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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/04 20060101AFI20241106BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20241106BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01C7/04
H01G4/30 511
H01G4/30 513
H01G4/30 514
H01G4/30 516
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01F27/29 123
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023559440
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2022032713
(87)【国際公開番号】W WO2023084879
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2021182605
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】大島 知也
(72)【発明者】
【氏名】星野 悠太
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕市
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美希
(72)【発明者】
【氏名】中野 充
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-204565(JP,A)
【文献】特開2002-170736(JP,A)
【文献】特開2013-197586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0105478(US,A1)
【文献】特開2022-085818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/04
H01G 4/30
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体の内部に位置している配線と、
前記素体の外表面を覆うガラス膜と、
前記配線と電気的に接続しているとともに、前記ガラス膜を部分的に覆う下地電極と、
前記下地電極を覆う金属層と、を備え、
前記ガラス膜のうち、前記下地電極に覆われていなく且つ前記下地電極の外縁から10μmより大きく離れている箇所を非被覆箇所、前記下地電極に覆われていなく且つ前記下地電極の外縁から10μmより大きく離れていない箇所を境界箇所としたとき、
前記境界箇所の厚さは、前記非被覆箇所の厚さよりも大きくなっている
電子部品。
【請求項2】
前記ガラス膜のうち、前記下地電極に覆われている箇所を被覆箇所としたとき、
前記被覆箇所の厚さは、前記境界箇所の厚さよりも小さくなっている
請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記非被覆箇所の厚さは、30nm以上であり、
前記境界箇所の厚さは、1000nm以下である
請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記下地電極は、ガラスを含む
請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記下地電極は、銀を含む焼結体である
請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記外表面は、前記ガラス膜又は前記下地電極によって、すべて覆われている
請求項1に記載の電子部品。
【請求項7】
前記ガラス膜のうち、前記下地電極に覆われている箇所を被覆箇所としたとき、
前記ガラス膜は、前記下地電極の金属成分を含まないピュアガラス層を有しており、
前記ピュアガラス層は、前記被覆箇所における前記外表面上に積層している
請求項1に記載の電子部品。
【請求項8】
前記ピュアガラス層は、二酸化ケイ素のみからなっている
請求項7に記載の電子部品。
【請求項9】
前記ガラス膜のうち、前記被覆箇所の最小厚さは、10nm以上である
請求項7又は請求項8に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された電子部品は、素体と、内部電極と、ガラス膜と、外部電極と、を備えている。内部電極は、素体の内部に位置している。ガラス膜は、素体の外表面を覆っている。外部電極は、ガラス膜を部分的に覆っている。また、外部電極は、内部電極と電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-311676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電子部品において、水分及びガスが、外部電極の縁から、外部電極とガラス膜との境界に入り込むことがある。水分等が、一旦外部電極とガラス膜との境界にまで至ってしまうと、その水分等を大気中に逃がすことは難しく、外部電極とガラス膜との境界面に水分等が長時間留まることになる。ガラス膜は水分等を通さない素材ではあるものの、長時間水分等に曝されれば、水分等が素体へと至ることを防止することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、素体と、前記素体の内部に位置している配線と、前記素体の外表面を覆うガラス膜と、前記配線と電気的に接続しているとともに、前記ガラス膜を部分的に覆う下地電極と、前記下地電極を覆う金属層と、を備え、前記ガラス膜のうち、前記下地電極に覆われていなく且つ前記下地電極の外縁から10μmより大きく離れている箇所を非被覆箇所、前記下地電極に覆われていなく且つ前記下地電極の外縁から10μmより大きく離れていない箇所を境界箇所としたとき、前記境界箇所の厚さは、前記非被覆箇所の厚さよりも大きくなっている電子部品である。
【0006】
上記構成において、金属層の縁の位置を下地電極の縁の位置と完全に一致することは難しい。したがって、ガラス膜のうちの境界箇所は、下地電極からはみ出した金属層に覆われている可能性が高い。上記構成によれば、境界箇所において、ガラス膜と金属層との境界に水分等が至っても、境界箇所の厚さが大きい分、水分等が境界箇所を透過して素体へと至ることを抑制できる。なお、ガラス膜のうち非被覆箇所は、長時間にわたって水分に曝され続けるとは考えにくい。そのため、非被覆箇所のガラス膜の厚さが比較的に小さくとも、素体に水分等が至ることを充分に防げる。
【発明の効果】
【0007】
水分等が素体へと至ることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子部品の斜視図である。
図2】電子部品の側面図である。
図3図2の3-3線に沿う断面図である。
図4】被覆箇所の拡大断面図である。
図5】非被覆箇所の拡大断面図である。
図6】境界箇所の拡大断面図である。
図7】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図8】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図9】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図10】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図11】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図12】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図13】変更例の電子部品の被覆箇所の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<電子部品の一実施形態>
以下、電子部品の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。
【0010】
(全体構成について)
図1に示すように、電子部品10は、例えば、回路基板等に実装される表面実装型の負特性サーミスタ部品である。なお、負特性サーミスタ部品は、温度が上がると抵抗値が下がるという特性を有するものである。
【0011】
電子部品10は、素体20を備えている。素体20は、略四角柱状であり、中心軸線CAを有する。なお、以下では、中心軸線CAに沿って延びる軸を第1軸Xとする。また、第1軸Xに直交する軸の1つを第2軸Yとする。そして、第1軸X及び第2軸Yに直交する軸を第3軸Zとする。加えて、第1軸Xに沿う方向の一方を第1正方向X1とし、第1軸Xに沿う方向のうち第1正方向X1と反対方向を第1負方向X2とする。また、第2軸Yに沿う方向の一方を第2正方向Y1とし、第2軸Yに沿う方向のうち第2正方向Y1と反対方向を第2負方向Y2とする。さらに、第3軸Zに沿う方向の一方を第3正方向Z1とし、第3軸Zに沿う方向のうち第3正方向Z1と反対方向を第3負方向Z2とする。
【0012】
素体20の外表面21は、6個の平面状の平面22を有している。なお、ここでいう素体20の「面」とは、素体20全体を観察したときに面として観察できるものをいう。つまり、例えば素体20の一部を顕微鏡等で拡大して観察しなければわからないような微小な凹凸、段差が存在しても、平面又は曲面と表現する。6個の平面22は、互いに異なる向きに広がっている。6個の平面22は、第1正方向X1を向く第1端面22Aと、第1負方向X2を向く第2端面22Bと、4つの側面22Cに大別される。4つの側面22Cは、それぞれ、第3正方向Z1を向く面と、第3負方向Z2を向く面と、第2正方向Y1を向く面と、第2負方向Y2を向く面と、である。
【0013】
素体20の外表面21は、12個の境界面23を有している。境界面23は、隣り合う平面22同士の境界に存在する曲面を含んでいる。すなわち、境界面23は、例えば、隣り合う平面22を形成される角をR面取り加工することで形成される曲面を含んでいる。
【0014】
また、素体20の外表面21は、8個の球面状のコーナ面24を有している。コーナ面24は、隣り合う3つの平面22同士の境界部分である。換言すれば、コーナ面24は、3つの境界面23が交わる箇所の曲面を含んでいる。すなわち、コーナ面24は、例えば、隣り合う3つの平面22によって形成される角をR面取り加工することによって形成された曲面を含んでいる。なお、図1及び図2では、後述するガラス膜50の表面を素体20の外表面21と同一視して符号を付している。
【0015】
図2に示すように、素体20は、第1軸Xに沿う方向の寸法が、第3軸Zに沿う方向の寸法よりも大きい。また、図1に示すように、素体20は、第1軸Xに沿う方向の寸法が、第2軸Yに沿う方向の寸法よりも大きい。また、素体20の材質は、半導体である。具体的には、素体20の材質は、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、Ba、Al、及びZnの少なくとも1つを成分とする金属酸化物を焼成したセラミックスである。
【0016】
図3に示すように、電子部品10は、配線として2つの第1内部電極41及び2つの第2内部電極42と、を備えている。第1内部電極41及び第2内部電極42は、素体20の内部に埋め込まれている。
【0017】
第1内部電極41の材質は、導電性の材料である。例えば、第1内部電極41の材質は、パラジウムである。また、第2内部電極42の材質は、第1内部電極41の材質と同一である。
【0018】
第1内部電極41の形状は、長方形板状である。第1内部電極41の主面は、第2軸Yに直交している。第2内部電極42の形状は、第1内部電極41と同じ長方形板状である。第2内部電極42の主面は、第1内部電極41と同様に、第2軸Yに直交している。
【0019】
第1内部電極41の第1軸Xに沿う方向の寸法は、素体20の第1軸Xに沿う方向の寸法より小さくなっている。また、図1に示すように、第1内部電極41の第3軸Zに沿う方向の寸法は、素体20の第3軸Zに沿う方向の寸法の略3分の2となっている。第2内部電極42の各方向の寸法は、第1内部電極41と同じ寸法となっている。
【0020】
図3に示すように、第1内部電極41と第2内部電極42とは、第2軸Yに沿う方向に互い違いに位置している。すなわち、第2正方向Y1を向く側面22Cから第2負方向Y2に向かって、第1内部電極41、第2内部電極42、第1内部電極41、第2内部電極42の順に並んでいる。この実施形態では、各内部電極間の第2軸Yに沿う方向の距離は、等しくなっている。
【0021】
図1に示すように、2つの第1内部電極41及び2つの第2内部電極42は、いずれも、第3軸Zに沿う方向において、素体20の中央に位置している。その一方で、図3に示すように、第1内部電極41は、第1正方向X1に寄って位置している。第2内部電極42は、第1負方向X2に寄って位置している。
【0022】
具体的には、第1内部電極41の第1正方向X1側の端は、素体20の第1正方向X1側の端と一致している。第1内部電極41の第1負方向X2側の端は、素体20の内部に位置しており、素体20の第1負方向X2側の端にまで至っていない。一方で、第2内部電極42の第1負方向X2側の端は、素体20の第1負方向X2側の端と一致している。第2内部電極42の第1正方向X1側の端は、素体20の内部に位置しており、素体20の第1正方向X1側の端にまで至っていない。
【0023】
電子部品10は、ガラス膜50を備えている。ガラス膜50は、素体20の外表面21を覆っている。本実施形態では、ガラス膜50は、素体20の外表面21のすべての領域を覆っている。ガラス膜50の材質は、ガラスである。本実施形態では、ガラスは二酸化ケイ素からなっている。
【0024】
図3に示すように、電子部品10は、第1外部電極61と、第2外部電極62と、を備えている。第1外部電極61は、第1下地電極61Aと、第1金属層61Bと、を有している。第1下地電極61Aは、素体20の外表面21のうち、第1端面22Aを含む一部分において、ガラス膜50の上から積層されている。つまり、第1下地電極61Aは、素体20の外表面21を部分的に覆っている。具体的には、第1下地電極61Aは、素体20の第1端面22Aと、4つの側面22Cの第1正方向X1側の一部を覆う、5面電極である。この実施形態では、第1下地電極61Aの材質は、銀とガラスとである。また、第1下地電極61Aは、焼結体である。そのため、図4に示すように、第1下地電極61Aは、空洞であるポアPを多数含んでいる。そして、第1下地電極61Aを構成する材質のうち、ガラスGの一部はポアPの内部に存在しているが、ポアPの少なくとも一部はガラスG等が存在しない空洞の状態である。なお、第1下地電極61Aにおける一部のポアPは、ガラス膜50に接している。
【0025】
図3に示すように、第1金属層61Bは、第1下地電極61Aを外部から覆っている。そのため、第1金属層61Bは、第1下地電極61Aに積層されている。また、第1金属層61Bの一部は、第1下地電極61Aからはみ出ている。つまり、第1金属層61Bの外縁の一部は、第1下地電極61Aを介さずに、ガラス膜50を直接覆っている。図示は省略するが、第1金属層61Bは、第1下地電極61A側から順に、ニッケル層と、錫層と、の2層構造となっている。
【0026】
第2外部電極62は、第2下地電極62Aと、第2金属層62Bと、を有している。第2下地電極62Aは、素体20の外表面21のうち、第2端面22Bを含む一部分において、ガラス膜50の上から積層されている。つまり、第2下地電極62Aは、素体20の外表面21を部分的に覆っている。具体的には、第2下地電極62Aは、素体20の第2端面22Bと、4つの側面22Cの第1負方向X2側の一部を覆う、5面電極である。この実施形態では、第2下地電極62Aの材質は、第1外部電極61の材質と同一で、銀とガラスとである。また、第2下地電極62Aは、第1下地電極61Aと同様に、焼結体である。そのため、図示は省略するが、第2下地電極62Aは、空洞であるポアPを多数含んでいる。そして、第2下地電極62Aを構成する材質のうち、ガラスの一部はポアPの内部に存在しているが、ポアPの少なくとも一部はガラス等が存在しない空洞の状態である。なお、第2下地電極62Aにおける一部のポアPは、ガラス膜50に接している。
【0027】
第2金属層62Bは、第2下地電極62Aを外部から覆っている。そのため、第2金属層62Bは、第2下地電極62Aに積層されている。また、第2金属層62Bの一部は、第2下地電極62Aからはみ出ている。つまり、第2金属層62Bの外縁の一部は、第2下地電極62Aを介さずに、ガラス膜50を直接覆っている。図示は省略するが、第2金属層62Bは、第1金属層61Bと同様に、第2下地電極62A側から順に、ニッケル層と、錫層と、の2層構造となっている。
【0028】
第2外部電極62は、側面22C上において、第1外部電極61にまでは至っておらず、第1外部電極61に対して第1軸Xに沿う方向に離れて配置されている。そして、素体20の側面22C上において、第1軸Xに沿う方向の中央部分は、第1外部電極61及び第2外部電極62が積層されておらず、ガラス膜50が露出している。なお、図1図3では、第1外部電極61及び第2外部電極62は、二点鎖線で図示している。
【0029】
図3に示すように、第1外部電極61と第1内部電極41における第1正方向X1側の端とは、ガラス膜50を貫通する第1貫通部71を介して接続している。そのため、第1外部電極61は、第1内部電極41と電気的に接続している。なお、詳細は後述するが、第1貫通部71は、電子部品10の製造過程において、第1内部電極41を構成するパラジウムが第1外部電極61側へと延びることによって形成される。
【0030】
また、第2外部電極62と第2内部電極42における第1負方向X2側の端とは、ガラス膜50を貫通する第2貫通部72を介して接続している。そのため、第2外部電極62は、第2内部電極42と電気的に接続している。第2貫通部72も、第1貫通部71と同様に、電子部品10の製造過程において、第1内部電極41を構成するパラジウムが第2外部電極62側へと延びることによって形成される。なお、図3では、第1内部電極41と第1貫通部71とを境界のある別の部材として図示しているが、実際には両者の間に明確な境界は存在しない。この点、第2貫通部72についても同様である。また、図1においては、第1貫通部71の図示を省略する。
【0031】
(ガラス膜の厚さについて)
図3に示すように、ガラス膜50は、被覆箇所ACと、非被覆箇所AUと、境界箇所ABと、を有している。
【0032】
図4に示すように、被覆箇所ACは、ガラス膜50のうち、第1下地電極61A又は第2下地電極62Aに覆われている箇所である。なお、図4では、第1下地電極61Aに覆われている被覆箇所ACについて図示している。被覆箇所ACの厚さは、以下のように算出する。先ず、第1端面22A及び1つの側面22Cに直交する断面を、電子顕微鏡で撮影する。次に、撮影した画像について、被覆箇所ACの外表面21に沿う方向における範囲を特定する。この範囲において、少なくとも5μm以上の測定範囲について、ガラス膜50の断面積を画像処理によって算出する。そして、算出した測定範囲におけるガラス膜50の断面積を、測定範囲である長さで除算することで、被覆箇所ACの厚さを算出する。つまり、被覆箇所ACの厚さは、測定範囲における平均厚さである。
【0033】
また、図5に示すように、非被覆箇所AUは、ガラス膜50のうち、第1下地電極61A及び第2下地電極62Aのいずれにも覆われていなく、且つ第1下地電極61Aの外縁及び第2下地電極62Aの外縁の双方から10μmより大きく離れている箇所である。非被覆箇所AUの厚さは、以下のように算出する。先ず、1つの側面22Cに直交するとともに第1軸Xに平行な断面を、電子顕微鏡で撮影する。次に、撮影した画像について、非被覆箇所AUの外表面21に沿う方向における範囲を特定する。この範囲において、被覆箇所ACの厚さを測定した際と同じ長さの測定範囲について、ガラス膜50の断面積を画像処理によって算出する。非被覆箇所AUの測定範囲については、非被覆箇所AUの第1軸Xに沿う方向の中央が、非被覆箇所AUの測定範囲の第1軸Xに沿う方向の中央となるように位置を定める。そして、算出した測定範囲におけるガラス膜50の断面積を、測定範囲である長さで除算することで、非被覆箇所AUの厚さを算出する。つまり、非被覆箇所AUの厚さは、測定範囲における平均厚さである。
【0034】
さらに、境界箇所ABは、第1下地電極61Aの近傍、及び第2下地電極62Aの近傍に存在している。すなわち、2箇所の境界箇所ABのうちの1つは、図6に示すように、ガラス膜50のうち、第1下地電極61Aに覆われていなく且つ第1下地電極61Aの外縁から10μmより大きく離れていない箇所である。また、2箇所の境界箇所ABのうちの1つは、ガラス膜50のうち、第2下地電極62Aに覆われていなく且つ第2下地電極62Aの外縁から10μmより大きく離れていない箇所である。境界箇所ABの厚さは、以下のように算出する。先ず、1つの側面22Cに直交するとともに第1軸Xに平行な断面を、電子顕微鏡で撮影する。次に、撮影した画像について、境界箇所ABの外表面21に沿う方向における範囲を特定する。この範囲は、10μmとなる。この10μmの範囲において、ガラス膜50の断面積を画像処理によって算出する。そして、算出した範囲におけるガラス膜50の断面積を、測定範囲の長さである10μmで除算することで、境界箇所ABの厚さを算出する。つまり、境界箇所ABの厚さは、境界箇所AB全体における平均厚さである。
【0035】
そして、図6に示すように、被覆箇所ACの厚さは、非被覆箇所AUの厚さよりも大きくなっている。また、境界箇所ABの厚さは、被覆箇所ACの厚さよりも大きくなっている。つまり、被覆箇所ACの厚さは、境界箇所ABの厚さよりも小さくなっている。非被覆箇所AUの厚さは、30nm以上となっている。また、境界箇所ABの厚さは、1000nm以下となっている。
【0036】
さらに、被覆箇所ACの厚さの変動係数は、非被覆箇所AUの厚さの変動係数よりも大きくなっている。つまり、被覆箇所ACでは、非被覆箇所AUと比べて、表面が凸凹している。
【0037】
各箇所の厚さの変動係数は、以下のように算出する。まず、測定範囲において、ガラス膜50の厚さの極大値を5箇所測定する。次に、当該測定範囲において、ガラス膜50の極小値を5箇所測定する。次に、合計10箇所の厚さの平均値と標準偏差を算出する。そして、この標準偏差を10箇所の厚さの平均値で除算することで、変動係数を算出する。
【0038】
(電子部品の製造方法)
次に、電子部品10の製造方法について説明する。
図7に示すように、電子部品10の製造方法は、積層体準備工程S11と、R面取り加工工程S12と、溶媒投入工程S13と、触媒投入工程S14と、素体投入工程S15と、ポリマー投入工程S16と、金属アルコキシド投入工程S17と、を備えている。また、電子部品10の製造方法は、成膜工程S18と、乾燥工程S19と、導電体塗布工程S20と、硬化工程S21と、めっき工程S22と、をさらに備えている。
【0039】
先ず、素体20を形成するにあたって、積層体準備工程S11では、境界面23及びコーナ面24を備えない素体20である積層体を準備する。すなわち、積層体は、R面取りする前の状態であり、6つの平面22を有する直方体状である。例えば、先ず、素体20となる複数のセラミックスのシートを準備する。当該シートは、薄い板状である。当該シート上に、第1内部電極41となる導電性ペーストを積層する。当該積層ペースト上に、素体20となるセラミックスのシートを積層する。当該シート上に、第2内部電極42となる導電性ペーストを積層する。このように、セラミックスのシートと導電性ペーストとを積層する。そして、所定のサイズにカットすることで、未焼成の積層体を形成する。その後、未焼成の積層体を高温で焼成することで、積層体を準備する。
【0040】
次に、R面取り加工工程S12を行う。R面取り加工工程S12では、積層体準備工程S11で準備した積層体に対して境界面23及びコーナ面24を形成する。例えば、バレル研磨により、積層体の角がR面取り加工されることによって、曲面を有する境界面23及び曲面を有するコーナ面24が形成される。これにより、素体20が形成される。
【0041】
次に、溶媒投入工程S13を行う。図8に示すように、溶媒投入工程S13では、反応容器81内に、溶媒82として、2-プロパノールを投入する。
次に、図7に示すように、触媒投入工程S14を行う。図9に示すように、触媒投入工程S14では、先ず、反応容器81内の溶媒82の撹拌を開始する。そして、反応容器81内に、触媒を含む水溶液83として、アンモニア水を投入する。この実施形態における触媒は、水酸化物イオンであり、後述する金属アルコキシド85の加水分解を促進する触媒として機能する。
【0042】
次に、図7に示すように、素体投入工程S15を行う。図10に示すように、素体投入工程S15では、反応容器81内に、上述したようにR面取り加工工程S12において予め形成した複数の素体20を投入する。
【0043】
次に、図7に示すように、ポリマー投入工程S16を行う。図11に示すように、ポリマー投入工程S16では、反応容器81内に、ポリマー84として、ポリビニルピロリドンを投入する。これにより、反応容器81内に投入されたポリマー84は、素体20の外表面21に吸着する。
【0044】
次に、図7に示すように、金属アルコキシド投入工程S17を行う。図12に示すように、金属アルコキシド投入工程S17では、反応容器81内に、金属アルコキシド85として、液状のオルトケイ酸テトラエチルを投入する。なお、オルトテトラケイ酸テトラエチルは、テトラエトキシシランと呼称されることもある。本実施形態において、金属アルコキシド投入工程S17において投入する金属アルコキシド85の量は、素体投入工程S15において投入した素体20の外表面21の面積を基に算出している。具体的には、素体20の外表面21を覆うガラス膜50を形成するために必要な素体20の1個当たりの金属アルコキシド85の量に、素体20の数を乗算して算出する。
【0045】
次に、図7に示すように、成膜工程S18を行う。成膜工程S18では、上述した溶媒投入工程S13で開始した溶媒82の撹拌を、金属アルコキシド投入工程S17によって金属アルコキシド85が反応容器81内に投入されてから、所定時間だけ続ける。成膜工程S18では、反応容器81内における液相反応によって、ガラス膜50が成膜される。
【0046】
次に、乾燥工程S19を行う。乾燥工程S19では、成膜工程S18において所定時間だけ撹拌を続けた後に、素体20を反応容器81から取り出して、乾燥させる。これにより、ゾル状のガラス膜50は乾燥され、ゲル状のガラス膜50となる。
【0047】
次に、導電体塗布工程S20を行う。導電体塗布工程S20では、ガラス膜50の表面のうち、素体20の第1端面22Aを覆う部分を含む一部分と、素体20の第2端面22Bを覆う部分を含む一部分と、の2箇所に導電体ペーストを塗布する。具体的には、導電体ペーストを、第1端面22Aの全域と4つの側面22C上の一部とのガラス膜50を覆うように塗布する。また、導電体ペーストを、第2端面22Bの全域と4つの側面22C上の一部とのガラス膜50を覆うように塗布する。
【0048】
次に、硬化工程S21を行う。具体的には、硬化工程S21は、ガラス膜50及び導電体ペーストが塗布された素体20を加熱する。これにより、ゲル状のガラス膜50から水及びポリマー84が気化することで、図3に示すように、素体20の外表面21を覆うガラス膜50が焼成され、硬化する。これとともに、導電体塗布工程S20において塗布された導電体ペーストが焼成されることによって、第1下地電極61A及び第2下地電極62Aが形成される。また、導電体ペーストが加熱されることで、導電体ペーストにおけるガラスを構成する材質のうちの低融点物質がゲル状のガラス膜50側へと拡散する。これにより、ガラス膜50のうち、第1下地電極61Aに覆われている箇所及び、第2下地電極62Aに覆われている箇所は、非被覆箇所AUよりも厚さが大きくなる。さらに、導電体ペーストにおけるガラスの低融点物質は、ガラス膜50と導電体ペーストとの境界から溢れるようにして境界箇所ABにも至る。境界箇所ABは第1下地電極61Aに覆われていないため、拡散された低融点物質を含む境界箇所ABは、厚さが大きくなり、その状態で焼成される。その結果、境界箇所ABの厚さは、被覆箇所ACの厚さよりも大きくなる。このように、導電体塗布工程S20と硬化工程S21とによって、下地電極形成工程が構成されている。このように、本実施形態において硬化工程S21は、ガラス膜50を硬化させる工程としてだけではなく、下地電極を焼結させる工程も兼ねている。
【0049】
本実施形態においては、硬化工程S21における加熱の際に、第1内部電極41と第1下地電極61Aとの拡散速度の違いから生じるカーケンドール効果により、銀を含む第1下地電極61A側に、第1内部電極41側に含まれるパラジウムが引き寄せられる。これにより、第1内部電極41から第1下地電極61Aに向かって第1貫通部71がガラス膜50を貫通して延びることで、第1内部電極41と第1下地電極61Aとが接続する。この点、第2内部電極42と第2下地電極62Aとを接続する第2貫通部72においても同様である。
【0050】
次に、めっき工程S22を行う。第1下地電極61A及び第2下地電極62Aの部分に、電気めっきを行う。具体的には、バレルめっきを行う。バレルめっきでは、バレルに、第1下地電極61A及び第2下地電極62Aを設けた素体20と、メディアとを入れて撹拌する。これにより、第1下地電極61Aの表面に、第1金属層61Bが形成される。これとともに、メディアがガラス膜50のうち非被覆箇所AUに衝突することで、非被覆箇所AUのガラス膜50の表面が削られる。そのため、非被覆箇所AUの厚さが小さくなる。また、非被覆箇所AUの表面の凸凹は、バレルめっき以前の状態よりも平坦になる。一方で、メディアはガラス膜50のうち境界箇所ABには、第1金属層61Bが干渉するため衝突しない。そのため、境界箇所ABの厚さは、非被覆箇所AUの厚さよりも大きくなる。さらに、境界箇所ABの厚さは、被覆箇所ACの厚さよりも大きいままである。また、第2下地電極62Aの表面にも、同様に第2金属層62Bが形成される。図示は省略するが、第1金属層61B及び第2金属層62Bは、ニッケル、錫の2種類で電気めっきされることで、2層構造となる。このようにして、電子部品10が形成される。
【0051】
(実施形態の作用及び効果について)
(1)上記実施形態において、第1金属層61Bの外縁の一部は、ガラス膜50を直接覆っている。第1金属層61Bは、ガラスを含む第1下地電極61Aよりもガラス膜50に対する密着性が低い。したがって、第1金属層61Bの外縁とガラス膜50との間に水分が浸入し、ガラス膜50が長時間水分に曝される可能性がある。上記実施形態によれば、ガラス膜50のうち、第1金属層61Bに直接覆われる可能性が高い箇所、すなわち境界箇所ABの厚さは、非被覆箇所AUの厚さよりも大きくなっている。境界箇所ABの厚さが大きい分だけ、第1金属層61Bの外縁とガラス膜50との間に水分が浸入しても、その水分が素体20へと至ることを抑制できる。なお、第1金属層61Bを例として説明したが、この点、第2金属層62Bについても同様である。
【0052】
(2)上記実施形態によれば、境界箇所ABの厚さは、被覆箇所ACの厚さよりも大きくなっている。つまり、被覆箇所ACの厚さは、境界箇所ABの厚さよりも小さくなっている。各下地電極に覆われているガラス膜50の厚さが小さくなることで、電子部品10が全体として大きくなることを防止できる。
【0053】
(3)上記実施形態によれば、ガラス膜50において、被覆箇所AC、境界箇所AB及び非被覆箇所AUのうち、最も厚さの小さい非被覆箇所AUの厚さは、30nm以上である。そのため、第1下地電極61Aに覆われていない箇所において、素体20を保護するために十分な厚さを確保できる。
【0054】
(4)上記実施形態によれば、ガラス膜50において、被覆箇所AC、境界箇所AB及び非被覆箇所AUのうち、最も厚さの大きい境界箇所ABの厚さは、1000nm以下である。そのため、境界箇所ABの厚さが過度に大きいことで、電子部品10が全体として大きくなることを防止できる。
【0055】
(5)上記実施形態において、第1下地電極61A及び第2下地電極62Aは、無数のポアPを有している。また、電子部品10の製造過程及び製造後において、第1下地電極61A及び第2下地電極62Aに微細なクラックが生じることもある。そのため、電子部品10の使用環境によっては、電子部品10に付着した水分が、ポアP及びクラックの内部に浸入することがある。さらに、ポアP及びクラックがガラス膜50にまで至っていれば、ポアP及びクラックの内部に存在する水分がガラス膜50に触れることになる。そして、仮にガラス膜50に微細なクラックが生じていれば、そのクラックを通じて水分が素体20へと至る可能性がある。
【0056】
上記実施形態によれば、被覆箇所ACの厚さは、非被覆箇所AUの厚さよりも大きくなっている。そのため、例えば、電子部品10の使用環境によって、ガラス膜50と各下地電極との境界に水分等が至っても、ガラス膜50のうちの被覆箇所ACの厚さが大きい分、水分等が素体20へと至ることを抑制できる。なお、ガラス膜50のうち非被覆箇所AUにおいては、第1外部電極61に覆われていないため、水分が付着しても大気へと揮発する。つまり、非被覆箇所AUは、長時間にわたって水分に曝され続けるとは考えにくい。そのため、ガラス膜50のうちの非被覆箇所AUの厚さが比較的に小さくとも、素体20に水分等が至ることを十分に防げる。
【0057】
(6)上記実施形態によれば、被覆箇所ACの厚さの変動係数は、非被覆箇所AUの厚さの変動係数より大きくなっている。つまり、ガラス膜50のうち被覆箇所ACでは、非被覆箇所AUに比べて表面が凸凹している。そのため、被覆箇所ACにおいて、各下地電極との密着性を高くできる。その結果、各下地電極とガラス膜50との間に水分等が溜まることを防ぎやすくなる。
【0058】
(7)上記実施形態によれば、各下地電極は、ガラスを含んでいる。そのため、実施形態の製造方法のように、各下地電極を形成する上で、導電体ペーストにおけるガラスが溶融した際に、当該ガラスの低融点物質がガラス膜50へと拡散する。これにより、被覆箇所ACの厚さを大きく形成しやすい。
【0059】
(8)上記実施形態によれば、各下地電極は、銀を含む焼結体である。焼結体は、内部に空洞であるポアPを多数有している。そのため、焼結体である下地電極には、ポアPの内部に水分やガスが溜まりやすい。よって、下地電極とガラス膜50との境界に、水分が溜まる可能性が高くなる。このような下地電極の構成を前提として、被覆箇所ACの厚さが非被覆箇所AUの厚さよりも大きいという構成を採用することは、水分等が素体20へと至ることを効果的に抑制できるという点で、好適である。
【0060】
(9)上記実施形態によれば、素体20の外表面21は、ガラス膜50、第1下地電極61A、又は第2下地電極62Aによって、すべて覆われている。そのため、外表面21のすべての領域において、水分やガスが電子部品10の外部から素体20へ侵入することを防止できる。
【0061】
<その他の実施形態>
上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0062】
・上記実施形態において、電子部品10は、負特性サーミスタ部品に限られない。例えば、素体20の内部に何らかの配線を備えるのであれば、負特性以外のサーミスタ部品であってもよいし、積層コンデンサ部品やインダクタ部品であってもよい。
【0063】
・素体20の形状は、上記実施形態の例に限られない。例えば、素体20は、中心軸線CAを有する四角形柱状以外の多角形柱状であってもよい。また、素体20は、巻線型のインダクタ部品のコアであってもよい。例えば、コアは、いわゆるドラムコア形状であってもよい。具体的には、コアは、柱状の巻芯部と、巻芯部の各端部に設けられた鍔部とを有していてもよい。
【0064】
・素体20の材質は、上記実施形態の例に限られない。例えば、素体20の材質は、樹脂と金属粉体のコンポジット体であってもよい。
・素体20の外表面21は、境界面23及びコーナ面24を有していなくてもよい。多とテバ、素体20の外表面21のうち、隣り合う平面22の境界が面取り形状になっていない場合、当該境界には、曲面が存在しない。そのため、このような場合には、境界面23及びコーナ面24が存在しないこともある。
【0065】
・素体20の外表面21において、ガラス膜50、第1下地電極61A及び第2下地電極62Aのいずれにも覆われていない箇所が存在していてもよい。例えば、側面22Cのうちの一部が、ガラス膜50に覆われておらず、ガラス膜50とは別の絶縁樹脂等に覆われていてもよい。なお、このような絶縁樹脂としては、素体20の向きを光学的に識別するための着色された樹脂等が挙げられる。
【0066】
・上記実施形態において、第1内部電極41及び第2内部電極42の形状は、対応する第1外部電極61及び第2外部電極62との電気的導通を確保できる形状であれば問わない。また、第1内部電極41及び第2内部電極42の数は問わず、内部電極の数が1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0067】
・第1金属層61Bは、2層構造でなくてもよい。例えば、第1金属層61Bは、ニッケル層又は錫層の1層のみからなっていてもよいし、3層以上の構造となっていてもよい。この点、第2金属層62Bについても同様である。
【0068】
・第1金属層61B及び第2金属層62Bの製造方法はバレルめっきに限らない。例えば、無電解めっきで第1金属層61B及び第2金属層62Bを製造してもよい。さらに、めっき以外の方法で第1金属層61B及び第2金属層62Bを製造してもよい。なお、金属層の製造方法に拘わらず、下地電極の縁の位置と金属層の縁の位置とを完全に一致させることは難しい。すなわち、金属層の製造方法に拘わらず、金属層は下地電極からはみ出す可能性がある。したがって、金属層をどのように製造しようとも、金属層とガラス膜50との境界に水分等が入り込みやすいという課題は生じる。
【0069】
・第1下地電極61Aの材質は、上記実施形態の例に限られない。例えば、第1下地電極61Aの材質は、銅であってもよいし、金であってもよい。また、第1下地電極61Aの材質は、ガラスを含んでいなくてもよい。例えば、第1下地電極61Aの材質は、金属のみからなっていてもよい。
【0070】
・第1下地電極61Aは、焼結体でなくても構わない。例えば、第1下地電極61Aは、単結晶であってもよい。
・上記実施形態において、第1内部電極41と第1下地電極61Aとの材質の組み合わせは、パラジウム及び銀の組み合わせに限らない。例えば、銅及びニッケル、銅及び銀、銀及び金、ニッケル及びコバルト、又はニッケル及び金、の組み合わせであってもよい。また例えば、一方が銀で、他方が銀及びパラジウムの組み合わせであってもよい。また例えば、一方がパラジウムで、他方が銀及びパラジウムの組み合わせであってもよいし、一方が銅で、他方が銀及びパラジウムの組み合わせであってもよい。また例えば、一方が金で、他方が銀及びパラジウムの組み合わせであってもよい。
【0071】
なお、第1内部電極41と第1下地電極61Aとの組み合わせによっては、カーケンドール効果を得られない場合がある。この場合には、外部電極形成工程の前に、第1内部電極41が露出するように、例えば、素体20の第1端面22A側を研磨してガラス膜50の一部を物理的に除去すればよい。その後、下地電極形成工程を行うことで、第1内部電極41と第1下地電極61Aとを接続することができる。また例えば、第1下地電極61Aを形成した後に、第1下地電極61Aの表面も含めてガラス膜50を形成して、第1下地電極61Aの表面を覆うガラス膜50を除去してもよい。この点、第2内部電極42と第2下地電極62Aとの材質の組み合わせにおいても同様である。
【0072】
・第1外部電極61の配置箇所は、上記実施形態の例に限られない。例えば、第1外部電極61が第1端面22Aと1つの側面22Cとにのみ配置されていてもよい。この点、第2外部電極62についても同様である。
【0073】
・ガラス膜50について、第1外部電極61側の境界箇所ABの厚さ、及び第2外部電極62側の境界箇所ABの厚さの少なくともいずれか一方が、非被覆箇所AUの厚さよりも大きければよい。
【0074】
・ガラス膜50の厚さについて、境界箇所ABの厚さが非被覆箇所AUの厚さより大きければよく、被覆箇所ACの厚さは非被覆箇所AUの厚さ以下であってもよい。また、被覆箇所ACの厚さは境界箇所ABの厚さ以上であってもよい。さらに、境界箇所ABの厚さが1000nmより大きくてもよいし、非被覆箇所AUの厚さが30nmより小さくてもよい。
【0075】
・被覆箇所ACの厚さの変動係数は、非被覆箇所AUの厚さの変動係数以下であってもよい。例えば、第1下地電極61Aを、金属箔を張り付けて形成する場合、ガラス膜50のうち被覆箇所ACの表面は低融点物質の拡散による凸凹は生じなくてもよい。また、第1金属層61Bを、バレルを用いずにめっきする場合、非被覆箇所AUの表面はバレルによって平坦化されない。これらの場合であっても、被覆箇所ACの厚さが非被覆箇所AUの厚さより大きくなっていれば、被覆箇所ACの厚さの変動係数は、非被覆箇所AUの厚さの変動係数以下であってもよい。
【0076】
・また例えば、図13に示す変更例の電子部品110では、ガラス膜150は、ピュアガラス層151と、拡散層152と、を有している。ピュアガラス層151は、被覆箇所ACにおける外表面21上に積層している。ここで、第1下地電極61Aの材質は、銀とガラスとである。さらに、第1下地電極61Aのガラスには、添加物として、アルカリ金属及びアルカリ土類金属が含まれている。一方で、ピュアガラス層151は、第1下地電極61Aの金属成分を含んでいない。そのため、この変更例では、ピュアガラス層151は、銀、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を含んでいない。具体的には、ピュアガラス層151は、二酸化ケイ素のみからなっている。そして、ガラス膜150のうち、被覆箇所ACの最小厚さは、10nm以上である。なお、最小厚さは、以下のように算出する。先ず、第1端面22A及び1つの側面22Cに直交する断面を、電子顕微鏡で撮影する。次に、撮影した画像において、ガラス膜150の厚さが最小の箇所を特定する。そして、当該特定した箇所の厚さを画像上で測定する。このように測定した厚さを、ガラス膜150のうち、被覆箇所ACの最小厚さとする。
【0077】
仮に、ガラス膜の全体が第1下地電極61Aの金属成分を含んでいるとする。この場合、製造工程の硬化工程S21において、ガラス膜中の金属成分が素体20の外表面21よりも内側に入り込む。より具体的には、ガラス膜に含まれる金属成分が銀であり、且つ素体20がマンガンを含んでいる場合を例にする。この場合、素体20のうち外表面21の近傍の結晶構造が、マンガンと酸素とで構成されている状態から、銀も加わった状態へと変化する。そのため、素体20に入り込んだ銀は、素体20に拘束される。そして、ガラス膜中には、銀が拡散しているため、素体20に入り込んだ銀は、ガラス膜中の銀を介して、導電体ペースト中の銀とつながっている。そのため、ガラス膜中の銀を介して、導電体ペースト中の銀も、素体20側へと相応に拘束される。その結果、導電体ペースト中の銀が、硬化工程S21によって集まりにくくなる。導電体ペーストの銀が集まりにくいと、焼結時間が長くなる虞がある。
【0078】
この点、上記変更例の電子部品110によれば、ピュアガラス層151は、第1下地電極61Aの金属成分を含んでいない。つまり、素体20の内部のうち外表面21近傍には、銀が入り込んでいない。そのため、製造工程の硬化工程S21において、第1下地電極61Aとなる銀がガラス膜150へ拡散したとしても、上述した銀が素体20に入り込んだ結晶構造となる層によって、素体20側へ拘束されることはない。よって、上述したように、導電体ペーストの銀も当該層由来で動きにくくなることはない。したがって、導電体ペーストの銀が集まりにくくなることによって、焼結されにくくなることは抑制されるため、焼結時間が過度に長くなることを防止できる。
【0079】
また、上記変更例の電子部品110によれば、ピュアガラス層151は、二酸化ケイ素のみからなっている。そのため、第1下地電極61Aに添加物が含まれていたとしても、添加物の成分であるアルカリ金属及びアルカリ土類金属がガラス膜150へ過度に拡散することを防止できる。
【0080】
さらに、上記変更例の電子部品110によれば、ガラス膜150のうち、被覆箇所ACの最小厚さは、10nm以上となっている。そのため、仮に、製造工程の硬化工程S21において、相応の量だけ導電体ペーストに含まれる金属成分がガラス膜150に拡散したとしても、外表面21側の一部には、金属成分が含まれないピュアガラス層151が存在する。よって、ピュアガラス層151を安定的に製造しやすくなる。
【0081】
なお、図13に示す変更例の電子部品110において、ガラス膜150にピュアガラス層151が含まれていれば、ガラス膜150の被覆箇所ACの最小厚さは、10nm未満であってもよい。
【0082】
また、図13に示す変更例の電子部品110において、ピュアガラス層151は、二酸化ケイ素のみに限られない。例えば、ガラス膜150のガラスが酸化ホウ素を主成分とする場合、ピュアガラス層151は、酸化ホウ素のみであってもよい。
【0083】
さらに、図13に示す変更例の電子部品110において、ガラス膜150は、ピュアガラス層151のみから構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10,110…電子部品
20…素体
21…外表面
41…第1内部電極
42…第2内部電極
50…ガラス膜
61…第1外部電極
62…第2外部電極
71…第1貫通部
72…第2貫通部
81…反応容器
82…溶媒
83…水溶液
84…ポリマー
85…金属アルコキシド
151…ピュアガラス層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13