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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】移動体認証システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/00 20060101AFI20241106BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20241106BHJP
   H04N 23/695 20230101ALI20241106BHJP
   H04N 23/66 20230101ALI20241106BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20241106BHJP
   H04N 23/90 20230101ALI20241106BHJP
【FI】
G08B25/00 510M
G08B25/04 K
H04N23/695
H04N23/66
G03B15/00 Q
H04N23/90
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023137913
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 勇太
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 一史
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 崇博
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-213369(JP,A)
【文献】特許第7223303(JP,B2)
【文献】特開2015-185896(JP,A)
【文献】特開2023-081691(JP,A)
【文献】特開2015-155345(JP,A)
【文献】特開2012-248967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0374387(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
H04N 23/695
H04N 23/66
G03B 15/00
H04N 23/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定エリアにおいて移動体を認証する移動体認証システムであって、
前記所定エリアに存在する複数のカメラと通信可能な1又は複数のプロセッサと、
前記移動体の認証用画像、及び前記複数のカメラの各々の位置と向きを少なくとも示すカメラ情報を格納する1又は複数の記憶装置と、
を含み、
前記移動体の認証しやすさは、少なくとも、前記移動体とカメラとの間の距離に依存し、前記距離が短くなるほど増加し、
前記移動体を認証する要求を受けた場合、前記1又は複数のプロセッサは、
前記移動体の現在位置を示す位置情報を取得し、
少なくとも前記位置情報と前記カメラ情報に基づいて、前記複数のカメラの中から前記認証しやすさが所定レベル以上である対象カメラを選択し、
前記対象カメラによって撮影される画像と前記認証用画像との比較に基づいて前記移動体の認証を行う
ように構成された
移動体認証システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体認証システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、前記位置情報と前記カメラ情報に基づいて、前記複数のカメラのうち前記移動体に最も近いカメラを前記対象カメラとして選択する、あるいは、前記複数のカメラの中から前記認証しやすさが最も高い1台を前記対象カメラとして選択する
移動体認証システム。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体認証システムであって、
前記複数のカメラは、カメラ位置及びカメラ向きの少なくとも一方が可変である可変カメラを含み、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記可変カメラに関する前記認証しやすさが増加するように前記可変カメラの前記カメラ位置及び前記カメラ向きの少なくとも一方を変え、
前記可変カメラの前記カメラ位置及び前記カメラ向きの少なくとも一方の変化を考慮して、前記認証しやすさが前記所定レベル以上である前記対象カメラを選択する
移動体認証システム。
【請求項4】
請求項1に記載の移動体認証システムであって、
前記移動体は人間であり、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、
前記人間に対して所定の動作を行うよう要求する
移動体認証システム。
【請求項5】
請求項1に記載の移動体認証システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記位置情報と前記カメラ情報に基づいて、前記画像の中で前記移動体が映っていると想定される部分領域画像を絞り込み、
前記部分領域画像と前記認証用画像との比較に基づいて前記移動体の認証を行う
移動体認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体を認証する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、見守りシステムを開示している。見守りシステムは、見守り対象者の顔認識データとカメラで顔認識した情報とに基づいて、見守り対象者を検知し、一定時間の動画を録画する。そして、見守りシステムは、見守り人の通信端末の電子メールアドレス宛に当該動画にアクセスするためのURL情報を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-111506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定エリアにおいて移動体を認証することを考える。所定エリアに複数のカメラが存在する場合、従来、複数のカメラによって撮影されたカメラ画像のそれぞれにおいて移動体の認証が行われる。認証対象の移動体を含まないカメラ画像においても認証が行われる場合、処理負荷が増大してしまう。
【0005】
本開示の1つの目的は、所定エリアにおいて移動体を認証する際の処理負荷を軽減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの観点は、所定エリアにおいて移動体を認証する移動体認証システムに関連する。移動体認証システムは、所定エリアに存在する複数のカメラと通信可能な1又は複数のプロセッサと、移動体の認証用画像、及び複数のカメラの各々の位置と向きを少なくとも示すカメラ情報を格納する1又は複数の記憶装置と、を含んでいる。移動体の認証しやすさは、少なくとも、移動体とカメラとの間の距離に依存し、距離が短くなるほど増加する。移動体を認証する要求を受けた場合、1又は複数のプロセッサは、移動体の現在位置を示す位置情報を取得する。また、1又は複数のプロセッサは、少なくとも位置情報とカメラ情報に基づいて、複数のカメラの中から認証しやすさが所定レベル以上である対象カメラを選択する。更に、1又は複数のプロセッサは、対象カメラによって撮影される画像と認証用画像との比較に基づいて移動体の認証を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、移動体を認証する要求を受けた場合、移動体の認証しやすさが所定レベル以上であるカメラが対象カメラとして選択される。そして、対象カメラによって撮影される画像と認証用画像との比較に基づいて移動体が認証される。これにより、より少ないカメラで移動体を認証することができるため、処理負荷が軽減される。更に、不必要に多い画像が認証に用いられないため、認証対象の移動体とは無関係な人に対して不必要な認証処理が行われる機会が減少する。このことは、プライバシー確保の観点から好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る移動体認証システムの概要を説明するための図である。
図2】実施の形態1に係る対象カメラ選択処理の具体例を示す説明図である。
図3】実施の形態1に係る認識しやすさ改善処理の具体例を示す説明図である。
図4】実施の形態1に係る移動体認証処理の例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2に係る移動体認証処理の具体例を示す説明図である。
図6】実施の形態3に係る移動体認証処理の具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態に係る移動体認証システムについて説明する。また、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0010】
1.実施の形態1
1-1.移動体認証システムの概要
図1は、実施の形態1に係る移動体認証システム1の概要を説明するための図である。移動体認証システム1は、所定エリア2において移動体4を認証する。認証対象である移動体4(移動体4A、移動体4B等)としては、人間、車両、動物等が例示される。例えば、移動体認証システム1が見守りサービスに適用される場合、認証対象である移動体4は、見守り対象である人間(例:子供)である。所定エリア2としては、地域、街、建物等が例示される。移動体4を認証する要求は、その移動体4自身から出されてもよいし、その移動体4(例:子供)と関係を有する人物(例:親)から出されてもよい。移動体4自身から認証要求が出される場合、例えば、移動体4が所持する携帯端末5(携帯端末5A、携帯端末5B等)から操作が行われる。
【0011】
移動体認証システム1は、所定エリア2に存在する複数のカメラ3(カメラ3A、カメラ3B、カメラ3C等)と、管理サーバ10とを備えている。
【0012】
管理サーバ10は、1又は複数のプロセッサ20(以降、単にプロセッサ20と称す)と、1又は複数の記憶装置30(以下、単に記憶装置30と称す)と、通信装置40とを含んでいる。プロセッサ20は、各種処理を実行する。プロセッサ20としては、CPU(Central Processing Unit)が例示される。記憶装置30は、プロセッサ20による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置30としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。通信装置40は、少なくとも、所定エリア2に存在する複数のカメラ3と移動体4が所持する携帯端末5と通信可能である。
【0013】
移動体認証プログラム(不図示)は、プロセッサ20によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ20が移動体認証プログラムを実行することにより、管理サーバ10の各種機能が実現されてもよい。移動体認証プログラムは、記憶装置30に格納される。あるいは、移動体認証プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録されてもよい。
【0014】
記憶装置30に格納される各種情報は、カメラ情報31と、位置情報32と、認証用画像33とを含んでいる。
【0015】
カメラ情報31は、所定エリア2に存在する複数のカメラ3の各々の位置と向きの情報を含んでいる。あるカメラ3の位置及び向きが固定されている場合、その情報は既知情報として予め与えられる。あるカメラ3の位置及び向きの少なくとも一方が可変である場合、その情報は、通信装置40を介した当該カメラ3との通信により得られる。また、カメラ情報31は、複数のカメラ3のそれぞれによって撮影される映像(画像)を蓄積した映像データベースDBを含んでいる。各カメラ3によって撮影される映像(画像)は、通信装置40を介した当該カメラ3との通信により得られる。
【0016】
位置情報32は、認証対象の移動体4の現在位置を示す。移動体4の現在位置は、例えば、移動体4が所持する携帯端末5のGPS機能によって取得される。他の例として、無線LANの電波に基づいて、移動体4の現在位置が推定されてもよい。移動体4の位置情報32は、通信装置40を介した当該カメラ3との通信により得られる。移動体4の位置情報32は、移動体4の現在位置の予測結果を示していてもよい。
【0017】
認証用画像33は、移動体4を認証するために予め登録された移動体4の画像である。例えば、認証対象の移動体4が人である場合、認証用画像33は、その人の顔であってもよい。他の例として、認証用画像33は、認証対象の移動体4の全体画像であってもよい。このような認証用画像33は、移動体4自身、あるいは、移動体4の関係のある人物によって予め登録される。
【0018】
本実施の形態に係るプロセッサ20(管理サーバ10)による移動体認証処理の概要は、次の通りである。移動体4を認証する要求を受けた場合、プロセッサ20は、複数のカメラ3のうちその移動体4を認証するために用いる「対象カメラ」を選択する。このとき、プロセッサ20は、移動体4の「認証しやすさ」に基づいて、対象カメラを選択する。移動体4の認証しやすさは、少なくとも、その移動体4とカメラ3との間の距離に依存する。移動体4とカメラ3との間の距離が短くなるほど、その移動体4の認証しやすさは増加する。移動体4の認証しやすさの詳細については後述される。プロセッサ20は、上記の位置情報32とカメラ情報31を取得する。更に、プロセッサ20は、少なくとも位置情報32とカメラ情報31に基づいて、複数のカメラ3の中から認証しやすさが所定レベル以上である対象カメラを選択する。そして、プロセッサ20は、対象カメラによって撮影される画像と移動体4の認証用画像33との比較に基づいて、その移動体4の認証を行う。
【0019】
管理情報34は、移動体認証処理の管理に用いられる情報である。例えば、管理情報34は、移動体4とその移動体4の認証に用いられる対象カメラとの対応関係を示している。管理情報34も記憶装置30に格納される。図1に示す例では、移動体4Aの認証に用いる対象カメラとして、カメラ3Aが選択され、移動体4Bの認証に用いる対象カメラとして、カメラ3Cが選択される。
【0020】
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、移動体4を認証する要求を受けた場合、移動体4の認証しやすさが所定レベル以上であるカメラ3が「対象カメラ」として選択される。そして、対象カメラによって撮影される画像と認証用画像33との比較に基づいて移動体4が認証される。これにより、より少ないカメラで移動体4を認証することができるため、処理負荷が軽減される。更に、不必要に多い画像が認証に用いられないため、認証対象の移動体4とは無関係な人に対して不必要な認証処理が行われる機会が減少する。このことは、プライバシー確保の観点から好ましい。
【0021】
1-2.対象カメラの選択例
管理サーバ10は、移動体4の認証しやすさに基づいて、複数のカメラ3の中から対象カメラを選択する。移動体4の認証しやすさは、少なくとも、その移動体4とカメラ3との間の距離に依存する。移動体4とカメラ3との間の距離が短くなるほど、その移動体4の認証しやすさは増加する。よって、管理サーバ10は、複数のカメラ3のうち移動体4に最も近い一つを対象カメラとして選択してもよい。より詳細には、管理サーバ10は、カメラ情報31と移動体4の位置情報32に基づいて、移動体4と各カメラ3との間の距離を算出する。そして、管理サーバ10は、距離が最も小さいカメラ3を対象カメラとして選択してもよい。
【0022】
認証対象の移動体4とカメラ3との間の距離に加えて、他のパラメータが考慮されてもよい。
【0023】
図2は、対象カメラの選択の具体例を説明するための図である。図2で示される例では、移動体4の認証しやすさは、「評価スコア」で表される。評価スコアは、移動体4の認証しやすさに影響を与える各種パラメータに基づいて算出される。移動体4の認証しやすさに影響を与える各種パラメータは、例えば、第1パラメータP1、第2パラメータP2、及び第3パラメータP3を含んでいる。第1パラメータP1は、認証対象の移動体4とカメラ3との間の距離である。第2パラメータP2は、移動体4の位置とカメラ3の向きの関係であり、カメラ3の画角内に認証対象の移動体4が存在するかどうかを示す。第3パラメータP3は、カメラ3が認証対象の移動体4を撮影したときの撮影状況を示す。
【0024】
各パラメータの評価値の算出例について説明する。第1パラメータP1の算出において、管理サーバ10は、カメラ情報31に含まれる複数のカメラ3の各々の位置の情報と移動体4の位置情報32と基づいて、移動体4とカメラ3との間の距離を算出する。そして、管理サーバ10は、距離が短くなるほど第1パラメータP1を高く設定する。例えば、管理サーバ10は、当該距離が所定距離未満か否かを判定する。当該距離が所定距離未満の場合、すなわち、当該距離が短い場合、管理サーバ10は、第1パラメータP1の評価値を高く設定する。一方、当該距離が所定距離以上の場合、すなわち、当該距離が長い場合、管理サーバ10は、第1パラメータP1の評価値を低く設定する。尚、閾値は複数段階設定されていてもよい。また、第1パラメータP1は距離に応じて連続的に変化してもよい。
【0025】
第2パラメータP2の算出において、管理サーバ10は、カメラ情報31に含まれる複数のカメラ3の各々の向きの情報と移動体4の位置情報32と基づいて、カメラ3毎の画角内に移動体4が存在するか否かを判定する。そして、管理サーバ10は、移動体4が画角内に存在すると判定されたカメラ3に対応する第2パラメータP2の値を高く設定する。一方、管理サーバ10は、その移動体4が画角外に存在すると判定されたカメラ3に対応する第2パラメータP2の値を低く設定する。つまり、第2パラメータP2の値は、認証対象の移動体4が画角内に存在する場合に高くなり、その移動体4が画角外に存在する場合に低くなる。尚、管理サーバ10は、カメラ3の画角内に存在する移動体4の位置に応じて第2パラメータP2の値を設定してもよい。例えば、管理サーバ10は、カメラ3の画角内の移動体4の位置が水平画角の中心に近いほど、第2パラメータP2の値を高く設定してもよい。尚、移動体4が画角外に存在するカメラ3は対象カメラとして選択されないため、その評価値は例えば負値に設定されてもよい。また、後述されるように、カメラ3の位置あるいは向きが可変である場合、移動体4が画角内に入るようにカメラ3の位置あるいは向きを変更してもよい。
【0026】
第3パラメータP3の算出において、管理サーバ10は、カメラ情報31の映像データベースDBに含まれるカメラ3毎の画像に基づいて、カメラ3毎の撮影状況を認識する。撮影状況は、照度、逆光か否か、天候、画像の中の物体密度のうち少なくとも1つを含んでいる。そして、管理サーバ10は、カメラ3毎に認識された撮影状況が撮影可能条件を満たすか否かを判定する。撮影状況が撮影可能条件を満たすと判定された場合、管理サーバ10は、当該撮影可能条件を満たすカメラ3に対応する第3パラメータP3の評価値を高く設定する。一方、撮影状況が撮影可能条件を満たさないと判定された場合、管理サーバ10は、当該撮影可能条件を満たさないカメラ3に対応する第3パラメータP3の評価値を低く設定する。つまり、第3パラメータP3の値は、撮影状況が良いほど高く、悪いほど低くなる。
【0027】
撮影可能条件は、例えば、画像の明るさが所定範囲内であること、画像の白飛び度合いが小さいこと、建物や人物等を検出できる程度の視認性を有すること、画像の中の物体密度が閾値以下であること、のうち少なくとも一つを考慮して設定される。
【0028】
パラメータ毎の評価値に基づいた評価スコアの算出例について説明する。第1の算出方法では、評価値、パラメータ毎の評価値の総和である(図2(A)参照)。
【0029】
第2の算出方法では、パラメータ毎の重要度が予め設定され、考慮される(図2(B)参照)。重要度は、例えば、「高」、「中」、及び「低」のいずれかで表される。図2(B)に示す例では、第1パラメータP1及び第2パラメータP2の重要度は「高」であり、第3パラメータP3の重要度は「中」である。そして、パラメータ毎に評価値と重要度の積が算出され、パラメータ毎の積の総和が評価スコアとして算出される。あるいは、パラメータ毎の評価値の加重平均が評価スコアとして算出されてもよい。第2の算出方法によれば、パラメータ毎の重要度が考慮されるため、評価スコアを適切に算出することができる。
【0030】
評価スコアが高いほど移動体4の認証しやすさは増加し、評価スコアが低いほど移動体4の認証しやすさは減少する(図2(C)参照)。評価スコアの算出後、管理サーバ10は、評価スコア(すなわち、移動体4の認証しやすさ)が所定レベル以上である対象カメラを選択する。所定レベルは、予め決められた閾値であってもよいし、移動体4の種類(人間、車両、動物等)ごとに異なる閾値であってもよい。例えば、所定レベルを「60」とした場合、図2(A)に示す例では、管理サーバ10は、所定レベル以上であるカメラ3A及びカメラ3Bを対象カメラとして選択する。一方、図2(B)に示す例では、管理サーバ10は、評価スコアが所定レベル以上であるカメラ3Aを対象カメラとして選択する。尚、評価スコアにかかわらず、移動体4が画角外に存在するカメラ3は対象カメラとして選択されない。
【0031】
尚、評価スコアが所定レベル以上であるカメラ3が複数ある場合、その複数のカメラ3のうち1台のカメラ3が更に選択されてもよい。具体的には、管理サーバ10は、複数のカメラ3の中から移動体4の認証しやすさが最も高い1台を対象カメラとして選択してもよい。
【0032】
このように、移動体4の認証に用いられる対象カメラは、複数のカメラ3のうち少なくとも1台のカメラ3が選択される。対象カメラの選択には、移動体4の認証しやすさ(評価スコア)が用いられる。移動体4の認証しやすさが高いカメラ3が対象カメラとして選択されることで、より少ないカメラで移動体4を認証することができるため、処理負荷が軽減される。
【0033】
1-3.認証しやすさの改善例
移動体4の認証しやすさが所定レベル以上であるカメラ3が存在しない場合、移動体4の認証に用いられる対象カメラが選択されないこととなる。そこで、管理サーバ10は、移動体4の認証しやすさを積極的に改善する処理を実施してもよい。図3は、移動体4の認証しやすさを改善するための処理の具体例を説明するための図である。移動体4の認証しやすさを改善する処理の例を3つ挙げる。
【0034】
一つ目の例は、図3(A)に示すように、移動体4に最も近いカメラ3の画角内に移動体4が存在しない場合である。この場合、移動体4の認証しやすさは減少する。しかし、当該カメラ3が、向きが可変である「向き可変カメラ」である場合もある。その場合、例えば、図3(B)に示すように、当該カメラ3(向き可変カメラ)の画角内に移動体4が存在するように当該カメラ3の向きを変更してもよい。尚、移動体4に最も近いカメラ3の向きが固定されている場合であっても、複数のカメラ3が向き可変カメラを含む場合、当該向き可変カメラの画角内に移動体4が存在するように当該向き可変カメラの向きを変更してもよい。
【0035】
一つ目の例によれば、管理サーバ10は、カメラ情報31に含まれる向き可変カメラの向きの情報と移動体4の位置情報32に基づいて、移動体4の位置に向き可変カメラの向きを合わせるように向き可変カメラを回転させる角度を算出する。そして、管理サーバ10は、算出した角度に基づいて向き可変カメラを回転させるように指示する回転指示情報を通信装置40を介して向き可変カメラに送信する。これにより、移動体4が向き可変カメラの画角内に存在するようになり、移動体4の認証しやすさが改善される。向き可変カメラにおける移動体4の認証しやすさが所定レベル以上となれば、当該向き可変カメラが対象カメラとして選択される。
【0036】
二つ目の例は、図3(C)に示すように、位置が固定されたカメラ3から移動体4までの距離が長い場合である。この場合、当該カメラ3によって撮影される画像に含まれる移動体4が不明瞭となり、移動体4の認証しやすさは減少する。しかし、位置が可変である「位置可変カメラ」が利用可能な場合も考えられる。位置可変カメラとしては、車載カメラ、ドローンに搭載されたカメラ、等が例示される。位置可変カメラが利用可能である場合、図3(D)に示すように、当該位置可変カメラの画角内に移動体4が存在するように位置可変カメラの位置を変更してもよい。尚、位置可変カメラが複数ある場合、移動体4に最も近い位置可変カメラの位置を変更してもよい。
【0037】
二つ目の例によれば、管理サーバ10は、カメラ情報31に含まれる位置可変カメラの位置の情報と移動体4の位置情報32に基づいて、移動体4の位置に位置可変カメラの位置を近づけるように移動指示の情報を通信装置40を介して当該位置可変カメラに送信する。これにより、移動体4を近くから撮影することが可能となり、移動体4の認証しやすさが改善される。可変カメラにおける移動体4の認証しやすさが所定レベル以上となれば、当該位置可変カメラが対象カメラとして選択される。
【0038】
二つ目の例は、図3(A)で示された状況にも適用可能である。その場合、管理サーバ10は、位置可変カメラの画角内に移動体4が含まれるように、移動指示を位置可変カメラに送信する。これにより、移動体4が位置可変カメラの画角内に存在するようになり、移動体4の認証しやすさが改善される。位置可変カメラにおける移動体4の認証しやすさが所定レベル以上となれば、当該位置可変カメラが対象カメラとして選択される。
【0039】
一つ目の例と二つ目の例で説明したように、可変カメラのカメラ位置とカメラ向きの少なくとも一方を変更することによって、移動体4の認証しやすさを改善することができる。
【0040】
三つ目の例は、図3(E)に示すように、移動体4に最も近いカメラ3の画角内に移動体4が存在し、且つ、当該カメラ3によって撮影される画像IMGの画質が低い場合である。例えば、暗環境あるいは逆光環境で撮影された画像IMGの画質は低い。この場合、当該カメラ3によって撮影される画像に含まれる移動体4が不明瞭となり、移動体4の認証しやすさは減少する。この場合、管理サーバ10は、移動体4の認証しやすさが増加するように画像IMGの画質を改善してもよい。例えば、図3(F)に示すように、明るさ補正処理を行うことによって画像IMGの画質を改善することが可能となる。これにより、当該画像IMGに含まれる認証対象の移動体4が明瞭となり、移動体4の認証しやすさが改善される。
【0041】
1-4.処理フロー例
図4は、実施の形態1に係る移動体認証処理の例を要約的に示すフローチャートである。
【0042】
ステップS100において、管理サーバ10は、移動体4を認証する要求を受けたか否かを判定する。移動体4を認証する要求を受けた場合(ステップS100;Yes)、処理はステップS110に進む。それ以外の場合(ステップS100;No)、処理は終了する。
【0043】
ステップS110において、管理サーバ10は、移動体4の位置情報32を取得する。その後、処理はステップS120に進む。
【0044】
ステップS120において、管理サーバ10は、移動体4の認証しやすさをカメラ3毎に算出する。その後、処理はステップS130に進む。
【0045】
ステップS130において、管理サーバ10は、移動体4の認証しやすさが所定レベル以上か否かを判定する。移動体4の認証しやすさが所定レベル以上の場合(ステップS130;Yes)、処理はステップS140に進む。それ以外の場合(ステップS130;No)、処理はステップS160に進む。
【0046】
ステップS140において、管理サーバ10は、移動体4の認証しやすさが所定レベル以上であるカメラ3を対象カメラとして選択する。その後、処理はステップS150に進む。
【0047】
ステップS150において、管理サーバ10は、対象カメラによって撮影される画像と認証用画像33との比較に基づいて移動体4を認証する。
【0048】
ステップS160において、管理サーバ10は、移動体4の認証しやすさが所定レベル以上となるように移動体4の認証しやすさを改善する。その後、処理はステップS130に戻る。
【0049】
1-5.効果
実施の形態1によれば、移動体4を認証する要求を受けた場合、移動体4の認証しやすさが所定レベル以上であるカメラ3が「対象カメラ」として選択される。そして、対象カメラによって撮影される画像と認証用画像33との比較に基づいて移動体4が認証される。これにより、より少ないカメラで移動体4を認証することができるため、処理負荷が軽減される。更に、不必要に多い画像が認証に用いられないため、認証対象の移動体4とは無関係な人に対して不必要な認証処理が行われる機会が減少する。このことは、プライバシー確保の観点から好ましい。
【0050】
2.実施の形態2
実施の形態2では、認証対象の移動体4に積極的に働きかけることによって移動体4の認証しやすさを向上させる手法について説明する。実施の形態2では、認証対象の移動体4は、管理サーバ10からの要求に応じることができる人間である。管理サーバ10は、認証対象の人間に対して所定の動作を行うよう要求する。具体的には、管理サーバ10は、所定の動作を行うことを要求する指示情報を、通信装置40を介して、その人間が所持する携帯端末5に送信する。
【0051】
図5(A)に示される例では、認証対象の人間の顔がカメラ3から見えておらず、認証処理が失敗している。この場合、管理サーバ10は、認証対象の人間に対して向きを変えるように要求してもよい。つまり、所定の動作は、向きを変えることであってもよい。他の例として、カメラ3が近辺のランドマークに設置されている場合、管理サーバ10は、認証対象の人間に対してランドマークの方を向くように要求してもよい。つまり、所定の動作は、ランドマークの方を向くことであってもよい。図5(B)に示されるように、人間が向きを変えることによって、人間の顔がカメラ3から見えるようになる可能性がある。その結果、認証処理が成功する可能性がある。
【0052】
図5(C)に示される例では、カメラ3によって撮影される画像内に多数の移動体4が映っている。この場合、管理サーバ10は、認証対象の人間を他の移動体4から区別しやすくするように、所定に動作を行うことを要求してもよい。所定の動作としては、手を振る、ジャンプする、等が例示される。図5(D)に示されるように、要求を受けた人間は所定の動作を行う。管理サーバ10は、画像解析を行うことによって、所定の動作を行っている物体を検出する。その後、管理サーバ10は、検出した物体に対して認証処理を行う。
【0053】
このように、認証対象の人間に対して所定の動作を行うよう要求することにより、画像IMGの中で認証対象の人間を特定しやすくなる。その結果、移動体4の認証しやすさが改善される。また、移動体4の認証精度が向上する。
【0054】
実施の形態1と実施の形態2の組み合わせも可能である。
【0055】
3.実施の形態3
例えば、認証対象の移動体4の周囲に認証対象でない人の密度が高い場合を考える。この場合、対象カメラによって撮影される画像には、認証対象の移動体4とは無関係の人が含まれる。この場合、移動体4とは無関係の人に対して不必要な認証処理が行われる。このことは、プライバシー確保の観点から好ましくない。従って、実施の形態3では、対象カメラで撮影した画像の中で移動体4が映っていると想定される領域の絞り込みが行われる。
【0056】
図6は、実施の形態3に係る移動体認証処理の具体例を示す説明図である。管理サーバ10は、対象カメラによって撮影された画像IMGを取得する。対象カメラの位置及び向きは、カメラ情報31に含まれる。また、移動体4の位置は、位置情報32から得られる。よって、管理サーバ10は、カメラ情報31と移動体4の位置情報32に基づいて、画像IMGの中で認証対象の移動体4が映っていると想定される領域を絞り込むことができる。絞り込まれた領域の画像IMGを、部分領域画像IMG_Tと呼ぶ。部分領域画像IMG_Tの範囲は、オリジナルの画像IMGの範囲よりも小さい。図6(A)に示される例では、管理サーバ10は、オリジナルの画像IMGから部分領域画像IMG_Tをトリミングする。そして、管理サーバ10は、部分領域画像IMG_Tと移動体4の認証用画像33との比較に基づいて、移動体4の認証を行う。
【0057】
図6(B)に示される例では、管理サーバ10は、認証対象の移動体4が映っていると想定される領域にズームインするよう対象カメラに指示する。上述の通り、オリジナルの画像IMGの中で移動体4が映っていると想定される領域は、カメラ情報31と移動体4の位置情報32に基づいて推定可能である。管理サーバ10は、対象カメラから、ズームイン後の画像を部分領域画像IMG_Tとして取得する。そして、管理サーバ10は、部分領域画像IMG_Tと移動体4の認証用画像33との比較に基づいて、移動体4の認証を行う。
【0058】
実施の形態3によれば、対象カメラによって撮影される画像IMGの中で認証対象の移動体4が映っていると想定される部分領域画像IMG_Tが絞り込まれる。そして、部分領域画像IMG_Tと認証用画像33との比較に基づいて移動体4の認証が行われる。オリジナルの画像IMGの場合と比較して、部分領域画像IMG_Tに認証対象の移動体4と無関係な人が映っている確率は大きく減少する。よって、認証対象の移動体4とは無関係な人に対して不必要な認証処理が行われる機会が減少する。このことは、プライバシー確保の観点から好ましい。更に、部分領域画像IMG_Tを用いることによって、移動体4をより特定しやすくなるため、移動体4の認証精度が向上する。
【0059】
実施の形態1と実施の形態3、あるいは、実施の形態2と実施の形態3の組み合わせも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…移動体認証システム,2…所定エリア,3,3A,3B,3C…カメラ,4,4A,4B…移動体,5,5A,5B…携帯端末,10…管理サーバ,20…プロセッサ,30…記憶装置,31…カメラ情報,32…位置情報,33…認証用画像,34…管理情報,40…通信装置,IMG…画像,IMG_T…部分領域画像
【要約】
【課題】所定エリアにおいて移動体を認証する際の処理負荷を軽減することができる技術を提供する。
【解決手段】移動体認証システムは、所定エリアに存在する複数のカメラと通信可能なプロセッサと、移動体の認証用画像、及び複数のカメラの各々の位置と向きを少なくとも示すカメラ情報を格納する記憶装置と、を含んでいる。移動体の認証しやすさは、少なくとも、移動体とカメラとの間の距離に依存し、距離が短くなるほど増加する。移動体を認証する要求を受けた場合、プロセッサは、移動体の現在位置を示す位置情報を取得し、少なくとも位置情報とカメラ情報に基づいて、複数のカメラの中から認証しやすさが所定レベル以上である対象カメラを選択する。更に、プロセッサは、対象カメラによる画像と認証用画像との比較に基づいて移動体の認証を行う。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6