回転すると、軸部333の中心軸に対し、貫通孔341の中心軸がずれる。貫通孔341の中心軸が軸部333の中心軸と大凡一致していない場合、貫通孔341に軸部333を挿通させることができなくなる。そのため、作業者は、貫通孔341と軸部333の中心軸が大凡一致するように、アクチュエータロッド340をアクチュエータ250に組み付ける必要があった。その結果、リンク機構300の組付作業が煩雑になるという問題があった。
【0097】
図10は、本実施形態における連結部材230およびアクチュエータロッド240の構成を説明するための概略斜視図である。
図10に示すように、本実施形態の連結部材230は、比較例の軸部333と異なる軸部233を有する。また、本実施形態のアクチュエータロッド240は、比較例のアクチュエータロッド340と異なる形状(プレート部241)を有する。
【0098】
軸部233は、一対の突起部234、235を含む。一対の突起部234、235は、アクチュエータロッド240の中心軸方向においてプレート部241を挟んで対向して配される。一対の突起部234、235の間には、溝部236が形成される。
【0099】
本実施形態のアクチュエータロッド240は、プレート部241と、締結部243とを有する。本実施形態のアクチュエータロッド240には、比較例の貫通孔341が形成されず、貫通孔341の代わりにプレート部241を有する。プレート部241は、先端に平面241aを備える。一方、プレート部241は、平面241aと反対側がアクチュエータロッド240の軸部240aに接続される。プレート部241は、一対の突起部234、235の間に配され、溝部236と係合する。
【0100】
プレート部241は、アクチュエータロッド240のうちプレート部241以外の部位に比べ、硬度の高い材料を含む。例えば、本実施形態のアクチュエータロッド240には、プレート部241にのみ無電解メッキ処理が施される。ただし、これに限定されず、プレート部241は、アクチュエータロッド240と別部材により構成され、アクチュエータロッド240に取り付けられてもよい。その場合、プレート部241は、アクチュエータロッド240に比べ硬度の高い材料で構成される。これにより、プレート部241がアクチュエータロッド240と同じ材料で構成される場合に比べ、プレート部241の耐摩耗性を向上させることができる。
【0101】
締結部243には、雄ネジ243aが形成され、アクチュエータ250には、雌ネジ250aが形成される。アクチュエータ250の雌ネジ250aに締結部243の雄ネジ243aが螺合することで、アクチュエータロッド240がアクチュエータ250に取り付けられる。ここで、雄ネジ243aには、ナット245が螺合している。ナット245には、不図示の雌ネジが形成され、不図示の雌ネジが雄ネジ243aと係合している。ナット245は、アクチュエータロッド240の中心軸回りに回転することで、雄ネジ243aが形成される範囲内でアクチュエータロッド240の中心軸方向に移動することができる。ナット245がアクチュエータ250側に移動すると、ナット245は、アクチュエータ250と接触する。この状態でナット245をアクチュエータ250側に締め付けると、アクチュエータ250に対するアクチュエータロッド240の移動が制限される。このように、アクチュエータロッド240は、所謂ダブルナットによりアクチュエータ250に取り付けられる。これにより、アクチュエータ250からアクチュエータロッド240の先端(プレート部241)までの長さを容易に調整することができる。
【0102】
図10に示すように、軸部233の溝部236には、連結部材230のプレート部241が挿入される。そのため、アクチュエータ250がアクチュエータロッド240を駆動させると、アクチュエータロッド240の中心軸方向の移動に伴い、連結部材230がアクチュエータロッド240の中心軸方向に移動する。このとき、連結部材230の軸部233には、アクチュエータロッド240のプレート部241から押圧力が付加される。
【0103】
図11は、連結部材230の軸部233の概略断面図である。
図11では、軸部233の中心軸を含む断面を示す。
図11中、D1は、アクチュエータロッド240が軸部233を押圧する第1方向である。
図11中、D2は、アクチュエータロッド240が軸部233を押圧する第2方向である。第1方向D1および第2方向D2は、アクチュエータロッド240の中心軸方向である。第1方向D1は、第2方向D2と反対方向である。
【0104】
図11に示すように、溝部236は、一対の突起部234、235が並ぶ方向(アクチュエータロッド240の軸方向)に沿った断面がU字形状である。また、一対の突起部234、235の互いに近接する側の面の突出高さは、一対の突起部234、235の互いに離隔する側の面の突出高さより低い。具体的に、一対の突起部234、235の先端234a、235aから溝部236の底面までの距離は、一対の突起部234、235の先端234a、235aから吸気上流面S9までの距離よりも短い。つまり、一対の突起部234、235の間に形成された溝部236は、連結部材230の吸気上流面S9よりもアクチュエータロッド240側に位置している。換言すれば、一対の突起部234、235の先端234a、235aから溝部236の底面までの距離(すなわち、溝部236の深さ)は、先端234a、235aから一対の突起部234、235の基端部までの距離よりも短い。
【0105】
軸部233がアクチュエータロッド240により第1方向D1に押圧されると、一対の突起部234、235のうち第1方向D1側の突起部234が、
図11中、破線で示すように第1方向D1に僅かに変形する。このとき、
図11中、二点鎖線で示す突起部234と溝部236の底面との境界部R3には、応力集中が発生する。一方、突起部234のうち境界部R3と反対側の側面部R4は、突起部234と連結部材230の吸気上流面S9との境界部ではなく、大凡平坦である。そのため、側面部R4には、境界部R3に比べ、ほとんど応力集中が発生しない。
【0106】
また、軸部233がアクチュエータロッド240により第2方向D2に押圧されると、一対の突起部234、235のうち第2方向D2側の突起部235が、
図11中、一点鎖線で示すように第2方向D2に僅かに変形する。このとき、
図11中、二点鎖線で示す突起部235と溝部236の底面との境界部R5には、応力集中が発生する。一方、突起部235のうち境界部R5と反対側の側面部R6は、突起部235と連結部材230の吸気上流面S9との境界部ではなく、大凡平坦である。そのため、側面部R6には、境界部R5に比べ、ほとんど応力集中が発生しない。
【0107】
このように、軸部233がアクチュエータロッド240により第1方向D1に押圧されたとき、突起部235には、応力が加えられず、境界部R5に応力集中が発生しない。一方、軸部233がアクチュエータロッド240により第2方向D2に押圧されたとき、突起部234には、応力が加えられず、境界部R3に応力集中が発生しない。さらに、溝部236の底面は、U字形状に形成され、境界部R3、R5での応力集中を発生し難くしている。
【0108】
したがって、本実施形態によれば、軸部233(境界部R3あるいは境界部R5)にかかる応力集中を、比較例の軸部333(境界部R1あるいは境界部R2)にかかる応力集中よりも小さくすることができる。
【0109】
なお、
図10に示すように、プレート部241は、アクチュエータロッド240の軸部240aの先端に位置する。アクチュエータロッド240が軸部233を押圧する際、プレート部241の軸部240aとの境界部では、応力集中が発生する。しかし、プレート部241の平面241a上では、ほとんど応力集中が発生しない。ここで、プレート部241がアクチュエータロッド240の軸部240aの中間に位置する場合、プレート部241は、アクチュエータロッド240の中心軸方向の両側に、軸部240aとの2つの境界部が形成される。その場合、アクチュエータロッド240が軸部233を押圧すると、2つの境界部で応力集中が発生する。したがって、プレート部241がアクチュエータロッド240の軸部240aの先端に位置する場合、軸部240aの中間に位置する場合よりも、プレート部241に発生する応力集中を低減することができる。
【0110】
また、本実施形態では、一対の突起部234、235の先端234a、235aから境界部R3、R5までの距離が、比較例の軸部333の先端333aから境界部R1、R2までの距離よりも短い。したがって、一対の突起部234、235に発生する応力集中点(境界部R3、R5)を、軸部333に発生する応力集中点(境界部R1、R2)よりも、アクチュエータロッド240により押圧される押圧点に近づけることができる。その結果、突起部234、235にかかる応力集中を、比較例の軸部333にかかる応力集中よりも小さくすることができる。
【0111】
以上のように、本実施形態のリンク機構200は、プレート部241を備えたアクチュエータロッド240と、一対の突起部234、235を備えた連結部材230とを含む。プレート部241は、一対の突起部234、235の間に配される。これにより、一対の突起部234、235の境界部R3、R5に発生する応力集中を緩和させることができる。その結果、連結部材230の耐久性の低下を抑制することができる。
【0112】
また、
図10で説明したように、アクチュエータロッド240は、雄ネジ243aと雌ネジ250aが螺合することで、アクチュエータ250に取り付けられる。しかし、プレート部241は、大凡円柱形状に形成されることから、アクチュエータロッド240の中心軸回りのいずれの位相においても、軸部233の溝部236と係合することができる。そのため、作業者は、アクチュエータロッド240の回転位相を考慮することなく、プレート部241と溝部236とを係合させることができる。その結果、リンク機構200の組付作業を簡便にすることができる。
【0113】
以上、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0114】
上記実施形態では、一対の突起部234、235の先端234a、235aから溝部236の底面までの距離は、一対の突起部234、235の先端234a、235aから吸気上流面S9までの距離よりも短い例について説明した。しかし、これに限定されず、一対の突起部234、235の先端234a、235aから溝部236の底面までの距離は、一対の突起部234、235の先端234a、235aから吸気上流面S9までの距離と等しくてもよい。
【0115】
上記実施形態では、溝部236の底面がU字形状である例について説明した。しかし、これに限定されず、溝部236の底面は、R形状や矩形状であってもよい。
【0116】
上記実施形態では、プレート部241が大凡円柱形状である例について説明した。しかし、これに限定されず、プレート部241は、例えば、直方体形状や多角柱形状であってもよい。
【0117】
上記実施形態では、プレート部241がアクチュエータロッド240のうちプレート部241以外の部位に比べ硬度の高い材料を含む例について説明した。しかし、これに限定されず、プレート部241は、アクチュエータロッド240と同じ材料で構成されてもよい。
【0118】
上記実施形態では、アクチュエータロッド240にナット245が設けられる例について説明した。しかし、これに限定されず、アクチュエータロッド240には、ナット245が設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0119】
CC:遠心圧縮機 R3:境界部 R5:境界部 S9:吸気上流面 TC:過給機 100:コンプレッサハウジング 110:第1ハウジング部材 120:第2ハウジング部材 200:リンク機構 210:第1可動部材 215:突出部 220:第2可動部材 225:突出部 230:連結部材 231:第1軸受穴 232:第2軸受穴 233:軸部 234:突起部 234a:先端 235:突起部 235a:先端 236:溝部 240:アクチュエータロッド 241:プレート部 241a:平面 243:締結部 243a:雄ネジ 245:ナット 250:アクチュエータ 250a:雌ネジ