(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】伸縮デバイス
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241106BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K1/02 B
H05K3/28 B
(21)【出願番号】P 2023566093
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2022034267
(87)【国際公開番号】W WO2023105873
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2021199588
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】勝 勇人
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012013(WO,A1)
【文献】特開2018-148150(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031302(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0169918(US,A1)
【文献】特開2010-153821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/06
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する伸縮可能な伸縮基材と、
前記主面に設けられ、前記主面に沿って延在する伸縮可能な伸縮配線と、
前記主面に設けられ、前記伸縮配線を覆う被覆層と、を備え、
前記伸縮配線の延在方向に直交する断面において、
前記伸縮配線は、上面と、底面と、前記上面と前記底面とを接続する第1側面および第2側面と、を有し、
前記第1側面および前記第2側面のうち少なくとも一方の側面は、前記上面側から前記底面側に向かうに従って、前記主面に平行な方向における前記伸縮配線の幅が大きくなるように傾斜している傾斜面を含み、
前記被覆層は、前記伸縮配線の一部と接触し、
前記第1側面および前記第2側面の少なくとも一方の側面と前記被覆層との間に空隙部をさらに備え、
前記主面に直交する方向からみて、前記伸縮配線の延在方向に直交する方向の前記空隙部の幅の最大値は、10μm以上100μm以下であり、
前記被覆層は、前記第1側面および前記第2側面の少なくとも一方を覆う部分であって、前記主面に直交する方向に対して傾斜する傾斜部を有し、
前記伸縮配線の延在方向に直交する断面において、前記主面に直交する方向の前記傾斜面の高さをT、前記主面に平行な方向の前記傾斜面の幅をL、前記主面に直交する方向の前記傾斜部の高さをT1、前記主面に平行な方向の前記傾斜部の幅をL1としたとき、
前記第1側面および前記第2側面のうちの前記空隙部が存在する側面側において、L/T<L1/T1<2×L/Tを満たす、伸縮デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも一方の側面の全体が、前記傾斜面である、請求項1に記載の伸縮デバイス。
【請求項3】
前記第1側面および前記第2側面の各側面が、前記傾斜面を含む、請求項1または2に記載の伸縮デバイス。
【請求項4】
前記伸縮配線の延在方向に直交する断面において、前記主面に直交する方向の前記傾斜面の高さをT、前記主面に平行な方向の前記傾斜面の幅をLとしたとき、
前記第1側面および前記第2側面の少なくとも一方における前記傾斜面は、L/T>3を満たす、請求項
1に記載の伸縮デバイス。
【請求項5】
前記第1側面および前記第2側面の各側面が、前記傾斜面を含み、
全ての前記傾斜面は、L/T>3を満たす、請求項4に記載の伸縮デバイス。
【請求項6】
前記被覆層の吸水率は、前記伸縮基材の吸水率よりも小さい、請求項
1に記載の伸縮デバイス。
【請求項7】
前記被覆層の吸水率は、1重量%以下である、請求項
1に記載の伸縮デバイス。
【請求項8】
前記被覆層のヤング率は、前記伸縮配線のヤング率よりも小さい、請求項
1に記載の伸縮デバイス。
【請求項9】
前記被覆層のヤング率は、100MPa以下である、請求項
1に記載の伸縮デバイス。
【請求項10】
前記主面上に第1保護層をさらに備え、
前記伸縮配線の延在方向に直交する断面において、前記第1保護層は、前記主面と前記底面との間に位置し、前記主面と前記底面とに接触している、請求項
1に記載の伸縮デバイス。
【請求項11】
前記伸縮配線が複数存在し、
前記被覆層は、複数の前記伸縮配線を覆い、少なくとも隣り合う前記伸縮配線の間に前記伸縮基材と密着する密着部を有する、請求項
1に記載の伸縮デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伸縮デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮デバイスとしては、特許第5448736号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この伸縮デバイスは、伸縮可能な伸縮配線と、該伸縮配線を被覆する被覆層と、を備えている。伸縮配線の断面形状は、矩形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のような伸縮デバイスでは、伸縮配線に対する被覆層の密着性が低下し、伸縮配線の信頼性が低下するおそれがあることが分かった。これは、伸縮配線の断面形状が矩形状であるため、被覆層が伸縮配線の形状に追従しにくくなって、密着性が低下するためである。つまり、被覆層の密着性が低下し、伸縮配線と被覆層との間に空隙が生じ得る。この空隙に水分が侵入することにより、伸縮配線にイオンマイグレーションなどが発生し、伸縮配線の信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示の目的は、伸縮配線の信頼性を確保できる伸縮デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様である伸縮デバイスは、
主面を有する伸縮可能な伸縮基材と、
前記主面に設けられ、前記主面に沿って延在する伸縮可能な伸縮配線と、
前記主面に設けられ、前記伸縮配線を覆う被覆層と、を備え、
前記伸縮配線の延在方向に直交する断面において、
前記伸縮配線は、上面と、底面と、前記上面と前記底面とを接続する第1側面および第2側面と、を有し、
前記第1側面および前記第2側面のうち少なくとも一方の側面は、前記上面側から前記底面側に向かうに従って、前記主面に平行な方向における前記伸縮配線の幅が大きくなるように傾斜している傾斜面を含む。
【0007】
ここで、「上面」とは、伸縮配線の延在方向に直交する断面において、伸縮配線の表面のうち、伸縮基材の主面に直交する方向における伸縮配線の最大高さの70%の高さ以上に位置する面を指す。
【0008】
前記態様によれば、伸縮配線の第1側面および第2側面のうち少なくとも一方の側面が、伸縮配線の上面側から底面側に向かうに従って、伸縮基材の主面に平行な方向における伸縮配線の幅が大きくなるように傾斜している傾斜面を含む。このため、被覆層が伸縮配線の形状に追従しやすくなり、被覆層の密着性を向上させることができる。その結果、伸縮配線と被覆層との間における空隙の形成を抑制できるため、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【0009】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記少なくとも一方の側面の全体が、前記傾斜面である。
【0010】
前記実施形態によれば、伸縮配線に対する被覆層の密着性がより向上し、伸縮配線の信頼性をより確実に確保できる。
【0011】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記第1側面および前記第2側面の各側面が、前記傾斜面を含む。
【0012】
前記実施形態によれば、伸縮配線に対する被覆層の密着性がより向上し、伸縮配線の信頼性をより確実に確保できる。
【0013】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記伸縮配線の延在方向に直交する断面において、前記主面に直交する方向の前記傾斜面の高さをT、前記主面に平行な方向の前記傾斜面の幅をLとしたとき、
前記第1側面および前記第2側面の少なくとも一方における前記傾斜面は、L/T>3を満たす。
【0014】
前記実施形態によれば、伸縮配線に対する被覆層の密着性が効果的に向上し、伸縮配線の信頼性をより確実に確保できる。
【0015】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記第1側面および前記第2側面の各側面が、前記傾斜面を含み、
全ての前記傾斜面は、L/T>3を満たす。
【0016】
前記実施形態によれば、伸縮配線に対する被覆層の密着性がより効果的に向上し、伸縮配線の信頼性をより確実に確保できる。
【0017】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記被覆層の吸水率は、前記伸縮基材の吸水率よりも小さい。
【0018】
前記実施形態によれば、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【0019】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記被覆層の吸水率は、1重量%以下である。
【0020】
前記実施形態によれば、伸縮配線の信頼性をより確実に確保できる。
【0021】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記被覆層のヤング率は、前記伸縮配線のヤング率よりも小さい。
【0022】
前記実施形態によれば、被覆層を伸縮基材に圧着プレスする際における伸縮配線の塑性変形を抑制できるため、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【0023】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記被覆層のヤング率は、100MPa以下である。
【0024】
前記実施形態によれば、伸縮配線の信頼性をより確実に確保できる。
【0025】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記主面上に第1保護層をさらに備え、
前記伸縮配線の延在方向に直交する断面において、前記第1保護層は、前記主面と前記底面との間に位置し、前記主面と前記底面とに接触している。
【0026】
前記実施形態によれば、第1保護層をさらに備えているため、伸縮配線の信頼性をより確実に確保できる。
【0027】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記被覆層は、前記伸縮配線の一部と接触し、
前記第1側面および前記第2側面の少なくとも一方の側面と前記被覆層との間に空隙部をさらに備え、
前記主面に直交する方向からみて、前記伸縮配線の延在方向に直交する方向の前記空隙部の幅の最大値は、10μm以上100μm以下である。
【0028】
前記実施形態によれば、伸縮配線と被覆層との間に空隙部が存在する場合でも、空隙部の大きさが制限されているため、伸縮配線の信頼性の低下を抑制でき、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【0029】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記被覆層は、前記第1側面および前記第2側面の少なくとも一方を覆う部分であって、前記主面に直交する方向に対して傾斜する傾斜部を有し、
前記伸縮配線の延在方向に直交する断面において、前記主面に直交する方向の前記傾斜面の高さをT、前記主面に平行な方向の前記傾斜面の幅をL、前記主面に直交する方向の前記傾斜部の高さをT1、前記主面に平行な方向の前記傾斜部の幅をL1としたとき、
前記第1側面および前記第2側面のうちの前記空隙部が存在する側面側において、L/T<L1/T1<2×L/Tを満たす。
【0030】
前記実施形態によれば、伸縮配線と被覆層との間に空隙部が存在する場合でも伸縮配線の信頼性の低下を抑制でき、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【0031】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記主面に設けられ、前記伸縮配線を覆う第2保護層をさらに備え、
前記伸縮配線の延在方向に直交する断面において、前記第2保護層は、前記伸縮配線と前記被覆層との間に位置し、前記伸縮配線の前記上面、前記第1側面および前記第2側面に接触している。
【0032】
前記実施形態によれば、第2保護層をさらに備えているため、伸縮配線の信頼性をより確実に確保できる。
【0033】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記被覆層は、前記第2保護層の一部と接触し、
前記第1側面および前記第2側面の少なくとも一方の側面側において、前記第1側面および前記第2側面に接触している前記第2保護層の部分と前記被覆層との間に空隙部をさらに備え、
前記主面に直交する方向からみて、前記伸縮配線の延在方向に直交する方向の前記空隙部の幅の最大値は、10μm以上100μm以下である。
【0034】
前記実施形態によれば、第2保護層と被覆層との間に空隙部が存在する場合でも、空隙部の大きさが制限されているため、伸縮配線の信頼性の低下を抑制でき、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【0035】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記被覆層は、前記第1側面および前記第2側面の少なくとも一方を覆う部分であって、前記主面に直交する方向に対して傾斜する傾斜部を有し、
前記伸縮配線の延在方向に直交する断面において、前記主面に直交する方向の前記傾斜面の高さをT、前記主面に平行な方向の前記傾斜面の幅をL、前記主面に直交する方向の前記傾斜部の高さをT1、前記主面に平行な方向の前記傾斜部の幅をL1としたとき、
前記第1側面および前記第2側面のうちの前記空隙部が存在する側面側において、L/T<L1/T1<2×L/Tを満たす。
【0036】
前記実施形態によれば、第2保護層と被覆層との間に空隙部が存在する場合でも伸縮配線の信頼性の低下を抑制でき、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【0037】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記伸縮配線が複数存在し、
前記被覆層は、複数の前記伸縮配線を覆い、少なくとも隣り合う前記伸縮配線の間に前記伸縮基材と密着する密着部を有する。
【0038】
前記実施形態によれば、密着部を有するため、隣り合う伸縮配線が空隙を介して繋がることを抑制できる。これにより、隣り合う伸縮配線間で発生し得るイオンマイグレーションなどを抑制でき、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【0039】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記伸縮配線が複数存在し、
前記被覆層は、複数の前記伸縮配線を覆い、少なくとも隣り合う前記伸縮配線の間に前記第1保護層と密着する密着部を有する。
【0040】
前記実施形態によれば、密着部を有するため、隣り合う伸縮配線が空隙を介して繋がることを抑制できる。これにより、隣り合う伸縮配線間で発生し得るイオンマイグレーションなどを抑制でき、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【0041】
好ましくは、伸縮デバイスの一実施形態では、
前記伸縮配線が複数存在し、
前記被覆層は、複数の前記伸縮配線を覆い、少なくとも隣り合う前記伸縮配線の間に前記第2保護層と密着する密着部を有する。
【0042】
前記実施形態によれば、密着部を有するため、隣り合う伸縮配線が空隙を介して繋がることを抑制できる。これにより、隣り合う伸縮配線間で発生し得るイオンマイグレーションなどを抑制でき、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【発明の効果】
【0043】
本開示の一態様である伸縮デバイスによれば、伸縮配線の信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】伸縮デバイスの第1実施形態を示す平面図である。
【
図4】伸縮配線の上面を説明するためのグラフである。
【
図5】伸縮デバイスの第2実施形態を示す平面図である。
【
図7】伸縮デバイスの第3実施形態を示す断面図である。
【
図9】伸縮デバイスの第4実施形態を示す断面図である。
【
図10】伸縮デバイスの第5実施形態を示す断面図である。
【
図11】L/Tと空隙部の最大幅との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本開示の一態様である伸縮デバイスを図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0046】
(第1実施形態)
図1は、伸縮デバイスの第1実施形態を示す平面図である。
図2Aは、
図1のB-B断面図である。
図2Bは、
図1のC-C断面図である。伸縮デバイスは、例えば、生体に貼り付けられて、生体信号を測定するために用いられる。
【0047】
図1、
図2Aおよび
図2Bに示すように、伸縮デバイス1は、主面111を有する伸縮可能な伸縮基材11と、主面111に設けられ、主面111に沿って延在する伸縮可能な伸縮配線20と、主面111に設けられ、伸縮配線20を覆う被覆層60と、を備える。
【0048】
伸縮基材11は、一方向Aに延在している。伸縮基材11は、一方向Aに沿った長辺を有する矩形状に形成されている。伸縮基材11の幅は、一方向Aに沿って一定であることが好ましい。幅とは、一方向Aに直交する方向の長さをいう。
【0049】
伸縮基材11は、伸縮性を有する樹脂材料、例えば、スチレン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂で形成され、好ましくはウレタン樹脂で形成される。ウレタン樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。スチレン樹脂としては、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(SBS)が挙げられる。
【0050】
伸縮基材11の伸縮率は、50%以上であることが好ましい。前記伸縮率とすることで、伸縮デバイス1の生体への追従性が良好になる。伸縮基材11のヤング率は、好ましくは100MPa以下であり、より好ましくは30MPa以下である。前記ヤング率とすることで、使用者の不快感を抑制できる。伸縮基材11の吸水率は、伸縮デバイス1の信頼性をより確実に確保する観点から、1重量%以下であることが好ましい。伸縮基材11の厚さは、例えば、0.1μm以上100μm以下である。伸縮基材11の幅は、例えば、10mm以上100mm以下である。
【0051】
伸縮配線20は、主面111上に設けられ、主面111に沿って延在する。ここで、主面上とは、重力方向に規定される鉛直上方のような絶対的な一方向ではなく、当該主面を境界とする基板の外側と内側とのうち、外側に向かう方向を指す。したがって、「主面上」とは主面の向きによって定まる相対的な方向である。また、ある要素に対して「上」には、当該要素と接する直上の位置(on)だけではなく、当該要素とは離れた上方、すなわち当該要素上の他の物体を介した上側の位置や間隔を空けた上側の位置(above)も含む。
【0052】
伸縮配線20は、一方向Aに沿って延在する。伸縮配線20は、複数存在することが好ましい。複数存在する場合、複数の伸縮配線20は、一方向Aに直交する方向に並んで配列されることが好ましいが、配列方法は特に限定されない。第1実施形態では、伸縮配線20は、2つ存在し、互いに平行に配置されている。なお、伸縮配線20は一方向に延在していなくてもよい。
【0053】
伸縮配線20は、伸縮性を有する導電性材料で形成される。導電性材料には、例えば、銀、銅、ニッケルなどの金属箔を用いてもよく、銀、銅、ニッケルなどの金属粉とエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂などのエラストマ系樹脂とからなる混合物を用いてもよい。金属粉は、銀が好ましい。これにより、低抵抗な伸縮配線20を形成することができる。金属粉の平均粒子D50は、好ましくは0.01μm以上10μm以下である。金属粉の形状は、球状、扁平状、突起等を有する異形状等であってよい。
【0054】
伸縮配線20の厚さは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上である。伸縮配線20の厚さが薄いほど、凹凸が小さくラミネート等が容易である。伸縮配線20の幅は、好ましくは0.2mm以上である。
【0055】
伸縮配線20は、主面111に直接接触するようにスクリーン印刷、インクジェット印刷、ディスペンスなどにより形成される。なお、伸縮配線20は、主面111上に図示しない絶縁性を有する保護膜を介して配置されていてもよい。
【0056】
被覆層60は、外部環境から伸縮配線20を保護する部材である。被覆層60は、ラミネート材またはラミネートフィルムなどが挙げられる。被覆層60は、伸縮配線20の少なくとも一部を覆っている。本実施形態では、被覆層60は、伸縮配線20の延在方向の一方側端部を露出させるように、伸縮配線20の一部を覆っている。
図2Aに示すように、被覆層60は、少なくとも隣り合う伸縮配線20の間に伸縮基材11と密着する密着部601を有することが好ましい。密着部601により、隣り合う伸縮配線20が空隙を介して繋がることを抑制できる。これにより、隣り合う伸縮配線20間で発生し得るイオンマイグレーションなどを抑制でき、伸縮配線20の信頼性を確保できる。本実施形態では、被覆層60は、主面111に直行する方向からみて、主面111において、被覆層60と主面111とが重なる領域から伸縮配線20が設けられている領域を除いた領域の全領域と密着している。
【0057】
被覆層60は、伸縮性を有する樹脂材料、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂で形成され、好ましくはウレタン樹脂で形成される。ウレタン樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。スチレン樹脂としては、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(SBS)が挙げられる。被覆層60の材料は、伸縮基材11の材料と同じであっても、異なっていてもよい。被覆層60は、エラストマ樹脂のような熱可塑性樹脂でなく、密着性を向上させるために粘着剤が塗布されたフィルムであってもよい。
【0058】
被覆層60の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。被覆層60の形成方法は特に限定されないが、例えば、被覆層60となるフィルムを、圧着プレスにより伸縮基材11に圧着する(言い換えると、ラミネートする)ことで形成される。被覆層60のラミネート後に、真空処理や加圧処理などを行ってもよい。これにより、被覆層60と、伸縮基材11および伸縮配線20と、の密着性を向上させることができる。その結果、伸縮配線20の第1側面203側および第2側面204側に形成され得る空隙の幅を低減できる。
【0059】
図3は、
図2AのA領域の拡大図である。
図4は、伸縮配線の上面を説明するためのグラフである。
図3に示すように、伸縮配線20の延在方向である一方向Aに直交する断面において、伸縮配線20は、上面201と、底面202と、上面201と底面202とを接続する第1側面203および第2側面204と、を有する。本実施形態では、伸縮配線20の断面形状は台形状である。底面202は、主面111と接触している。被覆層60は、上面201、第1側面203および第2側面204に接触するように、伸縮配線20を覆っている。
【0060】
ここで、伸縮配線の上面について説明する。
図4は、CNC三次元測定器で測定した伸縮配線の断面プロファイルである。
図4の高さ0mmの位置が、伸縮基材の主面の位置に相当する。
図4に示すように、伸縮配線の上面には、微細な凹凸が存在し、平坦でない場合がある。そのため、本明細書では、伸縮配線の上面とは、伸縮配線の延在方向に直交する断面において、伸縮配線の表面のうち、主面に直交する方向における伸縮配線の最大高さの70%の高さ以上に位置する面を指す。
図4に示した断面プロファイルの場合、伸縮配線の最大高さが凡そ0.032mmであるので、その70%である0.022mmの高さ以上に位置する面を上面とする。
【0061】
第1側面203および第2側面204のうち少なくとも一方の側面は、上面201側から底面202側に向かうに従って、主面111に平行な方向における伸縮配線20の幅が大きくなるように傾斜している傾斜面を含む。本実施形態では、第1側面203および第2側面204の各側面が、傾斜面を含む。具体的に述べると、第1側面203は、傾斜面203sを含む。第2側面204は、傾斜面204sを含む。また、第1側面203の全体が、傾斜面203sである。第2側面204の全体が、傾斜面204sである。傾斜面203sおよび傾斜面204sは、上面201側から底面202側に向かうに従って、主面111に平行な方向における伸縮配線20の幅が大きくなるように傾斜していれば、形状は特に限定されない。本実施形態では、傾斜面203sおよび傾斜面204sは、全体的に平面状であるが、伸縮配線20の外側に張り出す凸曲面であってもよいし、伸縮配線20の内側に凹む凹曲面であってもよいし、凸曲面と凹曲面とを組み合わせた蛇行した曲面であってもよいし、これらの曲面と平面とを組み合わせた形状であってもよい。
【0062】
伸縮デバイス1によれば、第1側面203および第2側面204の各側面が、傾斜面203sおよび傾斜面204sをそれぞれ含む。傾斜面203sおよび傾斜面204sの各々は、伸縮配線20の上面201側から底面202側に向かうに従って、伸縮基材11の主面111に平行な方向における伸縮配線20の幅が大きくなるように傾斜している。そのため、被覆層60が伸縮配線20の形状に追従しやすくなり、被覆層60の密着性を向上させることができる。このため、伸縮配線20の第1側面203および第2側面204と被覆層60との間における空隙の形成を抑制できる。その結果、伸縮配線20のイオンマイグレーションなどを抑制し、伸縮配線20の信頼性を確保できる。
【0063】
また、第1側面203および第2側面204の各側面が、傾斜面203sおよび傾斜面204sをそれぞれ含むため、第1側面203および第2側面204のいずれか一方が傾斜面を含む場合よりも伸縮配線20に対する被覆層60の密着性が向上し、伸縮配線20の信頼性をより確実に確保できる。
【0064】
また、第1側面203および第2側面204の各側面は、側面の全体が傾斜面であるため、側面の一部が傾斜面である場合よりも伸縮配線20に対する被覆層60の密着性が向上し、伸縮配線20の信頼性をより確実に確保できる。
【0065】
図3に示すように、伸縮配線20の延在方向に直交する断面において、主面111に直交する方向の傾斜面203sの高さをT、主面111に平行な方向の傾斜面203sの幅をLとする。言い換えると、伸縮配線20の延在方向に直交する断面において、上面201と傾斜面203sの交点をA、底面202と傾斜面203sの交点をBとしたとき、主面111に直交する方向のAとBの距離がTである。また、主面111に平行な方向のAとBの距離がLである。なお、上述のように、伸縮配線20の上面には微細な凹凸が存在し、平坦でない場合がある。そのため、Tは、主面111に直交する方向における、伸縮配線20の上面の最も高い部分とは限らない。好ましくは、第1側面203および第2側面204の少なくとも一方における傾斜面は、L/T>3を満たす。伸縮配線20の断面観察は、伸縮配線20の延在方向の中央部を観察すればよい。
【0066】
上記構成によれば、伸縮配線20に対する被覆層60の密着性が効果的に向上し、伸縮配線20の信頼性をより確実に確保できる。
【0067】
好ましくは、伸縮配線20の延在方向に直交する断面において、主面111に平行な方向の伸縮配線20の長さが最も長い部分は、伸縮配線20の底面である。
【0068】
上記構成によれば、被覆層50が伸縮配線20の傾斜面203s,204s全体に密着できるため、イオンマイグレーションを抑制できる。
【0069】
好ましくは、第1側面203および第2側面204の各側面が、傾斜面を含み、全ての傾斜面は、L/T>3を満たす。
【0070】
上記構成によれば、伸縮配線20に対する被覆層60の密着性がより効果的に向上し、伸縮配線20の信頼性をより確実に確保できる。
【0071】
好ましくは、被覆層60の吸水率は、伸縮基材11の吸水率よりも小さい、
【0072】
上記構成によれば、被覆層60に含有されている水分による伸縮配線20のイオンマイグレーションなどを抑制し、伸縮配線20の信頼性を確保できる。
【0073】
好ましくは、被覆層60の吸水率は、1重量%以下である。
【0074】
上記構成によれば、伸縮配線20の信頼性をより確実に確保できる。なお、信頼性をより確実に確保する観点から、伸縮基材11および被覆層60の吸水率が、共に1重量%以下であることがより好ましい。
【0075】
好ましくは、被覆層60のヤング率は、伸縮配線20のヤング率よりも小さい。
【0076】
上記構成によれば、被覆層60を伸縮基材11に圧着プレスする際における伸縮配線20の塑性変形を抑制できるため、伸縮配線20の信頼性を確保できる。
【0077】
好ましくは、被覆層60のヤング率は、100MPa以下である。
【0078】
上記構成によれば、伸縮配線20の信頼性をより確実に確保できる。
【0079】
(第2実施形態)
図5は、伸縮デバイスの第2実施形態を示す平面図である。
図6は、
図5のB-B断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、空隙部が設けられていることが相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図5および
図6に示すように、第2実施形態に係る伸縮デバイス1Aでは、被覆層60は、伸縮配線20の一部と接触し、第1側面203および第2側面204の少なくとも一方の側面と被覆層60との間に空隙部70をさらに備える。具体的に述べると、本実施形態では、被覆層60は、伸縮配線20の上面201と第2側面204とに接触し、第1側面203と被覆層60との間に空隙部70を備える。また、主面111に直交する方向からみて、伸縮配線20の延在方向に直交する方向の空隙部70の幅の最大値L2は、10μm以上100μm以下である。以下、L2は、「空隙部の最大幅」ともいう。空隙部70の最大幅L2は、信頼性確保の観点から、小さければ小さいほど好ましい。空隙部の最大幅とは、伸縮基材の主面に直交する方向からみて、伸縮配線の延在方向に直交する方向における空隙部の幅の、伸縮配線の延在方向における最大値を指す。なお、空隙部70の最大幅L2は、主面111に直交する方向からみて、伸縮配線20と重なる部分を含まない。すなわち、後述するように、主面111に平行な方向の傾斜部602の幅をL1としたとき、L2=L1-Lの関係を満たす。
【0081】
本実施形態によれば、伸縮配線20と被覆層60との間に空隙部70が存在する場合でも、空隙部70の大きさが制限されているため、伸縮配線20の信頼性の低下を抑制でき、伸縮配線20の信頼性を確保できる。
【0082】
図6に示すように、被覆層60は、第1側面203および第2側面204の少なくとも一方を覆う部分であって、主面111に直交する方向に対して傾斜する傾斜部602を有する。具体的に述べると、被覆層60は、第1側面203を覆う部分であって、主面111に直交する方向に対して傾斜する傾斜部602を有する。
図6では、被覆層60において、傾斜部602とその他の部分との境界を便宜的に2点鎖線で示した。伸縮配線20の延在方向に直交する断面において、主面111に直交する方向の傾斜部602の高さをT1、主面111に平行な方向の傾斜部602の幅をL1とする。ここで、傾斜部の高さとは、伸縮配線の延在方向に直交する断面において、傾斜部の内面(言い換えると、傾斜部の表面のうち、伸縮配線の傾斜面に対向する面)における主面111に直交する方向の高さを指す。また、傾斜部の幅とは、伸縮配線の延在方向に直交する断面において、傾斜部の内面(言い換えると、傾斜部の表面のうち、伸縮配線の傾斜面に対向する面)における主面111に平行な方向の幅を指す。本実施形態では、傾斜部602の高さT1は、傾斜面203sの高さTと等しく、傾斜部602の幅L1は、傾斜面203sの幅Lよりも大きい。好ましくは、第1側面203および第2側面204のうちの空隙部が存在する側面側、すなわち本実施形態では第1側面203側において、L/T<L1/T1<2×L/Tを満たす。これにより、伸縮配線20と被覆層60との間に空隙部が存在する場合でも伸縮配線20の信頼性の低下を抑制でき、伸縮配線20の信頼性を確保できる。本実施形態のように、T1とTが等しい場合、L<L1<2Lと変形することができる。また、L2=L1-Lなので、0<L2<Lと変形することができる。後述の表1に示すように、伸縮配線20の短絡を抑制する観点から、0<L2<Lの範囲とすることが好ましい。言い換えれば、伸縮配線20の短絡を抑制する観点から、L/T<L1/T1<2×L/Tとなるように傾斜部602を配置することが好ましい。
【0083】
(第3実施形態)
図7は、伸縮デバイスの第3実施形態を示す断面図である。
図8は、
図7のA領域の拡大図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、第1保護層が設けられていることが相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。なお、
図7は、第1実施形態の
図2Aに対応する。
【0084】
図7および
図8に示すように、第3実施形態に係る伸縮デバイス1Bは、主面111上に第1保護層81をさらに備えている。伸縮配線20の延在方向に直交する断面において、第1保護層81は、主面111と、伸縮配線20の底面202と、の間に位置し、主面111と底面202とに接触している。被覆層60は、少なくとも隣り合う伸縮配線20の間に第1保護層81と密着する密着部601Bを有する。第1保護層81は、低吸水性の材料からなり、例えばアクリル系のUV硬化樹脂である。第1保護層81は、印刷によって形成することができる。なお、第1保護層81は、シリコーン系、ポリエステル系、ウレタン系樹脂材料などでもよい。
【0085】
本実施形態によれば、第1保護層81を備えているため、伸縮基材11側からの水分などの侵入による伸縮配線20のイオンマイグレーションなどの発生を抑制できる。その結果、伸縮配線20の信頼性をより確実に確保できる。また、密着部601Bを有するため、隣り合う伸縮配線20が空隙を介して繋がることを抑制できる。これにより、隣り合う伸縮配線20間で発生し得るイオンマイグレーションなどを抑制でき、伸縮配線20の信頼性を確保できる。なお、伸縮配線20が複数存在する場合、第1保護層81は、各々の伸縮配線20の底面202に対応した位置にのみ設けられていてもよい。言い換えると、第1保護層81は、各々の伸縮配線20の底面202に設けられており、各々の伸縮配線20の底面202に設けられた第1保護層81のそれぞれは、互いに分離している。この場合、第1保護層81が設けられていない伸縮基板11の主面111には、被覆層60が密着している。
【0086】
(第4実施形態)
図9は、伸縮デバイスの第4実施形態を示す断面図である。第4実施形態は、第3実施形態とは、第2保護層が設けられていることが相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第3実施形態と同じ構成であり、第3実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
図9は、第1実施形態の
図3に対応する。
【0087】
図9に示すように、第4実施形態に係る伸縮デバイス1Cは、伸縮配線20を覆う第2保護層82をさらに備える。伸縮配線20の延在方向に直交する断面において、第2保護層82は、伸縮配線20と被覆層60との間に位置し、伸縮配線20の上面201、第1側面203および第2側面204に接触している。被覆層60は、少なくとも隣り合う伸縮配線20の間に第2保護層82と密着する密着部601Cを有する。第2保護層82は、低吸水性の材料からなり、例えばアクリル系のUV硬化樹脂である。第2保護層82は、シリコーン系、ポリエステル系、ウレタン系樹脂材料でもよい。第2保護層82の構成材料は、第1保護層81の構成材料と同一であっても異なっていてもよい。第2保護層82は、印刷によって形成することができる。このため、第2保護層82は、被覆層60とは異なり、伸縮配線20の形状に追従しやすい。その結果、第2保護層82は、伸縮配線20の外表面全体に接触しながら、伸縮配線20を覆うことができる。また、伸縮配線20の断面形状が台形状であるため、第2保護層82と被覆層60との密着性が向上する。
【0088】
本実施形態によれば、第2保護層82を備えているため、被覆層60側からの水分などの侵入による伸縮配線20のイオンマイグレーションなどの発生を抑制できる。その結果、伸縮配線20の信頼性をより確実に確保できる。また、密着部601Cを有するため、隣り合う伸縮配線20が空隙を介して繋がることを抑制できる。これにより、隣り合う伸縮配線20間で発生し得るイオンマイグレーションなどを抑制でき、伸縮配線20の信頼性を確保できる。
【0089】
(第5実施形態)
図10は、伸縮デバイスの第5実施形態を示す断面図である。第5実施形態は、第4実施形態とは、空隙部が設けられていることが相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第4実施形態と同じ構成であり、第4実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0090】
図10に示すように、第5実施形態に係る伸縮デバイス1Dでは、被覆層60は、第2保護層82の一部と接触し、第1側面203および第2側面204の少なくとも一方の側面側において、第1側面203および第2側面204に接触している第2保護層82の部分と被覆層60との間に空隙部70をさらに備える。具体的に述べると、本実施形態では、被覆層60は、伸縮配線20の上面201に接触している第2保護層82の部分と、第2側面204に接触している第2保護層82の部分と、に少なくとも接触し、第1側面203に接触している第2保護層82の部分と被覆層60との間に空隙部70を備える。また、主面111に直交する方向からみて、伸縮配線20の延在方向に直交する方向の空隙部70の幅の最大値は、10μm以上100μm以下である。なお、この幅の最大値は、第2実施形態の
図5で説明したL2と同様である。また、第2実施形態と同様に、この幅の最大値は、主面111に直交する方向からみて、伸縮配線20と重なる部分を含まない。すなわち、
図10において、伸縮配線20の第1側面に対応した第2保護層82の傾斜面における主面に平行な方向の幅をL3としたときに、L2=L1-L3の関係を満たす。
【0091】
本実施形態によれば、第2保護層82と被覆層60との間に空隙部70が存在する場合でも、空隙部70の大きさが制限されているため、伸縮配線20の信頼性の低下を抑制でき、伸縮配線20の信頼性を確保できる。
【0092】
被覆層60は、第1側面203および第2側面204の少なくとも一方を覆う部分であって、主面111に直交する方向に対して傾斜する傾斜部602を有する。具体的に述べると、被覆層60は、第1側面203を覆う部分であって、主面111に直交する方向に対して傾斜する傾斜部602を有する。
図10では、被覆層60において、傾斜部602とその他の部分との境界を便宜的に2点鎖線で示した。伸縮配線20の延在方向に直交する断面において、主面111に直交する方向の傾斜部602の高さをT1、主面111に平行な方向の傾斜部602の幅をL1とする。なお、T1は、伸縮配線20の延在方向に直交する断面において、主面111に直交する方向の傾斜部602の最大高さを意味する。L1は、伸縮配線20の延在方向に直交する断面において、主面111に平行な方向の傾斜部602の最大幅を意味する。好ましくは、第1側面203および第2側面204のうちの空隙部が存在する側面側、すなわち本実施形態では第1側面203側において、L/T<L1/T1<2×L/Tを満たす。これにより、第2保護層82と被覆層60との間に空隙部70が存在する場合でも伸縮配線20の信頼性の低下を抑制でき、伸縮配線20の信頼性を確保できる。
【0093】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第5実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0094】
前記実施形態では、伸縮基材は、矩形状であるが、矩形状に限定されず、例えば、多角形状や楕円形や長円形であってもよい。
【0095】
前記実施形態では、伸縮配線は複数存在するが、単数であってもよい。前記実施形態では、伸縮配線は、一方向に直線状に延在しているが、これに限定されず、例えば蛇行していてもよいし、分岐していてもよい。前記実施形態では、複数の伸縮配線は、互いに平行になるように配置されていたが、平行でなくてもよい。前記実施形態では、伸縮配線は、伸縮基材の一方側の主面にのみ設けられていたが、当該主面に対向する他方側の主面に設けられていてもよい。この場合、他方側の主面にも伸縮配線を覆うように被覆層が設けられている。
【0096】
前記実施形態では、伸縮配線の第1側面および第2側面の各側面に前記傾斜面が設けられていたが、第1側面および第2側面の何れか一方のみに前記傾斜面が設けられていてもよい。前記実施形態では、第1側面の全体および第2側面の全体が前記傾斜面であったが、第1側面の一部および/または第2側面の一部が前記傾斜面であってもよい。例えば、伸縮配線の延在方向に直交する断面において、第1側面および/または第2側面は、伸縮配線の上面に接続された前記傾斜面と、伸縮配線の底面と前記傾斜面とを接続し、上面側から底面側に向かうに従って、主面に平行な方向における伸縮配線の幅が小さくなるように傾斜している傾斜面と、から構成されていてもよい。なお、被覆層は、ラミネートフィルムなどであるため、伸縮配線の上面側から底面側に向かうに従って、主面に平行な方向における伸縮配線の幅が大きくなるように傾斜している前記傾斜面に追従しやすい。そのため、上記構成の場合、伸縮配線の側面において、当該側面と被覆層とが接触しない部分が存在する場合がある。言い換えると、上記構成の場合、伸縮配線の延在方向に直交する断面において、被覆層と、伸縮配線の上面側から底面側に向かうに従って、主面に平行な方向における伸縮配線の幅が小さくなるように傾斜している傾斜面と、の間に、空隙が生じる場合がある。
【0097】
前記実施形態では、被覆層は、伸縮配線の一方側の端部が露出するように、伸縮配線の外表面の一部を覆っていたが、被覆層が伸縮配線のどの部分を覆うかは特に限定されず、伸縮配線の外表面の全てを覆っていてもよい。
【0098】
前記第2実施形態では、空隙部は、伸縮配線の第1側面側にのみ設けられていたが、第2側面側にのみ設けられていてもよいし、第1側面側および第2側面側の両方に設けられていてもよい。
【0099】
前記第4実施形態では、第1保護層および第2保護層の両方が設けられていたが、第2保護層のみが設けられていてもよい。
【0100】
前記第5実施形態では、空隙部は、伸縮配線の第1側面側にのみ設けられていたが、第2側面側にのみ設けられていてもよいし、第1側面側および第2側面側の両方に設けられていてもよい。
【0101】
(実施例1)
種々の伸縮配線の傾斜面の傾き(L/T)を有する伸縮デバイスに対して、空隙部の幅の最大値の測定と信頼性試験を行った。
【0102】
<伸縮基材>
伸縮基板は、スチレン-ブタジエン-スチレン樹脂(SBS)を用いた。SBSの40℃93%RHにおける吸水率は、0.1wt.%以下であった。吸水率の測定は、伸縮基材を40℃で24時間乾燥した後に、40℃93%RHの環境下での重量上昇を測定することにより行った。具体的に述べると、24時間乾燥した後の伸縮基材の重量をWdryとし、40℃93%RHの環境下においた後の伸縮基材の重量をW40℃93%RHとしたときに、下記式により算出した。
吸水率=(W40℃93%RH-Wdry)/Wdry×100%
【0103】
<伸縮配線>
伸縮配線は、銀及びアクリル系樹脂の混合物を含有する導電性ペーストを、伸縮基材上に、スクリーン印刷法等を用いて複数本印刷した。その後、導電性ペーストを、所定の抵抗値が得られるように熱硬化させることによって、伸縮配線を所望の形状に形成した。複数本の伸縮配線は、それぞれ平行に形成し、配線間のギャップは200μm、配線長さは100mmとした。伸縮配線は、ライン幅が異なる伸縮配線を複数回塗ること、かつ粘度を適切に選定することにより、断面が台形状となるように形成した。伸縮配線の断面形状、すなわち傾斜面の高さTおよび傾斜面の幅Lは、ディスペンサやスクリーン印刷の印刷版の仕様を変更することにより各サンプルで変化させた。
【0104】
<被覆層>
伸縮配線を形成した伸縮基材上に被覆層を形成した。具体的に述べると、伸縮基材に対して、ポリウレタン樹脂にアクリル粘着剤を塗布したフィルムをラミネートして、被覆層を形成した。ラミネート時の温度および圧力の条件は、伸縮基材との密着面から水が浸入しないように融点などを考慮して設定した。
【0105】
<傾斜面の高さT、傾斜面の幅Lおよび空隙部の最大幅の測定>
傾斜面の高さTおよび傾斜面の幅Lは、CNC三次元測定器で測定した。空隙部の最大幅は、光学顕微鏡で測定した。ただし、空隙部の最大幅は、伸縮基材の主面に直交する方向からみたときに、伸縮配線と重なる部分を含まない。空隙部の最大幅が大きくなると、隣り合う配線同士が空隙部を介して繋がってしまい、信頼性が低下し得る。そのため、空隙部の最大幅が、配線間ギャップ200μmの半分である100μm以下であるサンプルを合格とした。表1に試験結果を示した。
図11にL/Tと空隙部の最大幅との関係を示した。
【0106】
<信頼性試験>
作製したサンプルにおいて、伸縮配線間を5Vに設定した直流電源に接続し、信頼性の評価を行った。サンプルは、30℃において水中に浸漬した。信頼性試験において、イオンマイグレーションや吸水により伸縮基材や被覆層の絶縁抵抗が1MΩを切った時の時間を短絡時間とした。本実施形態の伸縮デバイスは主にディスポーザブルな用途が想定されるため、最長1週間(168時間)の信頼性試験を行った。168時間経過してもイオンマイグレーションなどを起こしていないサンプル、すなわち168時間以上の短絡時間を有するサンプルを合格とした。表1に試験結果を示した。なお、比較例2および3は、空隙部の最大幅が100μmを超え、隣り合う伸縮配線が空隙部を介して繋がっていた。このため、信頼性試験において、伸縮基材や被覆層の絶縁抵抗が短時間で小さくなることが明白であったため、短絡時間は168時間未満であると判断した。
【0107】
表1および
図11に示したように、L/Tが3を超えると、空隙部の最大幅L2が100μm以下となり、伸縮配線と被覆層の密着をより高めることができ、短絡時間が168時間以上の信頼性を確保できることを確認した。また、本試験において、L/Tが3を超えると、空隙部の最大幅L2は、伸縮配線の傾斜面の幅Lよりも小さい値となった。
【0108】
【0109】
(実施例2)
被覆層の材質を変化させて信頼性試験を行った。伸縮基材は、実施例1と同一の基材を用いた。表2に試験結果を示した。
【0110】
表2に示したように、ポリエステル系樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレン樹脂やポリウレタン樹脂+アクリル系粘着剤などでも、吸水率が1重量%以下のもので、短絡時間が168時間以上の信頼性を得られた。外観上もイオンマイグレーションによるデンドライトの発生は確認されなかった。一方、吸水率が高い変性ポリウレタン樹脂ではイオンマイグレーションが発生し、2時間で絶縁抵抗が劣化した。被覆層の吸水率が1.0重量%以下であれば、良好な信頼性を得られることを確認した。
【0111】
【0112】
(実施例3)
被覆層の硬さと伸縮配線の塑性変形との関係について調査した。
【0113】
表3に、被覆層のヤング率と、被覆層を伸縮基材に圧着プレスした後の伸縮配線間ギャップについての試験結果を示した。伸縮配線間ギャップとは、隣り合う伸縮配線間の距離を意味する。伸縮配線間ギャップは、光学顕微鏡で測定した。伸縮配線のヤング率は、約100MPaであった。
【0114】
表3に示したように、被覆層のヤング率が伸縮配線のヤング率よりも高いと、伸縮配線が塑性変形し、伸縮配線間ギャップが小さくなる。これにより、隣り合う伸縮配線間でイオンマイグレーションが発生する可能性が高まる。よって、伸縮配線が塑性変形しないように、被覆層のヤング率は、伸縮配線のヤング率よりも小さくする、具体的には100MPa以下にするとよいことを確認した。
【0115】
【符号の説明】
【0116】
1、1A 伸縮デバイス
11 伸縮基材
111 主面
20 伸縮配線
201 上面
202 底面
203 第1側面
204 第2側面
60 被覆層
601、601B、601C 密着部
602 傾斜部
70 空隙部
81 第1保護層
82 第2保護層
T 傾斜面の高さ
L 傾斜面の幅
T1 傾斜部の高さ
L1 傾斜部の幅
L2 空隙部の最大幅