(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】交通信号制御装置、交通信号機の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/08 20060101AFI20241106BHJP
G08G 1/095 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G08G1/08
G08G1/095 E
(21)【出願番号】P 2023504991
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2021009624
(87)【国際公開番号】W WO2022190290
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】尾形 一気
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-133760(JP,A)
【文献】特開2018-022304(JP,A)
【文献】特開2019-148905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に設置したセンサで検出した車両の挙動に基づいて、前記車両を停止させるか否かを判定する手段と、
制御対象の交通信号機の中から、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機を選択する手段と、を備え、
前記交通信号機を選択する手段は、前記車両の進行方向にあり、かつ、前記車両を停止させる現示制御により交通の滞留を解消できる交通信号機を選択
し、
前記車両を停止させるか否かを判定する手段は、前記センサで検出した前記車両の過去の挙動に基づいて、前記車両を停止させるか否かを判定する、
交通信号制御装置。
【請求項2】
前記交通信号機が設置された交差点において、右折待ち車両が滞留している場合、当該交差点の交通信号機を、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機として選択する請求項1の交通信号制御装置。
【請求項3】
前記交通信号機が設置された位置において、信号待ちをしている車両又は歩行者がいる場合、当該交通信号機を、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機として選択する請求項1又は2の交通信号制御装置。
【請求項4】
前記車両の進行方向の1つ以上先の交通信号機を、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機の候補に選択する請求項1から3いずれか一の交通信号制御装置。
【請求項5】
前記車両を停止させるか否かを判定する手段は、信号無視又は速度超過をした車両を停止対象として選択する請求項1から4いずれか一の交通信号制御装置。
【請求項6】
前記車両を停止させるか否かを判定する手段は、黄色灯火の現示中に交差点に進入した車両を停止対象として選択する請求項1から5いずれか一の交通信号制御装置。
【請求項7】
所定の交差点に進入する車両の挙動に基づいて、前記車両を停止させるか否かを判定し、
制御対象の交通信号機の中から、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機として、前記車両の進行方向にあり、かつ、前記車両を停止させる現示制御により交通の滞留を解消できる交通信号機を選択
し、
センサで検出した前記車両の過去の挙動に基づいて、前記車両を停止させるか否かを判定する、
交通信号機の制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
所定の交差点に進入する車両の挙動に基づいて、前記車両を停止させるか否かを判定する処理と、
制御対象の交通信号機の中から、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機として、前記車両の進行方向にあり、かつ、前記車両を停止させる現示制御により交通の滞留を解消できる交通信号機を選択する処理と、
センサで検出した前記車両の過去の挙動に基づいて、前記車両を停止させるか否かを判定する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御装置、交通信号機の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
法定速度を超過する速度で走行する車両を検出した場合に、下流側の交通信号機の青時間の短縮または赤時間の延長を行うことで、該当車両を下流交差点で停止させることで、法定速度を超えた状態で走行できないようにする機能を備えた交通信号機が知られている(高速感応制御)。
【0003】
特許文献1に暴走車両の速度抑制をより確実に行うことができるという交通信号制御装置が開示されている。同文献に記載の交通信号制御装置は、走行を抑止させたい対象車両をその下流側の交差点で止めることが可能か否かを判定する第1判定と、当該交差点での対象車両が流入する道路における青時間を短縮可能か否かを判定する第2判定とを行う。そして、ある交差点における第1判定、第2判定が否定的である場合、この交通信号制御装置は、対象車両が走行する方向を基準としたときの当該交差点の下流側の次の交差点について、第1判定と第2判定を実行する。
また、関連する文献として、特許文献2と特許文献3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-96143号公報
【文献】特開2020-21305号公報
【文献】特開2012-108664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の分析は、本発明者によって与えられたものである。特許文献1に指摘されているとおり、高速感応制御機能を備えた交通信号機では、対象車両を停止させることができないケースがある。この点、特許文献1では、1つ先の信号機で対象車両を停止させることができる方法を開示しているが、その判断は、その車両を停止させることが可能か否か(第1判定)と青時間の短縮や赤時間の延長が可能であるか否か(第2判定)によって行われる。このため、特許文献1の方法では、不適切な位置やタイミングで青時間の短縮や赤時間の延長が行われてしまい、渋滞を悪化させてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、特定の車両を停止させる現示制御による渋滞等の発生を抑止することができる交通信号制御装置、交通信号機の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の視点によれば、所定の交差点に進入する車両の挙動に基づいて、前記車両を停止させるか否かを判定する手段と、制御対象の交通信号機の中から、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機を選択する手段と、を備える交通信号制御装置が提供される。この交通信号制御装置の前記交通信号機を選択する手段は、前記車両の進行方向にあり、かつ、当該交差点における交通の滞留が発生している交通信号機を選択する。
【0008】
第2の視点によれば、所定の交差点に進入する車両の挙動に基づいて、前記車両を停止させるか否かを判定し、制御対象の交通信号機の中から、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機として、前記車両の進行方向にあり、かつ、当該交通信号機が設置された箇所における交通の滞留が発生している交通信号機を選択する、交通信号機の制御方法が提供される。本方法は、前記交通信号機を制御する交通信号制御装置という、特定の機械に結びつけられている。
【0009】
第3の視点によれば、上記したコンピュータの機能を実現するためのコンピュータプログラム(以下、プログラム)が提供される。なお、このコンピュータプログラムは、コンピュータ装置に入力装置又は外部から通信インターフェースを介して入力され、記憶装置に記憶されて、プロセッサを所定のステップないし処理に従って駆動させる。また、このプログラムは、必要に応じ中間状態を含めその処理結果を段階毎に表示装置を介して表示することができ、あるいは通信インターフェースを介して、外部と通信することができる。そのためのコンピュータ装置は、一例として、典型的には互いにバスによって接続可能なプロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インターフェース、及び必要に応じ表示装置を備える。また、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な(非トランジトリーな)記憶媒体に記録することができる。即ち、本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の車両を停止させる現示制御による渋滞等の発生を抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の一実施形態の動作を説明するための図である。
【
図3】本発明の一実施形態の動作を説明するための図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態のシステム構成を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の交通信号制御装置が保持する信号機位置情報の一例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の交通信号制御装置に接続されたカメラの配置例を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の交通信号制御装置に接続されたカメラから得られる画像の例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の交通信号制御装置の動作を表したフローチャートである。
【
図9】本発明の第1の実施形態の交通信号制御装置の動作を説明するための図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態の交通信号制御装置に接続されたカメラから得られる画像の別の例を示す図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態の交通信号制御装置の動作を説明するための別の図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態の交通信号制御装置の動作を説明するための別の図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態の交通信号制御装置の動作を説明するための図である。
【
図14】本発明の交通信号制御装置として機能可能なコンピュータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
はじめに本発明の一実施形態の概要について図面を参照して説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、以降の説明で参照する図面等のブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。また、図中の各ブロックの入出力の接続点には、ポート乃至インターフェースがあるが図示省略する。プログラムはコンピュータ装置を介して実行され、コンピュータ装置は、例えば、プロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インターフェース、及び必要に応じ表示装置を備える。また、このコンピュータ装置は、通信インターフェースを介して装置内又は外部の機器(コンピュータを含む)と、有線、無線を問わず、通信可能に構成される。
【0013】
本発明は、その一実施形態において、
図1に示すように、判定部103aと、選択部102aとを備える交通信号制御装置100aにて実現できる。
【0014】
より具体的には、判定部103aは、所定の位置に設置したセンサ201aで検出した車両の挙動に基づいて、前記車両を停止させるか否かを判定する手段として機能する。
【0015】
選択部102aは、制御対象の交通信号機203-1、203-2の中から、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機を選択する手段として機能する。前記交通信号機の選択にあたり、選択部102aは、前記車両の進行方向にあり、かつ、前記車両を停止させる現示制御により交差方向の交通の滞留を解消できる交通信号機を選択する。なお、前記車両を停止させる現示制御により交差方向の交通の滞留を解消できるか否かは、制御対象の交通信号機203-1、203-2の付近に設けられたセンサ202-1、202-2により信号待ち車両や歩行者を検出することにより判定できる。なお、センサ201a、202-1、202-2としては、超音波、光ビーコンミリ波を用いた各種のセンサのほか、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)を用いた画像式のセンサを用いることができる。もちろん、センサは1か所に1つでなくてもよく、検出対象や測定項目に応じて1種以上のセンサを複数組み合わせて配置することもできる。
【0016】
例えば、
図2に示すように、センサ201aが設置された位置で、車両V1が法定速度を超える速度で走行をしたものとする。このとき、判定部103aは、センサ201aで得られた情報に基づいて、車両V1を停止させることを決定する。
【0017】
選択部102aは、車両V1の進行方向にある交通信号機203-1、203-2の中から、前記車両V1を停止させる現示制御を行う交通信号機を選択する。その際に、選択部102aは、センサ202-2により、信号待ち車両V2が存在することが判明している交通信号機203-2を選択する。そして、選択部102aは、選択した交通信号機203-2に対し、車両V1を停止させる現示制御を指示する。この車両を停止させる現示制御としては、高速感応制御と同様の青灯火時間の早期打ち切りや赤灯火時間の延長等を採ることができる。
【0018】
前記指示を受けた交通信号機203-2が、車両V1を停止させる現示制御を実施することにより、交通信号機203-2のところで、信号待ちをしている車両V2は、交通信号機203-2の灯火に従い、移動を開始する。一方、車両V1は、
図3に示すように、交通信号機203-2の現示に従い、交通信号機203-2の位置で停止する。
【0019】
以上のように、本実施形態によれば、単に対象車両V1を停止させるだけでなく、交差方向の車両V2の滞留を解消することが可能となる。また、上記車両V2が滞留している箇所での青灯火時間の早期打ち切りや赤灯火時間の延長は、信号待ち車両の無い交通信号機203-1での現示制御より、車両V1のドライバーに対し、より強力に停車や減速の必要性を働きかけることが可能となる。
【0020】
[第1の実施形態]
続いて、上記停止制御の対象となる車両の特定や信号待ち車両の検出に、カメラを用いた本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態のシステム構成を示す図である。
図4を参照すると、カメラ105-1、105-2と、複数の交通信号機111とに接続された交通信号制御装置100が示されている。
【0021】
交通信号制御装置100は、信号制御部101と、制御位置選択部102と、対象車両特定部103と、信号機位置記憶部104と、滞留車両等検出部106とを備えている。このような構成を備える交通信号制御装置100は、交通管制センターに配置される管制装置であってもよい。
【0022】
信号制御部101は、制御対象エリア内の交通信号機111を制御する。また、信号制御部101による交通信号機111の制御内容は、対象車両特定部103にも渡される。なお、
図4では、1台の交通信号機のみを示しているが、以下の実施形態では、信号制御部101の制御対象の交通信号機111は複数あるものとして説明する。また、信号制御部101とは別に、交通信号制御装置100に、これらの交通信号機111を用いてマクロ制御を行うマクロ制御部が配置されていてもよい。
【0023】
対象車両特定部103は、信号制御部101による交通信号機111の制御内容とカメラ105-1から得られた画像とに基づいて、停止制御の対象となる車両を特定する。以下、本実施形態では、黄色灯火の現示中に交差点に進入し、交差点の通過を行った車両を特定し、その停止制御を行うものとして説明する。なお、このような特定の挙動を行った車両の特定には、自動運転で用いられている他車等の認識技術等を用いることができる。
【0024】
制御位置選択部102は、信号機位置記憶部104に記憶されている交通信号機111の位置情報と、滞留車両等検出部106にて得られた情報とに基づいて、前記対象車両特定部103が特定した車両を停止させる位置を選択する。
【0025】
信号機位置記憶部104は、交通信号制御装置100の制御対象となる交通信号機111の位置情報を記憶する。
図5は、本実施形態の交通信号制御装置100が保持する信号機位置情報の一例を示す図である。
図5を参照すると、信号機IDで特定される交通信号機毎に、隣接する交通信号機とその方位及び距離を記録した隣接信号機情報を対応付けた信号機位置情報が示されている。例えば、信号機IDがC11の交通信号機111は、記号C11で特定される交差点に位置している(
図9参照)。また、この交通信号機111の隣接信号機は、C12とC21であり、それぞれ西(W)に100mと南(S)に90m離れていることが分かる。このような信号機位置情報を用いることで、交通信号制御装置は、ある交差点に進入した車両の進行方向にある交通信号機を絞り込むことができる。また、距離情報は、車両の速度が判明している場合に信号の灯火による制御が間に合うかどうかの判定に用いることもできる。
【0026】
カメラ105-1、105-2は、異なる交差点に配置されたカメラである。
図6は、カメラの配置例を示す図である。
図6を参照すると、信号灯器111-1a~111-1d、信号灯器111-2a~111-2dが設置された2つの交差点が示されている。左側の交差点には、カメラ105-2a~105-2dが、信号灯器111-2a~111-2dと同一方向を指向して設置されている。同様に、右側の交差点には、カメラ105-1a~105-1dが、信号灯器111-1a~111-1dと同一方向を指向して設置されている。このように配置されたカメラ105-1a~105-1d、105-2a~105-2dを用いることで、交差点内に進入する車両の挙動や信号待ちをする車両の有無を特定することができる。以下の説明では、カメラ105-1a~105-1dのいずれか1つがカメラ105-1に相当し、カメラ105-2a~105-2dのいずれか1つがカメラ105-2に相当するものとして説明する。なお、上記したカメラの配置はあくまで一例を示したものであり、より広角なレンズを持つカメラを用いることでカメラの設置台数を減らすことも可能である。
【0027】
滞留車両等検出部106は、カメラ105-2から得られた画像に基づいて信号待ちをしている車両や歩行者の有無を測定する。
【0028】
図7は、カメラ105-1及び105-2から得られる画像の例を示す図である。
図7の右下のカメラ105-1cでは、交差点に進入する車両が撮影されている。この画像と、信号制御部101による信号灯器111-1a~111-1dへの制御内容とを用いることで、黄色灯火の現示中に交差点に進入し、交差点の通過を行った車両を特定することができる。また、信号制御部101による交通信号機への制御内容に代えて、交通信号制御装置100が、カメラ105-1a~105-1dで撮影した画像から信号灯器111-1a~111-1dの点灯状態を識別する方法も採用可能である。
【0029】
図7の左下のカメラ105-2cでは、交差点で信号待ちをしている車両や歩行者が撮影されている。この画像を用いることで、滞留車両等検出部106は、信号待ちをしている車両や歩行者の有無を測定することができる。また、当該交差点にカメラ以外のセンサとして例えば、超音波センサ、光ビーコン、ミリ波レーダー、赤外線式等のセンサが設けられている場合、滞留車両等検出部106は、これらの情報も用いて、信号待ちをしている車両や歩行者の有無を検出してもよい。
【0030】
続いて、本実施形態の動作について図面を参照して詳細に説明する。
図8は、本発明の第1の実施形態の交通信号制御装置の動作を表したフローチャートである。
図8を参照すると、まず、交通信号制御装置100は、対象車両特定部103にて停止制御の対象となる車両を検出する(ステップS001)。
【0031】
停止制御の対象となる車両を検出した交通信号制御装置100は、該当車両の進行方向を特定する(ステップS002)。次に、交通信号制御装置100は、対象車両の停止制御をさせる交通信号機111の候補として、該当車両の進行方向にある交通信号機を抽出する(ステップS003)。例えば、
図9の交差点C23で、
図9の右側から左側に直進する車両が、黄色灯火で停止せずに、交差点C23を通過した場合、交通信号制御装置100は、停止制御をさせる交通信号機111の候補として、交差点C22、C21にある交通信号機111を選択する。このように、車両の進行方向の1つ以上先の交通信号機を、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機の候補に選択することで、交通の滞留を解消するとの観点でより効果の高い箇所を選択することが可能となる。
【0032】
交通信号制御装置100は、交差点C22、C21にある交通信号機111の周辺画像を取得し、滞留車両等検出部106にて、信号待ちをしている車両や歩行者の有無を検出する(ステップS004)。なお、複数の交差点にて信号待ち車両や歩行者が検出されている場合、交通信号制御装置100は、交差点C22、C21にある交通信号機111のうち、信号待ち車両や歩行者の多い方を選択する(ステップS005)。例えば、
図9の場合、交差点C22よりも交差点C21の方が信号待ちをしている車両や歩行者の数が多いので、交通信号制御装置100は、交差点C21にある交通信号機111を選択する。
【0033】
交通信号制御装置100は、交差点C21にある交通信号機111に対し、対象車両を停止させる現示制御を指示する(ステップS006)。以上により、交差点C21にある交通信号機111において青信号への早期切り替えや赤信号の延長が行われる。これにより、交差点C21における交通の滞留が解消されるとともに、対象車両を停止させることが可能となる。
【0034】
なお、上記した例では、信号待ちをしている車両や歩行者の有無を検出し、該当位置の交通信号機で対象車両の停止制御を行うものとして説明したが、交通の滞留を解消できるとの判定の対象となる「交通」は、この例に限られない。例えば、
図10に示すように、カメラ105-2cで撮影された画像から右折待ちをしている車両を検出することができる場合がある。この場合、対象車両の停止制御を行う交通信号機として、右折待ちをしている車両の数の多い交差点の交通信号機111を選択することもできる。
【0035】
また、上記した例では、交差点にある交通信号機111の中から対象車両を停止させる現示制御を行う交通信号機を選択するものとして説明したが、交通信号機の中には、交差点ではなく、横断歩道が設けられている箇所に設置されているものもある(
図11参照)。例えば、
図11のように、記号CW11の箇所に交通信号機が設置され、信号待ちをしている歩行者が検出されている場合、CW11の箇所の交通信号機に対象車両を停止させる現示制御を指示してもよい。また、
図11に示すように、交差点C21と、CW11との双方に信号待ち車両と歩行者がそれぞれ検出されている場合、所定の計算式により両者のスコアを計算するなどして、スコアの高い方の交通信号機に、対象車両を停止させる現示制御を指示してもよい。
【0036】
また、上記した例では、対象車両が交差点C22を直進するものとして、交差点C21にある交通信号機を候補に加える例を挙げて説明したが、対象車両が交差点C22において右左折する可能性を考慮に入れても良い。この場合、対象車両が交差点C22で進んだ方向を入手して制御対象の交通信号機を選択すればよい。また別の方法として、交差点C22における対象車両が位置する進行方向別通行区分や交差点C22における車両の統計的な進路の傾向が得られている場合、この情報を用いて、対象車両を停止させる現示制御を指示する交通信号機を絞り込んでもよい。例えば、
図12に示すように、交差点C22における図の右側から来た車両の経路選択確率(分岐率)が得られている場合、交差点C21に加えて、交差点C12にある交通信号機が、対象車両を停止させる現示制御を指示する交通信号機の候補になる。
【0037】
[第2の実施形態]
また、
図11に示した例では、交差点C21における信号待ち車両と、横断歩道CW11における信号待ちをしている歩行者とを比較する例を挙げて説明したが、両者の単純な比較ではなく、その他要素を考慮に入れて、現示制御を指示する交通信号機を選択してもよい。例えば、
図13に示すように、交差点C21に交通違反の記録用のカメラ105が設置されている場合、横断歩道CW11よりも交差点C21の交通信号機を優先して選択するようにしてもよい(第2の実施形態)。特に、第1の実施形態のように、黄色灯火での不停止等の交通ルール違反を行った車両を対象とする場合、交通信号機による停止制御に従わないことも想定される。
図13に示すように、交通違反の記録用のカメラ105が設置されている場所を選択することで、交通違反の記録を行うことが可能となる。
【0038】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的な技術的思想を逸脱しない範囲で、更なる変形・置換・調整を加えることができる。例えば、各図面に示した装置構成、各要素の構成、データ等の表現形態は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。例えば、上記した第1の実施形態では、黄色灯火で停止しなかった車両を対象とするものとして説明したが、制御対象とする車両の挙動はこれに限定されない。例えば、速度超過、その他の信号無視、あおり行為、みだりな車線変更などを行った車両を、停止制御の対象とすることも可能である。その他、車両の挙動に加えて、車両整備違反やシートベルト不装着などが確認された車両を停止制御の対象としてもよいことはもちろんである。
【0039】
また、上記した実施形態では、説明を省略したが、必要に応じて、ナンバープレートの認識技術や顔認証技術等を用いて、車両やそのオーナーを特定するようにしてもよい。また、このようにして特定した情報を用いて、クラウド側に車両の経路や目的地を照会することで、対象車両の進路予測をより正確に行うことも可能となる。
【0040】
また、上記した実施形態では、説明を省略したが、車両を停止させる現示制御を行う交通信号機の選択に当たり、特許文献1と同様に、青灯火への切り替えや赤灯火の延長により、該当する車両を停止させることが可能かどうかの判定を行ってもよい。
【0041】
また、上記した実施形態では、所定の交差点に進入する車両の挙動に基づいて、当該車両を停止させるか否かの判定を行うこととしているが、緊急避難的な行動のため、車両が信号無視や速度超過をする場合も想定される。このような行動をとった車両を停止させることを避けるには、各車両の過去の挙動を一定期間記録しておき、判定する構成も採用できる。例えば、交通信号制御装置が、交差点における各車両の挙動を過去一定期間にわたって記録しておき、この記録に基づいて車両を停止させるか否かを判定してもよい。例えば、交通信号制御装置は、所定期間の間に、信号無視を所定回数以上行った場合に、当該車両を停止させると判定してもよい。この信号無視の回数についても、同一の交通信号機のある場所で信号無視を行った回数をカウントするケースと、交通信号制御装置の管轄のエリアで信号無視を行った回数をカウントするケースの2通りが考えられる。
【0042】
また、車両のドライバーによっては、危険運転を常習的に行っている場合もある。そのような場合、当該車両を停止させる現示制御を行っても信号に従って停止せず、信号無視を繰り返す可能性がある。このような観点から、交通信号制御装置は、例えば、対象車両の速度が所定値以上である場合、前記車両を停止させる現示制御を中止する機能を備えていてもよい。
【0043】
また、業務上、制御対象となる挙動をすることのある緊急車両等を、停止制御の対象から外すようにしてもよい。この場合、交通信号制御装置100に、カメラにて撮影された画像から制御対象が緊急車両等と認識できた場合、当該車両を制御対象から外す機能を追加すればよい。
【0044】
また、上記した実施形態では、交通信号制御装置100が直接交通信号機を制御するものとして説明したが、交差点等に、交差点内の信号機の制御を行う中継装置が配置されている場合もある。この場合、交通信号制御装置100が、該当する交差点の信号灯器を制御する制御装置に、対象車両を停止させる現示制御を指示することになる。
【0045】
また、上記した実施形態に示した手順は、交通信号制御装置として機能するコンピュータ(
図14の9000)に、これらの装置としての機能を実現させるプログラムにより実現可能である。このようなコンピュータは、
図14のCPU(Central Processing Unit)9010、通信インターフェース9020、メモリ9030、補助記憶装置9040を備える構成に例示される。すなわち、
図14のCPU9010にて、対象車両特定プログラムや交通信号機選択プログラムを実行させればよい。
【0046】
即ち、上記した交通信号制御装置100の各部(処理手段、機能)は、これらの装置に搭載されたプロセッサに、そのハードウェアを用いて、上記した各処理を実行させるコンピュータプログラムにより実現することができる。
【0047】
最後に、本発明の好ましい形態を要約する。
[第1の形態]
(上記第1の視点による交通信号制御装置参照)
[第2の形態]
上記した交通信号制御装置は、前記交通信号機が設置された交差点において、右折待ち車両が滞留している場合、当該交差点の交通信号機を、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機の候補に選択する構成を採ることができる。
[第3の形態]
上記した交通信号制御装置は、前記交通信号機が設置された位置において、信号待ちをしている車両又は歩行者がいる場合、当該交通信号機を、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機として選択する構成を採ることができる。
[第4の形態]
上記した交通信号制御装置は、前記車両の進行方向の1つ以上先の交通信号機を、前記車両を停止させる現示制御を行う交通信号機の候補に選択する構成を採ることができる。
[第5の形態]
上記した交通信号制御装置は、信号無視又は速度超過をした車両を停止対象として選択する構成を採ることができる。
[第6の形態]
上記した交通信号制御装置は、黄色灯火の現示中に交差点に進入した車両を停止対象として選択する構成を採ることができる。
[第7の形態]
上記した交通信号制御装置は、前記センサで検出した前記車両の過去の挙動に基づいて、前記車両を停止させるか否かを判定する構成を採ることができる。
[第8の形態]
上記した交通信号制御装置は、前記車両の速度が所定値以上である場合、前記車両を停止させる現示制御を中止する構成を採ることができる。
[第9の形態]
(上記第2の視点による交通信号機の制御方法参照)
[第10の形態]
(上記第3の視点によるコンピュータプログラム参照)
なお、上記第9~第10の形態は、第1の形態と同様に、第2~第8の形態に展開することが可能である。
【0048】
なお、上記の特許文献の各開示は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとし、必要に応じて本発明の基礎ないし一部として用いることが出来るものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本発明の趣旨に則り、本発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれるものと、みなされる。
【符号の説明】
【0049】
100、100a 交通信号制御装置
102a 選択部
103a 判定部
101 信号制御部
102 制御位置選択部
103 対象車両特定部
104 信号機位置記憶部
105、105-1、105-1a~105-1d、105-2、105-2a~105-2d カメラ
106 滞留車両等検出部
111、203-1、203-2 交通信号機
111-1a~111-1d、111-2a~111-2d 信号灯器
201a、202-1、202-2 センサ
V1、V2 車両
9000 コンピュータ
9010 CPU
9020 通信インターフェース
9030 メモリ
9040 補助記憶装置