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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】複合コイル部品及び電子回路ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20241106BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20241106BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20241106BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01F27/00 R
H01F27/29 F
H01F27/29 H
H01F17/04 A
H03H7/09 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023531770
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2022023854
(87)【国際公開番号】W WO2023276658
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2021111090
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本多 宏之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康誌
(72)【発明者】
【氏名】吉田 峰日登
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-213186(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116055(WO,A1)
【文献】特開2007-36159(JP,A)
【文献】特開2013-145940(JP,A)
【文献】特開2017-126634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00
H01F 27/29
H01F 17/04
H03H 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体の支持体と、
前記支持体に設けられた第1電極対、第2電極対、及び第3電極と、
前記支持体に巻き付けられて第1コモンモードチョークコイルとなる2つの第1コイルと、
前記支持体に巻き付けられて第2コモンモードチョークコイルとなる2つの第2コイルと、
前記支持体に巻き付けられる第3コイルと、を備え、
前記2つの第1コイルの一端は、前記第1電極対の各電極にそれぞれ接続され、
前記2つの第2コイルの一端は、前記第2電極対の各電極にそれぞれ接続され、
前記第3コイルの一端は、前記第3電極に接続され、
前記2つの第1コイルのうち一方の他端と、前記2つの第2コイルのうち一方の他端と、前記第3コイルの他端とが電気的に接続され、
前記2つの第1コイルのうち他方の他端と、前記2つの第2コイルのうち他方の他端とが電気的に接続される、
複合コイル部品。
【請求項2】
第1補助電極と、第2補助電極とをさらに備え、
前記第1補助電極において前記2つの第1コイルのうち一方の他端と、前記2つの第2コイルのうち一方の他端と、前記第3コイルの他端とが電気的に接続され、
前記第2補助電極において、前記2つの第1コイルのうち他方の他端と、前記2つの第2コイルのうち他方の他端とが電気的に接続される、
請求項1に記載の複合コイル部品。
【請求項3】
前記2つの第1コイルのうち一方の他端と、前記2つの第2コイルのうち一方の他端との間には、コンデンサが接続されている、請求項1に記載の複合コイル部品。
【請求項4】
前記支持体は、第1コア部と、第2コア部とを備え、
前記第1コイル及び前記第3コイルは、前記第1コア部に巻き付けられており、
前記第2コイルは、前記第2コア部に巻き付けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の複合コイル部品。
【請求項5】
前記支持体は、第1コア部を備え、
前記第1コイル、前記第2コイル及び前記第3コイルは、前記第1コア部に巻き付けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の複合コイル部品。
【請求項6】
差動伝送ラインに接続する電子回路ユニットであって、
集積回路と、
電源回路と、
前記集積回路に接続される第1電極対、前記差動伝送ラインに接続される第2電極対、及び前記電源回路に接続される第3電極を備える複合コイル部品と、を備え、
前記複合コイル部品は、
磁性体の支持体と、
前記支持体に支持された前記第1電極対、前記第2電極対、及び前記第3電極と、
前記支持体に巻き付けられて第1コモンモードチョークコイルとなる2つの第1コイルと、
前記支持体に巻き付けられて第2コモンモードチョークコイルとなる2つの第2コイルと、
前記支持体に巻き付けられる第3コイルと、を備え、
前記2つの第1コイルの一端は、前記第1電極対の各電極にそれぞれ接続され、
前記2つの第2コイルの一端は、前記第2電極対の各電極にそれぞれ接続され、
前記第3コイルの一端は、前記第3電極に接続され、
前記2つの第1コイルのうち一方の他端と、前記2つの第2コイルのうち一方の他端と、前記第3コイルの他端とが電気的に接続され、
前記2つの第1コイルのうち他方の他端と、前記2つの第2コイルのうち他方の他端と、が電気的に接続される、
電子回路ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合コイル部品及び電子回路ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、差動伝送ラインに差動信号と直流電流とを重畳させて伝送する回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-213186号公報
【文献】特開2019-201237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の回路では、直流電源を供給するコイルが2つある。直流電源を供給するコイルが2つであることにともなって、接続されるコモンモードチョークコイルの特性に制約がある。そこで、特許文献2のように直流電源を供給するコイルを1つにすると、このコイルに起因した不要な輻射を抑制できない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、直流電源を供給するコイルを1つにしつつ、直流電源を供給するコイルに起因した不要な輻射を抑制する複合コイル部品及び電子回路ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面の複合コイル部品は、磁性体の支持体と、前記支持体に支持された第1電極対、第2電極対、及び第3電極と、前記支持体に巻き付けられて第1コモンモードチョークコイルとなる2つの第1コイルと、前記支持体に巻き付けられて第2コモンモードチョークコイルとなる2つの第2コイルと、前記支持体に巻き付けられる第3コイルと、を備え、前記2つの第1コイルの一端は、前記第1電極対の各電極にそれぞれ接続され、前記2つの第2コイルの一端は、前記第2電極対の各電極にそれぞれ接続され、前記第3コイルの一端は、前記第3電極に接続され、前記2つの第1コイルのうち一方の他端と、前記2つの第2コイルのうち一方の他端と、前記第3コイルの他端とが電気的に接続され、前記2つの第1コイルのうち他方の他端と、前記2つの第2コイルのうち他方の他端とが電気的に接続される。
【0007】
本発明の他側面の電子回路ユニットは、差動伝送ラインに接続する電子回路ユニットであって、集積回路と、電源回路と、前記集積回路に接続される第1電極対、前記差動伝送ラインに接続される第2電極対、及び前記電源回路に接続される第3電極を備える複合コイル部品と、を備え、前記複合コイル部品は、磁性体の支持体と、前記支持体に支持された前記第1電極対、前記第2電極対、及び前記第3電極と、前記支持体に巻き付けられて第1コモンモードチョークコイルとなる2つの第1コイルと、前記支持体に巻き付けられて第2コモンモードチョークコイルとなる2つの第2コイルと、前記支持体に巻き付けられる第3コイルと、を備え、前記2つの第1コイルの一端は、前記第1電極対の各電極にそれぞれ接続され、前記2つの第2コイルの一端は、前記第2電極対の各電極にそれぞれ接続され、前記第3コイルの一端は、前記第3電極に接続され、前記2つの第1コイルのうち一方の他端と、前記2つの第2コイルのうち一方の他端と、前記第3コイルの他端とが電気的に接続され、前記2つの第1コイルのうち他方の他端と、前記2つの第2コイルのうち他方の他端と、が電気的に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コモンモードチョークコイルの特性の自由度を高め、直流電源を供給するコイルに起因した不要な輻射を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1の差動伝送ラインに接続する電子回路ユニットの等価回路図である。
図2図2は、実施形態1の複合コイル部品の構成を示す正面図である。
図3図3は、図2の底面図である。
図4図4は、図2の第1側面の側面図である。
図5図5は、図2の第2側面の側面図である。
図6図6は、実施形態1の複合コイル部品の周波数特性の例を説明するための説明図である。
図7図7は、実施形態1の複合コイル部品の周波数特性の例を説明するための説明図である。
図8図8は、実施形態2の差動伝送ラインに接続する電子回路ユニットの等価回路図である。
図9図9は、実施形態2の複合コイル部品の構成を示す正面図である。
図10図10は、図9の底面図である。
図11図11は、実施形態3の複合コイル部品の構成を示す正面図である。
図12図12は、図11の底面図である。
図13図13は、図11の第1側面の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2の実施の形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の差動伝送ラインに接続する電子回路ユニットの等価回路図である。電子回路ユニット100は、主線路60と、主線路60が接続される電子回路モジュール40とを有する。主線路60は、差動伝送ラインである。主線路60の信号線は、それぞれ、電子回路モジュール40の外部接続用端子43、44に接続される。
【0012】
電子回路モジュール40では、集積回路41と、電源回路42と、複合コイル部品20とがプリント基板上に搭載される。集積回路41は、いわゆる電子制御ユニットであり、主線路60を介して、主線路60に接続された他の機器と差動信号の送受信を行う。電子制御ユニットは、送受信の通信回路や終端回路(ターミネータ)を含む。電子制御ユニットは、集積回路41と、プリント基板上の他の電子部品とを含んでもよい。
【0013】
電源回路42は、主線路60の信号線の一方に電源電流を重畳する。主線路60の差動伝送ラインでは、差動信号と直流電流とが重畳され、差動信号と直流電流とが他の機器へ伝送される。なお、電源回路42は、集積回路41に含まれていてもよい。
【0014】
複合コイル部品20は、第1コモンモードチョークコイル31、第2コモンモードチョークコイル32及び第3コイル33を含む。第1コモンモードチョークコイル31及び第2コモンモードチョークコイル32の各々のインピーダンスは、主線路60のインピーダンスと同じとなる。第1コモンモードチョークコイル31は、2つの第1コイルを含む。2つの第1コイルの一端は、第1電極対11の各電極にそれぞれ接続される。第1電極対11の各電極は、集積回路41に接続される。
【0015】
第2コモンモードチョークコイル32は、2つの第2コイルを含む。2つの第2コイルの一端は、第2電極対12の各電極にそれぞれ接続される。第2電極対12の各電極は、それぞれ、外部接続用端子43、44に接続される。
【0016】
第3コイル33の一端は、第3電極13に接続される。第3電極13は、電源回路42に接続される。また、第3コイル33は、負荷インピーダンスの低い電源回路42へ差動信号の高周波数成分が伝達されないようにするための回路(Bias-T回路)の一部となる。
【0017】
第1補助電極14において、第1コモンモードチョークコイル31となる2つの第1コイルのうち一方の他端と、第2コモンモードチョークコイル32となる2つの第2コイルのうち一方の他端と、第3コイル33の他端とが電気的に接続される。第2補助電極15において、2つの第1コイルのうち他方の他端と、2つの第2コイルのうち他方の他端とが接続される。これにより、複合コイル部品20が備える第1補助電極14及び第2補助電極15において、第3コイル33と、第1コモンモードチョークコイル31及び第2コモンモードチョークコイル32とが接続されるため、複合コイル部品20の小型化を図ることができる。
【0018】
図2は、実施形態1の複合コイル部品の構成を示す正面図である。図3は、図2の底面図である。図4は、図2の第1側面の側面図である。図5は、図2の第2側面の側面図である。図2から図5に示すように、支持体28は、第1コア部21、第1鍔部22、第2鍔部23、第3鍔部24、天板部25及び第2コア部26を含む。第1コア部21、第1鍔部22、第2鍔部23、第3鍔部24、天板部25及び第2コア部26は、Ni-Zn系フェライト等の磁性材料で形成される。
【0019】
第1コア部21は、第1鍔部22と第2鍔部23とに挟まれている。第2コア部26は、第2鍔部23と第3鍔部24とに挟まれている。第1鍔部22、第2鍔部23、第3鍔部24は、第1コア部21及び第2コア部26の外形よりも大きい。第1コア部21、第1鍔部22、第2鍔部23、第3鍔部24及び第2コア部26は、一体成形されている。
【0020】
第1電極対11、第2電極対12、及び第3電極13、第1補助電極14及び第2補助電極15は、Au、Cu又はこれらの合金などの導電体である。第1鍔部22の底面に、第1電極対11及び第3電極13が設けられている。第2鍔部23の底面に、第1補助電極14及び第2補助電極15が設けられている。第3鍔部24の底面に、第2電極対12が設けられている。第1電極対11、第2電極対12、及び第3電極13、第1補助電極14及び第2補助電極15は、支持体28の底面の異なる位置に配置されている。ここで、支持体28の底面は、電子回路モジュール40(図1参照)のプリント基板に対向する。
【0021】
第1コア部21は、例えば四角柱、又は円柱状である。同様に、第2コア部26も、例えば四角柱、又は円柱状である。第1コア部21には、第1コモンモードチョークコイル31となる、2つの第1コイルが巻き付けられている。第1コア部21には、第1コイルに重畳するように、第3コイル33が巻き付けられている。第2コア部26には、第2コモンモードチョークコイル32となる、2つの第2コイルが巻き付けられている。第1コモンモードチョークコイル31と、第3コイル33が同じ第1コア部21に巻き付けられるので、複合コイル部品20の小型化を図ることができる。
【0022】
図3に示すように、第1コモンモードチョークコイル31となる、2つの第1コイルの一端は、第1電極対11の各電極にそれぞれ接続される。2つの第1コイルの他端は、第1補助電極14及び第2補助電極15にそれぞれ接続される。第2コモンモードチョークコイル32となる、2つの第2コイルの一端は、第2電極対12の各電極にそれぞれ接続される。2つの第2コイルの他端は、第1補助電極14及び第2補助電極15にそれぞれ接続される。第3コイル33の一端は、第3電極13に接続される。第3コイル33の他端は、第1補助電極14に接続される。
【0023】
天板部25は、支持体28の上面を覆う。天板部25は、第1鍔部22、第2鍔部23及び第3鍔部24に接しており、閉磁回路が形成される。
【0024】
図6及び図7は、実施形態1の複合コイル部品の周波数特性の例を説明するための説明図である。図6の横軸は、周波数を表し、縦軸は、Sパラメータのディファレンシャルモードからコモンモードへのモード変換透過特性(Scd21)を表している。図7の横軸は、周波数を表し、縦軸は、Sパラメータのモード変換反射特性(Scd22)を表している。図6及び図7に示す評価例において、比較例は、特許文献2に示す等価回路であり、実施例は、実施形態1の等価回路である。つまり、比較例は、実施形態1の第2コモンモードチョークコイル32がない。
【0025】
比較例では、第3コイルは、差動伝送ラインの信号線の一方のみにインダクタンスを付与するので、モード変換特性(Scd21及びScd22)の劣化が懸念される。これに対して、実施例では、第3コイル33のインダクタンス成分により、差動信号の一部がコモンモードに変換されたとしても、第2コモンモードチョークコイル32がコモンモード減衰量を大きくする。その結果、図6及び図7に示すように、第2コモンモードチョークコイル32がある実施例は、比較例に比べ、モード変換特性(Scd21及びScd22)が向上する。
【0026】
以上説明したように、実施形態1の複合コイル部品20は、磁性体の支持体28と、支持体28に設けられた第1電極対11、第2電極対12、及び第3電極13と、第1コモンモードチョークコイル31となる2つの第1コイルと、第2コモンモードチョークコイル32となる2つの第2コイルと、第3コイル33と、を備える。第1コモンモードチョークコイル31、第2コモンモードチョークコイル32及び第3コイル33は、支持体28に巻き付けられる。
【0027】
これにより、第1コモンモードチョークコイル31、第2コモンモードチョークコイル32及び第3コイル33は一体化されている。実施形態1の複合コイル部品20では、第1コモンモードチョークコイル31、第2コモンモードチョークコイル32及び第3コイル33をそれぞれ個別の部品とする場合と比べて、電子回路モジュール40のプリント基板に実装する部品点数が削減され、電子回路モジュール40のコストが低減される。
【0028】
また、Bias-T回路を構成する第3コイル33と、第1コモンモードチョークコイル31及び第2コモンモードチョークコイル32とが、共通の支持体28に巻き付けられているため、複合コイル部品20の小型化を図ることができる。
【0029】
電子回路ユニット100は、差動伝送ラインである主線路60の信号線の一方に電源電流を重畳する。差動伝送ラインである主線路60の信号線の両方にインダクタを接続する場合に比べて、差動伝送ラインである主線路60の信号線の片方にインダクタを接続するので、選定される第1コモンモードチョークコイル31のコイルの巻き線径やコア材料に制限が小さくなり、第1コモンモードチョークコイル31の特性の自由度を高めることができる。
【0030】
そして、複合コイル部品20は、モード変換特性を向上させることができるので、Bias-T回路を構成する第3コイル33に起因する不要な輻射を抑制することができる。
【0031】
(実施形態2)
図8は、実施形態2の差動伝送ラインに接続する電子回路ユニットの等価回路図である。実施形態2の電子回路ユニット100の等価回路は、コンデンサC1を備える点で実施形態1と異なる。なお、実施形態2では、実施形態1と同じ構成には、同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0032】
図8に示すように、第1コモンモードチョークコイル31の第1コイル及び第2コモンモードチョークコイル32の第2コイルの各々の間にコンデンサC1が接続される。コンデンサC1は、第3コイル33とともに、ノイズフィルタ回路(Bias-T回路)の一部となる。
【0033】
図9は、実施形態2の複合コイル部品の構成を示す正面図である。図10は、図9の底面図である。図9及び図10に示すように、複合コイル部品20は、第1コモンモードチョークコイル31、第2コモンモードチョークコイル32、第3コイル33及び2つのコンデンサC1を含む。
【0034】
図9及び図10に示すように、第1補助電極14は、電極片14Aと電極片14BとにスリットSLで分割されている。第2補助電極15は、電極片15Aと電極片15BとにスリットSLで分割されている。一方のコンデンサC1の各端子は、電極片14Aと電極片14Bとにそれぞれ電気的に接続されている。他方のコンデンサC1の各端子は、電極片15Aと電極片15Bとに電気的に接続されている。
【0035】
以上説明したように、第1コモンモードチョークコイル31の第1コイル及び第2コモンモードチョークコイル32の第2コイルの各々の間にコンデンサC1が接続されるので、実施形態1よりも、負荷インピーダンスの低い電源回路42へ差動信号の高周波数成分が伝達されにくくなる。
【0036】
実施形態2の複合コイル部品20では、第1コモンモードチョークコイル31、第2コモンモードチョークコイル32、第3コイル33及びコンデンサC1をそれぞれ個別の部品とする場合と比べて、電子回路モジュール40のプリント基板に実装する部品点数が削減され、電子回路モジュール40のコストが低減される。
【0037】
(実施形態3)
図11は、実施形態3の複合コイル部品の構成を示す正面図である。図12は、図11の底面図である。図13は、図11の第1側面の側面図である。支持体29の第2側面は、図5と同様であるので説明を省略する。実施形態3の複合コイル部品20は、第2コア部26を備えない点で実施形態1と異なる。なお、実施形態3では、実施形態1と同じ構成には、同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0038】
支持体29は、第1コア部21、第1鍔部22、第2鍔部23、第3鍔部24及び天板部25を含む。第1コア部21、第1鍔部22、第2鍔部23、第3鍔部24及び天板部25は、Ni-Zn系フェライト等の磁性材料で形成される。
【0039】
第1コア部21は、第2鍔部23と第3鍔部24とに挟まれている。第1鍔部22、第2鍔部23、第3鍔部24は、第1コア部21の外形よりも大きい。第1コア部21、第1鍔部22、第2鍔部23及び第3鍔部24は、一体成形されている。第1電極対11の各電極と第2電極対12の各電極とは、スリットSL2で分割されている。
【0040】
天板部25は、支持体28の上面を覆う。天板部25は、第1鍔部22、第2鍔部23及び第3鍔部24に接しており、閉磁回路が形成される。
【0041】
第1コア部21は、例えば四角柱、又は円柱状である。第1コア部21には、第1コモンモードチョークコイル31となる、2つの第1コイルが巻き付けられている。第1コア部21には、第2コモンモードチョークコイル32となる、2つの第2コイルが巻き付けられている。第1コア部21には、第1コイル及び第2コイルに重畳するように、第3コイル33が巻き付けられている。
【0042】
これにより、第1コモンモードチョークコイル31、第2コモンモードチョークコイル32及び第3コイル33は一体化されている。実施形態3の複合コイル部品20では、第1コモンモードチョークコイル31、第2コモンモードチョークコイル32及び第3コイル33をそれぞれ個別の部品とする場合と比べて、電子回路モジュール40のプリント基板に実装する部品点数が削減され、電子回路モジュール40のコストが低減される。
【0043】
また、Bias-T回路を構成する第3コイル33と、第1コモンモードチョークコイル31及び第2コモンモードチョークコイル32とが、共通の第1コア部21に巻き付けられているため、複合コイル部品20の小型化を図ることができる。
【0044】
なお、実施形態3の複合コイル部品20においても、実施形態2のコンデンサC1を備えてもよい。
【0045】
なお、上記した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
11 第1電極対
12 第2電極対
13 第3電極
14 第1補助電極
15 第2補助電極
20 複合コイル部品
21 第1コア部
26 第2コア部
28、29 支持体
31 第1コモンモードチョークコイル
32 第2コモンモードチョークコイル
33 第3コイル
41 集積回路
42 電源回路
60 主線路
100 電子回路ユニット
C1 コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13