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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/18 20060101AFI20241106BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20241106BHJP
【FI】
H02K5/18
H02K11/33
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023053902
(22)【出願日】2023-03-29
(65)【公開番号】P2024141984
(43)【公開日】2024-10-10
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 正憲
(72)【発明者】
【氏名】安藤 明範
(72)【発明者】
【氏名】芦森 丈明
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 貴裕
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-129496(JP,A)
【文献】特開2022-152647(JP,A)
【文献】特開2018-207640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K5/00-5/26
11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端側に開口端部を有する円筒状の樹脂外郭と、
前記樹脂外郭と一体的に形成された巻線および固定子鉄心を備える固定子と、
前記軸方向に延びる回転シャフトを有し前記固定子の内径側に配置された回転子と、
前記樹脂外郭の前記開口端部を覆う金属製のヒートシンクと、
前記樹脂外郭と前記ヒートシンクとで囲まれた内部空間に配置され、電子部品を有する回路基板と
を備える電動機であって、
前記ヒートシンクは、円板部と、前記円板部から前記電子部品に向かって突出する突起部と、を有し、
前記円板部は、前記ヒートシンクと前記樹脂外郭とを締結する締結部材が挿通される複数の貫通孔を有し、当該複数の貫通孔は前記円板部の周方向に沿って配置され、
前記突起部は、前記電子部品に熱的に接触する平面状の先端面を有し、
前記先端面は、前記軸方向からみて、前記電子部品と対向する第1の領域と、前記電子部品と対向しない第2の領域と、を有し、前記第2の領域は、前記第1の領域の前記円板部の周方向の少なくとも一方側に隣接し、
前記締結部材は、前記貫通孔に挿通される軸部と、前記軸部よりも直径の大きい頭部と、を有し、
前記複数の貫通孔のうち少なくとも一つの貫通孔は、前記軸方向からみて、前記締結部材の前記軸部とは重ならない領域を有し、前記軸方向と直交する断面において、前記円板部の周方向を長手方向とする長孔状である
電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記先端面は、前記軸方向からみて前記軸方向と直交する径方向に所定長さ以上の幅を有する扇状である
電動機。
【請求項3】
請求項2に記載の電動機であって、
前記所定長さは、前記軸方向と直交する断面において、前記回転シャフトの回転中心から前記第1の領域と対向する前記電子部品の外周縁部のうち最も外径側に位置する最外径部までの距離L1から、前記回転シャフトの回転中心から前記第1の領域と対向する前記電子部品の外周縁部のうち最も内径側に位置する最内径部までの距離L2を引いた長さである
電動機。
【請求項4】
請求項に記載の電動機であって、
前記ヒートシンクの前記円板部には段差が設けられ、
前記ヒートシンクは、前記段差が前記樹脂外郭における前記開口端部の内径側側面と当接することで前記樹脂外郭に対して径方向に位置決めされる
電動機。
【請求項5】
請求項ないしのいずれか1つに記載の電動機であって、
前記一つの貫通孔における前記周方向の一方側の端と前記回転シャフトの回転中心とを結んだ直線を第1直線S1とし、前記軸部における前記周方向の前記一方側の端と前記回転中心とを結んだ直線を第2直線S2とし、前記第1直線S1と前記第2直線S2とがなす角度を第1角θ1とし、前記突起部の前記先端面における前記周方向の前記一方側の端と前記回転中心とを結んだ直線を第3直線S3とし、前記電子部品における前記周方向の前記一方側の端と前記回転中心とを結んだ直線を第4直線S4とし、前記第3直線S3と前記第4直線S4とがなす角度を第2角θ2としたとき、
θ1<θ2…(式1)
を満たす
電動機。
【請求項6】
請求項1に記載の電動機であって、
前記軸方向における前記円板部の厚みは、3mm以上である
電動機。
【請求項7】
請求項に記載の電動機であって、
前記ヒートシンクは、アルミニウムまたはアルミニウム合金またはマグネシウム合金によって形成される
電動機。
【請求項8】
請求項1に記載の電動機であって、
前記樹脂外郭は、前記円板部に挿通される締結部材を受ける、受け部を有する
電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関し、さらに詳しくは電動機に内蔵された回路基板の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動機の内部に電動機の回転駆動を制御する回路基板を備えた電動機が知られている。そしてこの回路基板は、通電により発熱する電子部品を含み、その電子部品で発生した熱を電動機の外部へ放熱する、ヒートシンクを有する電動機もまた知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、固定子鉄心をモールドする樹脂外郭と、固定子鉄心の内径側に配置された回転子と、樹脂外郭の開口端部を覆うヒートシンクと、樹脂外郭とヒートシンクとを締結する複数のネジと、樹脂外郭とヒートシンクとで覆われた内部空間に配置される回路基板とを備えた電動機であって、上記樹脂外郭は、複数のネジを受ける複数のネジ受部を有し、上記ヒートシンクは、複数のネジが挿通される複数のネジ孔を有する円板部と、円板部から回路基板側に向かって突出し回路基板の電子部品と熱的に接触する突起部と、を有する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-152645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、ネジ孔に挿通されたネジがネジ受部で保持されることにより、ヒートシンクが樹脂外郭に対して周方向に位置決めされている。しかしながら、ヒートシンクを複数のネジで樹脂外郭に締結する場合、寸法のばらつきによって軸ネジ孔の中心軸とネジ受部の中心軸にずれが生じ、複数のネジの一部が締結できなくなるおそれがあった。
【0006】
そこで、ヒートシンクのネジ孔を広く形成することで、寸法のばらつきがある場合であってもネジを確実に締結できるようにすることも考えられるが、その場合、ヒートシンクの突起部と電子部品との周方向の相対位置のばらつきが生じやすくなり、ヒートシンクの突起部と電子部品とが軸方向からみて対向しない領域が生じるなどして、十分な放熱が行えなくなるおそれがあった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、回路基板で生じた熱を安定的に放熱することのできる電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電動機は、軸方向の一端側に開口端部を有する円筒状の樹脂外郭と、上記樹脂外郭と一体的に形成された巻線および固定子鉄心を備える固定子と、上記軸方向に延びる回転シャフトを有し上記固定子の内径側に配置された回転子と、上記樹脂外郭の上記開口端部を覆う金属製のヒートシンクと、上記樹脂外郭と上記ヒートシンクとで囲まれた内部空間に配置され、電子部品を有する回路基板とを備える。
上記ヒートシンクは、円板部と、上記円板部から上記電子部品に向かって突出する突起部と、を有し、
上記円板部は、上記ヒートシンクと上記樹脂外郭とを締結する締結部材が挿通される複数の貫通孔を有し、当該複数の貫通孔は上記円板部の周方向に沿って配置され、
上記突起部は、上記電子部品に熱的に接触する平面状の先端面を有し、
上記先端面は、上記軸方向からみて、上記電子部品と対向する第1の領域と、上記電子部品と対向しない第2の領域と、を有し、上記第2の領域は、上記第1の領域の上記円板部の周方向の少なくとも一方側に隣接する。
【0009】
上記電動機によれば、上記樹脂外郭と上記ヒートシンクとは、上記円板部の周方向に沿って締結部材で締結され、上記ヒートシンクは、上記電子部品と対向する第1の領域と、上記電子部品と対向しない第2の領域と、を有し、上記第2の領域は、上記第1の領域の上記円板部の周方向の少なくとも一方側に隣接する。このため、上記樹脂外郭に上記ヒートシンクを組付ける際、寸法ばらつきによって上記ヒートシンクが周方向にずれたとしても上記電子部品で生じた熱を安定的に放熱することができる。
【0010】
上記樹脂外郭の外周面は、上記軸方向に沿った溝部を有し、上記金属部材の少なくとも一部が、帯状であるとともに上記溝部に収容されてもよい。
【0011】
上記先端面は、上記軸方向からみて上記軸方向と直交する径方向に所定長さLR以上の幅Lを有する扇状であってもよい。
【0012】
上記所定長さLRは、上記軸方向と直交する断面において、上記回転シャフトの回転中心から上記第1の領域と対向する上記電子部品の外周縁部のうち最も外径側に位置する最外径部までの距離L1から、上記回転シャフトの回転中心から上記第1の領域と対向する上記電子部品の外周縁部のうち最も内径側に位置する最内径部までの距離を引いた長さL2であってもよい。すなわち、先端面の径方向の幅Lは、L≧LR=L1-L2であってもよい。
【0013】
上記締結部材は、上記貫通孔に挿通される軸部と、上記軸部よりも直径の大きい頭部とを有し、上記複数の貫通孔のうち少なくとも一つの貫通孔は、上記軸方向からみて、上記締結部材の上記軸部と重ならない領域を有してもよい。上記締結部材は、例えば、雄ねじであり、上記軸部には雄ねじ部が形成されていてもよい。
【0014】
上記複数の貫通孔のうち少なくとも一つの貫通孔は、上記軸方向と直交する断面において、上記円板部の周方向を長手方向とする長孔状であってもよい。
【0015】
上記ヒートシンクの上記円板部には段差が設けられ、
上記ヒートシンクは、上記段差が上記樹脂外郭における上記開口端部の内径側側面と当接することで上記樹脂外郭に対して位置決めされてもよい。
【0016】
上記一つの貫通孔における上記周方向の一方側の端と上記回転シャフトの回転中心とを結んだ直線を第1直線S1とし、上記軸部における上記周方向の上記一方側の端と上記回転中心とを結んだ直線を第2直線S2とし、上記第1直線S1と上記第2直線S2とがなす角度を第1角θ1とし、上記突起部の上記先端面における上記周方向の上記一方側の端と上記回転中心とを結んだ直線を第3直線S3とし、上記電子部品における上記周方向の上記一方側の端と上記回転中心とを結んだ直線を第4直線S4とし、上記第3直線S3と上記第4直線S4とがなす角度を第2角θ2としたとき、
θ1<θ2…(式1)
を満たしてもよい。
【0017】
上記軸方向における上記円板部の厚みは、3mm以上であってもよい。
【0018】
上記樹脂外郭は、上記円板部に挿通される締結部材を受ける、受け部を有してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回路基板で生じた熱を安定的に放熱することのできる電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る電動機の斜視図である。
図2】上記電動機の断面図である。
図3】上記電動機のヒートシンクをフィン部側から見た図である。
図4】上記電動機のヒートシンクを突起部側から見た斜視図である。
図5】上記電動機の回路基板をヒートシンク側から見た図である。
図6】上記電動機の先端面と電子部品との位置関係をヒートシンク側から見た図である。
図7】上記電動機のヒートシンクを突起部側から見た平面図である。
図8】上記電動機の底部側から見た図である。
図9】防振部材を上面側から見た斜視図である。
図10】防振部材を下面側から見た斜視図である。
図11】金属部材の斜視図である。
図12】上記金属部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なり得ることに留意すべきである。したがって、具体的な構成部品については以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0022】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0023】
図1は、実施形態に係る電動機1の斜視図であり、図2は、実施形態に係る電動機1の断面図である。本実施形態の電動機1は、例えば、ブラシレスDCモータであり、建物の壁または天井等に取り付けられ、室内外を連通するダクトの送風機の駆動源に用いられる。
【0024】
[電動機の全体構成]
電動機1は、樹脂外郭10と、固定子2(固定子鉄心21)と、回転子3と、ヒートシンク4と、回路基板5と、金属部材11とを備える。
【0025】
以下では、例として、回転磁界を発生する円筒状の固定子2の径方向の内側に、永久磁石部32を有する円柱状の回転子3を回転可能に配置したインナーロータ型のブラシレスDCモータを電動機1として説明する。
【0026】
また以下の説明において、回転シャフト6の軸心Cは、電動機1の中心軸(回転中心)、つまり回転子3の回転軸でもある。径方向とは、軸心Cを通り、軸方向(軸心Cに平行な方向)とは直交する方向である。また内径側とは、径方向の内側(円筒状の固定子2の内周面側)であり、外径側とは、径方向の外側(円筒状の固定子2の外周面側)である。さらに、周方向とは、軸心Cを中心とする回転方向である。
【0027】
(回転子)
図2に示すように、回転子3は、環状の永久磁石部31と、回転子本体30と、回転シャフト6とを有する。回転子本体30は、永久磁石部31に固定される外周面と、回転シャフト6に固定される内周面とを有する。
【0028】
回転子3は、上記外周面に環状に永久磁石部31が配置された表面磁石型である。永久磁石部31は、N極とS極が周方向に等間隔に交互に現れるように、複数(例えば8または10個)の永久磁石で環状に形成されている。なお、永久磁石部31は、典型的には、Nd-Fe-B系合金等の金属焼結体で構成されるが、これ以外にも、磁石粉末を樹脂で固めることで環状に形成されたプラスチックマグネットを用いてもよい。
【0029】
回転子本体30は、外周側鉄心32と、絶縁部材33と、内周側鉄心34とを有する。
【0030】
外周側鉄心32は、環状に形成されており、回転子本体30の外周面を形成する。外周側鉄心32は、複数枚の電磁鋼板等の軟磁性材料からなる板の積層体である。
内周側鉄心34は、環状に形成されており、回転子本体30の内周面を形成する複数枚の電磁鋼板等の軟磁性材料からなる板の積層体である。内周側鉄心34の中心には、回転シャフト6が圧入やカシメなどによって固着されている。
【0031】
絶縁部材33は、外周側鉄心32と内周側鉄心34との間を電気的に絶縁する。これにより、電動機1の固定子側の静電容量と回転子側の静電容量との差を低減して軸受けの電食を抑制することができる。絶縁部材33は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)などの誘電体の樹脂で形成されており、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間に固定されている。絶縁部材33は、環状の成形体であってもよいし、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間にインサート成形等により充填された樹脂材料であってもよい。なお、回転子本体30が外周側鉄心32と内周側鉄心34とに分割されて間に絶縁部材33が形成された場合を例示したが、回転子本体30は絶縁部材33を備えない円筒状の鉄心で形成されてもよい。
【0032】
(固定子)
固定子2は、固定子鉄心21と、コイル(巻線)22と、インシュレータ(図示略)とを有する。固定子鉄心21は、例えば複数枚の電磁鋼板等の軟磁性材料からなる板の積層体である。固定子鉄心21は、環状のヨーク部と、ヨーク部から内周側へ突出する複数のティース部とを有する。固定子鉄心21の各ティース部には、インシュレータを介してコイル22が巻回されている。複数のコイル22は、U相、V相およびW相の3相のそれぞれに対応するコイル22を含む。これらのコイルは、例えば、電気中性点(N点)で相互に接続される。この固定子2(固定子鉄心21)の外周面は、樹脂外郭10で覆われている(図2参照)。固定子2の固定子鉄心21は、回転子3の永久磁石部32と径方向に空隙(磁気ギャップ)を介して対向するように配置されている。
【0033】
(樹脂外郭)
樹脂外郭10は、絶縁性の樹脂材料で構成される。図1図2に示されるように、樹脂外郭10は、軸方向の一端側(本実施形態では回転シャフト6の反出力端部61側)に開口端部101と、軸方向の他端側(本実施形態では回転シャフト6の出力端部62側)に底部102とを有し、中空円筒状に形成される。ここで、反出力端部61とは、回転シャフト6の出力端部62とは反対側の端部である。出力端部62とは、電動機1の負荷側(負荷に接続される側)の端部である。
上述のように、樹脂外郭10は、固定子2と一体成形される。樹脂外郭10を構成する樹脂材料は特に限定されず、例えばBMC(Bulk Molding Compound:不飽和ポリエステルを主成分とする熱可塑性樹脂)で形成される。
【0034】
また、樹脂外郭10は、載置面9を有する。載置面9は、樹脂外郭10の内周面であって、回転子3から間隙を介して回転シャフト6の反出力端部61側に設けられる。載置面9は、後述する回路基板5を支持可能に設けられる。本実施形態において載置面9は、樹脂外郭10の内周面から内径側に突出するように設けられた段部の上記反出力端部61側の面である。載置面9は、樹脂外郭10の内周面に、その周方向に連続的に形成されてもよいし、その周方向に間隔をおいて複数個所に形成されてもよい。
【0035】
図8は、電動機1の底部102側から見た図であり、図2図8に示されるように、樹脂外郭10の底部102は、金属製の第2の軸受収容部82が収容される筒部102aを、さらに有する。第2の軸受収容部82は、底部102に設けられ、後述する第2の軸受81を収容する。
【0036】
筒部102aは、樹脂外郭10の底部102から回転シャフト6の出力端部62側へ突出しており、第2の軸受収容部82が備える後述する円筒収容部821の外周を囲っている。筒部102aは、当該筒部102aの外周面に、軸方向から見て径方向の内側に窪む第2の凹部1021aと、径方向の外側に突出する第2の凸部1022aとが、交互に設けられている。筒部102aは、軸方向から見た中心に、回転シャフト6が挿通される貫通孔が形成されている。筒部102aは、同筒部102aの内周面側に第2の軸受収容部81の円筒部821を収容することで、第2の軸受収容部82を保持している。筒部102aの外周面には、第2の凹部1021a及び第2の凸部1022aと係合する第2の防振部材12b(後述)が取り付けられる。筒部102aが備える第2の凹部1021a及び第2の凸部1022aは、第2の防振部材12bに対する回り止めとして機能する。
【0037】
樹脂外郭10の外周面10Aには、放熱性能を向上させるために、外径方向へ突出する外周面凸部10aが軸方向に延びて形成されている。この外周面凸部10aは、樹脂外郭10の周方向に複数形成される。この外周面凸部10aが軸方向に延びる長さ、及び、外周面凸部10aが外径方向へ突出する突出高さは、適宜設定可能である。
【0038】
外周面凸部10aを形成することによって、樹脂外郭10の外周面10Aにおける表面積を増大することができるため、放熱性を高めることができる。
【0039】
また樹脂外郭10には、後述する金属部材11が配置される溝部10bが設けられる。溝部10bは、第1の溝部101bと第2の溝部102bと、第3の溝部103bと、第4の溝部104bとを有する。
【0040】
図1図2に示されるように、第1の溝部101bは、樹脂外郭10の外周面10Aのうち外周面凸部10aとは重ならない位置に設けられ、樹脂外郭10の外周面10Aに軸方向に沿って形成される。本実施形態では、第1の溝部101bは、樹脂外郭10の外周面10Aのうち、周方向において隣り合った2つの外周面凸部10aの間に位置している。
また、第2の溝部102bは、開口端部101側の第1の溝部101bに接続され、開口端部101に径方向に沿って形成される。また第2の溝部102bは、軸方向から見て後述するヒートシンク4のフィン部45と重なる位置に形成される。
【0041】
また第3の溝部103bは、樹脂外郭10の内周面10B側の第2の溝部102bに接続され、樹脂外郭10の内周面10Bに軸方向に沿って形成される。また第3の溝部103bは、軸方向から見て後述するヒートシンク4のフィン部45と重なる位置に形成される。
【0042】
また第4の溝部104bは、底部102側の第1の溝部101bに接続され、底部102に径方向に沿って形成される。また第4の溝部104bは、軸方向から見て後述する第2の軸受収容部82の少なくとも一部と重なる位置に形成される。
【0043】
溝部10bの幅は、後述する金属部材11が収容される大きさであればよい。
【0044】
第1の溝部101bの内径方向への深さは、特に限られないが、例えば後述する第1の金属部11Aが収容される深さである。
【0045】
第2の溝部102bの軸方向への深さは、特に限られないが、例えば後述する第2の金属部11Bの軸方向の厚みと同一又は、ほぼ同一である。
【0046】
第3の溝部103bの外径方向(樹脂外郭10側)への深さは、特に限られないが、例えば後述する第3の金属部11Cの径方向の厚みと同一又は、ほぼ同一である。
【0047】
第4の溝部104bの軸方向への深さは、特に限られないが、例えば後述する第4の金属部11Dの軸方向の厚みが収容される深さである。
【0048】
第4の溝部104bは、後述する第2軸受収容部82のフランジ部822と金属部材11とを締結させる第1の第1の締結部材N(例えばねじ)が挿通される、貫通穴1041bを有する。
【0049】
(回路基板)
図2および図5に示されるように、回路基板5は、配線基板50と、配線基板50の表面(回転シャフト6の反出力端部61側の面)に搭載された発熱性を有する電子部品51とを含む。回路基板5は、円板形状であり、回路基板5の周縁部は、載置面9に支持され、例えば、接着、粘着、ネジ締結、はんだ付け等によって樹脂外郭10に対して固定される。なお、回路基板5の周縁部に位置決め用の凸部を、そして樹脂外郭10の内周面に上記凸部と係合する位置決め用の凹部を、それぞれ設けてもよく、これにより回路基板5を周方向に位置決めした状態で載置面9に固定することができる。
【0050】
電子部品51は、部品本体510と、部品本体510の対向する2側面から延出するリード部511とを有する。なお、リード部511は、部品本体510の2側面から延びる場合に限られず、1側面だけから延びていても、4側面から延びていてもよい。部品本体510は、半導体素子を内蔵する合成樹脂製のパッケージ部である。リード部511は、配線基板50に電気的に接続される複数の金属製の外部端子からなる。
【0051】
電子部品51は、主として、パワーMOSFETやIGBT等を集積したパワーIC、モータ駆動電流の制御用IC等の半導体パッケージ部品であるが、コンデンサ等の受動部品であってもよい。
【0052】
なお、配線基板50には、電子部品51のほか、電源ケーブルと接続されるコネクタ部品等の他の部品が搭載されるが、これらの図示は省略する。上記電源ケーブルは、樹脂外郭10の開口端部101の近傍にその周方向の所定角度範囲にわたって形成されたケーブル挿通部(図示略)を通して樹脂外郭10の外部に引き出され、図示しない電源に接続される。
【0053】
(軸受)
図2に示すように、第1の軸受71は、外輪711、内輪712、複数のボール713等を有するボールベアリングである。第2の軸受81は、外輪811、内輪812、複数のボール813等を有するボールベアリングである。
【0054】
第1の軸受71の外輪711は、ヒートシンク4(第1の軸受収容部41)に固定され、第1の軸受71の内輪712は、回転シャフト6の反出力端部61側に固定される。第2の軸受81の外輪811は、樹脂外郭10の底部102(第2の軸受収容部82)に固定される。第2の軸受81の内輪812は、回転シャフト6の出力端部62に固定される。これにより、回転シャフト6は、第1の軸受71および第2の軸受81により、ヒートシンク4および樹脂外郭10に対して軸心Cのまわりに回転可能に支持される。
【0055】
第2の軸受収容部82は、金属製であり、上述したように軸心Cを中心とする概ね円筒形状である。第2の軸受収容部82は、第2の軸受81を収容する円筒部821と、円筒部821から外径方向へ延びるフランジ部822とを有し、上述した筒部102aに収容される。
【0056】
フランジ部822は、円環状の板形状であり、軸方向から見てフランジ部822は上述した第4の溝部104bと重なる位置に設けられる。
【0057】
フランジ部822は、軸方向から見て、樹脂外郭10の第4の溝部104bに形成された貫通穴1041bと重なる位置に、フランジ穴822aを有する。フランジ穴822aは、貫通穴1041bを介して、後述する金属部材11と第1の第1の締結部材Nによって締結される。
【0058】
(ヒートシンク)
図3は、ヒートシンク4をフィン部45側から見た図であり、図4はヒートシンク4を突起部44側から見た図である。図5は、回路基板5をヒートシンク4側から見た図であり、図6は、先端面441と電子部品51との位置関係をヒートシンク4側から見た図である。また図7は、ヒートシンク4を突起部44側から見た平面図である。
【0059】
ヒートシンク4は、第1の軸受収容部41と、円板部42と、環状突出部43と、突起部44と、フィン部45と、第1の規制部46と、を有する。ヒートシンク4は、樹脂外郭10の開口端部101に取り付けられ、固定される。ヒートシンク4は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の熱伝導性に優れた金属材料で形成される。ヒートシンク4は、円板部42と、環状突出部43と、突起部44と、フィン部45とがそれぞれ一体に成形される。ヒートシンク4は例えば、ダイカスト(鋳造)によって成型される。
【0060】
ヒートシンク4は、樹脂外郭10の開口端部101を覆うことで樹脂外郭10の開口部を閉塞する蓋部材(ブラケット)としての機能と、第1の軸受71を支持する軸受収容部(ベアリングハウス)としての機能と、電動機内部の電子部品51で生じた熱を電動機外部へ放熱する放熱部材としての機能を有する。
【0061】
円板部42は、軸心Cを中心とする中心孔40を有する円環形状である。円板部42は、樹脂外郭10の開口端部101を覆う内面部424と、内面部424とは反対側(反出力端部61側)の外面部423と、を含む。本実施形態では、円板部42の外径は、樹脂外郭10の開口端部101の外径と同一又はほぼ同一の大きさである。また図2図3に示すように、円板部42の外面部423には、第1の軸受収容部41とフィン部45と第1の規制部46とが形成される。円板部42の内面部424には、軸方向位置決め部420、環状突出部43および突起部44が設けられる。本実施形態では、軸方向における円板部42の厚さは、例えば、3mm以上であり、本実施形態では、4mmである。
【0062】
以下、円板部42の内面部424に設けられる、軸方向位置決め部420、環状突出部43および突起部44について説明する。
【0063】
環状突出部(段差)43は、軸心Cを中心とする中空の円筒状であり、軸方向における円板部42の内面部424側から回路基板5側に突出し、樹脂外郭10の内周面(内側側面)10Bに接触する。環状突出部43は、中心孔40と同一又はほぼ同一の大きさの孔を有し、回転シャフト6が貫通する。環状突出部43は、回路基板5と対向しており、後述する突起部44が配置される配置面431を有する。
【0064】
環状突出部43の軸心Cに平行な断面は、概ね長方形状である。また、図4に示すように、環状突出部43は、切れ目なく周方向に連続的に形成されているが、この限りではなく、一部に切れ目があってもよい。
【0065】
環状突出部43は、軸心Cまわりの径方向にヒートシンク4を樹脂外郭10に対して位置決めするための、径方向位置決め部430を有する。本実施形態では径方向位置決め部430は、環状突出部43の外周面に形成されており、樹脂外郭10の内周面10Bに当接している。すなわち、図2図4に示すように、径方向位置決め部430は、樹脂外郭10の内周面10Bに嵌合する円筒面形状である。
【0066】
突起部44は、環状突出部43の配置面431に配置され、円板部42の内面部424側から回路基板5側に向かって突出し、回路基板5(本実施形態では電子部品51)に熱的に接触する。
【0067】
図2図4に示すように、本実施形態では、突起部44は、回路基板5上に搭載された電子部品51に向かって突出する扇状のブロックである。さらに、突起部44は、電子部品51と対向する平面状の先端面441と、先端面441のうち円周方向の一端側に設けられた第1の端部442と、先端面441のうち円周方向の他端側に設けられた第2の端部443と、を有する。なお、軸方向から見た突起部44の形状は、扇状に限られず、例えば、直方体形状や円柱形状であってもよい。また、ここでの扇状とは、軸方向から見て環状に形成されていない、おおよそ「C」の字形状(またはドーナツ状の一部分が切りかかれた形状、所定の幅を有する円弧形状)のことである。
【0068】
先端面441の電子部品51側から見た形状は、軸方向から見て径方向に所定長さLR以上の幅L(後述)を有する扇状である(図4参照)。また図6に示すように先端面441は、電子部品51と対向する第1の領域W1と、電子部品51と対向しない第2の領域W2とを有する。第2の領域W2は、第1の領域W1の周方向の少なくとも一方側に隣接する。
【0069】
軸方向から見た第1の領域W1の形状は、長方形状であるが、もちろんこれに限られず、軸方向から見て電子部品51と重なる形状であればよい。ここで、軸方向から見て電子部品51と重なる(対向する)とは、軸方向から見て電子部品51の部品本体510と重なる(対向する)とのことである。つまり、第1の領域W1とは、軸方向から見て部品本体510の外周縁部L0で囲われた領域である。
【0070】
また本実施形態では軸方向からみた第2の領域W2は、おおよそ扇状であるが、もちろんこれに限られず、長方形状であってもよい。また本実施形態では、第1の領域W1に隣接する第2の領域W2は、第1の領域W1の円板部42の周方向の一方側(左回りに回る方向側、反時計回りの方向側)にのみ設けられている。しかしながら、もちろん第2の領域W2は、第1の領域W1の円板部42の周方向の他方側(右回りに回る方向側、時計回りの方向側)にのみ設けられてもよいし、両方向(反時計回りの方向側および時計回りの方向側)のそれぞれに隣接して設けられてもよい。
【0071】
先端面441は、例えばヒートシンク4のダイカスト等による成形後、平面研削盤等の工作機械により、平面に加工されてもよい。
【0072】
図4に示すように第1の端部442は、先端面441の一端側に円周方向に直交する面に平行である長方形状の平面を有し、径方向に沿って設けられ、第2の端部443は、先端面441の他端側に円周方向に直交する面に平行である長方形状の平面を有し、径方向に沿って設けられる。
【0073】
ここで図4図5に示すように、上述した径方向における先端面441の幅Lは、所定長さLR以上である。本実施形態では、所定長さLRとは、距離L1から距離L2を引いた長さである。距離L1とは、軸方向と直交する断面において、回転シャフト6の回転中心(電動機1の回転中心)Cから、第1の領域W1と対向する電子部品51(部品本体510)の外周縁部L0のうち最も外径側に位置する最外径部511Aまで、の距離のことである。また距離L2とは、軸方向と直交する断面において、回転シャフト6の回転中心(電動機1の回転中心)Cから、第1の領域W1と対向する電子部品51(部品本体510)の外周縁部L0のうち最も内径側に位置する最内径部511Bまで、の距離のことである。すなわち、所定長さLRは、LR=L1-L2である。また、幅Lは、L≧LR=L1-L2である。
【0074】
本実施形態では、最外径部511Aは、軸方向からみて電子部品51の外周縁部LOの角部分に相当する。また本実施形態では、最内径部511Bは、回転中心Cから径方向に延びる線(距離L2に相当)と外周縁部LOとが直交する部分のうち最も内径側の部分に相当する。
【0075】
また図7に示すように、本実施形態では、周方向における先端面441の第1の端部442から第2の端部443までの角度θは、約75°であるが、もちろん、これに限られず、軸方向から見た電子部品51の形状などによって適宜変更可能である。
【0076】
電子部品51と突起部44との間には、電子部品51側から順に伝熱部材52と接着部材53が配置されており、突起部44の先端面441は、伝熱部材52および接着部材53を介して電子部品51と熱的に接触する。先端面441と電子部品51との距離は、伝熱部材52の厚みと接着部材53の厚みを足した合計の厚み以下に設定される。
【0077】
これにより、伝熱部材52および接着部材53を介して先端面441を電子部品51の上面に安定して接触させることができる。なお、これに限られず、電子部品51と突起部44との間には伝熱部材52または接着部材53のいずれか一方のみが配置されてもよい。また、ヒートシンク4は円板部42と一体に形成された突起部44を備えなくともよく、例えば、ヒートシンク4の円板部42の内面と電子部品51との間に、ヒートシンク4とは別体の金属製の伝熱部材が配置されていてもよい。
【0078】
伝熱部材52としては、熱伝導性が良好で、絶縁性が高いものが好ましく、例えばシリコン樹脂製の放熱シートが用いられる。接着部材に関しても同様に、熱伝導性が良好で、絶縁性が高いものが好ましく、例えばシリコン樹脂製の接着剤が用いられる。接着部材53は、伝熱部材52と突起部44とを接着するだけでなく、接着部材53の変形により、突起部44と電子部品51との軸方向の位置のばらつきを吸収する。さらに、接着部材53は、ヒートシンク4が樹脂外郭10へ嵌合される際に、突起部44から電子部品51への押し付ける力を、接着部材53の変形により逃がす。これにより、電子部品51に過度な圧力が加わるのを防ぐとともに、突起部44と電子部品51との安定した熱的接続を確保できる。
【0079】
円板部42は、樹脂外郭10に対するヒートシンク4の軸方向での相対位置(樹脂外郭10を基準としたときのヒートシンク4の軸方向における位置)を位置決めする軸方向位置決め部420を有する。図4に示すように、軸方向位置決め部420は、円板部42の第1の外周縁部422の内面部424側に形成される。本実施形態において、第1の外周縁部422とは、円板部42の、環状突出部43よりも外径側の領域である。
【0080】
軸方向位置決め部420は、第1の外周縁部422の内面部424側に形成され、樹脂外郭10の開口端部101と当接する。図2に示すように、軸方向位置決め部420は、開口端部101に軸心Cの方向に当接する。軸方向位置決め部420は、例えばヒートシンク4のダイカスト等による成形後、旋盤等により、平面に加工されてもよい。本実施形態では、軸方向位置決め部420は、軸心Cに直交する平面に形成されている。
【0081】
軸方向位置決め部420は、図4に示すように、第1の外周縁部422の内面部424側全域が軸心Cに直交する平面で形成されるが、この限りではない。例えば、ヒートシンク4の軸方向位置決め部420は、開口端部101に向かって突出する環状の突出部を有してもよく、樹脂外郭10の開口端部101にはその突出部と対応する環状の溝部を有していてもよい。この突出部の径方向から見た断面は、台形状であってもよいし、曲面形状であってもよい。
【0082】
また図3図4図7に示すように、円板部42の第1の外周縁部422の複数個所には、ヒートシンク4と樹脂外郭10とを締結する第2の締結部材(締結部材)Tが挿通される複数の貫通孔421が形成される。第2の締結部材Tは、貫通孔421に挿通される軸部T1と、軸部T1よりも直径の大きい頭部T2と、を有する。実施形態における第2の締結部材Tは、ヒートシンク4の外面側を押さえる頭部T2と、後述するねじ受部Uに螺合される雄ねじ部(軸部T1)と、を有する雄ねじである。なお、第2の締結部材Tは雄ねじに限られず、たとえばカシメ部材であってもよい。この場合、貫通孔421に挿通されるカシメ部材の一端がかしめられることで頭部T2を形成し、カシメ部材において貫通孔421に挿通された箇所が軸部T1を形成してもよい。
【0083】
複数の貫通孔421は、円板部42の周方向に沿って配置され、本実施形態では、第1の外周縁部422に等角度間隔で3箇所設けられる。なお、第1の外周縁部422に設けられる複数の貫通孔421の数や位置は適宜変更可能である。本実施形態では、樹脂外郭10の開口端部101には、複数の貫通孔421と対向する位置にねじ受部(受け部)Uが形成される。本実施形態では、ねじ受部Uには、雄ねじ部(軸部T1)と螺合する雌ねじ部が形成されている。ねじ受部Uの雌ねじ部は、例えば、樹脂外郭10の開口端部101に不図示のインサートナットが埋め込まれることで形成されるが、これに限られず、樹脂外郭10の開口端部101に雌ねじ部を備えた穴が直接形成されていてもよい。ヒートシンク4は、各複数の貫通孔421に挿通される第2の締結部材Tによって樹脂外郭10の開口端部101に固定される。この際、ヒートシンク4は、樹脂外郭10の開口端部101に対してその周方向に位置決めされる。もちろん、ねじ受部Uは、開口端部101に設けられることに限られず、例えば、別途ねじ受部Uを樹脂外郭10の外周面10A側に設けてもよい。
【0084】
図4に示すように、軸方向から見て複数の貫通孔421の形状は、円板部42の周方向を長手方向とする長孔状である。本実施形態では、複数の貫通孔421の形状は、すべて長孔状であるが、もちろん、これに限られず、たとえば複数の貫通孔421のうちの一つが円形状であってもよい。
【0085】
また複数の貫通孔421の形状は、周方向に長手方向とする長孔状に限られず、径方向に長手方向とする長孔状であってもよい。さらに複数の貫通孔421の形状は、長孔状に限られず、少なくとも一つが軸方向から見て上記第2の締結部材Tの軸部T1(雄ねじ部)と重ならない領域Vを有していればよく、例えば円形であってもよい。
【0086】
また複数の貫通孔421における周方向に移動する第1角θ1と、先端面441が移動した場合に先端面441が電子部品51と対向することができる第2角θ2と、について説明する。
【0087】
第1角θ1とは、複数の貫通孔421における周方向の一方側の貫通孔端部421A(端)と回転シャフト6の回転中心Cとを結んだ直線を第1直線S1とし、第2の締結部材Tの軸部T1(雄ねじ部)における周方向の一方側の軸端部T11(端)と回転中心Cとを結んだ直線を第2直線S2としたとき、第1直線S1と第2直線S2とがなす角度のことである。
【0088】
また第2角θ2とは、突起部44の先端面441における周方向の一方側の第2の端部443(端)と回転中心Cとを結んだ直線を第3直線S3とし、電子部品51における周方向の一方側の周方向端部511C(端)と回転中心Cとを結んだ直線を第4直線S4としたとき、第3直線S3と第4直線S4とがなす角度のことである。
【0089】
ここで、貫通孔端部421Aとは、円周方向において第2の締結部材Tの軸部T1(雄ねじ部)と重ならない領域V側に設けられた端部のことである。また、図6に示すように周方向端部511Cとは、円周方向において電子部品51(部品本体510)の外周縁部L0のうち最も第2の領域側に位置する端部のことである。
【0090】
そして、第1直線S1と第2直線S2とがなす第1角θ1と、第3直線S3と第4直線S4とがなす第2角θ2との関係は、以下の式1を満たす。
θ1<θ2…(式1)
【0091】
以下、円板部42の外面部423に設けられる、第1の軸受収容部41、フィン部45および第1の規制部46について説明する。
【0092】
フィン部45は、円板部42の外面部423に設けられ、軸方向へ突出し、径方向に延びる。フィン部45は、複数のフィンを含み、円板部42の中心孔40を中心に放射状に設けられる。
【0093】
ヒートシンク4は、電子部品51で生じた熱を、上述した突起部44を介してフィン部45へと伝達し、さらにフィン部45を介して電動機1の外部に放熱させる。本実施形態では、その上、電動機1の外部においてフィン部45の備える複数のフィン同士の間を流れる空気により、電動機1の冷却効果をより高めることができる。なお、フィン部45の材質は、アルミニウムに限らずアルミニウム合金や、マグネシウム合金など放熱フィンに好適なものを適宜選択することが可能である。
【0094】
第1の軸受収容部41は、回転シャフト6を回転自在に支持する第1の軸受71を収容する。第1の軸受収容部41は、軸心Cを中心とし、回転シャフト6が貫通する円筒形状を有し、第1の軸受71を収容する。本実施形態では、第1の軸受収容部41に収容される第1の軸受71は、フィン部45の軸方向への突出高さよりも高い位置に設けられる。
【0095】
第1の軸受収容部41の外周面には、周方向に交互に設けられた第1の凹部411a及び第1の凸部412aが形成される。第1の軸受収容部41の外周面は、第1の凹部411a及び第1の凸部412aに係合する後述する第1の防振部材12aが取り付けられる。本実施形態において第1の凹部411a及び第1の凸部412aは、第1の軸受収容部41の外周面の軸方向両端まで、軸方向に沿って形成されるがこれに限らず、第1の凹部411a及び第1の凸部412aは、第1の軸受収容部41の外周面の軸方向に沿って、第1の軸受収容部41の外周面の軸方向の一部に形成されてもよい。
【0096】
第1の規制部46は、ヒートシンク4の外面部423側に設けられ、後述する第1の防振部材12aと接触する第1の規制面46Aを有する。第1の規制面46Aは、第1の防振部材12aがフィン部45側へ移動するのを規制している。本実施形態では、第1の規制面46Aは、軸方向で第1の防振部材12aとフィン部45との間に配置され、上述したように第1の防振部材12aとフィン部45との間に所定の空隙H1を形成する。
【0097】
第1の規制部46は、軸心Cを中心に第1の軸受収容部41の周囲を囲う円環状である。所定の空隙H1とは、第1の防振部材12aに対して軸方向のフィン部45側への外力が働いた際に、第1の防振部材12aとフィン部45とが接触しない程度の空隙であればよく、例えば2mmである。
【0098】
(防振部材)
図9は防振部材12を上面側から見た斜視図であり、図10は防振部材12を下面側から見た斜視図である。
【0099】
防振部材12は、ヒートシンク4側に取り付けられる第1の防振部材12aと、樹脂外郭10の底部102側に取り付けられる第2の防振部材12bと、を有する。本実施形態では、第1の防振部材12aと第2の防振部材12bとを形状が共通の部材とすることで、2つの防振部材12a、12bを区別なく取り付けることができる。なお、第1の防振部材12aと第2の防振部材12bとは形状が異なっていてもよい。
【0100】
防振部材12は、例えば防振ゴムであり、振動エネルギーの吸収性に優れた材料が用いられる。
【0101】
第1の防振部材12aは、図9図10に示すように、中空の円筒形状である。第1の防振部材12aの内周側には、第1の軸受収容部41の第1の凹部411aと係合する第1の係合凸部121aと、第1の軸受収容部41の第1の凸部412aと係合する第1の係合凹部122aと、が形成される。また、第1の防振部材12aの下面123aには、当該下面123aからフィン部45側へと突出する環状の第1の接触部124aが形成される。ここで、第1の防振部材12aの下面123aとは、第1の防振部材12aがヒートシンク4の第1の軸受収容部41に取り付けられた状態において、フィン部45側に位置する面を指す。
【0102】
第1の接触部124aが上述した第1の規制面46Aと接触することで、第1の防振部材12aはヒートシンク4に対して軸方向に位置決めされる。これにより、ヒートシンク4側に形成された第1の規制部46だけでなく、第1の防振部材12a側に形成された第1の接触部124aによっても、第1の防振部材12aの下面123aとフィン部45との間に空隙を形成することができる。また本実施形態において下面123aからフィン部45側へと突出する第1の接触部124aは、周方向に繋がった環状に形成されているがこれに限らず、複数の突起が周方向に環状に並ぶようにして形成されてもよい。
【0103】
第1の防振部材12aの外周面には、第1の取付金具G1が装着され、第1の取付金具G1は、例えばダクト等に固定するための固定具(不図示)が取り付けられる。
【0104】
第2の防振部材12bは、図9図10に示すように中空の円筒形状である。第2の防振部材12bの内周側には、樹脂外郭10の筒部102aに形成された第2の凹部1021aと係合する第2の係合凸部121bと、筒部102aに形成された第2の凸部1022aと係合する第2の係合凹部122bとが形成される。
【0105】
また、第2の防振部材12bの下面123bには、当該下面123bから樹脂外郭10の底部102側へと突出する環状の第2の接触部124bが形成される。ここで、第2の防振部材12bの下面123bとは、第2の防振部材12bが樹脂外郭10の筒部102aに取り付けられた状態において、底部102側に位置する面を指す。
【0106】
第2の接触部124bは、上述した樹脂外郭10の底部102と接触し、第2の防振部材12bが樹脂外郭10に対して軸方向に位置決めされる。
【0107】
第2の防振部材12bの外周面には、第1の防振部材12aと同様に、第2の取付金具G2が装着され、第2の取付金具G2は、例えばダクト等に固定するための固定具(不図示)が取り付けられる。上述した第1の取付金具G1と第2の取付金具G2とに固定具が取り付けられることで、電動機1がダクト等に固定される。
【0108】
図11は金属部材11の斜視図であり、図12は金属部材11の側面図である。
【0109】
(金属部材)
金属部材11は、図1図2図11図12に示されるように、樹脂外郭10の内周面10Bから底部102までの外形に沿って、折れ曲がった形状に形成される。金属部材11は、上述した溝部10bに収容される。
【0110】
金属部材11は、例えば導電性の金属材料(ステンレス鋼のSUS304など)を帯状に加工して形成される。なお、金属部材11は、合金で形成されていてもよい。
【0111】
また図11図12に示されるように、金属部材11は、第1の金属部11Aと第2の金属部11Bと第3の金属部11Cと第4の金属部11Dとを有する。
【0112】
第1の金属部11Aは、樹脂外郭10の外周面10Aに軸方向に沿って配置され、第1の溝部101bに収容される。本実施形態では、第1の溝部101bは、樹脂外郭10の外周面10Aのうち、周方向において隣り合った2つの外周面凸部10aの間に位置している。
第2の金属部11Bは、開口端部101側の第1の金属部11Aに連続し開口端部101に樹脂外郭10の径方向に沿って配置され、第2の溝部102bに収容される。
第3の金属部11Cは、第2の金属部11Bに連続し樹脂外郭10の内周面10Bに軸方向に沿って配置され、第3の溝部103bに収容される。
第4の金属部11Dは、第1の金属部11Aに連続し第2の軸受収容部82と接触する。第4の金属部11Dは、底部102に径方向に沿って配置され、第4の溝部104bに収容される。
【0113】
本実施形態では、金属部材11(第1の金属部11A~第4の金属部11D)が、樹脂外郭10に形成された対応する溝部10b(第1の溝部101b~第4の溝部104b)に収容されることにより、金属部材11が周方向にずれて固定されてしまうことを防止できる。また、金属部材11が厚みの大きな板状の部材で形成された場合であっても、樹脂外郭10の外周面から金属部材11が突出することを抑制できる。
【0114】
また、本実施形態の樹脂外郭10には、樹脂外郭10の外周面10Aから外径方向へ突出する外周面凸部10aが周方向に複数形成されているため、樹脂外郭10の外周面10Aにおいて外周面凸部10aの間に位置する部分は、電動機1の外部を流れる空気が通過しにくい。そこで本実施形態では、樹脂外郭10の外周面10Aに形成された第1の溝部101bを、周方向において隣り合った2つの外周面凸部10aの間に位置させている。これにより、樹脂外郭10の外周面10Aで周方向に隣り合った2つの外周面凸部10aの間に、金属部材11の第1の金属部11Aを位置させることができ、樹脂外郭10の外周面10Aにおいて空気が通過しにくい部分の熱を、金属部材11を介してヒートシンク4に伝えることで、放熱性を高めることができる。
【0115】
なお、第1の金属部11Aは、帯状の板で形成された場合を例示したがこれに限らず、樹脂外郭10の外周面凸部10aと同様の径方向に突出するフィン形状であってもよいし、定格銘板が用いられてもよい。定格銘板の場合、定格銘板に接続され、定格銘板の軸方向の両端から延びる帯状の金属板が配置されてもよい。これにより、樹脂外郭10の外周面10Aにおける表面積を増大することができるため、放熱性を高めることができる。
【0116】
また第1の金属部11Aが樹脂外郭10の外周面凸部10aと同様のフィン形状である場合、樹脂外郭10の外周面10Aにおける表面積を増大することができるため、放熱性を高めることができる。
【0117】
本実施形態において、第2の金属部11Bは、ヒートシンク4の軸方向位置決め部420と所定の間隔をもって対向する。また第2の金属部11Bは、図1図2に示されるように、軸方向から見て、フィン部45と重なる位置に配置される。所定の間隔とは特に限られないが、例えば0.3mmである。
【0118】
第3の金属部11Cは、環状突出部43(径方向位置決め部430)と熱的に接触するとともに弾性的に接触する弾性接触部111Cを有する。ここで、熱的に接触(接続)するとは、互いに接触(接続)した2つの部材間で熱伝導により伝熱していることを指す。また第3の金属部11Cは、軸方向から見て、フィン部45と重なる位置に配置される。
【0119】
弾性接触部111Cは、ヒートシンク4が樹脂外郭10にはめ込まれたときに、樹脂外郭10の内周面10Bの第3の溝部103bへ、環状突出部43によって押し込まれる。このとき、金属部材11の弾性接触部111Cがヒートシンク4と弾性的に接触することにより、金属部材11とヒートシンク4との導通状態を安定的に得ることができる。第3の金属部11Cの軸方向への長さは、環状突出部43の軸方向への長さと同一又はほぼ同一である。第3の金属部11Cは、環状突出部43によって樹脂外郭10の内周面10B側へ押し込まれたときに、第3の溝部103bに収容される場合を例示したが、これに限らず、弾性接触部111Cの一部が、第3の溝部103bから内径方向へ突出してもよい。
【0120】
第4の金属部11Dは、樹脂外郭10の底部102側の第1の金属部11Aに設けられ、第1の金属部11Aと連続する屈曲部111Dと、屈曲部111Dに連続し内径方向へ延びる直線部112Dとを有する。
【0121】
屈曲部111Dは、底部102に沿って屈曲した形状に形成される。屈曲部111Dは、樹脂外郭10への取り付けを考慮したばね性を有する。また直線部112Dは、締結穴113Dと判別穴114Dとを有する。締結穴113Dは、軸方向から見て、第4の溝部104bの貫通穴1041b、及び、第2軸受収容部82のフランジ穴822aと、重なる位置に設けられる。判別穴114Dは、締結穴113Dよりも屈曲部111D側に位置する。そして第1の締結部材Nによって、貫通穴1041bを介して締結穴113Dとフランジ穴822aとが締結される。また判別穴114Dは、本実施形態における電動機1に取り付けられる金属部材11と他の電動機に用いられる金属部材とを識別するための穴である。
【0122】
これにより、ヒートシンク4に配置された第1の軸受収容部41と、樹脂外郭10に配置された第2の軸受収容部82とが導通される。
【0123】
(金属部材の作用)
電動機1は、高周波スイッチングを行うPWM方式のインバータで駆動される場合に、第1の軸受収容部41と第2の軸受収容部82とが電気的に導通していないことで、第1の軸受71の内輪712と外輪711との間、および第2の軸受81の内輪812と外輪811との間に、それぞれ電位差(軸電圧)が生じる。
【0124】
この軸電圧が軸受の内部にある油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受の内部に電流が流れて軸受に電食を発生させる。電食は、第1の軸受71の内輪712と外輪711との間、および第2の軸受81の内輪812と外輪811との間のそれぞれの軸電圧が高いときに生じる放電(電気火花)によって、軸受が損傷する現象である。軸受に電食が発生すると、軸受の転走面に生じた傷によって軸受の回転時に異音が生じたり、電動機の回転効率の低下を招いたりしてしまう。
【0125】
金属部材11は、第1の軸受71が収容される第1の軸受収容部41と、第2の軸受81が収容される第2の軸受収容部82と、を導通させることにより、第1の軸受71および第2の軸受81の各々の外輪711、811の電位を同電位とすることができ、各軸受の内外輪間の電位差を相対的に小さくすることで電食の発生を抑制できる。本実施形態では、金属部材11の一端側である第3の金属部11Cが、第1の軸受収容部41(ヒートシンク4)に接触し、金属部材11の他端側である第4の金属部104bが、第2の軸受収容部82に接触することで、第1の軸受収容部41と第2の軸受収容部82とが導通されている。
【0126】
また、固定子2で発生した熱を樹脂外郭10の外周面10Aに配置された第1の金属部11Aから第3の金属部11Cへ伝え、第3の金属部11Cに熱的に接触する環状突出部43からフィン部45を介して放熱される。これにより、通電により発熱するコイル22と固定子鉄心21で発生した熱を、放熱性の高いフィン部45を有するヒートシンク4へ伝えることができるので、電動機1の放熱特性を向上させることができる。一例として、本実施形態では、樹脂外郭10の材料であるBMCの熱伝導率が約0.9(W/m・K)であるのに対し、金属部材11の材料であるステンレス鋼(SUS304)の熱伝導率が約16.7(W/m・K)であり、金属部材11は樹脂外郭10よりも熱伝導率が10倍以上高い。そして、ヒートシンク4の材料であるアルミニウム合金(例えば、ADC12)の熱伝導率が約96(W/m・K)であるから、ヒートシンク4は樹脂外郭10よりも熱伝導率が100倍以上高い。したがって本発明では、固定子3で生じた熱を、樹脂外郭10よりも熱伝導率が高い金属部材11を介して、熱伝導率が更に高いヒートシンク4へと伝え、電動機1の放熱特性を向上させることができる。
【0127】
第2の金属部11Bは、ヒートシンク4の軸方向位置決め部420と所定の間隔をもって対向するが、これに限らず、軸方向位置決め部420と接触してもよい。この場合、固定子2で発生した熱は、軸方向位置決め部420を介してフィン部45へ伝わり、そのフィン部45の熱が内径方向へ伝わり、その伝わった熱が複数のフィン部45へ放射状に拡散されて放熱される。これにより、環状突出部43だけでなくヒートシンク4全体を使って固定子2で発生した熱を放出することができるため、電動機1の放熱特性を向上させることができる。
【0128】
また、樹脂外郭10の外周面10に第1の溝部101bが設けられているため、図2に示されるように、固定子2と第1の金属部11Aとの距離が短くなるため、より固定子2で発生した熱を放出しやすくなる。
【0129】
さらに第4の金属部11Dの屈曲部111Dは、ばね特性を有しているため、金属部材11と樹脂外郭10とを取り付けるときに、第1の金属部11Aと第1の溝部101bとの接触面積(接触密度)を増加させるように取り付けることが可能となる。そのため、固定子2で発生した熱を第1の金属部11Aを介して放出しやすくなる。
【0130】
[ヒートシンクの作用]
上述のように、本実施形態のヒートシンク4は、樹脂外郭10の開口端部101と当接する軸方向位置決め部420と、樹脂外郭10の開口端部101の内周面に当接する径方向位置決め部430とを有する。このため、樹脂外郭10へのヒートシンク4の組み付けと同時に、樹脂外郭10に対してヒートシンク4が軸方向および径方向のそれぞれの方向に位置決めされる。
【0131】
より具体的には、ヒートシンク4に、ヒートシンク4の軸方向の相対位置(樹脂外郭10を基準としたときのヒートシンク4の軸方向における位置)を位置決めする軸方向位置決め部420が設けられるとともに、回路基板5の電子部品51に対するヒートシンク4の軸方向の相対位置(電子部品51を基準としたときのヒートシンク4の軸方向における位置)を位置決めする突起部44の先端面441が設けられる。そのため、ヒートシンク4の樹脂外郭10に対する軸方向の相対位置の精度が確保される。これにより、電子部品51に過度な圧力が加わるのを防ぐとともに、電子部品51からヒートシンク4へと安定的に伝熱し、電動機1の外部へと十分に放熱することができる。
【0132】
また、ヒートシンク4に径方向位置決め部430が形成されていることにより、ヒートシンク4と樹脂外郭10の径方向との組立時に生じる各部品同士の相対位置(一方の部品の位置を基準としたときの他方の部品の位置)のばらつきを小さくできる。そのため、ヒートシンク4の突起部44の先端面441は、樹脂外郭10に固定された回路基板5上の電子部品51に、軸方向に精度よく対向することができる。これにより、相対位置のばらつきがあったとしても、電子部品51が発生する熱を放熱させるために必要な電子部品51と先端面441とが軸方向に対向する面積を確保できる。従って、電子部品51が発生する熱を電動機1の外部へと十分に放熱することができる。
【0133】
本実施形態では、ヒートシンク4の円板部42に環状突出部43(段差)が設けられ、この環状突出部43(段差)の外周面である径方向位置決め部430が、樹脂外郭10の内周面10Bと当接することで、ヒートシンク4が樹脂外郭10に対して径方向に位置決めされる。すなわち、円板部42に設けられた段差が径方向位置決め部430として機能する。
【0134】
また軸方向から見て突起部44の先端面441は、電子部品51と対向する第1の領域W1と、電子部品51とは対向しない第2の領域W2と、を有し、第2の領域W2は、第1の領域W1の周方向の少なくとも一方側に隣接する。これにより、樹脂外郭10にヒートシンク4を第2の締結部材Tによって組付ける際、寸法ばらつきによってヒートシンク4が周方向にずれた(ねじ受部Uと複数の貫通孔421とを軸方向に対向させるようにヒートシンク4を周方向に移動させた)としても、先端面441に電子部品51が対向する。したがって、寸法ばらつきがあったとしても電子部品51と先端面441とが軸方向に対向する面積を確保できる。したがって、電子部品51で発生する熱を安定的に放熱することができる。
【0135】
また突起部44の先端面441は、径方向に所定長さLR以上の幅Lを有する扇状である。これにより、周方向にヒートシンク4が移動したとしても軸方向から見て先端面441と電子部品51とが対向するようになるため、電子部品51で生じた熱を安定的に放熱することができる。
【0136】
実施形態において、所定長さLRは、距離L1から距離L2を引いた長さである。すなわち、実施形態での先端面441の径方向の幅Lは、L≧LR=L1-L2である。これにより、周方向にヒートシンク4が移動したとしても、軸方向から見て電子部品51の部品本体510の上面全体が先端面441と対向するようになるため、電子部品51で生じた熱を安定的に放熱することができる。
【0137】
また第3直線S3と第4直線S4とがなす第2角θ2が、第1直線S1と第2直線S2とがなす第1角θ1よりも大きい角度であるため、ねじ受部Uと複数の貫通孔421とが軸方向に対向するようにヒートシンク4を周方向に移動したとしても、突起部44の先端面441が電子部品51の部品本体510と対向する範囲内に収まるため、電子部品51で生じた熱を安定的に放熱することができる。
【0138】
また複数の貫通孔421のうち少なくとも一つは、軸方向からみて、第2の締結部材Tの軸部T1(雄ねじ部)と重ならない領域Vを有する。そのため、複数の貫通孔421またはねじ受部Uに寸法ばらつきが生じた場合でも、第2の締結部材Tの中心軸をずらして樹脂外郭10のねじ受部Uの中心軸に合わせた状態で、第2の締結部材Tの軸部T1(雄ねじ部)を貫通孔421に通すことができ、第2の締結部材Tによりヒートシンク4と樹脂外郭10とを容易に締結することができる。
【0139】
さらに複数の貫通孔421が周方向を長手方向とする長孔状であるため、複数の貫通孔421またはねじ受部Uに寸法ばらつきが生じた場合でも、第2の締結部材Tの中心軸を周方向にずらして樹脂外郭10のねじ受部Uの中心軸に合わせた状態で、第2の締結部材Tの軸部T1(雄ねじ部)を貫通孔421に通すことができ、第2の締結部材Tによりヒートシンク4を樹脂外郭10に対して締結することができる。このとき、ヒートシンク4の先端面441は周方向にずれるが、先端面441は周方向に沿って形成されているため、そのずれを吸収することができる。ずれを吸収するとは、先端面441が周方向に移動したとしても先端面441と電子部品51とが対向するという意味である。これにより、電子部品51で生じた熱を安定的に放熱することができる。
【0140】
また、ヒートシンク4の全体形状が略円板形状であるため、ヒートシンク4に形成される複数の貫通孔421は、径方向については比較的高い位置精度で形成される。そのため、上述したように、ヒートシンク4の円板部42に環状突出部43(段差)が設けられ、この環状突出部43(段差)の外周面(径方向位置決め部430)が樹脂外郭10の内周面10Bと当接することで、ヒートシンク4が樹脂外郭10に対して径方向に位置決めされるようにでき、ヒートシンク4の複数の貫通孔421を径方向に大型化せずとも、貫通孔421と樹脂外郭10のねじ受部Uとを軸方向に対向させることができる。
【0141】
また突起部44の先端面441が、第1の領域W1の周方向の少なくとも一方側に隣接する第2の領域W2を有しているため、設計等により電子部品51の配置が変更になったとしても再度ヒートシンク4の先端面441をその配置に基づいて設計しなおす必要がなくなる。つまり、第2の領域W2により電子部品51の配置変更に対応可能である。これにより、電子部品51の配置に応じて個々にヒートシンク4を製造する必要がなくなる(金型の数を少なくできる)ため、製造コストを抑制することができる。
【0142】
また、軸方向におけるフィン部45側への第1の防振部材12aの移動が、第1の規制部46の第1の規制面46Aによって規制されることで、軸方向で第1の防振部材12aの下面123aとフィン部45との間に所定の空隙H1が形成される。これにより、フィン部45が第1の防振部材12a覆われてフィン部45からの放熱が第1の防振部材12aによって遮られることを抑制し、放熱性を向上させることができる。さらに、上述の所定の空隙H1が形成されることで、第1防振部材12aの外周面に取り付けられた第1の取付金具G1とヒートシンク4のフィン部45とが接触するのを防止でき、これにより、いずれも金属で形成された第1の取付金具G1とヒートシンク4とが直接接触してしまうことによる破損を防止できる。
【0143】
また、本実施形態ではヒートシンク4の円板部42の厚さが3mm以上と厚いため、軸方向に垂直な断面上での貫通孔421が形成される位置の精度が低い場合に、締結部材Tの軸部T1を挿通することが困難となる恐れがあるが、上述したように突起部44の先端面441が第1の領域W1の周方向の少なくとも一方側に隣接する第2の領域W2を有することにより、ねじ受部Uと複数の貫通孔421とを軸方向に対向させるようにヒートシンク4を周方向に移動させることで、軸部T1を貫通孔421に挿通させることができる。
【0144】
また、本実施形態では、ヒートシンク4がアルミニウムまたはアルミニウム合金またはマグネシウム合金によって形成されているため、ヒートシンク4がダイカスト等により形成されることによって形状の寸法精度が低くなり、締結部材Tの軸部T1を挿通することが困難となる恐れがあるが、上述したように突起部44の先端面441が第1の領域W1の周方向の少なくとも一方側に隣接する第2の領域W2を有することにより、ねじ受部Uと複数の貫通孔421とを軸方向に対向させるようにヒートシンク4を周方向に移動させることで、軸部T1を貫通孔421に挿通させることができる。
【0145】
<変形例>
以上の各本実施形態では、金属部材11が樹脂外郭10の外周面10Aから開口端部101に沿って樹脂外郭10の内周面10Bに沿うように形成されたが、勿論これに限られず、ヒートシンク4に直接取り付けられてもよい。つまり、樹脂外郭10の外周面10Aに配置された金属部材11が軸方向に沿って延び、ヒートシンク4の外面部423に接触する構成であってもよい。また本実施形態において金属部材11は単数であったが、金属部材11は複数であってもよく、これにより、放熱性を向上させることができる。
【0146】
さらに本実施形態において、金属部材11は、樹脂外郭10に直接接触しているが、これに限らず、熱伝導性に優れた接着剤等を介して樹脂外郭10に熱的に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0147】
1…電動機
2…固定子
21…固定子鉄心
3…回転子
31…永久磁石部
32…外周側鉄心
33…絶縁部材
34…内周側鉄心
4…ヒートシンク
41…第1の軸受収容部
42…円板部
420…軸方向位置決め部
43…環状突出部(段差)
430…径方向位置決め部
44…突起部
441…先端面
5…回路基板
51…電子部品
52…伝熱部材
6…回転シャフト
10…樹脂外郭
101…開口端部
C…軸心
T…第2の締結部材(雄ねじ)
T1…軸部(雄ねじ部)
T2…頭部
U…受け部(雌ねじ部)
W1…第1の領域
W2…第2の領域
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12