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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】受光装置、受信装置、および通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/112 20130101AFI20241106BHJP
【FI】
H04B10/112
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023508759
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005237
(87)【国際公開番号】W WO2022201939
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2021047563
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】高田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-128639(JP,A)
【文献】特開2010-239350(JP,A)
【文献】特開平03-133225(JP,A)
【文献】特開平06-177363(JP,A)
【文献】特開2013-145530(JP,A)
【文献】特開2010-032267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間光信号を集光する集光レンズと、
前記集光レンズに受光部を向けて配置され、前記集光レンズによって集光された前記空間光信号に由来する光信号を受光する少なくとも一つの受光素子を有する受光ユニットと、
前記受光部の周辺の不感領域に配置され、前記集光レンズによって集光された前記光信号を前記受光部に向けて反射する反射構造と、を備え
前記受光ユニットは、
アレイ状に配置された複数の前記受光素子を有し、
前記反射構造は、
前記受光ユニットの外周部分の前記不感領域に配置される第1反射体と、
互いに隣接し合う前記受光素子の前記受光部の間の前記不感領域に配置され、前記受光部の間に配置された前記不感領域に向けて入射した前記光信号を、前記光信号の入射方向に応じて、互いに隣接し合う前記受光素子の前記受光部のうちいずれか一方に反射する第2反射体と、を含む受光装置。
【請求項2】
前記受光ユニットの受光面に対する前記第2反射体の高さよりも、前記受光ユニットの受光面に対する前記第1反射体の高さの方が高い請求項に記載の受光装置。
【請求項3】
前記受光素子は、
円形の前記受光部を有し、
前記反射構造は、
前記集光レンズに向けて入射面が開口され、前記受光部の形状に合わせて円形の出射面が開口され、前記集光レンズによって集光された前記光信号を前記受光部に向けて反射する反射面が前記入射面と前記出射面の間に形成される請求項に記載の受光装置。
【請求項4】
複数の前記受光ユニットを備える請求項1乃至のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の受光装置と、
前記受光装置によって受光された光信号に基づく信号をデコードするデコーダと、を備える受信装置。
【請求項6】
前記デコーダは、
互いに隣接し合う複数の受光素子によって受光された前記光信号を加算する請求項に記載の受信装置。
【請求項7】
空間光信号に由来する前記光信号が受光された前記受光素子の数に基づいて、前記空間光信号の送信元との距離を判定する判定手段をさらに備える請求項5または6に記載の受信装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の受信装置と、
前記受信装置に含まれるデコーダによってデコードされた信号に応じた空間光信号を送光する送光手段と、を備える通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間光信号を受光する受光装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信においては、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う。空間を広がって伝搬する空間光信号を受信するためには、できる限り大きな集光レンズが必要となる。また、光空間通信においては、高速通信を行うために、静電容量の小さなフォトダイオードが必要である。そのようなフォトダイオードは、受光領域が小さいため、多様な方向から到来する空間光信号を、その受光領域に向けて、大型の集光レンズで集光することは難しい。
【0003】
特許文献1には、集光レンズ、受光素子、および信号反射手段を備える光通信装置について開示されている。信号反射手段は、大口径側を集光レンズに向け、その大口径側に対面する小口径側を受光素子に向けて配置される。信号反射手段の大口径側から入射した信号光は、信号反射手段の内側の反射鏡で反射されて小口径側から出射され、受光素子の受光範囲内に入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平04-131732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
集光レンズに対して、複数のフォトダイオードを格子状に配置すれば、多様な方向から到来する空間光信号をそれらのフォトダイオードのうちいずれかの受光領域で受光するように構成できる。しかしながら、そのような構成の場合、複数のフォトダイオードの受光領域の間に不感領域が形成される。不感領域に入射した空間光信号は、複数のフォトダイオードのいずれの受光領域にも受光されない。
【0006】
特許文献1の手法では、信号反射手段によって、受光素子によって受光される信号光の入射角を実質的に拡大する。特許文献1の手法では、単一の受光素子については実質的な受光範囲を拡大できる。しかし、特許文献1の手法では、格子状に配置された複数の受光素子の不感領域に入射した信号光を、効率的に受光できなかった。
【0007】
本開示の目的は、空間光信号を効率的に受光できる受光装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の受光装置は、空間光信号を集光する集光レンズと、集光レンズに受光部を向けて配置され、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を受光する少なくとも一つの受光素子を有する受光ユニットと、受光部の周辺の不感領域に配置され、集光レンズによって集光された光信号を受光部に向けて反射する反射構造と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、空間光信号を効率的に受光できる受光装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る受光装置の構成の一例を示す概念図である。
図2】第1の実施形態に係る受光装置に含まれる受光ユニットの構成について説明するための斜視図である。
図3】第1の実施形態に係る受光装置に含まれる受光ユニットの構成について説明するための正面図である。
図4】第1の実施形態に係る受光装置に含まれる受光ユニットによって受光される光信号の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図5】第1の実施形態に係る受光装置に含まれる受光ユニットによって受光される光信号の軌跡の別の一例について説明するための概念図である。
図6】第1の実施形態に係る受光装置に含まれる受光ユニットによって受光される光信号の軌跡のさらに別の一例について説明するための概念図である。
図7】第1の実施形態に係る変形例1の受光ユニットの構成について説明するための斜視図である。
図8】第1の実施形態に係る変形例1の受光ユニットの構成について説明するための正面図である。
図9】第1の実施形態に係る変形例2の受光ユニットの構成について説明するための斜視図である。
図10】第1の実施形態に係る変形例2の受光ユニットの構成について説明するための正面図である。
図11】第1の実施形態に係る変形例2の受光ユニットによって受光される光信号の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図12】第1の実施形態に係る変形例3の受光ユニットによって受光される光信号の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図13】第1の実施形態に係る変形例4の受光ユニットに含まれる複数の受光素子の配列について説明するための正面図である。
図14】第1の実施形態に係る変形例4の受光ユニットの構成について説明するための正面図である。
図15】第1の実施形態に係る変形例4の受光ユニットによって受光される光信号の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図16】第1の実施形態に係る変形例5の受光ユニットの構成について説明するための斜視図である。
図17】第1の実施形態に係る変形例5の受光ユニットの構成について説明するための正面図である。
図18】第1の実施形態に係る変形例5の受光ユニットによって受光される光信号の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図19】第1の実施形態に係る変形例6の受光装置の構成について説明するための概念図である。
図20】第1の実施形態に係る変形例7の受光装置の構成について説明するための概念図である。
図21】第2の実施形態に係る受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図22】第2の実施形態に係る受信装置のデコーダの構成の一例を示す概念図である。
図23】第2の実施形態に係る受信装置によって受信される空間光信号の到来方向の角度依存性について説明するための概念図である。
図24】第2の実施形態に係る受信装置によって受信される空間光信号の到来方向の角度依存性について説明するためのグラフである。
図25】第2の実施形態に係る受信装置によって受信される空間光信号の送信元との距離に応じた受信特性について説明するための概念図である。
図26】第2の実施形態に係る変形例8の受信装置の一例を示す概念図である。
図27】第3の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す概念図である。
図28】第3の実施形態に係る通信装置に含まれる投光部の構成の一例を示す概念図である。
図29】第3の実施形態に係る通信装置の適用例を示す概念図である。
図30】第4の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す概念図である。
図31】各実施形態の制御および処理を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。以下の実施形態の説明に用いる全図においては、同様の構成の符号を省略することがある。以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては、繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0012】
以下の実施形態の説明に用いる全図において、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。また、図面中の光の軌跡を示す線は概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、以下の図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることもある。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信に用いられる。本実施形態の受光装置は、空間を伝搬する光を受光する用途であれば、光空間通信以外の用途に用いられてもよい。以下においては、特に断りがない限り、空間光信号は、十分に離れた位置から到来するために平行光とみなす。
【0014】
(構成)
図1は、本実施形態の受光装置10の構成の一例を示す概念図である。受光装置10は、集光レンズ11および受光ユニット12を備える。受光ユニット12は、複数の受光素子120と反射構造130を有する。反射構造130は、第1反射体131と第2反射体135を含む。第1反射体131は、一列に配置された複数の受光素子120によって形成される長方形の短辺に沿って配置される。第2反射体135は、二つの受光素子120の受光部121の間に配置される。図1は、受光装置10の内部構成を上方向から見た図である。図2は、受光ユニット12を入射面側の斜め前方の視座から見た斜視図である。図3は、受光ユニット12を入射面側の視座から見た正面図である。
【0015】
集光レンズ11は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ11によって集光された空間光信号に由来する光(光信号とも呼ぶ)は、受光ユニット12の入射面に向けて集光される。例えば、集光レンズ11は、ガラスやプラスチックなどの材料で構成できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、集光レンズ11には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、集光レンズ11は、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料で実現されればよい。なお、空間光信号の波長領域の光を屈折して透過できさえすれば、集光レンズ11の材質には限定を加えない。
【0016】
受光ユニット12は、一列に並べられた複数の受光素子120を有する。図1図3には、受光ユニット12が4つの受光素子120によって構成される例を示すが、受光ユニット12を構成する受光素子120の数には限定を加えない。受光ユニット12は、集光レンズ11の後段に配置される。受光ユニット12に含まれる複数の受光素子120の各々は、集光レンズによって集光された光信号を受光する受光部121を有する。また、複数の受光素子120の各々の受光面には、受光部121が位置しない領域(不感領域とも呼ぶ)が含まれる。複数の受光素子120の各々は、受光部121が集光レンズ11の出射面と対面するように配置される。複数の受光素子120の各々は、受光部121が所定領域に位置するように配置される。集光レンズ11によって集光された光信号は、所定領域に位置する受光素子120の受光部121で受光される。
【0017】
受光素子120は、受光対象の光信号の波長領域の光を受光する。例えば、受光素子120は、可視領域の光信号を受光する。例えば、受光素子120は、赤外領域の光信号を受光する。受光素子120は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光信号を受光する。なお、受光素子120が受光する光信号の波長帯は、1.5μm帯に限定されない。送光装置(図示しない)から送光される空間光信号の波長に合わせて、受光素子120が受光する光信号の波長帯は、任意に設定できる。受光素子120が受光する光信号の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、受光素子120が受光する光信号の波長帯は、例えば0.8~1μm帯であってもよい。光信号の波長帯が短い方が、大気中の水分による吸収が小さいので、降雨時における光空間通信には有利である。また、受光素子120は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、空間光信号に由来する光信号を読み取ることができない。そのため、受光素子120よりも前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタが設置されてもよい。
【0018】
受光素子120は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子120は、変換後の電気信号を、デコーダ(図示しない)に出力する。例えば、受光素子120は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、受光素子120は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。アバランシェフォトダイオードによって実現された受光素子120は、高速通信に対応できる。なお、受光素子120は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。通信速度を向上させるために、受光素子120の受光部121は、できるだけ小さい方が好ましい。例えば、受光素子120の受光部121は、一辺が5mm(ミリメートル)程度の正方形の受光面を有する。例えば、受光素子120の受光部121は、直径0.1~0.3mm程度の円形の受光面を有する。受光素子120の受光部121の大きさや形状は、空間光信号の波長帯や通信速度などに応じて選定されればよい。
【0019】
集光レンズ11によって集光された光信号は、受光素子120の受光部121が配置された所定領域に集光されたとしても、受光素子120の不感領域に集光された成分は受光素子120によって受光されない。本実施形態では、後述する反射構造130によって、不感領域に集光された光信号を、反射構造130が配置された受光素子120の受光部121に向けて反射する。受光装置10は、集光レンズ11によって集光された光信号の受光面積を実効的に拡大できるため、空間光信号の受光効率を向上できる。
【0020】
反射構造130は、受光素子120の受光面の不感領域に配置される。図1図3の例において、反射構造130は、複数の第1反射体131と複数の第2反射体135を含む。例えば、反射構造130は、プラスチックやガラス、シリコン、金属などを基材とする。例えば、反射構造130の反射面は、めっきや蒸着、研磨などによって形成される。例えば、反射構造130は、ガラスにアルミニウムを蒸着することによって形成できる。例えば、反射構造130は、アルミニウムなどの金属の枠に接着させて、受光素子120の受光部121の周辺の不感領域に固着させる。複数の第1反射体131と複数の第2反射体135は、一体化されていてもよいし、別々に構成されてもよい。なお、反射構造130の材質や、反射面の性状については、特に限定を加えない。
【0021】
第1反射体131は、受光ユニット12の外周部分の不感領域に配置される。第1反射体131は、反射面を有する。第1反射体131は、反射面で反射された光信号を、受光素子120の受光部121に向けて反射するように設置される。特に、第1反射体131は、集光レンズ11によって集光された光信号を、その第1反射体131が配置された受光素子120の受光部121に向けて反射するように設置される。
【0022】
第1反射体131の反射面は、集光レンズ11によって集光された光信号を、受光素子120の受光部121に向けて反射する。例えば、第1反射体131は、直角三角形の断面を有する三角柱の形状を有する。第1反射体131の反射面の反対側には受光素子120がない。そのため、集光レンズ11によって集光された光信号をより効率的に受光素子120の受光部121に導くために、受光素子120の受光面に対する第1反射体131の高さは、第2反射体の高さよりも高くした方がよい。例えば、集光レンズ11の入射面に対して大きい入射角で入射された空間光信号をより効率的に受光するためには、第1反射体131の反射面が形成する斜面の角度が直角に近い角度に設定された方がよい。
【0023】
第2反射体135は、互いに隣接し合う受光素子120の受光部121の間の不感領域に配置される。第2反射体135は、二つの反射面を有する。第2反射体135は、二つの反射面で反射された光信号が、その光信号の入射方向に応じて、互いに隣接し合う二つの受光素子120のいずれかの受光部121に向けて反射するように設置される。特に、第2反射体135は、集光レンズ11によって集光された光信号を、その第2反射体135が配置された二つの受光素子120のうちいずれかの受光部121に向けて反射するように、設置される。
【0024】
第2反射体135の反射面は、集光レンズ11によって集光された光信号を、受光素子120の受光部121に向けて反射する。例えば、第2反射体135は、二等辺三角形の断面を有する三角柱の形状を有する。第2反射体135の両側には、異なる受光素子120がある。受光素子120の受光面に対する第2反射体の高さは、第1反射体131の高さより低くてもよい。
【0025】
第2反射体135の二つの反射面に挟まれた角の角度が鋭すぎると、第2反射体135の反射面で反射された光信号が、その第2反射体135に隣接する別の第2反射体135の反射面で反射されて入射側に戻る可能性がある。その一方で、第2反射体135の二つの反射面に挟まれた角の角度が鈍すぎると、反射面で反射された光信号がそのまま入射側に戻ってしまう可能性がある。そのため、受光素子120の受光面に対する第2反射体135の高さは、その第2反射体135の反射面で反射された光信号が効率的に受光素子120の受光部121に反射される高さに設定されることが好ましい。
【0026】
ここで、受光装置10による空間光信号の受光について、いくつか例をあげて説明する。図4図6は、受光装置10による空間光信号の受光例について説明するための概念図である。図4図6は、受光装置10の内部構成を上方向から見た図である。図4図6においては、受光ユニット12が4つの受光素子120(受光素子120-1~4)を含む例について説明する。
【0027】
図4は、集光レンズ11によって集光された光信号が、単一の受光素子120(受光素子120-2)によって受光される例である。集光レンズ11によって集光された光信号のうち、受光素子120-2の不感領域に配置された第2反射体135によって反射された光信号は、それらの第2反射体135の反射面で反射されて、受光素子120-2の受光部121に受光される。
【0028】
図5は、集光レンズ11によって集光された光信号が、二つの受光素子120(受光素子120-2~3)によって受光される例である。集光レンズ11によって集光された光信号のうち、受光素子120-2と受光素子120-3の間の不感領域に配置された第2反射体135によって反射された光信号は、その第2反射体135の二つの反射面のうちいずれかで反射される。第2反射体135の反射面で反射された光信号は、受光素子120-2および受光素子120-3のいずれかの受光部121に受光される。図5の例の場合、受光素子120-2と受光素子120-3の間の不感領域に配置された第2反射体135によって反射された光信号は、受光素子120-1と受光素子120-4の受光部121には到達しない。第2反射体135によって反射された光信号は、受光素子120-2と受光素子120-3の受光部121によって選択的に受光される。すなわち、本実施形態の構成によれば、空間光信号の到来方向に応じた受光素子120によって光信号が受光され、空間光信号の到来方向を正確に把握できる。
【0029】
図6は、集光レンズ11によって集光された光信号が、受光ユニット12の端に位置する単一の受光素子120(受光素子120-1)によって受光される例である。集光レンズ11によって集光された光信号のうち、受光素子120-1の不感領域に配置された第1反射体131によって反射された光信号は、その第1反射体131の反射面で反射されて、受光素子120-1の受光部121に受光される。図6の例の場合、受光素子120-1の不感領域に配置された第1反射体131によって反射された光信号は、受光素子120-2~4の受光部121には到達しない。第1反射体131によって反射された光信号は、受光素子120-1の受光部121によって選択的に受光される。すなわち、本実施形態の構成によれば、空間光信号の到来方向に応じた受光素子120によって光信号が受光され、空間光信号の到来方向を正確に把握できる。
【0030】
(変形例)
次に、本実施形態の受光装置10の変形例について図面を参照しながら説明する。以下の変形例は、受光ユニット12の構成や形状、数が異なる。以下の変形例は一例であって、本実施形態の受光装置10を変形例の構成に限定するものではない。
【0031】
〔変形例1〕
図7図8は、変形例1の受光ユニット12-1の構成の一例を示す概念図である。図7は、受光ユニット12-1を入射面側の斜め前方の視座から見た斜視図である。図8は、受光ユニット12-1を入射面側の視座から見た正面図である。本変形例の受光ユニット12-1において、複数の受光素子120は一列(一次元アレイ状)に配列される。
【0032】
受光ユニット12-1は、複数の受光素子120、二つの第1反射体131、二つの第1反射体132、および複数の第2反射体135を有する。第1反射体131は、一列に配置された複数の受光素子120によって形成される長方形の左右の短辺の不感領域に配置される。第1反射体132は、一列に配置された複数の受光素子120によって形成される長方形の上下の長辺の不感領域に配置される。受光素子120の受光面に対する第1反射体132の高さは、第1反射体131と同じである。第2反射体135は、互いに隣接し合う二つの受光素子120の間に配置される。
【0033】
本変形例では、一列に配置された複数の受光素子120によって形成される長方形の長辺の不感領域に、第1反射体132が配置される。第1反射体132は、受光ユニット12-1の長辺側の不感領域に入射される光信号を、受光素子120の受光部121に向けて反射する。そのため、本変形例の受光ユニット12-1は、受光ユニット12と比べて、空間光信号をより効率的に受光できる。
【0034】
〔変形例2〕
図9図10は、変形例2の受光ユニット12-2の構成の一例を示す概念図である。図9は、受光ユニット12-2を入射面側の斜め前方の視座から見た斜視図である。図10は、受光ユニット12-2を入射面側の視座から見た正面図である。本変形例の受光ユニット12-2において、複数の受光素子120は二次元アレイ状に配列される。
【0035】
受光ユニット12-2は、複数の受光素子120、二つの第1反射体131、二つの第1反射体132、複数の第2反射体135、および複数の第2反射体136を有する。第1反射体131は、二次元アレイ状に配置された複数の受光素子120によって形成される長方形の左右の短辺の不感領域に配置される。第1反射体132は、複数の受光素子120によって形成される長方形の上下の長辺の不感領域に配置される。受光素子120の受光面に対する第1反射体132の高さは、第1反射体131と同じである。第2反射体135は、複数の受光素子120によって形成される長方形の短辺に平行に、互いに隣接し合う複数の受光素子120の受光部121の間に配置される。第2反射体136は、複数の受光素子120によって形成される長方形の長辺に平行に、互いに隣接し合う二つの受光素子120の受光部121の間に配置される。受光素子120の受光面に対する第2反射体135および第2反射体136の高さは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0036】
図11は、集光レンズ11によって集光された光信号が、本変形例の受光ユニット12-2によって受光される一例を示す概念図である。図11は、集光レンズ11によって集光された光信号が、4つの受光素子120の間の不感領域を含む範囲に入射する例である。4つの受光素子120の間の不感領域を含む範囲に入射した光信号は、4つの受光素子120の間の不感領域に配置された第2反射体135および第2反射体136によって反射される。第2反射体135および第2反射体136によって反射された光信号は、それらの受光素子120のうちいずれかによって受光される。
【0037】
本変形例では、二次元アレイ状に配置された複数の受光素子120によって光信号を受光する。そのため、本変形例の受光ユニット12-2は、受光ユニット12と比べて、受光面積を拡大できるため、多様な方向から到来する空間光信号を効率的に受光できる。
【0038】
〔変形例3〕
図12は、変形例3の受光ユニット12-3の構成の一例を示す概念図である。図12は、受光ユニット12-3を入射面側の斜め前方の視座から見た斜視図である。図12は、集光レンズ11によって集光された光信号が、本変形例の受光ユニット12-3によって受光される様子を示す。本変形例の受光ユニット12-3においては、複数の受光素子123が二次元アレイ状に配列される。複数の受光素子123の各々は、受光部124を有する。複数の受光素子123の受光部124の周囲には、不感領域がない。例えば、受光部124の端子は、受光素子123の背面側に設置される。
【0039】
受光ユニット12-3は、複数の受光素子123、二つの第1反射体131、および二つの第1反射体132を有する。第1反射体131は、二次元アレイ状に配置された複数の受光素子123によって形成される長方形の左右の短辺の不感領域に配置される。第1反射体132は、複数の受光素子123によって形成される長方形の上下の長辺の不感領域に配置される。受光素子123の受光面に対する第1反射体132の高さは、第1反射体131と同じである。
【0040】
図12は、集光レンズ11によって集光された光信号が、4つの受光素子123の間を含む範囲に入射する例である。4つの受光素子123の間に入射した光信号は、4つの受光素子123のうちいずれかによって受光される。
【0041】
本変形例では、二次元アレイ状に配置された複数の受光素子123によって光信号を受光する。複数の受光素子123は、不感領域を含まない。そのため、本変形例の受光ユニット12-3は、互いに隣接し合う受光素子123の間に第2反射体を設けなくても、変形例2の受光ユニット12-2と同等の効率で空間光信号を受光できる。また、変形例の受光ユニット12-3は、不感領域に第2反射体を設けないため、変形例2の受光ユニット12-2と比べて小型化できる。
【0042】
〔変形例4〕
図13図15は、変形例4の受光ユニット12-4について説明するための概念図である。受光ユニット12-4は、円形の受光部126を有する複数の受光素子125を含む。図13は、受光ユニット12-4を構成する複数の受光素子125の配置例を示す。図14は、受光ユニット12-4を入射面側の視座から見た正面図である。図15は、図14の切断線A-Aで切断された受光ユニット12-4の断面図である。図13図14には、光信号の照射範囲の一例を一点鎖線の円で示す。図15には、図13図14の照射範囲(一点鎖線)の範囲内に照射された光信号の軌跡を矢印で示す。
【0043】
受光ユニット12-4は、複数の受光素子125および複数の反射構造134を有する。反射構造134は、複数の受光素子125の各々の不感領域に配置される。反射構造134は、入射側が正方形に開口され、出射側が円形に開口された形状を有する。反射構造134の入射側の開口は、複数の受光素子125の配列に応じた形状にすることが好ましい。例えば、複数の受光素子125をハニカム状に配列する場合、反射構造134の入射側の開口は、不感領域がちいさくなるように六角形にすればよい。反射構造134の内面は、入射側と出射側の開口が滑らかに繋がるように形成される。反射構造134の内面には、反射面が形成される。
【0044】
図13のように複数の受光素子125を配列した場合、照射範囲の内部には、受光素子125の不感領域だけではなく、受光素子125の間の隙間に不感領域が形成される。本変形例では、受光素子125の不感領域だけではなく、受光素子125の間の隙間の不感領域に入射した光信号も、反射構造134の反射面で反射されて、受光素子125の受光部126で受光される。
【0045】
本変形例では、複数の受光素子125の配列に応じた形状に入射側が開放され、出射側が円形に開放された形状を有する反射構造を用いる。本変形例によれば、円形の受光部126を有する受光素子125であっても、空間光信号を効率的に受光できる。
【0046】
〔変形例5〕
図16図18は、変形例5の受光ユニット12-5の構成の一例を示す概念図である。受光ユニット12-5は、長方形の受光部128を有する受光素子127を含む。図16は、受光ユニット12-5を入射面側の斜め前方の視座から見た斜視図である。図17は、受光ユニット12-5を入射面側の視座から見た正面図である。図18は、図17の切断線B-Bで切断された受光ユニット12-5の断面図である。図18には、信号の軌跡を矢印で示す。
【0047】
受光ユニット12-5は、受光素子127、二つの第1反射体131、および二つの第1反射体132を有する。第1反射体131は、長方形の受光素子127の左右の短辺の不感領域に配置される。第1反射体132は、長方形の受光素子127の上下の長辺の不感領域に配置される。受光素子120の受光面に対する第1反射体132の高さは、第1反射体131と同じである。
【0048】
図18のように、受光ユニット12-5は、長方形の受光素子127を有する。そのため、受光ユニット12-5は、単一の受光素子127で構成されながら、本実施形態の受光ユニット12と同等の効率で光信号を受光できる。
【0049】
本変形例では、長方形の受光素子127の短辺に第1反射体131が配置され、長辺の不感領域に第1反射体132が配置される。そのため、本変形例によれば、受光ユニット12-5の外周部分の不感領域に入射される光信号を、受光素子127の受光部128に導くことができる。また、本変形例では、長方形の受光素子127を用いるため、正方形や円形の受光素子を用いる場合と比べて、受光素子127の長辺方向における光信号の入射角が大きくなる。
【0050】
〔変形例6〕
図19は、変形例6の受光装置10-6の構成の一例を示す概念図である。本変形例の受光装置10-6は、集光レンズ11と受光ユニット12のペア(受光器とも呼ぶ)を複数含む。図19は、受光装置10-6の内部構成を上方向から見た図である。
【0051】
複数の受光器に含まれる集光レンズ11の入射面は、互いに異なる向きに向けて配置される。例えば、複数の受光器に含まれる集光レンズ11の入射面は、多様な方向から到来する空間光信号を漏れなく受光できるように、互いに隣接して配置される。
【0052】
本変形例によれば、複数の受光器の集光レンズ11の入射面を、互いに異なる向きに向けて配置することによって、多様な方向から到来する空間光信号を受光できる。
【0053】
〔変形例7〕
図20は、変形例7の受光装置10-7の構成の一例を示す概念図である。本変形例の受光装置10-7は、集光レンズ11と受光ユニット12のペア(受光器とも呼ぶ)を複数含む。図20は、集光レンズ11を入射面側の視座から見た正面図である。図20には、集光レンズ11の向こう側に配置された受光ユニットを破線で示す。
【0054】
複数の受光器に含まれる集光レンズ11の入射面は、互いに同じ向きに向けて配置される。なお、複数の受光器に含まれる集光レンズ11の入射面は、異なる向きに向けて配置されてもよい。例えば、複数の受光器に含まれる集光レンズ11の入射面は、ある方向から到来する空間光信号を漏れなく受光できるように、互いに隣接して配置される。
【0055】
本変形例によれば、複数の受光器の集光レンズ11の入射面を、互いに同じ向きに向けて配置することによって、実効的な受光面積を大きくできる。
【0056】
以上のように、本実施形態の受光装置は、集光レンズ、受光ユニット、および反射構造を備える。集光レンズは、空間光信号を集光する。受光ユニットは、集光レンズに受光部を向けて配置され、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を受光する少なくとも一つの受光素子を有する。反射構造は、受光部の周辺の不感領域に配置される。反射構造は、集光レンズによって集光された光信号を受光部に向けて反射する。
【0057】
本実施形態の受光装置は、集光レンズによって集光された光信号のうち、受光素子の不感領域に向けて集光された成分を、反射構造によって受光素子の受光部に導く。そのため、本実施形態の受光装置によれば、空間光信号を効率的に受光できる。
【0058】
本実施形態の一態様において、受光ユニットは、アレイ状に配置された複数の受光素子を有する。反射構造は、受光ユニットの外周部分の不感領域に配置される第1反射体を含む。本態様では、集光レンズによって集光された光信号のうち、受光ユニットの外周部分の不感領域に向けて集光された成分が、第1反射体によって受光素子の受光部に導かれる。本態様によれば、受光ユニットの外周部分の不感領域に向けて集光された成分を受光できるため、空間光信号を効率的に受光できる。
【0059】
本実施形態の一態様において、反射構造は、互いに隣接し合う受光素子の受光部の間の不感領域に配置される第2反射体を含む。第2反射体は、受光部の間に配置された不感領域に向けて入射した光信号を、光信号の入射方向に応じて、互いに隣接し合う受光素子の受光部のうちいずれか一方に反射する。本態様では、集光レンズによって集光された光信号のうち、互いに隣接し合う受光素子の受光部の間の不感領域に向けて集光された成分を、第2反射体によって受光素子の受光部に導く。本態様によれば、互いに隣接し合う受光素子の受光部の間の不感領域に向けて集光された成分を受光できるため、空間光信号を効率的に受光できる。
【0060】
本実施形態の一態様において、受光ユニットの受光面に対する第2反射体の高さよりも、受光ユニットの受光面に対する第1反射体の高さの方が高い。本態様によれば、第2反射体の高さが第1反射体の高さよりも低くすることによって、互いに隣接し合う第2反射体で光信号が反射する頻度を低減できるため、入射方向に戻る光信号を低減できる。
【0061】
本実施形態の一態様において、受光素子は、円形の受光部を有する。反射構造には、集光レンズに向けて入射面が開口され、受光部の形状に合わせて円形の出射面が開口される。反射構造には、集光レンズによって集光された光信号を受光部に向けて反射する反射面が、入射面と出射面の間に形成される。
【0062】
本実施形態の一態様において、受光装置は、複数の受光ユニットを備える。本態様によれば、複数の受光ユニットの受光方向を異なる向きに向けることによって、多様な方向から到来する空間光信号を効率的に受光できる。また、本態様によれば、複数の受光ユニットの受光方向を同じ向きに向けることによって、同じ方向から到来する空間光信号を効率的に受光できる。
【0063】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、受光素子によって受光された光信号をデコードするデコーダを備える。本実施形態においては、第1の実施形態の受光装置10を用いる例について説明するが、第1の実施形態の変形例の構成を適用してもよい。
【0064】
(構成)
図21は、本実施形態の受信装置200の構成の一例を示す概念図である。受信装置200は、集光レンズ21、受光ユニット22、およびデコーダ23を備える。集光レンズ21および受光ユニット22は、受光装置20を構成する、受光ユニット22は、複数の受光素子220と反射構造230を有する。受光ユニット22は、第1反射体231と第2反射体235を有する。第1反射体231は、一列に配置された複数の受光素子220によって形成される長方形の短辺に沿って配置される。第2反射体235は、二つの受光素子220の受光部221の間に配置される。図21は、受信装置200の内部構成を上方向から見た図である。なお、デコーダ23の位置については、特に限定を加えない。デコーダ23は、受信装置200の内部に配置されてもよいし、受信装置200の外部に配置されてもよい。
【0065】
集光レンズ21は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ21によって集光された空間光信号に由来する光(光信号とも呼ぶ)は、受光ユニット22の入射面に向けて集光される。集光レンズ21は、第1の実施形態の集光レンズ11と同様の構成である。集光レンズ21は、受光ユニット22の形状に合わせて光を集光するように構成されてもよい。
【0066】
受光ユニット22は、一列に並べられた複数の受光素子220を有する。受光ユニット22は、集光レンズ21の後段に配置される。受光ユニット22に含まれる複数の受光素子220の各々は、集光レンズによって集光された光信号を受光する受光部221を有する。複数の受光素子220は、集光レンズ21の出射面と受光部221が対面するように配置される。複数の受光素子220の各々は、受光された光信号を電気信号(以下、信号とも呼ぶ)に変換する。複数の受光素子220の各々は、変換後の信号を、デコーダ23に出力する。複数の受光素子220の各々は、第1の実施形態の受光素子120と同様の構成である。
【0067】
デコーダ23は、複数の受光素子220の各々から出力された信号を取得する。デコーダ23は、複数の受光素子220の各々からの信号を増幅する。デコーダ23は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。例えば、デコーダ23は、複数の受光素子220ごとの信号をまとめて解析する。複数の受光素子220ごとの信号をまとめて解析する場合は、単一の通信対象と通信するシングルチャンネルの受信装置200を実現できる。例えば、デコーダ23は、複数の受光素子220ごとに、個別に信号を解析する。複数の受光素子220ごとに個別に信号を解析する場合、複数の通信対象と同時に通信するマルチチャンネルの受信装置200を実現できる。デコーダ23によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。デコーダ23によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0068】
〔デコーダ〕
次に、受信装置200が備えるデコーダ23の詳細構成の一例について図面を参照しながら説明する。図22は、デコーダ23の構成の一例を示すブロック図である。デコーダ23は、複数の第1処理回路25-1~M、制御回路26、セレクタ27、および複数の第2処理回路28-1~Nを有する(Nは自然数)。図22においては、複数の第1処理回路25-1~Mのうち、第1処理回路25-1のみ内部構成を図示しているが、複数の第1処理回路25-2~Mの内部構成も第1処理回路25-1と同様である。
【0069】
第1処理回路25は、複数の受光素子220のいずれか一つに対応付けられる。第1処理回路25は、ハイパスフィルタ251、増幅器253、および積分器255を含む。図22においては、ハイパスフィルタ251をHPF(High Pass Filter)と表記し、増幅器253をAMP(Amplifier)と表記し、積分器255をINT(Integrator)と表記する。複数の第1処理回路25-1~Mの各々のハイパスフィルタ251は、複数の第1処理回路25-1~Mの各々に対応付けられた受光素子220のいずれかから信号を取得する。複数の受光素子220の各々と、それらに対応する複数の第1処理回路25-1~Mの各々は、単位ユニットを構成する。複数の第1処理回路25-1~Mの各々のハイパスフィルタ251を通過した信号は、増幅器253と積分器255に並列で入力される。
【0070】
ハイパスフィルタ251は、受光素子220からの信号を取得する。ハイパスフィルタ251は、取得した信号のうち、空間光信号の波長帯に相当する高周波成分の信号を選択的に通過させる。ハイパスフィルタ251は、太陽光などの環境光に由来する信号をカットする。なお、ハイパスフィルタ251の替わりに、空間光信号の波長帯の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタを構成してもよい。また、受光素子220は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、光信号は読み取り不能となる。そのため、受光素子220の受光面の前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタを設置してもよい。ハイパスフィルタ251を通過した信号は、増幅器253および積分器255に供給される。
【0071】
増幅器253は、ハイパスフィルタ251から出力された信号を取得する。増幅器253は、取得された信号を増幅する。増幅器253は、増幅された信号をセレクタ27に出力する。セレクタ27に出力された信号のうち受信対象の信号は、制御回路26の制御に応じて、複数の第2処理回路28-1~Nのいずれかに割り当てられる。受信対象の信号は、通信対象の通信装置(図示しない)からの空間光信号である。空間光信号の受光に用いられない受光素子220からの信号は、第2処理回路28に出力されない。
【0072】
積分器255は、ハイパスフィルタ251から出力された信号を取得する。積分器255は、取得された信号を積分する。積分器255は、積分された信号を制御回路26に出力する。積分器255は、受光素子220が受光する空間光信号の強度を測定するために配置される。本実施形態では、ビーム径に広がりのある状態の空間光信号を、集光レンズ21の入射面において面で受光することによって、通信対象をサーチする速度を高速化する。ビーム径が絞られていない状態で受光される空間光信号は、ビーム径が絞られている場合と比べて強度が微弱であるため、増幅器253のみで増幅された信号の電圧測定は困難である。積分器255を用いれば、例えば、数msec(ミリ秒)~数十msec積分することによって、電圧測定できるレベルまで信号の電圧を大きくすることができる。
【0073】
制御回路26は、複数の第1処理回路25-1~Mの各々に含まれる積分器255から出力された信号を取得する。言い換えると、制御回路26は、複数の受光素子220の各々が受光した光信号に由来する信号を取得する。例えば、制御回路26は、互いに隣接し合う複数の受光素子220からの信号の読み取り値を比較する。制御回路26は、比較結果に応じて、信号強度が最大の受光素子220を選択する。制御回路26は、選択された受光素子220に由来する信号を、複数の第2処理回路28-1~Nのいずれかに割り当てるように、セレクタ27を制御する。
【0074】
制御回路26が受光素子220を選択することは、空間光信号の到来方向を推定することに相当する。すなわち、制御回路26が受光素子220を選択することは、空間光信号の送光元の通信装置を特定することに相当する。また、制御回路26によって選択された受光素子220からの信号を複数の第2処理回路のいずれかに割り当てることは、特定された通信対象と、その通信対象からの空間光信号を受光する受光素子220とを対応付けることに相当する。すなわち、制御回路26は、複数の受光素子220によって受光された光信号に基づいて、その光信号(空間光信号)の送光元の通信装置を特定する。なお、通信対象の位置が予め特定されている場合は、空間光信号の到来方向を推定する処理を行わず、受光素子220から出力された信号をそのままデコードすればよい。
【0075】
セレクタ27には、複数の第1処理回路25-1~Mの各々に含まれる増幅器253によって増幅された信号が入力される。セレクタ27は、制御回路26の制御に応じて、入力された信号のうち受信対象の信号を、複数の第2処理回路28-1~Nのうちいずれかに出力する。受信対象ではない信号は、セレクタ27から出力されないように構成されてもよい。
【0076】
複数の第2処理回路28-1~Nには、制御回路26によって割り当てられた、複数の受光素子220-1~Nのいずれかからの信号が入力される。複数の第2処理回路28-1~Nの各々は、入力された信号をデコードする。複数の第2処理回路28-1~Nの各々は、デコードされた信号に何らかの信号処理を行うように構成されてもよいし、外部の信号処理装置等(図示しない)に出力するように構成されてもよい。
【0077】
制御回路26によって選択された受光素子220に由来する信号をセレクタ27で選択することにより、1つの通信対象に対して1つの第2処理回路28が割り当てられる。すなわち、制御回路26は、複数の受光素子220が受光する、複数の通信対象からの空間光信号に由来する信号を、複数の第2処理回路28-1~Nのいずれかに割り当てる。これにより、受信装置200は、複数の通信対象からの空間光信号に由来する信号を、個別のチャネルで同時に読み取ることが可能になる。本実施形態の手法では、複数の通信対象からの空間光信号を、複数のチャネルにおいて同時に読み取るので、伝送速度が速い。なお、本実施形態の手法においても、状況に応じて、時分割で信号を受光するように構成してもよい。
【0078】
例えば、通信対象のスキャンを1次的なスキャンとして行い、空間光信号の到来方向を粗い精度で特定してもよい。そして、特定された方向に細かい精度の2次的なスキャンを行って、通信対象のより正確な位置を特定してもよい。通信対象との間で通信可能な状況になれば、通信対象との信号のやりとりによって、その通信対象の正確な位置を確定できる。なお、通信対象の位置が予め特定されている場合は、その通信対象の位置を特定する処理を省略してもよい。
【0079】
〔角度依存性〕
次に、本実施形態の受光装置20の受光ユニット22によって受光される光信号の角度依存性について図面を参照しながら説明する。図23は、受光ユニット22によって受信される光信号の角度依存性について説明するための概念図である。図23は、受光ユニット22が7つの受光素子220-1~7で構成される例である。
【0080】
多様な方向から到来した空間光信号は、集光レンズ21によって集光されて、受光ユニット22を構成する複数の受光素子220-1~7のいずれかによって受光される。空間光信号の到来方向に応じて、その空間光信号に由来する光信号を受信する受光素子220が決まる。そのため、複数の受光素子220-1~7の受光状況に応じて、空間光信号の到来方向を特定できる。
【0081】
図24は、受光ユニット22によって受信される光信号の角度依存性について説明するためのグラフである。図24の実線は、集光レンズ21に対する空間光信号の入射角と、その空間光信号に由来する光信号の受光強度(積分値)が最大となる受光素子220によって受光された光信号の強度(受光強度)との関係を示す。空間光信号の到来方向を変化させていくと、その空間光信号に由来する光信号の受光強度が最大となる受光素子220が変化する。光信号が複数の受光素子220によって受光される場合は、それらの受光素子220に光信号が分担されるため、個々の受光素子220の受光強度が低くなる。すなわち、光信号の受光を単一の受光素子220に担当させると、空間光信号の到来方向によっては、受信効率が低下する可能性がある。
【0082】
図24の破線は、光信号が複数の受光素子220によって受光される場合、それらの受光素子220によって受光された光信号を加算した際の受光強度の角度依存性を示す。図24の破線では、山の間の谷の落ち込みが軽減される。すなわち、複数の受光素子220によって受光された光信号の受光強度を加算すれば、空間光信号の到来方向に応じた受信効率の低下を抑制できる。
【0083】
例えば、図22のデコーダ23の構成において、隣接する受光素子220によって受光された光信号に由来する電気信号を、同じ第2処理回路28で処理するように制御すれば、空間光信号の到来方向に応じた受信効率の低下を抑制できる。例えば、制御回路26は、隣接する受光素子220によって受光された光信号に由来する電気信号が同じ第2処理回路28に出力されるように、セレクタ27を制御すればよい。例えば、セレクタ27の内部に、隣接する受光素子220によって受光された光信号に由来する電気信号を加算する加算機構を設ければ、それらの受光素子220に由来する電気信号を合成できる。第2処理回路28に入力される際に、隣接する受光素子220によって受光された光信号に由来する電気信号が合成されれば、実効的な受信強度が増大する。
【0084】
〔距離依存性〕
次に、本実施形態の受信装置200によって受信される空間光信号の送信元との距離の影響について図面を参照しながら説明する。図25は、空間光信号の送信元と受信装置200の距離に応じた受光特性の違いについて説明するための概念図である。
【0085】
空間光信号の送信元と受信装置200の距離が十分に離れている場合(遠距離)、その送信元から送信された空間光信号は、受信装置200に到達する段階では平行光とみなせる。図25の例では、遠距離の送信元から送信された空間光信号に由来する光信号は、単一の受光素子220(受光素子220-5に)よって受光される。
【0086】
一方、空間光信号の送信元と受信装置200の距離が十分に離れていない場合(近距離)、その送信元から送信された空間光信号は、受信装置200に到達する段階では平行光とみなせない。空間光信号の送信元と受信装置200が近距離の場合、空間光信号は投射方向に向かって広がっていくため、複数の受光素子220で受光される場合がある。図25の例では、近距離の送信元から送信された空間光信号に由来する光信号は、複数の受光素子220-1~3によって受光される。空間光信号の送信元と受信装置200の距離が近いほど、空間光信号が広がる傾向が大きいため、より多くの受光素子220で光信号が受光される。言い換えると、複数の受光素子220による光信号の受光状況に応じて、空間光信号の送信元と受信装置200の距離を推定することができる。
【0087】
ここで、本実施形態の変形例8の通信装置について図面を参照しながら説明する。図26は、変形例8の受信装置200-8の一例を示す概念図である。受信装置200-8は、図22の構成に判定部29が追加された構成を有する。受信装置200-8のデコーダ23は、図22の構成を有する。判定部29は、複数の第2処理回路28に接続される。
【0088】
制御回路26は、複数の受光素子220の各々によって受光された光信号に由来する電気信号を、異なる第2処理回路28に割り当てる。判定部29は、光信号ごとに割り当てられた第2処理回路28の数に応じて、空間光信号の送信元と受信装置200の距離を推定する。例えば、判定部29は、同一の送信元から送信された空間光信号に由来する光信号を受光した受光素子220の数が一つまたは二つの場合、その送信元は遠距離であると判定する。例えば、判定部29は、同一の送信元から送信された空間光信号に由来する光信号を受光した受光素子220の数が三つ以上の場合、その送信元は近距離であると判定する。
【0089】
判定部29は、複数の第2処理回路28の各々に入力された電気信号の強度に応じて、空間光信号の送信元と受信装置200の距離を推定してもよい。例えば、判定部29は、複数の第2処理回路28の各々に入力された電気信号の強度の関係と、空間光信号の送信元と受信装置200-8の距離とを教師データとして学習させたモデル(距離推定モデルとも呼ぶ)を記憶する。例えば、判定部29は、距離推定モデルを用いて、複数の第2処理回路28の各々に入力された電気信号の強度に基づいて、空間光信号の送信元と受信装置200-8の距離を推定する。
【0090】
例えば、判定部29による判定結果や推定結果は、制御回路26にフィードバックされ、増幅器253による増幅率の変更や、積分器255の積分回数の変更などのために用いられる。例えば、判定部29による判定結果や推定結果は、外部のシステムや表示装置等に出力されてもよい。
【0091】
以上のように、本実施形態の受信装置は、集光レンズ、受光ユニット、反射構造、およびデコーダを備える。集光レンズは、空間光信号を集光する。受光ユニットは、集光レンズに受光部を向けて配置され、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を受光する少なくとも一つの受光素子を有する。反射構造は、受光部の周辺の不感領域に配置される。反射構造は、集光レンズによって集光された光信号を受光部に向けて反射する。デコーダは、受光素子によって受光された光信号に基づく信号をデコードする。
【0092】
本実施形態の受信装置は、集光レンズによって集光された光信号のうち、受光素子の不感領域に向けて集光された成分を、反射構造によって受光素子の受光部に導く。そのため、本実施形態の受信装置によれば、空間光信号を効率的に受信できる。
【0093】
本実施形態の一態様において、デコーダは、互いに隣接し合う複数の受光素子によって受光された光信号を加算する。本態様によれば、互いに隣接し合う複数の受光素子によって受光された光信号を加算することによって、二つの受光素子によって受光される信号の強度を増大できる。
【0094】
本実施形態の一態様において、受信装置は、空間光信号に由来する光信号が受光された受光素子の数に基づいて、その空間光信号の送信元との距離を判定する判定部を備える。例えば、判定部は、空間光信号に由来する光信号が受光された受光素子の数が3つ以上の場合、その空間光信号の送信元との距離が近いと判定する。本態様によれば、空間光信号に由来する光信号が受光された受光素子の数に応じて、その空間光信号の送信元との距離を判定し、判定結果に応じた処理を実行できる。
【0095】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、第2の実施形態の受信装置と、受信された空間光信号に応じた空間光信号を送光する送光部とを備える。以下においては、位相変調型の空間光変調器を含む送光部を備える通信装置の例について説明する。なお、本実施形態の通信装置は、位相変調型の空間光変調器ではない送光機能を含む送光部を備えてもよい。また、本実施形態の通信装置は、無線通信機能を備えてもよい。
【0096】
(構成)
図27は、本実施形態の通信装置300の構成の一例を示す概念図である。通信装置300は、集光レンズ31、受光ユニット32、デコーダ33、および送光部37を備える。集光レンズ31および受光ユニット32は、受光装置30を構成する、受光ユニット32は、複数の受光素子320と反射構造330を有する。受光ユニット32は、第1反射体331と第2反射体335を有する。第1反射体331は、一列に配置された複数の受光素子320によって形成される長方形の短辺に沿って配置される。第2反射体335は、二つの受光素子320の間に配置される。図27は、通信装置300の内部構成を上方向から見た図である。なお、デコーダ33および送光部37の位置については、特に限定を加えない。デコーダ33および送光部37は、通信装置300の内部に配置されてもよいし、通信装置300の外部に配置されてもよい。
【0097】
集光レンズ31は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ31によって集光された空間光信号に由来する光(光信号とも呼ぶ)は、受光ユニット32の入射面に向けて集光される。集光レンズ31は、第1の実施形態の集光レンズ11と同様の構成である。集光レンズ31は、受光ユニット32の形状に合わせて光を集光するように構成されてもよい。
【0098】
受光ユニット32は、一列に並べられた複数の受光素子320を有する。受光ユニット32は、集光レンズ31の後段に配置される。受光ユニット32に含まれる複数の受光素子320の各々は、集光レンズによって集光された光信号を受光する受光部321を有する。複数の受光素子320は、集光レンズ31の出射面と受光部321が対面するように配置される。複数の受光素子320の各々は、受光された光信号を電気信号(以下、信号とも呼ぶ)に変換する。複数の受光素子320の各々は、変換後の信号を、デコーダ33に出力する。複数の受光素子320の各々は、第1の実施形態の受光素子120と同様の構成である。
【0099】
デコーダ33は、受光素子320から出力された信号を取得する。デコーダ33は、受光素子320からの信号を増幅する。デコーダ33は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。デコーダ33は、信号の解析結果に応じた光信号を送光するための制御信号を、送光部37に出力する。デコーダ33は、第2の実施形態のデコーダ23と同様の構成である。
【0100】
送光部37は、デコーダ33から制御信号を取得する。送光部37は、制御信号に応じた空間光信号を投射する。送光部37から投射された空間光信号は、通信対象(図示しない)によって受光される。例えば、送光部37は、位相変調型の空間光変調器を備える。また、送光部37は、位相変調型の空間光変調器ではない送光機能を含んでいてもよい。
【0101】
〔送光部〕
次に、送光部37の詳細構成の一例について図面を参照しながら説明する。図28は、送光部37の詳細構成の一例を示す概念図である。送光部37は、照射部371、空間光変調器373、制御部375、および投射光学系377を備える。照射部371、空間光変調器373、および投射光学系377は、投光部370を構成する。投光部370は、制御部375の制御に応じて、空間光信号を投射する。なお、図28は概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。
【0102】
照射部371は、特定波長のコヒーレントな光302を出射する。図28のように、照射部371は、光源3711とコリメートレンズ3712を含む。図28のように、照射部371が出射した光301は、コリメートレンズ3712を通過してコヒーレントな光302となり、空間光変調器373の変調部3730に入射される。例えば、光源3711は、レーザ光源を含む。例えば、光源3711は、可視領域の光301を出射するように構成される。なお、光源3711は、赤外領域や紫外領域などの赤外領域以外の光301を出射するように構成されてもよい。照射部371は、制御部375の制御に応じて駆動される図示しない電源(光源駆動電源とも呼ぶ)に接続される。光源駆動電源が駆動されると、光源3711から光301が出射される。
【0103】
空間光変調器373は、制御部375の制御に応じて、空間光信号を投射するためのパターン(空間光信号に対応する位相分布)を自身の変調部3730に設定する。本実施形態においては、空間光変調器373の変調部3730に所定のパターンが表示された状態で、その変調部3730に光302を照射する。空間光変調器373は、変調部3730に入射した光302の反射光(変調光303)を投射光学系377に向けて出射する。
【0104】
図28の例では、空間光変調器373の変調部3730の入射面に対して、光302の入射角を非垂直にする。すなわち、図28の例では、照射部371からの光302の出射軸を空間光変調器373の変調部3730に対して斜めにし、ビームスプリッタを用いずに、空間光変調器373の変調部3730に光302を入射させる。図28の構成では、ビームスプリッタを通過することによる光302の減衰が起こらないため、光302の利用効率を向上させることができる。
【0105】
空間光変調器373は、位相がそろったコヒーレントな光302の入射を受け、入射された光302の位相を変調する位相変調型の空間光変調器によって実現できる。位相変調型の空間光変調器373を用いた投射光学系377からの出射光は、フォーカスフリーであるため、複数の投射距離に光を投射することになっても投射距離ごとに焦点を変える必要がない。
【0106】
位相変調型の空間光変調器373の変調部3730には、制御部375の駆動に応じて、空間光信号に対応する位相分布が表示される。位相分布が表示された空間光変調器373の変調部3730で反射された変調光303は、一種の回折格子が集合体を形成したような画像になり、回折格子で回折された光が集まるように像が形成される。空間光変調器373は、例えば、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。空間光変調器373は、具体的には、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。例えば、空間光変調器373は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。位相変調型の空間光変調器373では、投射光を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器373を用いれば、光源の出力が同じであれば、その他の方式のものよりも表示情報を明るく表示させることができる。
【0107】
制御部375は、デコーダ33からの制御信号に応じて、空間光信号に対応するパターンを空間光変調器373の変調部3730に表示させる。制御部375は、空間光変調器373の変調部3730に照射される光302の位相と、変調部3730で反射される変調光303の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように空間光変調器373を駆動する。

【0108】
位相変調型の空間光変調器373の変調部3730に照射される光302の位相と、変調部3730で反射される変調光303の位相との差分を決定づけるパラメータは、例えば、屈折率や光路長などの光学的特性に関するパラメータである。例えば、制御部375は、空間光変調器373の変調部3730に印可する電圧を変化させることによって、変調部3730の屈折率を変化させる。変調部3730の屈折率を変化させれば、変調部3730に照射された光302は、変調部3730の各部の屈折率に基づいて適宜回折される。すなわち、位相変調型の空間光変調器373に照射された光302の位相分布は、変調部3730の光学的特性に応じて変調される。なお、制御部375による空間光変調器373の駆動方法はここで挙げた限りではない。
【0109】
投射光学系377は、空間光変調器373で変調された変調光303を投射光307(空間光信号とも呼ぶ)として投射する。図28のように、投射光学系377は、フーリエ変換レンズ3771、アパーチャ3773、および投射レンズ3775を含む。空間光変調器373で変調された変調光303は、投射光学系377によって投射光307として照射される。なお、投射範囲に像を形成できさえすれば、投射光学系377の構成要素のうちいずれかを省略してもよい。例えば、空間光変調器373の変調部3730に設定される位相分布に対応する画像を、仮想レンズを用いて拡大する場合、フーリエ変換レンズ3771を省略できる。また、必要に応じて、フーリエ変換レンズ3771、アパーチャ3773、および投射レンズ3775以外の構成を投射光学系377に追加してもよい。
【0110】
フーリエ変換レンズ3771は、空間光変調器373の変調部3730で反射された変調光303を無限遠に投射した際に形成される像を、近傍の焦点に結像させるための光学レンズである。図28では、アパーチャ3773の位置に焦点が形成されている。
【0111】
アパーチャ3773は、フーリエ変換レンズ3771によって集束された光に含まれる高次光を遮蔽し、投射光307が表示される範囲を特定する。アパーチャ3773の開口部は、アパーチャ3773の位置における表示領域の最外周よりも小さく開口され、アパーチャ3773の位置における表示情報の周辺領域を遮るように設置される。例えば、アパーチャ3773の開口部は、矩形状や円形状に形成される。アパーチャ3773は、フーリエ変換レンズ3771の焦点位置に設置されることが好ましいが、高次光を消去する機能を発揮できれば焦点位置からずれていても構わない。
【0112】
投射レンズ3775は、フーリエ変換レンズ3771によって集束された光を拡大して投射する光学レンズである。投射レンズ3775は、空間光変調器373の変調部3730に表示された位相分布に対応する表示情報が投射範囲内に投影されるように投射光307を投射する。
【0113】
単純な記号などの線画を投射する場合、投射光学系377から投射された投射光307は、投射範囲全体に向けて均一に投射されるのではなく、画像を構成する文字や記号、枠などの部分に集中的に投射される。そのため、本実施形態の通信装置300によれば、光301の出射量を実質的に減らせるため、全体的な光出力を抑えることができる。すなわち、通信装置300は、小型かつ低電力な照射部371で実現できるため、その照射部371を駆動する光源駆動電源(図示しない)を低出力にでき、全体的な消費電力を低減できる。
【0114】
また、複数の波長の光を出射するように照射部371が構成されれば、照射部371から出射する光の波長を変えることができる。照射部371から出射する光の波長を変えれば、空間光信号の色を多色化できる。また、異なる波長の光を同時に出射する照射部371を用いれば、複数色の空間光信号を用いた通信が可能になる。
【0115】
〔適用例〕
図29は、本実施形態の通信装置300の適用例について説明するための概念図である。本適用例では、通信装置300を電柱の上部に配置する。なお、本適用例において、通信装置300は、無線通信する機能を有するものとする。
【0116】
電柱間には障害物が少ないため、電柱の上部は、通信装置300を設置するのに適している。通信をやり取りする二つの通信装置300は、一方の通信装置300が、他方の通信装置300から送光された空間光信号を受光するように配置される。通信装置300が二つのみの場合、空間光信号を互いに送受光するように配置されればよい。複数の通信装置300で空間光信号の通信網が構成される場合、中間に位置する通信装置300は、他の通信装置300から送光された空間光信号を、別の通信装置300に中継するように配置すればよい。
【0117】
本適用例によれば、異なる電柱に設置された複数の通信装置300の間で、空間光信号を用いた通信が可能になる。例えば、本適用例によれば、異なる電柱に設置された通信装置300の間における通信に応じて、自動車や家屋などに設置された無線装置と通信装置300との間で、無線通信による通信を行うこともできる。
【0118】
以上のように、本実施形態の通信装置は、集光レンズ、受光ユニット、反射構造、デコーダ、および送光部を備える。集光レンズは、空間光信号を集光する。受光ユニットは、集光レンズに受光部を向けて配置され、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を受光する少なくとも一つの受光素子を有する。反射構造は、受光部の周辺の不感領域に配置される。反射構造は、集光レンズによって集光された光信号を受光部に向けて反射する。デコーダは、受光素子によって受光された光信号に基づく信号をデコードする。送光部は、デコーダによってデコードされた信号に応じた空間光信号を送光する。
【0119】
本実施形態の通信装置によれば、空間光信号を用いた通信が可能になる。例えば、空間光信号を送受信し合えるように複数の通信装置を配置すれば、空間光信号を用いた通信網を構築できる。
【0120】
本実施形態の一態様において、送光部は、光源、空間光変調器、制御部、および投射光学系を有する。光源は、平行光を出射する。空間光変調器は、光源から出射された平行光の位相を変調する変調部を有する。制御部は、空間光信号に対応する位相画像を変調部に設定し、位相画像が設定された変調部に向けて平行光が照射されるように光源を制御する。投射光学系は、変調部で変調された光を投射する。本態様の通信装置は、位相変調型の空間光変調器を含むので、一般的な送光機構を含む通信装置と比べて、同じ程度の明るさの空間光信号を低消費電力で送光できる。
【0121】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、第1~第3の実施形態の受光装置を簡略化した構成である。図30は、本実施形態の受光装置40の構成の一例を示す概念図である。
【0122】
受光装置40は、集光レンズ41および受光ユニット42を備える。集光レンズ41は、空間光信号を集光する。受光ユニット42は、少なくとも一つの受光素子420と反射構造430を有する。受光素子420は、集光レンズ41に受光部を向けて配置される。受光素子420は、集光レンズ41によって集光された空間光信号に由来する光信号を受光する。反射構造430は、受光部421の周辺の不感領域に配置される。反射構造430は、集光レンズ41によって集光された光信号を受光部421に向けて反射する。
【0123】
本実施形態の受光装置によれば、集光レンズによって集光された光信号を、反射構造によって受光素子の受光部に導くことによって、空間光信号を効率よく受光できる。
【0124】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、図31の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、図31の情報処理装置90は、各実施形態に係る制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0125】
図31のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図31においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0126】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを、主記憶装置92に展開する。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0127】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0128】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0129】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0130】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成としてもよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0131】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0132】
また、情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0133】
以上が、各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、図31のハードウェア構成は、各実施形態に係る演算処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0134】
各実施形態に係る制御や処理を実行する構成要素は、任意に組み合わせてもよい。また、各実施形態に係る制御や処理を実行する構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。
【0135】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0136】
この出願は、2021年3月22日に出願された日本出願特願2021-047563を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0137】
10、20.30、40 受光装置
11、21、31、41 集光レンズ
12、22、32、42 受光ユニット
23、33 デコーダ
37 送光部
120、123、125、127、220、320、420 受光素子
121、124、126、128、221、321、421 受光部
130、134、230、330、430 反射構造
131、132、231、331 第1反射体
135、136、235、335 第2反射体
200 受信装置
300 通信装置
25 第1処理回路
26 制御回路
27 セレクタ
28 第2処理回路
251 ハイパスフィルタ
253 増幅器
255 積分器
370 投光部
371 照射部
373 空間光変調器
377 投射光学系
3711 光源
3712 コリメートレンズ
3771 フーリエ変換レンズ
3773 アパーチャ
3775 投射レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31