(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】虹彩認証装置、虹彩認証方法、コンピュータプログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06V 40/18 20220101AFI20241106BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241106BHJP
G02B 7/36 20210101ALI20241106BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20241106BHJP
H04N 23/65 20230101ALI20241106BHJP
【FI】
G06V40/18
G06T7/00 510D
G02B7/36
H04N23/60 500
H04N23/65 100
(21)【出願番号】P 2023066471
(22)【出願日】2023-04-14
(62)【分割の表示】P 2021528688の分割
【原出願日】2019-06-25
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】蝶野 慶一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 正人
(72)【発明者】
【氏名】舟山 知里
(72)【発明者】
【氏名】戸泉 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】荻野 有加
(72)【発明者】
【氏名】赤司 竜一
(72)【発明者】
【氏名】山下部 諒
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-052317(JP,A)
【文献】特開2008-006149(JP,A)
【文献】特開2011-105058(JP,A)
【文献】特表2007-504562(JP,A)
【文献】特開2017-083962(JP,A)
【文献】特開2010-258552(JP,A)
【文献】国際公開第2009/016846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 40/18
G06T 7/00
G02B 7/36
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の虹彩のパターンに基づいて前記対象者の認証を行う虹彩認証装置であって、
焦点位置を変更しつつ
、前記対象者を連続して撮像し
、画像を逐次出力する撮像処理を行う第1撮像手段と、
前記第1撮像手段が前記撮像処理を完了する前に、前記撮像処理と並行して、前記画像が、焦点の合っている合焦画像であるか否かを判定する合焦判定を開始する判定手段と、
前記画像が焦点の合っている合焦画像であると判定された場合、前記画像を用いて虹彩認証を実行する認証手段と、
を備える虹彩認証装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記撮像処理において1枚の画像が撮像される度に、1枚の画像に対する前記合焦判定を行う
請求項1に記載の虹彩認証装置。
【請求項3】
前記合焦判定において前記画像が合焦画像であると判定されたことを条件に、撮像を停止するように前記第1撮像手段を制御する制御手段を備える
請求項1に記載の虹彩認証装置。
【請求項4】
前記第1撮像手段は、前記撮像処理において、その光軸上の第1位置から、前記光軸上の前記第1位置とは異なる第2位置まで前記焦点位置を変更した後、前記第2位置から前記第1位置まで前記焦点位置を変更する
請求項1に記載の虹彩認証装置。
【請求項5】
前記第1撮像手段は、前記対象者までの距離を検出し、前記検出された距離が所定距離となった場合に前記撮像処理を開始する
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の虹彩認証装置。
【請求項6】
前記虹彩認証が正常に終了した場合、前記第1撮像手段は、前記焦点位置を初期状態に変更する
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の虹彩認証装置。
【請求項7】
前記虹彩認証が正常に終了した場合、前記第1撮像手段は、所定の省電力モードとなる
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の虹彩認証装置。
【請求項8】
前記第1撮像手段よりも視野範囲の広い第2撮像手段を備え、
前記第1撮像手段は、複数の虹彩カメラを有し、
前記第1撮像手段は、前記第2撮像手段による撮像結果に基づき、前記複数の虹彩カメラから選択される一の虹彩カメラにより前記撮像処理を行う
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の虹彩認証装置。
【請求項9】
第1撮像手段を備える虹彩認証装置における対象者の虹彩のパターンに基づいて前記対象者の認証を行う虹彩認証方法であって、
前記第1撮像手段が、焦点位置を変更しつつ
、前記対象者を連続して撮像し
、画像を逐次出力する撮像処理を行い、
前記第1撮像手段が前記撮像処理を完了する前に、前記撮像処理と並行して、前記画像が、焦点の合っている合焦画像であるか否かを判定する合焦判定を開始し、
前記画像が焦点の合っている合焦画像であると判定された場合、前記画像を用いて虹彩認証を実行する
ことを特徴とする虹彩認証方法。
【請求項10】
コンピュータに、
第1撮像手段を備える虹彩認証装置における対象者の虹彩のパターンに基づいて前記対象者の認証を行う虹彩認証方法であって、
前記第1撮像手段が、焦点位置を変更しつつ
、前記対象者を連続して撮像し
、画像を逐次出力する撮像処理を行い、
前記第1撮像手段が前記撮像処理を完了する前に、前記撮像処理と並行して、前記画像が、焦点の合っている合焦画像であるか否かを判定する合焦判定を開始し、
前記画像が焦点の合っている合焦画像であると判定された場合、前記画像を用いて虹彩認証を実行する
虹彩認証方法を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
第1撮像手段を備える虹彩認証装置における対象者の虹彩のパターンに基づいて前記対象者の認証を行う虹彩認証方法であって、
前記第1撮像手段が、焦点位置を変更しつつ
、前記対象者を連続して撮像し
、画像を逐次出力する撮像処理を行い、
前記第1撮像手段が前記撮像処理を完了する前に、前記撮像処理と並行して、前記画像が、焦点の合っている合焦画像であるか否かを判定する合焦判定を開始し、
前記画像が焦点の合っている合焦画像であると判定された場合、前記画像を用いて虹彩認証を実行する
虹彩認証方法を実行させるコンピュータプログラムが記録された記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虹彩認証装置、虹彩認証方法、コンピュータプログラム及び記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置では、対象者の虹彩(即ち、被写体)とカメラとの間の距離が、撮像中に変化してしまうと、焦点の合っている画像を撮像することが難しいという技術的問題点がある。この問題点に対して、例えば、予め定められた複数の合焦位置各々に焦点が合うようにカメラのレンズを光軸方向に移動して複数の画像を撮像した後に、該複数の画像から焦点が合っていると推定される一の画像を選択して、虹彩認証を行う装置が提案されている(特許文献1参照)。その他関連する技術として、特許文献2及び3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-083962号公報
【文献】特開2010-258552号公報
【文献】特開2008-052317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、仮に1枚目に撮像された画像が焦点の合っている画像であったとしても、複数の画像が撮影し終わるまで虹彩認証が行われない。このため、特許文献1に記載の技術には、虹彩認証に比較的時間がかかってしまうという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、虹彩認証にかかる時間を短縮することができる虹彩認証装置、虹彩認証方法、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の虹彩認証装置の一態様は、対象者の虹彩のパターンに基づいて前記対象者の認証を行う虹彩認証装置であって、焦点位置を変更しつつ、前記対象者を連続して撮像し、画像を逐次出力する撮像処理を行う第1撮像手段と、前記第1撮像手段が前記撮像処理を完了する前に、前記撮像処理と並行して、前記画像が、焦点の合っている合焦画像であるか否かを判定する合焦判定を開始する判定手段と、前記画像が焦点の合っている合焦画像であると判定された場合、前記画像を用いて虹彩認証を実行する認証手段と、を備える。
【0007】
本発明の虹彩認証方法の一態様は、第1撮像手段を備える虹彩認証装置における対象者の虹彩のパターンに基づいて前記対象者の認証を行う虹彩認証方法であって、前記第1撮像手段が、焦点位置を変更しつつ、前記対象者を連続して撮像し、画像を逐次出力する撮像処理を行い、前記第1撮像手段が前記撮像処理を完了する前に、前記撮像処理と並行して、前記画像が、焦点の合っている合焦画像であるか否かを判定する合焦判定を開始し、前記画像が焦点の合っている合焦画像であると判定された場合、前記画像を用いて虹彩認証を実行する。
【0008】
本発明のコンピュータプログラムの一態様は、コンピュータに、第1撮像手段を備える虹彩認証装置における対象者の虹彩のパターンに基づいて前記対象者の認証を行う虹彩認証方法であって、前記第1撮像手段が、焦点位置を変更しつつ、前記対象者を連続して撮像し、画像を逐次出力する撮像処理を行い、前記第1撮像手段が前記撮像処理を完了する前に、前記撮像処理と並行して、前記画像が、焦点の合っている合焦画像であるか否かを判定する合焦判定を開始し、前記画像が焦点の合っている合焦画像であると判定された場合、前記画像を用いて虹彩認証を実行する虹彩認証方法を実行させる。
【0009】
本発明の記録媒体の一態様は、コンピュータに、第1撮像手段を備える虹彩認証装置における対象者の虹彩のパターンに基づいて前記対象者の認証を行う虹彩認証方法であって、前記第1撮像手段が、焦点位置を変更しつつ、前記対象者を連続して撮像し、画像を逐次出力する撮像処理を行い、前記第1撮像手段が前記撮像処理を完了する前に、前記撮像処理と並行して、前記画像が、焦点の合っている合焦画像であるか否かを判定する合焦判定を開始し、前記画像が焦点の合っている合焦画像であると判定された場合、前記画像を用いて虹彩認証を実行する虹彩認証方法を実行させるコンピュータプログラムが記録された記録媒体である。
【発明の効果】
【0010】
上述した虹彩認証装置、虹彩認証方法、コンピュータプログラム及び記録媒体のそれぞれの一の態様によれば、虹彩認証にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る虹彩認証装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る虹彩認証部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る虹彩認証部が備えるCPU内で実現される機能ブロックを示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る虹彩カメラの焦点位置の移動範囲の概念を示す概念図である。
【
図5】実施形態に係る虹彩認証装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】液体レンズに印加する印加電圧と撮像タイミングとの関係の一例を示す図である。
【
図7】実施形態の第3変形例に係る虹彩認証部が備えるCPU内で実現される機能ブロックを示すブロック図である。
【
図8】応用例に係る虹彩認証システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
虹彩認証装置、虹彩認証方法、コンピュータプログラム及び記録媒体に係る実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、虹彩認証では、対象者の虹彩のパターンに基づいて該対象者の認証が行われる。瞳孔を取り囲むドーナツ型の組織である虹彩は、非常に複雑、且つ、人それぞれ固有のパターンを有する。人の虹彩の直径は約1cmである。虹彩を撮像した画像を用いて虹彩認証を行うためには、例えば50μm/px程度となるような撮像倍率で虹彩を撮像することが望ましい。撮像時に、例えば反射運動等に起因して対象者(言い換えれば、被写体)が微動してしまうと、虹彩に焦点が合わなくなる可能性がある。なぜなら、撮像倍率が大きくなるほど、被写界深度が狭くなるからである。以下では、対象者が微動したとしても虹彩認証を行うことができる虹彩認証装置1を用いて、虹彩認証装置、虹彩認証方法、コンピュータプログラム及び記録媒体に係る実施形態を説明する。
【0013】
(構成)
実施形態に係る虹彩認証装置1の全体構成について
図1を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る虹彩認証装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0014】
図1において、虹彩認証装置1は、虹彩認証部10及び虹彩カメラ20を備えて構成されている。虹彩カメラ20は、虹彩認証の対象者が所定位置(例えば、足跡マークにより指定された位置、着座すべき位置、等)にある場合に、該対象者の目領域を好適に撮像可能なように設置されている。尚、虹彩カメラ20は、後述する付記における「撮像手段」の一例に相当する。
【0015】
虹彩認証部10のハードウェア構成について
図1を参照して説明する。
図2は、実施形態に係る虹彩認証部10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0016】
図2において、虹彩認証部10は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を備えている。CPU11、RAM12、ROM13、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16は、データバス17を介して相互に接続されている。
【0017】
CPU11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、CPU11は、RAM12、ROM13及び記憶装置14のうちの少なくとも一つが記憶しているコンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、CPU11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。CPU11は、ネットワークインタフェースを介して、虹彩認証部10の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、読み込んでもよい)。
【0018】
CPU11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行することで、RAM12、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を制御する。当該実施形態では特に、CPU11が読み込んだコンピュータプログラムを実行すると、CPU11内には、虹彩認証を行うための論理的な機能ブロックが実現される。つまり、CPU11は、虹彩認証を行うためのコントローラとして機能可能である。
【0019】
CPU11内には、
図3に示すように、論理的な機能ブロックとして、画像取得部111、合焦判定部112、認証部113及びカメラ制御部114が実現されている。画像取得部111、合焦判定部112、認証部113及びカメラ制御部114各々の動作については後述する。尚、合焦判定部112及びカメラ制御部114は、夫々、後述する付記における「判定手段」及び「制御手段」の一例に相当する。
【0020】
再び
図2に戻り、RAM12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶する。RAM12は、CPU11がコンピュータプログラムを実行している際にCPU11が一時的に使用するデータを一時的に記憶する。RAM12は、例えば、D-RAM(Dynamic RAM)であってもよい。
【0021】
ROM13は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを記憶する。ROM13は、その他に固定的なデータを記憶していてもよい。ROM13は、例えば、P-ROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0022】
記憶装置14は、虹彩認証装置1が長期的に保存するデータを記憶する。記憶装置14は、CPU11の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0023】
入力装置15は、虹彩認証装置1のユーザからの入力指示を受け取る装置である。入力装置15は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0024】
出力装置16は、虹彩認証装置1に関する情報を外部に対して出力する装置である。例えば、出力装置16は、虹彩認証装置1に関する情報を表示可能な表示装置であってもよい。
【0025】
(動作)
上述の如く構成された虹彩認証装置1の動作について説明する。先ず、虹彩カメラ20の動作について
図4を参照して説明する。
図4は、実施形態に係る虹彩カメラの焦点位置の移動範囲の概念を示す概念図である。
【0026】
図4に示すように、虹彩カメラ20は、その光軸上の位置P1と位置P2との間で、焦点位置を変更しつつ撮像を行う。より具体的には、虹彩カメラ20は、位置P1から位置P2に徐々に近づくように焦点位置を変更しながら撮像を行う。その後、虹彩カメラ20は、位置P2から位置P1に徐々に近づくように焦点位置を変更しながら撮像を行う。この動作は、繰り返し行われてもよいし、1回だけ行われてもよい。尚、虹彩カメラ20は、位置P2から位置P1に徐々に近づくように焦点位置を変更しながら撮像を行った後に、位置P1から位置P2に徐々に近づくように焦点位置を変更しながら撮像を行ってよいことは言うまでもない。
【0027】
本実施形態では特に、虹彩カメラ20は、撮像時に、例えば対象者Tと虹彩カメラ20との間の距離に基づいて、その焦点位置(即ち、ピント)の調整は行わない。なぜなら、当該虹彩認証装置1は、例えば反射運動等に起因して対象者Tが微動することを前提としているからである。つまり、ある瞬間での対象者Tと虹彩カメラ20との間の距離が検出されたとしても、次の瞬間に、対象者Tの微動により該距離が変わってしまう可能性があるからである。そこで、虹彩カメラ20は、対象者T(厳密には、対象者Tの虹彩)が存在するであろう領域(
図4では、位置P1と位置P2との間の領域)を、焦点位置を変更しつつ撮像を行うのである。
【0028】
虹彩カメラ20は、焦点位置を変更可能な光学系(例えば、レンズであり、以降、このような光学系を便宜上、“撮像レンズ”と称する)を有している。撮像レンズは、撮像レンズの光軸方向に沿って物理的に移動することで、焦点位置を変更可能なレンズを含んでいてもよい。或いは、撮像レンズは、撮像レンズの光軸方向に沿って移動することなく焦点位置を変更可能なレンズを含んでいてもよい。撮像レンズの光軸方向に沿って移動することなく焦点位置を変更可能なレンズとして、液体レンズ、液晶レンズ等が挙げられる。本実施形態では、虹彩カメラ20が撮像レンズとして液体レンズ210を有している例を用いて説明を進める。尚、液体レンズについては、既存の各種態様を適用可能であるので、その詳細な説明は省略する。虹彩カメラ20は、液体レンズ210に印加する印加電圧を変更することによって、上記のように、焦点位置を変更する。
【0029】
次に、虹彩認証装置1の動作について
図5のフローチャートを参照して説明する。
図5において、虹彩カメラ20は、上述したように焦点位置を変更しつつ(言い換えれば、焦点距離を移動させつつ)撮像を行う(ステップS111)。尚、虹彩カメラ20は、対象者Tと虹彩カメラ20との間の距離を検出し、該検出された距離が所定距離となったときに、撮像を開始してよい(即ち、ステップS111の処理が開始されてよい)。ステップS111の処理において撮像された画像は、虹彩認証部10に対して出力される(ステップS112)。
【0030】
ステップS112の処理と並行して、虹彩カメラ20は、焦点位置が、焦点位置を変更すべき領域の境界(
図4の位置P1及びP2に相当)に到達したか否かを判定する(ステップS113)。ステップS113の処理において、境界に到達していないと判定された場合(ステップS113:No)、ステップS111の処理が行われる。この場合、ステップS111の処理では、前回のステップS111の処理において焦点位置が移動された方向と同じ方向に焦点位置が移動される。具体的には、虹彩カメラ20は、前回のステップS111の処理において液体レンズ210に印加される印加電圧を高くして焦点位置を移動していた場合、液体レンズ210に印加される印加電圧をより高くすることにより焦点位置を移動する。その他の場合には(即ち、虹彩カメラ20が、前回のステップS111の処理において液体レンズ210に印加される印加電圧を低くして焦点位置を移動していた場合)、虹彩カメラ20は、液体レンズ210に印加される印加電圧をより低くすることにより焦点位置を移動する。
【0031】
ステップS113の処理において、境界に到達したと判定された場合(ステップS113:Yes)、虹彩カメラ20は、焦点位置が移動する方向を反転して(ステップS114)、ステップS111の処理が行われる。具体的には、虹彩カメラ20は、前回のステップS111の処理において、液体レンズ210に印加される印加電圧を高くすることにより焦点位置を移動していた場合、以後のステップS111の処理においては、虹彩カメラ20は、液体レンズ210に印加される印加電圧を低くするように変更する。その他の場合(即ち、虹彩カメラ20が、前回のステップS111の処理において、液体レンズ210に印加される印加電圧を低くすることにより焦点位置を移動していた場合)、虹彩カメラ20は、以後のステップS111の処理においては、液体レンズ210に印加される印加電圧を高くするように変更する。
【0032】
ステップS111からステップS114までの処理に相当する撮像処理を虹彩カメラ20が行っている期間中に(即ち、撮像処理が完了する前に)、虹彩認証部10は、
図5のステップS121からステップS131の処理を開始する。つまり、撮像処理を虹彩カメラ20が行っている期間中に、虹彩認証部10は、
図5のステップS121からステップS131の処理を行う。尚、後述するように、虹彩認証部10は、ステップS121からステップS122までの処理(以降、“単位処理”)を繰り返し複数回行う可能性がある。この場合、虹彩認証部10は、撮像処理を虹彩カメラ20が行っている期間中に、複数回の単位処理の全てを行ってもよい。或いは、虹彩認証部10は、撮像処理を虹彩カメラ20が行っている期間中に複数回の単位処理のうちの一部(例えば、少なくとも1回の単位処理)を行い、撮像処理が完了した後に、複数回の単位処理のうちの残りの部分を行ってもよい。
【0033】
具体的には、虹彩カメラ20から出力された画像を、画像取得部111を介して取得した合焦判定部112は、取得した画像のうち一の画像が、焦点(ピント)の合っている合焦画像であるか否か、即ち、一の画像のピントが合っているか否かを判定する合焦判定を行う(ステップS121)。尚、合焦判定には、既存の技術を適用可能であるので、その詳細な説明は省略する。
【0034】
続いて、合焦判定部112は、ステップS121の合焦判定において、ピントが合っていると判定されたか否かを判定する(ステップS122)。ステップS122の処理において、ピントが合っていないと判定された場合(ステップS122:No)、合焦判定部112は、合焦判定の対象となる画像を変更した上で、ステップS121の処理を行う。
【0035】
ステップS122の処理において、ピントが合っていると判定された場合(ステップS122:Yes)、合焦判定部112は、ピントが合っていると判定された画像を、認証部113に送信する(ステップS123)。認証部113は、合焦判定部112から送信された画像を用いて認証判定を行う(ステップS131)。尚、認証判定には、既存の技術を適用可能であるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
カメラ制御部114は、ステップS122の処理において、ピントが合っていると判定された場合に(ステップS122:Yes)、撮像を停止するように(言い換えれば、撮像処理を完了するように)虹彩カメラ20を制御してよい。また、カメラ制御部114は、ステップS131の認証判定において、認証が正常に終了した場合は、焦点位置が初期位置となるように虹彩カメラ20を制御してもよいし、或いは、所定の省電力モードとなるように虹彩カメラ20を制御してもよい。
【0037】
(技術的効果)
当該虹彩認証装置1では、虹彩カメラ20から逐次出力された画像について、順次合焦判定が行われる。つまり、虹彩認証装置1では、虹彩カメラ20から逐次画像が出力されている期間中に(即ち、撮像処理が完了する前に)、合焦判定が開始される。そして、合焦判定においてピントが合っていると判定された画像を用いて、認証判定が行われる。このため、焦点位置を所定の領域で変更しつつ複数の画像の全てを撮像し終わった後に合焦点判定及び認証判定が開始される(即ち、撮像処理が完了した後に合焦点判定及び認証判定が開始される)比較例と比べて、当該虹彩認証装置1は、虹彩認証にかかる時間を短縮することができる。
【0038】
加えて、虹彩カメラ20が液体レンズ210(或いは、光軸方向に沿って移動することなく焦点位置を変更可能なレンズを含む撮像レンズ)を備えている場合には、当該虹彩認証装置1では、虹彩カメラ20が、液体レンズ210に印加する印加電圧を変更することにより焦点位置を変更する。このため、例えば撮像レンズを物理的に移動して焦点位置を変更する比較例に比べて、虹彩認証にかかる時間を短縮することができるとともに、虹彩カメラ20の故障を抑制することができる。
【0039】
<第1変形例>
虹彩カメラ20が、液体レンズ210に印加する印加電圧を変更した後、液体レンズ210の状態が印加電圧に対応する状態に実際に変化するまでには、ある程度の時間Tllがかかる。虹彩カメラ20のフレームレートfpsで決まる各画像フレームの時間間隔Tfps(=1/fps)と上記Tllとの関係を考える。
【0040】
上記Tllが上記Tfpsよりも長い場合、印加電圧を連続的に変化させながら撮像を行っても、印加電圧から期待される焦点位置の画像を得ることを保証できない。そこで、液体レンズ210に印加する印加電圧を変更した時点から所定期間(
図6の“電圧固定期間”に相当)、印加電圧を維持するように虹彩カメラ20を構成することが望ましい。このように構成すれば、上記Tllを考慮した撮像ができる。尚、
図6の“Optical Power”は、焦点距離の逆数であり、焦点位置に相当する。
【0041】
上記に加えて、上記Tllが上記Tfpsよりも短い場合でも、各画像フレームの露光時間Texp(Texp≦Tfps)との関係も考えるのが望ましい。即ち、上記Tllが上記Texpよりも長い場合、印加電圧から期待される焦点位置の画像を得ることを保証できない。よって、上記Tllが上記Texpよりも長い場合、上記と同様に液体レンズ210に印加する印加電圧を変更した時点から所定期間、印加電圧を維持するように虹彩カメラ20を構成することが望ましい。ここで、虹彩カメラ20は、該所定期間(
図6の“電圧固定期間”に相当)に、複数回の撮影を行うように構成されてよい。即ち、虹彩カメラ20は、同一の印加電圧にて複数回の撮影を行ってもよい。
【0042】
さらに、上記に加えて、上記Tllを遅延としても考えるのが望ましい。即ち、印加電圧から期待される焦点位置の画像が遅延して取得されると考えればよい。例えば、遅延を考慮して、焦点位置を変更すべき領域の境界を少し広げておくことで、本来とりたい各境界位置で焦点のあった画像を確実に撮像できるようになる。
【0043】
<第2変形例>
合焦判定部112は、撮像処理(即ち、
図4におけるステップS111からステップS114までの処理)において虹彩カメラ20により新たに1枚の画像が撮像される度に、1枚の画像に対する合焦判定を行ってよい。尚、合焦判定部112が合焦判定の対象とする画像は、虹彩カメラ20が今回新たに撮像した画像に限定されない。
【0044】
<第3変形例>
図7に示すように、虹彩認証部10のCPU11内には、画像取得部111及び合焦判定部112が実現される一方で、画像取得部111及び合焦判定部112以外の機能ブロックが実現されなくてもよい。
【0045】
<応用例>
上述した虹彩認証装置1は、
図8に示す虹彩認証システム50の一部として採用されてよい。虹彩認証システム50は、対象者T(例えば、人間)の虹彩のパターンに基づいて対象者Tの認証を行う虹彩認証動作を実行する虹彩認証システムである。このような虹彩認証システム50は、例えば、空港における入出国手続きを自動化するためのシステム(いわゆる、ABC(Automated Border Control))の一部として採用されてもよい。この場合、虹彩認証システム50は、移動する対象者Tの認証を行うウォークスルータイプの虹彩認証システムであってもよい。
【0046】
虹彩認証システム50は、全体カメラ2と、複数の虹彩カメラ3と、制御装置6とを備える。上述した虹彩認証装置1の虹彩認証部10は、制御装置6の一部を構成してよい。上述した虹彩認証装置1の虹彩カメラ20は、複数の虹彩カメラ3の夫々を構成してもよい。全体カメラ2は、各虹彩カメラ3の視野範囲よりも広い視野範囲で対象者Tを撮像可能に構成されている。尚、「カメラの視野範囲」は、カメラが撮像可能な光景が含まれる範囲を意味しており、撮像範囲と称されてもよい。
【0047】
ここで、対象者Tは、虹彩認証システム50に向かって、地点P11、地点P12、地点P0の順に通過するものとする。尚、地点P0から地点P1までの距離は、距離D1である。地点P0から地点P2までの距離は、距離D1より短い距離D2である。全体カメラ2は、地点P11に位置する対象者Tを撮像する。制御装置6は、全体カメラ2により撮像された全体画像から、対象者Tのターゲット部位TP(つまり、目)が全体画像内のどこに位置しているかを特定する。そして、制御装置6は、複数の虹彩カメラ3のうち、地点P12に位置する対象者Tのターゲット部位TPを撮像する虹彩カメラ3を決定する。その後、制御装置6は、該決定された虹彩カメラ3により撮像された虹彩画像から得られた虹彩のパターンに基づいて対象者Tの認証を行う。このような虹彩認証システム50の詳細については、例えば特願2019-026937を参照されたし。
【0048】
<付記>
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
【0049】
(付記1)
付記1に記載の虹彩認証装置は、対象者の虹彩のパターンに基づいて前記対象者の認証を行う虹彩認証装置であって、焦点位置を変更しつつ撮像した画像を逐次出力する撮像処理を行う撮像手段と、前記撮像手段が前記撮像処理を完了する前に、前記画像が、焦点の合っている合焦画像であるか否かを判定する合焦判定を開始する判定手段と、を備えることを特徴とする虹彩認証装置である。
【0050】
(付記2)
付記2に記載の虹彩認証装置は、前記判定手段は、前記撮像処理において1枚の画像が撮像される度に、1枚の画像に対する前記合焦判定を行うことを特徴とする付記1に記載の虹彩認証装置である。
【0051】
(付記3)
付記3に記載の虹彩認証装置は、前記合焦判定において前記画像が合焦画像であると判定されたことを条件に、撮像を停止するように前記撮像手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする付記1又は2に記載の虹彩認証装置である。
【0052】
(付記4)
付記4に記載の虹彩認証装置は、前記撮像手段は、前記撮像処理において、その光軸上の第1位置から、前記光軸上の前記第1位置とは異なる第2位置まで前記焦点位置を変更した後、前記第2位置から前記第1位置まで前記焦点位置を変更することを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか一つに記載の虹彩認証装置である。
【0053】
(付記5)
付記5に記載の虹彩認証装置は、前記撮像手段は、撮像レンズとして液体レンズを有し、前記液体レンズに印加する印加電圧を変更することにより、前記焦点位置を変更することを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか一つに記載の虹彩認証装置である。
【0054】
(付記6)
付記6に記載の虹彩認証装置は、前記撮像手段は、前記印加電圧を変更した時点から所定期間、前記印加電圧を維持することを特徴とする付記5に記載の虹彩認証装置である。
【0055】
(付記7)
付記7に記載の虹彩認証装置は、前記撮像手段は、前記所定期間に複数枚の画像を撮像することを特徴とする付記6に記載の虹彩認証装置である。
【0056】
(付記8)
付記8に記載の虹彩認証装置は、前記撮像手段は、前記撮像処理において周期的に撮像を行い、前記所定期間は、その終期に、少なくとも1枚の画像が撮像されるように設定されていることを特徴とする付記6に記載の虹彩認証装置である。
【0057】
(付記9)
付記9に記載の虹彩認証方法は、撮像手段を備える虹彩認証装置における対象者の虹彩のパターンに基づいて前記対象者の認証を行う虹彩認証方法であって、前記撮像手段が、焦点位置を変更しつつ撮像した画像を逐次出力する撮像処理を行い、前記撮像手段が前記撮像処理を完了する前に、前記画像が、焦点の合っている合焦画像であるか否かを判定する合焦判定を開始することを特徴とする虹彩認証方法である。
【0058】
(付記10)
付記10に記載のコンピュータプログラムは、コンピュータに、付記9に記載の虹彩認証方法を実行させるコンピュータプログラムである。
【0059】
(付記11)
付記11に記載の記録媒体は、付記10に記載のコンピュータプログラムが記録された記録媒体である。
【0060】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う虹彩認証装置、虹彩認証方法、コンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…虹彩認証装置、10…虹彩認証部、20…虹彩カメラ、111…画像取得部、112…合焦判定部、113…認証部、114…カメラ制御部