(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】有底筒状体加工装置
(51)【国際特許分類】
B21D 51/26 20060101AFI20241106BHJP
B21D 43/18 20060101ALI20241106BHJP
B21D 43/00 20060101ALI20241106BHJP
B65G 47/91 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
B21D51/26 Q
B21D43/18 B
B21D43/00 E
B21D43/00 K
B65G47/91 A
(21)【出願番号】P 2023130105
(22)【出願日】2023-08-09
【審査請求日】2024-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 禎
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第3718373(JP,B2)
【文献】特公平8-32347(JP,B2)
【文献】特公平7-63788(JP,B2)
【文献】特開昭59-156526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/26
B21D 43/18
B21D 43/00
B65G 47/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状体を搬送経路に沿って搬送しながら当該有底筒状体の開口端に複数回のネック加工を施す有底筒状体加工装置であって、
複数のネック加工ユニットが搬送経路に沿って順に配置された多段階ネック加工部と、
前記多段階ネック加工部の下流側に設けられた下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を、前記多段階ネック加工部の上流側に設けられた上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベアと、を備え、
前記循環用コンベアは、搬送面を有し、当該搬送面が有底筒状体の開口端と対面するように配設されており、前記搬送面に有底筒状体の開口端を吸着して搬送するものであり、
前記ネック加工ユニットは、前記有底筒状体にネック加工を行う加工ターレットを備え、
前記加工ターレットは、複数のポケットが周方向に配置され、前記ポケットに有底筒状体を保持するとともに有底筒状体の底部を支持するボトムターレットと、前記加工ターレットの軸方向一方側に配置された、有底筒状体に対してネック加工を施す加工ツールを有するツールターレットとを有し、
前記ボトムターレットは、ネック加工を施すべき有底筒状体の筒軸方向高さに基づいて、位置調整機構によって軸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする有底筒状体加工装置。
【請求項2】
前記循環用コンベアは、前記搬送面に有底筒状体の開口端を吸引により吸着して搬送するものであり、
吸着のための負圧が-0.5~-11kPaの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の有底筒状体加工装置。
【請求項3】
前記多段階ネック加工部の下流側に設けられた下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を、前記循環用コンベアと対向する受け渡し位置まで移動させる受け渡しターレットを備え、
前記受け渡しターレットは、複数のポケットが周方向に配置されたものであり、
前記受け渡しターレットにおいて有底筒状体を保持した前記ポケットが前記循環用コンベアへの受け渡し位置にあるときに、有底筒状体と前記循環用コンベアの前記搬送面とのクリアランスが、15mm以内であることを特徴とする請求項1に記載の有底筒状体加工装置。
【請求項4】
前記循環用コンベアにおける搬送速度は、前記ネック加工ユニットの前記加工ターレットにおける搬送速度より小さいことを特徴とする請求項1に記載の有底筒状体加工装置。
【請求項5】
前記有底筒状体の搬送速度を減速させる減速ターレットを備え、
前記下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を前記循環用コンベアへ搬送するまでの間に備えられて有底筒状体を搬送するターレットのいずれかを前記減速ターレットとすることを特徴とする請求項1に記載の有底筒状体加工装置。
【請求項6】
前記受け渡しターレットは、有底筒状体の搬送速度を減速させる減速ターレットであり、
前記受け渡しターレットにおける搬送速度は、前記ネック加工ユニットの前記加工ターレットにおける搬送速度より小さく、前記循環用コンベアにおける搬送速度以上であることを特徴とする請求項3に記載の有底筒状体加工装置。
【請求項7】
前記循環用コンベアの搬送面に吸着して搬送される有底筒状体の開口端は、縮径された状態のものであることを特徴とする請求項1に記載の有底筒状体加工装置。
【請求項8】
前記多段階ネック加工部の各ネック加工ユニットは、水平な一方向に直列的に配置され、
前記循環用コンベアは、前記多段階ネック加工部の上方において前記一方向に沿って延び、
前記循環用コンベアの搬送経路の後端から前記上流側ネック加工ユニットに有底筒状体を下方に移動させて供給するシュートが備えられ、
前記シュートは、有底筒状体の移動を補助するエアー機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の有底筒状体加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底筒状体を搬送経路に沿って搬送しながら当該有底筒状体の開口端に複数回のネック加工を施す有底筒状体加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料缶等に用いられる缶は、円形状に打ち抜いた金属製の板材に対して絞り・しごき加工などを施して有底円筒形状の缶胴を成形し、さらに缶胴の開口端に所定のネッキング、トリミング、必要に応じてねじ部成形やカール部成形などの口部成形工程を行うことによって製造される。
いわゆるネッキングと称される絞り加工は、缶胴を構成する金属材料が過度のストレスを受けないように、通常、複数工程に分けて段階的に行われる。このような段階的に複数回のネック加工を行う装置としては、例えば加工ターレットを複数、直列的に連結し、缶胴を順次搬送しながら1つの加工ターレットにつき1段階のネック加工を行い、1巡で複数工程のネック加工を施す装置がある。
しかしながら、このような装置には、所望のネック加工数と同数の加工ターレットを設ける必要があるので、多数回のネック加工を要する缶胴を製造する場合には装置や設備が長大化、極大化してより多くの設置スペースが必要になる、という問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1には、複数の加工ターレットが直列的に配置され、一端側に缶胴が供給される供給位置が設けられるとともに他端側に缶胴が排出される排出位置が設けられた装置において、供給位置から搬送されて各加工ターレットにおいて1巡目の複数工程の加工が順に施され、排出位置から排出された半加工状態の缶胴を、循環コンベアによって供給位置まで戻して、再度、複数の加工ターレットに搬送されて2巡目の複数加工を施す装置が開示されている。
このような循環コンベアを利用した装置においては、水平方向に並設される加工ターレット数を減少させることができ、設置スペース当たり施すことができる加工数を増大させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上記の循環コンベアを利用した装置においては、循環コンベアはその担持および搬送のしやすさから缶胴の底部を吸着して搬送させる構造であるため、高さ(ハイト)が異なる飲料缶の製造に転用する、いわゆる型替えをする場合に、加工ターレットから循環コンベアへの移載が困難となる、という問題がある。
具体的には、各加工ターレットは缶胴の開口端を加工するものであるため缶胴の開口端が確実に加工に供されるように基準トリム面に位置合わせされて順に搬送されるところ、ある高さの缶胴のみに対応した装置であれば初期設計として循環コンベアの搬送面が缶胴の底部に近接して対向するような位置に循環コンベアを配設すればよいが、同じ装置を高さが異なる缶胴、例えば高さが低い缶胴のネッキングにそのまま転用すると、1巡目の加工が終了した缶胴が循環コンベアへの乗り換え位置において循環コンベアとの距離が大きく離間してしまうため、循環コンベアへの移載が困難となるという問題が生じる。このような場合には、循環コンベア自体を移動させて搬送面の位置をずらすことによって対応することになるが、循環コンベアの大きさ上、大掛かりな設定となるため現実的ではなく、また、設定行為自体が煩雑化してしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するものであって、その目的は、設置スペースの極大化を伴うことなく有底筒状体に対して多数回のネック加工を施すことができ、しかも、簡単な構成で高さの異なる有底筒状体について煩雑な設定行為なしに共通して使用することができる有底筒状体加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有底筒状体加工装置は、有底筒状体を搬送経路に沿って搬送しながら当該有底筒状体の開口端に複数回のネック加工を施す有底筒状体加工装置であって、
複数のネック加工ユニットが搬送経路に沿って順に配置された多段階ネック加工部と、
前記多段階ネック加工部の下流側に設けられた下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を、前記多段階ネック加工部の上流側に設けられた上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベアと、を備え、
前記循環用コンベアは、搬送面を有し、当該搬送面が有底筒状体の開口端と対面するように配設されており、前記搬送面に有底筒状体の開口端を吸着して搬送するものであり、
前記ネック加工ユニットは、前記有底筒状体にネック加工を行う加工ターレットを備え、
前記加工ターレットは、複数のポケットが周方向に配置され、前記ポケットに有底筒状体を保持するとともに有底筒状体の底部を支持するボトムターレットと、前記加工ターレットの軸方向一方側に配置された、有底筒状体に対してネック加工を施す加工ツールを有するツールターレットとを有し、
前記ボトムターレットは、ネック加工を施すべき有底筒状体の筒軸方向高さに基づいて、位置調整機構によって軸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の有底筒状体加工装置においては、前記循環用コンベアは、前記搬送面に有底筒状体の開口端を吸引により吸着して搬送するものであり、
吸着のための負圧が-0.5~-11kPaの範囲にある構成とすることができる。
【0009】
また、本発明の有底筒状体加工装置においては、前記多段階ネック加工部の下流側に設けられた下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を、前記循環用コンベアと対向する受け渡し位置まで移動させる受け渡しターレットを備え、
前記受け渡しターレットは、複数のポケットが周方向に配置されたものであり、
前記受け渡しターレットにおいて有底筒状体を保持した前記ポケットが前記循環用コンベアへの受け渡し位置にあるときに、有底筒状体と前記循環用コンベアの前記搬送面とのクリアランスが、15mm以内である構成とすることができる。
【0010】
また、本発明の有底筒状体加工装置においては、前記循環用コンベアにおける搬送速度は、前記ネック加工ユニットの前記加工ターレットにおける搬送速度より小さい構成とすることができる。
【0011】
また、本発明の有底筒状体加工装置においては、前記有底筒状体の搬送速度を減速させる減速ターレットを備え、
前記下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を前記循環用コンベアへ搬送するまでの間に備えられて有底筒状体を搬送するターレットのいずれかを前記減速ターレットとする構成とすることができる。
【0012】
また、本発明の有底筒状体加工装置においては、前記受け渡しターレットは、有底筒状体の搬送速度を減速させる減速ターレットであり、
前記受け渡しターレットにおける搬送速度は、前記ネック加工ユニットの前記加工ターレットにおける搬送速度より小さく、前記循環用コンベアにおける搬送速度以上である構成とすることができる。
【0013】
また、本発明の有底筒状体加工装置においては、前記循環用コンベアの搬送面に吸着して搬送される有底筒状体の開口端は、縮径された状態のものとされる。
【0014】
また、本発明の有底筒状体加工装置においては、前記多段階ネック加工部の各ネック加工ユニットは、水平な一方向に直列的に配置され、
前記循環用コンベアは、前記多段階ネック加工部の上方において前記一方向に沿って延び、
前記循環用コンベアの搬送経路の後端から前記上流側ネック加工ユニットに有底筒状体を下方に移動させて供給するシュートが備えられ、
前記シュートは、有底筒状体の移動を補助するエアー機構を備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有底筒状体加工装置によれば、下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベアを備えることにより、所期の一連の多数回のネック加工に対する加工ターレットの必要数を低減させることができるので、基本的に、設置スペースの極大化を伴うことなく有底筒状体に対して多数回のネック加工を施すことができる。しかも、循環用コンベアの搬送面が有底筒状体の開口端すなわちトリム側を吸着して搬送する構成であることにより、高さが相対的に異なる有底筒状体のネッキングに転用(型替え)したとしても、有底筒状体の開口端と循環用コンベアの搬送面との離間距離は変わらないので、循環用コンベアの型換えを要さない。高さが相対的に異なる有底筒状体のネッキングに転用(型替え)したときには、位置調整機構によって有底筒状体の底部を支持するボトムターレットを予めネック加工を施すべき有底筒状体の筒軸方向高さに基づいて適正な軸方向位置に配置されるよう調整することにより、有底筒状体の開口端の軸方向位置を共通化して搬送することができる。従って本発明の有底筒状体加工装置によれば、高さの異なる有底筒状体について煩雑な設定行為なしに共通して使用することができ、高い利便性が得られる。
また、循環用コンベアが有底筒状体の開口端を吸着して搬送する構成であることにより、有底筒状体の開口端と循環用コンベアの搬送面との離間距離を有底筒状体の筒軸方向高さにかかわらず一定の至近距離に設定することができるので、循環用コンベアへの有底筒状体の移載が有底筒状体の筒軸方向高さにかかわらず容易となり、有底筒状体の移載およびその後の搬送に高い安定性が得られる。なお、有底筒状体の底部を吸着して搬送する場合には、循環用コンベアへの移載時に別途の移載手段が必要となり、移載手段の種類によっては、有底筒状体に凹みが生じたり、ジャムが生じるおそれがある。
【0016】
また、本発明の有底筒状体加工装置によれば、循環用コンベアの吸着のための負圧が特定の範囲にあることにより、有底筒状体の凹みや潰れ等の変形を伴うことなく搬送面に対する吸着力が十分に得られて搬送中の位置ズレを防止することができるので、高い搬送安定性を得ることができる。
【0017】
また、本発明の有底筒状体加工装置によれば、有底筒状体を保持した受け渡しターレットのポケットが循環用コンベアへの受け渡し位置にあるときの、有底筒状体と循環用コンベアの搬送面とのクリアランスが所定範囲内にあることにより、循環用コンベアの吸着力のみによる有底筒状体の循環用コンベアへの移載が確実に実行されながら、吸着力による移載に伴う有底筒状体の開口端への衝撃を低減させることができるので、有底筒状体の開口端に変形等の損傷を生じることを防止することができる。
【0018】
また、本発明の有底筒状体加工装置によれば、循環用コンベアにおける搬送速度がネック加工ユニットの加工ターレットにおける搬送速度より小さい構成であることにより、2巡目の多段階ネック加工部に再供給するためのシュートに有底筒状体を投入する速度を小さくすることができ、その結果、シュート投入時に有底筒状体に凹み等の変形が生じることを抑止することができる。
【0019】
また、本発明の有底筒状体加工装置によれば、下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を循環用コンベアへ搬送するまでの間に備えられて有底筒状体を搬送するターレットのいずれかが減速ターレットであることにより、例えば受け渡しターレットが減速ターレットであって受け渡しターレットにおける搬送速度がネック加工ユニットの加工ターレットにおける搬送速度より小さく、かつ、循環用コンベアにおける搬送速度以上であることにより、高速化された加工ターレットから低速化された循環用コンベアに有底筒状体を弊害を伴うことなく確実に移載することができる。また、循環用コンベアが低速化されていることによって、2巡目の多段階ネック加工部に再供給するためのシュートに有底筒状体を投入する速度を小さくすることができ、その結果、シュート投入時に有底筒状体に凹み等の変形が生じることを抑止することができる。
【0020】
また、本発明の有底筒状体加工装置によれば、循環用コンベアの搬送面に吸着して搬送されるときの有底筒状体の開口端が、多段階ネック加工部の各加工ターレットにおいて1巡目の工程の加工が順に施されて縮径された状態のものとなる。従って、縮径により有底筒状体の剛性が向上されているので、循環用コンベアの吸着による有底筒状体の担持を確実に実現することができるとともに、循環用コンベアによる搬送中に有底筒状体に凹みや潰れ等の変形が生じることを抑止することができる。
【0021】
さらに、本発明の有底筒状体加工装置によれば、循環用コンベアの搬送経路の後端から上流側ネック加工ユニットに有底筒状体を下方に移動させて供給するシュートに有底筒状体の移動を補助するエアー機構が備えられていることにより、シュートにおける有底筒状体の引っ掛かり等による有底筒状体の搬送速度の意図しない減速を抑止することができ、有底筒状体の搬送速度の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有底筒状体加工装置の構成を正面側から示す説明図である。
【
図2】
図1の有底筒状体加工装置を裏面側から示す説明図である。
【
図3】
図1の有底筒状体加工装置における加工ターレットの構成の一例を示す説明図であって、(a)は高ハイト缶の加工時の状態を示し、(b)は低ハイト缶の加工時の状態を示す。
【
図4】
図1の有底筒状体加工装置における受け渡しターレットおよび循環用コンベアの構成の一例を示す説明図である。
【
図5】
図4のA-A線断面図であって、高ハイト缶の移載時の状態を示す。
【
図6】
図4のA-A線断面図であって、低ハイト缶の移載時の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る有底筒状体加工装置の構成をオペレータの立つ正面側(缶胴Cの底部B側)から見た状態を示す説明図であり、
図2は、
図1の有底筒状体加工装置を裏面側(缶胴Cの開口端T側)から見た状態を示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る有底筒状体加工装置100は、有底筒状体である缶胴Cを搬送経路に沿って巡回搬送させながら缶胴Cの開口端Tに複数回のネック加工を施すものである。有底筒状体加工装置100は、
図1および
図2に示すように、複数(
図1においては6つ)のネック加工ユニットが搬送経路に沿って順に配置された多段階ネック加工部110と、多段階ネック加工部110のうち搬送方向の下流側に設けられた下流側ネック加工ユニットから排出された缶胴Cを、多段階ネック加工部110のうち搬送方向の上流側に設けられた上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベア131を有する再供給機構130と、下流側ネック加工ユニットから排出された缶胴Cを循環用コンベア131に移載するための受け渡しターレット140と、下流側ネック加工ユニットと受け渡しターレット140との間に配設され、1巡目のネック加工が終了して循環用コンベア131に搬送すべき缶胴Cと、2巡目のネック加工が終了して排出機構170に搬送すべき缶胴Cとに振り分ける振り分けターレット150とを備える。
【0024】
ネック加工ユニットは、各々、缶胴Cにネック加工を行う加工ターレット120を備えている。加工ターレット120は、
図3に示されるように、外周部に缶胴Cを個別収容して搬送するポケットPが複数、周方向に略等間隔で設けられ、ポケットPに缶胴Cを保持するとともに缶胴Cの底部Bを筒軸方向底部側から支持するボトムツール125を有する回転可能なボトムターレット124と、ボトムターレット124の軸方向一方側(
図3において右側)に配置された、ポケットPに収容された缶胴Cに対してネック加工を施す加工ツール127を有する回転可能なツールターレット126(
図3参照)とを有する。
多段階ネック加工部110においては、隣接する2つの加工ターレット120間およびその前後において缶胴Cを搬送する搬送ターレット121とが交互に配置されている。加工ターレット120の各ポケットPに収容された缶胴Cは、搬送方向の下流側の搬送ターレット121に受け渡されるまでの間にツールターレット126の加工ツール127によって1段階のネック加工が施される。
加工ターレット120のポケットPは、交互に、1巡目に保持される第1のポケットおよび2巡目に保持される第2のポケットとされており、第1のポケットに保持された缶胴Cには1巡目のn段階目のネック加工が施されるとともに、第2のポケットに保持された缶胴Cには2巡目のn段階目(すなわち通しでn+x段階目)のネック加工がそれぞれ施される。nは、上流側から数えたネック加工ユニットの配置順、xはネック加工ユニットの総数である。
なお、
図3に係る有底筒状体加工装置は、ポケットPはボトムターレット124に備えられ、ボトムターレット124と共に軸方向に移動するものとして示したが、この構成に限定されるものではなく、ポケットPがボトムターレット124とは別体のターレットに備えられ、高さが相対的に異なる缶胴Cのネッキングに転用(型替え)する場合でもポケットPを備えるターレットは軸方向に移動不要の構成であってもよい。
【0025】
加工ターレット120において、ツールターレット126の各加工ツール127は、対応する加工ターレット120の各ポケットPに対向するように配置されており、ツールターレット126は、ボトムターレット124の回転と同期して回転移動する。加工ツール127は、例えば、缶胴Cの開口端Tの外周部に嵌合して縮径させる環状のアウターツール128と、缶胴Cの開口端Tに挿入される缶胴Cの開口端Tの外径よりも1~2mm程度小径のインナーツール129とを備えるものである。加工ターレット120においては、各ポケットPに対応するボトムツール125およびツールターレット126の加工ツール127のインナーツール129が、図示しない駆動機構により加工ターレット120の軸方向に往復動可能に構成され、ボトムツール125およびインナーツール129が接近方向に駆動され、さらにボトムツール125およびインナーツール129がアウターツール128の方向に駆動されることにより、インナーツール129とアウターツール128の間に缶胴Cの開口端Tが挿入されることで、缶胴Cの開口端Tに1段階のネック加工を行う構成とされている。
【0026】
搬送ターレット121は、各々、外周に缶胴Cを保持するポケットを複数有し、上流側に隣接配置されるネック加工ユニットによって加工された缶胴Cを受け取って下流側に隣接配置される加工ターレット120の同じ位相(第1または第2)のポケットPに供給する回転可能なターレットよりなる。
【0027】
本実施形態に係る有底筒状体加工装置100は、多段階ネック加工部110の各ネック加工ユニットの加工ターレット120が、各々の中心軸が水平方向(
図1において紙面に垂直な方向)に伸びる状態で互いに水平な一方向(
図1において左右方向)に並ぶように直列的に配置され、各搬送ターレット121も、これらの中心軸が加工ターレット120と同軸方向に伸びる状態で互いに水平な一方向に並ぶように直列的に配置されている。このように配置されることにより、鉛直方向(
図1において上下方向)に加工ターレット120同士が重なって配置されることが回避されるので、優れたメンテナンス性が得られる。
本実施形態の有底筒状体加工装置100においては、缶胴Cの搬送経路において、多段階ネック加工部110に供給されてから循環用コンベア131に移載されるまでの間、具体的には搬送ターレット121、加工ターレット120、振り分けターレット150および受け渡しターレット140においては、すべて缶胴Cの開口端Tの筒軸方向位置が同じ、すなわち開口端Tが各加工ターレット120の軸方向と垂直な基準トリム面Rに沿う状態で搬送される。また、缶胴Cは、搬送経路において、筒軸方向が加工ターレット120の軸方向と一致する状態で、基準トリム面Rのオペレータ側において缶胴Cの底部Bがオペレータ側に向けられた状態で搬送される。
【0028】
多段階ネック加工部110には、ネック加工を施すべき缶胴Cの筒軸方向高さに基づいて予めボトムターレット124を軸方向に移動可能な位置調整機構が備えられている。位置調整機構は、缶胴Cの開口端Tが基準トリム面Rに位置したときにボトムツール125が缶胴Cの底部Bを保持可能な位置にボトムターレット124を移動するものである。具体的には、
図3(a)に示されるように、缶胴Cが筒軸方向高さの高い缶胴C(高ハイト缶)である場合に対して、
図3(b)に示されるように缶胴Cがそれよりも高さの低い缶胴C(低ハイト缶)である場合に、軸方向のツールターレット126側(
図3において右側)に移動する調整を行えばよい(
図3の矢印参照)。
位置調整機構は、複数のボトムターレット124を個々に移動させるものであっても、同時に移動させるものであってもよい。また、位置調整機構におけるボトムターレット124を軸方向に移動するための具体的構成は、特に限定されるものではない。
なお、本実施形態に係る有底筒状体加工装置100においては、加工ターレット120間に介在される搬送ターレット121は、各ポケットに缶胴Cの胴部を半径内方向に吸引や磁力で吸着して保持する構成のものであるため、缶胴Cの筒軸方向高さに基づいて軸方向に移動する必要はないが、缶胴Cの重心位置に応じて移動させてもよい。
【0029】
振り分けターレット150は、複数のポケットPが周方向に配置され、各ポケットP内に吸引や磁力で吸着して缶胴Cを保持することができ、回転によって受け渡しターレット140または排出機構170に搬送することができる。
振り分けターレット150においては、周方向に配置され複数のポケットPの各々の吸着のON/OFFを制御することにより、すなわち、循環用コンベア131に搬送すべき缶胴Cについては受け渡しターレット140への受け渡し位置に搬送されたときに吸着をOFFにし、排出機構170に搬送すべき缶胴Cについては排出機構170への受け渡し位置に搬送されたときに吸着をOFFにすることにより、缶胴Cを容易に振り分けられる。
【0030】
受け渡しターレット140は、
図4に示すように、複数のポケットPが周方向に配置され、ポケットPは、下流側ネック加工ユニットから排出された缶胴Cを最下流に配置された搬送ターレット121および振り分けターレット150を介して受け取る受け取り位置と、循環用コンベア131と対向する移載に係る受け渡し位置とを回転によって通過するように構成されている。
【0031】
受け渡しターレット140は、缶胴Cの搬送速度を減速させる減速ターレットである。循環用コンベア131の搬送速度は、各加工ターレット120の搬送速度よりも相対的に小さく設定されており、受け渡しターレット140の搬送速度は、加工ターレット120の搬送速度および振り分けターレット150の搬送速度より小さく、循環用コンベア131の搬送速度以上とされることが好ましい。循環用コンベア131の搬送速度が加工ターレット120の搬送速度よりも相対的に小さいことにより、缶胴Cの搬送ピッチを狭くすることができる。
各部位の搬送速度比の一例を挙げると、例えば振り分けターレット150の周速:受け渡しターレット140の周速:循環用コンベア131の搬送速度が10:6:4となるように設定することができる。
受け渡しターレット140の具体的構成は、減速および受け渡しを実現することができれば、上記構成に制限されない。
【0032】
また、缶胴Cの搬送速度を減速させる方法としては、上記受け渡しターレット140を減速ターレットとする構成に限定されず、循環用コンベア131の搬送速度を加工ターレット120の搬送速度より小さくすることが可能であれば何れでもよく、加工ターレット120から排出された缶胴Cを循環用コンベア131へ搬送するまでの間に備えられた各ターレットのいずれか1つまたは複数を減速ターレットとする構成や、各加工ターレット120と受け渡しターレット140の搬送速度は同じとし、循環用コンベア120のみを各加工ターレット120および受け渡しターレット140の搬送速度よりも相対的に小さい構成としてもよい。
なお、供給機構160、多段階ネック加工部110、振り分けターレット150および排出機構170を構成する各ターレットは、それぞれ、適宜の駆動源により直接あるいは機械的に伝動機構を介して回転駆動され、これらの回転速度すなわちポケットの移動速度、及び、各ポケットの連動タイミングは、各ターレット間で缶胴Cが円滑に受け渡されるように調整可能に設計されている。
【0033】
循環用コンベア131は、多段階ネック加工部110の上方空間において当該多段階ネック加工部110の設置方向と同じ一方向(
図1において左右方向)に沿って延びる平行路131bを有し、担持された缶胴Cが多段階ネック加工部110において缶胴Cが搬送される方向(
図1において右方向)とは逆の方向(
図1において左方向)に移動するように配置されている。循環用コンベア131は、受け渡しターレット140から受け渡された缶胴Cを上方に移動させる上昇路131aと、循環方向に移動させる平行路131bとを有するように曲がり角を有して延びている。平行路131bおよび上昇路131aは、
図1に示されるような、それぞれ水平方向および垂直方向に直線的に延びた構成に限定されるものではなく、所定の角度を有して配置された構成や、曲線的に延びる構成であってもよい。また、平行路131bおよび上昇路131aの区別のない状態で曲線的に延びる構成であってもよい。循環用コンベア131が多段階ネック加工部110の上方空間において缶胴Cを再供給のために移動させる縦型の構成を有することにより、平面スペースの省スペース化を図ることができる。
図1および
図2において、133は循環用コンベア131を支持して搬送経路を維持する支持部材であり、134は支持部材133を多段階ネック加工部110の上方空間において支持する橋脚である。
【0034】
本実施形態に係る有底筒状体加工装置100においては、
図5および
図6に示されるように、循環用コンベア131は、基準トリム面Rよりも反オペレータ側に、その搬送面132が基準トリム面Rの反オペレータ側に至近距離で対向する状態に配設されている。
具体的には、循環用コンベア131は、搬送面132が缶胴Cの筒軸と垂直な平面に一致するように、かつ、受け渡しターレット140で受け渡し位置まで搬送されてきた缶胴Cの開口端Tと筒軸方向に対向するように、配設されている。なお、搬送面132は、缶胴Cの筒軸と完全に垂直な平面に一致するように配設されることに限定されるものではなく、受け渡し位置において缶胴Cの開口端Tと対面して所定の移載が可能であれば、缶胴Cの筒軸と垂直な平面と多少の角度をなすように配設されていてもよい。
【0035】
循環用コンベア131の搬送面132と缶胴Cの開口端Tとの離間距離、すなわち、受け渡しターレット140において缶胴Cを保持したポケットPが循環用コンベア131への受け渡し位置にあるときの、缶胴Cの開口端Tと循環用コンベア131の搬送面132との離間距離(クリアランス)は、15mm以内であることが好ましく、より好ましくは11mm以内、特に好ましくは3mm以内である。クリアランスが15mmを超える場合は、循環用コンベア131の吸引力のみによっては確実な缶胴Cの吸着が図られずに循環用コンベア131への移載不良が生じるおそれがある。また、缶胴Cの開口端Tと循環用コンベア131の搬送面132とのクリアランスは、1mm以上であることが好ましい。クリアランスが1mm以上であることにより、缶胴Cに多少のズレが生じたときにも缶胴Cと循環用コンベア131とに衝突等が生じるおそれがない。
循環用コンベア131の搬送面132と缶胴Cの開口端Tとのクリアランスは、缶胴Cが高ハイト缶である場合(
図5)と、低ハイト缶である場合(
図6)とで、変更する必要はなく、上記範囲内であればよい。
【0036】
循環用コンベア131は、缶胴Cの開口端Tを搬送面132に吸引により吸着して搬送するいわゆるバキュームコンベアである。缶胴Cがスチール製である場合は磁力で吸着するマグネットコンベアであってもよい。
【0037】
循環用コンベア131の吸引による吸着のための負圧は、缶胴Cを変形を伴うことなく吸着可能な大きさであればよく、具体的には、-0.5~-11kPaの範囲にあることが好ましい。吸着のための負圧が-0.5kPaよりも小さい場合は、搬送面に対する吸着力が十分に得られず、搬送中に缶胴Cの位置ズレ等を生じるおそれがある。一方、吸着のための負圧が-11kPaよりも大きい場合は、缶胴Cの凹みや缶潰れ等の変形が生じるおそれがある。なお、負圧が-XkPaよりも大きい/小さいとは、絶対値Xが大きい値/小さい値であることをいう。
【0038】
循環用コンベア131は例えばプラスチック材料から形成され、搬送面132にはラバーなどの摩擦性のクッション材が貼付されていることが好ましい。搬送面132に摩擦性のクッション材が貼付されていることにより、搬送面132に缶胴Cの開口端Tを吸着により担持したときの開口端Tへの衝撃が緩和されるので、缶胴Cが変形等の損傷を受け難くなる。また、摩擦係数の増加によって缶胴Cの搬送中の位置ズレを防止することができる。
【0039】
循環用コンベア131を備える再供給機構130には、循環用コンベア131の搬送経路の後端から上流側ネック加工ユニットに缶胴Cを滑落によって下方に移動させて供給するシュート135が備えられている。
シュート135は、筒軸方向高さの高い缶胴C(高ハイト缶)に適合した内部空間を有し、高ハイト缶であっても高ハイト缶よりも高さの低い缶胴C(低ハイト缶)であっても、開口端Tが基準トリム面Rに沿う状態で下方に移動される。シュート135には、缶胴Cの下方への移動を補助して、缶胴Cの流れが詰らないようにアシストするエアー機構(図示せず)が備えられている。
【0040】
上記の有底筒状体加工装置100においては、まず、位置調整機構によって予めボトムターレット124を適正な位置に移動する調整を行う。具体的には、ネック加工を施すべき缶胴Cの筒軸方向高さに基づいて、ボトムツール125が缶胴Cの底部Bを保持したときに缶胴Cの開口端Tが基準トリム面Rに位置するようにボトムターレット124を移動する。この状態において、以下のように複数回のネック加工を施される。まず、供給機構160から多段階ネック加工部110に供給された未加工の缶胴Cは、最上流の搬送ターレット121を介して上流側ネック加工ユニットに係る加工ターレット120の第1のポケットPに受け渡され、搬送方向下流側に隣接する搬送ターレット121に受け渡されるまでの間に対応するツールターレット126の加工ツール127によって1段階のネック加工が行われる。同様に搬送ターレット121を介して順次下流側に隣接するネック加工ユニットの加工ターレット120のそれぞれ第1のポケットPにおいて段階的に1巡目の複数回(本実施形態においては6回)のネック加工が行われ、開口端Tが縮径された半加工状態とされる。開口端Tが縮径された缶胴Cは、最下流の下流側ネック加工ユニットの排出位置まで移動すると、搬送ターレット121を介して振り分けターレット150に受け渡され、振り分けターレット150よって受け渡しターレット140への受け渡し位置で吸着がOFFにされることによって受け渡しターレット140のポケットPに受け渡される。受け渡しターレット140の回転に伴って缶胴Cを保持したポケットPが受け渡し位置まで減速された搬送速度で移動されると、受け渡しターレット140の吸着がOFFにされた状態で循環用コンベア131の吸引力が作用することにより、搬送面132に缶胴Cの開口端Tが吸着される。これにより、開口端Tが縮径された缶胴Cが受け渡しターレット140から循環用コンベア131に移載される。
循環用コンベア131に吸着された缶胴Cは、搬送経路に沿って上昇路131aおよび平行路131bを通って平行路131bの後端においてシュート135に投入される。シュート135内に投入された缶胴Cは、その内部空間において開口端Tが基準トリム面Rに沿うように下方に移動されて上流側ネック加工ユニットの加工ターレット120の第2のポケットPに再供給用ターレット群136および最上流側の搬送ターレット121を介して供給される。
上流側ネック加工ユニットの加工ターレット120の第2のポケットPに供給された缶胴Cは、搬送方向下流側に隣接する搬送ターレット121に受け渡されるまでの間に2巡目の1段階目(通しで7段階目)のネック加工が行われる。同様に搬送ターレット121を介して順次下流側に隣接するネック加工ユニットのそれぞれ第2のポケットPにおいて段階的に2巡目の複数回(本実施形態においては6回)のネック加工が行われ、最下流の下流側ネック加工ユニットの排出位置まで移動すると、最下流の搬送ターレット121および振り分けターレット150を介して排出機構170に受け渡され、必要に応じて他の加工が行われ、有底筒状体加工装置100の外部に搬出されて次工程に供される。
【0041】
以上、本発明の一実施形態に係る有底筒状体加工装置100について説明したが、本発明の有底筒状体加工装置は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記の実施形態においては、多段階ネック加工部においては6つのネック加工ユニットを有して1巡目も2巡目も全てのネック加工ユニットを通過して12回のネック加工をするものとして説明したが、循環用コンベアの搬送開始点と搬送終了点がそれぞれ多段階ネック加工部の下流側および上流側にそれぞれ設定されていれば、上記構成に限定されるものではない。例えば、1巡目は5つ目の加工ユニットまでを通過して循環用コンベアで1つ目の加工ユニットに再供給され、2巡目で6つの加工ユニット全てを通過する構成や、1巡目は1つ目の加工ユニットから開始されて6つ目の加工ユニットまで通過して循環用コンベアで2つ目の加工ユニットに再供給され、2巡目で5つの加工ユニットを通過する構成、その他の構成とすることができる。
また例えば、上記の実施形態においては、ネック加工ユニットにおいてすべてネック加工を行うものとして説明したが、ネック加工の代わりに、他の工程を配することができる。他の工程としては、例えば缶蓋を巻き締めるためのフランジを成形するフランジング加工や、開口端において耳などの不要部分を切り落とすトリミング工程、キャップを巻き締めるネジ部を成形するネジ加工工程、開口端を丸めるカール工程などが挙げられる。また、加工ターレット120において通過するのみで無加工で搬送される構成としてもよい。
さらに例えば、巡回数は2として構成したが、3以上の巡回数として装置を構成することもできる。
【0042】
上述の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
有底筒状体を搬送経路に沿って搬送しながら当該有底筒状体の開口端に複数回のネック加工を施す有底筒状体加工装置であって、
複数のネック加工ユニットが搬送経路に沿って順に配置された多段階ネック加工部と、
前記多段階ネック加工部の下流側に設けられた下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を、前記多段階ネック加工部の上流側に設けられた上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベアと、を備え、
前記循環用コンベアは、搬送面を有し、当該搬送面が有底筒状体の開口端と対面するように配設されており、前記搬送面に有底筒状体の開口端を吸着して搬送するものであり、
前記ネック加工ユニットは、前記有底筒状体にネック加工を行う加工ターレットを備え、
前記加工ターレットは、複数のポケットが周方向に配置され、前記ポケットに有底筒状体を保持するとともに有底筒状体の底部を支持するボトムターレットと、前記加工ターレットの軸方向一方側に配置された、有底筒状体に対してネック加工を施す加工ツールを有するツールターレットとを有し、
前記ボトムターレットは、ネック加工を施すべき有底筒状体の筒軸方向高さに基づいて、位置調整機構によって軸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする有底筒状体加工装置。
(付記2)
前記循環用コンベアは、前記搬送面に有底筒状体の開口端を吸引により吸着して搬送するものであり、
吸着のための負圧が-0.5~-11kPaの範囲にあることを特徴とする付記1に記載の有底筒状体加工装置。
(付記3)
前記循環用コンベアにおける搬送速度は、前記ネック加工ユニットの前記加工ターレットにおける搬送速度より小さいことを特徴とする付記1または付記2に記載の有底筒状体加工装置。
(付記4)
前記有底筒状体の搬送速度を減速させる減速ターレットを備え、
前記下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を前記循環用コンベアへ搬送するまでの間に備えられて有底筒状体を搬送するターレットのいずれかを前記減速ターレットとすることを特徴とする付記1乃至付記3のいずれかに記載の有底筒状体加工装置。
(付記5)
前記多段階ネック加工部の下流側に設けられた下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を、前記循環用コンベアと対向する受け渡し位置まで移動させる受け渡しターレットを備え、
前記受け渡しターレットは、複数のポケットが周方向に配置されたものであり、
前記受け渡しターレットにおいて有底筒状体を保持した前記ポケットが前記循環用コンベアへの受け渡し位置にあるときに、有底筒状体と前記循環用コンベアの前記搬送面とのクリアランスが、15mm以内であることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれかに記載の有底筒状体加工装置。
(付記6)
前記受け渡しターレットは、有底筒状体の搬送速度を減速させる減速ターレットであり、
前記受け渡しターレットにおける搬送速度は、前記ネック加工ユニットの前記加工ターレットにおける搬送速度より小さく、前記循環用コンベアにおける搬送速度以上であることを特徴とする付記5に記載の有底筒状体加工装置。
(付記7)
前記循環用コンベアの搬送面に吸着して搬送される有底筒状体の開口端は、縮径された状態のものであることを特徴とする付記1乃至付記6のいずれかに記載の有底筒状体加工装置。
(付記8)
前記多段階ネック加工部の各ネック加工ユニットは、水平な一方向に直列的に配置され、
前記循環用コンベアは、前記多段階ネック加工部の上方において前記一方向に沿って延び、
前記循環用コンベアの搬送経路の後端から前記上流側ネック加工ユニットに有底筒状体を下方に移動させて供給するシュートが備えられ、
前記シュートは、有底筒状体の移動を補助するエアー機構を備えることを特徴とする付記1乃至付記7のいずれかに記載の有底筒状体加工装置。
【符号の説明】
【0043】
100 ・・・ 有底筒状体加工装置
110 ・・・ 多段階ネック加工部
120 ・・・ 加工ターレット
121 ・・・ 搬送ターレット
124 ・・・ ボトムターレット
125 ・・・ ボトムツール
126 ・・・ ツールターレット
127 ・・・ 加工ツール
128 ・・・ アウターツール
129 ・・・ インナーツール
130 ・・・ 再供給機構
131 ・・・ 循環用コンベア
131a・・・ 上昇路
131b・・・ 平行路
132 ・・・ 搬送面
133 ・・・ 支持部材
134 ・・・ 橋脚
135 ・・・ シュート
136 ・・・ 再供給用ターレット群
140 ・・・ 受け渡しターレット
150 ・・・ 振り分けターレット
160 ・・・ 供給機構
170 ・・・ 排出機構
B ・・・ 底部
C ・・・ 缶胴
P ・・・ ポケット
T ・・・ 開口端
【要約】
【課題】設置スペースの極大化を伴うことなく有底筒状体に対して多数回のネック加工を施すことができ、しかも、簡単な構成で高さの異なる有底筒状体について煩雑な設定行為なしに共通して使用することができる有底筒状体加工装置を提供すること。
【解決手段】有底筒状体加工装置100は、複数のネック加工ユニットが搬送経路に沿って順に配置された多段階ネック加工部110と、下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体Cを上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベア131とを備え、循環用コンベアは、搬送面132に有底筒状体の開口端Tを吸着して搬送するものであり、ネック加工ユニットを構成する加工ターレット120の有底筒状体の底部を支持するボトムターレット124は、ネック加工を施すべき有底筒状体の筒軸方向高さに基づいて、位置調整機構によって軸方向に移動可能に構成されている。
【選択図】
図3