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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】車両用装置及び誤差推定方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241106BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20241106BHJP
   G01S 19/51 20100101ALI20241106BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
G08G1/09 H
G08G1/16 D
G01S19/51
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023529693
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2022020386
(87)【国際公開番号】W WO2022264731
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2021098905
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】金 周▲イク▼
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-193954(JP,A)
【文献】特開2012-211843(JP,A)
【文献】特開2016-143088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/09
G01S 19/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両で用いることが可能な車両用装置であって、
物標の参照位置を検出する参照装置から無線送信される前記参照位置を取得する参照位置取得部(231)と、
第1通信機搭載物から送信され、前記第1通信機搭載物での測位によって求められた前記第1通信機搭載物の位置である第1測位位置を取得する搭載物情報取得部(222)と、
前記参照位置取得部で前記参照位置を取得した前記物標と、前記搭載物情報取得部で前記第1測位位置を取得した前記第1通信機搭載物とが同一か否かを判定する同一判定部(204)と、
前記同一判定部で前記物標と前記第1通信機搭載物とが同一と判定した場合には、前記参照位置と前記第1測位位置とのずれから、前記第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する誤差推定部(206)とを備え
前記搭載物情報取得部は、前記第1通信機搭載物から送信され、前記第1通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第1物標の位置である第1搭載物基準物標位置も取得し、
前記誤差推定部で前記第1測位誤差を一旦推定した後は、前記搭載物情報取得部で取得する前記第1搭載物基準物標位置をその第1測位誤差の分だけ補正して、前記車両に対する前記第1物標の位置を特定する物標位置特定部(282)を備え、
前記搭載物情報取得部は、前記第1通信機搭載物以外の第2通信機搭載物から送信される前記第2通信機搭載物の位置である第2測位位置、及び前記第2通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第2物標の前記第2通信機搭載物の位置を基準とする位置である第2搭載物基準物標位置も取得し、
前記同一判定部は、前記第1物標と前記第2物標とが同一か否かを判定し、
前記誤差推定部は、前記同一判定部で前記第1物標と前記第2物標とが同一と判定した場合には、前記第2搭載物基準物標位置と、前記物標位置特定部で特定した前記第1物標の位置とのずれから、前記第2通信機搭載物での前記測位の誤差である第2測位誤差を推定する車両用装置。
【請求項2】
請求項に記載の車両用装置であって、
前記誤差推定部で前記第2測位誤差を一旦推定した後は、前記搭載物情報取得部で前記第2通信機搭載物から取得する前記第2測位位置を、その第2測位誤差の分だけ補正して、前記車両に対する前記第2通信機搭載物の位置を特定する搭載物位置特定部(281)を備える車両用装置。
【請求項3】
請求項又はに記載の車両用装置であって、
前記物標位置特定部は、前記誤差推定部で前記第2測位誤差を一旦推定した後は、前記搭載物情報取得部で前記第2通信機搭載物から取得する前記第2搭載物基準物標位置を、その第2測位誤差の分だけ補正して、前記車両に対する前記第2物標の位置を特定する車両用装置。
【請求項4】
車両で用いることが可能な車両用装置であって、
物標の参照位置を検出する参照装置から無線送信される前記参照位置を取得する参照位置取得部(231)と、
第1通信機搭載物から送信され、前記第1通信機搭載物での測位によって求められた前記第1通信機搭載物の位置である第1測位位置を取得する搭載物情報取得部(222)と、
前記参照位置取得部で前記参照位置を取得した前記物標と、前記搭載物情報取得部で前記第1測位位置を取得した前記第1通信機搭載物とが同一か否かを判定する同一判定部(204)と、
前記同一判定部で前記物標と前記第1通信機搭載物とが同一と判定した場合には、前記参照位置と前記第1測位位置とのずれから、前記第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する誤差推定部(206)とを備え
前記搭載物情報取得部は、前記第1通信機搭載物から送信され、前記第1通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第1物標の位置である第1搭載物基準物標位置も取得し、
前記誤差推定部で前記第1測位誤差を一旦推定した後は、前記搭載物情報取得部で取得する前記第1搭載物基準物標位置をその第1測位誤差の分だけ補正して、前記車両に対する前記第1物標の位置を特定する物標位置特定部(282)を備え、
前記搭載物情報取得部は、前記第1通信機搭載物以外の第2通信機搭載物から送信される前記第2通信機搭載物の位置である第2測位位置も取得し、
前記同一判定部は、前記第1物標と前記第2通信機搭載物とが同一か否かを判定し、
前記誤差推定部は、前記同一判定部で前記第1物標と前記第2通信機搭載物とが同一であると判定した場合には、前記第2測位位置と前記第1物標の位置とのずれから、前記第2通信機搭載物での前記測位の誤差である第2測位誤差を推定する車両用装置。
【請求項5】
請求項1又は4に記載の車両用装置であって、
前記参照装置が路側機であり、
前記参照位置取得部として、前記路側機が検出した前記物標の位置である路側機基準物標位置を前記参照位置として前記路側機から取得する路側機情報取得部を備える車両用装置。
【請求項6】
請求項に記載の車両用装置であって、
前記搭載物情報取得部で取得した前記路側機基準物標位置及び前記搭載物情報取得部で取得した前記第1測位位置を前記車両に対する相対位置に変換する変換部(205)を備え、
前記誤差推定部は、前記変換部で変換した前記路側機基準物標位置と、前記変換部で変換した前記第1測位位置とのずれから、前記車両の位置を基準とした前記第1測位誤差を推定する、車両用装置。
【請求項7】
請求項1又は4に記載の車両用装置であって、
前記誤差推定部で前記第1測位誤差を一旦推定した後は、前記第1通信機搭載物が前記参照装置により検出できなくなった場合であっても、前記搭載物情報取得部で前記第1通信機搭載物から取得する前記第1測位位置を、その第1測位誤差の分だけ補正して、前記車両に対するその第1通信機搭載物の位置を特定する搭載物位置特定部(281)を備える車両用装置。
【請求項8】
車両で用いることが可能であり、少なくとも1つのプロセッサにより実行される誤差推定方法であって、
物標の参照位置を検出する参照装置から無線送信される前記参照位置を取得する参照位置取得工程と、
第1通信機搭載物から送信され、前記第1通信機搭載物での測位によって求められた前記第1通信機搭載物の位置である第1測位位置を取得する搭載物情報取得工程と、
前記参照位置取得工程で前記参照位置を取得した前記物標と、前記搭載物情報取得工程で前記第1測位位置を取得した前記第1通信機搭載物とが同一か否かを判定する同一判定工程と、
前記同一判定工程で前記物標と前記第1通信機搭載物とが同一と判定した場合には、前記参照位置と前記第1測位位置とのずれから、前記第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する誤差推定工程とを含み、
前記搭載物情報取得工程では、前記第1通信機搭載物から送信され、前記第1通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第1物標の位置である第1搭載物基準物標位置も取得し、
前記誤差推定工程で前記第1測位誤差を一旦推定した後は、前記搭載物情報取得工程で取得する前記第1搭載物基準物標位置をその第1測位誤差の分だけ補正して、前記車両に対する前記第1物標の位置を特定する物標位置特定工程を含み、
前記搭載物情報取得工程では、前記第1通信機搭載物以外の第2通信機搭載物から送信される前記第2通信機搭載物の位置である第2測位位置、及び前記第2通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第2物標の前記第2通信機搭載物の位置を基準とする位置である第2搭載物基準物標位置も取得し、
前記同一判定工程では、前記第1物標と前記第2物標とが同一か否かを判定し、
前記誤差推定工程では、前記同一判定工程で前記第1物標と前記第2物標とが同一と判定した場合には、前記第2搭載物基準物標位置と、前記物標位置特定工程で特定した前記第1物標の位置とのずれから、前記第2通信機搭載物での前記測位の誤差である第2測位誤差を推定する誤差推定方法。
【請求項9】
車両で用いることが可能であり、少なくとも1つのプロセッサにより実行される誤差推定方法であって、
物標の参照位置を検出する参照装置から無線送信される前記参照位置を取得する参照位置取得工程と、
第1通信機搭載物から送信され、前記第1通信機搭載物での測位によって求められた前記第1通信機搭載物の位置である第1測位位置を取得する搭載物情報取得工程と、
前記参照位置取得工程で前記参照位置を取得した前記物標と、前記搭載物情報取得工程で前記第1測位位置を取得した前記第1通信機搭載物とが同一か否かを判定する同一判定工程と、
前記同一判定工程で前記物標と前記第1通信機搭載物とが同一と判定した場合には、前記参照位置と前記第1測位位置とのずれから、前記第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する誤差推定工程とを含み、
前記搭載物情報取得工程は、前記第1通信機搭載物から送信され、前記第1通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第1物標の位置である第1搭載物基準物標位置も取得し、
前記誤差推定工程で前記第1測位誤差を一旦推定した後は、前記搭載物情報取得工程で取得する前記第1搭載物基準物標位置をその第1測位誤差の分だけ補正して、前記車両に対する前記第1物標の位置を特定する物標位置特定工程を含み、
前記搭載物情報取得工程では、前記第1通信機搭載物以外の第2通信機搭載物から送信される前記第2通信機搭載物の位置である第2測位位置も取得し、
前記同一判定工程では、前記第1物標と前記第2通信機搭載物とが同一か否かを判定し、
前記誤差推定工程では、前記同一判定工程で前記第1物標と前記第2通信機搭載物とが同一であると判定した場合には、前記第2測位位置と前記第1物標の位置とのずれから、前記第2通信機搭載物での前記測位の誤差である第2測位誤差を推定する誤差推定方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2021年6月14日に日本に出願された特許出願第2021-98905号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
本開示は、車両用装置及び誤差推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、自車の見通し外の物標が存在することを判定する技術が開示されている。特許文献1に開示の技術では、物標としての他車両から送信された他車両の位置情報である受信情報と自車のセンサで検出した物標の移動速度及び移動方位を含むセンサ情報との比較結果により、両者が一致しない場合に、見通し外に物標が存在すると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-79316号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に開示の技術では、他車両の位置情報を受信することで自車のセンサで検出できない他車両の存在を判定できる。しかしながら、他車両から送信される他車両の位置情報には、測位衛星を用いた測位であっても、また、測位衛星を用いない測位であっても、測位の誤差(以下、測位誤差)が含まれる。よって、特許文献1に開示された技術では、自車のセンサの検出範囲外に他車両が位置する場合にその他車両の位置を精度良く特定することが難しい。
【0006】
この開示のひとつの目的は、自車の周辺監視センサの検出範囲外の通信機搭載物の位置をより精度良く特定することを可能にする車両用装置及び誤差推定方法を提供することにある。
【0007】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、開示の更なる有利な具体例を規定する。請求の範囲に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の車両用装置は、車両で用いることが可能な車両用装置であって、物標の参照位置を検出する参照装置から無線送信される参照位置を取得する参照位置取得部と、第1通信機搭載物から送信され、第1通信機搭載物での測位によって求められた第1通信機搭載物の位置である第1測位位置を取得する搭載物情報取得部と、参照位置取得部で参照位置を取得した物標と、搭載物情報取得部で第1測位位置を取得した第1通信機搭載物とが同一か否かを判定する同一判定部と、同一判定部で物標と第1通信機搭載物とが同一と判定した場合には、参照位置と第1測位位置とのずれから、第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する誤差推定部とを備え、搭載物情報取得部は、第1通信機搭載物から送信され、第1通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第1物標の位置である第1搭載物基準物標位置も取得し、誤差推定部で第1測位誤差を一旦推定した後は、搭載物情報取得部で取得する第1搭載物基準物標位置をその第1測位誤差の分だけ補正して、車両に対する第1物標の位置を特定する物標位置特定部(282)を備え、搭載物情報取得部は、第1通信機搭載物以外の第2通信機搭載物から送信される第2通信機搭載物の位置である第2測位位置、及び第2通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第2物標の第2通信機搭載物の位置を基準とする位置である第2搭載物基準物標位置も取得し、同一判定部は、第1物標と第2物標とが同一か否かを判定し、誤差推定部は、同一判定部で第1物標と第2物標とが同一と判定した場合には、第2搭載物基準物標位置と、物標位置特定部で特定した第1物標の位置とのずれから、第2通信機搭載物での測位の誤差である第2測位誤差を推定する。
また、本開示の他の車両用装置は、車両で用いることが可能な車両用装置であって、物標の参照位置を検出する参照装置から無線送信される参照位置を取得する参照位置取得部と、第1通信機搭載物から送信され、第1通信機搭載物での測位によって求められた第1通信機搭載物の位置である第1測位位置を取得する搭載物情報取得部と、参照位置取得部で参照位置を取得した物標と、搭載物情報取得部で第1測位位置を取得した第1通信機搭載物とが同一か否かを判定する同一判定部と、同一判定部で物標と第1通信機搭載物とが同一と判定した場合には、参照位置と第1測位位置とのずれから、第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する誤差推定部とを備え、搭載物情報取得部は、第1通信機搭載物から送信され、第1通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第1物標の位置である第1搭載物基準物標位置も取得し、誤差推定部で第1測位誤差を一旦推定した後は、搭載物情報取得部で取得する第1搭載物基準物標位置をその第1測位誤差の分だけ補正して、車両に対する第1物標の位置を特定する物標位置特定部を備え、搭載物情報取得部は、第1通信機搭載物以外の第2通信機搭載物から送信される第2通信機搭載物の位置である第2測位位置も取得し、同一判定部は、第1物標と第2通信機搭載物とが同一か否かを判定し、誤差推定部は、同一判定部で第1物標と第2通信機搭載物とが同一であると判定した場合には、第2測位位置と第1物標の位置とのずれから、第2通信機搭載物での測位の誤差である第2測位誤差を推定する。
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の誤差推定方法は、車両で用いることが可能であり、少なくとも1つのプロセッサにより実行される誤差推定方法であって、物標の参照位置を検出する参照装置から無線送信される参照位置を取得する参照位置取得工程と、第1通信機搭載物から送信され、第1通信機搭載物での測位によって求められた第1通信機搭載物の位置である第1測位位置を取得する搭載物情報取得工程と、参照位置取得工程で参照位置を取得した物標と、搭載物情報取得工程で第1測位位置を取得した第1通信機搭載物とが同一か否かを判定する同一判定工程と、同一判定工程で物標と第1通信機搭載物とが同一と判定した場合には、参照位置と第1測位位置とのずれから、第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する誤差推定工程とを含み、搭載物情報取得工程では、第1通信機搭載物から送信され、第1通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第1物標の位置である第1搭載物基準物標位置も取得し、誤差推定工程で第1測位誤差を一旦推定した後は、搭載物情報取得工程で取得する第1搭載物基準物標位置をその第1測位誤差の分だけ補正して、車両に対する第1物標の位置を特定する物標位置特定工程を含み、搭載物情報取得工程では、第1通信機搭載物以外の第2通信機搭載物から送信される第2通信機搭載物の位置である第2測位位置、及び第2通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第2物標の第2通信機搭載物の位置を基準とする位置である第2搭載物基準物標位置も取得し、同一判定工程では、第1物標と第2物標とが同一か否かを判定し、誤差推定工程では、同一判定工程で第1物標と第2物標とが同一と判定した場合には、第2搭載物基準物標位置と、物標位置特定工程で特定した第1物標の位置とのずれから、第2通信機搭載物での測位の誤差である第2測位誤差を推定する
また、本開示の他の誤差推定方法は、車両で用いることが可能であり、少なくとも1つのプロセッサにより実行される誤差推定方法であって、物標の参照位置を検出する参照装置から無線送信される参照位置を取得する参照位置取得工程と、第1通信機搭載物から送信され、第1通信機搭載物での測位によって求められた第1通信機搭載物の位置である第1測位位置を取得する搭載物情報取得工程と、参照位置取得工程で参照位置を取得した物標と、搭載物情報取得工程で第1測位位置を取得した第1通信機搭載物とが同一か否かを判定する同一判定工程と、同一判定工程で物標と第1通信機搭載物とが同一と判定した場合には、参照位置と第1測位位置とのずれから、第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する誤差推定工程とを含み、搭載物情報取得工程は、第1通信機搭載物から送信され、第1通信機搭載物が備える周辺監視センサで検出した第1物標の位置である第1搭載物基準物標位置も取得し、誤差推定工程で第1測位誤差を一旦推定した後は、搭載物情報取得工程で取得する第1搭載物基準物標位置をその第1測位誤差の分だけ補正して、車両に対する第1物標の位置を特定する物標位置特定工程を含み、搭載物情報取得工程では、第1通信機搭載物以外の第2通信機搭載物から送信される第2通信機搭載物の位置である第2測位位置も取得し、同一判定工程では、第1物標と第2通信機搭載物とが同一か否かを判定し、誤差推定工程では、同一判定工程で第1物標と第2通信機搭載物とが同一であると判定した場合には、第2測位位置と第1物標の位置とのずれから、第2通信機搭載物での測位の誤差である第2測位誤差を推定する。
【0010】
これらによれば、第1測位位置は、第1通信機搭載物で測位によって求められるものであるので、その測位の誤差を含んでいる。一方、開示した技術は、参照装置から物標の参照位置を取得する。そのため、物標と第1通信機搭載物とが同一と判定した場合、参照位置と、第1通信機搭載物から取得した第1測位位置とのずれから、第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差をより精度良く推定することが可能になる。ここで、第1測位誤差は、参照位置と第1測位位置から推定するので、第1測位誤差の推定は、第1通信機搭載物を車両に搭載された周辺監視センサで検出できなくても可能となる。また、第1測位誤差を用いれば、第1通信機搭載物での測位誤差を補正して、第1通信機搭載物の位置をより精度良く特定することが可能になる。その結果、自車の周辺監視センサの検出範囲外の通信機搭載物の位置をより精度良く特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両用システム1の概略的な構成の一例を示す図。
図2】路側機3の概略的な構成の一例を示す図。
図3】車両ユニット2の概略的な構成の一例を示す図。
図4】通信機20の概略的な構成の一例を示す図。
図5】通信機20での測位誤差推定関連処理の流れの一例を示すフローチャート。
図6】通信機20での第2推定関連処理の流れの一例を示すフローチャート。
図7】実施形態2の概要を説明する図。
図8】V2X通信装置の例示的なアーキテクチャを示す図。
図9】V2Xメッセージを例示する図。
図10】CAサービスおよび他の層のための論理インターフェースを示す図。
図11】CAサービスの機能ブロック図。
図12】CAMの基本的なフォーマットを示す図。
図13】CAMを送信する処理を示すフローチャートの一例。
図14】CPサービスおよび他の層のための論理インターフェースを示す図。
図15】CPサービスの機能ブロック図。
図16】CPMの基本的なフォーマットを示す図。
図17】CPMにおけるOVCの一例を示す図。
図18】CPMにおけるFOC(またはSIC)を例示する図。
図19】CPMにおけるPOCを例示する図。
図20】センサデータ抽出方法を説明する図。
図21】CPサービスを説明する図。
図22】CPMを送信する処理を示すフローチャートの一例。
図23】実施形態2で実行する測位誤差推定関連処理を示すフローチャートの一例。
図24】実施形態2における第2推定関連処理を示すフローチャートの一例。
図25】実施形態2における同一判定の対象を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、開示のための複数の実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、複数の実施形態の間において、それまでの説明に用いた図に示した部分と同一の機能を有する部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。同一の符号を付した部分については、他の実施形態における説明を参照することができる。
【0013】
(実施形態1)
<車両用システム1の概略構成>
以下、本開示の実施形態1について図面を用いて説明する。図1に示すように、車両用システム1は、複数の車両の各々に用いられる車両ユニット2と路側機3とを含んでいる。図1に示す例では、車両として、車両VEa,車両VEb,車両VEcを例に挙げて説明する。車両VEa,車両VEb,車両VEcは自動車であるものとする。
【0014】
<路側機3の概略構成>
続いて、図2を用いて路側機3の概略構成の一例を説明する。路側機3は、図2に示すように、制御装置300、通信機301、周辺監視センサ302、及び位置記憶部303を含んでいる。
【0015】
通信機301は、自機器の外部と無線通信を行うことで、自機器の外部と情報のやり取りを行う。通信機301は、車両で用いられる後述の通信機20との間で無線通信を行う。つまり、通信機301は、路間通信を行う。本実施形態では、路側機3と車両VEaの通信機20との間で路車間通信が行われるものとする。
【0016】
周辺監視センサ302は、歩行者、人間以外の動物、自転車、オートバイ、及び他車両等の移動物体、さらに路上の落下物、ガードレール、縁石、及び樹木等の静止物体といった自機器周辺の障害物を検出する。周辺監視センサ302としては、自機器の周辺の所定範囲を撮像範囲とする周辺監視カメラを用いる構成とすればよい。周辺監視センサ302としては、ミリ波レーダ,ソナー,LIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detect ion and Ranging)等を用いる構成としてもよい。また、これらを組み合わせて用いる構成としてもよい。周辺監視カメラは、逐次撮像する撮像画像をセンシング情報として制御装置300へ逐次出力する。ソナー,ミリ波レーダ,LIDAR等の探査波を送信するセンサは、障害物によって反射された反射波を受信した場合に得られる受信信号に基づく走査結果をセンシング情報として制御装置300へ逐次出力する。
【0017】
位置記憶部303は、自機器の絶対位置の情報を記憶する。位置記憶部303としては不揮発性メモリを用いればよい。絶対位置の情報は、少なくとも緯度,経度の座標とすればよい。自機器の絶対位置の情報は、自機器単独での測位衛星の信号を用いた測位で求められるよりも位置精度の高いものとする。自機器の絶対位置の情報は、三角点若しくは電子基準点を基準とした測量によって予め求められて位置記憶部303に記憶されるものとすればよい。
【0018】
制御装置300は、プロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで、各種の処理を実行する。制御装置300は、周辺監視センサ302から出力されたセンシング情報から、自機器周辺に存在する物標についての情報(以下、物標情報)を認識する。物標情報としては、物標についての、自機器に対する相対位置、種類、速度、及び移動方位等とすればよい。相対位置は、自機器からの距離と方位とすればよい。周辺監視センサ302を用いた物標の位置の認識での位置特定精度は、後述するロケータ30での測位による位置特定精度よりも高いものとする。
【0019】
物標の種類については、周辺監視カメラで撮像した撮像画像をもとに、テンプレートマッチング等の画像認識処理によって認識すればよい。周辺監視カメラとして単眼カメラを用いる場合には、自機器に対する周辺監視カメラの設置位置及び光軸の向きと撮像画像中での物標の位置とから、自機器からの物標の距離及び自車に対する物標の方位を認識すればよい。複眼カメラを用いる場合には、一対のカメラの視差量をもとに自機器からの物標の距離を認識すればよい。他にも、自機器に対する物標の相対位置の時間あたりの変化量から、物標の速度を認識すればよい。また、自機器に対する物標の相対位置の変化方向及び位置記憶部303に記憶されている自機器の絶対位置の情報から移動方位を認識すればよい。
【0020】
他にも、制御装置300は、探査波を送信するセンサのセンシング情報を用いて、自機器からの物標の距離、自機器に対する物標の方位、物標の速度、及び移動方位を認識してもよい。制御装置300は、探査波を送出してから反射波を受信するまでの時間をもとに、自機器から物標までの距離を認識すればよい。制御装置300は、反射波の得られた探査波を送信した方向をもとに、自機器に対する物標の方位を認識すればよい。制御装置300は、送信した探査波と反射波とのドップラーシフトをもとに算出される自機器に対する物標の相対速度から、物標の速度を認識してもよい。
【0021】
制御装置300は、通信機301を制御して路車間通信を行わせる。制御装置300は、周辺監視センサ302から出力されたセンシング情報から認識した物標情報を、路車間通信によって自機器の周辺の車両の通信機20に送信する。制御装置300は、物標情報を送信する場合に、位置記憶部303に記憶されている自機器の絶対位置の情報も物標情報に含めて送信する。送信元識別情報は、自車の車両IDであってもよいし、自車の通信機20の通信機IDであってもよい。通信機301から送信させる物標情報には、上述したように、物標の相対位置、物標の種類、物標の速度、物標の移動方位、及び路側機3の絶対位置の情報(以下、路側機絶対位置)が含まれる。物標情報のうちの物標の相対位置は、路側機3の位置を基準とする位置である。以降では、物標情報に含ませるこの相対位置を路側機基準物標位置と呼ぶ。制御装置300は、物標情報を例えば定期的に送信させる構成とすればよい。
【0022】
<車両ユニット2の概略構成>
続いて、図3を用いて車両ユニット2の概略構成の一例を説明する。車両ユニット2は、図3に示すように、通信機20、ロケータ30、周辺監視センサ40、周辺監視ECU50、及び運転支援ECU60を含んでいる。通信機20、ロケータ30、周辺監視ECU50、及び運転支援ECU60は、車内LAN(図3のLAN参照)と接続される構成とすればよい。
【0023】
ロケータ30は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を備えている。GNSS受信機は、複数の人工衛星からの測位信号を受信する。ロケータ30は、GNSS受信機で受信する測位信号を用いて、ロケータ30を搭載した自車の位置(以下、測位位置)を逐次測位する。ロケータ30は、測位信号が出力されてきた測位衛星のうちから、測位演算に用いる測位衛星を例えば4つといった規定数決定する。そして、決定した規定数の測位衛星についてのコード疑似距離,搬送波位相等を用い、測位位置の座標を算出する測位演算を行う。測位演算自体は、コード疑似距離を用いる測位演算であっても、搬送波位相を用いる測位演算であってもよい。また、座標は、少なくとも緯度,経度の座標とすればよい。
【0024】
ロケータ30は、慣性センサを備えていてもよい。慣性センサとしては、例えばジャイロセンサ及び加速度センサを用いればよい。ロケータ30は、GNSS受信機で受信する測位信号と、慣性センサの計測結果とを組み合わせることにより、測位位置を逐次測位してもよい。なお、測位位置の測位には、自車に搭載された車速センサから逐次出力される信号から求めた走行距離を用いてもよい。
【0025】
周辺監視センサ40は、歩行者、人間以外の動物、自転車、オートバイ、及び他車両等の移動物体、さらに路上の落下物、ガードレール、縁石、及び樹木等の静止物体といった自車周辺の障害物を検出する。周辺監視センサ40としては、自車の周辺の所定範囲を撮像範囲とする周辺監視カメラを用いる構成とすればよい。周辺監視センサ40としては、ミリ波レーダ,ソナー,LIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detect ion and Ranging)等を用いる構成としてもよい。また、これらを組み合わせて用いる構成としてもよい。周辺監視カメラは、逐次撮像する撮像画像をセンシング情報として周辺監視ECU50へ逐次出力する。ソナー,ミリ波レーダ,LIDAR等の探査波を送信するセンサは、障害物によって反射された反射波を受信した場合に得られる受信信号に基づく走査結果をセンシング情報として周辺監視ECU50へ逐次出力する。
【0026】
周辺監視ECU50は、プロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで、自車の周辺の物標の認識に関する各種の処理を実行する。周辺監視ECU50は、周辺監視センサ40から出力されたセンシング情報から、前述の制御装置300と同様にして、自車周辺に存在する物標についての物標情報を認識する。路側機3を基準とする代わりに自車を基準とする点を除けば、周辺監視ECU50での物標情報の認識は、制御装置300での物標情報の認識と同様である。異なる点としては、以下の通りである。物標の速度は、自車に対する物標の相対位置の時間あたりの変化量と、自車の車速とから認識すればよい。また、物標の速度は、送信した探査波と反射波とのドップラーシフトをもとに算出される自車に対する物標の相対速度と、自車の車速とから認識してもよい。なお、周辺監視センサ40を用いた物標の位置の認識での位置特定精度は、ロケータ30での測位による位置特定精度よりも高いものとする。
【0027】
運転支援ECU60は、プロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで、自車の運転支援に関する各種の処理を実行する。運転支援ECU60は、周辺監視ECU50及び通信機20で特定される物標の位置をもとに運転支援を行う。周辺監視ECU50で特定する物標の位置は、周辺監視センサ40で検出できた物標(以下、見通し内物標)の自車に対する相対位置である。通信機20で特定する物標の位置は、周辺監視センサ40で検出できない物標(以下、見通し外物標)の自車に対する相対位置である。運転支援の一例としては、物標との近接を回避するための車両制御,物標との近接を回避するための注意喚起等が挙げられる。
【0028】
通信機20は、プロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで、自車の外部との無線通信及び物標の位置の特定に関する処理を実行する。プロセッサがこの制御プログラムを実行することは、制御プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non- transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。この通信機20が車両用装置に相当する。通信機20での処理の詳細については後述する。
【0029】
<通信機20の概略構成>
続いて、図4を用いて通信機20の概略構成の一例を説明する。通信機20は、図4に示すように、検出情報取得部201、車車間通信部202、路車間通信部203、同一判定部204、変換部205、誤差推定部206、誤差記憶部207、位置特定部208、及び位置記憶部209を機能ブロックとして備えている。なお、通信機20が実行する機能の一部又は全部を、1つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、通信機20が備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。
【0030】
検出情報取得部201は、周辺監視ECU50で認識した物標情報を取得する。つまり、周辺監視センサ40で検出した物標の情報を取得する。以降では、物標情報は、自車からの物標の距離及び自車に対する物標の方位からなる物標の相対位置、物標の種類、物標の速度、及び物標の移動方位であるものとして説明を続ける。なお、物標の相対位置は、自車の測位位置を基準とした座標であってもよい。また、検出情報取得部201は、ロケータ30で測位した自車の測位位置を取得する。
【0031】
車車間通信部202は、他車両との間で車車間通信を行うことで、他車両の通信機20と情報のやり取りを行う。また、本実施形態では、車両VEaと車両VEbとの間での車車間通信と、車両VEaと車両VEcとの間での車車間通信とが行われるものとする。
【0032】
車車間通信部202は、送信部221及び車車側受信部222を備える。送信部221は、車車間通信によって他車両に情報を送信する。送信部221は、検出情報取得部201で取得した物標情報及び自車のロケータ30で測位した測位位置を、無線通信を介して他車両の通信機20に送信する。送信部221は、物標情報を送信する場合に、自車を識別するための識別情報(以下、送信元識別情報)も物標情報に含めて送信すればよい。送信元識別情報は、自車の車両IDであってもよいし、自車の通信機20の通信機IDであってもよい。送信部221から送信する物標情報には、上述したように、物標の相対位置、物標の種類、物標の速度、物標の移動方位、送信元の車両の測位位置、及び送信元識別情報が含まれる。物標情報のうちの物標の相対位置は、自車の位置を基準とする位置である。以降では、物標情報に含ませるこの相対位置を搭載物基準物標位置と呼ぶ。
【0033】
車車側受信部222は、車車間通信によって他車両から送信されてくる情報を受信する。車車側受信部222は、他車両の通信機20から無線通信を介して送信されてくる物標情報を受信する。この他車両は、車両ユニット2を用いる車両とする。この車車側受信部222が搭載物情報取得部に相当する。この車車側受信部222での処理が搭載物情報取得工程に相当する。
【0034】
本実施形態では、車車側受信部222が、2種類の他車両から車車間通信によって物標情報を受信するものとして説明を行う。1種類目は、路側機3の周辺監視センサ302の検出範囲内の他車両である。この他車両を以下では第1通信機搭載物と呼ぶ。2種類目は、路側機3の周辺監視センサ302の検出範囲外の他車両である。この他車両を以下では第2通信機搭載物と呼ぶ。車車側受信部222で受信する物標情報には、上述したように、搭載物基準物標位置、物標の種類、物標の速度、物標の移動方位、送信元の車両の測位位置、及び送信元識別情報が含まれる。以降では、第1通信機搭載物のロケータ30で測位した測位位置を第1測位位置と呼ぶ。第1通信機搭載物の周辺監視センサ40で検出した物標は第1物標と呼ぶ。また、第2通信機搭載物のロケータ30で測位した測位位置を第2測位位置と呼ぶ。第2通信機搭載物の周辺監視センサ40で検出した物標は第2物標と呼ぶ。
【0035】
路車間通信部203は、路側機3との間で路車間通信を行うことで情報のやり取りを行う。また、本実施形態では、車両VEaと路側機3との間で路車間通信が行われるものとする。路車間通信部203は、路車側受信部231を備える。なお、路車間通信部203は、路車間通信によって路側機3に情報を送信しても構わないが、便宜上、説明を省略する。
【0036】
路車側受信部231は、路車間通信によって路側機3から送信されてくる情報を受信する。路車側受信部231は、路側機3から無線通信を介して送信されてくる物標情報を受信する。また、路車側受信部231で受信する物標情報には、上述したように、路側機基準物標位置、物標の種類、物標の速度、物標の移動方位、及び路側機絶対位置が含まれる。路側機基準物標位置は、後述する誤差推定部206において第1測位誤差を推定する際に参照する参照位置であり、路側機3が参照装置に相当する。この路車側受信部231が参照位置取得部及び路側機情報取得部に相当する。この路車側受信部231での処理が参照位置取得工程及び路側機情報取得工程に相当する。
【0037】
同一判定部204は、路車側受信部231で路側機基準物標位置を取得した路側機3の周辺監視センサ302で検出した物標(以下、路側機検出物標)と、車車側受信部222で取得した物標情報の送信元の他車両(以下、通信他車両)とが同一か否かを判定する。この他車両が第1通信機搭載物に相当し、この物標情報に含まれる測位位置が第1測位位置に相当する。また、この同一判定部204での処理が同一判定工程に相当する。同一判定部204は、路車側受信部231で取得した路側機基準物標位置と、車車側受信部222で取得する搭載物基準物標位置との近似の有無によって、路側機検出物標と通信他車両とが同一か否かを判定すればよい。例えば、同一判定部204は、これらの位置の差が閾値未満の場合に、同一と判定すればよい。一方、これらの位置の差が閾値未満でない場合に同一でないと判定すればよい。なお、同一判定部204で同一を判定する条件として、物標の種類の一致、速度の差が閾値未満、移動方位の差が閾値未満等の他の条件を用いる構成としてもよい。この場合には、送信部221から送信する物標情報には、自車の種類、速度、移動方位等の情報も含ませる構成とすればよい。
【0038】
変換部205は、路車側受信部231で取得した路側機基準物標位置及び車車側受信部222で取得した測位位置を自車に対する相対位置に変換する。一例として、ロケータ30で測位した自車の測位位置を原点とするXY座標系(以下、自車座標系)の座標に変換すればよい。この変換部205での処理が変換工程に相当する。同一判定部204で路側機検出物標と通信他車両とが同一と判定する場合には、この通信他車両は第1通信機搭載物である。よって、同一判定部204で路側機検出物標と通信他車両とが同一と判定する場合には、第1通信機搭載物から車車側受信部222で取得した第1測位位置を自車に対する相対位置に変換することになる。変換部205は、車車側受信部222で取得した搭載物基準物標位置も自車に対する相対位置に変換してもよい。
【0039】
誤差推定部206は、同一判定部204で路側機検出物標と通信他車両とが同一と判定した場合には、それらについての、変換部205で変換した路側機基準物標位置と測位位置とのずれから、自車の位置を基準とした通信他車両での測位の誤差を推定する。同一判定部204で路側機検出物標と通信他車両とが同一と判定する場合には、この通信他車両は第1通信機搭載物である。よって、誤差推定部206は、変換部205で変換した路側機基準物標位置と第1測位位置とのずれから、自車の位置を基準とした第1通信機搭載物での測位の誤差(以下、第1測位誤差)を推定する。この誤差推定部206での処理が誤差推定工程に相当する。誤差推定部206で推定する測位の誤差は、自車座標系のX座標,Y座標のそれぞれのずれとすればよい。誤差推定部206は、推定した第1測位誤差を誤差記憶部207に記憶する。誤差記憶部207は、不揮発性メモリとしてもよいし、揮発性メモリとしてもよい。誤差推定部206は、推定した第1測位誤差と、その第1測位誤差が推定された第1通信機搭載物の送信元識別情報とを紐付けて誤差記憶部207に記憶すればよい。第1通信機搭載物の送信元識別情報としては、車車側受信部222で受信した物標情報のうちの送信元識別情報を用いればよい。
【0040】
位置特定部208は、搭載物位置特定部281及び物標位置特定部282を有する。搭載物位置特定部281は、誤差推定部206で第1測位誤差を一旦推定した後は、第1通信機搭載物が路側機3の周辺監視センサ302で検出できなくなった場合であっても、車車側受信部222で第1通信機搭載物から取得する第1測位位置を、その第1測位誤差の分だけ補正して、自車に対するその第1通信機搭載物の位置を特定することが好ましい。搭載物位置特定部281は、同一判定部204で路側機検出物標と通信他車両とが同一でないと判定した場合であって、且つ、誤差記憶部207に第1通信機搭載物の第1測位誤差が記憶済みである場合には、車車側受信部222で取得する第1測位位置を、その第1測位誤差の分だけ補正して、自車に対するその第1通信機搭載物の位置を特定すればよい。補正については、第1測位誤差の分のずれを解消するように、第1測位位置をずらすことで行えばよい。これによれば、第1通信機搭載物が路側機3の周辺監視センサ302及び自車の周辺監視センサ40のいずれでも検出できない場合であっても、自車に対する第1通信機搭載物の相対位置をより精度良く特定することが可能になる。搭載物位置特定部281は、誤差記憶部207に第1通信機搭載物の第1測位誤差が記憶済みか否かを、誤差記憶部207に第1測位誤差に紐付けられた送信元識別情報が存在するか否かで判断すればよい。
【0041】
搭載物位置特定部281は、特定した自車に対する第1通信機搭載物の位置を、位置記憶部209に記憶する。位置記憶部209は、揮発性メモリとすればよい。なお、自車の周辺監視センサ40で検出できる第1通信機搭載物の位置については、位置記憶部209に記憶せずに、周辺監視ECU50のメモリに記憶してもよい。周辺監視センサ40の検出範囲内の第1通信機搭載物の位置については、自車の周辺監視センサ40で検出した位置を用いればよい。
【0042】
物標位置特定部282は、誤差推定部206で第1測位誤差を一旦推定した後は、車車側受信部222で第1通信機搭載物から取得する搭載物基準物標位置(以下、第1搭載物基準物標位置)を、その第1測位誤差の分だけ補正して、自車に対する第1物標の位置を特定することが好ましい。第1物標とは、前述したように、第1通信機搭載物の周辺監視センサ40で検出した物標である。補正については、第1測位誤差の分のずれを解消するように、第1搭載物基準物標位置をずらすことで行えばよい。これによれば、無線通信を介して第1通信機搭載物から車車側受信部222で取得する第1搭載物基準物標位置からでも、自車に対する第1物標の相対位置をより精度良く特定することが可能になる。物標位置特定部282は、特定した自車に対する第1物標の位置を、位置記憶部209に記憶する。
【0043】
同一判定部204は、物標位置特定部282で自車に対する第1物標の位置を、第1測位誤差を用いて補正して特定した場合であって、且つ、車車側受信部222で第2通信機搭載物から搭載物基準物標位置(以下、第2搭載物基準物標位置)を取得した場合には、以下のようにすることが好ましい。同一判定部204は、物標位置特定部282で自車に対する位置を特定した第1物標と、車車側受信部222で取得した第2搭載物基準物標位置の送信元の第2通信機搭載物の周辺監視センサ40で検出した物標(以下、第2物標)とが同一か否かを判定することが好ましい。
【0044】
この場合、同一判定部204は、車車側受信部222で第1通信機搭載物から取得した物標情報と車車側受信部222で第2通信機搭載物から取得した物標情報との近似の有無によって、第1物標と第2物標とが同一か否かを判定する。同一か否か判定のために比較する物標情報は、例えば物標の種類、物標の速度、及び物標の移動方位とすればよい。例えば、同一判定部204は、種類の一致、速度の差が閾値未満、及び移動方位の差が閾値未満の条件を全て満たす場合に、同一と判定すればよい。一方、これらの条件の一部でも満たさない場合に同一でないと判定すればよい。なお、同一判定部204で同一を判定するために満たすべき条件は、種類の一致、速度の差が閾値未満、及び移動方位の差が閾値未満の一部としてもよい。また、同一判定部204は、第1搭載物基準物標位置と第2搭載物基準物標位置とをそれぞれ変換部205で自車に対する相対位置に変換した位置同士の近似の有無によって同一か否かを判定すればよい。同一判定部204は、この変換後の位置の差が閾値未満であることを条件として、同一か否かを判定すればよい。同一判定部204は、種類の一致、速度の差が閾値未満、及び移動方位の差が閾値未満の条件に加えて、この変換後の位置の差が閾値未満であることを条件としてもよい。
【0045】
誤差推定部206は、同一判定部204で第1物標と第2物標とが同一と判定した場合には、変換部205で変換した第2搭載物基準物標位置と、物標位置特定部282で特定した自車に対する第1物標の位置とのずれから、自車の位置を基準とした第2通信機搭載物での測位の誤差(以下、第2測位誤差)を推定すればよい。これによれば、第2通信機搭載物が路側機3の周辺監視センサ302及び自車の周辺監視センサ40のいずれでも検出されたことがない場合であっても、自車に対する第2通信機搭載物の相対位置をより精度良く特定することが可能になる。誤差推定部206は、推定した第2測位誤差を誤差記憶部207に記憶する。誤差推定部206は、推定した第2測位誤差と、その第2測位誤差が推定された第2通信機搭載物の送信元識別情報とを紐付けて誤差記憶部207に記憶すればよい。
【0046】
搭載物位置特定部281は、誤差推定部206で第2測位誤差を一旦推定した後は、車車側受信部222で第2通信機搭載物から取得する第2測位位置を、その第2測位誤差の分だけ補正して、自車に対する第2通信機搭載物の位置を特定する。これによれば、第2通信機搭載物が路側機3の周辺監視センサ302及び自車の周辺監視センサ40のいずれでも検出できない場合であっても、自車に対する第2通信機搭載物の相対位置をより精度良く特定することが可能になる。
【0047】
搭載物位置特定部281は、特定した自車に対する第2通信機搭載物の位置を、位置記憶部209に記憶する。位置記憶部209は、揮発性メモリとすればよい。なお、自車の周辺監視センサ40で検出できる第2通信機搭載物の位置については、位置記憶部209に記憶せずに、周辺監視ECU50のメモリに記憶してもよい。周辺監視センサ40の検出範囲内の第2通信機搭載物の位置については、自車の周辺監視センサ40で検出した位置を用いればよい。
【0048】
物標位置特定部282は、誤差推定部206で第2測位誤差を一旦推定した後は、車車側受信部222で第2通信機搭載物から取得する搭載物基準物標位置(以下、第2搭載物基準物標位置)を、その第2測位誤差の分だけ補正して、自車に対する第2物標の位置を特定することが好ましい。第2物標とは、前述したように、第2通信機搭載物の周辺監視センサ40で検出した物標である。補正については、第2測位誤差の分のずれを解消するように、第2搭載物基準物標位置をずらすことで行えばよい。これによれば、無線通信を介して第2通信機搭載物から車車側受信部222で取得する第2搭載物基準物標位置からでも、自車に対する第2物標の相対位置をより精度良く特定することが可能になる。物標位置特定部282は、特定した自車に対する第2物標の位置を、位置記憶部209に記憶する。
【0049】
運転支援ECU60は、位置記憶部209に記憶されている通信機搭載物を含む物標の位置を用いて、物標との近接を回避するための車両制御,物標との近接を回避するための注意喚起等の運転支援を行う。よって、自車の見通し外の物標であっても、より精度良く特定した自車に対する相対位置を用いて、より精度の高い運転支援を行うことが可能になる。
【0050】
<通信機20での測位誤差推定関連処理>
ここで、図5のフローチャートを用いて、通信機20での搭載物測位誤差の推定に関連する処理(以下、測位誤差推定関連処理)の流れの一例について説明を行う。この処理が実行されることは誤差推定方法が実施されることを意味する。図5のフローチャートは、例えば自車の内燃機関又はモータジェネレータを始動させるためのスイッチ(以下、パワースイッチ)がオンになった場合に開始される構成とすればよい。
【0051】
まず、ステップS1では、路車側受信部231が、路側機3から路車間通信で送信されてくる物標情報を受信した場合(S1でYES)には、ステップS2に移る。一方、路車間通信で送信されてくる物標情報を受信していない場合(S1でNO)には、ステップS8に移る。
【0052】
ステップS2では、車車側受信部222が、他車両から車車間通信で送信されてくる物標情報を受信した場合(S2でYES)には、ステップS3に移る。一方、車車間通信で物標情報を受信していない場合(S2でNO)には、ステップS13に移る。S2では、S1で路側機3から物標情報を受信してから一定時間内に他車両から物標情報を受信した場合に、他車両から車車間通信で送信されてくる物標情報を受信したものとすればよい。ここで言うところの一定時間内とは、例えば路側機3から物標情報を送信する周期以下の時間とすればよく、任意に設定可能な時間とする。
【0053】
ステップS3では、同一判定部204が、S1で物標情報を取得した路側機3の周辺監視センサ302で検出した物標である路側機検出物標と、S2で取得した物標情報の送信元の他車両である通信他車両とが同一か否かを判定する。ステップS4では、路側機検出物標と通信他車両とが同一と判定した場合(S4でYES)には、ステップS5に移る。一方、同一でないと判定した場合(S4でNO)には、ステップS8に移る。路側機検出物標と同一と判定される通信他車両が、第1通信機搭載物にあたる。
【0054】
ステップS5では、変換部205が、S1で受信して取得した物標情報のうちの路側機基準物標位置と、S2で受信して取得した物標情報のうちの測位位置を、自車に対する相対位置に変換する。なお、S5の処理は、S3の処理よりも前に行う構成としてもよい。この場合、S3では、S5で変換した路側機基準物標位置と測位位置とを用いて、路側機基準物標位置と通信他車両とが同一か否かを判定してもよい。
【0055】
ステップS6では、誤差推定部206が、S4で同一と判定した物標についての、S5で変換した路側機基準物標位置と測位位置とのずれから、自車の位置を基準とした第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する。ステップS7では、S6で推定した第1測位誤差を、その第1測位誤差が推定された第1通信機搭載物の送信元識別情報と紐付けて誤差記憶部207に記憶する。
【0056】
ステップS8では、車車側受信部222が、他車両から車車間通信で送信されてくる物標情報を受信した場合(S8でYES)には、ステップS9に移る。一方、車車間通信で物標情報を受信していない場合(S8でNO)には、ステップS13に移る。
【0057】
ステップS9では、S2若しくはS6で受信して取得した物標情報の送信元の他車両について、誤差記憶部207に測位誤差が記憶済みの場合(S9でYES)には、ステップS11に移る。一方、誤差記憶部207に測位誤差が記憶済みでない場合(S9でNO)には、ステップS10に移る。ここでの測位誤差には、前述した第1測位誤差及び第2測位誤差が含まれる。
【0058】
ステップS10では、第2推定関連処理を行って、ステップS13に移る。ここで、図6のフローチャートを用いて、第2推定関連処理の流れの一例について説明する。
【0059】
まず、ステップS101では、車車側受信部222が、S2若しくはS8で受信したのとは異なる他車両との車車間通信で送信されてくる物標情報を受信した場合(S101でYES)には、ステップS102に移る。一方、異なる他車両との車車間通信で送信されてくる物標情報を受信していない場合(S101でNO)には、ステップS13に移る。
【0060】
S101では、S2若しくはS8で他車両から物標情報を受信してから一定時間内にその他車両と異なる他車両から物標情報を受信した場合に、異なる他車両から車車間通信で送信されてくる物標情報を受信したものとすればよい。この異なる他車両が第2通信機搭載物にあたり、この物標情報に含まれる搭載物基準物標位置が第2搭載物基準物標位置にあたる。ここで言うところの一定時間内とは、任意に設定可能な時間とすればよい。また、車両の区別については、同一判定部204が、物標情報に含まれる送信元識別情報をもとに行えばよい。
【0061】
ステップS102では、物標位置特定部282で自車に対する第1物標の位置を、第1測位誤差を用いて補正して特定済みの場合(S102でYES)には、ステップS103に移る。一方、特定済みでない場合(S102でNO)には、ステップS13に移る。
【0062】
ステップS103では、同一判定部204が、物標位置特定部282で自車に対する位置を特定した第1物標と、S101で受信して取得した物標情報の送信元の第2通信機搭載物の周辺監視センサ40で検出した物標である第2物標とが同一か否かを判定する。ステップS104では、第1物標と第2物標とが同一と判定した場合(S104でYES)には、ステップS105に移る。一方、同一でないと判定した場合(S104でNO)には、ステップS13に移る。
【0063】
ステップS105では、S101で受信して取得した物標情報のうちの第2搭載物基準物標位置を、自車に対する相対位置に変換する。なお、S105の処理は、S103の処理よりも前に行う構成としてもよい。この場合、S103では、物標位置特定部282で特定済みの自車に対する第1物標の位置とS105で変換した第2搭載物基準物標位置とを用いて、第1物標と第2物標とが同一か否かを判定してもよい。
【0064】
ステップS106では、誤差推定部206が、S104で同一と判定した物標についての、S105で変換した第2搭載物基準物標位置と物標位置特定部282で特定済みの自車に対する第1物標の位置とのずれから、自車の位置を基準とした第2通信機搭載物での測位の誤差である第2測位誤差を推定する。ステップS107では、S106で推定した第2測位誤差を、その第2測位誤差が推定された第2通信機搭載物の送信元識別情報と紐付けて誤差記憶部207に記憶し、ステップS13に移る。
【0065】
図5に戻って、ステップS11では、位置特定部208が、S2若しくはS8で受信して取得した測位位置及び搭載物基準物標位置の少なくともいずれかを、誤差記憶部207に記憶済みの測位誤差の分だけ補正して、自車に対する位置を特定する。第1通信機搭載物から取得した第1測位位置の場合には、搭載物位置特定部281が、第1測位位置を第1測位誤差の分だけ補正して、自車に対する第1通信機搭載物の位置を特定する。第1通信機搭載物から取得した第1搭載物基準物標位置の場合には、物標位置特定部282が、第1搭載物基準物標位置を第1測位誤差の分だけ補正して、自車に対する第1物標の位置を特定する。第2通信機搭載物から取得した第2測位位置の場合には、搭載物位置特定部281が、第2測位位置を第2測位誤差の分だけ補正して、自車に対する第2通信機搭載物の位置を特定する。第2通信機搭載物から取得した第2搭載物基準物標位置の場合には、物標位置特定部282が、第2搭載物基準物標位置を第2測位誤差の分だけ補正して、自車に対する第2物標の位置を特定する。
【0066】
S11では、搭載物基準物標位置を変換部205で変換した後に補正を行ってもよい。S11では、搭載物基準物標位置を変換部205で変換する前に補正を行ってもよい。ステップS12では、S11で特定した物標の位置を位置記憶部209に記憶する。
【0067】
ステップS13では、測位誤差推定関連処理の終了タイミングであった場合(S13でYES)には、測位誤差推定関連処理を終了する。一方、測位誤差推定関連処理の終了タイミングでなかった場合(S13でNO)には、S1に戻って処理を繰り返す。測位誤差推定関連処理の終了タイミングの一例としては、パワースイッチがオフになったこと等が挙げられる。
【0068】
なお、S4で物標が同一と判定した場合であっても、S2で取得した物標情報の送信元の第1通信機搭載物について、誤差記憶部207に第1測位誤差が記憶済みの場合には、S5~S7の処理を省略してS13の処理に移る構成としてもよい。
【0069】
<実施形態1のまとめ>
実施形態1の構成によれば、第1測位位置は、第1通信機搭載物での測位衛星の信号を用いた測位によって求められるものであるので、その測位の誤差を含んでいる。一方、路側機基準物標位置は、測位衛星の信号を用いた測位で求められるよりも位置精度の高い自機器の絶対位置の情報を有する路側機3の周辺監視センサ302で検出した物標の、路側機3の位置を基準とする位置であるので、測位衛星の信号を用いた測位で求められるよりも位置精度が高い。よって、同一と判定した路側機検出物標と第1通信機搭載物とについて、路側機3から取得した路側機基準物標位置と、第1通信機搭載物から取得した第1測位位置とのずれから、自車の位置を基準とした第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差をより精度良く推定することが可能になる。ここで、路側機基準物標位置も第1測位位置も無線通信を介して取得するので、第1測位誤差の推定は、第1通信機搭載物を自車の周辺監視センサ40で検出できなくても可能となる。また、第1測位誤差を用いれば、第1通信機搭載物での測位誤差を補正して、第1通信機搭載物の位置をより精度良く特定することが可能になる。その結果、自車の周辺監視センサ40の検出範囲外の通信機搭載物の位置をより精度良く特定することが可能になる。
【0070】
また、実施形態1の構成によれば、自車の周辺監視センサ40の検出範囲外の物標であっても、第1通信機搭載物の周辺監視センサ40の検出範囲内の物標であれば、第1通信機搭載物から車車間通信で取得するその物標についての第1搭載物基準物標位置を、第1測位誤差の分だけ補正することで、自車に対する位置をより精度良く特定することが可能になる。
【0071】
他にも、実施形態1の構成によれば、路側機3の周辺監視センサ302の検出範囲外の他車両である第2通信機搭載物での測位の誤差もより精度良く推定することが可能になる。第2搭載物基準物標位置は、第2通信機搭載物の第2測位位置を基準とする位置であるので、第2通信機搭載物での測位の誤差を含んでいる。一方、物標位置特定部282で第1搭載物基準物標位置を第1測位誤差の分だけ補正して特定された、自車に対する第1物標の位置は補正によって測位の誤差が低減されている。よって、同一と判定した第1物標と第2物標とについて、この補正して特定された自車に対する第1物標の位置と、第2通信機搭載物から取得した第2搭載物基準物標位置を自車に対する位置に変換した位置とのずれから、自車の位置を基準とした第2通信機搭載物での測位の誤差である第2測位誤差をより精度良く推定することが可能になる。
【0072】
また、以上の構成によれば、自車及び第1通信機搭載物の周辺監視センサ40の検出範囲外の物標であっても、第2通信機搭載物の周辺監視センサ40の検出範囲内の物標であれば、第2通信機搭載物から車車間通信で取得するその物標についての第2搭載物基準物標位置を、第2測位誤差の分だけ補正することで、自車に対する位置をより精度良く特定することが可能になる。
【0073】
ここで、図1を用いて、実施形態1の効果について説明する。図1のLMa,LMb,LMcは歩行者といった物標とする。この物標は、通信機搭載物ではないものとする。物標LMaは、車両VEb,車両VEcの周辺監視センサ40で検出可能とする。一方、物標LMbは、車両VEbの周辺監視センサ40では検出可能だが、車両VEa,車両VEcの周辺監視センサ40では検出不能とする。物標LMcは、車両VEcの周辺監視センサ40では検出可能だが、車両VEa,車両VEbの周辺監視センサ40では検出不能とする。車両VEbは、車両VEa,車両VEcの周辺監視センサ40でも路側機3の周辺監視センサ302でも検出不能とする。車両VEcは、車両VEa,車両VEcの周辺監視センサ40では検出不能だが、路側機3の周辺監視センサ302では検出可能とする。ここでは、車両VEaが自車であり、車両VEb,車両VEcが他車両であるものとして説明する。また、車両VEcが第1通信機搭載物にあたり、車両VEbが第2通信機搭載物にあたる。物標LMaは第1物標にあたり、第2物標にもあたる。物標LMbは第2物標にあたるが、第1物標にはあたらない。物標LMcは、第1物標にあたるが、第2物標にはあたらない。
【0074】
自車VEaの通信機20では、車両VEcから車車間通信で取得した車両VEcの測位位置と、路側機3から路車間通信で取得する路側機3の周辺監視センサ302で検出した車両VEcについての路側機基準物標位置とから、車両VEcでの測位誤差が推定できる。この測位誤差が第1測位誤差となる。車両VEcの搭載物基準物標位置の測位誤差についても、同様にして推定できる。
【0075】
自車VEaの通信機20では、自車VEaの周辺監視センサ40の検出範囲外の物標LMcであっても、車両VEcから車車間通信で取得する物標LMcについての第1搭載物基準物標位置と、車両VEcでの第1測位誤差とから、自車VEaに対する物標LMcの位置を精度良く特定することが可能になる。
【0076】
自車VEaの通信機20では、路側機3の周辺監視センサ302の検出範囲外の車両VEbであっても、車両VEbと車両VEcとの周辺監視センサ40で共通に検出できる物標LMaを利用して、車両VEbでの測位誤差が推定できる。この誤差が第2測位誤差となる。詳しくは、自車VEaの通信機20では、推定済みの第1測位誤差を利用して補正した物標LMaの位置と、車両VEbから車車間通信で取得した物標LMcについての第2搭載物基準物標位置とから、自車VEaに対する車両VEbの位置を精度良く特定することが可能になる。
【0077】
また、自車VEaの通信機20では、自車VEa及び車両VEcの周辺監視センサ40の検出範囲外の物標LMbであっても、車両VEbから車車間通信で取得する物標LMbについての第2搭載物基準物標位置と、車両VEbでの第2測位誤差とから、自車VEaに対する物標LMbの位置を精度良く特定することが可能になる。
【0078】
(実施形態2)
図7を用いて、実施形態2の概要を説明する。実施形態2では、車両ユニット2はCAM(Cooperative Awareness Messages)、CPM(Cooperative Perception Message)、2つのメッセージを逐次送信する。また、路側機3もCPMを逐次送信する。
【0079】
車両VEaに搭載された車両ユニット2のように、2つ以上の送信元装置からCPMあるいはCAMを受信した場合、車両ユニット2が備える通信機20は、それらのメッセージに含まれている情報を用いて、実施形態1と同様、同一判定、誤差推定などを行う。実施形態2における同一判定、誤差推定などの処理を説明する前に、CAM、CPMについて説明する。
【0080】
図8は、V2X通信装置の例示的なアーキテクチャを示す図である。V2X通信装置は、実施形態1の通信機20に代えて用いる。V2X通信装置は、実施形態2の通信機20と同様、図4に示した構成も備える。V2X通信装置は、物標情報を送信する通信装置である。
【0081】
V2X通信装置は、車両と車両、車両とインフラ、車両と自転車、車両と携帯端末などの間の通信を実行してもよい。V2X通信装置は、車両の車載器に相当してもよいし、車載器に含まれてもよい。車載器は、OBU(On-Board Unit)と呼ばれることがある。
【0082】
通信装置は、インフラの路側機に対応してもよいし、路側機に含まれていてもよい。路側機はRSU(Road Side Unit)と呼ばれることもある。通信装置は、ITS(Intelligent Transport System)を構成する一要素とすることもできる。ITSの一要素である場合、通信装置は、ITSステーション(ITS-S)に対応していてもよいし、ITS-Sに含まれていてもよい。ITS-Sは、情報交換を行う装置であり、OBU、RSU、携帯端末のいずれでもよく、また、それらに含まれるものであってもよい。携帯端末は、たとえば、PDA(Personal Digital Assistant)あるいはスマートフォンである。
【0083】
通信装置は、IEEE1609にて開示されているWAVE(Wireless Access in Vehicular)装置に相当してもよいし、WAVE装置に含まれてもよい。
【0084】
本実施形態では、車両に搭載されたV2X通信装置であるとする。このV2X通信装置は、CA(Cooperative Awareness)サービスおよびCP(Collective Perception)サービスを提供する機能を備える。CAサービスではV2X通信装置はCAMを送信する。CPサービスでは、V2X通信装置はCPMを送信する。なお、通信装置がRSUあるいは携帯端末であっても、以下に開示するものと同一または類似の方法が適用できる。
【0085】
図8に示すアーキテクチャは、EU規格に従ったITS-Sの基準アーキテクチャに基づいている。図8に示すアーキテクチャは、アプリケーション層110、ファシリティ層120、ネットワーク&トランスポート層140、アクセス層130、マネージメント層150、セキュリティ層160を備えた構成である。
【0086】
アプリケーション層110は、種々のアプリケーション111を実装あるいはサポートする。図8には、アプリケーション111の例として、交通安全アプリケーション111a、効率的な交通情報アプリケーション111b、その他のアプリケーション111cが示されている。
【0087】
ファシリティ層120は、アプリケーション層110で定義された種々のユースケースの実行をサポートする。ファシリティ層120は、OSI参照モデルにおける上位3層(アプリケーション層、プレゼンテーション層及びセッション層)と同じあるいは類似の機能をサポートすることができる。なお、ファシリティは、機能、情報、データを提供することを意味する。ファシリティ層120は、V2X通信装置の機能を提供してもよい。たとえば、ファシリティ層120は、図8に示すアプリケーションサポート121、情報サポート122、通信サポート123の機能を提供してもよい。
【0088】
アプリケーションサポート121は、基本的なアプリケーションセットまたはメッセージセットをサポートする機能を備える。メッセージの一例は、V2Xメッセージである。V2Xメッセージには、CAMなどの定期メッセージ、および、DENM(Decentralized Environmental Notification Message)などのイベントメッセージを含ませることができる。また、ファシリティ層120は、CPMをサポートすることもできる。
【0089】
情報サポート122は、基本アプリケーションセットまたはメッセージセットに使用される共通のデータまたはデータベースを提供する機能を有する。データベースの一例は、ローカルダイナミックマップ(LDM)である。
【0090】
通信サポート123は、通信やセッション管理のためのサービスを提供する機能を備える。通信サポート123は、たとえば、アドレスモードやセッションサポートを提供する。
【0091】
このように、ファシリティ層120は、アプリケーションセットまたはメッセージセットをサポートする。すなわち、ファシリティ層120は、アプリケーション層110が送信すべき情報や提供すべきサービスに基づいて、メッセージセットまたはメッセージを生成する。このようにして生成されたメッセージは、V2Xメッセージと呼ばれることがある。
【0092】
アクセス層130は、外部IF(InterFace)131と内部IF132を備え、上位層で受信したメッセージ/データを、物理チャネルを介して送信することができる。たとえば、アクセス層130は、以下の通信技術により、データ通信を行う、あるいは、データ通信をサポートすることができる。通信技術は、たとえば、IEEE802.11および/または802.11p規格に基づく通信技術、IEEE802.11および/または802.11p規格の物理伝送技術に基づくITS-G5無線通信技術、衛星/広帯域無線移動通信を含む2G/3G/4G(LTE)/5G無線携帯通信技術、DVB-T/T2/ATCなどの広帯域地上デジタル放送技術、GNSS通信技術、WAVE通信技術である。
【0093】
ネットワーク&トランスポート層140は、各種トランスポートプロトコルやネットワークプロトコルを用いて、同種/異種ネットワーク間の車両通信用ネットワークを構成することができる。トランスポート層は、上位層と下位層との間の接続層である。上位層には、セッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層110がある。下位層には、ネットワーク層、データリンク層、物理層がある。トランスポート層は、送信データが正確に宛先に到着するように管理することができる。送信元では、トランスポート層は、効率的なデータ伝送のためにデータを適切なサイズのパケットに加工する。受信側では、トランスポート層は、受信したパケットを元のファイルに復元する処理を行なう。トランスポートプロトコルは、たとえば、TCP(Transmission Control Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)、BTP(Basic Transport Protocol)である。
【0094】
ネットワーク層は、論理アドレスを管理することができる。また、ネットワーク層は、パケットの配送経路を決定してもよい。ネットワーク層は、トランスポート層で生成されたパケットを受信し、宛先の論理アドレスをネットワーク層のヘッダに付加してもよい。パケットの送信経路は、車両間、車両と固定局との間、および固定局間のユニキャスト/マルチキャスト/ブロードキャストが考慮されてもよい。ネットワークプロトコルとして、ジオネットワーキング、モビリティサポートあるいはジオネットワーキングに関するIPv6ネットワーキングが考慮されてもよい。
【0095】
図8に示すように、V2X通信装置のアーキテクチャは、マネージメント層150とセキュリティ層160とをさらに含んでいてもよい。マネージメント層150は、層同士のデータの伝達や相互作用を管理する。マネージメント層150は、管理情報ベース151、規制管理152、層間管理153、ステーション管理154、アプリケーション管理155を備える。セキュリティ層160は、全部の層のセキュリティを管理する。セキュリティ層160は、ファイアウォールと侵入検知管理161、認証、承認、プロファイル管理162、セキュリティ管理情報ベース163を備える。
【0096】
図9に、V2Xメッセージを例示する。V2Xメッセージは、ITSメッセージと呼ぶこともできる。V2Xメッセージは、アプリケーション層110またはファシリティ層120で生成できる。V2Xメッセージの具体例は、CAM、DENM、CPMである。
【0097】
ネットワーク&トランスポート層140におけるトランスポート層はBTPパケットを生成する。ネットワーク&トランスポート層140におけるネットワーク層は、そのBTPパケットをカプセル化してジオネットワーキングパケットを生成することができる。ジオネットワーキングパケットは、LLC(Logical Link Control)パケットにカプセル化される。図9において、データはメッセージセットを含んでいてもよい。メッセージセットは、たとえば、基本安全メッセージである。
【0098】
BTPは、ファシリティ層120で生成されたV2Xメッセージを下位層に送信するためのプロトコルである。BTPヘッダには、AタイプとBタイプがある。AタイプのBTPヘッダは、双方向のパケット伝送において送受信に必要な宛先ポートと送信元ポートとを含むことがある。BタイプのBTPヘッダは、双方向ではないパケット伝送において、伝送に必要な宛先ポート、宛先ポート情報を含めることができる。
【0099】
BTPヘッダに含まれるフィールドを説明する。宛先ポートは、BTPパケットに含まれるデータ(BTP-PDU)の宛先に対応するファシリティエンティティを特定する。BTP-PDUは、BTPにおける単位伝送データである。
【0100】
送信元ポートは、BTP-Aタイプの場合に生成されるフィールドである。送信元ポートは、対応するパケットの送信元におけるファシリティ層120のプロトコルエンティティのポートを示す。このフィールドは、16ビットのサイズを持つことができる。
【0101】
宛先ポート情報は、BTP-Bタイプの場合に生成されるフィールドである。宛先ポートがウェルノウンポートである場合に追加情報を提供する。このフィールドは、16ビットのサイズを持つことができる。
【0102】
ジオネットワーキングパケットは、ネットワーク層のプロトコルに従う基本ヘッダと共通ヘッダを含み、ジオネットワーキングモードに従って選択的に拡張ヘッダを含む。
【0103】
LLCパケットは、ジオネットワーキングパケットにLLCヘッダを付加したものである。LLCヘッダは、IPデータとジオネットワーキングデータを区別して伝送する機能を提供する。IPデータとジオネットワーキングデータは、SNAP(Subnetwork Access Protocol)のイーサタイプで区別することができる。
【0104】
IPデータが伝送される場合、イーサタイプはx86DDに設定され、LLCヘッダに含まれることがある。ジオネットワーキングデータが送信される場合、イーサタイプは0x86DCに設定され、LLCヘッダに含まれることがある。受信機は、LLCパケットヘッダのイーサタイプフィールドを確認し、LLCパケットヘッダのイーサタイプフィールドの値に応じて、パケットをIPデータパスまたはジオネットワーキングパスに転送および処理することができる。
【0105】
LLCヘッダにはDSAP(Destination Service Access Point)とSSAP(Source Service Access Point)が含まれている。LLCヘッダにおいてSSAPの次には、制御フィールド(図9におけるControl)、プロトコルID、イーサタイプが配置される。
【0106】
図10は、V2X通信装置のアーキテクチャにおけるCA(協調認識)サービス128および他の層のための論理インターフェースを示している。
【0107】
V2X通信装置は、交通安全および率化のための様々なサービスを提供してもよい。サービスの1つは、CAサービス128であってもよい。道路交通における協調認識は、道路使用者および路側インフラが相互の位置、動態および属性を知ることができることを意味する。道路使用者とは、自動車、トラック、オートバイ、自転車、歩行者など、交通安全や制御を行う道路上や周辺のあらゆる使用者を指し、路側インフラとは、道路標識、信号機、障壁、入口などの設備を指す。
【0108】
お互いを認識することは、交通安全や交通効率化などのアプリケーションの基本になる。互いの認識は、V2Xネットワークと呼ばれる無線ネットワークに基づく、車両間(V2V)、車両とインフラとの間(V2I)、インフラと車両との間(I2V)、全対象物と全対象物との間(X2X)などの道路ユーザー間の定期的な情報交換によって実行することができる。
【0109】
協調安全走行や交通効率化のアプリケーションでは、V2X通信装置の周囲の道路使用者の存在や行動を含む状況認識を進展させることが要求される。例えば、V2X通信装置は、自身のセンサや他のV2X通信装置との通信を通じて、状況認識を行うことができる。この場合、CAサービスは、V2X通信装置がCAMを送信することにより、自身の位置、挙動、属性を通知する方法を指定することができる。
【0110】
図10に示すように、CAサービス128は、ファシリティ層120のエンティティであってもよい。たとえば、CAサービス128は、ファシリティ層120のアプリケーションサポートドメインの一部であってもよい。
【0111】
CAサービス128は、CAMプロトコルを適用し、CAMの送信と受信の2つのサービスを提供することができる。CAサービス128はCAM基本サービスと言うこともできる。
【0112】
CAMの送信では、送信元ITS-SはCAMを構成する。CAMは送信のためにネットワーク&トランスポート層140に送られる。CAMは、送信元ITS-Sから、通信範囲内の全てのITS-Sに直接送信されることがある。通信範囲は、送信元ITS-Sの送信電力を変更することによって変動する。CAMは、送信元ITS-SのCAサービス128により制御された頻度で定期的に生成される。生成頻度は、送信元ITS-Sの状態変化を考慮して決定される。考慮する状態は、たとえば、送信元ITS-Sの位置または速度の変化、無線チャネルの負荷である。
【0113】
CAMを受信すると、CAサービス128は、CAMの内容をアプリケーション111および/またはLDM127などのエンティティに利用する。
【0114】
CAMは、道路交通に関わる全てのITS-Sが送信する。CAサービス128は、CAM生成のための関連情報を収集するため、および、受信したCAMデータをさらに処理するために、ファシリティ層120のエンティティおよびアプリケーション層110と接続する。
【0115】
車両において、ITS-Sのデータ収集のためのエンティティの一例は、VDP(Vehicle Data Provider)125、POTI(position and time)ユニット126、LDM127である。VDP125は、車両ネットワークに接続され、車両の状態情報を提供する。POTIユニット126は、ITS-Sの位置と時間情報を提供する。LDM127は、ETSI TR 102 863に記載されているように、ITS-S内のデータベースであり、受信したCAMデータで更新することができる。アプリケーション111は、LDM127から情報を取得し、さらに処理を行うことができる。
【0116】
CAサービス128は、他のITS-SとCAMを交換するために、NF-SAP(Network & Transport/Facilities Service Access Point)を介して、ネットワーク&トランスポート層140と接続する。CAサービス128は、CAM送信とCAM受信のセキュリティサービスのために、SF-SAP(Security Facilities Service Access Point)を介してセキュリティ層160と接続する。CAサービス128は、受信したCAMデータをアプリケーション111に直接提供する場合は、MF-SAP(Management/Facilities Service Access Point)を介してマネージメント層150と接続し、FA-SAP(Facilities/Applications Service Access Point)を介してアプリケーション層110と接続する。
【0117】
図11は、CAサービス128の機能ブロック、および、他の機能および層へのインターフェースを示す。CAサービス128は、CAMエンコード部1281、CAMデコード部1282、CAM送信管理部1283、CAM受信管理部1284の4つのサブ機能を提供する。
【0118】
CAMエンコード部1281は、予め定義されたフォーマットに従ってCAMを構築し、符号化する。CAMデコード部1282は、受信したCAMを復号する。CAM送信管理部1283は、CAMを送信するために、送信元ITS-Sのプロトコル動作を実行する。CAM送信管理部1283は、たとえば、CAM送信動作の起動と終了、CAM生成頻度の決定、CAM生成のトリガを実行する。CAM受信管理部1284は、CAMを受信するために、受信側ITS-Sに規定されたプロトコル動作を実行する。CAM受信管理部1284は、たとえば、CAM受信時に、CAMデコード機能を起動させる。また、CAM受信管理部1284は、受信したCAMのデータを受信側ITS-Sのアプリケーション111に提供する。CAM受信管理部1284は、受信したCAMの情報チェックを実行してもよい。
【0119】
受信データを提供するため、CAサービス128は、図11に示すように、インターフェースIF.CAMを提供する。インターフェースIF.CAMは、LDM127またはアプリケーション111へのインターフェースである。なお、アプリケーション層110へのインターフェースはAPI(Application Programming Interface)として実装され、このAPIを介してCAサービス128とアプリケーション111の間でデータが交換されてもよい。また、アプリケーション層110へのインターフェースは、FA-SAPとして実装することも可能である。
【0120】
CAサービス128は、CAMの生成に必要なデータを取得するために、ファシリティ層120の他のエンティティと相互作用する。CAMのためのデータを提供する一連のエンティティは、データ提供エンティティあるいはデータ提供ファシリティである。データ提供エンティティとCAサービス128との間は、インターフェースIF.FACを介してデータが交換される。
【0121】
CAサービス128は、インターフェースIF.N&Tを介してネットワーク&トランスポート層140と情報交換を行う。送信元ITS-Sにおいて、CAサービス128は、プロトコル制御情報(PCI)と共に、CAMをネットワーク&トランスポート層140に提供する。PCIは、ETSI EN 32 636-5-1に従った制御情報である。CAMは、ファシリティ層120のサービステータユニット(FL-SDU)に埋め込まれている。
【0122】
受信側ITS-Sでは、ネットワーク&トランスポート層140は、受信したCAMをCAサービス128に提供することができる。
【0123】
CAサービス128とネットワーク&トランスポート層140との間のインターフェースは、ジオネットワーキング/BTPスタックのサービス、あるいは、IPv6スタック、およびIPv6/ジオネットワーキングの複合スタックに依存する。
【0124】
CAMは、ジオネットワーキング(GN)/BTPスタックが提供するサービスに依存することがある。このスタックが使用される場合、GNパケット転送タイプは、シングルホップブロードキャスト(SHB)が使用される。この場合、直接通信範囲内にあるノードのみがCAMを受信できる。
【0125】
CAサービス128からジオネットワーキング/BTPスタックに渡されるPCIは、BTPタイプ、宛先ポート、宛先ポート情報、GNパケット伝送タイプ、GN通信プロファイル、GNセキュリティプロファイルを含むことがある。また、このPCIは、GNトラフィッククラス、GN最大パケット生存期間を含んでいてもよい。
【0126】
CAMは、ETSI TS 102 636-3に規定されるように、CAMを送信するためにIPv6スタックまたはIPv6/ジオネットワーキング複合スタックを使用することができる。CAMの送信に、IPv6/ジオネットワーキング複合スタックを使用する場合、CAサービス128とIPv6/ジオネットワーキング複合スタックの間のインターフェースは、CAサービス128とIPv6スタックの間のインターフェースと同じであってよい。
【0127】
CAサービス128は、MF-SAPを介してマネージメント層150の管理エンティティとプリミティブを交換することができる。プリミティブは、命令など、交換する情報の要素である。ITS-G5のアクセス層130の場合、送信側ITS-Sは、インターフェースIF.Mngを介して、管理エンティティからT_GenCam_DCCの設定情報を取得する。
【0128】
CAサービス128は、ITS-Sのセキュリティエンティティが提供するインターフェースIF.Secを用いて、SF-SAPを介して、ITS-Sのセキュリティエンティティとプリミティブを交換することができる。
【0129】
CAMの送信には、ポイントツーマルチポイント通信が使用されてもよい。CAMは、送信元ITS-Sから、送信元ITS-Sの直接通信範囲に位置する受信側ITS-Sに対してのみシングルホップで送信される。シングルホップであるので、受信側のIST-Sは、受信したCAMを転送しない。
【0130】
CAサービス128の開始は、車両ITS-S、路側ITS-S、パーソナルITS-Sなど、異なるタイプのITS-Sで異なっていてもよい。CAサービス128がアクティブである限り、CAMの生成は、CAサービス128が管理する。
【0131】
車両ITS-Sの場合、CAサービス128は、ITS-Sの起動と同時に起動し、ITS-Sの非活性化時に終了する。
【0132】
CAMの生成頻度は、CAサービス128が管理する。CAMの生成頻度は、連続する2つのCAMの生成時間間隔である。CAM生成間隔は最小値T_GenCamMinを下回らないように設定される。CAM生成間隔の最小値T_GenCamMinは100msである。CAM生成間隔が100msになる場合、CAM生成頻度は10Hzになる。CAM生成間隔は最大値T_GenCamMaxを上回らないように設定される。CAM生成間隔の最大値T_GenCamMaxは1000msである。CAM生成間隔が1000msになる場合、CAM生成頻度は1Hzになる。
【0133】
上記の生成頻度の範囲内で、CAサービス128は、送信元ITS-Sのダイナミクスとチャネルの輻輳状態に応じてCAM生成をトリガする。送信元ITS-SのダイナミクスによりCAM生成間隔が短縮された場合、この間隔は連続する複数のCAMで維持される。CAサービス128は、CAM生成のトリガとなる条件をT_CheckCamGen毎に繰り返し確認する。T_CheckCamGenはT_GenCamMin以下になっている。
【0134】
ITS-G5の場合、パラメータ T_GenCam_DCCは、ETSI TS 102 724で規定されている分散輻輳制御(DCC)のチャネル使用要件に従い、CAMの生成を減らす、連続する2つのCAMの最小生成時間間隔を提供する。これにより、チャネル輻輳時に無線チャネルの残存容量に応じたCAM生成頻度の調整が容易になる。
【0135】
T_GenCam_DCCは、管理エンティティによってミリ秒の単位で提供される。T_GenCam_DCCの値の範囲は、T_GenCamMin ≦ T_GenCam_DCC ≦ T_GenCamMax である。
【0136】
管理エンティティがT_GenCam_DCCに、T_GenCamMax 以上の値を与える場合、T_GenCam_DCC はT_GenCamMaxに設定される。管理エンティティがT_GenCam_DCCにT_GenCamMin 以下の値を与える場合、又は、T_GenCam_DCCが提供されない場合、T_GenCam_DCCはT_GenCamMinに設定される。
【0137】
なお、LTE-V2Xでは、DCCおよびT_GenCam_DCCは適用しない。LTE-V2Xでは、チャネル輻輳制御はアクセス層130が管理する。
【0138】
T_GenCamは、現在有効なCAM生成間隔の上限である。T_GenCamのデフォルト値をT_GenCamMaxとする。T_GenCamは、下記の条件1によりCAMを発生させた場合、最後のCAM発生からの経過時間を設定する。条件2により、N_GenCam個の連続したCAMを発生させた後、T_GenCamをT_GenCamMax に設定する。
【0139】
N_GenCamの値は、いくつかの環境条件に従って動的に調整することができる。たとえば、交差点に近づいた場合にN_GenCamを大きくし、CAMの受信頻度を高くすることができる。なお、N_GenCamのデフォルト値及び最大値は3である。
【0140】
条件1は、前回のCAM生成からの経過時間がT_GenCam_DCC以上であり、かつ、以下のITS-Sダイナミクス関連条件のいずれかが与えられていることである。ITS-Sダイナミクス関連条件の1つ目は、送信元ITS-Sの現在の方位と、送信元ITS-Sが前に送信したCAMに含まれる方位の差の絶対値が4度以上であることである。2つ目は、送信元ITS-Sの現在位置と、送信元ITS-Sが前に送信したCAMに含まれる位置の距離が4m以上であることである。3つ目は、送信元ITS-Sの現在速度と、送信元ITS-Sが以前に送信したCAMに含まれる速度との差の絶対値が0.5m/sを超えることである。
【0141】
条件2は、前回のCAM生成からの経過時間がT_GenCam以上、かつ、ITS-G5の場合にはT_GenCam_Dcc以上であることである。
【0142】
上記2つの条件のいずれかが満たされた場合、CAサービス128は、直ちにCAMを生成する。
【0143】
CAサービス128は、CAMを生成する場合、必須コンテナを生成する。必須コンテナには、主に送信元ITS-Sの高ダイナミック情報を含める。高ダイナミック情報は、基本コンテナおよび高頻度コンテナに含ませる。CAMは、オプションデータを含むことができる。オプションデータは、主に、動的でない送信元ITS-Sの状態、および、特定のタイプの送信元ITS-Sのための情報である。動的でない送信元ITS-Sの状態は、低頻度コンテナに含ませ、特定のタイプの送信元ITS-Sのための情報は、特殊車両コンテナに含ませる。
【0144】
低頻度コンテナは、CAサービス128の起動後、最初のCAMに含ませる。その後、低頻度コンテナを生成した最後のCAMの生成からの経過時間が500ms以上の場合に、CAMに低頻度コンテナを含める。
【0145】
特殊車両コンテナも、CAサービス128の起動後、最初に生成されるCAMに含まれる。その後、最後に特殊車両コンテナを生成したCAMの生成からの経過時間が500ms以上の場合に、CAMに特殊車両コンテナを含める。
【0146】
路側ITS-SのCAM生成頻度も、連続する2つのCAM生成の時間間隔によって定義される。路側ITS-Sは、車両が路側ITS-Sの通信領域内にある間に少なくとも1つのCAMが送信されるように設定される必要がある。また、CAM生成の時間間隔は1000ms以上でなければならない。CAM生成の時間間隔が1000msである場合を最大CAM生成周波数とすると、最大CAM生成周波数は1Hzである。
【0147】
なお、通行する車両がRSUからCAMを受信する確率は、CAMの発生頻度と車両が通信領域内にいる時間に依存する。この時間は、車速とRSUの送信電力に依存する。
【0148】
CAMの生成頻度に加え、CAM生成に要する時間およびメッセージの構築に要するデータの即時性が、受信側ITS-Sにおけるデータの適用性を決定づける。受信されたCAMを適切に解釈するために、それぞれのCAMにはタイムスタンプが付与される。なお、異なるITS-S間で時間同期が取れていることが好ましい。
【0149】
CAM生成に要する時間は50ms以下になっている。CAM生成に要する時間とは、CAM生成が開始された時刻と、CAMがネットワーク&トランスポート層140に届けられる時刻との差である。
【0150】
車両ITS-SのCAMに示されるタイムスタンプは、このCAMに示される送信元ITS-Sの基準位置が決定された時刻に対応する。路側ITS-SのCAMに示されるタイプスタンプは、CAMが生成された時刻である。
【0151】
ITS-S間で伝達されるメッセージの認証には証明書が使用されてもよい。証明書は、証明書の保有者が特定のメッセージセットを送信する許可を示す。また、証明書は、メッセージ内の特定データ要素に対する権限を示すこともできる。証明書において、許可権限はITS-AIDおよびSSPという一対の識別子で示される。
【0152】
ITS-Application Identifier(ITS-AID)は、付与される許可の全体的なタイプを示す。例えば、送信者にCAMを送信する権利があることを示すITS-AIDが存在する。
【0153】
サービス固有許可(Service Specific Permissions(SSP))は、ITS-AIDによって示される全体的な許可の中の特定の許可セットを示すフィールドである。例えば、送信者が特定の車両の役割のためにCAMを送信する権利があることを示すCAM用のITS-AIDに関連するSSPの値が存在する場合がある。
【0154】
受信した署名付きCAMは、証明書が有効であり、CAMがその証明書のITS-AIDおよびSSPと一致する場合に、受信側に受け入れられる。CAMは、BitmapSspタイプのSSPを含むAuthorization Tiketに関連付けられた秘密鍵を使用して署名される。
【0155】
図12は、CAMのフォーマットを示す図である。図12に示すように、CAMは、ITSプロトコルデータユニット(PDU)ヘッダと複数のコンテナを含んでいてもよい。ITS PDUヘッダは、プロトコルバージョン、メッセージタイプ、送信元ITS-SのIDの情報を含む。
【0156】
車両ITS-SのCAMは、1つの基本コンテナと1つの高頻度(High Frequency)コンテナ(以下、HFコンテナ)を含み、さらに、1つの低頻度(Low Frequency)コンテナ(以下、LFコンテナ)と、1つ以上の他の特殊車両コンテナを含むことができる。特殊車両コンテナは特殊コンテナと呼ぶこともある。
【0157】
基本コンテナには、送信元ITS-Sに関する基本情報が含まれる。具体的には、基本コンテナには、ステーションタイプ、ステーションの位置を含ませることができる。ステーションタイプは、車両、路側機(RSU)などである。ステーションタイプが車両である場合には、車両種別を含ませてもよい。位置には、緯度、経度、高度および信頼度が含まれていてもよい。
【0158】
車両ITS-SのCAMでは、HFコンテナに車両HFコンテナが含まれる。ステーションの種類が車両でない場合には、車両HFコンテナではない他コンテナをHFコンテナに含ませることができる。
【0159】
車両HFコンテナは、送信元の車両ITS-Sにおいて短時間で変化する動的状態情報が含まれる。車両HFコンテナには、具体的には、車両が向いている方位、車両の速度、走行方向、車長、車幅、車両前後加速度、道路の曲率、曲率計算モード、ヨーレートの1つ以上が含まれていてもよい。走行方向は、前進および後進のいずれかを示す。曲率計算モードは曲率の算出に車両のヨーレートを使用するか否かを示すフラグである。
【0160】
さらに、車両HFコンテナには、車両前後の加速度制御状態、レーンポジション、ステアリングホイール角度、横方向加速度、垂直加速度、特性クラス、DSRC料金収集局の位置に関する情報のうちの1つ以上を含ませることもできる。特性クラスは、CAMのデータ要素の最大経過時間を決める値である。
【0161】
車両ITS-SのCAMでは、LFコンテナに車両LFコンテナが含まれる。ステーションの種類が車両でない場合には、車両LFコンテナではない他コンテナをLFコンテナに含ませることができる。
【0162】
車両LFコンテナは、車両の役割、外部灯火の点灯状態、走行軌跡のうちの1つ以上を含ませることができる。車両の役割は、車両が特殊車両である場合の区分である。外部灯火は、車両が備える外部灯火のうち最も重要な外部灯火を指す。走行軌跡は、過去のある時間またはある距離における車両の動きを示すものである。走行軌跡はパスヒストリーと言うこともできる。走行軌跡は、複数点(たとえば23点)の経由地点のリストで表される。
【0163】
特殊車両コンテナは、公共交通のような道路交通における特殊な役割をもつ車両ITS-Sのためのコンテナである。特殊車両コンテナには、公共輸送コンテナ、特殊輸送コンテナ、危険物コンテナ、道路工事コンテナ、救急コンテナ、緊急コンテナ、安全確認車コンテナのいずれか1つが含まれことがある。
【0164】
公共輸送コンテナは、バスなどの公共輸送車両に対するコンテナである。公共輸送コンテナは、乗降状態、信号機、障壁、杭(ボラード)などを公共交車両が制御するために用いられる。特殊輸送コンテナは、車両が重量車およびオーバーサイズ車両の一方または両方である場合に含まれる。危険物コンテナは、車両が危険物を輸送している場合に含まれるコンテナである。危険物コンテナは危険物の種類を示す情報を格納する。道路工事コンテナは、車両が道路工事に参加する車両である場合に含まれるコンテナである。道路工事コンテナは道路工事の種類、道路工事の原因を示すコードを格納する。また、道路工事コンテナには、前方の車線の開閉状況を示す情報を含ませることができる。救急コンテナは、車両が救急活動中の救急車両である場合に含まれるコンテナである。救急コンテナには、ライトバーおよびサイレンの使用状況、緊急優先度が示される。緊急コンテナは、車両が緊急活動中の緊急車両である場合に含まれるコンテナである。緊急コンテナには、ライトバーおよびサイレンの使用状況、原因コード、緊急優先度が示される。安全確認車コンテナは、車両が安全確認車である場合に含まれるコンテナである。安全確認車は、特殊輸送車両などに付随する車である。安全確認車コンテナには、ライトバーおよびサイレンの使用状況、追い越し規制、制限速度が示される。
【0165】
図13にCAMを送信する処理をフローチャートにより示す。図13に示す処理はCAMの生成周期ごとに実行する。ステップS201では、CAMを構成する情報を取得する。ステップS201は、たとえば、検出情報取得部201が実行する。ステップS202では、ステップS201で取得した情報をもとにCAMを生成する。ステップS202も、検出情報取得部201が実行することができる。ステップS203では、送信部221が、ステップS202で生成したCAMを、車両の周囲へ送信する。
【0166】
CAサービス128では、V2X通信装置が定期的に自身の位置や状態を周囲のV2X通信装置に提供することで、交通安全を支援することができる。しかし、CAサービス128では、対応するV2X通信装置自身の情報しか共有できないという制限がある。この制限を克服するために、CPサービス124などのサービス開発が必要である。
【0167】
図14に示すように、CPサービス124も、ファシリティ層120のエンティティであってもよい。たとえば、CPサービス124は、ファシリティ層120のアプリケーションサポートドメインの一部であってもよい。CPサービス124は、たとえば、VDP125やPOTIユニット126からホストV2X通信装置に関する入力データを受信できない点で、CAサービス128とは基本的に異なるものであってもよい。
【0168】
CPMの送信は、CPMの生成と送信を含む。CPMを生成するプロセスでは、発信元のV2X通信装置がCPMを生成し、その後、CPMが、送信のためにネットワーク&トランスポート層140に送られる。発信元のV2X通信装置は、発信元V2X通信装置、ホストV2X通信装置等と呼ばれてもよい。
【0169】
CPサービス124は、CPM生成のための関連情報を収集し、受信したCPMコンテンツを追加処理を目的として配信するために、ファシリティ層120内の他のエンティティおよびファシリティ層120内のV2Xアプリケーションと接続していてもよい。V2X通信装置において、データ収集のためのエンティティは、ホスト物体検出器において物体検出を提供する機能であってよい。
【0170】
さらに、CPMを配信する(あるいは送信する)ために、CPサービス124は、ネットワーク&トランスポート層140のプロトコルエンティティによって提供されるサービスを使用してもよい。例えば、CPサービス124は、他のV2X通信装置とCPMを交換するために、NF-SAPを通じてネットワーク&トランスポート層140と接続してもよい。NF-SAPは、ネットワーク&トランスポート層140とファシリティ層120との間のサービスアクセスポイントである。
【0171】
さらに、CPサービス124は、CPMの送信およびCPMの受信のためにセキュリティサービスにアクセスするために、セキュリティ層160とファシリティ層120との間のSAPであるSF-SAPを通じてセキュアエンティティと接続してもよい。また、CPサービス124は、マネージメント層150とファシリティ層120との間のSAPであるMF-SAPを通じて管理エンティティと接続してもよい。また、CPサービス124は、受信したCPMデータをアプリケーションに直接提供する場合は、ファシリティ層120とアプリケーション層110とのSAPであるFA-SAPを通じてアプリケーション層110と接続してもよい。
【0172】
CPサービス124は、V2X通信装置が、検出された周囲の道路使用者や他の物体の位置、挙動、属性について、他のV2X通信装置に通知する方法を指定することができる。たとえば、CPサービス124は、CPMの送信により、CPMに含まれている情報を他のV2X通信装置と共有することができる。なお、CPサービス124は、道路交通に参加する全ての種類の物標情報通信装置に対して追加できる機能であってもよい。
【0173】
CPMは、V2Xネットワークを介して、V2X通信装置間で交換されるメッセージである。CPMは、V2X通信装置によって検出および/または認識された道路使用者および他の物体に対する集団認識を生成するために使用できる。検出される道路使用者または物体は、V2X通信装置を備えていない道路使用者または物体であってもよいが、これに限定されない。
【0174】
上述したように、CAMを介して情報を共有するV2X通信装置は、協調認識を行うために、V2X通信装置自身の認識状態に関する情報のみを他のV2X通信装置と共有する。この場合、V2X通信装置を搭載していない道路使用者等はシステムの一部ではないため、安全や交通管理に関連する状況についての見解が限定される。
【0175】
これを改善する一つの方法として、V2X通信装置を搭載し、V2X通信装置を搭載していない道路使用者や物体を認識できるシステムが、V2X通信装置を搭載していない道路使用者や物体の存在や状態を他のV2X通信装置に通知することが考えられる。このように、CPサービス124は、V2X通信装置を搭載していない道路使用者や物体の存在を協調して認識するため、V2X通信装置を搭載したシステムの安全性や交通管理性能を容易に向上させることが可能である。
【0176】
CPMの配信は、適用される通信システムによって異なる場合がある。例えば、ETSI EN 302 663に定義されているITS-G5ネットワークにおいて、CPMは、発信元のV2X通信装置から直接通信範囲内の全てのV2X通信装置に送信される場合がある。通信範囲は、関連する地域に応じて送信電力を変更することにより、発信元のV2X通信装置によって特に影響を受ける可能性がある。
【0177】
さらに、CPMは、発信元のV2X通信装置におけるCPサービス124によって制御される頻度で定期的に生成されてもよい。生成頻度は、分散輻輳制御(Distributed Congestion Control)により決定される無線チャネル負荷を考慮して決定されてもよい。また、生成頻度は、検出された非V2X物体の状態、たとえば、位置、速度または方向の動的挙動、および他のV2X通信装置による同一の知覚された物体に対するCPMの送信を考慮して決定されてもよい。
【0178】
さらに、受信側のV2X通信装置がCPMを受信すると、CPサービス124により、CPMの内容を受信側のV2X通信装置内の機能、たとえばV2Xアプリケーションおよび/またはLDM127で使用することができるようにする。たとえば、LDM127は、受信したCPMデータで更新されることがある。V2Xアプリケーションは、追加処理のためにLDM127からこの情報を取り出してもよい。
【0179】
図15は、本実施形態におけるCPサービス124の機能ブロック図である。より具体的には、図15は、本実施形態におけるCPサービス124の機能ブロックと、他の機能および層のためのインターフェースを有する機能ブロックとを図示する。
【0180】
図15に示すように、CPサービス124は、CPM送受信のために以下のサブ機能を提供することができる。CPMエンコード部1241は、予め定義されたフォーマットに従ってCPMを構成または生成する。最新の車載データがCPMに含まれることがある。CPMデコード部1242は、受信したCPMを復号する。CPM送信管理部1243は、発信元のV2X通信装置のプロトコル動作を実行する。CPM送信管理部1243が実行する動作には、CPM送信動作の起動および終了、CPM生成頻度の決定、CPM生成のトリガを含んでもよい。CPM受信管理部1244は、受信側V2X通信装置のプロトコル動作を実行することができる。具体的には、CPM受信におけるCPMデコード機能のトリガ、受信したCPMデータのLDM127または受信側V2X通信装置のV2Xアプリケーションへの提供、受信したCPMの情報チェックなどを含むことができる。
【0181】
次に、CPMの配信について詳細に説明する。具体的には、CPM配信の要件、CPサービスの起動と終了、CPMトリガ条件、CPM生成周期、制約条件等について説明する。CPM配信にポイントツーマルチポイント通信が使用されてもよい。例えば、CPMの配信にITS-G5が用いられる場合、制御チャネル(G5-CCH)が用いられてもよい。CPM生成は、CPサービス124が動作している間、CPサービス124によってトリガされ管理されてもよい。CPサービス124は、V2X通信装置の起動とともに起動されてもよく、V2X通信装置が終了したときに終了されてもよい。
【0182】
ホストV2X通信装置は、近くのV2X通信装置と交換する必要がある十分な信頼度を有する少なくとも1つの物体が検出されるたびにCPMを送信してよい。検出された物体を含めることに関して、CPサービスは、物体の寿命とチャネル利用率との間のトレードオフを考慮すべきである。たとえば、CPMが受信した情報を利用するアプリケーションの観点からは、できるだけ頻繁に更新された情報を提供する必要がある。しかし、ITS-G5スタックの観点からは、チャネル使用率を最小にする必要があるため、低い送信周期が要求される。したがって、V2X通信装置は、この点を考慮し、検出した物体や物体情報をCPMに適切に含めることが望ましい。また、メッセージサイズを小さくするために、物体を評価した上で送信する必要がある。
【0183】
図16は、CPMの構造を示す図である。図16に示すCPM構造が基本CPM構造であってもよい。上述したように、CPMは、V2Xネットワーク内のV2X信装置間で交換されるメッセージであってもよい。また、CPMは、V2X通信装置によって検出および/または認識された道路使用者および/または他の物体に対する集団認識を生成するために使用されてもよい。すなわち、CPMは、V2X通信装置によって検出された物体に対する集団認識を生成するためのITSメッセージであってもよい。
【0184】
CPMは、発信元V2X通信装置が検出した道路使用者と物体の状態情報および属性情報を含んでもよい。その内容は、検出された道路使用者または物体の種類および発信元V2X通信装置の検出性能に応じて異なってもよい。例えば、物体が車両である場合、状態情報は、少なくとも、実際の時間、位置、および運動状態に関する情報を含んでもよい。属性情報には、寸法、車種、道路交通における役割などの属性が含まれてもよい。
【0185】
CPMは、CAMを補完し、CAMと同様の働きをするものであってもよい。すなわち、協調的な認識を高めるためであってもよい。CPMは、検出された道路使用者または物体に関し、外部から観測可能な情報を含んでもよい。CPサービス124は、他のステーションが送信したCPMを確認することで、異なるV2X通信装置が送信したCPMの複製または重複を低減する方法を含んでもよい。
【0186】
CPMの受信により、受信側のV2X通信装置は、発信元のV2X通信装置が検出した道路使用者または物体の存在、種類および状態を認識してもよい。受信した情報は、安全性を高め、交通効率および移動時間を改善するためのV2Xアプリケーションをサポートするために、受信側のV2X通信装置によって使用されてもよい。例えば、受信した情報と検出された道路使用者または物体の状態とを比較することにより、受信側のV2X通信装置は、道路使用者または物体との衝突の危険性を推定することができる。さらに、受信側V2X通信装置は、受信側V2X通信装置のヒューマンマシンインターフェース(HMI)を介してユーザーに通知してもよいし、自動的に修正措置を講じてもよい。
【0187】
CPMの基本的なフォーマットを、図16を参照して説明する。このCPMのフォーマットは、ASN(Abstract Syntax Notation).1として提示されてもよい。本開示で定義されていないデータエレメント(DE)およびデータフレーム(DF)は、ETSI TS 102 894-2に規定されている共通データ辞書から導出されてもよい。図16に示すように、CPMは、ITSプロトコルデータユニット(PDU)ヘッダと、複数のコンテナとを含んでもよい。
【0188】
ITS PDUヘッダは、プロトコルバージョン、メッセージタイプ、及び発信元のV2X通信装置のITS IDに関する情報を含むヘッダである。ITS PDUヘッダは、ITSメッセージで使用される共通のヘッダであり、ITSメッセージの開始部分に存在する。ITS PDUヘッダは、共通ヘッダと呼ばれることもある。
【0189】
複数のコンテナは、管理コンテナ(Management Container)、ステーションデータコンテナ(Station Data Container)、センサ情報コンテナ(Sensor Information Container)、認識物体コンテナ(Perceived Object Container)、フリースペース追加コンテナ(Free Space Addendum Container)を含むことができる。ステーションデータコンテナは発信車両コンテナ(Originating Vehicle Container)あるいは発信路側機コンテナ(Originating RSU Container)を含むことができる。センサ情報コンテナは視野情報コンテナ(Field-of-View Container)と呼ばれることもある。発信車両コンテナはOVCと記載することもある。視野コンテナはFOCと記載することもある。認識物体コンテナはPOCと記載することもある。CPMは、必須のコンテナとして管理コンテナを含み、ステーションデータコンテナ、センサ情報コンテナ、POCおよびフリースペース付属コンテナを任意のコンテナとしてもよい。センサ情報コンテナ、認識物体コンテナおよびフリースペース付属コンテナは複数のコンテナであってもよい。以下、各コンテナについて説明する。
【0190】
管理コンテナは、車両または路側機タイプのステーションであるかどうかに関係なく、発信元のITS-Sに関する基本情報を提供する。また、管理コンテナは、ステーションタイプ、基準位置、セグメント化情報、認識物体数を含んでいてもよい。ステーションタイプは、ITS-Sのタイプを示す。基準位置は、発信元ITS-Sの位置である。セグメント化情報は、メッセージサイズの制約によりCPMを複数のメッセージに分割する場合の分割情報を記述する。
【0191】
図17に示す表1は、CPMのステーションデータコンテナにおけるOVCの一例である。表1は、一例としてのOVCに含まれるデータエレメント(DE)および/またはデータフレーム(DF)を示している。なお、ステーションデータコンテナは、発信元のITS-Sが車両である場合には、OVCになる。発信元のITS-SがRSUである場合には、発信元RSUコンテナ(Originating RSU Container)になる。発信元RSUコンテナは、RSUが存在する道路あるいは交差点に関するIDを含んでいる。
【0192】
DEは、単一データを含むデータタイプである。DFは、予め定められた順序で1つ以上の要素を含むデータタイプである。たとえば、DFは、1つ以上のDEおよび/または1つ以上のDFを予め定義された順序で含むデータタイプである。
【0193】
DE/DFは、ファシリティ層メッセージまたはアプリケーション層メッセージを構成するために使用されてもよい。ファシリティ層メッセージの例は、CAM、CPM、DENMである。
【0194】
表1に示すように、OVCは、CPMを発信するV2X通信装置に関連する基本情報を含む。OVCは、CAMのスケールダウン版と解釈できる。ただし、OVCは座標変換処理に必要なDEのみを含んでもよい。すなわち、OVCは、CAMと類似しているが、発信元のV2X通信装置に関する基本情報を提供する。OVCに含まれる情報は、座標変換処理をサポートすることに重点を置いている。
【0195】
OVCは、以下のものを提供することができる。すなわち、OVCは、CPM生成時にCPサービス124が取得した発信元V2X通信装置の最新の地理的位置を提供することができる。また、OVCは、発信元V2X通信装置の横方向および縦方向の絶対速度成分を提供することができる。OVCは、発信元V2X通信装置の幾何学的寸法を提供することができる。
【0196】
表1に示す生成差分時間は、DEとして、CPMにおける基準位置の時刻に対応する時間を示す。生成差分時間は、CPMの生成時刻とみなすことができる。本開示では、生成差分時間を生成時間と称することがある。
【0197】
基準位置は、DFとして、V2X通信装置の地理的な位置を示す。基準位置は、地理的な点の位置を示す。基準位置は、緯度、経度、位置信頼度および/または高度に関する情報を含む。緯度は、地理的地点の緯度を表し、経度は、地理的地点の経度を表す。位置信頼度は、地理的位置の精度を表し、高度は、地理的地点の高度および高度精度を表す。
【0198】
方位は、DFとして、座標系における方位を示す。方位は、方位値および/または方位信頼度の情報を含む。方位値は、北を基準とした進行方向を示し、方位の信頼度は、報告された方位値の信頼度が予め設定されたレベルであることを示す。
【0199】
縦方向速度は、DFとして、移動体(たとえば車両)に関する縦方向速度と速度情報の精度を記述することができる。縦方向速度は、速度値および/または速度精度の情報を含む。速度値は、縦方向の速度値を表し、速度精度は、その速度値の精度を表す。
【0200】
横方向速度は、DFとして、移動体(たとえば車両)に関する横方向速度および速度情報の精度を記述することができる。横方向速度は、速度値および/または速度精度に関する情報を含む。上記速度値は、横方向の速度値を表し、速度精度は、その速度値の精度を表す。
【0201】
車両長は、DFとして、車両長および精度指標を記述することができる。車両長は、車両長の値および/または車両長の精度指標に関する情報を含む。車両長は、車両の長さを表し、車両長の精度指標は、その車両長の信頼性を表す。
【0202】
車幅は、DEとして、車両の幅を示す。たとえば、車幅は、サイドミラーを含めた車両の幅を表すことができる。なお、車幅が6.1m以上の場合は61とし、情報が得られない場合は62とする。
【0203】
表1に示す各DE/DFは、生成時間差分を除き、それぞれ、表1の右列に示すETSI 102 894-2を参照できる。ETSI 102 894-2は、CDD(common data dictionary)を定めている。生成時間差分については、ETSI EN 302 637-2を参照できる。
【0204】
また、前述の情報以外に車両方向角度、車両進行方向、縦加速度、横加速度、垂直加速度、ヨーレート、ピッチ角度、ロール角度、車両高さ及びトレーラーデータに関する情報をOVCに含んでいてもよい。
【0205】
図18には表2を示している。表2はCPMにおけるSIC(またはFOC)の例である。 SICは、発信元のV2X通信装置に搭載された少なくとも1つのセンサの説明を提供する。V2X通信装置がマルチセンサを搭載している場合、説明は複数追加されることがある。たとえば、SICは発信元のV2X通信装置のセンサ能力に関する情報を提供する。このようにするために、発信元V2X通信装置のセンサの取り付け位置、センサの種類、センサの範囲と開き角(すなわちセンサのフラスタム)を提供する一般的なセンサ特性が、メッセージの一部として含まれてもよい。これらの情報は、受信側のV2X通信装置がセンサの性能に応じた適切な予測モデルを選択するために利用されることがある。
【0206】
SICの各種の情報について表2を参照して説明する。センサIDは、物体を検出したセンサを特定するためのセンサ固有のIDを示す。実施形態では、センサIDは、V2X通信装置の起動時に生成される乱数であり、V2X通信装置が終了するまで変更されない。
【0207】
センサタイプは、センサのタイプを示す。以下にセンサのタイプを列挙する。たとえば、センサタイプは、未定義(0)、レーダー(1)、ライダー(2)、モノビデオ(3)、ステレオビジョン(4)、ナイトビジョン(5)、超音波(6)、pmd(7)、フュージョン(8)、インダクションループ(9)、球面カメラ(10)、それらの集合(11)である。pmdは、photo mixing deviceである。球面カメラは360度カメラとも呼ばれる。
【0208】
センサ位置において、X位置は、センサのマイナスX方向の取付位置、Y位置はセンサのY方向の取付位置を示す。これらの取付位置は、基準位置からの測定値であり、基準位置はETSIのEN 302 637-2を参照できる。半径は、メーカが定義するセンサの平均的な認識範囲を示す。
【0209】
開き角において、開始角度はセンサのフラスタムの開始角度を示し、終了角度はセンサのフラスタムの終了角度を示す。品質クラスは、測定対象物の品質を定義するセンサの分類を表す。
【0210】
また、前述の情報以外に検出領域およびフリースペースの信頼性に関する情報をSICに含んでいてもよい。
【0211】
図19には表3を示している。表3はCPMにおけるPOCの例である。POCは、送信するV2X通信装置から見て、センサが認識した物体を記述するために使用される。POCを受信した受信側V2X通信装置は、OVCの助けを借りて、物体の位置を受信側車両の基準座標系に変換する座標変換処理を行うことができる。
【0212】
メッセージサイズを小さくするために、発信側V2X通信装置が提供できる場合に、複数のオプションDEを提供してもよい。
【0213】
POCは、認識された(または検出された)物体の抽象的な説明を提供するためにDEの選択で構成されてもよい。たとえば、発信元V2X通信装置に関連する認識された物体についての相対距離、速度情報およびタイミング情報は、必須のDEとしてPOCに含まれてもよい。また、発信元V2X通信装置のセンサが、要求されたデータを提供できる場合、追加のDEを提供してもよい。
【0214】
各情報(DEまたはDF)について、表3を参照して説明する。測定時間は、メッセージの基準時刻からの時間をマイクロ秒単位で示す。これは、測定された物体の相対的な年齢を定義する。
【0215】
物体IDは、物体に割り当てられた一意のランダムなIDである。このIDは、物体が追跡されている間、すなわち、発信元のV2X通信装置のデータ融合処理で考慮される間、保持される(すなわち、変更されない)。
【0216】
センサIDは、表2のセンサIDのDEに対応するIDである。このDEは、物体情報を、計測を行うセンサに関連付けるために使用されることがある。
【0217】
縦方向距離には、距離値と距離信頼度が含まれる。距離値は、発信元基準座標系における物体までの相対的なX距離を示す。距離信頼度は、そのX距離の信頼度を示す値である。
【0218】
横方向距離も、距離値と距離信頼度が含まれる。距離値は、発信元基準座標系における物体までの相対的なY距離を示し、距離信頼度は、そのY距離の信頼度を示す。
【0219】
縦方向速度は、検出された物体の縦方向速度を信頼度に応じて示す。横方向速度は、検出された物体の横方向速度を信頼度に応じて示す。縦方向速度および横方向速度は、TS 102 894-2のCDDを参照できる。
【0220】
物体方位は、データフュージョン処理により提供される場合、基準座標系における物体の絶対方位を示す。物体の長さは、測定された物体の長さを示す。長さの信頼度は、測定された物体の長さの信頼度を示す。物体の幅は、物体の幅の測定値を示す。幅の信頼度は、物体の幅の測定値の信頼度を示す。物体タイプは、データフュージョンプロセスで提供される場合、物体の分類を表す。物体の分類としては車両、人、動物、その他が含まれてよい。また、前述の情報以外に物体の信頼度、垂直方向距離、垂直方向速度、縦方向加速度、横方向加速度、垂直方向加速度、物体の高さ、物体の動的状態、マッチドポジション(車線IDや縦方向車線位置を含む)に関する情報をPOCに含んでいてもよい。
【0221】
フリースペース追加コンテナは、発信元のV2X通信装置が認識しているフリースペースについての情報(すなわちフリースペース情報)を示すコンテナである。フリースペースは、道路使用者や障害物が占有していないと考えられる領域であり、空き空間ということもできる。フリースペースは、発信元のV2X通信装置とともに移動する移動体が移動できるスペースということもできる。
【0222】
フリースペース追加コンテナは、必須のコンテナではなく任意に追加できるコンテナである。他のV2X通信装置から受信したCPMから計算できる、当該他のV2X通信装置が認識しているフリースペースと、発信元のV2X通信装置が認識しているフリースペースとに相違がある場合に、フリースペース追加コンテナを追加できる。また、定期的に、CPMにフリースペース追加コンテナを追加してもよい。
【0223】
フリースペース追加コンテナは、フリースペースの領域を特定する情報を含む。フリースペースは、種々の形状で特定することができる。フリースペースの形状は、たとえば、多角形(すなわちポリゴン)、円形、楕円形、長方形などで表現できる。フリースペースを多角形で表現する場合、多角形を構成する複数の点の位置と、それら複数の点を接続する順序を指定する。フリースペースを円形で表現する場合、円の中心の位置と円の半径を指定する。フリースペースを楕円で表現する場合、楕円の中心の位置と楕円の長径および短径を指定する。
【0224】
フリースペース追加コンテナは、フリースペースの信頼性を含んでもよい。フリースペースの信頼性は数値で表す。フリースペースの信頼性は、信頼性が不明であることを示すこともある。また、フリースペース追加コンテナは、影領域に関する情報を含んでもよい。影領域とは車両または車両に搭載されるセンサから見て物体の後方の領域を示している。
【0225】
図20は、CPサービス124を提供するV2X通信装置によるセンサデータ抽出方法を説明する図である。より具体的には、図20(a)は、V2X通信装置が低レベルでセンサデータを抽出する方法を示す。図20(b)は、V2X通信装置が高レベルでセンサデータを抽出する方法を示す図である。
【0226】
CPMの一部として送信されるセンサデータのソースは、受信側のV2X通信装置における将来のデータフュージョンプロセスの要件に従って選択される必要がある。一般的に、送信されるデータは、元のセンサデータにできるだけ近いものであるべきである。しかし、単純にオリジナルのセンサデータ、たとえば生データを送信することは現実的ではない。データレートと伝送周期に関して非常に高い要求を課すからである。
【0227】
図20(a)および図20(b)はCPMの一部として送信されるデータを選択するための可能な実施形態を示している。図20(a)の実施形態では、センサデータは異なるセンサから取得され、低レベルデータ管理エンティティの一部として処理される。このエンティティは、次のCPMの一部として挿入されるオブジェクトデータを選択し、また、検出されたオブジェクトの妥当性を計算することができる。図20(a)では、各センサのデータを送信するため、V2Xネットワークを介して送信されるデータ量が増加する。しかし、受信側のV2X通信装置でセンサ情報を効率的に活用できる。
【0228】
図20(b)の実施形態では、V2X通信装置メーカに固有のデータフュージョン部により提供されるセンサデータまたはオブジェクトデータがCPMの一部として送信される。
【0229】
図20(b)では、データフュージョン部を介して1つに集められた統合センサデータが伝送されるため、V2Xネットワークを介して伝送されるデータ量が少なくて済むという利点がある。しかし、センサ情報を収集するV2X通信装置の収集方式に依存するというデメリットがある。また、メーカにより異なるデータフュージョン処理が実施される可能性がある。
【0230】
V2X通信装置のセンサで物体を検出するたびに、その尤度を算出する必要がある。物体の尤度が所定の閾値PLAUS_OBJを超えた場合、送信を検討する必要がある。
【0231】
たとえば、検出された物体の現在のヨー角と、発信元のV2X通信装置が過去に送信したCPMに含まれるヨー角との差の絶対値が4度を超える場合、送信を検討する。発信元のV2X通信装置と検出物体の現在位置の相対距離と、発信元のV2X通信装置が過去に送信したCPMに含まれる発信元V2X通信装置と検出物体の相対距離の差が4mを超える場合、または、検出物体の現在の速度と発信元のV2X通信装置が過去に送信したCPMに含まれる検出物体の速度との差の絶対値が0.5m/sを超える場合は送信を検討してもよい。
【0232】
CAMは、V2Xモジュールを搭載した車両が、周囲のV2Xモジュールを搭載した車両に定期的に位置や状態を送信し、より安定した走行を支援する技術である。なお、V2Xモジュールは、V2X通信装置あるいはV2X通信装置を含む構成である。
【0233】
CAMは自車両の情報しか共有できないという制約があった。CPサービス124はCAMを補完する技術である。ADAS技術を搭載した車両は増え続けているため、多くの車両にはカメラ、レーダー、ライダーなどのセンサが搭載され、多くの周辺車両を認識し運転支援機能を発揮している。CPS(すなわちCPサービス)技術は、ADAS技術において、周辺環境を認識したセンサデータをV2X通信により周囲に通知する技術である。
【0234】
図21は、CPサービス124を説明する図である。TxV1およびRxV2の各車両は、少なくとも1つのセンサを備え、点線で示すセンシング範囲SrV1、SrV2を有するとする。TxV1はCPS機能を有する。TxV1は、車両に搭載された複数のADASセンサを用いて、センシング範囲SrV1に属する周辺物体である車両、RV1~RV11を認識することができる。認識により得られた物体情報は、V2X通信により、V2X通信装置を搭載する周辺車両に配信される場合がある。
【0235】
これにより、TxV1からCPMを受信した周辺車両のうち、センサを搭載していないRxV1は、後続車両の情報を取得できる。また、センサを搭載しているRxV2は、TxV1からCPMを受信した場合、RxV2のセンシング範囲SrV2の外にある物体や死角に位置する物体の情報(例えば、RV1~3、RV5、6及びRV8~10)を取得することも可能である。
【0236】
前述の図14に示されるように、ファシリティ層120は、CPサービス124を提供することができる。CPサービス124は、ファシリティ層120で実行されてもよく、ファシリティ層120に存在するサービスを利用してもよい。
【0237】
LDM127は、地図情報を提供するサービスであり、CPサービス124のために地図情報を提供してもよい。提供する地図情報には、静的な情報に加えて動的な情報を含んでいてもよい。POTIユニット126は、自車両の位置と時刻を提供するサービスを実行する。POTIユニット126は、対応する情報を用いて自車両の位置と正確な時刻を提供することができる。VDP125は、車両に関する情報を提供するサービスであり、これを用いてCPMに自車両のサイズなどの情報を取り込んで、CPMを送信してもよい。
【0238】
ADAS車両には、運転支援のために、カメラ、赤外線センサ、レーダー、ライダーなどの各種センサが搭載されている。それぞれのセンサは、個別に物体を認識する。認識された物体情報は、データフュージョン部によって収集され且つ融合され、ADASアプリケーションに提供される場合がある。
【0239】
再度、図20を参照し、CPサービス124に関し、ADAS技術におけるセンサ情報の収集とフュージョン方法について説明する。ADAS用の既存のセンサやCPS用の既存のセンサは、常に周囲の物体を追跡し、関連するデータを収集することができる。CPサービス用のセンサ値を使用する場合、2つの方法を用いてセンサ情報を収集することができる。
【0240】
図20(a)に示すように、CP基本サービスを通じて、それぞれのセンサ値を周辺車両に個別に提供することができる。また、図20(b)に示すように、データフュージョン部の後に1つに集められた統合センサ情報がCP基本サービスに提供されてもよい。CP基本サービスは、CPサービス124の一部を構成する。
【0241】
図22にCPMを送信する処理をフローチャートにより示す。図22に示す処理はCPMの生成周期ごとに実行する。ステップS301では、CPMを構成する情報を取得する。ステップS301は、たとえば、検出情報取得部201が実行する。ステップS302では、ステップS301で取得した情報をもとにCPMを生成する。ステップS302も、検出情報取得部201が実行することができる。ステップS303では、送信部221が、ステップS302で生成したCPMを、車両の周囲へ送信する。
【0242】
図23のフローチャートを用いて、実施形態2で実行する測位誤差推定関連処理の流れの一例を説明する。実施形態2では、路側機3から送信される物標情報として、路側機3から送信されるCPMを用いる。また、実施形態2では、他車両から送信される物標情報として、他車両から送信されるCAMまたはCPMを用いる。物標情報としてCPM、CAMを用いることから、図23に示すフローチャートは、図5のフローチャートにおけるステップS1、S2、S3、S8、S10に代えて、ステップS1A、S2A、S3A、S8A、S10Aを実行する。なお、ステップS4、S5、S6、S7、S9、S11、S12、S13は図5のフローチャートと図23のフローチャートで共通のため説明は省略するものとする。
【0243】
ステップS1Aでは、路車側受信部231が、路側機3から路車間通信で送信されてくるCPMを受信した場合(S1AでYES)には、ステップS2Aに移る。一方、路車側受信部231が路側機3からCPMを受信していない場合(S1AでNO)には、ステップS8Aに移る。
【0244】
ステップS2Aでは、車車側受信部222が、他車両から車車間通信で送信されてくるCAMまたはCPMを受信した場合(S2AでYES)には、ステップS3Aに移る。一方、車車間通信でCAMまたはCPMを受信していない場合(S2AでNO)には、ステップS13に移る。なお、以下では、CAMおよびCPMを総称してメッセージと記載することもある。
【0245】
ステップS3Aでは、同一判定部204が、S1Aで受信したと判断したCPMのPOCにより特定される物標と、S2Aで受信したと判断したCAMまたはCPMにより特定される物標とが同一か否かを判定する。路側機3が送信するCPMには、路側機3の緯度と経度(以下、絶対座標)、路側機3から物標までの距離と方位が含まれている。したがって、路側機3から取得したCPMにより、路側機3が検出した物標の絶対座標を決定できる。また、そのCPMには、POCに、路側機3が検出した物標についての種々の情報が含まれている。
【0246】
一方、他車両から取得するCAMあるいはCPMには、その他車両の絶対座標が含まれている。また、他車両から取得するCAMには、その他車両の種々の情報が含まれている。また、CAMよりは、送信元となる他車両の情報は少ないが、他車両から取得するCPMにも、その他車両の情報が含まれている。したがって、路側機3から取得したCPMと、他車両から取得したCAMまたはCPMとにより、路側機3が検出した物標と、CAMまたはCPMを受信した他車両が同一か否かを判断できる。
【0247】
たとえば、路側機3から取得したCPMにより特定される物標の絶対座標と、他車両から取得したCAMまたはCPMが示す他車両の絶対座標とが近似している場合に、路側機3から取得したCPMにより特定される物標と他車両が同一であると判断することができる。座標の近似は、座標間の距離が事前に設定された閾値未満であるか否かにより判断できる。なお、絶対座標に代えて、自車を基準とする相対座標を用いてもよい。
【0248】
また、路側機3から取得したCPMにより特定される物標の挙動と、他車両から取得したCAMまたはCPMが示す他車両の挙動が近似している場合に、物標と他車両が同一であると判断してもよい。また、絶対座標あるいは相対座標と挙動とを用いて同一判定を行ってもよい。
【0249】
挙動は、速度、加速度、角速度など、物体の動きを示す1つ以上の情報である。CPMには、送信元となる他車両の挙動は含まれていない。CPMから他車両の挙動を定める場合には、同一の他車両から複数回のCPMを受信し、それぞれのCPMに含まれている他車両の絶対座標の時間変化から他車両の挙動を定める。一方、CAMには他車両の挙動を示す情報が含まれているので、挙動を用いて同一判定する場合には、メッセージとしてCAMを用いることが好ましい。挙動を用いて同一判定すれば、測位誤差があっても精度よく同一判定できる。
【0250】
さらに、同一判定を行う前に絞り込みを行ってもよい。絞り込みには、たとえば、メッセージを送信した物体の種別を用いることができる。種別は、たとえば、メッセージに含まれるステーションタイプにより判断することができる。絞り込みに物体の絶対座標を用いてもよい。絶対座標により絞り込みを行う場合、同一と判定する距離差よりも大きい距離に設定した閾値半径により絞り込み範囲定める。絞り込み範囲の中心は物標あるいは他車両の座標である。この絞り込み範囲内にある物標と他車両とを対象として同一判定を行う。
【0251】
ステップS8Aの判断内容はステップS2Aと同じである。ステップS8AがYESであればステップS9に移り、ステップS8AがNOであればステップS13に移る。ステップS9でNOになるとS10Aに移る。
【0252】
ステップS10Aでは第2推定関連処理を行って、ステップS13に移る。図24のフローチャートを用いて、実施形態2における第2推定関連処理の流れの一例について説明する。図24に示すフローチャートは、図6のフローチャートにおけるステップS101、S103、S106に代えて、ステップS101A、S103A、S106を実行する。なお、ステップS102、S104、S105、S107は図6のフローチャートと図24のフローチャートで共通のため説明は省略するものとする。
【0253】
ステップS101Aでは、搭載物情報取得部である車車側受信部222が、S2A若しくはS8Aでメッセージを受信した他車両とは異なる他車両からCAMまたはCPMを受信した場合(S101AでYES)に、ステップS102に移る。CAMおよびCPMを受信していない場合(S101AでNO)には、図23のS13に移る。
【0254】
ステップS103Aは、同一判定部204が実行する。S103Aでは、S101Aで受信したと判断したCAMまたはCPMにより特定される物標と、物標位置特定部282が位置を特定した第1物標とが同一か否かを判定する。
【0255】
同一判定の一方の対象は、直前のS102で位置特定済みと判断した第1物標である。一方、同一判定の他方の対象は、第2通信機搭載物および第2物標のいずれかである。
【0256】
S101Aで受信したと判断したメッセージがCAMである場合、同一判定の他方の対象は第2通信機搭載物である。図25を用いて具体的に示すと、第2通信機搭載物は車両VEbである。S101で受信したと判断したメッセージがCPMであれば、同一判定の他方の対象は、第2通信機搭載物および第2物標の一方または両方である。第2物標は、第2通信機搭載物が検出した物標である。第2物標は、図1を用いて具体的に示す場合、物標LMaである。
【0257】
メッセージがCPMである場合は、第1物標と第2物標とが同一か否かを判定することができる。第1物標の物標情報として、第1通信機搭載物が送信するCPMに含まれているPOCを使い、第2物標の物標情報として、第2通信機搭載物が送信するCPMに含まれているPOCを使う。2つのCPMに含まれているPOCが示す物体の位置および挙動の一方または両方が近似しているか否かにより、第1物標と第2物標とが同一か否かを判定する。もちろん、さらに、物標の種別を考慮してもよい。また、位置による絞り込みを行ってもよい。
【0258】
メッセージがCAMである場合、第1物標と第2通信機搭載物とが同一か否かを判定する。第1物標の物標情報として第1通信機搭載物が送信するCPMに含まれているPOCを使い、第2物標通信機搭載物の物標情報には、第2通信機搭載物が送信するCAMを使う。これらCPMに含まれているPOCとCAMとが示す物体の位置および挙動の一方または両方が近似しているか否かにより、第1物標と第2通信機搭載物とが同一か否かを判定する。
【0259】
メッセージがCPMである場合も、第1物標と第2通信機搭載物とが同一か否かを判定することができる。第1物標の物標情報として第1通信機搭載物が送信するCPMに含まれているPOCを使う。第2物標通信機搭載物の物標情報には、第2通信機搭載物が送信するCPMの管理コンテナおよびOVCの一方または両方を使う。なお、物標の種別を考慮してもよい点、位置による絞り込みを行ってもよい点は、第1物標と第2物標とが同一か否かを判定する場合と同様である。
【0260】
S106Aでは、誤差推定部206が第2測位誤差を推定する。第2測位誤差は、S103Aで同一判定の対象とした2つの物標の位置のずれである。S103Aで同一判定の対象とした2つの物標が第1物標と第2物標であれば、2つのCPMに含まれているPOCが示す物体の位置のずれを第2測位誤差とする。S103Aで同一判定の対象とした2つの物標が第1物標と第2通信機搭載物であれば、第1通信機搭載物が送信するCPMのPOCが示す物体の位置と、第2通信機搭載物から受信したCAMに示されている第2通信機搭載物の位置とのずれを第2測位誤差とする。もちろん、第2測位誤差を推定する際には、座標系を揃えて2つの位置を比較する。
【0261】
実施形態2のようにして第2測位誤差を推定した場合も、実施形態1と同様、第2測位誤差を一旦推定した後は、第2通信機搭載物から取得する第2測位位置および第2物標の位置を、それぞれ、第2測位誤差の分だけ補正して、自車両に対する第2通信機搭載物の位置および第2物標の位置を特定できる。
【0262】
以上、説明した実施形態2では、第1通信機搭載物の測位の誤差等を推定する際に、車両ユニット2が送信するCPMおよびCAMの一方または両方と、路側機3が送信するCPMを使う。CAMやCPMを送受信するシステムを利用できるので、第1通信機搭載物などの物標の位置を精度よく特定するシステムを構築しやすい。
【0263】
(実施形態3)
実施形態1および実施形態2では、通信機搭載物が車両である場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこれに限らない。例えば、通信機搭載物が車両以外の移動体であっても構わない。車両以外の移動体としては、例えばドローン等が挙げられる。この場合、ドローンといった移動体に、車両ユニット2のうちの車両に特有の機能を除く機能を備えるユニットを搭載すればよい。
【0264】
(実施形態4)
他にも、通信機20は、自車の周辺監視センサ40で路側機3を検出できる場合に、自車の測位位置を基準とした路側機3の検出位置と、路側機3から路車間通信で取得する路側機3の絶対位置の情報とから、自車での測位の誤差を推定してもよい。自車の測位位置を基準とした路側機3の検出位置は、周辺監視ECU50で認識した自車の位置に対する路側機3の位置を、自車の測位位置の座標を用いて緯度,経度の座標に変換することで求めればよい。自車の測位位置を基準とした路側機3の検出位置は、自車の測位位置を基準とするので、自車での測位の誤差を含んでいる。よって、自車の測位位置を基準とした路側機3の検出位置と路側機3の絶対位置とのずれから、自車での測位の誤差を推定することができる。推定した自車での測位の誤差については、自車の位置を特定する際の補正に用いればよい。
【0265】
(実施形態5)
前述の実施形態では、通信機20が測位誤差を推定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、通信機20の機能のうち、車車間通信部202及び路車間通信部203以外の機能を、周辺監視ECU50が担う構成としてもよい。この場合、周辺監視ECU50は、車車間通信部202及び路車間通信部203で受信した物標情報を取得する機能ブロックを備えればよい。この機能ブロックが搭載物情報取得部及び路側機情報取得部に相当する。この場合、周辺監視ECU50が車両用装置に相当する。他にも、通信機20の機能を、通信機20と周辺監視ECU50とで担う構成としてもよい。この場合、通信機20及び周辺監視ECU50を含むユニットが車両用装置に相当する。
【0266】
(実施形態6)
前述の実施形態では、路側機基準物標位置及び第1測位位置を変換部205で自車に対する相対位置に変換した後、第1測位誤差を推定していた(S5,S6)。しかし、路側機基準物標位置及び第1測位位置の座標を絶対位置として、第1測位誤差を推定してもよい。特に、第1測位位置は絶対座標であるので、路側機3が、路側機基準物標位置に代えて、検出した物標の位置を絶対座標に変換して送信する場合、変換部205は不要である。
【0267】
(実施形態7)
実施形態では、路側機3が検出する物標の位置である路側機基準物標位置を参照位置としていた。しかし、参照位置は、路側機3が検出する物標の位置に限られない。
【0268】
たとえば、車両VEcに搭載された車両ユニット2は、路側機3が送信するCPMを受信できる。このCPMには、車両VEcの位置も含まれている。車両VEcに搭載された車両ユニット2は、CPMに含まれている車両VEcの位置により、自身の測位誤差を補正することができる。測位誤差を補正した後、一定期間は、車両ユニット2は測位誤差がほとんどない状態である考えることができる。したがって、測位誤差を補正した後、一定期間の間は、誤差を補正した車両ユニット2が検出した物標の位置を参照位置としてもよい。車両ユニット2は、自身が送信する物標の位置を参照位置として使用できるかどうかを、たとえば、メッセージに含ませるフラグにより示せばよい。
【0269】
以上の実施形態に基づくと、本開示は、以下に示す技術的特徴も把握できる。
【0270】
(技術的特徴1)
車両で用いることが可能な車両用装置であって、
周辺監視センサを有し、測位衛星の信号を用いた測位で求められるよりも位置精度の高い自機器の絶対位置の情報を有し、且つ、車両と無線通信が可能な通信機を搭載する路側機から送信される、周辺監視センサで検出した物標の、路側機の位置を基準とする位置である路側機基準物標位置を、無線通信を介して取得する路側機情報取得部(231)と、
測位衛星の信号を用いた測位が可能であり、且つ、車両と無線通信が可能な通信機を搭載する路側機以外の第1通信機搭載物から送信される、その測位によって求められたその第1通信機搭載物の位置である第1測位位置を、無線通信を介して取得する搭載物情報取得部(222)と、
路側機情報取得部で路側機基準物標位置を取得した路側機の周辺監視センサで検出した物標と、搭載物情報取得部で取得した第1測位位置の送信元の第1通信機搭載物とが同一か否かを判定する同一判定部(204)と、
搭載物情報取得部で取得した路側機基準物標位置及び搭載物情報取得部で取得した第1測位位置を車両に対する相対位置に変換する変換部(205)と、
同一判定部で物標と第1通信機搭載物とが同一と判定した場合には、それらについての、変換部で変換した路側機基準物標位置と第1測位位置とのずれから、車両の位置を基準とした第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する誤差推定部(206)とを備える車両用装置。
【0271】
(技術的特徴2)
技術的特徴1に記載の車両用装置であって、
誤差推定部で第1測位誤差を一旦推定した後は、第1通信機搭載物が路側機の周辺監視センサで検出できなくなった場合であっても、搭載物情報取得部で第1通信機搭載物から取得する第1測位位置を、その第1測位誤差の分だけ補正して、車両に対するその第1通信機搭載物の位置を特定する搭載物位置特定部(281)を備える車両用装置。
【0272】
(技術的特徴3)
技術的特徴1又は2に記載の車両用装置であって、
搭載物情報取得部は、さらに周辺監視センサも有する第1通信機搭載物から送信される、その周辺監視センサで検出した物標である第1物標の、第1測位位置を基準とする位置である第1搭載物基準物標位置も、無線通信を介して取得し、
誤差推定部で第1測位誤差を一旦推定した後は、搭載物情報取得部で第1通信機搭載物から取得する第1搭載物基準物標位置を、その第1測位誤差の分だけ補正して、車両に対する第1物標の位置を特定する物標位置特定部(282)を備える車両用装置。
【0273】
(技術的特徴4)
技術的特徴3に記載の車両用装置であって、
搭載物情報取得部は、周辺監視センサを有し、測位衛星の信号を用いた測位が可能であり、且つ、車両と無線通信が可能な通信機を搭載する路側機及び第1通信機搭載物以外の第2通信機搭載物から送信される、その測位によって求められたその第2通信機搭載物の位置である第2測位位置、及びその周辺監視センサで検出した物標である第2物標の、その測位によって求められたその第2通信機搭載物の位置を基準とする位置である第2搭載物基準物標位置も、無線通信を介して取得し、
同一判定部は、物標位置特定部で車両に対する位置を特定した第1物標と、搭載物情報取得部で取得した第2搭載物基準物標位置の送信元の第2通信機搭載物の周辺監視センサで検出した第2物標とが同一か否かを判定し、
変換部は、搭載物情報取得部で取得した第2搭載物基準物標位置を車両に対する相対位置に変換し、
誤差推定部は、同一判定部で第1物標と第2物標とが同一と判定した場合には、変換部で変換した第2搭載物基準物標位置と、物標位置特定部で特定した車両に対する第1物標の位置とのずれから、車両の位置を基準とした第2通信機搭載物での測位の誤差である第2測位誤差を推定する車両用装置。
【0274】
(技術的特徴5)
技術的特徴4に記載の車両用装置であって、
誤差推定部で第2測位誤差を一旦推定した後は、搭載物情報取得部で第2通信機搭載物から取得する第2測位位置を、その第2測位誤差の分だけ補正して、車両に対する第2通信機搭載物の位置を特定する搭載物位置特定部(281)を備える車両用装置。
【0275】
(技術的特徴6)
技術的特徴4又は5に記載の車両用装置であって、
物標位置特定部は、誤差推定部で第2測位誤差を一旦推定した後は、搭載物情報取得部で第2通信機搭載物から取得する第2搭載物基準物標位置を、その第2測位誤差の分だけ補正して、車両に対する第2物標の位置を特定する車両用装置。
【0276】
(技術的特徴7)
車両で用いることが可能な誤差推定方法であって、
少なくとも1つのプロセッサにより実行される、
周辺監視センサを有し、測位衛星の信号を用いた測位で求められるよりも位置精度の高い自機器の絶対位置の情報を有し、且つ、車両と無線通信が可能な通信機を搭載する路側機から送信される、周辺監視センサで検出した物標の、路側機の位置を基準とする位置である路側機基準物標位置を、無線通信を介して取得する路側機情報取得工程と、
測位衛星の信号を用いた測位が可能であり、且つ、車両と無線通信が可能な通信機を搭載する路側機以外の第1通信機搭載物から送信される、その測位によって求められたその第1通信機搭載物の位置である第1測位位置を、無線通信を介して取得する搭載物情報取得工程と、
路側機情報取得工程で路側機基準物標位置を取得した路側機の周辺監視センサで検出した物標と、搭載物情報取得工程で取得した第1測位位置の送信元の第1通信機搭載物とが同一か否かを判定する同一判定工程と、
搭載物情報取得工程で取得した路側機基準物標位置及び搭載物情報取得工程で取得した第1測位位置を車両に対する相対位置に変換する変換工程と、
同一判定工程で物標と第1通信機搭載物とが同一と判定した場合には、それらについての、変換工程で変換した路側機基準物標位置と第1測位位置とのずれから、車両の位置を基準とした第1通信機搭載物での測位の誤差である第1測位誤差を推定する誤差推定工程とを含む誤差推定方法。
【0277】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。また、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと1つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
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