(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06T 17/00 20060101AFI20241106BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20241106BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20241106BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20241106BHJP
【FI】
G06T17/00
G06T7/70 Z
G06T19/00 A
G06F30/13
(21)【出願番号】P 2023214298
(22)【出願日】2023-12-19
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋久 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 圭
(72)【発明者】
【氏名】東福寺 智子
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-081570(JP,A)
【文献】特開2023-086430(JP,A)
【文献】特開2019-121394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 17/00
G06T 7/70
G06T 19/00
G06F 30/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって指定される、対象建造物に対する視点の位置を取得することと、
前記取得された視点の位置に基づいて、前記対象建造物のBIM(Building information Modeling)モデルを含む仮想空間に一点又は複数の仮想視点を設定することと、
前記仮想空間において、前記一点又は複数の仮想視点のそれぞれから前記対象建造物のBIMモデルに向かって一本又は複数の仮想視線を描画することと、
前記対象建造物を構成する複数の構成要素の中から、前記対象建造物のBIMモデルにおいて各仮想視線が最初に交わる構成要素を特定することと、
し、
前記特定された各構成要素に関するデータを前記対象建造物のBIMモデルから抽出することと、
を実行する制御部を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記取得された視点の位置が前記対象建造物の全方位である場合、
前記制御部は、
前記仮想空間において前記対象建造物のBIMモデルの周囲の全方位に複数の仮想視点を設定し、
前記複数の仮想視点のそれぞれから前記対象建造物のBIMモデルの中心に向かって前記仮想視線を描画する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得された視点の位置が前記対象建造物の所定の一方向である場合、
前記制御部は、
前記仮想空間において前記対象建造物のBIMモデルの前記所定の一方向に一点又は複数の仮想視点を設定し、
前記一点又は複数の仮想視点から前記対象建造物のBIMモデルの可視範囲全面に向かって一本又は複数の仮想視線を描画する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得されたユーザ視点の位置が前記対象建造物の内部における特定の空間内である場合、
前記仮想空間において前記対象建造物のBIMモデルにおける前記特定の空間内に一点または複数の仮想視点を設定し、
前記一点または複数の仮想視点のそれぞれから、前記対象建造物のBIMモデルにおける前記特定の空間内の全方位に向かって複数の仮想視線を描画する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記対象建造物のBIMモデルにおいて構成要素間に形成された所定の幅より小さい隙間を、前記描画された仮想視線のうちのいずれかが通過した場合、前記制御部は、前記隙間を通過した仮想視線をキャンセルすることをさらに実行する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、BIM(Building information Modeling)モデルから特定のデータを抽出
する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、BIMデータを用いた光環境のシミュレーションに関する技術が開示されている。特許文献1に開示の技術では、第1処理部が、BIMデータを構成する部材のうち建物の光環境に影響する部材を抽出する。第2処理部が、第1処理部が抽出した部材の光環境に関連する特性のデータを用いて、建物の光環境に要求される所定の条件を満足するように、照明設備に関する特性のデータを定める。
【0003】
特許文献2には、設計物の避難安全検証の計算に設計物のモデル情報を用いるための技術が開示されている。特許文献3には、3次元の建物データから部屋モデルを抽出するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/088335号
【文献】特開2022-097805号公報
【文献】国際公開第2016/147304号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、対象建造物の外観又は内観の形状又は特性に関わる構成要素に関するデータを対象建造物のBIMモデルから抽出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様に係る情報処理装置は、
ユーザによって指定される、対象建造物に対する視点の位置を取得することと、
前記取得された視点の位置に基づいて、前記対象建造物のBIM(Building information Modeling)モデルを含む仮想空間に一点又は複数の仮想視点を設定することと、
前記仮想空間において、前記一点又は複数の仮想視点のそれぞれから前記対象建造物のBIMモデルに向かって一本又は複数の仮想視線を描画することと、
前記対象建造物を構成する複数の構成要素の中から、前記対象建造物のBIMモデルにおいて各仮想視線が最初に交わる構成要素を特定することと、
し、
前記特定された各構成要素に関するデータを前記対象建造物のBIMモデルから抽出することと、
を実行する制御部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、対象建造物の外観又は内観の形状又は特性に関わる構成要素に関するデータを対象建造物のBIMモデルから抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、対象建造物のBIMモデルからデータを抽出するためのデータ抽出処理の概略を説明するための図である。
【
図2】
図2は、情報処理装置のハードウェアの概略構成し示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ユーザ視点の位置が対象建造物の周囲の全方位である場合のデータ抽出処理について説明するための図である。
【
図4】
図4は、ユーザ視点の位置が対象建造物の前方である場合のデータ抽出処理について説明するための図である。
【
図5】
図5は、ユーザ視点の位置が対象建造物の特定の通路内である場合のデータ抽出処理について説明するための図である。
【
図6】
図6は、データ抽出処理のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
建造物の三次元モデルとしてBIMモデルが使用される場合がある。BIMモデルは建造物を構成する各要素(構成要素)に関するデータの集合体である。なお、建造物の構成要素には、建造物本体を形成する部材(柱、壁、ドア等)のみならず、建造物に設置される各種設備(家具、空調機、照明器具等)が含まれる。また、BIMモデルは、各構成要素の寸法、形状等の形態に関するデータのみならず、各構成要素の属性(種別、メーカー、品番等)、材質、性能、価格等の建造物の設計、施工、分析、維持管理等に関わる様々なデータを有している。
【0010】
BIMモデルによれば、建造物の各構成要素に関する様々なデータを一元的に管理することができる。一方で、BIMモデルは膨大なデータを有することから、データ容量が非常に大きい。そのため、建造物の全体又は一部の外観又は内観の形状又は特性について検討する際にBIMモデルを使用してビジュアライズ又は各種のシミュレーションを行う場合、データ容量が過剰に大きいために、コンピュータでの演算処理に時間がかかってしまう、という課題が発生し得る。本開示は、このような課題に鑑みてなされたものである。
【0011】
本開示に係る情報処理装置は、対象建造物を構成する複数の構成要素のうち、ユーザが対象建造物を所望の視点から見た場合にユーザの視界に入る構成要素に関するデータを対象建造物のBIMモデルから抽出する。
【0012】
詳細には、本開示に係る情報処理装置は制御部を備える。制御部は、ユーザによって指定される、対象建造物に対する視点(以下、「ユーザ視点」と称する場合もある。)の位置を取得する。ユーザ視点の位置は、対象建造物においてデータの抽出対象となる外観又は内観を特定するために指定される。そして、制御部は、取得されたユーザ視点の位置に基づいて、対象建造物のBIMモデルを含む仮想空間に一点又は複数の仮想視点を設定する。ここで、仮想空間は、BIMモデルを使用したビジュアライズ又は各種のシミュレーションのためのコンピュータでの演算処理に利用される空間である。一点又は複数の仮想視点は、仮想空間において、ユーザによって指定されたユーザ視点の位置に対応する位置に設定される。
【0013】
また、制御部は、仮想空間において、一点又は複数の仮想視点のそれぞれから対象建造物のBIMモデルに向かって一本又は複数の仮想視線を描画する。このとき、一本又は複数の仮想視線は、指定されたユーザ視点の位置からユーザが対象建造物をみた場合の一又は複数の視線に対応する方向に描画される。
【0014】
対象建造物のBIMモデルを含む仮想空間において、仮想視点を起点として上記のような仮想視線が描画されると、対象建造物のBIMモデルと仮想視線が交わる。そこで、制御部は、対象建造物を構成する複数の構成要素の中から、対象建造物のBIMモデルにおいて各仮想視線が最初に交わる構成要素を特定する。ここで特定される構成要素が、ユーザが対象建造物を所望の視点(ユーザ視点)から見た場合にユーザの視界に入る構成要素、すなわち、対象建造物の外観又は内観を形成する構成要素である。そして、制御部は、
特定された各構成要素に関するデータを対象建造物のBIMモデルから抽出する。このとき、制御部は、特定された構成要素以外の構成要素に関するデータをBIMモデルから削除してもよい。
【0015】
対象建造物を構成する複数の構成要素のうち、ユーザが対象建造物を所望の視点から見た場合にユーザの視界に入る構成要素が、対象建造物の外観又は内観の形状又は特性に関わる構成要素である。そして、本開示によれば、対象建造物を構成する複数の構成要素のうち、ユーザが対象建造物を所望の視点から見た場合にユーザの視界に入る構成要素に関するデータを対象建造物のBIMモデルから抽出することができる。したがって、本開示によれば、対象建造物の外観又は内観の形状又は特性に関わる構成要素に関するデータを対象建造物のBIMモデルから抽出することができる。
【0016】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、及びその相対配置等は、特に記載がない限りは本開示の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
<実施形態>
(BIMモデルからのデータ抽出)
図1は、本実施形態に係る、対象建造物のBIMモデルからデータを抽出するためのデータ抽出処理の概略を説明するための図である。本実施形態に係るデータ抽出処理では、対象建造物の外観又は内観の形状又は特性に関わる構成要素に関するデータが対象建造物のBIMモデルから抽出される。また、BIMモデルからのデータ抽出は、対象建造物のBIMモデルを含む仮想空間において実行される。
【0018】
図1(a)は、対象建造物のBIMモデルを示している。対象建造物としては、ビル、住宅、商業施設、公共施設等を例示できる。また、対象建造物は複数の建物の集合体であってもよい。また、BIMモデルは、対象建造物の各構成要素についてのデータを有する三次元モデルである。
図1(a)は、BIMモデルの三次元形状を図示している。ただし、BIMモデルは、対象建造物の各構成要素の寸法及び形状のみならず、対象建造物の設計、施工、分析、維持管理等に関わる様々なデータが含まれる。
【0019】
そして、本実施形態に係るデータ抽出処理では、
図1(b)に示すように、対象建造物のBIMモデルを含む仮想空間に仮想視点が設定される。ここで、仮想視点は、ユーザが対象建造物の外観又は内観を見る際の、ユーザの対象構造物に対する視点(ユーザ視点)の位置に対応する位置に設定される。
図1(b)では、ユーザ視点が対象建造物の周囲の全方位である場合の仮想視点が例示されている。この場合、
図1(b)に示すように、仮想空間における対象建造物のBIMモデルの周囲の全方位に複数の仮想視点が設定される。
【0020】
次に、仮想空間において、各仮想視点を起点として対象建造物のBIMモデルに向かって仮想視線が描画される。ここで、仮想視点は、ユーザがユーザ視点から対象建造物の外観又は内観を見る際の、ユーザの対象構造物に対する視線の方向に対応する方向に描画される。
図1の場合、仮想空間において、対象建造物のBIMモデルの周囲の全方位に設定された各仮想視点から、対象建造物のBIMモデルの中心位置に向かって仮想視線が描画される。
【0021】
上記の通り仮想視点を起点として仮想視線が描画されると、仮想視線が対象建造物のBIMモデルと交わる。このとき、対象建造物を構成する複数の構成要素のうち、仮想視線が最初に交わる構成要素が、ユーザが対象建造物を所望の視点(仮想視点に対応する視点)から見た場合にユーザの視界に入る構成要素である。つまり、仮想視線が最初に交わる
構成要素が、対象建造物の外観又は内観を形成する構成要素である。
【0022】
そこで、仮想視線が最初に交わる各構成要素が、データの抽出対象の構成要素として特定される。なお、以下においては、データの抽出対象の構成要素を「対象要素」と称する場合もある。
図1の場合、対象建造物の周囲の全方位から対象建造物をユーザが見た場合にユーザの視界に入る各構成要素が対象要素として特定される。
【0023】
そして、対象建造物における対象要素が特定されると、各構成要素に関するデータが対象建造物のBIMモデルから抽出される。これにより、
図1(c)に示すように、対象建造物の周囲の全方位から対象建造物をユーザが見た場合の対象建造物の外観の形状又は特性に関わる対象要素に関するデータが抽出される。具体的には、対象建造物のBIMモデルから、対象要素以外の構成要素に関するデータが削除される。
【0024】
(情報処理装置の概略構成)
図2は、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェアの概略構成し示すブロック図である。情報処理装置100は、BIMモデルを使用したビジュアライズ又は各種のシミュレーションを実行するコンピュータである。また、情報処理装置100は、上述したBIMモデルからのデータ抽出方法を実行する。
【0025】
情報処理装置100は、制御部110、記憶部120、入力部130、及び出力部140を備えている。制御部110は、情報処理装置100を制御するための演算処理を行う機能を有する。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、
RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、及び、ROM(Read Only Memory)等の補助記憶装置を含む。なお、CPUはプロセッサ・リソースの一例である。また、RAM及びROMはメモリ・リソースの一例である。制御部110は、各種プログラム及び各種データに基づいて任意の情報処理を実行することができる。ただし、制御部110の一部または全部の機能はASIC、FPGA等のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0026】
記憶部120は、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の任意の記憶装置によって構成される。記憶部120は、リムーバブルメディア(可搬記録媒体)を含んでもよい。ここで、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、SDカード、又は、CD-ROM、DVDディスク、若しくはブルーレイディスクのようなディスク記録媒体である。また、記憶部120には、制御部110によって実行されるプログラム、及びプログラムの実行に利用される各種データが記憶されている。そして、記憶部120に記憶されているプログラムが制御部110によって実行されることで、上述したBIMモデルからのデータ抽出方法が実現される。
【0027】
また、記憶部120には、BIMモデルデータベース(BIMモデルDB)121が構築されている。BIMモデルDBには、対象建造物のBIMモデルが格納されている。対象建造物のBIMモデルには、対象建造物の各構成要素に関するデータが含まれる。具体的には、対象建造物のBIMモデルには、対象建造物の各構成要素の寸法、形状、属性(種別、メーカー、品番等)、材質、性能、価格等のデータが含まれる。なお、構成要素の属性の一種である「種別」は、例えば、柱、壁、ドア、家具、空調機、照明器具等の分類であってもよい。また、制御部110によって、BIMモデルからの対象要素に関するデータの抽出が実行された場合、抽出されたデータ(抽出データ)122が記憶部120に記憶される。
【0028】
入力部130はユーザによる情報の入力を受け付ける。入力部130は、例えば、マウス、キーボード等を含んでもよい。本実施例では、対象建造物に対するユーザ視点の位置
に関する情報が入力部130を介して情報処理装置100に入力される。また、出力部140はユーザに対して提示する情報を出力する。出力部140は、例えば、ディスプレイを含んでもよい。本実施例では、情報処理装置100は、BIMモデルDB121から読み込んだ対象建造物のBIMモデルを出力部140を介して表示する。なお、入力部130及び出力部140は、例えばタッチパネルディスプレイ等のように両者が一体的に構成された装置であってもよい。
【0029】
(データ抽出処理)
対象建造物のBIMモデルにおいて、対象建造物を構成する複数の構成要素の中から、所望の対象要素を特定すれば、各対象要素に関するデータを抽出することができる。例えば、BIMモデルが有する各種データの項目の一つである各構成要素の「種別」に基づいて対象要素を特定すれば、特定の「種別」に属する構成要素に関するデータを対象建造物のBIMモデルから抽出することができる。
【0030】
しかしながら、対象建造物の外観又は内観を形成する構成要素をBIMモデルが有する各種データの項目に基づいて特定することは困難である。そこで、対象建造物の外観又は内観の形状又は特性に関わる構成要素に関するデータを抽出するデータ抽出処理においては、ユーザによって指定されるユーザ視点の位置に基づいて、仮想空間に仮想視点が設定される。さらに、仮想空間において各仮想視点を起点として仮想視線が描画される。そして、各仮想視線によってBIMモデルにおける対象要素が特定される。
【0031】
このとき、ユーザによって指定されるユーザ視点の位置としては以下のような位置を例示することができる。
<対象建造物の外観を特定するユーザ視点の位置>
・対象建造物の周囲の全方位
・対象建造物の前方
・対象建造物の右側(又は左側)側方
・対象建造物の後方
<対象建造物の内観を特定するユーザ視点の位置>
・対象建造物の特定の通路内
・対象建造物の特定の部屋の室内
【0032】
ユーザは、上記のようなユーザ視点の位置を、入力部130を介して情報処理装置100に入力する。情報処理装置100においては、入力部130を介して入力されたユーザ視点の位置を制御部110が取得する。そして、制御部110が、取得したユーザ視点の位置に応じたデータ抽出処理を実行する。
【0033】
以下、ユーザ視点の位置が対象建造物の周囲の全方位である場合のデータ抽出処理の詳細について
図3に基づいて説明する。
図3は、ユーザ視点の位置が対象建造物の周囲の全方位である場合のデータ抽出処理について説明するための図である。なお、
図3(a)から(e)においては、便宜上、対象建造物のBIMモデル、仮想視点、及び仮想視線が平面図形として記載されている。しかしながら、
図1に示したように、本来、BIMモデルは三次元モデルであり、また、仮想視点及び仮想視線も三次元の仮想空間に描画されるものである。
【0034】
図3(a)は、仮想空間における対象建造物のBIMモデルを示している。また、
図3(a)に示すBIMモデルにおける各矩形が対象建造物の構成要素である。制御部110は、取得したユーザ視点の位置が対象建造物の周囲の全方位である場合、
図3(b)に示すように、仮想空間における対象建造物のBIMモデルの周囲の全方位に複数の仮想視点を設定する。なお、このときに設定される仮想視点の数及び仮想視点間の間隔の大きさは
予め定められており、記憶部120に記憶されている。
【0035】
次に、制御部110は、
図3(c)に示すように、仮想空間において、各仮想視点を起点として、対象建造物のBIMモデルの中心位置に向かって仮想視線を描画する。このとき、一つの仮想視点からは一本の仮想視線が描画される。ここで描画される仮想視線が、対象建造物の周囲の全方位からユーザが対象建造物を見る際のユーザの視線に対応する。
【0036】
各仮想視点から対象建造物のBIMモデルの中心位置に向かって延びる各仮想視線は、
図3(c)に示すように、対象建造物の構成要素のいずれかと交わる。このとき、各仮想視点から延びる各仮想視線と最初に交わる、対象建造物のBIMモデルにおける各構成要素が、対象建造物の周囲の全方位における各視点から対象建造物を見た場合にユーザの視界に入る構成要素、つまり、対象建造物の外観を構成する構成要素である。
【0037】
そこで、制御部110は、
図3(d)に示すように、対象建造物のBIMモデルにおける各仮想視線と最初に交わる各構成要素を対象要素として特定する。なお、
図3(d)においては、斜線で示す複数の矩形が対象要素として特定される構成要素である。ユーザ視点の位置が対象建造物の周囲の全方位である場合、対象建造物全体の外壁面を形成する構成要素が対象要素となる。
【0038】
さらに、制御部110は、
図3(e)に示すように、対象建造物のBIMモデルから、
図3(d)で特定された複数の対象要素以外の構成要素に関するデータを削除する。これによって、対象建造物のBIMモデルから複数の対象要素に関するデータが抽出される。つまり、対象建造物の周囲の全方位から対象建造物をユーザが見た場合の対象建造物の外観の形状又は特性に関わる対象要素に関するデータが抽出される。
【0039】
以上のようなデータ抽出処理によれば、対象建造物の複数の構成要素のうち対象建造物の外観を構成しない構成要素に関するデータが除かれたBIMモデルが得られる。したがって、建造物の全体の外観の形状又は特性について検討する際にビジュアライズ又は各種のシミュレーションで使用するBIMモデルのデータ容量を大幅に削減することができる。その結果、情報処理装置100での演算処理が効率的に行われることが可能となる。
【0040】
次に、ユーザ視点の位置が対象建造物の前方である場合のデータ抽出処理について
図4に基づいて説明する。
図4は、ユーザ視点の位置が対象建造物の前方である場合のデータ抽出処理について説明するための図である。なお、
図4においても、
図3と同様、便宜上、対象建造物のBIMモデル、仮想視点、及び仮想視線が平面図形として記載されている。
【0041】
制御部110は、取得したユーザ視点の位置が対象建造物の前方である場合、
図4に示すように、仮想空間における対象建造物のBIMモデルの前方に一点の仮想視点を設定する。なお、このときに設定される仮想視点の位置は予め定められており、記憶部120に記憶されている。そして、制御部110は、仮想空間において、一点の仮想視点を起点として、対象建造物のBIMモデルに向かって複数の仮想視線を描画する。このとき、複数の仮想視線は、対象建造物のBIMモデルにおける前方の可視範囲全面に向って延びるように描画される。ここで、可視範囲とは、対象建造物の前方に設定された視点から対象建造物を見た場合に、対象建造物においてユーザの視界に入る範囲のことである。
【0042】
対象建造物のBIMモデルの前方に設定された仮想視点から対象建造物のBIMモデルに向かって延びる各仮想視線は、
図4に示すように、対象建造物の構成要素のいずれかと交わる。このとき、各仮想視線は、対象建造物のBIMモデルにおいて前方に露出している各構成要素と最初に交わる。そして、各仮想視線と最初に交わる各構成要素が、対象建
造物の前方のユーザ視点から対象建造物を見た場合にユーザの視界に入る構成要素、つまり、対象建造物の外観を構成する構成要素である。
【0043】
そこで、制御部110は、
図4に示すように、対象建造物のBIMモデルにおける各仮想視線と最初に交わる各構成要素を対象要素として特定する。なお、
図4においては、斜線で示す複数の矩形が対象要素として特定される構成要素である。ユーザ視点の位置が対象建造物の前方である場合、対象建造物の前方に露出する外壁面を形成する構成要素が対象要素となる。そして、制御部110は、対象建造物のBIMモデルから、特定された複数の対象要素以外の構成要素に関するデータを削除する。これによって、対象建造物のBIMモデルから複数の対象要素に関するデータが抽出される。以上のようなデータ抽出処理によれば、対象建造物の複数の構成要素のうち対象建造物の前方の外観を構成しない構成要素に関するデータが除かれたBIMモデルが得られる。
【0044】
なお、
図4では、対象建造物のBIMモデルの前方に一点の仮想視点が設定される場合が例示されているが、仮想視点は必ずしも一点でなくてもよい。つまり、対象建造物のBIMモデルの前方に複数の仮想視点が設定されてもよい。なお、このときに設定される仮想視点の数及び仮想視点間の間隔は予め定められ、記憶部120に記憶されていてもよい。また、この場合、仮想空間において、各仮想視点を起点として、対象建造物のBIMモデルに向かって一本の仮想視線が描画されてもよい。この場合でも、複数の仮想視線が、対象建造物のBIMモデルにおける前方の可視範囲全面に向って延びるように描画されることができる。したがって、対象建造物のBIMモデルにおける各仮想視線と最初に交わる各構成要素を対象要素として特定することで、対象建造物の前方に露出する外壁面を形成する構成要素を対象要素として特定することができる。
【0045】
また、情報処理装置100において、制御部110は、ユーザによって指定されるユーザ視点の位置が、例えば、「対象建造物の右側(又は左側)側方」又は「対象建造物の後方」である場合も、上記のような、ユーザ視点の位置が対象建造物の前方である場合のデータ抽出処理と同様のデータ抽出処理を実行することができる。
【0046】
例えば、制御部110は、取得したユーザ視点の位置が対象建造物の右側(又は左側)側方である場合、仮想空間における対象建造物のBIMモデルの右側(又は左側)側方に一点又は福栖の仮想視点を設定する。また、制御部110は、取得したユーザ視点の位置が対象建造物の後方である場合、仮想空間における対象建造物のBIMモデルの後方に一点又は複数の仮想視点を設定する。その上で、制御部110は、対象建造物のBIMモデルの前方に一点の仮想視点を設定した場合と同様のデータ抽出処理を実行する。
上記と同様である。
【0047】
次に、ユーザ視点の位置が対象建造物の特定の通路内である場合のデータ抽出処理について
図5に基づいて説明する。
図5は、ユーザ視点の位置が対象建造物の特定の通路内である場合のデータ抽出処理について説明するための図である。
【0048】
図5(a)は、仮想空間における対象建造物の内部の一部のBIMモデルを示している。
図5(a)に示すBIMモデルには対象通路が含まれる。対象通路は、その内観の形状又は特性に関わる構成要素の関するデータの抽出対象となる通路である。つまり、ユーザが対象通路内において対象建造物を見た場合にユーザの視界に入る構成要素に関するデータを対象建造物のBIMモデルから抽出することをユーザが望んでいる。
【0049】
この場合、ユーザは、ユーザ視点の位置として、対象通路となる特定の通路内を指定する。そして、制御部110は、取得したユーザ視点の位置が特定の通路(対象通路)内である場合、
図5(a)に示すように、仮想空間における対象建造物のBIMモデルの対象
通路内に複数の仮想視点を設定する。なお、
図5(a)では、複数の仮想視点が矢印によって指し示されている。このとき、複数の仮想視点は対象通路に沿って設定される。対象通路内において設定される各仮想視点の位置は予め定められており、記憶部120に記憶されている。このように設定される各仮想視点の位置が、対象通路内においてユーザが対象建造物の内観(対象通路の内観)を見る際の視点の位置に対応している。
【0050】
さらに、制御部110は、対象建造物のBIMモデルにおける対象通路内において、各仮想視点を起点として各仮想視点の周囲に向かって延びる複数の仮想視線を描画する。このとき、各仮想視線は各仮想視点の周囲の全方位に向って延びるように描画される。このように描画される複数の仮想視線の方向が、対象通路内においてユーザが対象建造物の内観(対象通路の内観)を見る際のユーザの視線の方向に対応している。
【0051】
対象建造物のBIMモデルにおける対象通路内において各仮想視点を起点として各仮想視点の周囲の全方位に向って延びる各仮想視線は、対象建造物の構成要素のいずれかと交わる。このとき、各仮想視線は、対象建造物のBIMモデルにおいて対象通路を形成している各構成要素と最初に交わる。そして、各仮想視線と最初に交わる各構成要素が、対象通路内においてユーザが対象通路の内観を見た場合にユーザの視界に入る構成要素、つまり、対象通路の内観を構成する構成要素である。
【0052】
そこで、制御部110は、対象建造物のBIMモデルにおける各仮想視線と最初に交わる各構成要素を対象要素として特定する。そして、制御部110は、
図5(b)に示すように、対象建造物のBIMモデルから、特定された複数の対象要素以外の構成要素に関するデータを削除する。これによって、対象建造物のBIMモデルから複数の対象要素に関するデータが抽出される。以上のようなデータ抽出処理によれば、対象建造物の複数の構成要素のうち対象通路の内観を構成しない構成要素に関するデータが除かれたBIMモデルが得られる。
【0053】
また、ユーザが、ユーザ視点の位置として、対象建造物の特定の部屋の室内を指定した場合、制御部110は、仮想空間における対象建造物のBIMモデルの特定の部屋の室内に一点又は複数の仮想視点を設定する。その上で、制御部110は、ユーザ視点の位置としてユーザが特定の通路内を指定した場合と同様のデータ抽出処理を実行する。これにより、対象建造物の複数の構成要素のうち特定の部屋の内観を構成しない構成要素に関するデータが除かれたBIMモデルが得られる。
【0054】
(データ抽出処理のフロー)
以下、本実施形態に係る、対象建造物のBIMモデルから対象要素に関するデータを抽出するためのデータ抽出処理のフローについて
図6に基づいて説明する。
図6は、データ抽出処理のフローを示すフローチャートである。本フローは、制御部110によって実行される。
【0055】
本フローでは、先ずS101において、入力部130を介してユーザによって入力されたユーザ視点の位置が取得される。次に、S102において、S101で取得されたユーザ視点の位置に基づいて、対象建造物のBIMモデルを含む仮想空間に一点又は複数の仮想視点が設定される。このとき、対象建造物のBIMモデルは、BIMモデルDB121から読み込まれる。
【0056】
次に、S103において、S102で設定された一点又は複数の仮想視点を起点として、仮想空間に一本又は複数の仮想視線が描画される。次に、S104において、各仮想視点から延びる各仮想視線と最初に交わる、対象建造物のBIMモデルにおける各構成要素が、対象要素として特定される。
【0057】
次に、S105において、対象建造物のBIMモデルから、S104で特定された対象要素以外の構成要素に関するデータが削除される。これによって、対象建造物のBIMモデルから対象要素に関するデータが抽出される。
【0058】
なお、制御部110は、対象要素以外の構成要素に関するデータが削除されたBIMモデルを、出力部140を介して出力すると共に、記憶部120に抽出データとして記憶する。
【0059】
<変形例>
対象建造物のBIMモデルにおいては、隣り合う構成要素間に隙間が形成されている場合がある。そして、BIMモデルにおいてこのような隙間が形成されている場合、データ抽出処理において仮想視線が描画された際に仮想視線がこの隙間を通過することがあり得る。そして、BIMモデルにおいて、隙間を通過した仮想視線は、隙間の奥側に存在する構成要素と交わる。
【0060】
しかしながら、実際の対象建造物においては、外観又は内観を形成する隣り合う構成要素間に隙間が形成されていても、その隙間が所定の幅より小さい場合、隙間の奥側に存在する構成要素にユーザの視界には入らない。つまり、所定の幅より小さい隙間の奥側に存在する構成要素は、実質的には外観又は内観を形成しない。
【0061】
そこで、制御部110は、データ抽出処理において、描画された仮想視線がBIMモデルにおける所定の幅より小さい隙間を通過した場合、この隙間を通過した仮想視線をキャンセルしてもよい。つまり、制御部110は、所定の幅より小さい隙間を通過した仮想視線を削除してもよい。これにより、隙間の奥側に存在する構成要素は対象要素として特定されない。そのため、データ抽出処理の際に、実質的には外観又は内観を形成しない構成要素は対象要素として扱われることを抑制することができる。
【0062】
<その他の実施形態>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0063】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0064】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0065】
100・・情報処理装置
110・・制御部
120・・記憶部
121・・BIMモデルデータベース
122・・抽出データ
130・・入力部
140・・出力部
【要約】
【課題】本開示の目的は、対象建造物の外観又は内観の形状又は特性に関わる構成要素に関するデータを対象建造物のBIMモデルから抽出することである。
【解決手段】情報処理装置は、対象建造物に対するユーザの視点の位置に基づいて、対象建造物のBIMモデルを含む仮想空間に一点又は複数の仮想視点を設定する。また、情報処理装置は、仮想空間において、一点又は複数の仮想視点のそれぞれからBIMモデルに向かって一本又は複数の仮想視線を描画する。さらに、情報処理装置は、対象建造物のBIMモデルにおいて各仮想視線が最初に交わる構成要素を特定する。そして、情報処理装置は、特定された各構成要素に関するデータを対象建造物のBIMモデルから抽出する。
【選択図】
図3