(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】光変調素子の光学特性の測定方法、測定装置、測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20241106BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20241106BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G02B6/42
G02F1/01 C
(21)【出願番号】P 2023149299
(22)【出願日】2023-09-14
(62)【分割の表示】P 2020067595の分割
【原出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-09-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康祐
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-034862(JP,A)
【文献】特開平10-104463(JP,A)
【文献】特開平10-227936(JP,A)
【文献】特開2013-050676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/08
G02B 6/00 - G02B 6/54
G02F 1/00 - G02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射部、前記入射部から入射される光を伝搬する導波路、および前記導波路を伝搬した光を出射する複数の出射部を有する、マッハツェンダ型の光変調素子の光学特性の測定方法であって、
第1光ファイバを介して、光源から前記光変調素子の入射部に光を入射する工程と、
前記光変調素子の前記複数の出射部から出射される出射光を、複数の第2光ファイバを介して複数の受光部が受光する工程と、
前記出射光を受光することで前記複数の受光部のそれぞれが出力する電気信号を電流に変換し、前記電流の大きさを合計することで合計値を取得する工程と、
前記合計値に基づいて、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程と、を
有し、
前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程は、前記光変調素子の導波路に設けられた電極に電圧を印加して前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程を含み、
前記電極に電圧を印加し、前記電圧を掃引して、前記出射部から出射される光の強度が最大になるような電圧である第1電圧を求める工程を有し、
前記調芯を行う工程は、前記電極に前記第1電圧を印加して調芯を行う工程である測定方法。
【請求項2】
前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程において、前記合計値が最大になるように調芯を行う請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記光変調素子の1つの面に前記入射部および前記複数の出射部が設けられ、
前記光源から前記入射部に光を入射する工程の前に、前記第1光ファイバおよび前記複数の第2光ファイバが配列された光ファイバアレイと、前記光変調素子の前記1つの面とを対向させる工程を有する請求項1または請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記対向させる工程は、前記第1光ファイバの1つの端部が前記入射部に対向し、前記複数の第2ファイバそれぞれの1つの端部が前記複数の出射部に対向するように、前記光変調素子の前記1つの面と前記光ファイバアレイの1つの面とを対向させる工程である、請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程は、前記合計された電気信号に基づいて、前記光ファイバアレイおよび前記光変調素子のうち少なくとも一方の位置を調整する工程を含む請求項3に記載の測定方法。
【請求項6】
前記第2光ファイバの径は前記第1光ファイバの径よりも大きい請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項7】
前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程は、前記光変調素子の導波路に設けられた電極に電圧を印加せずに前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程を含む請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項8】
前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程において、前記合計値が閾値以上になるように調芯を行う請求項1に記載の測定方法。
【請求項9】
入射部、前記入射部から入射される光を伝搬する導波路、および前記導波路を伝搬した光を出射する複数の出射部を有する、マッハツェンダ型の光変調素子の光学特性の測定装置であって、
光源から出射される光を、前記光変調素子の入射部に光を入射する第1光ファイバと、
前記複数の出射部から出射される出射光が入射する複数の第2光ファイバと、
前記出射光が前記複数の第2光ファイバを介して入射することで、電気信号を出力する複数の受光部と、
前記複数の受光部のそれぞれが出力する電気信号を電流に変換し、前記電流の大きさを合計することで合計値を取得する電流変換部と、
前記合計値に基づいて、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う制御部と、を具備
し、
前記制御部は、前記光変調素子の導波路に設けられた電極に電圧を印加して前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行い、
前記制御部は、前記電極に電圧を印加し、前記電圧を掃引して、前記出射部から出射される光の強度が最大になるような電圧である第1電圧を求め、
前記制御部は、前記電極に前記第1電圧を印加して前記調芯を行う測定装置。
【請求項10】
前記第1光ファイバおよび前記複数の第2光ファイバが配列された光ファイバアレイを具備し、
前記制御部は、前記合計値に基づいて、前記光ファイバアレイおよび前記光変調素子のうち少なくとも一方の位置を調整することで、前記調芯を行う請求項
9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記第2光ファイバの径は前記第1光ファイバの径よりも大きい請求項
9または請求項
10に記載の測定装置。
【請求項12】
入射部、前記入射部から入射される光を伝搬する導波路、および前記導波路を伝搬した光を出射する複数の出射部を有する、マッハツェンダ型の光変調素子の光学特性の測定プログラムであって、
コンピュータに、
光源から出射される光を、第1光ファイバを介して前記光変調素子の入射部に入射する処理と、
複数の受光部のそれぞれが前記光変調素子の複数の出射部から出射される出射光を、複数の第2光ファイバを介して受光することで出力する電気信号を電流に変換し、前記電流の大きさを合計することで合計値を取得する処理と、
前記合計値に基づいて、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う処理と、を実行
させ、
前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う処理は、前記光変調素子の導波路に設けられた電極に電圧を印加して前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う処理を含み、
前記電極に電圧を印加し、前記電圧を掃引して、前記出射部から出射される光の強度が最大になるような電圧である第1電圧を求める処理をさらに実行させ、
前記調芯を行う処理は、前記電極に前記第1電圧を印加して調芯を行う処理である測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光変調素子の光学特性の測定方法、測定装置、測定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
四位相偏移変調(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)方式などの光通信システムに、例えばマッハツェンダ型の光変調素子が用いられている。こうした光変調素子は、複数の導波路、入射ポートおよび複数の出射ポートを有する。導波路には変調用電極および位相調整用電極が設けられる。
【0003】
光変調素子の光学特性の測定においては、光変調素子の入射ポートと光ファイバとの調芯を行う。光の入射によって光変調素子の電極に流れる光電流を最大化するように調芯を行う方法がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、光変調素子から出力される光のパワーに基づいて調芯を行うこともある。しかし、光変調素子ごとに、光変調素子の複数の出射ポート間の光パワーのバランスは変化する。すなわち、光変調素子ごとに、1つの出射ポートから出射される光のパワーが変化する。このため、出射光の光パワーを検出しながら自動的に調芯を行うことは困難であった。そこで、光変調素子と光ファイバとを自動的に調芯することが可能な光変調素子の光学特性の測定方法、測定装置、測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る光変調素子の光学特性の測定方法は、入射部、前記入射部から入射される光を伝搬する導波路、および前記導波路を伝搬した光を出射する複数の出射部を有する、マッハツェンダ型の光変調素子の光学特性の測定方法であって、第1光ファイバを介して、光源から前記光変調素子の入射部に光を入射する工程と、前記光変調素子の前記複数の出射部から出射される出射光を、複数の第2光ファイバを介して複数の受光部が受光する工程と、前記出射光を受光することで前記複数の受光部のそれぞれが出力する電気信号を電流に変換し、前記電流の大きさを合計することで合計値を取得する工程と、前記合計値に基づいて、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば光変調素子と光ファイバとを自動的に調芯することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態に係る測定装置を例示する模式図である。
【
図2】
図2は制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3A】
図3Aは光ファイバアレイおよび光変調素子を例示する平面図である。
【
図4A】
図4Aは光学特性の測定の工程を例示するフローチャートである。
【
図4B】
図4Bは調芯の工程を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0010】
本開示の一形態は、(1)入射部、前記入射部から入射される光を伝搬する導波路、および前記導波路を伝搬した光を出射する複数の出射部を有する、マッハツェンダ型の光変調素子の光学特性の測定方法であって、第1光ファイバを介して、光源から前記光変調素子の入射部に光を入射する工程と、前記光変調素子の前記複数の出射部から出射される出射光を、複数の第2光ファイバを介して複数の受光部が受光する工程と、前記出射光を受光することで前記複数の受光部のそれぞれが出力する電気信号を電流に変換し、前記電流の大きさを合計することで合計値を取得する工程と、前記合計値に基づいて、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程と、を有する測定方法である。光変調素子ごとに、複数の出射部から出射される光の強度のバランスは変化する。一方、強度の合計は一定である。したがって変換して得られた電流の合計値に基づいて自動的に光変調素子と光ファイバとの調芯が可能である。
(2)上記(1)において、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程において、前記合計値が最大になるように調芯を行ってもよい。合計値に基づいて自動的に光変調素子と光ファイバとの調芯が可能である。
(3)上記(1)または(2)において、前記光変調素子の1つの面に前記入射部および前記複数の出射部が設けられ、前記光源から前記入射部に光を入射する工程の前に、前記第1光ファイバおよび複数の第2光ファイバが配列された光ファイバアレイと、前記光変調素子の前記1つの面とを対向させる工程を有してもよい。光変調素子と光ファイバアレイとを対向させることで、出射部と第1光ファイバとを対向させ、入射部と第2光ファイバとを対向させる。第2光ファイバを介した光の入射、および第1光ファイバを介した光の出射が可能である。
(4)上記(3)において、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程は、前記合計された電気信号に基づいて、前記光ファイバアレイおよび前記光変調素子のうち少なくとも一方の位置を調整する工程を含んでもよい。光変調素子の入射部と第1光ファイバとの調芯を行うと同時に、出射部と第2光ファイバとの調芯も可能である。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記第2光ファイバの径は前記第1光ファイバの径よりも大きくてもよい。光を受ける部分の直径を大きくすることによって、出射部からの出射光との光結合を大きくし、光のロスを抑制し、出射光を第2光ファイバに伝搬させることができる。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程は、前記光変調素子の導波路に設けられた電極に電圧を印加せずに前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程を含んでもよい。2つの調芯の工程を自動で行うため、手動で調芯を行う場合に比べて、調芯にかかる時間および労力が低減する。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程は、前記光変調素子の導波路に設けられた電極に電圧を印加して前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程を含んでもよい。2つの調芯の工程を自動で行うため、手動で調芯を行う場合に比べて、調芯にかかる時間および労力が低減する。
(8)上記(1)において、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う工程において、前記合計値が閾値以上になるように調芯を行ってもよい。
(9)入射部、前記入射部から入射される光を伝搬する導波路、および前記導波路を伝搬した光を出射する複数の出射部を有する、マッハツェンダ型の光変調素子の光学特性の測定装置であって、光源から出射される光を、前記光変調素子の入射部に光を入射する第1光ファイバと、前記複数の出射部から出射される出射光が入射する複数の第2光ファイバと、前記出射光が前記複数の第2光ファイバを介して入射することで、電気信号を出力する複数の受光部と、前記複数の受光部のそれぞれが出力する電気信号を電流に変換し、前記電流の大きさを合計することで合計値を取得する電流変換部と、前記合計値に基づいて、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う制御部と、を具備する測定装置である。光変調素子ごとに、複数の出射部から出射される光の強度のバランスは変化する。一方、強度の合計は一定である。したがって変換した電流の合計値に基づいて自動的に光変調素子と光ファイバとの調芯が可能である。
(10)上記(9)において、前記第1光ファイバおよび前記複数の第2光ファイバが配列された光ファイバアレイを具備し、前記制御部は、前記合計値に基づいて、前記光ファイバアレイおよび前記光変調素子のうち少なくとも一方の位置を調整することで、前記調芯を行ってもよい。
(11)上記(9)または(10)において、前記第2光ファイバの径は前記第1光ファイバの径よりも大きくてもよい。
(12)入射部、前記入射部から入射される光を伝搬する導波路、および前記導波路を伝搬した光を出射する複数の出射部を有する、マッハツェンダ型の光変調素子の光学特性の測定プログラムであって、コンピュータに、光源から出射される光を、第1光ファイバを介して前記光変調素子の入射部に入射する処理と、複数の受光部のそれぞれが前記光変調素子の複数の出射部から出射される出射光を、複数の第2光ファイバを介して受光することで出力する電気信号を電流に変換し、前記電流の大きさを合計することで合計値を取得する処理と、前記合計値に基づいて、前記光変調素子の入射部と前記第1光ファイバとの調芯を行う処理と、を実行させる測定プログラムである。光変調素子ごとに、複数の出射部から出射される光の強度のバランスは変化する。一方、強度の合計は一定である。したがって変換した電流の合計値に基づいて自動的に光変調素子と光ファイバとの調芯が可能である。
【0011】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光変調素子の光学特性の測定方法、測定装置、測定プログラムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
(測定装置)
図1は実施形態に係る測定装置100を例示する模式図である。
図1に示すように、測定装置100は、光ファイバアレイ70、調芯用ステージ60、温度調整機能付き(温調)ステージ64、角度調整用ステージ65、モニタ57、カメラ59、温度コントローラ50、自動調芯コントローラ52、波長可変レーザ光源54、電流変換器51(電流変換部)、4つの光パワーメータ56a~56d、電流電圧源58、マルチコンタクトプローブ66および制御部80を有する。
【0013】
測定装置100は、光変調素子10にレーザ光を入射し、光変調素子10から出射される光を受光することで、光変調素子10の光学特性を測定する装置であり、例えば光変調素子10の検査の工程に用いられる。
【0014】
図1に示すX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向は互いに直交する。X軸方向およびY軸方向は、光ファイバアレイ70、調芯用ステージ60、温調ステージ64、角度調整用ステージ65、光変調素子10それぞれの辺の方向である。Z軸方向は光変調素子10および光ファイバアレイ70の上面に直交する。
【0015】
調芯用ステージ60は自動調芯コントローラ52と電気的に接続されている。調芯用ステージ60の上にフォルダ61が設けられ、フォルダ61の上に光ファイバアレイ70が搭載されている。光ファイバアレイ70は、X軸方向に延伸する光ファイバ72a~72dおよび光ファイバ74を有する。
図1に示す固定器具63が光ファイバ72a~72dおよび74を上から押さえることで、光ファイバアレイ70上の複数の光ファイバを固定する。光ファイバアレイ70のY軸方向の1つの端面を冶具62に突き当てることで、光ファイバアレイ70を調芯用ステージ60上で位置決めする。冶具62および固定器具63は例えばテフロン(登録商標)製である。
【0016】
調芯用ステージ60とX軸方向に対向する位置に角度調整用ステージ65が配置されている。角度調整用ステージ65の上に温調ステージ64が搭載され、温調ステージ64の上に光変調素子10が搭載されている。温調ステージ64は例えばペルチェ素子などを含み、温度コントローラ50と電気的に接続されている。
【0017】
マルチコンタクトプローブ66は温調ステージ64上に設けられ、X軸方向およびY軸方向に延伸し、電流電圧源58と電気的に接続され、複数のピン67を有する。光変調素子10は、ピン67を介してマルチコンタクトプローブ66と電気的に接続される。
【0018】
電流電圧源58は多チャンネルの直流電源であり、マルチコンタクトプローブ66を介して光変調素子10の複数の電極に電圧を印加し、かつ複数の電極に流れる電流を測定することができる。
【0019】
光パワーメータ56a~56d(受光部)は例えばフォトダイオードなどの受光素子を有し、光が入射されることで電圧を出力する。電圧の大きさは光の強度に比例する。電流変換器51は、光パワーメータ56a~56dから入力される電圧を電流に変換し、かつこれらの電流の大きさ(電流値)を合計して合計値を算出する。電流変換器51は自動調芯コントローラ52に合計した電流を入力する。光の強度が強いほど光パワーメータ56a~56dの出力する電圧、および電流変換器51が取得する電流は大きくなる。
【0020】
カメラ59は光変調素子10の光ファイバアレイ70との対向面が視野に入るように配置される。モニタ57はカメラ59に接続され、カメラ59が撮像する映像を表示する。モニタ57には光変調素子10の位置合わせの基準となる基準線が表示されている。
【0021】
制御部80は、例えばパーソナルコンピュータ(PC:Personnel Computer)などのコンピュータであり、温度コントローラ50、自動調芯コントローラ52、波長可変レーザ光源54、電流変換器51、4つの光パワーメータ56および電流電圧源58と、電気的に接続されている。
【0022】
制御部80は位置制御部81、合計値取得部82、光源制御部83、電圧制御部84、温度制御部85を備える。温度制御部85は、温度コントローラ50から温調ステージ64に印加する電力を制御することで、温調ステージ64上の光変調素子10の温度を調整する。電圧制御部84は、電流電圧源58を制御し、光変調素子10に逆バイアス電圧を印加し、かつ光変調素子10に流れる電流の値を電流電圧源58から取得する。光源制御部83は、波長可変レーザ光源54のオン・オフを制御し、波長可変レーザ光源54から出射される光の波長および強度なども制御する。合計値取得部82は、電流変換器51が算出する電流値の合計値を取得する。位置制御部81は、合計値に基づいて自動調芯コントローラ52を制御し、調芯用ステージ60上の光ファイバアレイ70の位置を調整する。
【0023】
図2は制御部80のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部80は、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)101、RAM(Random Access Memory)102、記憶装置103、インターフェース104を備える。CPU101、RMA102、記憶装置103およびインターフェース104は互いにバスなどで接続されている。RAM102はプログラムおよびデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置103は例えばROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)、ハードディスクドライブ(HHD:Hard Disc Drive)などである。記憶装置103は、後述の調芯を実行するためのプログラム、光変調素子10の動作確認用のプログラムなどを記憶する。
【0024】
CPU101がRAM102に記憶されるプログラムを実行することにより、制御部80に位置制御部81、合計値取得部82、光源制御部83、電圧制御部84、温度制御部85が実現される。制御部80の各部は、回路などのハードウェアでもよい。
【0025】
図3Aは光ファイバアレイ70および光変調素子10を例示する平面図である。
図3Aにおいて調芯用ステージ60、冶具62、固定器具63、温調ステージ64、角度調整用ステージ65、マルチコンタクトプローブ66は省略している。
図3Aに示すように、光ファイバアレイ70と光変調素子10とはX軸方向において対向する。
【0026】
(光ファイバアレイ)
光ファイバアレイ70はベースプレート71、光ファイバ72a~72dおよび光ファイバ74を有する。ベースプレート71のX軸方向の長さは例えば3mm以上、30mm以下である。Y軸方向の幅は例えば3mm以上、8mm以下である。
【0027】
光ファイバ74はベースプレート71のY軸に沿った中央付近に位置する。光ファイバ74のY軸方向の一方側に光ファイバ72aおよび72bが配置され、他方の側に光ファイバ72cおよび72dが配置される。すなわち、Y軸方向に沿って、光ファイバ72a、72b、74、72cおよび72dが順に配列される。
【0028】
図3Bは光ファイバアレイ70を例示する正面図である。
図3Bに示すように、ベースプレート71の上面にはV字状の4つの溝73、および1つの溝75が設けられている。溝73および75はX軸方向に延伸する。1つの溝73には光ファイバ72a~72dのいずれかが配置される。溝75には光ファイバ74が配置される。
【0029】
光ファイバ74は偏波保持特性を有する単一モード光ファイバ(SMF:Single Mode Fiber)であり、かつ先端が凸状に加工されたレンズドファイバである。光ファイバ74のガラスは被覆されている。被覆を含む光ファイバ74の外径は例えば250μmであり、コアの直径(コア径)は例えば8μmである。光ファイバ74には例えば1.53μm~1.57μmの範囲の単一波長かつ単一モードのレーザ光が伝搬する。
【0030】
光ファイバ72a~72dは多モード光ファイバ(MMF:Multi Mode Fiber)である。光ファイバ72a~72dそれぞれのコア径は光ファイバ74のコア径より大きく、例えば400μmである。光ファイバ72a~72dの長さはそれぞれ例えば730μmであり、曲げ半径は例えば47mmである。
【0031】
光ファイバアレイ70のX軸方向の面70aは光変調素子10に対向する。光ファイバ72a~72dの一端は面70aに位置する。面70aには2つの偏光板76が設けられている。2つの偏光板76のうち一方は光ファイバ72aおよび72bの一端を覆い、他方は光ファイバ72cおよび72dの一端を覆う。光ファイバ74の一端は面70aよりもX軸方向外側に突出する。光ファイバ74の面70aからの突出量は例えば0.1mmである。
【0032】
図1に示すように、光ファイバ72aの他端はコネクタ55を用いて光パワーメータ56aと光学的に接続されている。光ファイバ72bの他端は光パワーメータ56bと光学的に接続されている。光ファイバ72cの他端は光パワーメータ56cと光学的に接続されている。光ファイバ72dの他端は光パワーメータ56dと光学的に接続されている。光ファイバ74の他端はコネクタ53を用いて波長可変レーザ光源54に光学的に接続されている。
【0033】
(光変調素子)
図3Aに示す光変調素子10は、例えばガリウムヒ素(GaAs)系半導体またはインジウムリン(InP)系半導体などで形成され、複数のマッハツェンダ変調器を含む、1入力4出力の素子である。光変調素子10は、基板11、複数の導波路、位相調整用の電極、入力および出力用のパッドを有する。
【0034】
基板11はGaAs系またはInP系などの化合物半導体で形成された半導体基板である。基板11の上面に、電極40a~40h、電極42a~42h、電極44a~44d、複数のパッド46、および複数のパッド48が設けられている。
図3Aにおいて電極には斜線が付されている。電極とパッドとを電気的に接続する、不図示の配線パターンも基板11に設けられている。
【0035】
光変調素子10のX軸方向の一方の面10aは光ファイバアレイ70の面70aに対向する。面10aに1つの入射ポート14(入射部)、4つの出射ポート12a、12b、12cおよび12d(出射部)が設けられている。入射ポート14は基板11のY軸に沿った中央付近に位置する。入射ポート14のY軸方向の一方側に出射ポート12aおよび12bが設けられ、他方の側に出射ポート12cおよび12dが設けられている。すなわち、Y軸方向に沿って、出射ポート12aおよび12b、入射ポート14、出射ポート12cおよび12dが順に配列される。4つの出射ポートのうち、例えば出射ポート12bおよび12cは信号光を出射し、出射ポート12aおよび12dはモニタ用の光を出射する。
【0036】
出射ポート12aは、X軸方向において光ファイバアレイ70の光ファイバ72aの先端に対向する。出射ポート12bはX軸方向において光ファイバ72bの先端に対向する。出射ポート12cはX軸方向において光ファイバ72cの先端に対向する。出射ポート12dはX軸方向において光ファイバ72dの先端に対向する。入射ポート14はX軸方向において光ファイバ74の先端に対向する。
【0037】
入射ポート14から出射ポート12aおよび12bまでが1つのマッハツェンダ変調器(親マッハツェンダ変調器)13aとして機能し、入射ポート14から出射ポート12cおよび12dまでが1つのマッハツェンダ変調器(親マッハツェンダ変調器)13bとして機能する。マッハツェンダ変調器13aおよび13bのそれぞれは、さらに2つのマッハツェンダ変調器(子マッハツェンダ変調器)を含む。
【0038】
導波路16の一端は入射ポート14に結合し、他端はカプラ18に結合する。導波路16はカプラ18において2つの導波路20aおよび20bに分岐する。導波路20aはカプラ22aにおいて2つの導波路24aおよび24bに分岐する。導波路24aはカプラ26aにおいて2つの導波路28aおよび28bに分岐する。導波路28aおよび28bはカプラ30aにおいて合流し、導波路32aを形成する。導波路24bはカプラ26bにおいて2つの導波路28cおよび28dに分岐する。導波路28cおよび28bはカプラ30bにおいて合流し、導波路32bを形成する。導波路28a~28dは屈曲し、2回折り返す。導波路32aおよび32bは屈曲し、1回折り返す。
【0039】
導波路32aおよび32bはカプラ34aにおいて合流し、カプラ34aより後段では導波路36aおよび36bに分岐する。導波路36aの一端はカプラ34aに結合し、他端は出射ポート12aに結合する。導波路36bの一端はカプラ34aに結合し、他端は出射ポート12bに結合する。カプラ26aからカプラ30aまでが1つの子マッハツェンダ変調器として機能する。カプラ26bからカプラ30bまでが1つの子マッハツェンダ変調器として機能する。
【0040】
導波路28aの上に、カプラ26a側からカプラ30a側に向けて、電極40aおよび42aが順に設けられている。導波路28bの上に、カプラ26a側からカプラ30a側に向けて、電極40bおよび42bが順に設けられている。導波路28cの上に、カプラ26b側からカプラ30b側に向けて、電極40cおよび42cが順に設けられている。導波路28dの上に、カプラ26b側からカプラ30b側に向けて、電極40dおよび42dが順に設けられている。導波路32aの上に電極44aが設けられ、導波路32bの上に電極44bが設けられている。
【0041】
マッハツェンダ変調器13bの導波路20b、24cおよび24d、28e~28h、32cおよび32d、36cおよび36d、カプラ22b、26cおよび26d、30cおよび30d、34b、出射ポート12cおよび12dは、マッハツェンダ変調器13aの対応する構成と同様に配置されている。カプラ26cからカプラ30cまでが1つの子マッハツェンダ変調器として機能する。カプラ26dからカプラ30dまでが1つの子マッハツェンダ変調器として機能する。
【0042】
導波路28eの上に、カプラ26c側からカプラ30c側に向けて、電極40eおよび42eが順に設けられている。導波路28fの上に、カプラ26c側からカプラ30c側に向けて、電極40fおよび42fが順に設けられている。導波路28gの上に、カプラ26d側からカプラ30d側に向けて、電極40gおよび42gが順に設けられている。導波路28hの上に、カプラ26d側からカプラ30d側に向けて、電極40hおよび42hが順に設けられている。導波路32cの上に電極44cが設けられ、導波路32dの上に電極44dが設けられている。
【0043】
光変調素子10の基板11の上面に複数のパッド46および複数のパッド48が設けられている。パッド46は、例えば光の位相の調整に用いられる位相調整用電極であり、電極42a~42h、および電極44a~44dに電気的に接続される。パッド48は、例えば光の変調に用いられる変調用電極であり、電極40a~40hに電気的に接続され、かつ
図1に示したコンタクトプローブ66のピン67と電気的に接続される。
【0044】
入射ポート14から光変調素子10に光を入射し、出射ポート12a~12dから光を出射する。電極40a~40hに高周波(RF:Radio Frequency)信号を入力することで、光の変調を行う。電極42a~42h、および電極44a~44dに電圧を印加することで位相を調整する。例えば、出射ポート12bからの出射光と出射ポート12cからの出射光との位相差をπ/2などに調整することができる。出射ポート12bおよび12cから出射される光(信号光)の強度が最大になり、出射ポート12aおよび12dから出射される光(モニタ光)の強度が最小になるように位相調整をすることができる。
【0045】
後述のように、光変調素子10の検査においては、光変調素子10の入射ポート14と光ファイバアレイ70の光ファイバ74との調芯を行った後、光変調素子10の光学特性の評価を行う。調芯においては、波長可変レーザ光源54から光変調素子10の入射ポート14に光を入射し、出射ポート12a~12dから出射される光の強度を光パワーメータ56a~56dで検出する。
【0046】
表1は複数の光変調素子からの出射光の強度(光パワー)を示す表である。表1の例において、光変調素子10は初期位相状態にあり、光変調素子10の光の位相は調整されていない。入射ポート14と光ファイバ74との調芯が行われ、入射ポート14に入射する光の強度が最大である。入射ポート14と光ファイバ74との位置が最適な位置からずれると、入射ポート14に入射する光の強度は低下し、出射光の強度も表1の例から低下する。
【表1】
【0047】
表1において、複数の光変調素子10をNo.1~No.3などとする。製造ばらつきによって、光変調素子10ごとに出射ポート間の光の強度のバランスが変わることがある。No.1の光変調素子10では、出射ポート12aおよび12cそれぞれからの出射光の強度はP/6であり、出射ポート12bおよび12dそれぞれからの出射光の強度はP/3である。4つの出射光の強度の合計はPである。
【0048】
No.2の光変調素子10では、出射ポート12aおよび12cそれぞれからの出射光の強度はP/3であり、出射ポート12bおよび12dそれぞれからの出射光の強度はP/6である。No.3の光変調素子10では、出射ポート12aおよび12dそれぞれからの出射光は4P/10であり、出射ポート12bおよび12cそれぞれからの出射光の強度はP/10である。表1では省略する他の複数の光変調素子10ごとにも強度のバランスが変わる。その一方で、いずれの光変調素子10においても4つの出射光の強度の合計値はPである。
【0049】
例えば出射ポート12bからの出射光を用いて調芯を行い、他の3つの出射ポートからの出射光を用いないとする。波長可変レーザ光源54から光ファイバ74を通じて入射ポート14に光を入射し、出射ポート12bから出射される光を光パワーメータ56bで受光する。光パワーメータ56が出力する電気信号(電圧)が最大になるように、調芯用ステージ60を用いて光ファイバアレイ70の位置を調整する。
【0050】
しかし、表1に示したように、複数の光変調素子10ごとに出射光の強度のバランスが変化する。出射ポート12bの出射光の強度は、No.1ではP/3であり、No.2では半分のP/6であり、No.3ではさらに小さいP/10である。このように、複数の光変調素子10ごとに出射ポート12bの出射光の強度が大きく異なる。すなわち出射光の強度は、入射ポート14と光ファイバ74との位置関係によって変わり、かつ光変調素子10の製造ばらつきによっても変わる。したがって出射ポート12bの出射光の強度のみを用いて調芯を行うことは困難である。
【0051】
例えばNo.1の調芯は出射ポート12bの出射光を用いて行い、No.2の調芯は出射ポート12aを用いるなど、光変調素子10ごとに出射ポートを切り替えてもよい。しかし調芯の工程が複雑になってしまい、自動化が困難となる。
【0052】
表1に示すように、それぞれの光変調素子10において出射光の強度の合計値はPである。つまり、調芯した状態において、光変調素子10ごとに出射光の強度のバランスは変わるが、出射光の強度の合計は同一である。したがって、すべての光変調素子10において、入射ポート14と光ファイバ74との位置関係に応じて合計値は増減し、最適な位置関係(調芯された状態)に近づくほど最大値Pに近づき、最適な位置関係から外れると減少する。そこで本実施形態においては、合計値に基づいて自動的に調芯を行う。
【0053】
図4Aは光学特性の測定の工程を例示するフローチャートである。
図4Bは調芯の工程を例示するフローチャートである。光学特性の測定工程は、
図4Bに示す調芯の工程を含み、例えば光変調素子10の製造工程において光変調素子10の検査の一部として行われる。光ファイバアレイ70は調芯用ステージ60の上に配置されている。
【0054】
作業者は、光変調素子10を温調ステージ64の上に置き、カメラ59が撮影する映像をモニタ57で見ながら、角度調整用ステージ65を動かす。モニタ57に記された基準線を用いて、光変調素子10の面10aと光ファイバアレイ70の面70aとの間の角度を調整し、面10aと面70aとを平行にする(
図4AのステップS10)。
【0055】
マルチコンタクトプローブ66のピン67を光変調素子10のパッド46および48に接触させる。マルチコンタクトプローブ66を介して、電流電圧源58から光変調素子10の電極に例えば1Vの電圧を印加する。電流電圧源58によって光変調素子10から出力される電流を検知し、作業者は当該電流が10μA以上であるか確認する。これにより電流電圧源58、マルチコンタクトプローブ66および光変調素子10の間の電気的な導通をチェックする(ステップS12)。導通チェック後、光変調素子10への電圧の印加を停止する。
【0056】
波長可変レーザ光源54から、光ファイバアレイ70の光ファイバ74を介して、光変調素子10の入射ポート14に例えば波長1.55μmのレーザ光を入射する(ステップS14)。光変調素子10の出射ポート12a~12dからは光が出射される。出射光は光ファイバ72a~72dを伝搬し、光パワーメータ56a~56dに入力される。光パワーメータ56a~56dは出射光の強度に応じた大きさの電圧を電流変換器51に出力する。電流変換器51は光パワーメータ56a~56dから入力される電圧を電流に変換し、電流の合計値を算出する。光変調素子10に電圧は印加されていない。
【0057】
次に光変調素子10の入射ポート14と光ファイバアレイ70の光ファイバ74との調芯を行う。まず手動による大まかな調芯を行い(手動調芯、ステップS16)、次に自動的に精密な調芯を行う(自動調芯、ステップS18)。
【0058】
手動調芯は例えば以下のように行われる。作業者が例えばカメラ59が撮影する映像をモニタ57で確認し、かつ調芯用ステージ60を手動で動かし、電流変換器51から自動調芯コントローラ52に入力される電流の合計値が1μA以上になるように、光ファイバアレイ70の位置を調整する(ステップS16)。
【0059】
自動調芯は
図4Bに示す工程で行われる。位置制御部81は自動調芯コントローラを制御し、調芯用ステージ60上の光ファイバアレイ70の位置を移動させる(ステップS30)。合計値取得部82は、電流変換器51が算出する電流の合計値を取得する(ステップS32)。位置制御部81は電流の合計値が最大であるか否かを判定する(ステップS34)。電流の合計の最大値は、表1に示した4つの出射光の強度の合計値Pに対応する。ステップS34でNoと判定された場合、制御部80はステップS30およびS32を再び実行する。ステップS34でYesと判定された場合、自動調芯の制御は終了する。すなわち、合計値が最大になるように位置制御部81が光ファイバアレイ70を移動させることで調芯が行われる。自動調芯の後、
図4AのステップS20が行われる。
【0060】
図4Aに示すように、光変調素子10の出射光の位相を調整する(ステップS20)。電圧制御部84は電流電圧源58を制御し、光変調素子10の電極42a~42hに電流電圧源58から位相調整電圧を印加し、位相調整電圧を例えば1Vから-10Vまで掃引する。電圧制御部84は、例えば4つの出射ポートのうち出射ポート12bおよび12cから出射される光の強度が最大になるような位相調整電圧を求める。その後、電圧制御部84は、電極44a~44dに電流電圧源58から位相調整電圧を印加し、位相調整電圧を例えば1Vから-10Vまで掃引し、光の強度が最大になるような位相調整電圧を求める。
【0061】
位相調整後、再び自動調芯を行う(ステップS22)。ステップS22の自動調芯は、ステップS18と同じく
図4Bの手順で実行される。すなわち、位相調整後の出射光の強度に対応する電流の合計値が最大になるように、光ファイバアレイ70の位置が調整される。
【0062】
制御部80は記憶装置103に記憶されたプログラムなどにより、光変調素子10の動作確認を行う(ステップS24)。例えば、電流電圧源58から光変調素子10に印加する電圧を掃引し、4つの出射ポートそれぞれの出射光の強度を、当該出射ポートに対応する光パワーメータで測定する。
【0063】
動作確認の後、光源制御部83は波長可変レーザ光源54からの光の入射を停止する(ステップS26)。調芯用ステージ60を用いて光ファイバアレイ70を光変調素子10から遠ざける。マルチコンタクトプローブ66のピン67を光変調素子10のパッド46および48から離間させる。光変調素子10を温調ステージ64から取り外す(ステップS28)。以上で1つの光変調素子10の光学特性の測定が終了する。
図4Aおよび
図4Bの処理が繰り返され、複数の光変調素子10の光学特性の測定が行われる。
【0064】
本実施形態によれば、光変調素子10の複数の出射ポート12a~12dの出射光を光パワーメータ56a~56dが受光し、出射光の強度に応じた電圧を出力する。電流変換器51は電圧を電流に変換し、電流の合計値を取得する。制御部80は、合計値に基づいて光変調素子10の入射ポート14と光ファイバ74との調芯を行う。複数の光変調素子10のいずれにおいても、合計値は、調芯からずれた状態で小さくなり、調芯された状態で大きくなり、一定値になる。したがって合計値を用いることで自動的な調芯が可能となる。自動的に調芯を行うことで、手動で調芯を行う場合に比べて、調芯にかかる時間および労力が低減する。
【0065】
具体的には、合計値が最大になるように調芯を行う。複数の光変調素子10に共通の基準として、強度の合計値Pに対応する電流値(最大値)を用いることで、自動的な調芯が可能である。最大値に代えて閾値を用い、例えば合計値が当該閾値以上になる状態を調芯された状態としてもよい。最大値または閾値など基準となる値を制御部80の記憶装置103などに記憶しておくことで、自動的な調芯が可能である。
【0066】
光変調素子10の面10aに入射ポート14および出射ポート12a~12dが設けられている。光ファイバアレイ70は光ファイバ72a~72dおよび74を有する。光変調素子10の面10aと、光ファイバアレイ70の面70aとを対向させることで、出射ポート12a~12dと光ファイバ72a~72dとが対向し、入射ポート14と光ファイバ74とが対向する。光ファイバ74を用いて入射ポート14に光を入射することができる。出射ポート12a~12dから出射される光を、光ファイバ72a~72dを介して光パワーメータ56a~56dで受光することができる。
【0067】
光ファイバ72a~72dは大口径のファイバであり、光ファイバ74よりも大きな径を有する。このため出射ポート12a~12dの出射光のロスを抑制し、光ファイバ72a~72dで受光することができる。
【0068】
調芯用ステージ60を用いて光ファイバアレイ70の位置を調整することで、光ファイバ74と入射ポート14との調芯が可能である。光ファイバアレイ70において、光ファイバ74に対する光ファイバ72a~72dの相対的な位置は定まっている。光変調素子10において、入射ポート14に対する出射ポート12a~12dの相対的な位置は定まっている。光ファイバ74と入射ポート14との調芯を行うと、出射ポート12a~12dと光ファイバ72a~72dとの調芯も同時に行われる。この結果、工程が簡略化される。調芯の工程においては、光ファイバアレイ70と光変調素子10のうち少なくとも一方の位置を調整すればよい。例えば角度調整用ステージ65を移動させることで光変調素子10の位置を調整する。
【0069】
光変調素子10の電極に電圧を印加せず、位相を調整しない状態で自動的に調芯を行う(
図4AのステップS18)。光変調素子10の電極に電圧を印加して位相を調整した状態でも自動的に調芯を行う(ステップS22)。2つの調芯の工程を自動で行うため、手動で調芯を行う場合に比べて、調芯にかかる時間および労力が低減する。
【0070】
光変調素子10が有する出射ポートは複数であり、4つ以上でもよいし、4つ以下でもよい。出射ポート12a~12dが面10aに設けられ、入射ポート14が面10aとは異なる面に設けられてもよい。光ファイバアレイ70には4つの光ファイバ72a~72dを配置する。光ファイバ74は、光ファイバアレイ70には設けず、入射ポート14と対向する位置に配置する。
【0071】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 光変調素子
10a、70a 面
11 基板
13a,13b マッハツェンダ変調器
14 入射ポート
12a~12d 出射ポート
16、20a、20b、24a~24d,28a~28h、32a~32d、36a~36d 導波路
18、22a、22b、26a~26d、30a~30d、34a、34b カプラ
40a~40h、42a~42h、44a~44d 電極
46、48 パッド
50 温度コントローラ
51 電流変換器
52 自動調芯コントローラ
54 波長可変レーザ光源
53、55 コネクタ
56a~56d 光パワーメータ
57 モニタ
59 カメラ
60 調芯用ステージ
61 フォルダ
62 冶具
63 固定器具
64 温調ステージ
65 角度調整用ステージ
66 マルチコンタクトプローブ
67 ピン
70 光ファイバアレイ
71 ベースプレート
72a~72d、74 光ファイバ
76 偏光板
80 制御部
81 位置制御部
82 合計値取得部
83 光源制御部
84 電圧制御部
100 測定装置
101 CPU
102 RAM
103 記憶装置
104 インターフェース