(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】マイクロレンズアレーアンテナ並びにそれを備えたレーダ装置および車両
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/06 20060101AFI20241106BHJP
H01Q 19/06 20060101ALI20241106BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20241106BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01Q19/06
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2023538462
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2022028122
(87)【国際公開番号】W WO2023008268
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2021122741
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 一也
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-507254(JP,A)
【文献】特開2020-178345(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3518342(EP,A1)
【文献】特開2021-197656(JP,A)
【文献】国際公開第2021/241125(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/06
H01Q 19/06
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に基準電位パターンを備えた基板と、
前記基板の他方の面に設けられた放射電極および前記放射電極に付随して設けられるマイクロレンズから構成されるマイクロレンズアンテナとを備え、
複数の前記マイクロレンズアンテナが第1アレー方向および第2アレー方向のそれぞれに2次元アレー状に並べられて一体化されたマイクロレンズアレーアンテナであって、
前記基板の基板面に垂直な方向が前記第1アレー方向における第1基板方向の側に傾く角度をθとし、前記基板の基板面に垂直な方向が前記第1アレー方向における第2基板方向の側に傾く角度を-θとし、前記基板の基板面に垂直な方向をθ=0°としたときに、前記マイクロレンズアレーアンテナを構成するマイクロレンズ群のうちの一部の第1マイクロレンズ群を有する各前記マイクロレンズアンテナの指向性は、0°≦θとなる角度範囲の指向性を持ち、前記マイクロレンズ群のうちの他部の第2マイクロレンズ群を有する各前記マイクロレンズアンテナの指向性は、-90°≦θ<0°となる角度範囲の指向性を持つと共に、前記第2マイクロレンズ群のうちの一部の第1指向性マイクロレンズ群を有する各前記マイクロレンズアンテナは、θ≒-90°となる角度の指向性を持ち、前記第2マイクロレンズ群のうちの残りの第2指向性マイクロレンズ群を有する各前記マイクロレンズアンテナは、-90°<θ<0°となる角度範囲の指向性を持つマイクロレンズアレーアンテナ。
【請求項2】
前記第2指向性マイクロレンズ群を有するマイクロレンズアンテナのうち、送信用に用いられるマイクロレンズアンテナの指向性と受信用に用いられるマイクロレンズアンテナの指向性とが前記第2アレー方向において異なることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレーアンテナ。
【請求項3】
前記第2マイクロレンズ群を有する各前記マイクロレンズアンテナは、出射する電波が位相合成されてビームフォーミングされるフェーズドアレーアンテナを構成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロレンズアレーアンテナ。
【請求項4】
前記第2マイクロレンズ群を有する前記マイクロレンズアンテナは、エンドファイヤーアンテナと、光軸方向が前記第1アレー方向における前記第2基板方向に向けられて前記基板の側端部に設けられ、前記エンドファイヤーアンテナから出入射される電波を集束する前記マイクロレンズとから構成され、θ≒-90°となる角度の指向性を持つマイクロレンズアンテナを含むことを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレーアンテナ。
【請求項5】
前記第1マイクロレンズ群を有する前記マイクロレンズアンテナは車両周辺の移動物体を検知し、前記第2マイクロレンズ群を有する前記マイクロレンズアンテナは路面状態を検知することを特徴とする請求項1
または請求項2または請求項4に記載のマイクロレンズアレーアンテナ。
【請求項6】
前記第1マイクロレンズ群を有する前記マイクロレンズアンテナは前記基板の前記第1アレー方向における前記第1基板方向側に設けられ、前記第2マイクロレンズ群を有する前記マイクロレンズアンテナは前記基板の前記第1アレー方向における前記第2基板側に設けられることを特徴とする請求項5に記載のマイクロレンズアレーアンテナ。
【請求項7】
請求項1
または請求項2または請求項4に記載のマイクロレンズアレーアンテナを備えるレーダ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーダ装置を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のマイクロレンズアンテナがアレー状に並べられるマイクロレンズアレーアンテナ、並びに、それを備えたレーダ装置および車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、路面等の状態を検知する車載用レーダ装置として、例えば、特許文献1に開示された車載計測装置がある。
【0003】
この車載計測装置では、路面に対して垂直に信号を送波する送受波器TR1が、路面に対して所定の角度θを持って信号を送波する送受波器TR2と共に、車両の底部に設けられる。送受波器TR1による第1送信信号の送波から第1反射波の受波までの時間を利用することにより、送受波器TR2による第2送信信号の第2反射波の受波タイミングが推定される。そして、推定された受波タイミングにて送受波器TR2に受波された成分が第2反射波として取り出され、計測の用に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された上記従来の車載用レーダ装置は、指向性を異ならせた独立したレーダを路面に水平に2つ以上設置する必要がある。そのため、車両の底部に各レーダを実装する必要があり、レーダ装置の実装スペースに制約が生じる。さらに、2つ以上のレーダの各アンテナから幅の狭いビームを出射する必要があるため、大きな開放面積がレーダ装置の設置に必要とされて、レーダ装置の小型化が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
一方の面に基準電位パターンを備えた基板と、
基板の他方の面に設けられた放射電極および放射電極に付随して設けられるマイクロレンズから構成されるマイクロレンズアンテナとを備え、
複数のマイクロレンズアンテナが第1アレー方向および第2アレー方向のそれぞれに2次元アレー状に並べられて一体化されたマイクロレンズアレーアンテナであって、
基板の基板面に垂直な方向が第1アレー方向における第1基板方向の側に傾く角度をθとし、基板の基板面に垂直な方向が第1アレー方向における第2基板方向の側に傾く角度を-θとし、基板の基板面に垂直な方向をθ=0°としたときに、マイクロレンズアレーアンテナを構成するマイクロレンズ群のうちの一部の第1マイクロレンズ群を有する各マイクロレンズアンテナの指向性は、0°≦θとなる角度範囲の指向性を持ち、マイクロレンズ群のうちの他部の第2マイクロレンズ群を有する各マイクロレンズアンテナの指向性は、-90°≦θ<0°となる角度範囲の指向性を持つと共に、第2マイクロレンズ群のうちの一部の第1指向性マイクロレンズ群を有する各マイクロレンズアンテナは、θ≒-90°となる角度の指向性を持ち、第2マイクロレンズ群のうちの残りの第2指向性マイクロレンズ群を有する各マイクロレンズアンテナは、-90°<θ<0°となる角度範囲の指向性を持つマイクロレンズアレーアンテナを構成した。
【0007】
マイクロレンズアレーアンテナは、小型で幅の狭いビームの形成が可能で、また、複数のマイクロレンズを用いることで薄型化が可能である。また、開口効率を高く設計することが可能である。したがって、本構成の、複数のマイクロレンズアンテナがアレー状に並べられて一体化されたマイクロレンズアレーアンテナによれば、路面に交差しない方向や路面に交差する方向といった車両の仰俯角方向に幅の狭い複数のビームを形成した場合でも、マイクロレンズアレーアンテナのサイズを大きくすることなく、仰俯角方向にビームの指向性を制御することができる。
【0008】
このため、本構成のマイクロレンズアレーアンテナを備えてレーダ装置を構成することで、実装スペースに制約が生じることのない、小型化されたレーダ装置およびそれを備える車両を提供することができる。また、路面に交差しない方向の指向性を持つマイクロレンズアンテナによる車両の周辺における移動物体の検知と、路面に交差する方向の指向性を持つマイクロレンズアンテナによる路面状態の検知とが、実装スペースに制約を生じない小型の1つのレーダ装置で行えるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、実装スペースに制約が生じることのない、小型化されたレーダ装置を構成させることができるマイクロレンズアレーアンテナ、並びにそれを備えるレーダ装置および車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ並びにそれを備えるレーダ装置および車両を説明する図である。
【
図2】第1の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナにおいて、路面に垂直な方向にビームを送信する場合を説明する図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナを説明する図である。
【
図4】第2の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナを備えるレーダ装置を搭載した車両の側面図および平面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナを説明する第1の図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナを説明する第2の図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナおよびそれを備えるレーダ装置を説明する図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ並びにそれを備えるレーダ装置および車両を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明のマイクロレンズアレーアンテナ並びにそれを備えたレーダ装置および車両を実施するための形態について、説明する。
【0012】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Aの側面図、
図1(b)は正面図である。
【0013】
マイクロレンズアレーアンテナ1Aは、基板2上に形成された複数のマイクロレンズアンテナ3が第1アレー方向D1および第2アレー方向D2のそれぞれに2次元アレー状に並べられて、一体化されて構成されている。各マイクロレンズアンテナ3は、基板2上に銅箔がパターニングされて形成された平面アンテナ(放射電極)であるパッチアンテナ4と、マイクロレンズである誘電体レンズ5とから構成される。基板2の裏面には、各パッチアンテナ4に基準電位を与えるグランドパターン6が基準電位パターンとして形成されている。各誘電体レンズ5は、マイクロレンズアンテナ3を構成するパッチアンテナ4の上方に設けられ、各パッチアンテナ4はその上方に設けられた誘電体レンズ5の焦点位置に位置する。ここでいう上方とは、各パッチアンテナ4が基板2に対して垂直に電波を放射する方向をいう。各誘電体レンズ5は、パッチアンテナ4と反対側が紡錘形に膨出した形状をしており、パッチアンテナ4から放射される電波を集光させる目的で設けられる。
【0014】
図1(c)は、車載用マイクロレンズアレーアンテナ1Aを備えるレーダ装置7Aを車両8の前方に搭載して路面9上を走行する車両8の一部側面図である。レーダ装置7Aにおけるマイクロレンズアレーアンテナ1Aは、マイクロレンズアンテナ3が実装された基板2の表面が車両8の進行方向の前方に向けられ、グランドパターン6が形成された基板2の裏面が車両8の後方に向けられて、車両8の前方のエンブレムの裏側等に設置される。各マイクロレンズアンテナ3は、車両8の仰俯角(エレベーション)θ方向に相当する第1アレー方向D1および方位角(アジマス)φ方向に相当する第2アレー方向D2のそれぞれに、同図(b)に示すように、一定間隔をあけて2次元にアレー状に並んで、1つの基板2に設けられている。仰俯角θ方向は、同図(a)に示すように、基板2の基板面に垂直な方向D0が第1アレー方向D1における第1基板方向D1aの側に傾く角度が+θ、基板2の基板面に垂直な方向D0が第1アレー方向D1における第2基板方向D1bの側に傾く角度が-θ、基板2の基板面に垂直な方向D0がθ=0°として表される。
【0015】
マイクロレンズアレーアンテナ1Aを構成するマイクロレンズ群のうちの一部の第1マイクロレンズ群5aの誘電体レンズ5を有する各マイクロレンズアンテナ3は、仰俯角θ方向における指向性が0°≦θの角度範囲にある。つまり、路面9に交差しない方向の指向性を持つ。この指向性は0°≦θ≦30°の角度範囲にあるのが好ましく、θ≒0°の角度を持つのがさらに好ましい。また、マイクロレンズ群のうちの他部の第2マイクロレンズ群5bの誘電体レンズ5を有する各マイクロレンズアンテナ3は、仰俯角θ方向における指向性が、-90°≦θ<0の角度範囲にある。つまり、路面9に交差する方向の指向性を持つ。
【0016】
路面9に交差しない方向の指向性(0°≦θの角度範囲の指向性)を持つ、第1マイクロレンズ群5aの誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3は、基板2の第1アレー方向D1における第1基板方向D1aの側、本実施形態では基板2の最上段に設けられる。路面9に交差する方向の指向性(-90°≦θ<0の角度範囲の指向性)を持つ、第2マイクロレンズ群5bの誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3は、基板2の第1アレー方向D1における第2基板方向D1bの側に設けられる。したがって、第1マイクロレンズ群5aの誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3は、レーダ装置7Aが車両8に取り付けられたときに、第2マイクロレンズ群5bの誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3よりも車両8の高い位置に位置させられる。
【0017】
マイクロレンズアレーアンテナ1Aのようなマイクロレンズアレーアンテナは、一般的に、小型で幅の狭いビームの形成が可能である。第2アレー方向D2にパッチアンテナ4を近接させて配置したい場合には、
図1(d)の平面図に示すように、誘電体レンズ5の焦点cからオフセットした位置にパッチアンテナ4,4を形成することなどにより、車両8の方位角φ方向である第2アレー方向D2の角度制御範囲をセンシング対象に向けるようにビームを傾けることができる。また、マイクロレンズアレーアンテナ1Aは、複数の誘電体レンズ5を用いることで薄型化が可能である。また、誘電体レンズアンテナは開口面分布を制御することで、開口効率を高く設計することも可能である。したがって、本実施形態の、複数のマイクロレンズアンテナ3がアレー状に並べられて一体化されたマイクロレンズアレーアンテナ1Aによれば、路面9に交差しない方向や路面9に交差する方向といった車両8の仰俯角θ方向に幅の狭い複数のビームB1,B2,B3,B4を形成した場合でも、車載用マイクロレンズアレーアンテナ1Aのサイズを大きくすることなく、方位角φ方向および仰俯角θ方向にビームBの指向性を制御することができる。
【0018】
このため、本実施形態のマイクロレンズアレーアンテナ1Aを備えてレーダ装置7Aを構成することで、実装スペースに制約が生じることのない、小型化されたレーダ装置7Aおよびそれを備える車両8を提供することができる。また、路面9に交差しない方向の指向性(0°≦θの角度範囲の指向性)を持つ、第1マイクロレンズ群5aの誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3による車両8の周辺における移動物体(他の車両や、人、自転車など)の検知と、路面9に交差する方向の指向性(-90°≦θ<0の角度範囲の指向性)を持つ、第2マイクロレンズ群5bの誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3による路面9の状態の検知とが、実装スペースに制約を生じない小型の1つのレーダ装置7Aで行えるようになる。
【0019】
このように第1マイクロレンズ群5aの誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3が車両8の周辺の移動物体検知に用いられ、第2マイクロレンズ群5bの誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3が路面状態検知に用いられることで、車両8の周辺の移動物体検知に用いられる先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)用の長距離検知レーダ(LRR:Long Range Rador)や中距離検知レーダ(MRR:Middle Range Rador)と、路面9の状態検知用レーダとを1つのマイクロレンズアレーアンテナ1Aを用いて構成することが可能になる。
【0020】
また、上記の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Aにおいて、第2マイクロレンズ群5bの誘電体レンズ5のうちの、基板2において第1アレー方向D1における第2基板方向D1bの側にある最下段の一部の第1指向性マイクロレンズ群5b1を有するマイクロレンズアンテナ3は、
図2(c)に示すように路面9に垂直な仰俯角θEL0の方向に指向性を持ち、第2マイクロレンズ群5bの誘電体レンズ5のうちの残りの第2指向性マイクロレンズ群5b2を有するマイクロレンズアンテナ3は、
図1(c)および
図2(c)に示すように、路面9に垂直な仰俯角θEL0の方向と交差する仰俯角θEL1の方向に指向性を持つように構成してもよい。なお、
図2において
図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。すなわち、第1指向性マイクロレンズ群5b1を有するマイクロレンズアンテナ3は、
図2に示すビームB5のように、第1アレー方向D1において第2基板方向D1bの側に向かう方向(θ≒-90°)に指向性を持つように構成してもよい。また、第2指向性マイクロレンズ群5b2を有する各マイクロレンズアンテナ3は、基板2の基板面に垂直な方向D0から第1アレー方向D1において第2基板方向D1bの側に向かう方向までの、基板2の基板面に垂直な方向D0、および、第1アレー方向D1において第2基板方向D1bの側に向かう方向を除く方向(-90°<θ<0)に指向性を持つように構成してもよい。
【0021】
本構成によれば、路面9に垂直な仰俯角θEL0の方向における車両8の真下の路面9の状態と、路面9に垂直な仰俯角θEL0の方向と交差する方向であって、路面に交差する仰俯角θEL1の方向における、車両8の斜め前方の路面9の状態とを検知することが可能になる。このため、車両8の真下と共に、車両8の進行方向における先の路面9の状態を事前に把握することが可能な路面状態検知、および、車両8の周辺における移動物体の検知を行わせることができるマイクロレンズアレーアンテナ1Aを提供することができる。
【0022】
図3(a)は、本発明の第2の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Bの側面図、
図2(b)は正面図である。同図において
図1(a)および(b)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0023】
第2の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Bは、第2指向性マイクロレンズ群5b2の誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3のうち、送信用Txに用いられるマイクロレンズアンテナ3の指向性と、受信用Rxに用いられるマイクロレンズアンテナ3の指向性とが、第2アレー方向D2において異なる点が、第1の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Aと相違する。例えば、基板2において、第2指向性マイクロレンズ群5b2の誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3は、送信用Txに用いられる
図3(b)で右側2列のマイクロレンズアンテナ3Txの指向性と、受信用Rxに用いられる
図3(b)で左側2列のマイクロレンズアンテナ3Rxの指向性とが、第2アレー方向D2において異なる。
【0024】
図4(a)は、第2の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Bを備えるレーダ装置7Bを車両8の前方に搭載して路面9上を走行する車両8の側面図、
図4(b)はその車両8の平面図である。同図において
図1および
図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0025】
第2の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Bによれば、上記のように、第2アレー方向D2に並ぶ路面状態検知用の、第2指向性マイクロレンズ群5b2の誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3のうち、送信用Txのマイクロレンズアンテナ3Txと受信用Rxのマイクロレンズアンテナ3Rxとの路面9に平行な方位角φ方向における各指向性が異なっている。したがって、これらの送信用マイクロレンズアンテナ3Txと受信用マイクロレンズアンテナ3Rxとを組み合わせてレーダ装置7Bに備えることで、バイスタティックレーダが構成される。よって、
図3(b)に示すように、その送信用マイクロレンズアンテナ3Txから、路面9に平行な方向においてある角度φaz1傾けて出射されたビームB3は、その角度φaz1と異なる方向の角度φaz2に指向性を持つ受信用マイクロレンズアンテナ3Rxに受信されるようになる。
【0026】
このため、
図4(a)に示すように、マイクロレンズアレーアンテナ1Bから仰俯角θ方向に浅い角度θαで路面9に入射され、従来、その反射波を受信することが困難であったビームB3であっても、本願のバイスタティックレーダを構成する部分のマイクロレンズアレーアンテナ1Bにおいて、その反射波を受信することが可能になる。その結果、従来、判別が難しかった路面9の状態、例えば、乾いた路面9と氷が張った路面9等の区別が行えるようになり、レーダ装置7Bによる路面状態検知の識別精度が向上する。
【0027】
図5および
図6は、本発明の第3の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Eの正面図を、その受信部で行われる、アレー開口長を仮想的に増加する信号処理結果と共に示す図である。同図において
図1(a)および
図1(b)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。信号処理結果、拡張されるアンテナ配置が同図のマス目に示される。マス目は、車両8の前方に
図1(c)に示すように取り付けられた、マイクロレンズアレーアンテナ1Eを備えるレーダ装置を車両8の正面から見た際における2次元位置を示す。マス目の間隔は任意に設定され、同図の左右方向に相当する方位角(アジマス)φ方向におけるマス目の間隔は、例えば、マイクロレンズアンテナ3から送信される送信波の波長λの半分に設定される。
【0028】
第3の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Eは、第1マイクロレンズ群5aおよび第2マイクロレンズ群5bを構成する各マイクロレンズアンテナ3が、MIMO(Multiple Input Multiple Output)配置となるように構成されている点、および、方位角φ方向に並ぶ各マイクロレンズアンテナ3の指向性が異なる点が、第1の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Aと相違する。つまり、第3の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Eは、方位角φ方向に並ぶ各マイクロレンズアンテナ3の指向性が広角である。
【0029】
各マイクロレンズアンテナ3に、その列方向位置と行方向位置に応じて
図5および
図6に示すように添え字を付す。この場合、方位角φ方向に並ぶ各マイクロレンズアンテナ31-1,32-1,33-1,34-1の指向性が異なる。同様に、方位角φ方向に並ぶ各マイクロレンズアンテナ31-2,32-2,33-2,34-2、方位角φ方向に並ぶ各マイクロレンズアンテナ31-3,32-3,33-3,34-3、方位角φ方向に並ぶ各マイクロレンズアンテナ31-4,32-4,33-4,34-4の、各指向性が異なる。
【0030】
また、
図5および
図6において、枠線Aに囲まれる四角印および丸印は、方位角φ方向に並ぶいずれかの行の各マイクロレンズアンテナ3の実際のアンテナ配置位置を示す。また、枠線Bに囲まれる三角印および×印は、枠線Aに囲まれるマイクロレンズアンテナ3について、マイクロレンズアレーアンテナ1Eの図示しない受信部で行われるKhatri-Rao(KR)積拡張アレー処理の信号処理結果により得られる、仮想のアンテナ配置位置を示す。三角印の位置にあるアンテナは、その上方に丸印で示される実際のアンテナ位置に対応し、×印の位置にあるアンテナは、拡張アレー処理によって増えた仮想のアンテナに相当する。この拡張アレー処理によって受信アンテナ数は4系統に増え、方位角φ方向における受信信号の到来角度分解能が向上する。
【0031】
図5と
図6とでは、マイクロレンズアンテナ32-1,32-2,32-3,32-4の列と、マイクロレンズアンテナ33-1,33-2,33-3,33-4の列との間の距離が相違する。
図6ではこの距離が大きくとられ、その分、拡張されるアンテナが方位角φ方向に広がって分布する。
【0032】
マイクロレンズアンテナ3をこのようなMIMO配置にすることで、方位角φ方向における受信信号の到来角度推定が可能となり、車両8の前方における物体の方位角φ方向の位置などを検知することが可能となる。MIMO配置したこのようなマイクロレンズアレーアンテナ1Eにおいても、
図5および
図6の上下方向に相当する仰俯角θ方向の各マイクロレンズアンテナ3の配置が同じであるため、方位角φ方向の指向性偏差が少ない。そのため、方位角φ方向の角度検出誤差が小さくなり、ADAS用の短距離検知レーダ(SRR:Short Range Rador)と、路面9の状態検知用レーダとを1つのマイクロレンズアレーアンテナ1Eを用いて構成することが可能になる。すなわち、第3の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Eによれば、仰俯角θ方向のビーム制御と、方位角φ方向の到来角度推定が可能になる。
【0033】
上記の第3の実施形態では、第1の実施形態の構成のマイクロレンズアレーアンテナ1Aを、
図5および
図6に示すMIMO配置にした場合について、説明した。しかし、第2の実施形態の構成のマイクロレンズアレーアンテナ1Bを、
図5および
図6に示すようなMIMO配置にするように構成してもよい。
【0034】
つまり、
図5および
図6に示すマイクロレンズアレーアンテナ1Eでは、第2指向性マイクロレンズ群5b2を有する各マイクロレンズアンテナ3が、送信用Txと受信用Rxとで同じ指向性を持っていた。しかし、第2の実施形態の構成のマイクロレンズアレーアンテナ1Bのように、マイクロレンズアレーアンテナ1Eにおいて、第2指向性マイクロレンズ群5b2を有するマイクロレンズアンテナ3のうち、送信用Txに用いられるマイクロレンズアンテナ31-2,31-3,32-2,32-3の指向性と、受信用Rxに用いられるマイクロレンズアンテナ33-2,33-3,34-2,34-3の指向性とを、方位角φ方向において異ならせるように構成してもよい。
【0035】
このような構成にすることでも、第3の実施形態と同様に、仰俯角θ方向のビーム制御と、方位角φ方向の角度検出誤差が小さい到来角度推定が可能なマイクロレンズアレーアンテナを提供することができる。
【0036】
図7(a)は、本発明の第4の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Cの側面図、
図7(b)は正面図である。
図7(c)は、第4の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Cを備えるレーダ装置7Cのブロック構成図である。同図において
図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0037】
第4の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Cにおける路面状態検知部は、第2マイクロレンズ群5bの誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3がフェーズドアレーアンテナを構成する点において、
図1に示す第1の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Aと相違する。第2マイクロレンズ群5bの誘電体レンズ5を有するマイクロレンズアンテナ3のうち、
図7(b)で右側2列のマイクロレンズアンテナ3Tx1,3Tx2,…,3Tx6が送信用Txに用いられ、
図7(b)で左側2列のマイクロレンズアンテナ3Rx1,3Rx2,…,3Rx6が受信用Rxに用いられ、送信用Txの各マイクロレンズアンテナ3Tx1,3Tx2,…,3Tx6の出射する電波が位相合成されて、ビームフォーミングされる。
【0038】
レーダ装置7Cにおける路面状態検知部は、マイクロレンズアレーアンテナ1Cを構成する送信用マイクロレンズアンテナ3Tx1,3Tx2,…,3Tx6および受信用マイクロレンズアンテナ3Rx1,3Rx2,…,3Rx6と、送信用マイクロレンズアンテナ3Txによって送信信号を電波として出射する送信回路11と、送信回路11で生成された送信信号の位相を制御する移相器12と、物体で反射した電波を受信用マイクロレンズアンテナ3Rxに受信して受信信号に変換する受信回路13と、受信信号を処理する信号処理回路14とを備えて構成される。送信用マイクロレンズアンテナ3Tx1,3Tx2,…,3Tx6は、移相器12の位相制御により、出射する電波が位相合成されてビームフォーミングされる。
【0039】
第4の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Cによれば、レーダ装置7Cに備えられてレーダ装置7Cが
図1(c)に示すように車両8に搭載されたとき、各送信用マイクロレンズアンテナ3Tx1,3Tx2,…,3Tx6から放射されてビームフォーミングされるビームは、車両8の真下から前方の路面9を同時に広く照射するようになる。したがって、各送信用マイクロレンズアンテナ3Tx1,3Tx2,…,3Tx6から放射されるビームが仰俯角θ方向において出射が切り換えられる場合と異なり、路面9への各ビームの角度θα(入射角)(
図4(a)参照)とその反射波とをマイクロレンズアレーアンテナ1Cを用いて測定することで、路面9からの反射波の入射角度依存性が、車両8の真下から前方に至る広い路面9について検知される広範なものとなる。このため、その入射角度依存性を種々の路面9の状態について測定して記憶しておき、新たに測定した、路面9からの反射波の入射角度依存性と比較することで、路面9の状態の識別精度が向上する。
【0040】
なお、この第4の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Cにおいても、上記の第2の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Bと同様に、送信用Txに用いられるマイクロレンズアンテナ3Tx1,3Tx2,…,3Tx6の指向性と、受信用Rxに用いられるマイクロレンズアンテナ3Rx1,3Rx2,…,3Rx6の指向性とが、路面9に平行な方位角φ方向において異なるように構成してもよい。この場合、第2の実施形態と同様に、仰俯角θ方向に浅い角度θαで路面9にビームB3が照射されて、判別が難しかった路面9の状態の区別が行えるようになると共に、この第4の実施形態と同様に、路面9からの反射波の入射角度依存性を検知することにより、路面9の状態の識別精度が向上する。
【0041】
また、この第4の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Cにおいても、第3の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Eと同様に、第1マイクロレンズ群5aおよび第2マイクロレンズ群5bを構成する各マイクロレンズアンテナ3をMIMO配置とし、方位角φ方向に並ぶ各マイクロレンズアンテナ3の指向性を異ならせるようにしてもよい。このような構成によれば、上記の第4の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Cと同様な作用効果が奏されると共に、仰俯角θ方向のビーム制御と、方位角φ方向の角度検出誤差が小さい到来角度推定が可能なマイクロレンズアレーアンテナを提供することができる。
【0042】
図8(a)は、本発明の第5の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Dの側面図、
図8(b)は正面図である。
図8(c)は、第5の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Dを備えるレーダ装置7Dを前方に搭載した車両8の一部側面図である。同図において
図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0043】
第5の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Dは、第2マイクロレンズ群5bを有するマイクロレンズアンテナ3が、放電電極を構成するエンドファイヤーアンテナ10と、光軸方向が第1アレー方向D1における第2基板方向D1bに向けられて基板2の側端部に設けられた誘電体レンズ5とから構成され、θ≒-90°となる角度の指向性を持つ点において、
図1に示す第1の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Aと相違する。各エンドファイヤーアンテナ10は、θ≒-90°となる角度に電波wを出入射する。
【0044】
本実施形態では、各エンドファイヤーアンテナ10は、180°位相の異なる電源が給電される、マイクロストリップ線路で構成された1/4波長平面型バラン10aに導波路10bが組み合わされて、基板2上に形成されたプリントダイポールアンテナから構成される。
【0045】
第5の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Dによれば、エンドファイヤーアンテナ10から基板2の基板面に水平な方向に出入射される電波wは、基板2の路面側端部に設けられる誘電体レンズ5によって車両8の真下へ集光され、車両8の真下に向かう指向性を持った強いビームB5が路面9に照射される。したがって、そのビームB5が路面9で反射して得られる反射波の強度が大きくなるので、車両8の真下の路面9の状態の検知精度が向上する。
【0046】
なお、第5の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Dにおいて、第1の実施形態によるマイクロレンズアレーアンテナ1Aのように、第2マイクロレンズ群5bの誘電体レンズ5に、路面9に垂直な仰俯角θEL0の方向と交差する仰俯角θEL1の方向に指向性を持つものを含むように構成してもよい。本構成によれば、車両8の真下の路面9の状態の検知精度が向上すると共に、路面に交差する仰俯角θEL1の方向における、車両8の斜め前方の路面9の状態を検知することが可能になる。
【符号の説明】
【0047】
1A,1B,1C,1D,1E…マイクロレンズアレーアンテナ
2…基板
3…マイクロレンズアンテナ
4…パッチアンテナ
5…誘電体レンズ(マイクロレンズ)
5a…第1マイクロレンズ群
5b…第2マイクロレンズ群
5b1…第1指向性マイクロレンズ群
5b2…第2指向性マイクロレンズ群
6…グランドパターン(基準電位パターン)
7A,7B,7C,7D…レーダ装置
8…車両
9…路面
10…エンドファイヤーアンテナ