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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】接地装置及び接地方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 5/04 20060101AFI20241106BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20241106BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20241106BHJP
   H02H 7/20 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H02H5/04
H02H3/00 R
H02J1/00 301D
H02J1/00 309R
H02H7/20 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022569856
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2021044405
(87)【国際公開番号】W WO2022131013
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2020209805
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 欣也
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-323917(JP,A)
【文献】特開2011-073622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0393696(US,A1)
【文献】特開2002-057607(JP,A)
【文献】特開平05-327561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 5/04
H02H 3/00
H02J 1/00
H02H 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底装置に設置され、前記海底装置内の電気部品に電力を供給する海底装置内給電路と、海底アースとの間に接続される所定のインピーダンスを有する回路であるインピーダンス回路の温度が閾値を超えたかについての判定を行う判定手段と、
前記判定の結果が前記温度が前記閾値を超えた旨の場合に、前記インピーダンス回路の両端子間の接続を行う第1接続手段と、
第1陸上局の給電手段と接続された第1端子の接続先を前記海底装置内給電路と前記海底アースとで切り替える第1切替手段と、
第2陸上局の給電手段と接続された第2端子の接続先を前記海底装置内給電路と前記海底アースとで切り替える第2切替手段と、
第3陸上局の給電手段と接続された第3端子の接続先を前記海底装置内給電路と前記海底アースとで切り替える第3切替手段と、
を備える、接地装置。
【請求項2】
前記温度を表す情報を出力する温度計測手段をさらに備える、
請求項1に記載された接地装置。
【請求項3】
前記第1接続手段は、前記温度が前記閾値以下の場合に、前記接続を解除する、
請求項1又は請求項2に記載された接地装置。
【請求項4】
前記第1接続手段が前記両端子間の接続を行なってから、前記両端子間の接続を解除するまでの間、前記インピーダンス回路と前記海底装置内給電路を接続する、第2接続手段をさらに備える、
請求項3に記載された接地装置。
【請求項5】
前記第1陸上局の給電手段と前記第1端子との間の給電路に障害が発生し、前記第2陸上局と前記第2端子との間の給電路には障害が発生していない場合には、前記第1切替手段は前記第1端子の接続先を前記海底アースにし、前記第2切替手段は前記第2端子の接続先を前記海底装置内給電路にし、前記第3切替手段に前記第3端子の接続先を前記海底装置内給電路にし、
前記第2陸上局の給電手段と前記第2端子との間の給電路に障害が発生し、前記第1陸上局と前記第1端子との間の給電路には障害が発生していない場合には、前記第2切替手段は前記第2端子の接続先を前記海底アースにし、前記第1切替手段は前記第1端子の接続先を前記海底装置内給電路にし、前記第3切替手段は前記第3端子の接続先を前記海底装置内給電路にする、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載された接地装置。
【請求項6】
前記第1陸上局の給電手段と前記第1端子との間の給電路に障害が発生し、前記第2陸上局と前記第2端子との間の給電路に障害が発生している場合には、前記第1切替手段は前記第1端子の接続先を前記海底アースにし、前記第2切替手段は前記第2端子の接続先を前記海底アースにし、前記第3切替手段は前記第3端子の接続先を前記海底アースにする、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載された接地装置。
【請求項7】
前記第1接続手段は、光ケーブルを通じて送付される制御用光信号により動作する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載された接地装置。
【請求項8】
前記第2接続手段は、光ケーブルを通じて送付される制御用光信号により動作する、
請求項4に記載された接地装置。
【請求項9】
海底装置に設置され、前記海底装置内の電気部品に電力を供給する海底装置内給電路と、海底アースとの間に接続される所定のインピーダンスを有する回路であるインピーダンス回路の温度が閾値を超えたかについての判定を行い、
前記判定の結果が前記温度が前記閾値を超えた旨の場合に、前記インピーダンス回路の両端子間の接続を行い、
第1陸上局の給電手段と接続された第1端子の接続先を前記海底装置内給電路と前記海底アースとで切り替え、
第2陸上局の給電手段と接続された第2端子の接続先を前記海底装置内給電路と前記海底アースとで切り替え、
第3陸上局の給電手段と接続された第3端子の接続先を前記海底装置内給電路と前記海底アースとで切り替える、
接地方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底装置内の給電路を接地する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陸地間の光通信を行うための海底光ケーブルシステムは、通信用の光信号が進行する光ケーブルと、光信号を中継伝送するための中継器などの海底機器とを備える。当該光ケーブルは、通信用の光ファイバの束と、海底機器へ電力を送電するための給電路と、これらの保護のための被覆材とを備える。
【0003】
海底光ケーブルシステムには、一般的に、光信号を分岐するための分岐装置(Branching Unit:BU)が設置される。図1は、分岐装置を備える海底光ケーブルシステムが備える一般的な給電システムの例である給電システム100の構成を表す概念図である。給電システム100は、給電路101と給電路102とを備える。給電路101と給電路102との間には、前述の分岐装置に備えられる給電切替装置200が設置されている。給電切替装置200の構成例は図3に示される。
【0004】
給電路101は、第1の陸地に設置された陸上局の給電部に接続されるトランクの給電路の一方の端部である端部Aと、第2の陸地に設置された陸上局の給電部に接続されるトランクの他方の端部である端部Bとの間を連結する給電路である。また、給電路102は、第3の陸地に設置された陸上局の給電部に接続されるブランチの給電路の一方の端部である端部Cと給電切替装置200近傍に設置された海底アースであるSE(Sea Earth)11とを接続する給電路である。
【0005】
図1において、給電切替装置200は、内部回路201内の給電路を介して、端部Aと給電切替装置200との間の給電路101を、端部Bと給電切替装置200との間の給電路101に接続している。内部回路201の構成例は図3に表される。また、給電切替装置200は、端部Cと給電切替装置200との間の給電路102をSE11に接続している。
【0006】
給電路102に接続された給電切替装置200内の給電路は、SE11と接続される個所に近いために低電位である。一方、給電路101に接続された給電切替装置200内の給電路は、近傍にSE11と接続される個所が無いため、システム構成にもよるが、数kVから十数kVなどの高電圧である。なお、給電システム100において、給電は直流電圧の供給により行われる。
【0007】
給電切替装置200は、一般的に、端部Aとの間又は端部Bとの間の給電路101のいずれかの個所が接地される地絡障害が生じた場合、給電路を切り替える機能を備えている。図2は、給電切替装置200が障害により給電路を切り替える様子を表す概念図である。
【0008】
図2(a)は、地絡障害が発生していない場合の給電切替装置200における給電路の接続状態を表す図である。図2(a)の接続状態は、図1の給電路の接続状態と同じである。
【0009】
ここで、端部Aと給電切替装置200との間の給電路が接地される地絡障害が生じたとする。その場合、給電切替装置200は、図2(b)の接続状態を経て、図2(c)の接続状態へ移行する。
【0010】
図2(b)の接続状態は、給電切替装置200が内部回路201内の給電路をSE11に接地した状態である。この状態では、内部回路201内の給電路の電位はSE11への接続によりゼロ近傍になっている。また、図2(c)の状態は、給電切替装置200が、端部Aからの給電路をSE11に接続し、端部Bからの給電路を、端部Aからの給電路とは切り離し、端部Cからの給電路に接続した接続状態である。
【0011】
その後、端部Aと給電切替装置200との間の給電路が接地される地絡障害がなくなったとする。その場合、給電切替装置200は、給電路の接続状態を、図2(b)の接続状態を経て、図2(a)の接続状態に復帰させる。
【0012】
また、端部Bと給電切替装置200との間の給電路が接地される地絡障害が生じたとする。その場合、給電切替装置200は、図2(d)の接続状態を経て、図2(e)の接続状態へ移行させる。
【0013】
図2(d)の接続状態は、給電切替装置200が内部回路201内の給電路をSE11に接地した状態である。この状態では、内部回路201内の給電路の電位はSE11への接続によりゼロ近傍になっている。また、図2(e)の状態は、給電切替装置200が、端部Bからの給電路を端部Aからの給電路から切り離した上でSE11に接続し、端部Aからの給電路を端部Cからの給電路に接続した接続状態である。
【0014】
その後、端部Bと給電切替装置200との間の給電路が接地される地絡障害がなくなったとする。その場合、給電切替装置200は、給電路の接続状態を、図2(d)の接続状態を経て、図2(a)の接続状態に復帰させる。
【0015】
このように、給電切替装置200は、トランクのいずれかの位置で地絡障害が生じたり、あるいは、地絡障害が回復した場合に、目的の接続状態に直接移行するのではなく、必ず、図2(b)や図2(d)の接続状態を経由させる。
【0016】
図3は、給電切替装置200の構成例を表す概念図である。給電切替装置200は、内部回路201と、インピーダンス回路12と、HVSW1乃至4と、光カプラ6とを備える。ここで、HVSWは、高電圧スイッチを意味する。内部回路201は、給電路50と、制御回路8と、HVSW駆動回路9と、電源回路10とを備える。給電路50は電源回路10を通過している。
【0017】
光ファイバ301と給電路101との組み合わせは、海底光ケーブルに備えられる。光ファイバ301の備える光ファイバには、光ファイバ301の端部Aから端部Bへの第1光信号が進行するものと、光ファイバ301の端部Bから端部Aへの第2光信号が進行するものとが含まれる。第1光信号には、給電切替装置200の動作を制御する制御用光信号が含まれている。制御回路8は、光カプラ6により分離された第1光信号に含まれる制御用光信号を電気信号に変換した制御信号に従い、HVSW駆動回路9を制御する。なお、制御回路8が備えるO/Eで示された部分は、入力された第1光信号を電気信号に変換する部分である。HVSW駆動回路9は、送付を受けた制御信号に対応する駆動信号をHVSW1乃至4の各々へ送付する。
【0018】
電源回路10は、端部A、端部B又は端部Cのいずれかから給電路50に供給された給電電圧を、所定の電圧に変換し、内部回路201内の各電気部品に給電する。給電路50は、HVSW1とHVSW2との間の給電路である。
【0019】
図2(a)の接続状態では、HVSW1は、HVSW駆動回路9からの駆動信号により、給電路101の端部Aと給電路50とを接続し、これらをSE11から切り離している。また、HVSW2は、HVSW駆動回路9からの駆動信号により、給電路101の端部Bと給電路50とを接続し、これらをSE11とを切り離している。また、HVSW3は、HVSW駆動回路9からの駆動信号により、給電路102の端部CとSE11とを接続し、これらを給電路50から切り離している。
【0020】
ここで、給電切替装置200が、前述の制御用光信号により、図2(a)の接続状態から図2(b)又は図2(d)の接続状態に移行させることを想定する。その場合、HVSW1は、駆動信号により、給電路101の端部Aに接続されたHVSW1の端子の接続先を、給電路50から切り離す。また、HVSW2は、駆動信号により、給電路101の端部Bの接続先を、給電路50から切り離す。一方、HVSW3は、駆動信号により、給電路102の端部CがSE11に接続され、これらが給電路50から切り離された状態を維持する。その後、HVSW4は、駆動信号により、給電路50を、インピーダンス回路12を介して、SE11に接続する。インピーダンス回路12は、所定のインピーダンスを有する回路であり、HVSW4が、給電路50をSE11に接続する際に発生する電流の値を抑え、電源回路10を保護するものである。これらにより、給電路50は、端部A、端部B及び端部Cのいずれからも切り離された状態で、インピーダンス回路12を介して、SE11に接続される。
【0021】
その後、給電切替装置200は、前述の制御用光信号により、図2(c)の接続状態へ移行させる場合には、HVSW1は、駆動信号により、給電路101の端部AをSE11に接続する。次に、HVSW4は、駆動信号により、給電路50を、SE11に接続されたインピーダンス回路12から切り離す。さらに、HVSW3は、駆動信号により、給電路102の端部CをSE11から切り離し、端部Cを給電路50に接続する。これらにより、給電路101の端部AがSE11に接続されるとともに、給電路101の端部Bと給電路102の端部Cとが給電路50を介して接続され、図2(c)の接続状態が実現する。
【0022】
次に、図2(d)の接続状態の後、給電切替装置200が、前述の制御用光信号により、図2(e)の接続状態へ移行させる場合を想定する。その場合、HVSW2は、駆動信号により、給電路101の端部Bに接続されたHVSW2の端子の接続先を、給電路50から、SE11に切り替える。次に、HVSW4は、駆動信号により、SE11に接続されたインピーダンス回路12を給電路50から切り離す。さらに、HVSW3は、駆動信号により、給電路102の端部Cに接続されたHVSW3の端子の接続先を、SE11から給電路50に切り替える。これらにより、給電路101の端部BがSE11に接続されるとともに、給電路101の端部Aと給電路102の端部Cとが給電路50を介して接続され、図2(e)の接続状態が実現する。
【0023】
ここで、特許文献1は、抵抗と並列に接続されたリレーの第2の接点が開成しているときに、閉成している第1の接点の開成を抑止し、第2の接点が閉成しているときに、開成している第1の接点の閉成を抑止する、接地回路を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】国際公開第2019/031415号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ここで、図2(a)の接続状態から図2(b)又は図2(d)の接続状態に移行する場合を想定する。その場合、給電路101の端部A及び端部Bが接続されていたことにより高電圧になっている給電路50が、HVSW4によりインピーダンス回路12を介してSE11に接続され、突入電流が発生する。
【0026】
前述のように、インピーダンス回路12は、この突入電流を緩和することにより内部回路201の電気部品を保護するための、抵抗等の所定のインピーダンスを有する素子を備える。しかしながら、突入電流による、インピーダンス回路12の発熱による分岐装置全体の温度上昇が問題となる。密封筐体からなる海底機器である分岐装置は、水冷や空冷などの急速な冷却を行う仕組みを備えることが困難である。そのため、分岐装置においては、内部で発生する熱は、熱伝導率のよい金属シャーシを介して海中に放熱させるのが一般的である。
【0027】
しかしながら、その放熱能力には限界があるので、想定外の発熱に対して十分に冷却が出来ない場合には、許容温度を超えて分岐装置に搭載された機器等に悪影響が生じる可能性がある。
【0028】
本発明は、海底装置内の給電路を接地させる際に生じる電流による発熱を低減する接地装置等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の接地装置は、海底装置に設置され、前記海底装置内の電気部品に電力を供給する海底装置内給電路と、海底アースとの間に接続される所定のインピーダンスを有する回路であるインピーダンス回路の温度が閾値を超えたかについての判定を行う判定手段と、前記判定の結果が前記温度が前記閾値を超えた旨の場合に、前記インピーダンス回路の両端子間の接続を行う第1接続手段と、を備える。
【0030】
本発明の設置方法は、海底装置に設置され、前記海底装置内の電気部品に電力を供給する海底装置内給電路と、海底アースとの間に接続される所定のインピーダンスを有する回路であるインピーダンス回路の温度が閾値を超えたかについての判定を行い
前記判定の結果が前記温度が前記閾値を超えた旨の場合に、前記インピーダンス回路の両端子間の接続を行う。
【0031】
プログラム記録媒体は、海底装置に設置され、前記海底装置内の電気部品に電力を供給する海底装置内給電路と、海底アースとの間に接続される所定のインピーダンスを有する回路であるインピーダンス回路の温度が閾値を超えたかについての判定を行う処理と、前記判定の結果が前記温度が前記閾値を超えた旨の場合に、前記インピーダンス回路の両端子間の接続を行う処理と、をコンピュータに実行させる接地プログラムを記録している。
【発明の効果】
【0032】
本発明の接地装置等は、海底装置内の給電路を接地させる際に生じる電流による発熱を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】分岐装置を備える海底光ケーブルシステムの一般的な給電システムの構成例を表す概念図である。
図2】一般的な給電システムの分岐装置で行われる給電路の切替動作を表す概念図である。
図3】一般的なる給電切替装置の構成例を表す概念図である。
図4】本実施形態の給電切替装置の構成例を表す概念図である。
図5】実施形態の接地装置の最小限の構成を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本実施形態の給電システムの構成例は、図1の給電システム100と同様である。また、本実施形態の給電システム100は、図2に表される給電路の切替えを行う。本実施形態の給電システム100の給電切替装置200は、以下が、図3の給電切替装置200と異なる。以下に説明されない部分については、図3の給電切替装置200と同様である。以下、本実施形態の給電切替装置200の図3の給電切替装置200と異なる部分を主に説明する。
【0035】
図4は、本実施形態の給電切替装置の例である給電切替装置200の構成を表す概念図である。図4の給電切替装置200は、図3の給電切替装置200が備える構成に加えて、HVSW5と、温度センサ13と、加熱保護回路14とを備える。温度センサ13は、インピーダンス回路12内又はインピーダンス回路12に隣接して、設置される。加熱保護回路14は、内部回路201に備えられる。
【0036】
制御回路8は、背景技術の項で説明した制御用光信号により、HVSW1乃至4を制御する制御信号に加えて、HVSW5を制御する制御信号を、HVSW駆動回路9へ送付する。HVSW駆動回路9は、HVSW5を制御する制御信号の送付を受けて、HVSW5に、駆動信号を送付する。
【0037】
温度センサ13は、インピーダンス回路12の温度を測定し、その温度を表す温度信号を、加熱保護回路14へ送付する。
【0038】
加熱保護回路14は、温度信号が表す温度が閾値を超えたかについての判定を行う。当該閾値は、例えば、温度が当該閾値を超えた場合には分岐装置が危険な状態であることを表す値やその閾値を超えると近い将来に、危険な状態に至ることが必至であるような値である。当該閾値は、予め、実験やシミュレーションで定められ、例えば、加熱保護回路14が利用可能な記憶部に格納されている。加熱保護回路14は、温度信号が表す温度が閾値を超えたことを判定した場合には、その旨を表すアラーム信号を制御回路8へ送付する。加熱保護回路14は、例えば、コンピュータである。
【0039】
制御回路8は、例えば、コンピュータである。制御回路8は、前述のアラーム信号の送付を受けた場合には、HVSW駆動回路9に対して、HVSW4の動作を停止させる。これにより、HVSW4は、オンの状態を維持する。そして、制御回路8は、HVSW駆動回路9に、HVSW5へその両端子を接続させる駆動信号を送付させる。これにより、HVSW5は、その両端子を接続する。これにより、ほとんどの電流はインピーダンス回路12を通らず、HVSW5をバイパスすることにより、SE11へ流れる。
【0040】
なお、HVSW5がその両端子を接続する段階では、それまでにインピーダンス回路12を経由してSE11へ電流が流れることにより、給電路50の電圧はある程度低下している。そのため、HVSW5の両端子が接続されることにより給電路50を流れる電流は低く、内部回路201の電気部品に不具合は生じる可能性は極めて低い。
【0041】
また、HVSW5をオンにする前に、HVSW4をオンのままに固定するのは次の理由による。すなわち、その理由は、HVSW5がオンのままでHVSW4のオンオフが切り替わることによるSE11への突入電流が発生し、当該突入電流により内部回路201に損傷が生じる危険性を回避するためである。
【0042】
SE11への電流をHVSW5をバイパスさせることにより、インピーダンス回路12を通過する電流はほとんどなくなり、インピーダンス回路12の発熱が抑えられる。
【0043】
その後、インピーダンス回路12の温度が低下し、温度センサ13から送付される温度信号が表す温度が前述の閾値以下になると、加熱保護回路14は、制御回路8へのアラーム信号の送付を停止する。その場合、制御回路8は、まず、HVSW駆動回路9に、HVSW5をその両端子を絶縁させ、給電路50からSE11へ流れる電流がインピーダンス回路12を通過するようにする。その上で、制御回路8は、HVSW駆動回路9が、HVSW4を切り替えられない状態を解除する。
【0044】
なお、HVSW5近傍の電流経路51又は52に、所定のインピーダンスを有する回路(以下、「挿入回路」という。)が挿入されても構わない。その場合は、HVSW5がその両端子を接続した際の電流の内部回路201の電気部品への影響が発生する可能性を一層低減することができる。
【0045】
挿入回路のインピーダンスは、より大きい方が、HVSW5がその両端子を接続した際の電流の内部回路201の電気部品への影響が発生する可能性をより低減できる。しかしながら、その回路のインピーダンスをより大きくすると、インピーダンス回路12を流れる電流が増える。そのため、HVSW5がその両端子を接続した際のインピーダンス回路12の冷却が進行する度合いは低下する。挿入回路のインピーダンスは、互いにトレードオフの関係にある、電気部品への影響が発生する可能性の低減の必要性と、インピーダンス回路12の冷却速度を高める必要性との兼ね合いから決定される。電気部品への影響が発生する可能性が十分に低ければ、挿入回路は不要である。
[効果]
本実施形態の給電切替装置は、インピーダンス回路の温度が閾値を超えた場合には、インピーダンス回路の両端部をHVSWにより接続し、インピーダンス回路を流れる電流を低減させる。そのため、前記給電切替装置は、分岐装置内の給電路を接地させる際に生じる電流によるインピーダンス回路及びインピーダンス回路を筐体内に収める分岐装置の発熱を低減する。
【0046】
なお、インピーダンス回路の温度が閾値を超えた場合にインピーダンス回路の両端子をHVSWで接続する動作に関する部分である、実施形態の接地装置は、必ずしも、分岐装置に備えられるものである必要はない。当該接地装置は、他の海底装置に備えられるものであっても構わない。
【0047】
図5は、実施形態の接地装置の最小限の構成である接地装置200xの構成を表す概念図である。接地装置200xは、第1接続部5xと、判定部14xとを備える。判定部14xは、海底装置に設置され、前記海底装置内の電気部品に電力を供給する海底装置内給電路と、海底アースとの間に接続される所定のインピーダンスを有する回路であるインピーダンス回路の温度が閾値を超えたかについての判定を行う。第1接続部5xは、前記判定の結果が前記温度が前記閾値を超えた旨の場合に、前記インピーダンス回路の両端子間の接続を行う。
【0048】
接地装置200xは、上記構成により、インピーダンス回路の温度が閾値を超えた場合には、インピーダンス回路の両端部を接続し、インピーダンス回路を流れる電流を低減させる。そのため、接地装置200xは、海底装置内の給電路を接地させる際に生じる電流による発熱を低減する。
【0049】
そのため、接地装置200xは、前記構成により、[発明の効果]の項に記載した効果を奏する。
【0050】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術的思想を逸脱しない範囲で更なる変形、置換、調整を加えることができる。例えば、各図面に示した要素の構成は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。
【0051】
また、前記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記述され得るが、以下には限られない。
(付記1)
海底装置に設置され、前記海底装置内の電気部品に電力を供給する海底装置内給電路と、海底アースとの間に接続される所定のインピーダンスを有する回路であるインピーダンス回路の温度が閾値を超えたかについての判定を行う判定手段と、
前記判定の結果が前記温度が前記閾値を超えた旨の場合に、前記インピーダンス回路の両端子間の接続を行う第1接続手段と、
を備える、接地装置。
(付記2)
前記温度を表す情報を出力する温度計測手段をさらに備える、
付記1に記載された接地装置。
(付記3)
前記第1接続手段は、前記温度が前記閾値以下の場合に、前記接続を解除する、
付記1又は付記2に記載された接地装置。
(付記4)
前記第1接続手段が前記両端子間の接続を行なってから、前記両端子間の接続を解除するまでの間、前記インピーダンス回路と前記海底装置内給電路を接続する、第2接続手段をさらに備える、
付記3に記載された接地装置。
(付記5)
第1陸上局の給電手段と接続された第1端子の接続先を前記海底装置内給電路と前記海底アースとで切り替える第1切替手段と、
第2陸上局の給電手段と接続された第2端子の接続先を前記海底装置内給電路と前記海底アースとで切り替える第2切替手段と、
第3陸上局の給電手段と接続された第3端子の接続先を前記海底装置内給電路と前記海底アースとで切り替える第3切替手段と、
をさらに備える、
付記1乃至付記4のうちのいずれか一に記載された接地装置。
(付記6)
前記第1陸上局の給電手段と前記第1端子との間の給電路に障害が発生し、前記第2陸上局と前記第2端子との間の給電路には障害が発生していない場合には、前記第1切替手段は前記第1端子の接続先を前記海底アースにし、前記第2切替手段は前記第2端子の接続先を前記海底装置内給電路にし、前記第3切替手段に前記第3端子の接続先を前記海底装置内給電路にし、
前記第2陸上局の給電手段と前記第2端子との間の給電路に障害が発生し、前記第1陸上局と前記第1端子との間の給電路には障害が発生していない場合には、前記第2切替手段は前記第2端子の接続先を前記海底アースにし、前記第1切替手段は前記第1端子の接続先を前記海底装置内給電路にし、前記第3切替手段は前記第3端子の接続先を前記海底装置内給電路にする、
付記5に記載された接地装置。
(付記7)
前記第1陸上局の給電手段と前記第1端子との間の給電路に障害が発生し、前記第2陸上局と前記第2端子との間の給電路に障害が発生している場合には、前記第1切替手段は前記第1端子の接続先を前記海底アースにし、前記第2切替手段は前記第2端子の接続先を前記海底アースにし、前記第3切替手段は前記第3端子の接続先を前記海底アースにする、
付記5又は付記6に記載された接地装置。
(付記8)
前記第1接続手段は、光ケーブルを通じて送付される制御用光信号により動作する、
付記1乃至付記3のうちのいずれか一に記載された接地装置。
(付記9)
前記第2接続手段は、光ケーブルを通じて送付される制御用光信号により動作する、
付記4に記載された接地装置。
(付記10)
前記第1切替手段、前記第2切替手段及び前記第3切替手段は、光ケーブルを通じて送付される制御用光信号により動作する、
付記5乃至付記7のうちのいずれか一に記載された接地装置。
(付記11)
海底装置に設置され、前記海底装置内の電気部品に電力を供給する海底装置内給電路と、海底アースとの間に接続される所定のインピーダンスを有する回路であるインピーダンス回路の温度が閾値を超えたかについての判定を行い
前記判定の結果が前記温度が前記閾値を超えた旨の場合に、前記インピーダンス回路の両端子間の接続を行う、
接地方法。
(付記12)
海底装置に設置され、前記海底装置内の電気部品に電力を供給する海底装置内給電路と、海底アースとの間に接続される所定のインピーダンスを有する回路であるインピーダンス回路の温度が閾値を超えたかについての判定を行う処理と、
前記判定の結果が前記温度が前記閾値を超えた旨の場合に、前記インピーダンス回路の両端子間の接続を行う処理と、
をコンピュータに実行させる、接地プログラムを記録したプログラム記録媒体。
【0052】
ここで、上記付記における「海底装置」は、例えば、図4の給電切替装置200を備える分岐装置である。また、「電気部品」は、例えば、図4の内部回路201を構成する電気部品である。また、「海底装置内給電路」は、例えば、図4の給電路50である。また、「海底アース」は、例えば、図4のSE11である。
【0053】
また、「インピーダンス回路」は、例えば、図4のインピーダンス回路12である。また、「判定部」は、例えば、図4の加熱保護回路14である。なお、判定部は、判定手段に対応する。また、「第1接続部」は、例えば、図4のHVSW5である。第1接続部は、第1接続手段に対応する。
【0054】
また、「接地装置」は、例えば、図4の給電切替装置200である。また、「温度計測部」は、例えば、図4の温度センサ13である。また、「第2接続部」は、例えば、図4のHVSW4である。なお、温度計測部は、温度計測手段に対応する。
【0055】
また、「第1陸上局」は、例えば、その給電部が図4の給電路101端部Aに接続される陸上局である。また、「第1端子」は、例えば、図4の給電路101端部AとHVSW1との間の端子である。また、「第1切替部」は、例えば、図4のHVSW1である。なお、第1切替部は、第1切替手段に対応する。また、「第2陸上局」は、例えば、その給電部が図4の給電路101端部Bに接続される陸上局である。
【0056】
また、「第2端子」は、例えば、図4の給電路101端部BとHVSW2との間の端子である。
また、「第2切替部」は、例えば、図4のHVSW2である。なお、第2切替部は、第2切替手段に対応する。また、「第3陸上局」は、例えば、その給電部が図4の給電路102端部Cに接続される陸上局である。また、「第3端子」は、例えば、図4の給電路102端部CとHVSW3との間の端子である。
【0057】
また、「第3切替部」は、例えば、図4のHVSW2である。なお、第3切替部は、第3切替手段に対応する。また、「光ケーブル」は、例えば、図4の光ファイバ301である。また、「制御用光信号」は、例えば、図4の第1光信号に含まれる制御用光信号である。また、「コンピュータ」は、例えば、図4の加熱保護回路14及び制御回路8に備えられるか、加熱保護回路14及び制御回路8を備える、コンピュータである。また、「接地プログラム」は、例えば、前記コンピュータに処理を実行させるプログラムである。
【0058】
この出願は、2020年12月18日に出願された日本出願特願2020-209805を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0059】
1、2、3、4、5 HVSW
5x 第1接続部
6 光カプラ
8 制御回路
9 HVSW駆動回路
10 電源回路
11 SE
12 インピーダンス回路
13 温度センサ
14 加熱保護回路
14x 判定部
100 給電システム
50、101、102 給電路
51、52 電流経路
200 給電切替装置
200x 接地装置
200x 接地装置
201 内部回路
301 光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5