(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】容器の開栓装置、解析装置、および容器の閉栓装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241106BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20241106BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20241106BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20241106BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/686 Z
C12M1/34 B
G01N35/02 B
G01N35/10 K
(21)【出願番号】P 2022558895
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2021032751
(87)【国際公開番号】W WO2022091584
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2020179181
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020203701
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠山 智生
(72)【発明者】
【氏名】花房 信博
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-009618(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002269(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/102772(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q 1/00-3/00
G01N 35/02
G01N 35/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、蓋部と、前記容器本体と前記蓋部とを接続するヒンジ部とを有する容器の開栓装置であって、
前記容器本体を保持する保持装置と、
前記蓋部と接触可能な第1突起部および第2突起部を有し、前記第1突起部および前記第2突起部の少なくとも一方が閉状態の前記蓋部に接触した状態で回転することによって前記蓋部に開方向の力を付与する回転部材と、前記回転部材を回転させる駆動装置とを有する開装置と、
前記保持装置および前記回転部材の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動装置と、
前記開装置および前記移動装置を連動させて制御することによって前記蓋部を開状態にする制御装置とを備える、容器の開栓装置。
【請求項2】
前記蓋部の先端には鍔部が設けられ、
前記制御装置は、前記蓋部が前記容器本体よりも上方に位置するように前記容器本体が前記保持装置に保持された状態で前記回転部材の前記第1突起部が前記蓋部の前記鍔部の下面に接触し、かつ前記回転部材の前記第2突起部が前記蓋部の前記ヒンジ部の上面に接触するセット状態となるように前記移動装置を制御し、
前記セット状態で前記鍔部が上方に変位する方向に前記回転部材が回転するように前記開装置を制御する、請求項1に記載の容器の開栓装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記回転部材を回転させることに連動して、前記ヒンジ部から前記鍔部に向かう方向に前記容器が水平移動するように前記移動装置を制御する、請求項2に記載の容器の開栓装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記第1突起部および前記第2突起部とは異なる端部を有し、
前記端部は、開状態の前記蓋部に接触した状態で前記回転部材が閉方向に回転することによって、前記蓋部に閉方向の力を付与する、請求項1~3のいずれかに記載の容器の開栓装置。
【請求項5】
前記回転部材の前記第1突起部および前記第2突起部の少なくとも一方は、開状態の前記蓋部に接触した状態で前記回転部材が閉方向に回転することによって、前記蓋部に閉方向の力を付与する、請求項1~3のいずれかに記載の容器の開栓装置。
【請求項6】
前記保持装置は、複数の前記容器が2次元状に配列される配列面を有し、
前記移動装置は、前記保持装置および前記回転部材の少なくとも一方を他方に対して、前記配列面に沿って2次元状に相対移動可能に構成される、請求項1~5のいずれかに記載の容器の開栓装置。
【請求項7】
前記回転部材の前記第1突起部および前記第2突起部の少なくとも一方の一部または全部に紫外線を照射する照射装置をさらに備える、請求項1~6のいずれかに記載の容器の開栓装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1突起部および前記第2突起部の少なくとも一方が検体の入った容器の蓋部に接触した後に、当該蓋部に接触した突起部の一部または全部に紫外線を照射するように前記照射装置を制御する、請求項7に記載の容器の開栓装置。
【請求項9】
前記保持装置は、前記容器を加熱する機能を有し、
前記制御装置は、
前記保持装置による加熱前に前記蓋部を開状態にする場合、前記蓋部の開度が第1角度になるように前記開装置および前記移動装置を制御し、
前記保持装置による加熱後に前記蓋部を開状態にする場合、前記蓋部の開度が前記第1角度よりも大きい第2角度になるように前記開装置および前記移動装置を制御する、請求項1~8のいずれかに記載の容器の開栓装置。
【請求項10】
前記蓋部は、先端に鍔部を有し、
前記回転部材は、前記第1突起部および前記第2突起部の少なくとも一方が閉状態の前記蓋部の鍔部に接触した状態で回転することによって前記蓋部に開方向の力を付与する、請求項1~9のいずれかに記載の容器の開栓装置。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載の開栓装置と、
前記開栓装置によって開栓された容器に対して試薬を分注する分注装置とを備える、解析装置。
【請求項12】
前記容器への液体の分注に用いられるチップをさらに備え、
前記分注装置は、前記チップが着脱可能に構成されたノズルを含み、
前記制御装置は、前記ノズルに装着された前記チップを介して前記容器に対して液体を分注する場合、前記チップが前記蓋部の先端側から前記ヒンジ部側に向けて水平移動するように前記移動装置を制御する、請求項
11に記載の解析装置。
【請求項13】
ポリメラーゼ連鎖反応を用いて遺伝子の解析を行なう、請求項
11または
12に記載の解析装置。
【請求項14】
容器本体と、蓋部と、前記容器本体と前記蓋部とを接続するヒンジ部とを有する容器の閉栓装置であって、
前記容器本体を保持する保持装置と、
開状態の前記蓋部に接触した状態で回転することによって前記蓋部に閉方向の力を付与する回転部材と、前記回転部材を回転させる駆動装置とを有する閉装置と、
前記閉装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、開状態の前記蓋部を閉状態にする場合、前記回転部材の一部が前記蓋部に接触しながら前記ヒンジ部に近づくように前記回転部材を回転させることによって前記蓋部に閉方向の力を付与する第1閉栓制御を実行
し、
前記保持装置および前記回転部材の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1閉栓制御の実行後に、前記回転部材の一部が前記蓋部に接触した状態で前記回転部材が前記蓋部に閉方向の力を付与するように前記閉装置および前記移動装置の少なくとも一方を制御する第2閉栓制御を実行する、容器の閉栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析対象となる検体(血液、尿、鼻咽頭拭い液、唾液等の生体由来サンプルなど)あるいは試薬を入れるための容器の開栓装置、容器内の検体に含まれる感染症ウィルスあるいは遺伝子の解析を行なうための解析装置、およびその解析装置において使用可能な試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、以下「PCR」ともいう)を用いて検体に含まれる遺伝子の解析を行なうための装置が存在する(たとえば特許第4785862号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PCRを用いて遺伝子を解析するには、PCRの前の試薬の調整作業、検体あるいは試薬を容器に分注する際の容器の開栓作業などの一部の作業については分析を行なう作業者が手動で行なう必要があり、熟練された技量を要する。これらの作業は煩雑で、解析に数時間程度の長い時間がかかり、作業者によるデータのばらつきやミス、作業者への感染が生じる可能性がある。そのため、PCRを用いた遺伝子解析は、中小病院、クリニック等の医療機関では困難であり、主に大病院、検査センター、衛生検査所で行われている。したがって、中小病院、クリニック等の医療機関では、検体採取後に、測定可能な施設へ検体を輸送した後に結果データを入手することになるため、結果入手までに数日かかり、迅速な測定をすることが困難となっている。
【0005】
特許第4785862号公報に開示された装置は、サーマルサイクラーによりPCR反応をかけながら蛍光等で遺伝子を検出する装置であるが、上述したように検体あるいは試薬を容器に分注するのは作業者の手動作業によるものが多い。また、これらも含め自動化したオールインワン装置も存在するが、従来のオールインワン装置においては、試薬を格納する容器が専用品であり、一般に市販されている容器(PCRチューブ)を用いることはできず汎用性が低いという問題がある。
【0006】
本開示は、上記の問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、汎用性のある市販の容器を作業者の手作業に依らずに適切に開栓することである。
【0007】
また、本開示の他の目的は、解析装置に対する試薬容器のセット作業の効率化を図ることである。
【0008】
また、本開示の他の目的は、汎用性のある市販の容器を作業者の手作業に依らずに適切に閉栓することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の態様に係る開栓装置は、容器本体と、蓋部と、容器本体と蓋部とを接続するヒンジ部とを有する容器の開栓装置である。開栓装置は、容器本体を保持する保持装置と、蓋部と接触可能な第1突起部および第2突起部を有し、第1突起部および第2突起部の少なくとも一方が閉状態の蓋部に接触した状態で回転することによって蓋部に開方向の力を付与する回転部材と、回転部材を回転させる駆動装置とを有する開装置と、保持装置および回転部材の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動装置と、開装置および移動装置を連動させて制御することによって蓋部を開状態にする制御装置とを備える。
【0010】
上記の開栓装置によれば、第1突起部および第2突起部の少なくとも一方が容器の蓋部に接触した状態で回転部材が回転することによって、蓋部に開方向の力が付与される。さらに、回転部材の回転に連動させて、容器本体を保持する保持装置が回転部材に対して相対移動される。これにより、回転部材の回転に伴って第1突起部および第2突起部の位置が変位したことに合わせて、容器を変位させることができる。そのため、回転部材の回転に伴って第1突起部および第2突起部の位置が変位したとしても、第1突起部および第2突起部が蓋部に接触しなくなってしまうことを抑制することができる。その結果、汎用性のある市販の容器を、作業者の手作業に依らずに適切に開栓することができる。
【0011】
本開示の態様に係る解析装置は、上記の開栓装置と、開栓装置によって開栓された容器に対して試薬を分注する分注装置とを備える。
【0012】
上記の解析装置によれば、容器の開栓、および開栓された容器に対する試薬の分注を作業者の手作業に依らずに行なうことができる。
【0013】
本開示の態様に係る閉栓装置は、容器本体と、蓋部と、容器本体と蓋部とを接続するヒンジ部とを有する容器の閉栓装置である。閉栓装置は、容器本体を保持する保持装置と、開状態の蓋部に接触した状態で回転することによって蓋部に閉方向の力を付与する回転部材と、回転部材を回転させる駆動装置とを有する閉装置と、閉装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、開状態の蓋部を閉状態にする場合、回転部材の一部が蓋部に接触しながらヒンジ部に近づくように回転部材を回転させることによって蓋部に閉方向の力を付与する第1閉栓制御を実行する。
【0014】
上記の閉栓装置によれば、第1閉栓制御によって蓋部が先端側ではなくヒンジ部側に押されるため、容器本体に対して蓋部の位置が蓋部の先端側にずれてしまうことが抑制される。その結果、蓋部と容器本体との干渉が生じず、蓋部を適切に閉じることができる。
【0015】
本開示の態様に係る試薬キットは、複数の容器と、複数の容器を梱包する梱包材とを備える。複数の容器の各々は、容器本体と、ヒンジ部を介して容器本体に接続され、容器本体に対して開閉可能な蓋部とを有する。複数の容器は、1次元状に配列され、互いに隣接する容器同士が繋がっており、蓋部が閉じられ、かつ各容器本体に試薬が入れられた状態で提供される。
【0016】
上記の試薬キットによれば、互いに切り離され複数の容器をそれぞれ保持装置にセットするのではなく、1次元状に連結された複数の容器を保持装置にセットするだけで試薬容器のセット作業を完了させることができる。その結果、解析装置に対する試薬容器のセット作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る開栓装置においては、汎用性のある市販の容器を作業者の手作業に依らずに適切に開栓することができる。
【0018】
本開示に係る閉栓装置においては、汎用性のある市販の容器を作業者の手作業に依らずに適切に閉栓することができる。
【0019】
本開示に係る試薬キットにおいては、解析装置に対する試薬容器のセット作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】解析システムの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】容器が設置された状態の保持装置をZ軸に沿う方向から視た図である。
【
図3】容器が設置された状態の保持装置をY軸に沿う方向から視た断面図である。
【
図4】シリンジのノズルにロングチップを取り付けて、ロングチップを検体容器に挿入している状態を示す図である。
【
図5】シリンジのノズルにショートチップを取り付けて、ショートチップを試薬容器に挿入している状態を示す図である。
【
図6】解析装置による解析処理の各工程を模式的に示す図である。
【
図7】開閉ユニットに備えられる開閉機構の斜視図である。
【
図8】PCR容器の開栓動作が行なわれる場合の回転部材および容器の動作を模式的に示す図である。
【
図9】制御装置が容器の開栓動作を行なう場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】制御装置が容器の閉栓動作を行なう場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】照射ユニットの構成の一例を示す図である。
【
図12】照射ユニットの構成の変形例を示す図である。
【
図13】開閉ユニットの構成の変形例を示す図である。
【
図14】PCR容器の開栓動作時に、回転部材の突起部が容器の蓋部にセットされた状態を示す図である。
【
図15】回転部材の突起部を用いて容器の蓋部を閉めた状態を示す図である。
【
図16】回転部材の突起部を用いて容器の蓋部を閉めた状態を示す図である。
【
図17】市販されているPCRチューブの外観を示す図である。
【
図18】試薬キットの外観を模式的に示す図である。
【
図19】加熱前における、開栓動作終了時点の回転部材およびPCR容器の状態を模式的に示す図である。
【
図20】加熱後における、開栓動作終了時点の回転部材およびPCR容器の状態を模式的に示す図である。
【
図21】PCR容器に対するショートチップの動きを模式的に示す図である。
【
図22】比較例1による閉栓動作を模式的に示す図である。
【
図23】比較例2による閉栓動作を模式的に示す図である。
【
図24】第1閉栓制御による動作を模式的に示す図である。
【
図25】第2閉栓制御による動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
図1は、本実施の形態による解析システム1の構成の一例を概略的に示す図である。解析システム1は、PCRによる遺伝子の増幅を経時的(リアルタイム)に測定して解析する処理を全自動で行なうことができる装置である。以下では、
図1に示すように、鉛直方向(
図1においては上下方向)に沿う方向を「Z軸方向」、鉛直方向に垂直であってかつ互いに直交する方向をそれぞれ「X軸方向」および「Y軸方向」とも称する。
【0023】
解析システム1は、解析装置2と、解析装置2と通信可能な端末3とを含む。端末3は、作業者によって操作される、ディスプレイを備えた一般的なパーソナルコンピュータである。
【0024】
解析装置2は、検査装置10と、制御装置20と、温調装置30と、移動装置4,5とを含む。温調装置30は、複数の容器50等を保持可能に構成される保持装置(ホルダ)40を含む。保持装置40は、ペルチェ素子などによる温調機能(加熱機能および冷却機能)を有する温調部41と、温調機能を有さない保持部42とを含む。
【0025】
移動装置4は、検査装置10を水平方向(XY軸方向)に移動させるアクチュエータ(図示せず)を含む。移動装置5は、保持装置40を水平方向(XY軸方向)に移動させるアクチュエータ(図示せず)を含む。移動装置4,5のアクチュエータは、制御装置20からの指令によって動作する。移動装置4,5によって検査装置10および保持装置40の少なくとも一方を水平方向に移動させることによって、検査装置10と保持装置40との水平方向の相対距離を調整することができる。なお、移動装置4,5のどちらか一方を省略するようにしてもよい。
【0026】
検査装置10は、光学ユニット11と、分注ユニット12と、開閉ユニット14と、照射ユニット16とを含む。
【0027】
分注ユニット12には、Z軸方向に延在するノズル13aが先端に取り付けられたシリンジ13が備えられる。ノズル13aの内部には、Z軸方向に沿って移動可能なプランジャ(図示せず)が備えられる。シリンジ13は、プランジャのZ軸正方向のストローク量に応じた量の液体を吸引し、プランジャのZ軸負方向のストローク量に応じた量の液体を排出するように構成される。分注ユニット12は、シリンジ13をZ軸方向に移動させるためのアクチュエータ(図示せず)と、ノズル13a内のプランジャをZ軸方向にストロークさせるためのアクチュエータ(図示せず)とを備える。これらのアクチュエータは、制御装置20からの指令によって動作する。
【0028】
開閉ユニット14は、保持装置40に保持されている容器50の蓋に触れて容器50の蓋を自動開閉するための突起部を有する開閉機構を備える。開閉ユニット14は、制御装置20からの指令によって動作する。開閉ユニット14の構成については後に詳述する。
【0029】
照射ユニット16は、開閉ユニット14が容器50の蓋を開閉する際に開閉ユニット14の突起部に検体が付着して次の検体に混入(コンタミネーション)するおそれがあることに鑑み、開閉ユニット14の突起部周辺にUV光(紫外線)を照射することによってコンタミネーションを予防する。照射ユニット16の構成についても後に詳述する。
【0030】
光学ユニット11は、励起用の光を容器50内の検体に照射したときに検体から放出される蛍光を検出することによって、検体に含まれる感染症ウィルスあるいは遺伝子を解析する装置である。光学ユニット11は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの波長に対する蛍光検出をそれぞれ行ない、その結果を制御装置20に出力する。光学ユニット11には、光源(発行ダイオードなど)、光源からの光を検体に照射したり検体の蛍光を集めたりするためのレンズ、検体から放射される蛍光を検出し解析可能なデジタルデータに変換するフォトダイオードなどが含まれる。なお、光学ユニット11については公知の構成を採用することができる。
【0031】
制御装置20は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力バッファ等を含んで構成される。制御装置20は、分析開始指令を端末3から受けると、解析装置2の各部(検査装置10内の各ユニット、移動装置4,5、温調装置30の温調部41)を予め決められた手順に沿って制御することによって、検体に含まれる感染症ウィルスあるいは遺伝子を解析する。制御装置20は、解析装置2による解析結果を端末3のディスプレイに表示させる。
【0032】
図2は、容器50が設置された状態の保持装置40をZ軸に沿う方向から視た図である。保持装置40は、XY平面に沿って延在し、複数の容器50が2次元状に配列される配列面を有している。検査装置10および保持装置40は、移動装置4,5によって、保持装置40の配列面に沿って2次元状に相対移動可能に構成される。
【0033】
保持装置40の配列面に配列される容器50には、サーマルサイクルの対象となる液体(各試薬が添加された検体)が入るPCR容器(反応容器)51と、各試薬の入った試薬容器52と、検体単体が入った検体容器54とが含まれる。
【0034】
PCR容器51は、X軸方向に沿って1次元状に配列される4つのPCR容器51a,51b,51c,51dを1セットとして、Y軸方向に4セット配置される。
【0035】
試薬容器52は、X軸方向に沿って1次元状に配列される4つの試薬容器52a,52b,52c,52dを1セットとして、Y軸方向に4セット配置される。試薬容器52aには、検体処理液が予め入れられている。試薬容器52bには、反応液が予め入れられている。試薬容器52cには、プライマー/プローブ液(プライマーとプローブとを含む液)が予め入れられている。試薬容器52dには、酵素液が予め入れられている。なお、4つの試薬容器52a,52b,52c,52dは、少なくとも1検体の分析に必要な量の試薬が予め封入された状態で1セットで試薬キットとして提供(市販)されている。試薬キットの提供態様については後に詳述する。
【0036】
検体容器54は、Y軸方向に沿って1次元状に4つ配列される。本実施の形態による解析装置2においては、Y軸方向に配列された4つの検体容器54にそれぞれ異なる検体を入れておくことによって、1度に4つの検体を分析することができる。
【0037】
保持装置40における、各容器50(PCR容器51、試薬容器52、検体容器54)が配置される箇所には、各容器50の一部をZ軸方向に沿って挿入可能な段差(穴あるいは窪み)が形成されている。各容器50が対応する段差に挿入されることによって、各容器50のX軸方向およびY軸方向の位置が固定される。
【0038】
また、保持装置40における試薬容器52と検体容器54との間の領域には、検体および試薬を分注するための分注チップ53も配置される。分注チップ53は、シリンジ13のノズル13aに取り付けられて使用される。
【0039】
本実施の形態においては、分注チップ53として、検体容器54に用いられるロングチップ53aと、PCR容器51および試薬容器52に用いられるショートチップ(微量チップ)53bとが含まれる。分注チップ53は、X軸方向に沿って1次元状に配列される1つのロングチップ53aおよび2つのショートチップ53bを1セットとして、Y軸方向に4セット配置される。
【0040】
サーマルサイクルの対象となるPCR容器51は温調機能を有する温調部41に配置され、その他の試薬容器52、分注チップ53、検体容器54は温調機能を有さない保持部42に配置される。
【0041】
さらに、保持装置40には、使用済みの分注チップ53を廃棄するためのチップ廃棄部43が備えられる。
【0042】
なお、
図2には示されていないが、各容器50は、蓋と容器本体とが一体となった樹脂成型品であり、蓋の開閉が可能に構成される。
【0043】
図3は、容器50が設置された状態の保持装置40をY軸に沿う方向から視た断面図である。
図2にも示したように、保持装置40には、検体容器54、ロングチップ53a、2つのショートチップ53b、試薬容器52a,52b,52c,52d、PCR容器51a,51b,51c,51dが、X軸方向に沿ってこの順に配列されている。
【0044】
PCR容器51および試薬容器52には同じ形状およびサイズの汎用性のある容器が用いられており、PCR容器51および試薬容器52の高さ(Z軸方向の寸法)Z1は同じ値(たとえば20mm程度)である。一方、検体容器54にはPCR容器51および試薬容器52よりも大きいサイズの容器が用いられている。そのため、検体容器54の高さZ4は、PCR容器51および試薬容器52の高さZ1よりも大きい値(たとえば70mm程度)に設定されている。
【0045】
検体が検体容器54に入っている場合、検体容器54の70mm程度の高さZ4に対して検体が検体容器54の底から10~20mm程度上方の位置にあることが想定される。そのため、数μLの微量を採取する微量用のショートチップ53bでは、ショートチップ53bが検体容器54の中に深く入り込み、分注時の飛沫がショートチップ53bだけでなくノズル13aに付着する可能性が高まり、感染や混入の可能性が高まる。
【0046】
その対策として、本実施の形態においては、PCR容器51および試薬容器52に対しては、ショートチップ53bが使用される。ショートチップ53bの高さ(Z軸方向の寸法)Z2は、PCR容器51および試薬容器52の高さZ1よりも大きい値に設定される。一方、検体容器54に対しては、ロングチップ53aが使用される。ロングチップ53aの高さ(Z軸方向の寸法)Z3は、検体容器54の高さZ4よりも大きい値に設定される。
【0047】
さらに、本実施の形態によるシリンジ13のノズル13aは、ショートチップ53bおよびロングチップ53aの双方を取付可能に構成される。
【0048】
図4は、シリンジ13のノズル13aにロングチップ53aを取り付けて、ロングチップ53aを検体容器54に挿入している状態を示す図である。
図5は、シリンジ13のノズル13aにショートチップ53bを取り付けて、ショートチップ53bを試薬容器52aに挿入している状態を示す図である。
【0049】
図4に示すように、ノズル13aには、ロングチップ53aの開口径に嵌合するようにサイズ調整された径D1を有する部分が設けられる。ノズル13aにロングチップ53aを取り付ける際には、ロングチップ53aの開口部がノズル13aの径D1を有する部分に位置するまでノズル13aをロングチップ53aに挿入することによって、ノズル13aとロングチップ53aとが嵌合される。
【0050】
さらに、
図5に示すように、ノズル13aにおける径D1を有する部分よりも先端側には、ショートチップ53bの開口径に嵌合するようにサイズ調整された径D2(D2<D1)を有する部分が設けられる。ノズル13aにショートチップ53bを取り付ける際には、ショートチップ53bの開口部がノズル13aの径D2を有する部分に位置するまでノズル13aをショートチップ53bに挿入することによって、ノズル13aとショートチップ53bとが嵌合される。
【0051】
なお、ノズル13aに嵌合されたロングチップ53aあるいはショートチップ53bをノズル13aから取り外す際には、ロングチップ53aあるいはショートチップ53bの上端をチップ廃棄部43の凹部下面に引っかけた状態でノズル13aを上方に移動させることによって、ノズル13aからロングチップ53aあるいはショートチップ53bが取り外されて廃棄される。
【0052】
<解析処理>
作業者が、各容器50(PCR容器51、試薬容器52および検体容器54)および分注チップ53(ロングチップ53aおよびショートチップ53b)を保持装置40にセットし、分析を開始するための分析開始指令を端末3に入力すると、解析装置2による解析処理が開始される。
【0053】
図6は、解析装置2による解析処理の各工程を模式的に示す図である。解析処理においては、工程S1~S6がこの順に実行される。
【0054】
まず、工程S1では、検体5μLをPCR容器51bに分注する処理(サンプル注入)が行なわれる。具体的には、制御装置20は、まず、シリンジ13のノズル13aにロングチップ53aを装着し、検体容器54から検体25μLを採取してPCR容器51aへ検体25μLを分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0055】
次いで、制御装置20は、ロングチップ53aをチップ廃棄部43にて廃棄するように分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0056】
次いで、制御装置20は、シリンジ13のノズル13aにショートチップ53bを装着し、PCR容器51aから検体5μLを採取してPCR容器51bへ検体5μLを分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0057】
なお、ロングチップ53aで検体を25μL採取して一時的にPCR容器51aに分注しておき、その後にショートチップ53bに替えてPCR容器51aから検体5μLを採取してPCR容器51bに分注するのは、検体5μLを正確にPCR容器51bに分注するためである。すなわち、シリンジ13のノズル13aの内部に備えられるプランジャは基本的に微量の分注を行うショートチップ53bに対応させているために細く、同じストローク量では、ロングチップ53aの使用時において分注精度が低下し正確な結果が得られない場合が生じ得る。そこで、本実施の形態においては、ロングチップ53aで一度検体を採取してPCR容器51bとは別のPCR容器51aに5μLよりも多い25μLを分注しておき、その後にショートチップ53bに替えてPCR容器51aから正確に5μLを採取してPCR容器51bへ分注する。これにより、5μLの微量の検体を正確にPCR容器51bに分注することができる。
【0058】
次の工程S2では、PCR容器51bに検体処理液5μLを添加する処理が行なわれる。具体的には、制御装置20は、まず、試薬容器52aから検体処理液5μLを採取してPCR容器51bへ検体処理液5μLを分注し、シリンジ13の往復(上下動作)によってPCR容器51b内を攪拌するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0059】
次いで、制御装置20は、ショートチップ53bをチップ廃棄部43にて廃棄するように分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0060】
次の工程S3では、PCR容器51bを加熱および急冷する処理が行なわれる。具体的には、制御装置20は、PCR容器51bを加熱してPCR容器51b内の検体温度を90℃に5分維持し、その後、PCR容器51bを急冷してPCR容器51b内の検体温度を20℃(常温)に戻すように、温調部41を制御する。
【0061】
次の工程S4では、PCR容器51bに各試薬を添加する処理が行なわれる。具体的には、制御装置20は、まず、試薬容器52bから反応液7.8μLを採取し、酵素2.4μLが予め入っている試薬容器52dへ分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0062】
次いで、制御装置20は、試薬容器52cからプライマ/プローブ液7.8μLを採取して試薬容器52dへ分注し、シリンジ13の往復(上下動作)によって試薬容器52d内を攪拌するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。この時点での試薬容器52dに入っている試薬混合液の量は18μLとなる。
【0063】
次いで、制御装置20は、試薬容器52dから試薬混合液15μLを採取し、PCR容器51bへ試薬混合液15μLを分注し、シリンジ13の往復(上下動作)によってPCR容器51b内を攪拌するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0064】
次の工程S5では、PCR容器51bのサーマルサイクル処理が行なわれる。具体的には、制御装置20は、PCR容器51b内の液温度を42℃に10分維持して逆転写反応を生じさせ、その後、PCR容器51b内の液温度を95℃に1分維持して酵素を活性させるように、温調部41を制御する。
【0065】
次いで、制御装置20は、PCR容器51b内の液温度を95℃に5秒間維持した後にPCR容器51b内の液温度を60℃に30秒間維持して遺伝子を増幅させる増幅処理を行なうように、温調部41を制御する。なお、この増幅処理は45サイクル実施される。
【0066】
次の工程S6では、3波長蛍光検出が行なわれる。具体的には、制御装置20は、増幅処理後に、PCR容器51b内の液温度を60℃にした状態で、PCR容器51b内の液に対して3波長蛍光検出を行なうように、温調部41および光学ユニット11を制御する。なお、3波長蛍光検出は、増幅処理が行なわれる毎に実施される。3波長蛍光検出の結果(解析装置2による解析処理の結果)は、端末3のディスプレイに表示される。
【0067】
<容器の開栓および閉栓>
上述した解析処理の各工程S1~S6において、各容器50から液体を採取したり各容器50に液体を分注したりする毎に、各容器50の開栓動作(蓋を開く動作)および閉栓動作(蓋を閉じる動作)が行なわれる。本実施の形態による解析装置2は、上述したように、各容器50の蓋に触れて容器50の蓋を自動開閉するための開閉機構を備える開閉ユニット14を備える。制御装置20は、各工程S1~S6において、各容器50の開栓および閉栓が必要となるタイミングで、各容器50の蓋を自動開閉するように開閉ユニット14を制御する。
【0068】
図7は、開閉ユニット14に備えられる開閉機構の斜視図である。なお、
図7には、開閉ユニット14に加えて、保持装置40の温調部41に保持されたPCR容器51も合わせて示されている。
【0069】
PCR容器51は、蓋部LIDと容器本体Bとがヒンジ部L1によって接続されて一体となった樹脂成型品である。なお、
図7には示されていないが、試薬容器52は、PCR容器51と同じ形状およびサイズの汎用性のある容器であり、PCR容器51と同様、蓋部LIDと容器本体Bとがヒンジ部L1によって接続されて一体となった樹脂成型品である。
【0070】
蓋部LIDは、容器本体Bの開口に対して開閉可能に構成される。ヒンジ部L1は、蓋部LIDと容器本体Bと接続する部分が閉状態で予め屈曲することによって形成される。これにより、ヒンジ部L1は、蓋部LIDの開閉時にヒンジの役割を果たす。
【0071】
蓋部LIDの先端には、蓋部LIDを開閉するための鍔部L2が設けられている。閉状態のPCR容器51が保持装置40の温調部41に保持された状態においてヒンジ部L1から鍔部L2に向かう方向に沿う軸を「L軸」とするとき、各PCR容器51は、L軸がX軸およびY軸に対して傾斜した状態で保持装置40に保持される。
【0072】
開閉ユニット14は、モータMと、ベルトBLと、プーリPと、回転部材15とを備える。回転部材15は、プーリPの回転軸に固定されている。モータMの駆動によりベルトBLを介してプーリPが回転させられることによって回転部材15の回転角は任意に調整される。回転部材15の回転軸は、上述のL軸と直交している。
【0073】
回転部材15と各PCR容器51とのXY軸方向(水平方向)の相対位置は、制御装置20が上述の移動装置4,5を制御することによって調整することができる。
【0074】
回転部材15は、突起部15a,15bと、端部15c,15dとを有する。突起部15aは、蓋部LIDの鍔部L2に引っかけることができるように、L字状に形成されている。突起部15bは、突起部15aを蓋部LIDの鍔部L2に引っかけた状態(突起部15aの先端が蓋部LIDの鍔部L2の下面に当接した状態)において、蓋部LIDのヒンジ部L1の上面に当接するように構成される(後述の
図8参照)。
【0075】
図8は、PCR容器51の開栓動作(PCR容器51の蓋部LIDを開く動作)が行なわれる場合の回転部材15およびPCR容器51の動作を模式的に示す図である。
図8において、横軸はL軸方向の位置を示し、縦軸は時刻を示す。なお、L軸方向の位置は、回転部材15の回転軸P0の位置を原点(0)として示される。
【0076】
時刻t0において、まず、制御装置20は、回転部材15の突起部15aの先端が蓋部LIDの鍔部L2の直下に位置し、回転部材15の突起部15bの先端が蓋部LIDのヒンジ部L1の直上に位置するように、回転部材15の回転角を調整しながら回転部材15をPCR容器51に対して回転軸P0に沿う方向に相対移動させる。
【0077】
その後の時刻t1において、回転部材15の突起部15a,15bがPCR容器51の蓋部LIDにセットされる。具体的には、制御装置20は、回転部材15を時刻t0の状態から時計回りに回転させて、回転部材15の突起部15aの先端を蓋部LIDの鍔部L2の下面に当接させ、かつ、回転部材15の突起部15bを蓋部LIDのヒンジ部L1の上面に当接させる。なお、以下では、時刻t1における回転部材15の回転角θ1を0°とし、時計回りの回転角を正として説明する。
【0078】
その後の時刻t2において、制御装置20は、回転部材15を時計回り(突起部15aが蓋部LIDの鍔部L2を持ち上げる方向)に回転させて回転部材15の回転角を所定角θ2(θ2>θ1)とする。この際、回転部材15の回転を進めて行くにつれて、突起部15aが蓋部LIDの鍔部L2を持ち上げて蓋部LIDを開方向に変位させていく一方、突起部15bは蓋部LIDのヒンジ部L1付近を押さえるストッパーの役目を果たすことになる。これにより、PCR容器51自体が保持装置40の温調部41から持ち上がることを抑制しつつ、蓋部LIDを開くことができる。
【0079】
さらに、制御装置20は、回転部材15の回転駆動に連動させて、PCR容器51の位置が時刻t1の位置よりもL軸方向に所定距離ΔL2だけ相対移動するように移動装置4,5を制御する。これにより、回転部材15の時計回りの回転に伴って突起部15aがL軸正方向に変位したとしても、蓋部LIDの鍔部L2もL軸正方向に変位することになるため、突起部15aが鍔部L2から外れることが抑制される。
【0080】
その後の時刻t3において、制御装置20は、回転部材15をさらに時計回りに回転させて回転部材15の回転角を所定角θ3(θ2<θ3<90°)とする。この際にも、制御装置20は、回転部材15の回転駆動に連動させて、PCR容器51の位置が時刻t2の位置よりもL軸方向に所定距離ΔL3だけ相対移動するように移動装置4,5を制御する。これにより、突起部15aが鍔部L2から外れることが抑制される。
【0081】
その後の時刻t4において、制御装置20は、PCR容器51の位置が時刻t3の位置よりもL軸方向に所定距離ΔL4だけ相対移動するように移動装置4,5を制御する。これにより、蓋部LIDをより大きく開いて、蓋部LIDの開度(容器本体Bの開口面と蓋部LIDとがなす角)を90°よりも大きい値にすることができる。また、制御装置20は、回転部材15の回転角を時刻t3と同じ所定角θ3に維持する。これにより、回転部材15が更に時計回りに回転することによって突起部15aが更に上方に変位することが抑制されるため、突起部15aが鍔部L2から外れることが抑制される。
【0082】
その後の時刻t5において、制御装置20は、回転部材15を反時計回り(突起部15aが蓋部LIDの鍔部L2を押し下げる方向)に回転させて回転部材15の回転角を所定角θ4(0°<θ4<θ3)とする。この際、制御装置20は、回転部材15の回転駆動に連動させて、PCR容器51の位置が時刻t4の位置よりもL軸方向に所定距離ΔL5だけ相対移動するように移動装置4,5を制御する。これにより、蓋部LIDの開度を時刻t4の時の開度よりも更に大きい値(180°に近い値)にすることができる。このように、蓋部LIDの開度を大きくしておくことによって、閉状態において屈曲していたヒンジ部L1を十分に延ばすことができるため、回転部材15を蓋部LIDから取り外した際にも、蓋部LIDが閉方向に戻り過ぎる(蓋部LIDの開度が90°未満となる)ことを抑制することができる。
【0083】
図9は、制御装置20が容器50(PCR容器51あるいは試薬容器52)の開栓動作を行なう場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、上述した解析処理の各工程S1~S6において各容器50の開栓が必要となるタイミングで各容器50に対して実行される。
【0084】
まず、制御装置20は、回転部材15の突起部15a,15bを容器50の蓋部LIDにセットする(ステップS10)。具体的には、上述のように、制御装置20は、回転部材15の突起部15aの先端が蓋部LIDの鍔部L2の下面に当接し、かつ、回転部材15の突起部15bが蓋部LIDのヒンジ部L1の上面に当接するように、開閉ユニット14および移動装置4,5を制御する。
【0085】
次いで、制御装置20は、上述の
図8で説明した予め定められた手順で回転部材15を回転駆動するように開閉ユニット14を制御する(ステップS12)。
【0086】
次いで、制御装置20は、回転部材15の回転駆動に連動させて、上述の
図8で説明した予め定められた手順で、容器50をL軸方向に相対移動するように移動装置4,5を制御する(ステップS14)。
【0087】
このように、本実施の形態による解析装置2は、汎用性のある市販の容器であるPCR容器51あるいは試薬容器52を、作業者の手作業に依らずに開栓することができる開栓装置を備えている。この開栓装置は、容器本体Bを保持する保持装置40と、開閉ユニット14と、移動装置4,5と、制御装置20とを備える。
【0088】
開閉ユニット14は、容器の蓋部LIDと接触可能な突起部15a(第1突起部)および突起部15b(第2突起部)を有する回転部材15と、回転部材15を回転させるモータM(駆動装置)とを有する。回転部材15は、突起部15a,15bが閉状態の蓋部LIDに接触した状態で回転することによって蓋部LIDに開方向の力を付与する。移動装置4,5は、保持装置40および回転部材15の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる。
【0089】
制御装置20は、開閉ユニット14および移動装置4,5を連動させて制御することによって容器の蓋部LIDを開状態にする。具体的には、開閉ユニット14の回転部材15を回転させることに連動して、L軸方向(容器のヒンジ部L1から鍔部L2に向かう方向)に容器50が水平移動するように移動装置4,5を制御する。これにより、汎用性のある市販の容器を、作業者の手作業に依らずに適切に開栓することができる。
【0090】
また、本実施の形態による解析装置2は、容器50の閉栓動作(容器50の蓋部LIDを閉じる動作)を行なうこともできる。
【0091】
図10は、制御装置20が容器50の閉栓動作を行なう場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、上述した解析処理の各工程S1~S6において各容器50の閉栓が必要となるタイミングで各容器50に対して実行される。
【0092】
まず、制御装置20は、回転部材15の端部15dを容器50の蓋部LIDにセットする(ステップS20)。具体的には、制御装置20は、回転部材15の端部15dが開状態の蓋部LIDの上面中央付近に当接するように、開閉ユニット14および移動装置4,5を制御する。
【0093】
次いで、制御装置20は、予め定められた手順で回転部材15を閉方向(蓋部LIDが閉じる方向)に回転駆動するように開閉ユニット14を制御する(ステップS22)。
【0094】
次いで、制御装置20は、回転部材15の回転駆動に連動させて、容器50をL軸方向に相対移動するように移動装置4,5を制御する(ステップS24)。たとえば、回転部材15を回転駆動することによって回転部材15の端部15dがL軸正方向に変位する場合には、端部15dの変位に合わせて容器50をL軸方向に相対移動させることによって、回転部材15の端部15dが蓋部LIDの上面中央付近からずれないようにする。これにより、容器50の閉栓動作を適切に行なうことができる。
【0095】
なお、
図8の時刻t5に示す状態の後に容器50の蓋部LIDを閉じる場合には、制御装置20は、以下のような閉栓動作を行なうようにしてもよい。
【0096】
まず、制御装置20は、
図8の時刻t5に示す状態から、PCR容器51をさらにL軸正方向(
図8の左方向)に相対移動させることによって、蓋部LIDを回転部材15から解放させる。これにより、蓋部LIDは、ヒンジ部L1の弾性力によって閉方向に戻り、容器本体Bの開口面に対して略垂直に立ち上がった状態(蓋部LIDの開度が略90°となる状態)となる。
【0097】
その後、制御装置20は、回転部材15の端部15dが下に出っ張る(突起部15a,15bおよび端部15cよりも下方に位置する)ように、回転部材15を回転させる。その後、制御装置20は、蓋部LIDが略垂直に立ち上がった状態のPCR容器51を、回転部材15の端部15dに向けて
図8の右方向に相対移動させる。これにより、蓋部LIDが下に出っ張った状態の端部15dに衝突して下方に押されて閉じられる。このような閉栓動作を行なうようにしてもよい。
【0098】
以上のように、本実施の形態による解析装置2は、汎用性のある市販の容器を作業者の手作業に依らずに自動的に開栓および閉栓することができる。さらに、本実施の形態による解析装置2は、検体および試薬の採取および分注を含めて、PCRを用いた遺伝子解析を全自動で行なう。そのため、作業者は容器の開閉作業、検体および試薬の採取分注作業を行なわなくてもよいので、コンタミネーションによる分析不良を低減することができるとともに、迅速に分析を行なうことができる。また、作業者の熟練された技量も不要であるため、中小病院、クリニック等、PCR検査を行う機会の少ない医療機関であっても簡便、迅速にPCR検査を行うことが可能となる。
【0099】
<照射ユニット16の構成>
上述した解析処理の工程S3における加熱急冷処理においては、PCR容器51bの蓋部は閉じられる。加熱急冷処理後の工程S4における試薬添加処理においては、回転部材15の突起部15aを蓋部LIDの鍔部L2に引っかけた状態で回転部材15を回転させることによって、PCR容器51bが開栓される。この開栓の際にPCR容器51b内の検体が飛沫し、その飛沫が回転部材15の突起部15aに付着すると、次の検体に混入するおそれがある。
【0100】
その対策として、本実施の形態による解析装置2は、開閉ユニット14の突起部15a周辺にUV光(紫外線)を照射することによってコンタミネーションを予防する照射ユニット16を備えている。
【0101】
図11は、照射ユニット16の構成の一例を示す図である。
図11に示す照射ユニット16は、UV光(紫外線)を発生して開閉ユニット14の突起部15a周辺に直接照射するUV光源ユニット17を備える。
【0102】
図12は、照射ユニット16の構成の変形例を示す図である。
図12に示す照射ユニット16Aは、UV光を発生する発光ダイオードを有するUV光源基板18と、UV光源基板18が発生するUV光を集光して開閉ユニット14の突起部15a周辺に照射するレンズ19a,19bとを備える。
【0103】
制御装置20は、上述した解析処理の各工程S1~S6において、回転部材15の突起部15aおよび突起部15bの少なくとも一方が検体の入った容器50の蓋部LIDに接触した後に、その蓋部LIDに接触した突起部の一部または全部にUV光を照射するように、照射ユニット16および移動装置4,5を制御する。これにより、回転部材15の突起部15a,15bに検体の飛沫が付着した場合であっても、UV光によって突起部15a,15bに付着した検体中のウィルスを事前に滅菌したり遺伝子を事前に不活化したりすることができるため、次の検体に混入することを未然に防ぐことができる。
【0104】
<開閉ユニット14の変形例>
図13は、開閉ユニット14の構成の変形例を示す図である。
図13に示す開閉ユニット14Aは、モータMAと、回転部材15Aとを備える。回転部材15Aは、モータMAの回転軸P0に固定されている。モータMAの駆動により回転部材15Aの回転角は任意に調整される。
【0105】
回転部材15Aは、L軸と直交する方向に延在する2つの突起部15Aa,15Abを有する。突起部15Aaは、突起部15Abよりも、回転軸P0から離れた位置に配置される。回転部材15Aの突起部15Aa,15Abは、上述の回転部材15の突起部15a,15bにそれぞれ対応する。
【0106】
図14は、PCR容器51の開栓動作時に、回転部材15Aの突起部15Aa,15AbがPCR容器51の蓋部LIDにセットされた状態を示す図である。
図14に示すように、PCR容器51の開栓動作時には、回転部材15Aの突起部15Aaの先端が蓋部LIDの鍔部L2の下面に当接し、かつ、回転部材15Aの突起部15Abが蓋部LIDのヒンジ部L1の上面に当接するようにセットされる。この状態において、回転部材15Aが開方向(突起部15Aaが蓋部LIDの鍔部L2を持ち上げる方向)に回転されることによって、突起部15Aaが蓋部LIDの鍔部L2を持ち上げて蓋部LIDを開方向に変位させていく一方、突起部15Abは蓋部LIDのヒンジ部L1付近を押さえるストッパーの役目を果たすことになる。これにより、上述の回転部材15と同様、PCR容器51自体が保持装置40から持ち上がることなく、蓋部LIDを開くことができる。
【0107】
さらに、回転部材15Aの回転駆動に連動させて、PCR容器51の位置がL軸方向に相対移動される。これにより、回転部材15Aの回転に伴って突起部15Aaが変位したとしても、突起部15Aaの変位に合わせて蓋部LIDの鍔部L2をL軸正方向に変位させることができるため、突起部15Aaが鍔部L2から外れることを抑制することができる。
【0108】
図15は、回転部材15Aの突起部15Abを用いてPCR容器51の蓋部LIDを閉めた状態を示す図である。PCR容器51の閉栓動作時には、回転部材15Aの突起部15Abが蓋部LIDの上面中央付近に当接するようにセットされた状態において、回転部材15Aが閉方向に回転されることによって、蓋部LIDが開じられる。
【0109】
さらに、回転部材15Aの回転駆動に連動させて、PCR容器51をL軸方向に相対移動させることによって、回転部材15Aの突起部15Abが蓋部LIDの上面中央付近からずれないようにすることができる。これにより、PCR容器51の閉栓動作を適切に行なうことができる。
【0110】
なお、回転部材15Aの突起部15Abではなく突起部15Aaを用いて容器50を閉栓することもできる。
【0111】
図16は、回転部材15Aの突起部15Aaを用いてPCR容器51の蓋部LIDを閉めた状態を示す図である。PCR容器51の閉栓動作時には、回転部材15Aの突起部15Abが蓋部LIDの上面中央付近に当接するようにセットされた状態において、回転部材15Aが閉方向に回転されることによって、蓋部LIDが開じられる。
【0112】
さらに、回転部材15Aの回転駆動に連動させて、PCR容器51をL軸方向に相対移動させることによって、回転部材15Aの突起部15Abが蓋部LIDの上面中央付近からずれないようにすることができる。これにより、PCR容器51の閉栓動作を適切に行なうことができる。
【0113】
<試薬キット>
以下、4つの試薬容器52a,52b,52c,52dを1セットとして提供される試薬キットについて説明する。試薬容器52に用いられるPCRチューブには、8つの容器が繋がった状態で市販されているものが存在する。
【0114】
図17は、市販されている8連のPCRチューブの外観を示す図である。
図17に示すように、8つの容器が1次元状に繋がった状態で市販されているPCRチューブが存在する。
【0115】
本実施の形態においては、このような8連の市販チューブを中央でカットし、2組の4連チューブに分割する。また、市販チューブの一方の端部(
図17では左側端部)の把持部についても不要であるためカットする。
【0116】
そして、4連チューブの4つの容器に、少なくとも1検体の分析に必要な量の検体処理液、反応液、プライマー/プローブ液、酵素液をそれぞれ封入することによって、4つの試薬容器52a,52b,52c,52dが生成されて試薬キットとして提供される。
【0117】
図18は、試薬キットの外観を模式的に示す図である。この試薬キットには、
図18に示すように、1次元状に配列され、互いに隣接する容器同士が繋がった状態の4つの試薬容器52a,52b,52c,52dが、梱包材55に梱包された状態で提供される。4つの試薬容器52a,52b,52c,52dの各蓋部は閉じられた状態である。なお、梱包材55は、紙製の箱であってもよいし、樹脂製の袋であってもよい。
【0118】
このような試薬キットを用いることで、作業者は効率よく分析処理を開始することができる。すなわち、互いに切り離され試薬容器52a,52b,52c,52dをそれぞれ保持装置40にセットするのではなく、1次元状に連結された試薬容器52a,52b,52c,52dを梱包材55から取り出して保持装置40にセットするだけで試薬容器52のセット作業を完了させることができる。
【0119】
また、他の消耗品として、4連のPCR容器51、および分注チップ53(ロングチップ53aおよびショートチップ53b)を組み合わせて販売するようにしてもよい。
【0120】
<蓋部LIDの開栓角度の制御>
上述の
図8に示した開栓動作の終了後において回転部材15の突起部15aが蓋部LIDから離れると、蓋部LIDに対して回転部材15による拘束がなくなるため、蓋部LIDは閉方向に戻され、その後に静止することになる。開栓動作終了後に閉方向に戻された後の蓋部LIDの開度(以下、単に「開栓動作終了後の開栓角度」ともいう)が小さ過ぎると、その後に当該容器50への分注を行なう際に分注チップ53が当該容器50の蓋部LIDに干渉してしまうことが懸念される。一方、開栓動作終了後の開栓角度が大き過ぎると、その後に他の部材(開栓閉栓を確認するための接触式レバーセンサ、あるいはオープナー等)が当該容器50の蓋部LIDに干渉してしまうことが懸念される。そのため、開栓動作終了後の開栓角度は、蓋部LIDと他の部品(分注チップ53、接触式レバーセンサ、およびオープナー等)との干渉を回避できる最適な開度(略90°)であることが望まれる。
【0121】
上述の
図6に示したように、解析装置2による解析処理では、工程S3において、PCR容器51bを加熱する処理が行なわれる。工程3の処理は蓋部LIDが閉じた状態で行なわれるため、工程3の加熱後においては、工程3の加熱前よりも、蓋部LIDが閉じた状態により馴染んだ状態となる。この影響により、工程3の加熱後においては、工程3の加熱前よりも、開栓動作終了後に回転部材15による拘束がなくなった際の蓋部LIDの閉方向への戻り量がより大きくなる。この点を踏まえて、工程3の加熱後において開栓動作終了後の開栓角度が最適な開度(略90°)となるように開栓動作終了時点の開栓角度を一律に大きめに設定しておくことも可能ではある。しかしながら、この場合には、工程3の加熱前において蓋部LIDの閉方向への戻り量が小さいために開栓動作終了後の開栓角度が略90°よりも大きくなってしまい、他の部品との干渉を回避できなくなってしまうことが懸念される。
【0122】
そこで、制御装置20は、工程3の加熱前における開栓動作終了時点の開栓角度と、工程3の加熱後における開栓動作終了時点の開栓角度とを、互いに異なる値に設定する。具体的には、制御装置20は、工程3の加熱前に開栓動作を行なう場合、開栓動作終了時点の開栓角度が第1角度αとなるように開閉ユニット14および移動装置4,5を制御する。一方、制御装置20は、工程3の加熱後に開栓動作を行なう場合、開栓動作終了時点の開栓角度が第1角度αよりも大きい第2角度βとなるように開閉ユニット14および移動装置4,5を制御する。これにより、工程3の加熱前および加熱後の双方において、開栓動作終了後の開栓角度を、蓋部LIDと分注チップ53等の他の部品との干渉を回避できる最適な開度にすることができる。
【0123】
図19は、工程3の加熱前における、開栓動作終了時点の回転部材15およびPCR容器51の状態を模式的に示す図である。工程3の加熱前においては、開栓動作終了後の蓋部LIDの閉方向への戻り量が比較的小さいことに鑑み、
図19に示すように、開栓動作終了時点の開栓角度が比較的小さい第1角度α(たとえば120°程度)に抑えられる。そのため、開栓動作終了後の開栓角度を第1角度αよりも大きい第2角度β(たとえば160°程度)にする場合に比べて、開栓動作終了後の開栓角度が大き過ぎてしまうことが抑制され、最適な開度(略90°)となる。これにより、その後の処理で蓋部LIDが他の部品に干渉することを抑制し易くすることができる。
【0124】
図20は、工程3の加熱後における、開栓動作終了時点の回転部材15およびPCR容器51の状態を模式的に示す図である。工程3の加熱後においては、開栓動作終了後の蓋部LIDの閉方向への戻り量が比較的大きいことに鑑み、開栓動作終了時点の開栓角度が第1角度αよりも大きい第2角度β(たとえば160°程度)にされる。これにより、開栓動作終了後の開栓角度を第1角度α(たとえば120°程度)にする場合に比べて、開栓動作終了後の開栓角度が小さ過ぎてしまうことが抑制され、最適な開度(略90°)となる。これにより、その後の処理で蓋部LIDが他の部品に干渉することを抑制し易くすることができる。
【0125】
<分注チップ53による分注動作>
上述のような開栓角度の制御によって、開栓動作終了後の開栓角度を、蓋部LIDと他の部品との干渉を回避できる最適な開度(略90°)にすることができる。しかしながら、容器51の個体差によっては、開栓動作終了後の開栓角度が最適な開度(略90°)よりも小さくなってしまうことも想定される。
【0126】
この点に鑑み、制御装置20は、容器50への分注を行なう場合、分注チップ53が容器50の蓋部LIDの鍔部L2側(先端側)からヒンジ部L2側(基端側)に向けて水平移動するように移動装置4,5を制御する。
【0127】
図21は、ショートチップ53bを用いてPCR容器51への分注を行なう場合における、PCR容器51に対するショートチップ53bの動きを模式的に示す図である。
図21に示すように、制御装置20は、PCR容器51への分注を行なう場合、分注チップ53の先端部の鉛直方向の位置をPCR容器51の蓋部LIDの鉛直方向の位置に合わせた状態で、分注チップ53がPCR容器51の蓋部LIDの鍔部L2側(先端側)からヒンジ部L2側(基端側)に向けて水平移動するように移動装置4,5を制御する。これにより、開栓動作終了後の開栓角度が小さく蓋部LIDがある程度閉じかけている状態であっても、ショートチップ53bの水平移動によってショートチップ53bを蓋部LIDに当接させて蓋部LIDを開いた状態にすることができる。そのため、その後にショートチップ53bをPCR容器51に挿入することができるようになる。
【0128】
<容器の閉栓不良対策>
容器50の蓋部LIDの裏面には凸部L3(後述の
図22等参照)が設けられている。この凸部L3が容器本体Bに挿入されて嵌合することによって、容器50は閉栓される。容器50の閉栓動作が適切に行なわれない場合には、蓋部LIDの凸部L3が容器本体Bの開口部の縁と干渉し、容器50を適切に閉栓できなくなる場合が想定される。
【0129】
図22は、比較例1による閉栓動作を模式的に示す図である。比較例1による閉栓動作では、回転部材15の突起部15bが蓋部LIDに接触しながら蓋部LIDの鍔部L2側(先端側)に近づくように回転部材15を水平方向に相対移動させている。このような閉栓動作では、回転部材15が蓋部LIDに接触しながら鍔部L2側に変位することによって蓋部LIDが鍔部L2側に押されるため、容器本体Bの位置に対して蓋部LIDの位置が鍔部L2側にずれてしまう。その結果、蓋部LIDの凸部L3の先端が容器本体Bの開口部の縁と干渉し、凸部L3を容器本体Bに嵌合させることができなくなる場合がある。
【0130】
図23は、比較例2による閉栓動作を模式的に示す図である。比較例2による閉栓動作では、回転部材15の突起部15aが蓋部LIDに接触しながら蓋部LIDの先端側に近づくように回転部材15を回転させている。このような閉栓動作においても、比較例1と同様に、回転部材15が蓋部LIDに接触しながら鍔部L2側に変位することによって蓋部LIDが鍔部L2側に押されるため、容器本体Bの位置に対して蓋部LIDの位置が鍔部L2側にずれてしまう。その結果、蓋部LIDの凸部L3の先端が容器本体Bの開口部の縁と干渉し、凸部L3を容器本体Bに嵌合させることができなくなる場合がある。
【0131】
上記のような閉栓不良を防止するために、本実施の形態による制御装置20は、開状態の容器50を閉状態にする場合、互いに異なる種類の第1開栓制御および第2閉栓制御をこの順で連続して行なう。以下、第1開栓制御および第2閉栓制御について詳しく説明する。
【0132】
(第1閉栓制御)
図24は、第1閉栓制御による動作を模式的に示す図である。第1閉栓制御では、回転部材15の突起部15bが蓋部LIDの上面中央付近よりも鍔部L2側に近い位置に接触した状態から、突起部15bが蓋部LIDに接触しながら蓋部LIDのヒンジ部L1側(鍔部L2とは反対側)に近づくように、回転部材15を回転させる。これにより、蓋部LIDが鍔部L2側ではなくヒンジ部L1側に押されるため、蓋部LIDの位置が鍔部L2側にずれてしまうことが抑制される。その結果、凸部L3と容器本体Bとの干渉が生じず、凸部L3を容器本体Bに適切に嵌合させることができる。
【0133】
なお、第1閉栓制御において、蓋部LIDに接触させる回転部材15の部位は、必ずしも突起部15bに限定されるものではない。たとえば、回転部材15の突起部15aあるいは端部15dを蓋部LIDに接触させるようにしてもよい。
【0134】
(第2閉栓制御)
上述の第1閉栓制御では、蓋部LIDをヒンジ部L1側に押す力を作用させている分、蓋部LIDを上方から押さえつける力がやや弱くなり、蓋部LIDが僅かに開いてしまうことが想定される。そこで、本実施の形態による制御装置20は、第1開栓制御の実行後に、第2閉栓制御を連続して行なう。
【0135】
図25は、第2閉栓制御による動作を模式的に示す図である。第2閉栓制御では、回転部材15の端部15dが蓋部LIDに接触しながら蓋部LIDの鍔部L2側に近づくように、回転部材15を回転させる。この第2閉栓制御によって蓋部LIDを上方から強く押さえつけることができるため、第1閉栓制御の実行後に蓋部LIDが僅かに開いてしまった場合であっても、蓋部LIDをより確実に閉じることができる。
【0136】
第1閉栓制御の実行後においては、蓋部LIDの凸部L3の先端は既に容器本体Bに挿入された状態である。そのため、第2閉栓制御において、蓋部LIDを鍔部L2側に押す力が作用したとしても、凸部L3と容器本体Bとの干渉が生じず、凸部L3を容器本体Bに適切に嵌合させることができる。
【0137】
なお、第2閉栓制御において、蓋部LIDに接触させる回転部材15の部位は、必ずしも端部15dに限定されるものではない。たとえば、回転部材15の突起部15aあるいは突起部15bを蓋部LIDに接触させるようにしてもよい。
【0138】
また、第2閉栓制御においては、必ずしも回転部材15を回転させることに限定されない。たとえば、回転部材15を容器50に対して上下方向に相対的に移動させる装置を制御することによって、回転部材15が蓋部LIDに接触した状態で回転部材15を下方に変位させるようにしてもよい。
【0139】
[態様]
上述した実施の形態およびその変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0140】
(第1項) 一態様に係る開栓装置は、容器本体と、蓋部と、容器本体と蓋部とを接続するヒンジ部とを有する容器の開栓装置である。開栓装置は、容器本体を保持する保持装置と、蓋部と接触可能な第1突起部および第2突起部を有し、第1突起部および第2突起部の少なくとも一方が閉状態の蓋部に接触した状態で回転することによって蓋部に開方向の力を付与する回転部材と、回転部材を回転させる駆動装置とを有する開装置と、保持装置および回転部材の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動装置と、開装置および移動装置を連動させて制御することによって蓋部を開状態にする制御装置とを備える。
【0141】
第1項に記載の開栓装置によれば、第1突起部および第2突起部の少なくとも一方が容器の蓋部に接触した状態で回転部材が回転することによって、蓋部に開方向の力が付与される。さらに、回転部材の回転に連動させて、容器本体を保持する保持装置が回転部材に対して相対移動される。これにより、回転部材の回転に伴って第1突起部および第2突起部の位置が変位したことに合わせて、容器の位置を変位させることができる。そのため、回転部材の回転に伴って第1突起部および第2突起部の位置が変位したとしても、第1突起部および第2突起部が蓋部に接触しなくなってしまうことを抑制することができる。その結果、汎用性のある市販の容器を、作業者の手作業に依らずに適切に開栓することができる。
【0142】
(第2項) 第1項に記載の開栓装置においては、蓋部の先端には鍔部が設けられる。制御装置は、蓋部が容器本体よりも上方に位置するように容器本体が保持装置に保持された状態で回転部材の第1突起部が蓋部の鍔部の下面に接触し、かつ回転部材の第2突起部が蓋部のヒンジ部の上面に接触するセット状態となるように移動装置を制御し、セット状態で鍔部が上方に変位する方向に回転部材が回転するように開装置を制御する。
【0143】
第2項に記載の開栓装置によれば、回転部材を回転させることによって、第1突起部が蓋部の鍔部を上方に変位させて蓋部を開方向に変位させるとともに、第2突起部は蓋部のヒンジ部付近を押さえるストッパーの役目を果たすことになる。これにより、容器自体が保持装置から持ち上がることを抑制しつつ蓋部を開くことができる。
【0144】
(第3項) 第2項に記載の開栓装置においては、制御装置は、回転部材を回転させることに連動して、ヒンジ部から鍔部に向かう方向に容器が水平移動するように移動装置を制御する。
【0145】
第3項に記載の開栓装置によれば、回転部材の回転に伴って第1突起部がヒンジ部から鍔部に向かう方向に変位したとしても、蓋部の鍔部もヒンジ部から鍔部に向かう方向に変位させることができる。そのため、回転部材の回転に伴って第1突起部が蓋部の鍔部から外れることを抑制することができる。
【0146】
(第4項) 第1~3項のいずれかに記載の開栓装置においては、回転部材は、第1突起部および第2突起部とは異なる端部を有する。端部は、開状態の蓋部に接触した状態で回転部材が閉方向に回転することによって、蓋部に閉方向の力を付与する。
【0147】
第4項に記載の開栓装置によれば、回転部材の端部を蓋部に接触させた状態で回転部材を閉方向に回転させることによって、蓋部を閉栓することができる。
【0148】
(第5項) 第1~3項のいずれかに記載の開栓装置においては、回転部材の第1突起部および第2突起部の少なくとも一方は、開状態の蓋部に接触した状態で回転部材が閉方向に回転することによって、蓋部に閉方向の力を付与する。
【0149】
第5項に記載の開栓装置によれば、回転部材の第1突起部および第2突起部の少なくとも一方を蓋部に接触させた状態で回転部材を閉方向に回転させることによって、蓋部を閉栓することができる。
【0150】
(第6項) 第1~5項のいずれかに記載の開栓装置においては、保持装置は、複数の容器が2次元状に配列される配列面を有する。移動装置は、保持装置および回転部材の少なくとも一方を他方に対して、配列面に沿って2次元状に相対移動可能に構成される。
【0151】
第6項に記載の開栓装置によれば、保持装置の配列面に2次元状に配列された複数の容器の開栓を適切に行なうことができる。
【0152】
(第7項) 第1~6項のいずれかに記載の開栓装置においては、回転部材の第1突起部および第2突起部の少なくとも一方の一部または全部に紫外線を照射する照射装置をさらに備える。
【0153】
第7項に記載の開栓装置によれば、第1突起部あるいは第2突起部に付着したウィルスを照射装置が照射する紫外線によって滅菌したり、第1突起部あるいは第2突起部に付着した遺伝子を照射装置が照射する紫外線によって不活化したりすることができる。
【0154】
(第8項) 第7項に記載の開栓装置においては、制御装置は、第1突起部および第2突起部の少なくとも一方が検体の入った容器の蓋部に接触した後に、当該蓋部に接触した突起部の一部または全部に紫外線を照射するように照射装置を制御する。
【0155】
第8項に記載の開栓装置によれば、第1突起部あるいは第2突起部が検体の入った容器の蓋部に接触したことによってウィルスあるいは検体が付着したとしても、そのウィルスあるいは検体は、照射装置が照射する紫外線によって滅菌あるいは不活化される。そのため、第1突起部あるいは第2突起部に付着したウィルスあるいは遺伝子が、次の検体に混入することを未然に防ぐことができる。
【0156】
(第9項) 第1~8項のいずれかに記載の開栓装置においては、保持装置は、容器を加熱する機能を有する。制御装置は、保持装置による加熱前に蓋部を開状態にする場合、蓋部の開度が第1角度になるように開装置および移動装置を制御し、保持装置による加熱後に蓋部を開状態にする場合、蓋部の開度が第1角度よりも大きい第2角度になるように開装置および移動装置を制御する。
【0157】
第9項に記載の開栓装置によれば、容器の加熱前および加熱後の双方において、開栓動作終了後の蓋部の開度を、他の部品との干渉を回避できる最適な開度にすることができる。
【0158】
(第10項) 一態様に係る解析装置は、第1~9項のいずれかに記載の開栓装置と、開栓装置によって開栓された容器に対して試薬を分注する分注装置とを備える。
【0159】
第10項に記載の解析装置によれば、容器の開栓、および開栓された容器に対する試薬の分注を作業者の手作業に依らずに行なうことができる。
【0160】
(第11項) 第10項に記載の解析装置は、容器への液体の分注に用いられるチップをさらに備える。分注装置は、チップが着脱可能に構成されたノズルを含む。制御装置は、ノズルに装着されたチップを介して容器に対して液体を分注する場合、チップが蓋部の先端側からヒンジ部側に向けて水平移動するように移動装置を制御する。
【0161】
第11項に記載の解析装置によれば、容器の蓋部が閉じかけている状態であっても、チップの水平移動によって蓋部を開いた状態にすることができる。そのため、その後にチップを容器に挿入することができる。
【0162】
(第12項) 第10または11項に記載の解析装置においては、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて遺伝子の解析を行なう。
【0163】
第12項に記載の解析装置によれば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いた遺伝子解析において、容器の開栓および容器への試薬の分注を作業者の手作業に依らずに行なうことができる。
【0164】
(第13項) 一態様に係る閉栓装置は、容器本体と、蓋部と、容器本体と蓋部とを接続するヒンジ部とを有する容器の閉栓装置である。閉栓装置は、容器本体を保持する保持装置と、開状態の蓋部に接触した状態で回転することによって蓋部に閉方向の力を付与する回転部材と、回転部材を回転させる駆動装置とを有する閉装置と、閉装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、開状態の蓋部を閉状態にする場合、回転部材の一部が蓋部に接触しながらヒンジ部に近づくように回転部材を回転させることによって蓋部に閉方向の力を付与する第1閉栓制御を実行する。
【0165】
第13項に記載の閉栓装置によれば、第1閉栓制御によって蓋部が先端側ではなくヒンジ部側に押されるため、容器本体に対して蓋部の位置が蓋部の先端側にずれてしまうことが抑制される。その結果、蓋部と容器本体との干渉が生じず、蓋部を適切に閉じることができる。
【0166】
(第14項) 第13項に記載の容器の閉栓装置は、保持装置および回転部材の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動装置をさらに備える。制御装置は、第1閉栓制御の実行後に、回転部材の一部が蓋部に接触した状態で回転部材が蓋部に閉方向の力を付与するように閉装置および移動装置の少なくとも一方を制御する第2閉栓制御を実行する。
【0167】
第14に記載の閉栓装置によれば、第1閉栓制御の実行後に蓋部が僅かに開いてしまった場合であっても、第2閉栓制御によって蓋部をより確実に閉じることができる。
【0168】
(第15項) 一態様に係る試薬キットは、複数の容器と、複数の容器を梱包する梱包材とを備える。複数の容器の各々は、容器本体と、ヒンジ部を介して容器本体に接続され、容器本体に対して開閉可能な蓋部とを有する。複数の容器は、1次元状に配列され、互いに隣接する容器同士が繋がっており、蓋部が閉じられ、かつ各容器本体に試薬が入れられた状態で提供される。
【0169】
第15項に記載の試薬キットによれば、互いに切り離され複数の容器をそれぞれ保持装置にセットするのではなく、1次元状に連結された複数の容器を保持装置にセットするだけで試薬容器のセット作業を完了させることができる。その結果、解析装置に対する試薬容器のセット作業の効率化を図ることができる。
【0170】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0171】
1 解析システム、2 解析装置、3 端末、4,5 移動装置、10 検査装置、11 光学ユニット、12 分注ユニット、13 シリンジ、13a ノズル、14,14A 開閉ユニット、15,15A 回転部材、15a,15b,15Aa,15Ab 突起部、15c,15d 端部、16,16A 照射ユニット、17 UV光源ユニット、18 UV光源基板、19a,19b レンズ、20 制御装置、30 温調装置、40 保持装置、41 温調部、42 保持部、43 チップ廃棄部、50 容器、51,51a,51b,51c,51d PCR容器、52,52a,52b,52c,52d 試薬容器、53 チップ、53a ロングチップ、53b ショートチップ、54 検体容器、55 梱包材、B 容器本体、BL ベルト、L1 ヒンジ部、L2 鍔部、L3 凸部、LID 蓋部、M,MA モータ、P プーリ、P0 回転軸。