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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】チタン材料
(51)【国際特許分類】
   C22C 14/00 20060101AFI20241106BHJP
   C22F 1/18 20060101ALI20241106BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
C22C14/00 Z
C22F1/18 H
C22F1/00 604
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 630C
C22F1/00 631A
C22F1/00 675
C22F1/00 682
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/00 650A
C22F1/00 624
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023564836
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2022041563
(87)【国際公開番号】W WO2023100603
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021194773
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 宣正
(72)【発明者】
【氏名】寺本 三記
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-228053(JP,A)
【文献】特開2008-208413(JP,A)
【文献】特開平04-074855(JP,A)
【文献】特開2020-063509(JP,A)
【文献】特開2019-214749(JP,A)
【文献】特開2012-214861(JP,A)
【文献】特開2016-059951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 14/00
C22F 1/18
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンを91質量%以上含むチタン材料であって、
前記チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%は、下記式Iの関係を示し、
σB≧1600-30δ 式I
上記式Iにおいて、σB≧400、かつ、δ≧20であり、
前記チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径は、1μm以上1000μm以下であり、
前記チタン材料は、オメガ相の結晶構造を有するチタンを50質量%以上含む、チタン材料。
【請求項2】
前記チタン材料は、チタンを98.8質量%以上含む、請求項1に記載のチタン材料。
【請求項3】
チタンを91質量%以上含むチタン材料であって、
前記チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2MPaおよび前記チタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式IIの関係を示し、
σ0.2>600c+180 式II
上記式IIにおいて、cは0以上9以下であり、
前記チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径は、1μm以上1000μm以下であり、
前記チタン材料は、オメガ相の結晶構造を有するチタンを50質量%以上含む、チタン材料。
【請求項4】
前記チタン材料は、チタンを98.8質量%以上含む、請求項3に記載のチタン材料。
【請求項5】
チタンを91質量%以上含むチタン材料であって、
前記チタン材料の引張強度σBMPaおよび前記チタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式IIIの関係を示し、
σB>600c+280 式III
上記式IIIにおいて、cは0以上9以下であり、
前記チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径は、1μm以上1000μm以下であり、
前記チタン材料は、オメガ相の結晶構造を有するチタンを50質量%以上含む、チタン材料。
【請求項6】
前記チタン材料は、チタンを98.8質量%以上含む、請求項5に記載のチタン材料。
【請求項7】
前記チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%は、下記式Iの関係を示す、
σB≧1600-30δ 式I
上記式Iにおいて、σB≧400、かつ、δ≧20である、請求項5または請求項6に記載のチタン材料。
【請求項8】
前記チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2MPaおよび前記チタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式IIの関係を示す、
σ0.2>600c+180 式II
上記式IIにおいて、cは0以上9以下である、請求項5または請求項6に記載のチタン材料。
【請求項9】
前記チタン材料の圧縮試験における0.2%耐力は、570MPa以上である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のチタン材料。
【請求項10】
前記チタン材料のビッカース硬さは、200Hv以上である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のチタン材料。
【請求項11】
前記チタン材料の耐熱温度は、100℃以上であり、
前記耐熱温度は、前記チタン材料の25℃および25℃超の複数の温度でのX線回折パターンを取得した場合、25℃でのX線回折パターンと一致するX線回折パターンを示す最も高い温度であり、
ここで、X線回折パターンが一致するとは、全ての回折ピークの相対的な位置関係が一致しており、かつ、各回折ピークの強度の順番が一致していることを意味する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のチタン材料。
【請求項12】
前記チタン材料の体積は、0.001mm 以上100000mm 以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のチタン材料。
【請求項13】
前記チタン材料は、98.8質量%以上のチタンを含み、
前記チタン材料は、水素、炭素、窒素、酸素および鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の不純物元素を含み、
前記チタン材料の前記チタンおよび前記不純物元素の合計含有率は、99.99質量%以上である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のチタン材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チタン材料に関する。本出願は、2021年11月30日に出願した日本特許出願である特願2021-194773号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
チタン材料は高い比強度を有するため、航空宇宙産業や自動車産業などの分野で使用されてきた。また、生体適合性に優れているため、歯科用インプラント等の生体用金属材料としての需要も高まっている。
【0003】
特許文献1には、高い強度を有するチタン材料として、常温、常圧でα相とω相とが混在しているチタン材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-228053号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示のチタン材料は、
チタンを91質量%以上含むチタン材料であって、
前記チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%は、下記式Iの関係を示す、
σB≧1600-30δ 式I
上記式Iにおいて、σB≧400、かつ、δ≧20である、チタン材料である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、従来のチタン材料および実施形態1のチタン材料の強度と延性との関係を示す座標系である。
図2図2は、本実施形態のチタン材料の光学顕微鏡画像の一例である。
図3図3は、チタンの温度-圧力相図である。
図4図4は、チタン材料にX線を照射して得られるX線回折パターンの一例である。
図5図5は、従来のチタン材料および実施形態2のチタン材料の引張試験における0.2%耐力とチタン材料のチタン以外の成分の含有率との関係を示す座標系である。
図6図6は、従来のチタン材料および実施形態3のチタン材料の引張強度とチタン材料のチタン以外の成分の含有率との関係を示す座標系である。
図7図7は、本開示のチタン材料の製造に用いられる超高圧高温発生装置の高圧セルの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
近年、チタン材料の用途の広がりに伴い、より高い強度を有するチタン材料が求められている。
【0008】
本開示は、高い強度を有するチタン材料を提供することを目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示のチタン材料は、高い強度を有することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のチタン材料は、チタンを91質量%以上含むチタン材料であって、
前記チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%は、下記式Iの関係を示す、
σB≧1600-30δ 式I
上記式Iにおいて、σB≧400、かつ、δ≧20である、チタン材料である。
【0011】
本開示のチタン材料は、高い強度を有することができる。さらに本開示のチタン材料は高い延性を有することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、前記チタン材料は、チタンを98.8質量%以上含んでもよい。これによると、チタン材料の生体適合性を高めることができる。
【0013】
(3)本開示のチタン材料は、チタンを91質量%以上含むチタン材料であって、
前記チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2MPaおよび前記チタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式IIの関係を示す、
σ0.2>600c+180 式II
上記式IIにおいて、cは0以上9以下である、チタン材料である。
【0014】
本開示のチタン材料は、高い強度を有することができる。
【0015】
(4)上記(3)において、前記チタン材料は、チタンを98.8質量%以上含んでもよい。これによると、チタン材料の生体適合性を高めることができる。
【0016】
(5)本開示のチタン材料は、チタンを91質量%以上含むチタン材料であって、
前記チタン材料の引張強度σBMPaおよび前記チタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式IIIの関係を示す、
σB>600c+280 式III
上記式IIIにおいて、cは0以上9以下である、チタン材料である。
【0017】
本開示のチタン材料は、高い強度を有することができる。
【0018】
(6)上記(5)において、前記チタン材料は、チタンを98.8質量%以上含んでもよい。これによると、チタン材料の生体適合性を高めることができる。
【0019】
(7)上記(5)または(6)において、前記チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%は、下記式Iの関係を示してもよい。
σB≧1600-30δ 式I
上記式Iにおいて、σB≧400、かつ、δ≧20である。
【0020】
これによると、チタン材料は高い強度を有することができる。
【0021】
(8)上記(5)から(7)のいずれかにおいて、前記チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2MPaおよび前記チタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式IIの関係を示してもよい。
σ0.2>600c+180 式II
上記式IIにおいて、cは0以上9以下である。
【0022】
これによると、チタン材料は高い強度を有することができる。
【0023】
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径は、1μm以上1000μm以下であり、
前記チタン材料は、オメガ相の結晶構造を有するチタンを50質量%以上含んでもよい。これによると、チタン材料は高い強度および高い延性を有することができる。
【0024】
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、前記チタン材料の圧縮試験における0.2%耐力は、570MPa以上であってもよい。これによると、チタン材料は高い強度を有することができる。
【0025】
(11)上記(1)から(10)のいずれかにおいて、前記チタン材料のビッカース硬さは、200Hv以上であってもよい。これによると、チタン材料は高い硬度を有することができる。
【0026】
(12)上記(1)から(11)のいずれかにおいて、前記チタン材料の耐熱温度は、100℃以上であってもよい。これによると、チタン材料は、100℃以上の高温でも高い強度を維持することができる。
【0027】
(13)上記(1)から(12)のいずれかにおいて、前記チタン材料の体積は、0.001m以上であってもよい。該チタン材料は、生体用金属材料として十分な大きさを有するため、歯科用インプラントや人工関節等の様々な用途に使用することができる。
【0028】
(14)上記(1)から(13)のいずれかにおいて、前記チタン材料は、98.8質量%以上のチタンを含み、
前記チタン材料は、水素、炭素、窒素、酸素および鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の不純物元素を含み、
前記チタン材料の前記チタンおよび前記不純物元素の合計含有率は、99.99質量%以上であってもよい。
【0029】
これによると、チタン材料は優れた生体適合性を有することができる。
【0030】
(15)上記(1)から(14)のいずれかにおいて、前記チタン材料を構成する結晶粒の体積基準の累積粒度分布における、小径側からの累積10%粒子径D10に対する、前記小径側からの累積90%粒子径D90の割合D90/D10は、5以上1000以下であってもよい。
【0031】
これによると、チタン材料の強度および延性が均質化され、チタン材料は更に高い強度および高い延性を有することができる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のチタン材料を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
【0033】
本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0034】
本明細書において、「強度」とは、引張強度、引張試験における0.2%耐力、および、圧縮試験における0.2%耐力の少なくともいずれかを含む意味とする。
【0035】
[実施形態1:チタン材料]
本開示の一実施の形態(以下、「実施形態1」とも記す。)に係るチタン材料について説明する。
【0036】
まず、本開示の理解を深めるために、従来のチタン材料の強度および延性について図1を用いて説明する。図1は、従来のチタン材料および実施形態1のチタン材料の強度と延性との関係を示す座標系である。図1の座標系において、X軸は引張強度σB(MPa)を示し、Y軸は破断伸びδ(%)を示す。引張強度は材料の強度を示す指標の一つであり、数値が大きいほど強度が高いことを示す。破断伸びは材料の延性を示す指標の一つであり、数値が大きいほど、延性が高いことを示す。図1において、従来のチタン材料は、JIS-1~JIS-4、Ti-Fe、Ti-3Al-2.5Vおよびβ合金で示され、これらの引張強度および破断伸びのデータは、藤井秀樹、前田尚志(2013)「新日鐵住金(株)の独自チタン合金」、新日鐵住金技法第396号、pp.16-22の図1を参考にして作成された。
【0037】
上記JIS-1~JIS-4およびβ合金は、JIS H 4600:2012「チタンおよびチタン合金-板および条」に記載される工業用純チタンを意味する。具体的には、JIS-1はJIS H 4600 1種を意味し、JIS-2はJIS H 4600 2種を意味し、JIS-3はJIS H 4600 3種を意味し、JIS-4はJIS H 4600 4種を意味する。JIS-1~JIS-4は、チタンの含有率が約99質量%以上であり、アルファ相の結晶構造を有している。以下、アルファ相の結晶構造を有する純チタンを、アルファ純チタンとも記す。
【0038】
上記Ti-Fe、Ti-3Al-2.5Vおよびβ合金(JIS H 4600 80種、Ti-22V-4Al)は、チタン合金を意味する。
【0039】
図1に示されるように、チタン含有率の高いアルファ純チタンは、高い破断伸び(以下、延性とも記す。)を有するが、引張強度(強度とも記す。)が小さかった。一方、チタンに他の金属を添加したチタン合金は、高い引張強度を有するが、破断伸びが小さかった。このように、従来のチタン材料では、強度と延性とはトレードオフの関係にあり、高い強度と高い延性とを両立できるチタン材料を得ることはできなかった。
【0040】
本発明者らは、鋭意検討の結果、高い強度および高い延性を有するチタン材料を作製することができた。以下、実施形態1のチタン材料の詳細について説明する。
【0041】
<チタン材料>
実施形態1のチタン材料は、チタンを91質量%以上含むチタン材料であって、
前記チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%は、下記式Iの関係を示す、
σB≧1600-30δ 式I
上記式Iにおいて、σB≧400、かつ、δ≧20である、チタン材料である。
【0042】
上記式Iの関係を示すチタン材料について、図1を用いて説明する。図1において、上記式Iの関係を示す領域は、斜線で示される領域である。斜線で示される領域は、破断伸びが20%以上であり延性が高く、引張強度が400MPa以上であり強度が高い。実施形態1のチタン材料は、上記式Iの関係を満たすため、高い強度および高い延性を有する。従来のチタン材料は、全てσB<1600-30δで示される領域の強度および延性を有し、上記式Iの関係を満たさない。
【0043】
更に、上記式Iの関係を示す領域は、同等の強度を有する従来のチタン材料と比較した場合、破断伸びの大きさが大きい。すなわち、実施形態1のチタン材料は、同等の強度を有する従来のチタン材料と比較した場合、延性が優れている。
【0044】
チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%は、下記式I-Aの関係を示すことが好ましい。
σB>1875-30δ 式I-A
上記式I-Aにおいて、σB≧400、かつ、δ≧20である。
上記式I-Aの関係を満たすチタン材料は、更に高い強度および高い延性を有することができる。
【0045】
チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%は、下記式I-Bの関係を示すことが好ましい。
σB>1900-30δ 式I-B
上記式I-Bにおいて、σB≧400、かつ、δ≧20である。
上記式I-Bの関係を満たすチタン材料は、更に高い強度および高い延性を有することができる。
【0046】
<引張強度σB>
実施形態1のチタン材料の引張強度σBの下限は400MPa以上である。チタン材料の引張強度σBの下限は、優れた強度を確保する観点から、500MPa以上が好ましく、600MPa以上がより好ましく、800MPa以上が更に好ましい。チタン材料の引張強度σBの上限は特に制限されないが、例えば1550MPa未満とすることができる。チタン材料の引張強度σBは、400MPa以上1550MPa未満が好ましく、500MPa以上1550MPa未満が好ましく、600MPa以上1550MPa未満がより好ましく、800MPa以上1550MPa未満が更に好ましい。
【0047】
チタン材料の引張強度σBの測定は、JIS Z 2241:2011「金属材料引張試験方法」に準拠して行われる。試験温度は23℃±5℃とする。
【0048】
<破断伸びδ>
実施形態1のチタン材料の破断伸びδは、20%以上である。チタン材料の破断伸びδの下限は、優れた延性を確保する観点から、25%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、35%以上が更に好ましい。チタン材料の破断伸びδの上限は、例えば、50%以下、または、45%以下とすることができる。チタン材料の破断伸びδは、20%以上50%以下が好ましく、25%以上50%以下が好ましく、30%以上50%以下が好ましく、35%以上50%以下が好ましく、20%以上45%以下が好ましく、25%以上45%以下が好ましく、30%以上45%以下が好ましい。
【0049】
チタン材料の破断伸びδの測定は、JIS Z 2241:2011「金属材料引張試験方法」に準拠して行われる。試験温度は23℃±5℃とする。
【0050】
<組成>
実施形態1のチタン材料は、チタンを91質量%以上含む。チタン材料のチタン含有率の下限は、生体適合性を高めるという観点から、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が好ましく、98.955質量%以上が更に好ましく、99.2質量%以上が更に好ましく、99.495質量%以上が更に好ましく、99.999質量%以上が更に好ましい。チタン材料のチタン含有率の上限は、100質量%以下が好ましい。すなわち、チタン材料はチタン100質量%からなることもできる。チタン材料のチタン含有率は、91質量%以上100質量%以下が好ましく、95質量%以上100質量%以下が好ましく、98質量%以上100質量%以下が好ましく、98.955質量%以上100質量%以下が好ましく、99.2質量%以上100質量%以下が好ましく、99.495質量%以上100質量%以下が好ましく、99.999質量%以上100質量%以下が好ましい。
【0051】
実施形態1のチタン材料のチタン含有率の上限は、不可避不純物を考慮した場合は、例えば、99.9999質量%以下とすることができる。チタン材料のチタン含有率は、91質量%以上99.9999質量%以下が好ましく、95質量%以上99.9999質量%以下が好ましく、98質量%以上99.9999質量%以下が好ましく、98.955質量%以上99.9999質量%以下が好ましく、99.2質量%以上99.9999質量%以下が好ましく、99.495質量%以上99.9999質量%以下が好ましく、99.9990質量%以上99.9999質量%以下が好ましい。
【0052】
実施形態1のチタン材料は、チタン100質量%からなることができる。また、実施形態1のチタン材料は、チタン以外の成分を0質量%超9質量%以下含むことができる。該チタン以外の成分としては、例えば、一般的な遷移金属元素(スカンジウム(Sc)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)等)や、不可避不純物としての水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)が挙げられる。
【0053】
チタン材料のチタン以外の成分の含有率の上限は不可避不純物も含め、9質量%以下である。チタン材料のチタン以外の成分の含有率は、チタン材料全体100質量%から、チタンの含有率を減じた値とすることができる。
【0054】
チタン材料のチタン以外の成分の含有率は、該成分が遷移金属元素の場合は、ICP分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)で測定される。該成分がC、N、O、H等の遷移金属元素以外の元素の場合は、SIMS分析法(二次イオン質量分析法)で測定される。
【0055】
チタン材料のチタン含有率の測定方法は、チタン以外の成分の含有率を上記の方法で測定し、チタン材料を100質量%として、これからチタン以外の成分の含有率を減じて求められる。
【0056】
実施形態1において、チタン材料は、98.8質量%以上のチタンを含み、チタン材料は、水素、炭素、窒素、酸素および鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の不純物元素を含み、チタン材料のチタンおよび不純物元素の合計含有率は、99.99質量%以上であることが好ましい。これによると、チタン材料は、従来のチタン合金に含まれているバナジウム(V)やアルミニウム(Al)などの生体に有害な成分を含まない、または、含んでいても非常に微量であるため、優れた生体適合性を有することができる。
【0057】
チタン材料のチタンおよび上記不純物元素の合計含有率は、99.99質量%以上100質量%以下が好ましく、99.999質量%以上100質量%以下がより好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0058】
<平均粒径>
実施形態1のチタン材料を構成する結晶粒の平均粒径(以下、「チタン材料の平均粒径」とも記す。)は、1μm以上1000μm以下が好ましい。これによると、チタン材料は優れた強度および延性を有することができる。
【0059】
チタン材料の平均粒径の下限は、優れた強度を確保する観点から、1μm以上が好ましく、3μm以上が好ましく、5μm以上が好ましく、10μm以上が好ましく、20μm以上が好ましい。チタン材料の平均粒径の上限は、優れた強度を確保する観点から、1000μm以下が好ましく、500μm以下が好ましく、200μm以下が好ましく、100μm以下が好ましく、50μm以下が好ましい。チタン材料の平均粒径は、1μm以上1000μm以下が好ましく、3μm以上500μm以下が好ましく、5μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下が好ましい。
【0060】
本明細書において、チタン材料の平均粒径は切断法で測定される。具体的な測定方法は以下の通りである。チタン材料の研磨面を光学顕微鏡を用いて倍率100倍で撮像し、光学顕微鏡画像を得る。実施形態1のチタン材料の光学顕微鏡画像の一例を図2に示す。
【0061】
該光学顕微鏡画像に直径50mmの円を書き、円の中心から8本の直線を放射状に円の外周まで引き、円の中で直線が粒子の粒界を横切る数を数える。そして、直線の長さをその横切る数で割ることで平均切片長さを求め、該平均切片長さに2次元粒径への変換係数1.128を掛けた値が平均粒径である。
【0062】
1つの測定試料に対して上記の測定を3箇所で行い、該3箇所における平均粒径の平均値を、本明細書におけるチタン材料の平均粒径とする。
【0063】
なお、出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、チタン材料の平均粒径の測定を、測定個所を変更して複数回行っても、測定結果のばらつきはほとんどなく、任意に測定箇所を設定しても恣意的にはならないことが確認された。
【0064】
チタン材料を構成する結晶粒の粒径は、強度および延性の均質化の観点から、ばらつきが小さいことが好ましい。チタンを構成する結晶粒の体積基準の累積粒度分布における、小径側からの累積10%粒子径D10に対する、小径側からの累積90%粒子径D90の割合D90/D10は、5以上1000以下が好ましく、10以上1000以下が好ましい。D90/D10の値が小さいほど、結晶粒の粒径のばらつきが小さいことを示す。
【0065】
上記D90/D10を算出するための各結晶粒の粒径は、上記の切断法と同一の条件で撮像された光学顕微鏡画像に対して市販の画像解析ソフトウエアを用いて画像処理を行い、各結晶粒の円相当径を測定することにより求められる。該光学顕微鏡画像中に50mm×50mmの測定視野を設定し、該測定視野中に観察される全結晶粒に基づき、体積基準の累積粒度分布を作成する。該累積粒度分布に基づき、D90/D10を算出する。
【0066】
<オメガ相の結晶構造を有するチタン>
実施形態1のチタン材料は、オメガ相の結晶構造を有するチタンを50質量%以上含むことが好ましい。これによると、チタン材料は優れた強度および延性を有することができる。
【0067】
本開示のチタン材料の理解を深めるために、チタンの結晶構造について説明する。図3のチタンの温度-圧力相図に示されるように、チタンには、アルファ相(図3においてαと示される相)の結晶構造を有するアルファチタン、ベータ相(図3においてβと示される相)の結晶構造を有するベータチタンおよびオメガ相(図3においてωと示される相)の結晶構造を有するオメガチタンの3つの相が存在する。アルファチタンは常温常圧での安定相であり、六方最密充填格子(hcp)の結晶構造を有する。ベータチタンは高温側での安定相であり、体心立方格子(bcc)の結晶構造を有する。オメガチタンは、ベータチタンからアルファチタンを晶出する際に生じる準安定の遷移相であり、単純六方晶の結晶構造を有する。
【0068】
これまで、常温常圧下でのオメガチタンの存在は、アルファチタンを約99質量%以上含むアルファ純チタンの製造工程において、アルファチタン相中にナノ粒子として微量析出するものとして確認されていた。該オメガチタンは、アルファ純チタンを脆弱化させる。よって、従来は、アルファ純チタン中のオメガチタンの含有量を低減させることが好ましいと考えられていた。
【0069】
本発明者等は、従来のアルファ純チタン中のオメガチタンの含有量を低減させるという技術的思想とは全く逆の発想の下、試行錯誤の結果、オメガチタンを50体積%以上含むチタン材料を作製した。該チタン材料は、優れた強度および延性を有することが確認された。
【0070】
チタン材料のオメガ相の結晶構造を有するチタンの含有率(以下、オメガチタンの含有率とも記す。)の下限は、強度および延性の向上の観点から、50質量%以上が好ましく、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98.8質量%以上、99質量%以上、99.2質量%以上、99.5質量%以上、または、99.999質量%以上が好ましい。チタン材料のオメガチタンの上限は、100質量%以下が好ましい。すなわち、チタン材料はオメガチタン100質量%からなることもできる。チタン材料のオメガチタン含有率は、50質量%以上100質量%以下、55質量%以上100質量%以下、60質量%以上100質量%以下、65質量%以上100質量%以下、70質量%以上100質量%以下、75質量%以上100質量%以下、80質量%以上100質量%以下、85質量%以上100質量%以下、90質量%以下100質量%以下、95質量%以下100質量%以下、98.8質量%以上100質量%以下、99質量%以上100質量%以下、99.2質量%以上100質量%以下、または、99.999質量%以上100質量%以下が好ましい。
【0071】
実施形態1のチタン材料のオメガチタン含有率の上限は、不可避不純物を考慮した場合は、例えば、99.9999質量%以下とすることができる。チタン材料のオメガチタン含有率は、50質量%以上99.9999質量%以下、55質量%以上99.9999質量%以下、60質量%以上99.9999質量%以下、65質量%以上99.9999質量%以下、70質量%以上99.9999質量%以下、75質量%以上99.9999質量%以下、80質量%以上99.9999質量%以下、85質量%以上99.9999質量%以下、90質量%以上99.9999質量%以下、95質量%以上99.9999質量%以下、98.8質量%以上99.9999質量%以下、99質量%以上99.9999質量%以下、99.2質量%以上99.9999質量%以下、または、99.9990質量%以上99.9999質量%以下が好ましい。
【0072】
実施形態1のチタン材料は、本開示の効果を示す範囲において、オメガチタンに加えて、アルファチタンおよびベータチタンの一方または両方を含んでいても構わない。チタン材料中のアルファチタンおよびベータチタンの合計含有率の上限は、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1.2質量%以下、または、1質量%以下が好ましい。チタン材料中のアルファチタンおよびベータチタンの合計含有率の下限は特に限定されないが、例えば、0質量%以上が好ましいが、0.01質量%以上でもよい。チタン材料中のアルファチタンおよびベータチタンの合計含有率は、0質量%以上50質量%以下、0質量%以上45質量%以下、0質量%以上40質量%以下、0質量%以上35質量%以下、0質量%以上30質量%以下、0質量%以上25質量%以下、0質量%以上20質量%以下、0質量%以上15質量%以下、0質量%以上10質量%以下、0質量%以上5質量%以下、0質量%以上1.2質量%以下、0質量%以上1質量%以下、0.01質量%以上50質量%以下、0.01質量%以上45質量%以下、0.01質量%以上40質量%以下、0.01質量%以上35質量%以下、0.01質量%以上30質量%以下、0.01質量%以上25質量%以下、20質量%以下、0.01質量%以上15質量%以下、0.01質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上5質量%以下、0.01質量%以上1.2質量%以下、または、0.01質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0073】
チタン材料中のオメガチタン、アルファチタンおよびベータチタンの含有量は、オメガチタン、アルファチタンおよびベータチタンに特有のX線回折ピークの強度比から算出する。
【0074】
<圧縮試験における0.2%耐力>
実施形態1のチタン材料の圧縮試験における0.2%耐力は、570MPa以上であることが好ましい。これによると、高い強度を有することができる。
【0075】
チタン材料の圧縮試験における0.2%耐力の下限は、優れた強度を確保する観点から、600MPa以上が好ましく、700MPa以上がより好ましく、800MPa以上が更に好ましい。チタン材料の圧縮試験における0.2%耐力の上限は大きい方が好ましいため、特に限定されないが、例えば、5000MPa以下とすることができる。チタン材料の圧縮試験における0.2%耐力は、570MPa以上5000MPa以下が好ましく、600MPa以上5000MPa以下が好ましく、700MPa以上5000MPa以下がより好ましく、800MPa以上5000MPa以下が更に好ましい。
【0076】
チタン材料の圧縮試験における0.2%耐力の測定は、JIS R 1608:2003「ファインセラミックスの圧縮強さ試験方法」に準拠して行われる。試験温度は23℃±5℃とする。
【0077】
<ビッカース硬さ>
実施形態1のチタン材料のビッカース硬さは、200Hv以上であることが好ましい。これによると、チタン材料は優れた硬度を有することができる。該チタン材料は、摩耗が生じ難い。
【0078】
チタン材料のビッカース硬さの下限は、優れた硬度を確保する観点から、200Hv以上が好ましく、220Hv以上がより好ましい。チタン材料のビッカース硬さの上限は大きい方が好ましいため、特に限定されないが、例えば、400Hv以下とすることができる。チタン材料のビッカース硬さは、200Hv以上400Hv以下が好ましく、220Hv以上400Hv以下がより好ましい。
【0079】
チタン材料のビッカース硬さの測定は、JIS Z 2244:2009「ビッカース硬さ試験-試験方法」に準拠して行われる。試験温度は23℃±5℃とする。
【0080】
なお、出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、チタン材料におけるビッカース硬さの測定を、測定個所を変更して複数回行っても、測定結果のばらつきはほとんどなく、任意に測定箇所を設定しても恣意的にはならないことが確認された。
【0081】
<耐熱温度>
実施形態1のチタン材料の耐熱温度は、100℃以上であることが好ましい。これによると、チタン材料は、100℃以上の高温でも優れた強度を維持することができる。
【0082】
実施形態1のチタン材料の耐熱温度の下限は、優れた強度を確保する観点から、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましい。チタン材料の耐熱温度の上限は、高いほど好ましいため、特に限定されないが、例えば、190℃以下とすることができる。チタン材料の耐熱温度は、100℃以上190℃以下が好ましく、120℃以上190℃以下がより好ましく、140℃以上190℃以下が更に好ましい。
【0083】
チタン材料の耐熱温度は、X線回折分析により、25℃におけるX線回折パターンと、所定温度におけるX線回折パターンとを比較することにより測定される。具体的な測定の測定方法は、以下の通りである。
【0084】
チタン材料の表面を研磨して測定用試料を準備する。X線回折装置を用いて、下記の測定条件で測定用試料にX線を照射し、X線回折パターンを得る。測定時の温度は、25℃および25℃超える温度を適宜複数選択し、それぞれの温度においてX線回折パターンを得る。
【0085】
(X線回折装置の条件)
特性X線: Cu-Kα(波長1.54Å)
フィルター: 多層ミラー
光学系: 集中法
X線回折法: θ-2θ法
【0086】
25℃におけるX線回折パターンと、25℃超の所定の温度(以下、「所定温度」とも記す。)におけるX線回折パターンとを比較し、両方のX線回折パターンの形状が一致している場合、該測定用試料は、該所定温度において結晶構造が維持されており、耐熱性を有すると判断される。ここで、「両方のX線回折パターンが一致」していることは、全ての回折ピーク位置が全て一致しており、かつ各回折ピークの強度の順番も一致することにより確認される。
【0087】
上記のX線回折測定は、25℃超の所定温度のX線回折パターンが、25℃における線回折パターンと異なる形状となるまで、温度条件を上昇させて行う。得られた複数のX線回折パターンのうち、25℃におけるX線回折パターンと一致する、最も高い温度におけるX線回折パターンを特定する。該最も高い温度を、該測定用試料の耐熱温度とする。
【0088】
実施形態1のチタン材料にX線を照射して得られるX線回折パターンの一例を図4に示す。図4では、X軸は2θ(deg)を示し、Y軸は強度(cps)を示す。図4には、同一のチタン材料に対して、25℃および40℃から210℃までは10℃間隔の温度条件でX線回折測定を行い、これにより得られた各温度におけるX線回折パターンが示されている。
【0089】
図4に示される各温度のX線パターンの形状を比較したところ、25℃におけるX線回折パターンと、40℃~180℃におけるX線回折パターンとが一致していることが確認される。よって、図4に示されるチタン材料の耐熱温度は180℃と判断される。
【0090】
<体積>
実施形態1のチタン材料の体積は、0.001mm以上であることが好ましい。該チタン材料は、生体用金属材料として十分な大きさを有するため、歯科用インプラントや人工関節等の様々な用途に使用することができる。
【0091】
チタン材料の体積の下限は、0.001mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、100mm以上が更に好ましい。チタン材料の体積の上限は大きい方が好ましいため、特に限定されないが、例えば、100000mm以下が好ましい。チタン材料の体積は、0.001mm以上100000mm以下が好ましく、10mm以上100000mm以下がより好ましく、100mm以上100000mm以下が更に好ましい。チタン材料の体積は、アルキメデス法により測定される。
【0092】
[実施形態2:チタン材料]
本開示の他の実施形態(以下、「実施形態2」とも記す。)に係るチタン材料について説明する。
【0093】
まず、本開示の理解を深めるために、従来のチタン材料の引張試験における0.2%耐力とチタン材料のチタン以外の成分の含有率との関係について図5を用いて説明する。図5は、従来のチタン材料および実施形態2のチタン材料の引張試験における0.2%耐力とチタン材料のチタン以外の成分の含有率との関係を示す座標系である。図5の座標系において、X軸はチタン材料のチタン以外の成分の含有率c(質量%)を示し、Y軸は引張試験における0.2%耐力σ0.2(MPa)を示す。引張試験における0.2%耐力は材料の強度を示す指標の一つであり、数値が大きいほど強度が高いことを示す。図5において、従来のチタン材料は、ASTM Gr.1~ASTM Gr.4で示され、それぞれのチタン材料について、引張試験における0.2%耐力の上限および下限が示されている。これらのデータは、ASTM(American Society fоr Testing and Materials)および、日本スチール社製のホームページ(https://www.nipponsteel.com/product/titan/pdf/index01.pdf)に記載のデータに基づき作成された。
【0094】
上記ASTM Gr.1~ASTM Gr.4は、ASTMに記載される純チタンを意味する。これらの純チタンは、チタンの含有率が約99質量%以上であり、アルファ相の結晶構造を有しているアルファ純チタンである。
【0095】
図5に示されるように、従来のチタン材料は、チタン以外の成分の含有率が大きい程、引張試験における0.2%耐力が大きく、強度が高かった。一方、特に生体用金属材料の用途では、生体適合性の観点から、チタン以外の成分の含有率を大きくすることは好ましくない。しかし、図5に示されるように、従来のチタン材料では、引張試験における0.2%耐力を大きくするためには、チタン以外の成分の含有率を大きくする必要があった。
【0096】
本発明者らは、鋭意検討の結果、チタン以外の成分の含有率を維持したまま、高い0.2%耐力、すなわち高い強度を有するチタン材料を作製することができた。以下、実施形態2のチタン材料の詳細について説明する。
【0097】
<チタン材料>
実施形態2のチタン材料は、チタンを91質量%以上含むチタン材料であって、
上記チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2MPaおよび上記チタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式IIの関係を示す、
σ0.2>600c+180 式II
上記式IIにおいて、cは0以上9以下である、
チタン材料である。
【0098】
上記式IIの関係を示すチタン材料について、図5を用いて説明する。図5において、上記式IIの関係を示す領域は、斜線で示される領域である。上記式IIの関係を示す領域は、同等のチタン以外の成分の含有率を有する従来のチタン材料と比較した場合、引張試験における0.2%耐力が高い。すなわち、上記式IIの関係を満たす実施形態2のチタン材料は、同等のチタン以外の成分の含有率を有する従来のチタン材料と比較した場合、強度が高い。なお、従来のチタン材料は、全てσ0.2<600c+180で示される領域の引張試験における0.2%耐力およびチタン以外の成分の含有率を有し、上記式IIの関係を満たさない。
【0099】
チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2MPaおよびチタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式II-Aの関係を示すことが好ましい。
σ0.2>600c+180 式II-A
上記式II―Aにおいて、cは0以上9以下である、または、cは0以上1.2以下である。
上記式II-Aの関係を満たすチタン材料は、同等のチタン以外の成分の含有率を有する従来のチタン材料と比較した場合、更に高い強度を有することができる。
【0100】
チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2MPaおよびチタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式II-Bの関係を示すことが好ましい。
σ0.2>600c+250 式II-B
上記式II-Bにおいて、cは0以上9以下である、または、cは0以上1.2以下である。
上記式II-Bの関係を満たすチタン材料は、同等のチタン以外の成分の含有率を有する従来のチタン材料と比較した場合、更に高い強度を有することができる。
【0101】
<引張試験における0.2%耐力σ0.2
実施形態2のチタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2は180MPa超である。チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2の下限は、優れた強度を確保する観点から、250MPa以上が好ましく、400MPa以上がより好ましく、550MPa以上が更に好ましい。チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2の上限は大きい方が好ましいため、特に限定されない。
【0102】
チタン材料の引張試験における0.2%耐力の測定は、JIS Z 2241:2011「金属材料引張試験方法」に準拠して行われる。試験温度は23℃±5℃とする。
【0103】
実施形態2において、チタン材料の組成、チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径、チタン材料のオメガ相の結晶構造を有するチタンの含有率、チタン材料の圧縮試験における0.2%耐力、チタン材料のビッカース硬さ、チタン材料の耐熱温度、チタン材料の体積の範囲は、実施の形態1に記載の範囲と同一とすることができる。
【0104】
実施形態2において、チタン材料は、98.8質量%以上のチタンを含んでもよい。実施形態2において、チタン材料は、98.8質量%以上のチタンを含み、該チタン材料は、水素、炭素、窒素、酸素および鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の不純物元素を含み、該チタン材料の該チタンおよび該不純物元素の合計含有率は、99.99質量%以上であることが好ましい。これによると、チタン材料の強度および延性が更に向上する。
【0105】
実施形態2において、チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%の関係は、実施形態1と同様とすることができる。すなわち、チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%は、実施形態1に記載の式I、式I-A、式I-Bの関係を示すことが好ましい。これによると、チタン材料の強度および延性が更に向上する。
【0106】
[実施形態3:チタン材料]
本開示の他の実施形態(以下、「実施形態3」とも記す。)に係るチタン材料について説明する。
【0107】
まず、本開示の理解を深めるために、従来のチタン材料の引張強度とチタン材料のチタン以外の成分の含有率との関係について図6を用いて説明する。図6は、従来のチタン材料および実施形態3のチタン材料の引張強度とチタン材料のチタン以外の成分の含有率との関係を示す座標系である。図6の座標系において、X軸はチタン材料のチタン以外の成分量c(質量%)を示し、Y軸はチタン材料の引張強度σB(MPa)を示す。引張強度は材料の強度を示す指標の一つであり、数値が大きいほど強度が高いことを示す。図6において、従来のチタン材料は、JIS-1~JIS-4で示され、それぞれのチタン材料について、引張強度の上限および下限が示されている。これらのデータは、JIS H 4600:2012「チタンおよびチタン合金-板および条」および日本スチール社製のホームページ(https://www.nipponsteel.com/product/titan/pdf/index01.pdf)に記載のデータに基づき作成された。
【0108】
図6に示されるように、従来のチタン材料は、チタン以外の成分の含有率が大きい程、引張強度が大きく、強度が高かった。一方、特に生体用金属材料の用途では、生体適合性の観点から、チタン以外の成分の含有率を大きくすることは好ましくない。しかし、図6に示されるように、従来のチタン材料では、引張強度を大きくするためには、チタン以外の成分の含有率を大きくする必要があった。
【0109】
本発明者らは、鋭意検討の結果、チタン以外の成分の含有率を維持したまま、高い引張強度、すなわち高い強度を有するチタン材料を作製することができた。以下、実施形態3のチタン材料の詳細について説明する。
【0110】
<チタン材料>
実施形態3のチタン材料は、チタンを91質量%以上含むチタン材料であって、
上記チタン材料の引張強度σBMPaおよび上記チタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式IIIの関係を示す、
σB>600c+280 式III
上記式IIIにおいて、cは0以上9以下である、
チタン材料である。
【0111】
上記式IIIの関係を示すチタン材料について、図6を用いて説明する。図6において、上記式IIIの関係を示す領域は、斜線で示される領域である。上記式IIIの関係を示す領域は、同等のチタン以外の成分の含有率を有する従来のチタン材料と比較した場合、引張強度が高い。すなわち、上記式IIIの関係を満たす実施形態3のチタン材料は、同等のチタン以外の成分の含有率を有する従来のチタン材料と比較した場合、引張強度が高い。なお、従来のチタン材料は、全てσB<600c+280で示される領域の引張強度およびチタン以外の成分の含有率を有し、上記式IIIの関係を満たさない。
【0112】
チタン材料の引張強度σBMPaおよびチタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式III-Aの関係を示すことが好ましい。
σB>600c+280 式III-A
上記式III―Aにおいて、cは0以上9以下である、または、0.15以上9以下である。
上記式III-Aの関係を満たすチタン材料は、同等のチタン以外の成分の含有率を有する従来のチタン材料と比較した場合、更に高い強度を有することができる。
【0113】
チタン材料の引張強度σBMPaおよびチタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、下記式III-Bの関係を示すことが好ましい。
σB>600c+320 式III-B
上記式III-Bにおいて、cは0以上9以下である、または、0.15以上9以下である。
上記式III-Bの関係を満たすチタン材料は、同等のチタン以外の成分の含有率を有する従来のチタン材料と比較した場合、更に高い強度を有することができる。
【0114】
実施形態3において、チタン材料の組成、チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径、チタン材料のオメガ相の結晶構造を有するチタンの含有率、チタン材料の圧縮試験における0.2%耐力、チタン材料のビッカース硬さ、チタン材料の耐熱温度、チタン材料の体積は、実施の形態1と同一とすることができる。
【0115】
実施形態3において、チタン材料は、98.8質量%以上のチタンを含んでもよい。実施形態3において、チタン材料は、98.8質量%以上のチタンを含み、該チタン材料は、水素、炭素、窒素、酸素および鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の不純物元素を含み、該チタン材料の該チタンおよび該不純物元素の合計含有率は、99.99質量%以上であることが好ましい。これによると、チタン材料の強度および延性が更に向上する。
【0116】
実施形態3において、チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%の関係は、実施形態1と同一とすることができる。すなわち、チタン材料の引張強度σBMPaおよび破断伸びδ%は、実施形態1に記載の式I、式I-A、式I-Bの関係を示すことが好ましい。これによると、チタン材料の強度および延性が更に向上する。
【0117】
実施形態3において、チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2MPaおよびチタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%の関係は、実施形態2と同一とすることができる。すなわち、チタン材料の引張試験における0.2%耐力σ0.2MPaおよびチタン材料のチタン以外の成分の含有率c質量%は、実施形態2に記載の式II、式II-A、式II-Bの関係を示すことが好ましい。これによると、チタン材料の強度および延性が更に向上する。
【0118】
[実施形態4:チタン材料の製造方法]
実施形態1~実施形態3のチタン材料の製造方法(以下、「実施形態4」とも記す。)について以下に説明する。なお、本開示のチタン材料は、以下の製造方法で作製されたものに限定されず、他の方法で作製されたものも含まれる。
【0119】
実施形態4のチタン材料の製造方法の理解を深めるために、従来のチタン材料の製造方法について説明する。
【0120】
特許文献1では、純チタン、αチタン合金、α+βチタン合金に1.5GPa以上の圧力下で加工歪0.5以上の塑性加工を施すことによりチタン材料を製造する。特許文献1のチタン材料を構成する結晶粒の粒径は数百ナノメートル程度と小さいため延性が低いと推察される。また、該チタン材料は、原料に加工歪を与えながら作製されるため、チタン材料の中心部と端部との間に歪勾配が存在し、不均質であり、引張強度などの機械的性質の測定対象として不適切である。
【0121】
本発明者らは、鋭意検討の結果、高い強度および高い延性を有する本開示のチタン材料の製造方法を新たに見出した。以下、実施形態4のチタン材料の製造方法の詳細について説明する。
【0122】
<超高温高圧発生装置>
まず、実施形態4のチタン材料の製造に用いる超高圧高温発生装置について、図7を用いて説明する。図7は、実施形態4で用いられる超高圧高温発生装置の高圧セルの模式的断面図である。図7に示されるように、高圧セル10は、正八面体の形状を有する圧力媒体1と、該圧力媒体1の内部に配置される試料容器2と、該試料容器の周囲に配置される発熱体3とを備える。試料容器2は、六方晶窒化硼素からなる。発熱体3はグラファイトからなる。試料容器2の内部に原料4が封入される。実施形態4で用いられる超高圧高温発生装置の最大荷重は、例えば2800トンである。
【0123】
(原料の準備)
原料として、チタンを98.8質量%以上含む従来のチタン合金または純チタンを準備する。該チタン合金および純チタン中のチタンは、アルファ相の結晶構造を有するアルファチタンである。
【0124】
(高圧高温処理)
上記の原料を六方晶窒化硼素多結晶体製の試料容器に入れ、超高圧高温発生装置を使用して、6~11GPaまで加圧後、200~600℃まで加熱し、1~5時間保持する。これにより、本開示のチタン材料が得られる。上記の方法で得られた本開示のチタン材料は高い強度および高い延性を有する。この理由は、以下の通りと推察される。
【0125】
上記条件での高圧高温処理により、原料中のアルファチタンの少なくとも一部がオメガチタンに変換される。アルファチタンからオメガチタンへの相変態では、原子の再配列が行われる。原子の再配列にはエネルギーが必要である。よって、アルファチタンからオメガチタンへの相変態は、ヒステリシスの影響で、図3のα→ωヒステリシスで示される点線を超える圧力および温度下で開始する。
【0126】
実施形態4では、高圧高温処理は図3のα→ωヒステリシスで示される点線近傍の圧力および温度条件で行われる。この条件では過剰圧が低く、オメガチタンの結晶核が、粒界の重合点などの限られた場所のみで発生し、結晶核の過剰な発生が生じ難い。よって、得られたチタン材料を構成する結晶粒の粒径が大きくなりやすく、高い延性を有すると推察される。
【0127】
実施形態4では、超高圧高温装置の発熱体に熱伝導率の高いグラファイト(熱伝導率:2000W/(m・K))および試料容器に熱伝導率の高い六方晶窒化硼素(熱伝導率:600W/(m・K))を用いている。これらの材料は、熱伝導率が非常に大きいため、高圧高温処理時に、原料周辺に温度勾配が生じにくい。更に、グラファイトおよび六方晶窒化硼素は柔らかいため、試料に負荷される圧力も均等となりやすい。よって、結晶核が均質に成長し、得られたチタン材料は、結晶粒の粒径が均質であり、高い強度および高い延性を有すると推察される。
【0128】
実施形態4の製造方法では、合成圧力6~11GPa、かつ、製造装置の最大荷重が2800トンであるため、例えば、直径10mm、高さ6mm、体積471mm以上の円筒状の大型のチタン材料を作製可能である。該チタン材料は十分な直径を有するために、引張試験を行うための試験片を作製可能である。
【0129】
なお、澤幡ら(2018)、高圧下におけるω-Ti,ω-Zrの単相多結晶体の合成およびその力学特性評価 高圧力の科学と技術 28 特別号、および、澤幡ら(2019)、高圧下におけるω-Ti単相多結晶体の合成およびその曲げ特性評価 高圧力の科学と技術 29 特別号,93には、マルチアンビル高圧発生装置(最大荷重1000トン)を用いて、市販のα-Tiを12GPaおよび400℃で3時間処理してω-Tiを作製したことが開示されている。これらの文献では、アルファチタンからオメガチタンへの相変態を容易にするために、図3のα→ωヒステリシスで示される点線を十分に超える12GPaおよび400℃でα-Tiを処理していた。この圧力温度条件は、図3のα→ωヒステリシスで示される点線から離れており、過剰圧が高いため、多くのオメガチタンの結晶核が発生する。よって、得られたチタン材料を構成する結晶粒の粒径が小さく、数十~数百ナノメートル程度と推察される。
【0130】
また、これらの文献では、超高圧高温装置の発熱体としてランタンクロマイト酸化物(LaCr、熱伝導率:5W/(m・K)以下)、および、試料容器としてマグネシア(MgO:60W/(m・K))を用いている。これらの材料は、熱伝導率が小さいため、高圧高温処理時に、原料周辺に温度勾配が生じやすい。また、これらの材料は硬度が高いため、圧力勾配も生じやすい。よって、得られたチタン材料の結晶粒の粒径にばらつきが生じやすいと推察される。上記より、これらの文献で作製されたω-Tiは、本開示のチタン材料に比べて、強度および延性が低いと推察される。
【0131】
更に、上記の文献で得られるチタン材料は小さく(直径4mm、高さ3mm、体積37.7mmの円筒状)、引張強度などの機械的性質を測定するための試験片を作製することが不可能であった。上記の文献の製造条件は、12GPaという圧力を使用するため、チタン材料の大型化は困難であった。
【実施例
【0132】
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
【0133】
[実施例1]
<チタン材料の製造>
原料として、以下の組成を有するアルファ純チタンを準備した。N:0.03質量%、C:0.08質量%、H:0.015質量%、O:0.18質量%、Fe:0.20質量%、Ti(アルファ相の結晶構造を有する):残部。
【0134】
上記アルファ純チタンを六方晶窒化硼素多結晶体製の試料容器に入れ、マルチアンビル超高圧高温発生装置(Voggenreiter社製の「mavo press LPR 1000-400/50」、発熱体はグラファイト製、最大荷重2800トン)を使用して、8GPaまで加圧後、400℃まで加熱し、3時間保持して、チタン材料を得た。得られたチタン材料の大きさは、直径10mm、高さ6mm、体積471mmの円筒状であった。
【0135】
<評価>
上記の製造方法でチタン材料を作製し、組成、引張強度σB、破断伸びδ%、引張試験における0.2%耐力σ0.2、オメガチタンの含有率、チタン材料のチタン以外の成分の含有率c、チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径、圧縮試験における0.2%耐力、ビッカース硬さ、耐熱温度を測定した。それぞれの測定項目の測定方法は、実施形態1および実施形態2に記載の通りであるためその説明は繰り返さない。結果は以下の通りである。
【0136】
組成:N:0.03質量%、C:0.08質量%、H:0.015質量%、O:0.18質量%、Fe:0.20質量%、Ti:残部(99.495質量%)
引張強度σB:833MPa
破断伸びδ%:34%
引張試験における0.2%耐力σ0.2:634MPa
オメガチタンの含有率:99質量%
チタン材料のチタン以外の成分の含有率c:0.505質量%
チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径:20μm
圧縮試験における0.2%耐力:900MPa
ビッカース硬さ:230Hv
耐熱温度:180℃
【0137】
<考察>
実施例1のチタン材料は、チタンを91質量%以上含み、図1図5および図6に示されるように、上記式I、式IIおよび式IIIの関係を満たし、高い強度および高い延性を有することが確認された。
【0138】
[実施例2]
<チタン材料の製造>
原料として、以下の組成を有するアルファ純チタンを準備した。N:0.05質量%、C:0.08質量%、H:0.015質量%、O:0.40質量%、Fe:0.50質量%、Ti(アルファ相の結晶構造を有する):残部。
【0139】
上記アルファ純チタンを六方晶窒化硼素多結晶体製の試料容器に入れ、マルチアンビル超高圧高温発生装置(Voggenreiter社製の「mavo press LPR 1000-400/50」、発熱体はグラファイト製、最大荷重2800トン)を使用して、8GPaまで加圧後、400℃まで加熱し、3時間保持して、チタン材料を得た。得られたチタン材料の大きさは、直径10mm、高さ6mm、体積471mmの円筒状であった。
【0140】
<評価>
上記の製造方法でチタン材料を作製し、組成、引張強度σB、破断伸びδ%、引張試験における0.2%耐力σ0.2、オメガチタンの含有率、チタン材料のチタン以外の成分の含有率c、チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径、圧縮試験における0.2%耐力、ビッカース硬さ、耐熱温度を測定した。それぞれの測定項目の測定方法は、実施形態1および実施形態2に記載の通りであるためその説明は繰り返さない。結果は以下の通りである。
【0141】
組成:N:0.05質量%、C:0.08質量%、H:0.015質量%、O:0.40質量%、Fe:0.50質量%、Ti:残部(98.955質量%)
引張強度σB:1090MPa
破断伸びδ%:30%
引張試験における0.2%耐力σ0.2:985MPa
オメガチタンの含有率:99質量%
チタン材料のチタン以外の成分の含有率c:1.045質量%
チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径:10μm
圧縮試験における0.2%耐力:1180MPa
ビッカース硬さ:300Hv
耐熱温度:180℃
【0142】
<考察>
実施例2のチタン材料は、チタンを91質量%以上含み、図1図5および図6に示されるように、上記式I、式IIおよび式IIIの関係を満たし、高い強度および高い延性を有することが確認された。
【0143】
[実施例3]
<チタン材料の製造>
<チタン材料の製造>
原料として、以下の組成を有するアルファ純チタンを準備した。FeおよびOの合計:0.001質量%、Ti(アルファ相の結晶構造を有する):残部。
【0144】
上記アルファ純チタンを六方晶窒化硼素多結晶体製の試料容器に入れ、マルチアンビル超高圧高温発生装置(Voggenreiter社製の「mavo press LPR 1000-400/50」、発熱体はグラファイト製、最大荷重2800トン)を使用して、8GPaまで加圧後、400℃まで加熱し、3時間保持して、チタン材料を得た。得られたチタン材料の大きさは、直径10mm、高さ6mm、体積471mmの円筒状であった。
【0145】
<評価>
上記の製造方法でチタン材料を作製し、組成、引張強度σB、破断伸びδ%、引張試験における0.2%耐力σ0.2、オメガチタンの含有率、チタン材料のチタン以外の成分の含有率c、チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径、圧縮試験における0.2%耐力、ビッカース硬さ、耐熱温度を測定した。それぞれの測定項目の測定方法は、実施形態1および実施形態2に記載の通りであるためその説明は繰り返さない。結果は以下の通りである。
【0146】
組成:FeおよびOの合計:0.001質量%、Ti:残部(99.999質量%)
引張強度σB:527MPa
破断伸びδ%:38%
引張試験における0.2%耐力σ0.2:264MPa
オメガチタンの含有率:99質量%
チタン材料のチタン以外の成分の含有率c:0.001質量%
チタン材料を構成する結晶粒の平均粒径:50μm
圧縮試験における0.2%耐力:570MPa
ビッカース硬さ:145Hv
耐熱温度:180℃
【0147】
<考察>
実施例3のチタン材料は、チタンを91質量%以上含み、図1図5および図6に示されるように、上記式I、式IIおよび式IIIの関係を満たし、高い強度および高い延性を有することが確認された。
【0148】
以上のように本開示の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0149】
1 圧力媒体、 2 試料容器、 3 発熱体、 4 原料、 10 高圧セル 。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7