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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20241106BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20241106BHJP
   H01F 19/00 20060101ALI20241106BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01F27/29 G
H01F17/04 A
H01F19/00 Z
H01F27/28 K
H01F27/29 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023172492
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2021033448の分割
【原出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2023168527
(43)【公開日】2023-11-24
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 香織
(72)【発明者】
【氏名】山本 滋人
(72)【発明者】
【氏名】中本 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】増田 幸信
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/098241(WO,A1)
【文献】特開2014-120730(JP,A)
【文献】特開2020-057637(JP,A)
【文献】特表2021-517743(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178194(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を有する巻芯部と、
前記巻芯部における前記中心軸線に沿う方向の第1端に接続している第1鍔部と、
前記巻芯部における前記第1端とは反対側の第2端に接続している第2鍔部と、
前記第1鍔部の表面に位置する第1端子電極及び第2端子電極と、
前記第2鍔部の表面に位置する第3端子電極及び第4端子電極と、
前記中心軸線を回転軸として、前記巻芯部の周面上を螺旋状に延びる部分を有し、第1端が前記第1端子電極に接続され、当該第1端とは反対側の第2端が前記第3端子電極に接続されている第1ワイヤと、
前記中心軸線を回転軸として、前記巻芯部の周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向外側を螺旋状に延びる部分を有し、第1端が前記第2端子電極に接続され、当該第1端とは反対側の第2端が前記第4端子電極に接続されている第2ワイヤと、を備え、
前記第2ワイヤは、前記巻芯部の周面上を螺旋状に延びる内側部分と、前記内側部分よりも前記径方向外側を螺旋状に延びる外側部分と、を有しており、
前記第1ワイヤの前記巻芯部に巻き回されている部分のうち、前記第1ワイヤの線路上で前記第1ワイヤの前記第1端に最も近い1周目を1ターン目、前記第1ワイヤの線路上で前記第1ワイヤの前記第2端に最も近い最終ターンをMターン目とし、Lを1以上M-1以下の整数とし
前記第2ワイヤの前記巻芯部に巻き回されている部分のうち、前記第2ワイヤの線路上で前記第2ワイヤの前記第1端に最も近い1周目を1ターン目、前記第2ワイヤの線路上で前記第2ワイヤの前記第2端に最も近い最終ターンをNターン目としたとき、
前記内側部分は、前記第1ワイヤの前記M-1ターン目と前記Mターン目との間に位置しており、且つ、前記第2ワイヤの前記Nターン目を含んでおり、且つ、連続して720度よりも長い範囲で螺旋状に延びている
コイル部品。
【請求項2】
前記内側部分では、前記中心軸線を含む断面視で、前記第2ワイヤの隣り合うターン同士が前記中心軸線に沿う方向に接触している
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1ワイヤの巻き回し回数は、前記第2ワイヤの巻き回し回数と同じである
請求項1又は請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記外側部分の巻き回し回数は、前記内側部分の巻き回し回数よりも大きい
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のコイル部品は、中心軸線を有する巻芯部と、第1鍔部と、第2鍔部と、を備えている。巻芯部は、四角柱状になっている。第1鍔部は、巻芯部の第1端に接続している。第2鍔部は、巻芯部における第1鍔部とは反対側の第2端に接続している。
【0003】
また、特許文献1に記載のコイル部品は、4つの端子電極を備えている。第1端子電極及び第2端子電極は、第1鍔部の表面に位置している。第3端子電極及び第4端子電極は、第2鍔部の表面に位置している。
【0004】
さらに、特許文献1に記載のコイル部品は、第1ワイヤ及び第2ワイヤを備えている。第1ワイヤの第1端は、第1端子電極に接続されている。第1ワイヤの第1端とは反対側の第2端は、第3端子電極に接続されている。第2ワイヤの第1端は、第2端子電極に接続されている。第2ワイヤの第1端とは反対側の第2端は、第4端子電極に接続されている。第1ワイヤ及び第2ワイヤは、巻き芯部の中心軸線を回転軸として、中心軸線を中心とする径方向において、巻芯部よりも外側を螺旋状に延びている。また、第2ワイヤの大部分は、径方向において、第1ワイヤよりも外側に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-126976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のコイル部品では、第2ワイヤが、第1ワイヤに対して、中心軸線を中心とする径方向の外側に位置している。換言すると、第2ワイヤの方が、第1ワイヤよりも、巻芯部からの距離が大きい。そのため、第2ワイヤにおける漏れ磁束は、第1ワイヤにおける漏れ磁束よりも大きくなる可能性が高い。第2ワイヤの漏れ磁束が大きい場合、第2ワイヤによって得られるインダクタンス値は、第1ワイヤによって得られるインダクタンス値よりも、小さくなる。その結果、第1ワイヤによって得られるインダクタンス値と、第2ワイヤによって得られるインダクタンス値との差が大きくなってしまう。このように第1ワイヤ及び第2ワイヤで、得られるインダクタンス値の差が大きいと、コイル部品の特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、中心軸線を有する巻芯部と、前記巻芯部における前記中心軸線に沿う方向の第1端に接続している第1鍔部と、前記巻芯部における前記第1端とは反対側の第2端に接続している第2鍔部と、前記第1鍔部の表面に位置する第1端子電極及び第2端子電極と、前記第2鍔部の表面に位置する第3端子電極及び第4端子電極と、前記中心軸線を回転軸として、前記巻芯部の周面上を螺旋状に延びる部分を有し、第1端が前記第1端子電極に接続され、当該第1端とは反対側の第2端が前記第3端子電極に接続されている第1ワイヤと、前記中心軸線を回転軸として、前記巻芯部の周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向外側を螺旋状に延びる部分を有し、第1端が前記第2端子電極に接続され、当該第1端とは反対側の第2端が前記第4端子電極に接続されている第2ワイヤと、を備え、前記第2ワイヤは、前記巻芯部の周面上を連続して360度よりも長い範囲で螺旋状に延びる内側部分と、前記内側部分よりも前記径方向外側を螺旋状に延びる外側部分と、を有しており、前記第1ワイヤの前記巻芯部に巻き回されている部分のうち、前記第1ワイヤの線路上で前記第1ワイヤの前記第1端に最も近い1周目を1ターン目、前記第1ワイヤの線路上で前記第1ワイヤの前記第2端に最も近い最終ターンをMターン目とし、Lを1以上M-1以下の整数としたとき、前記内側部分は、前記第1ワイヤのLターン目とL+1ターン目との間に位置しているコイル部品である。
【0008】
上記構成によれば、第2ワイヤは、内側部分を有している。内側部分は、外側部分よりも巻芯部との距離が小さい。そのため、内側部分における漏れ磁束は、外側部分の漏れ磁束より小さくなる。これにより、第2ワイヤによって得られるインダクタンス値が小さくなることを抑制できる。その結果、仮に、第2ワイヤが外側部分のみによって構成されている場合と比べて、第2ワイヤによって得られるインダクタンス値を大きくできる。
【0009】
また、内側部分は、第1ワイヤのLターン目とL+1ターン目との間に位置している。そのため、内側部分を挟んでいる第1ワイヤのLターン目とL+1ターン目との間の距離は、内側部分を挟む分だけ離れている。これにより、第1ワイヤにおける漏れ磁束が大きくなることで、第1ワイヤによって得られるインダクタンス値が小さくなる。
【0010】
このように、第1ワイヤによって得られるインダクタンス値を小さくし、且つ第2ワイヤによって得られるインダクタンス値を大きくすることで、第1ワイヤによって得られるインダクタンス値と第2ワイヤによって得られるインダクタンス値との差を小さくできる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、第1ワイヤによって得られるインダクタンス値と第2ワイヤによって得られるインダクタンス値との差が大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】コイル部品の斜視図。
図2】コイル部品の上面図。
図3図2における3-3線に沿うコイル部品の一部断面図。
図4】比較例のコイル部品の一部断面図。
図5】実施例のコイル部品と比較例のコイル部品とのモード変換特性を示すグラフ。
図6】変更例のコイル部品の一部断面図。
図7】変更例のコイル部品の一部断面図。
図8】変更例のコイル部品の一部断面図。
図9】変更例のコイル部品の一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<コイル部品の一実施形態>
以下、コイル部品の一実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするため構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図中のものと異なる場合がある。また、断面図ではハッチングを付しているが、理解を容易にするために一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
【0014】
(全体構成)
図1に示すように、コイル部品10は、巻芯部11を備えている。巻芯部11は、四角柱状である。したがって、巻芯部11は、中心軸線CAを有し、且つ中心軸線CAに沿う方向に延びている。また、巻芯部11は、中心軸線CAを囲む周面11Fを有している。
【0015】
なお、以下の説明では、中心軸線CAに沿う方向に延びる軸を第1軸Xとする。また、第1軸Xに直交する軸を第2軸Yとし、第1軸X及び第2軸Yに直交する軸を第3軸Zとする。巻芯部11の中心軸線CAに直交する断面において、四角形を構成する4つの辺のうちいずれか特定の辺と平行に延びる軸を、第2軸Yとし、中心軸線CA及び第2軸Yの双方に直交する方向の軸を、第3軸Zとする。そして、第1軸Xに沿う方向の一方を第1正方向X1とし、第1軸Xに沿う方向の他方を第1負方向X2とする。また、第2軸Yに沿う方向の一方を第2正方向Y1とし、第2軸Yに沿う方向の他方を第2負方向Y2とする。さらに、第3軸Zに沿う方向の一方を第3正方向Z1とし、第3軸Zに沿う方向の他方を第3負方向Z2とする。
【0016】
コイル部品10は、第1鍔部12と、第2鍔部14と、を備えている。第1鍔部12は、巻芯部11の第1正方向X1の端である第1端に接続している。第1鍔部12は、巻芯部11の周面11Fよりも、中心軸線CAを中心とする径方向の外側に張り出している。
【0017】
第1鍔部12の第3正方向Z1の端面には、窪み部13が窪んでいる。窪み部13は、第1鍔部12の第2軸Yに沿う方向における中央部分に位置している。窪み部13は、第1鍔部12の第1軸Xに沿う方向におけるすべての範囲において窪んでいる。そのため、第1鍔部12の第2軸Yに沿う方向の両端部は、窪み部13を挟んで二股に分かれたような形状になっている。
【0018】
第2鍔部14は、巻芯部11の第1負方向X2の端である第2端に接続している。第2鍔部14は、巻芯部11を挟んで、第1鍔部12と第1軸Xに沿う方向に対称形状になっている。すなわち、第2鍔部14の第3正方向Z1の端面においても、第1鍔部12の窪み部13と対称形状の窪み部15が窪んでいる。
【0019】
巻芯部11、第1鍔部12及び第2鍔部14は、コイル部品10のコア10Cを構成している。コア10Cの材質は、非導電性材料である。コア10Cの材質は、例えば、アルミナ、ニッケル亜鉛系フェライト、樹脂、又はこれらの混合物等である。
【0020】
コイル部品10は、天板16を備えている。天板16は、コア10Cの第3負方向Z2の端に接続している。天板16は、長方形の板状である。天板16は、第1鍔部12の第3負方向Z2の端面と第2鍔部14の第3負方向Z2の端面とを架け渡すように、コア10Cに取り付けられている。天板16は、コア10Cと同じ材質からなり、コア10Cと共に閉磁路を形成している。
【0021】
コイル部品10は、第1端子電極21と、第2端子電極22と、第3端子電極23と、第4端子電極24と、を備えている。
第1端子電極21は、第1鍔部12の表面に位置している。具体的には、第1鍔部12の第3正方向Z1の端面において、窪み部13よりも第2正方向Y1に位置している範囲に、第1端子電極21は位置している。
【0022】
第2端子電極22は、第1鍔部12の表面に位置している。具体的には、第1鍔部12の第3正方向Z1の端面において、窪み部13よりも第2負方向Y2に位置している範囲に、第2端子電極22は位置している。
【0023】
第3端子電極23は、第2鍔部14の表面に位置している。具体的には、第2鍔部14の第3正方向Z1の端面において、窪み部15よりも第2正方向Y1に位置している範囲に、第3端子電極23は位置している。
【0024】
第4端子電極24は、第2鍔部14の表面に位置している。具体的には、第2鍔部14の第3正方向Z1の端面において、窪み部15よりも第2負方向Y2に位置している範囲に、第4端子電極24は位置している。なお、図面においては、第1端子電極21、第2端子電極22、第3端子電極23及び第4端子電極24を、二点鎖線で図示している。
【0025】
上記の第1端子電極21~第4端子電極24は、銀の金属層及び金属層の表面に施された銅、ニッケル、錫のめっき層からなる。本実施形態では、コイル部品10において第1端子電極21~第4端子電極24が設けられている表面は、コイル部品10を基板に実装する際に基板と対向する面である。
【0026】
(第1ワイヤ及び第2ワイヤ)
コイル部品10は、第1ワイヤ30と、第2ワイヤ40と、を備えている。
第1ワイヤ30は、中心軸線CAを回転軸として、巻芯部11の周面11F上を螺旋状に延びる部分を有している。図3に示すように、第1ワイヤ30は、第1ワイヤ30の延びる方向に直交する断面視で円形状である。なお、第1ワイヤ30は、直径30μmの銅線が10μmの絶縁被膜で被膜されたものである。すなわち、第1ワイヤ30の延びる方向に直交する断面視で、第1ワイヤ30の直径は、50μmである。
【0027】
図2に示すように、第1ワイヤ30の第1端は、第1端子電極21に接続している。第1ワイヤ30における第1端を含む一部分は、第1端子電極21から、巻芯部11の4つの稜線のうちの第2端子電極22に最も近い稜線に向かって延びている。
【0028】
第1負方向X2を向いて第1ワイヤ30を視たときに、第1ワイヤ30は、時計回りで巻芯部11に巻き回されている。第1ワイヤ30の延び方向における第1端とは反対側の第2端を含む一部分は、巻芯部11の第2鍔部14の近傍において、巻芯部11の4つの稜線のうちの第4端子電極24から最も遠い稜線から第3端子電極23に向かって延びている。第1ワイヤ30の第2端は、第3端子電極23に接続している。
【0029】
図1に示すように、第2ワイヤ40は、中心軸線CAを回転軸として、巻芯部11の周面11Fよりも中心軸線CAを中心とする径方向外側を螺旋状に延びる部分を有している。第2ワイヤ40は、第1ワイヤ30と同じ断面形状及び寸法のワイヤである。
【0030】
図2に示すように、第2ワイヤ40の第1端は、第2端子電極22に接続している。第2ワイヤ40における第1端を含む一部分は、巻芯部11の4つの稜線のうちの第1端子電極21から最も遠い稜線に向かって延びている。
【0031】
第1負方向X2を向いて第2ワイヤ40を視たときに、時計回りで巻芯部11に巻き回されている。第2ワイヤ40の延び方向における第1端とは反対側の第2端を含む一部分は、巻芯部11の第2鍔部14の近傍において、巻芯部11の4つの稜線のうちの第3端子電極23に最も近い稜線から第4端子電極24に向かって延びている。第2ワイヤ40の第2端は、第4端子電極24に接続している。
【0032】
図3に示すように、第1ワイヤ30の巻芯部11の周面11F上を螺旋状に延びている部分は、中心軸線CAを回転軸として連続して360度より長い範囲で巻き回されている。そして、第1ワイヤ30が、中心軸線CAを回転軸として360度巻き回されていると、巻き回し数が「1」とする。そして、巻き回されている角度が360度増えるごとに、巻回し回数は1ずつ増加するものとする。
【0033】
また、第1ワイヤ30の巻芯部11の周面11F上を螺旋状に延びている部分のうち、第1ワイヤ30の線路上で、第1端子電極21に接続されている側の端から、中心軸線CAを中心として360度巻き回されるまでの範囲を1ターン目とする。具体的には、第1ワイヤ30を第1端側から辿っていって第1ワイヤ30が巻芯部11に始めに接触した箇所から、巻芯部11の周面11Fに沿って中心軸線CAを中心として360度巻き回された箇所までの範囲を1ターン目とする。巻芯部11に巻き回された第1ワイヤ30のターン数は、第3端子電極23側に向かうにつれて、2ターン目、3ターン目・・・とする。第1ワイヤ30の線路上で第3端子電極23に接続されている側の端に最も近い最終ターンをMターン目とする。本実施形態において、第1ワイヤ30の最終ターンは、第1ワイヤ30が巻芯部11に巻き回される工程において、1ターン目から数えて最後に1周巻き回された周回を意味する。つまり、本実施形態では、第1ワイヤ30は、合計で巻芯部11にMターン分と半周分巻き回されている。このように、第1ワイヤ30においてMターン目の後に1ターン分に満たない巻き回し箇所がある場合、その箇所のターン数を省略してターン数を表現する。すなわち、本実施形態の第1ワイヤ30の巻き回し回数は、Mである。また、本実施形態において、第1ワイヤ30の線路上とは、第1ワイヤ30を辿った経路上であることを意味する。なお、図3では、第1ワイヤ30を、ドットを付すとともにターン数を付して図示している。
【0034】
第2ワイヤ40の巻芯部11の周面11Fよりも中心軸線CAを中心とする径方向外側を螺旋状に延びている部分のうち、第2ワイヤ40の線路上で第2端子電極22に接続されている側の端から、中心軸線CAを中心として360度巻き回されるまでの範囲を1ターン目とする。巻芯部11に巻き回された第2ワイヤ40のターン数は、第4端子電極24側に向かうにつれて、2ターン目、3ターン目・・・とする。第2ワイヤ40の線路上で第4端子電極24に接続されている側の端に最も近い最終ターンをNターン目とする。また、本実施形態において、第2ワイヤ40の最終ターンは、第2ワイヤ40が巻芯部11に巻き回される工程において、1ターン目から数えて最後に1周巻き回された周回を意味する。つまり、本実施形態では、第2ワイヤ40は、合計で巻芯部11にNターン分と半周分巻き回されている。なお、第2ワイヤ40の巻き回し回数の数え方は第1ワイヤ30と同様である。すなわち、第2ワイヤ40の巻き回し回数は、Nである。また、本実施形態において、第2ワイヤ40の線路上とは、第2ワイヤ40を辿った経路上であることを意味する。なお、図3では、第2ワイヤ40を、白抜きにするとともにターン数を付して図示している。
【0035】
この実施形態では、第2ワイヤ40の巻き回し数Nは、第1ワイヤ30の巻き回し数Mと同一である。また、この実施形態では、第2ワイヤ40の巻き回し数N及び第1ワイヤ30の巻き回し数Mは、5以上である。
【0036】
第1ワイヤ30の1ターン目は、第1鍔部12の近傍で巻芯部11の周面11F上を螺旋状に延びている。第1ワイヤ30の2ターン目は、第1ワイヤ30の1ターン目の第1負方向X2の端に隣接して延びている。同様に、第1ワイヤ30の3ターン目からM-1ターン目までは、1ターン前に巻いた第1ワイヤ30の第1負方向X2の端に隣接して、ターン数が大きい方が第1負方向X2に位置するように、巻芯部11の周面11F上を螺旋状に延びている。
【0037】
第2ワイヤ40の1ターン目は、第1ワイヤ30の第1軸Xに沿う方向に隣り合う1ターン目と2ターン目との間に延びている境界よりも、中心軸線CAを中心とする径方向外側において延びている。ここで、第1軸Xに沿う方向に隣り合うターンとは、第1ワイヤ30同士又は第2ワイヤ40同士において、任意のターンと、当該任意のターンの1つ後のターンと、を指す。
【0038】
また、第2ワイヤ40の1ターン目は、第1ワイヤ30の第1軸Xに沿う方向に隣り合うターンの間に延びている境界に沿うように、第1ワイヤ30の1ターン目と2ターン目との外面と接触して延びている。
【0039】
第2ワイヤ40の2ターン目は、第1ワイヤ30の第1軸Xに沿う方向に隣り合う2ターン目と3ターン目との間に延びている境界よりも、中心軸線CAを中心とする径方向外側において延びている。また第2ワイヤ40の2ターン目は、当該境界に沿うように第1ワイヤ30の2ターン目と3ターン目との外面と接触して延びている。そして、第2ワイヤ40の2ターン目は、第2ワイヤ40の1ターン目の第1負方向X2の端に隣接して延びている。同様に、第2ワイヤ40の3ターン目からN-2ターン目までは、1ターン前に巻いた第2ワイヤ40の第1負方向X2の端に隣接して、ターン数が大きい方が、第1負方向X2に位置するように、第1ワイヤ30の外面に接触して螺旋状に延びている。
【0040】
第2ワイヤ40のN-1ターン目は、第1ワイヤ30のM-1ターン目の第1負方向X2の端に隣接して延びている。そして、第2ワイヤ40のNターン目は、第2ワイヤ40のNターン目の第1負方向X2の端に隣接して延びている。すなわち、第2ワイヤ40のN-1ターン目及びNターン目は、巻芯部11の周面11F上を沿って延びている。そのため、第2ワイヤ40のN-1ターン目及びNターン目は、第2ワイヤ40の1ターン目からN-2ターン目までよりも、中心軸線CAを中心とする径方向内側に位置している。
【0041】
また、第1ワイヤ30のMターン目は、第2ワイヤ40のNターン目の第1負方向X2の端に隣接して延びている。そのため、第2ワイヤ40のN-1ターン目及びNターン目は、第1ワイヤ30のM-1ターン目とMターン目との間に挟まれている。
【0042】
(外側部分及び内側部分)
第2ワイヤ40は、外側部分41と、内側部分42と、を有している。上述した第2ワイヤ40のうち、外側部分41は、1ターン目からN-2ターン目までの部分であり、内側部分42は、N-1ターン目及びNターン目の部分である。
【0043】
上述したように、第2ワイヤ40の1ターン目からN-2ターン目までの部分からなる外側部分41は、第2ワイヤ40のN-1ターン目及びNターン目からなる内側部分42よりも、中心軸線CAを中心とする径方向外側を螺旋状に延びている。
【0044】
また、内側部分42は、第2ワイヤ40のN-1ターン目及びNターン目の2周分で構成されている。そのため、内側部分42は、巻芯部11の周面11F上を連続して360度よりも長い720度の範囲で螺旋状に延びている。また、本実施形態では、第2ワイヤ40の巻き回し数Nは、5以上であるため、内側部分42の巻き回し数は「2」であるとともに外側部分41の巻き回し数は「3」以上である。そのため、外側部分41の巻き回し数は、内側部分42の巻き回し数よりも大きい。
【0045】
そして、第2ワイヤ40のNターン目は、第2ワイヤ40のN-1ターン目の第1負方向X2の端に隣接して延びている。そのため、内側部分42では、中心軸線CAを含む断面視で、第2ワイヤ40の第1軸Xに沿う方向に隣り合うターン同士が接触している。
【0046】
さらに、第2ワイヤ40のN-1ターン目及びNターン目は、第1ワイヤ30のM-1ターン目及びMターン目の間に位置している。そのため、内側部分42は、第1ワイヤ30の第1軸Xに沿う方向に隣り合うターンの間に位置している。よって、Lを、1以上M-1以下の整数としたとき、内側部分42は、第1ワイヤ30のLターン目とL+1ターン目との間に位置している。特に、本実施形態では、Lは、1以上M-1以下の整数のうち、M-1である。
【0047】
(比較試験)
先ず、比較例のコイル部品90について説明する。
図4に示すように、比較例のコイル部品90は、上記実施形態のコイル部品10と比べて、第1ワイヤ30のMターン目と、第2ワイヤ40のN-1ターン目及びNターン目と、が異なる。具体的には、比較例のコイル部品90において、第1ワイヤ30のMターン目は、第1ワイヤ30のM-1ターン目の第1負方向X2の端に隣接して延びている。そのため、第1ワイヤ30のM-1ターン目とMターン目との間には、第2ワイヤ40は存在していない。
【0048】
比較例のコイル部品90において、第2ワイヤ40のN-1ターン目は、第2ワイヤ40のN-2ターン目の第1負方向X2の端に隣接して延びている。また、第2ワイヤ40のNターン目は、第1ワイヤ30のMターン目の第1負方向X2の端に隣接して延びている。そのため、第2ワイヤ40の巻芯部11の周面11Fよりも中心軸線CAを中心とする径方向外側を螺旋状に延びている部分のうち、1ターン目からN-1ターン目までは、外側部分41である。第2ワイヤ40のNターン目は、外側部分41よりも中心軸線CAを中心とする径方向内側に位置する内側部分42である。しかし、コイル部品90の内側部分42では第2ワイヤ40の隣り合うターン同士が接触しておらず、コイル部品90の内側部分42は第1ワイヤ30の隣り合うターンによって挟まれていない。
【0049】
図5に示すように、上述した実施形態のコイル部品10と、比較例のコイル部品90と、について、モード変換特性の1つであるSds21を実験により比較した。図5において、横軸は周波数であり、縦軸モードは変換特性の1つであるSds21である。図5では、実線により上記実施形態のコイル部品10の特性が示され、一点鎖線により比較例のコイル部品90の特性が示されている。このように、上記実施形態のコイル部品10では、比較例のコイル部品90と比べて、周波数が10MHz以下の範囲において、Sds21が低減していた。
【0050】
(実施形態の作用)
上記実施形態のコイル部品10によれば、第2ワイヤ40は、内側部分42を有している。内側部分42は、巻芯部11の周面11F上を、連続して360度よりも長い範囲、具体的には720度の範囲で螺旋状に延びている。また、内側部分42は、外側部分41よりも中心軸線CAとの距離が小さい。そのため、内側部分42における漏れ磁束は、外側部分41の漏れ磁束よりも小さくなる。
【0051】
さらに、内側部分42は、第1ワイヤ30のLターン目とL+1ターン目との間に位置している。特に、本実施形態では、内側部分42は、第1ワイヤ30のM-1ターン目とMターン目との間に位置している。そのため、内側部分42を挟んでいる第1ワイヤ30のM-1ターン目及びMターン目の距離は、内側部分42を挟む分だけ離れている。よって、第1ワイヤ30においては、仮にM-1ターン目とMターン目とが接触している場合と比べて、漏れ磁束が大きくなる。
【0052】
(実施形態の効果)
(1)上記実施形態のコイル部品10によれば、第2ワイヤ40は内側部分42を有している。そのため、上述した作用のように、仮に第2ワイヤ40が内側部分42を有しない場合と比べて、第2ワイヤ40における漏れ磁束が小さくなる。一方で、仮に第2ワイヤ40が内側部分42を有しない場合と比べて、第1ワイヤ30における漏れ磁束が大きくなる。
【0053】
よって、仮に第2ワイヤ40が内側部分42を有しない場合と比べて、第2ワイヤ40における漏れ磁束が小さくなることによって、第2ワイヤ40によって得られるインダクタンス値は大きくなる。一方で、仮に第2ワイヤ40が内側部分42を有しない場合と比べて、第1ワイヤ30によって得られるインダクタンス値は小さくなる。
【0054】
したがって、第1ワイヤ30によって得られるインダクタンス値は小さくなり、且つ第2ワイヤ40によって得られるインダクタンス値は大きくなる。これにより、第1ワイヤ30によって得られるインダクタンス値と第2ワイヤ40によって得られるインダクタンス値の差を小さくすることができる。その結果、コイル部品10によれば、モード変換特性の1つであるSds21を、仮に第2ワイヤ40が内側部分42を有しない場合と比べて、低減させることができる。
【0055】
(2)上記実施形態によれば、内側部分42では、第2ワイヤ40の隣り合うターンが接触している。すなわち、内側部分42は、中心軸線CAに沿う方向に接触している箇所を有している。そのため、内側部分42のうち、隣り合うターンと接触している箇所においては、仮に隣り合うターンが接触していない場合と比べて、漏れ磁束の発生を抑制できる。よって、上記実施形態のコイル部品10によれば、内側部分42におけるワイヤ40間は、接触している箇所において漏れ磁束が発生することをさらに抑制できる。
【0056】
(3)上記実施形態のコイル部品10によれば、内側部分42は、第1ワイヤ30のM-1ターン目とMターン目との間に位置している。そのため、コイル部品10の製造過程において、巻芯部11に第1ワイヤ30を巻き回す際に、最終ターンであるMターン目だけを、M-1ターン目から離して巻き回せばよくて済む。したがって、内側部分42を第1ワイヤ30のM-1ターン目とMターン目との間に配置するにあたり、製造装置や製造工程の大幅な変更は不要である。
【0057】
(4)仮に内側部分42が最終ターンを含まず、第2ワイヤ40の巻き回しの途中に内側部分42が存在する場合、外側部分41として第2ワイヤ40を巻き回した後に内側部分42として第2ワイヤ40を巻き回し、その後さらに外側部分41としての巻き回す必要がある。そのため、第2ワイヤ40を巻き回すにあたって、その巻き回しの途中で、巻き回し方法を何度も変更しなければならないこともある。
【0058】
この点、上記実施形態のコイル部品10によれば、内側部分42は、第2ワイヤ40のN-1ターン目及びNターン目である。すなわち、内側部分42は、最終ターンであるNターン目を含んでいる。よって、巻芯部11に第2ワイヤ40を巻き回す際に、最終ターンを含む部分だけ内側部分42として巻き回せばよい。したがって、上記実施形態によれば、このように、内側部分42として巻き回した後に、外側部分41として巻き回すために、巻き回し方を変更する必要がない。
【0059】
(5)上記実施形態のコイル部品10によれば、第1ワイヤ30の巻き回し回数は、第2ワイヤ40の巻き回し回数と同じである。この場合、巻き回し回数によって各ワイヤによって得られるインダクタンス値を調整できない。このような構成において、各ワイヤのインダクタンス値のずれを小さくするために、第2ワイヤ40に内側部分42を設けることは特に好適である。
【0060】
(6)第1ワイヤ30の巻き回し回数と第2ワイヤ40の巻き回し回数が同じであることで、第1ワイヤ30によるコイルと第2ワイヤ40によるコイルとの対称性を得やすい。また、第1ワイヤ30と第2ワイヤ40とで、インダクタンス値や電気抵抗値をそろえやすくできる。
【0061】
(7)上記実施形態のコイル部品10によれば、第2ワイヤ40の外側部分41の巻き回し回数は、第2ワイヤ40の内側部分42の巻き回し回数よりも大きい。外側部分41の巻き回し回数が相応に大きいと、第2ワイヤ40の外側部分41によって得られるインダクタンス値が、外側部分41と同じ巻き回し回数の第1ワイヤ30によって得られるインダクタンス値に比べてより小さくなる。このような構成において、各ワイヤのインダクタンス値のずれを小さくするために、第2ワイヤ40に内側部分42を設けることは特に好適である。
【0062】
<コイル部品のその他の実施形態>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0063】
・上記実施形態において、巻芯部11の形状は、上記実施形態の例に限られない。例えば、円柱状でもよいし、四角柱状以外の多角柱状でもよい。
・上記実施形態において、天板16を省いてもよい。
【0064】
・上記実施形態において、コア10Cは、巻芯部11と、第1鍔部12と、第2鍔部14とを備えていればよい。例えば、窪み部13を省いてもよい。この場合、例えば第1端子電極21と第2端子電極22とが互いに離れており、且つ、第3端子電極23と第4端子電極24とが互いに離れていればよい。
【0065】
・上記実施形態において、第1端子電極21~第4端子電極24の材料及び形状は、上記実施形態の例に限られない。例えば、第1端子電極21~第4端子電極24におけるめっき層の材料は、錫やニッケル合金などでもよい。また、第1端子電極21~第4端子電極24が、めっき層を有さず、導電性を有する金属層が露出していてもよい。
【0066】
・上記実施形態において、第1ワイヤ30及び第2ワイヤ40の断面形状及び寸法は、上記実施形態の例に限られない。例えば、上記実施形態の物に比較して、銅線の直径がより大きくてもよいし、絶縁被膜の厚みがより厚くてもよい。
【0067】
・第1ワイヤ30の巻き回し回数と、第2ワイヤ40の巻き回し回数とは、異なっていてもよい。
・上記実施形態において、内側部分42の延びる範囲は、少なくとも、巻芯部11の周面11F上を、連続して360度より長い範囲であればよい。換言すると、上記実施形態において、内側部分42の巻き回し数は、上記実施形態の例に限られず、「1」より大きければよい。内側部分42が連続して360度より長い範囲で延びていれば、内側部分42は少なくとも部分的に隣り合うターンを有する。
【0068】
・上記実施形態において、内側部分42において、第1軸Xに沿う方向に隣り合うターン同士は、中心軸線CAに沿う方向に接触していなくてもよい。
・上記実施形態において、内側部分42は、巻芯部11の周面11F上と常に接触して螺旋状に延びているが、部分的に周面11Fから離れて螺旋状に延びていることもある。例えば、中心軸線CAに沿う方向から巻芯部11を視たときに、内側部分42は、巻芯部11の4つのコーナ近傍では周面11Fと接触しており、コーナとコーナとの間においては、周面11Fから離れていてもよい。このように、内側部分42が断続的に周面11Fに接触している場合であっても、内側部分42は、周面11F上を延びているといえる。
【0069】
・内側部分42の巻き回し数が、上記実施形態の例よりも大きくてもよい。図6に示す例では、コイル部品110の第2ワイヤ140は、外側部分141と、内側部分142と、を有している。外側部分141は、第2ワイヤ140の1ターン目からN-3ターン目までの部分である。なお、外側部分141のうち、いずれか1つの周回では、隣り合うターンと中心軸線CAの延びる方向に離れている。そして、内側部分142は、第2ワイヤ140のN-2ターン目からNターン目の部分である。そのため、内側部分142の巻き回し回数は、3である。すなわち、この変更例において、内側部分142は、巻芯部11の周面11F上を連続して720度よりも長い範囲で延びている。この場合、第2ワイヤ140によって得られるインダクタンス値を、コイル部品10よりもさらに大きくすることができる。
【0070】
・内側部分42の巻き回し数は、外側部分41の巻き回し数以上であってもよい。第1ワイヤ30の巻き回し回数、第2ワイヤ40の巻き回し回数、又は巻芯部11の中心軸線CAを中心とする直径の大きさ等に併せて、適宜調整すればよい。
【0071】
・上記実施形態において、内側部分42は、第2ワイヤ40のNターン目を含んでいなくてもよい。この場合であっても、内側部分42によって、第2ワイヤ40によって得られるインダクタンス値を大きくすることはできる。
【0072】
・上記実施形態において、内側部分42は、第1ワイヤ30のM-1ターン目とMターン目との間ではない箇所に位置していてよい。例えば、第1ワイヤ30のM-2ターン目とM-1ターン目との間に位置していてもよい。すなわち、内側部分42は、第1ワイヤ30のLターン目とL+1ターン目との間に位置していればよい。この場合であっても、第1ワイヤ30のLターン目とL+1ターン目との間に内側部分42が挟まれることによって、当該第1ワイヤ30のLターン目とL+1ターン目との間の距離が離れる。これにより、第1ワイヤ30によって得られるインダクタンス値を小さくするとともに、第2ワイヤ40によって得られるインダクタンス値を大きくすることによって、両ワイヤによって得られるインダクタンス値の差を小さくすることができる。
【0073】
・上記実施形態において、第2ワイヤ40は、内側部分42とは別に、外側部分41よりも内側に位置する部分を有していてもよい。図7に示す例では、第2ワイヤ240は、外側部分241と、第1内側部分242と、第2内側部分243と、を有している。外側部分241は、第2ワイヤ240の2ターン目からN-2ターン目までの部分である。第1内側部分242は、第2ワイヤ240のN-1ターン目及びNターン目である。第2内側部分243は、第2ワイヤ240の1ターン目である。第1内側部分242は、上述の実施形態におけるコイル部品10の内側部分42と同一の構成である。第2内側部分243は、巻芯部11の周面11F上を延び、且つ、第1ワイヤ30の隣り合うターンである第1ワイヤ30の1ターン目と2ターン目との間に位置している。この場合、コイル部品210は、第1内側部分242に加えて、さらに第2内側部分243を有することで、第2ワイヤ240によって得られるインダクタンス値を、コイル部品10よりもさらに大きくすることができる。
【0074】
また、図7に示す変更例では、第2内側部分243は、第2ワイヤ40の1ターン目を含んでいる。そのため、第2内側部分243を設けるうえで、コイル部品210の製造過程では、最初の1ターン目だけ、外側部分241とは異なる巻き回し方をするだけで済む。
【0075】
さらに、図7に示す変更例では、第2内側部分243は、巻芯部11の周面11F上を、連続して360度以下の範囲で延びている。そのため、第2内側部分243では、第1内側部分242によって抑制できる漏れ磁束よりも、小さい分だけ、漏れ磁束を抑制できる。これにより、第2ワイヤ40によって得られるインダクタンス値を調整しやすくなる。
【0076】
図7に示す変更例において、第2内側部分243は、第2ワイヤ40の1ターン目でなくてもよい。図8に示す変更例では、コイル部品310において、第2ワイヤ340は、外側部分341と、第1内側部分342と、第2内側部分343と、を有している。そして、外側部分341は、第2ワイヤ340の1ターン目からN-3ターン目までの部分である。第1内側部分342は、第2ワイヤ340のN-1ターン目及びNターン目である。そして、第2内側部分343は、N-2ターン目である。この場合であっても、第2内側部分343があることによって、第1ワイヤ30のM-2ターン目とM-1ターン目とが、第1軸Xに沿う方向に離される。これにより、第1ワイヤ30の漏れ磁束が大きくなることによって、第1ワイヤ30によって得られるインダクタンス値が小さくなることで、インダクタンス値の差を調整できる。
【0077】
図7に示す変更例において、第2内側部分243は、巻芯部11の周面11F上を、連続して360度より長い範囲で延びていてもよい。図9に示す変更例では、コイル部品410において、第2ワイヤ440は、第1外側部分441と、第2外側部分442と、第1内側部分443と、第2内側部分444と、を有している。第1外側部分441は、第2ワイヤ440の1ターン目からN-5ターン目までの部分である。第2外側部分442は、第2ワイヤ440のN-2ターン目である。第1内側部分443は、第2ワイヤ440のN-1ターン目及びNターン目である。第2内側部分444は、第2ワイヤ440のN-4ターン目及びN-3ターン目である。このように、上記実施形態のコイル部品10における内側部分42を、複数備えていてもよい。図9に示す変更例の場合、第2ワイヤ440によって得られるインダクタンス値を、第2内側部分444がない場合よりも、さらに大きく得ることができる。
【0078】
図7に示す変更例において、第2内側部分243は、第1ワイヤ30の1ターン目と2ターン目との間に位置していなくてもよい。Kを1以上M-1以下の整数としたとき、第2内側部分243は、第1ワイヤ30のKターン目とK+1ターン目との間に位置していればよい。なお、第2内側部分243は、第1内側部分242とは別に設けられているため、Kは、Lとは異なる整数である。例えば、図8に示す変更例では、Kは1であり、LはM-1である。また、例えば、図9に示す変更例では、KはM-4であり、LはM-1である。
【0079】
・上記実施形態において、外側部分41と内側部分42とは、周面11Fのうち、第3正方向Z1を向く面上に位置する箇所において、主に説明した。外側部分41と内側部分42との第1軸Xに沿う方向における位置関係は、中心軸線CAを含むいずれかの断面において満たしていればよい。そのため、周面11Fのすべてにおいて、同じ構成とはならなくてもよい。例えば、周面11Fのうち第3負方向Z2を向く面においては、第1ワイヤ30のM-1ターン目が、第2ワイヤ40のN-1ターン目よりも、中心軸線CAを中心とする径方向外側で延びていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…コイル部品
10C…コア
11…巻芯部
11F…周面
12…第1鍔部
13…窪み部
14…第2鍔部
15…窪み部
16…天板
21…第1端子電極
22…第2端子電極
23…第3端子電極
24…第4端子電極
30…第1ワイヤ
40…第2ワイヤ
41…外側部分
42…内側部分
CA…中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9