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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】フォークリフトのマスト高計測装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20241106BHJP
   B66F 9/20 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B66F9/24 B
B66F9/20 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023572344
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2022029488
(87)【国際公開番号】W WO2023132094
(87)【国際公開日】2023-07-13
【審査請求日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2022000676
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(74)【代理人】
【識別番号】100231038
【弁理士】
【氏名又は名称】正村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 宙潤
(72)【発明者】
【氏名】五島 代介
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-318998(JP,A)
【文献】特開平06-127897(JP,A)
【文献】特開平02-255499(JP,A)
【文献】特開2019-210130(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02123594(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/20;9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフトシリンダに作動流体を供給する液圧ポンプの吐出圧力、該液圧ポンプの回転数およびリフトシリンダに対する作動流体の流出入をコントロールするコントロールバルブのスプールストローク量と、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量との相関を示す相関データを格納している相関データ格納部と、
前記液圧ポンプの吐出圧力に関する値を有する吐出圧計測データ、該液圧ポンプの回転数に関する値を有する回転数計測データおよび前記コントロールバルブのスプールストローク量に関する値を有するストローク計測データを取得し、
これら吐出圧計測データ、回転数計測データおよびストローク計測データの各値から、前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量を算出し、該作動流体の流量に基づいてマスト高さを算出する演算部と、を備えていることを特徴とするフォークリフトのマスト高計測装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記ストローク計測データの値に基づいてリフトシリンダが上昇しているか否かを判断し、上昇と判断した場合に、前記吐出圧計測データ、回転数計測データおよびストローク計測データの各値から前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに流入する作動流体の流量を算出する請求項1記載のフォークリフトのマスト高計測装置。
【請求項3】
前記相関データとして、前記液圧ポンプの吐出圧力および回転数と、該液圧ポンプ吐出流量との相関を表した第1マスターデータと、
前記液圧ポンプの吐出圧力および前記コントロールバルブのスプールストローク量と、前記液圧ポンプからコントロールバルブを介してリフトシリンダへ供給される流量およびタンクへ戻る流量の流量比率との相関を表した第2マスターデータとが設けられており、
前記演算部は、前記第1マスターデータを参照して液圧ポンプの吐出流量を算出するとともに、前記第2マスターデータを参照して前記流量比率を算出し、これら液圧ポンプ吐出流量と流量比率に基づいて、リフトシリンダに流入する作動流体の流量を算出する請求項2記載のフォークリフトのマスト高計測装置。
【請求項4】
リフトシリンダ内の圧力および該リフトシリンダに対する作動流体の流出入をコントロールするコントロールバルブのスプールストローク量と、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量との相関を示す相関データを格納している相関データ格納部と、
前記リフトシリンダ内の圧力に関する値を有するシリンダ圧計測データおよび前記コントロールバルブのスプールストローク量に関する値を有するストローク計測データを取得し、
これらシリンダ圧計測データおよびストローク計測データの各値から、前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量を算出し、該作動流体の流量に基づいてマスト高さを算出する演算部と、を備えていることを特徴とするフォークリフトのマスト高計測装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記ストローク計測データの値に基づいてリフトシリンダが下降しているか否かを判断し、下降と判断した場合に、前記シリンダ圧計測データおよびストローク計測データの各値から前記相関データを参照して、前記リフトシリンダから流出する作動流体の流量を算出し、該作動流体の流量に基づいてマスト高さを算出する請求項4記載のフォークリフトのマスト高計測装置。
【請求項6】
前記相関データとして、前記リフトシリンダ内の圧力および前記コントロールバルブのスプールストローク量と、液圧ポンプからコントロールバルブを介してリフトシリンダへ供給される作動流体の流量との相関を表した第3マスターデータが設けられており、
前記演算部は、前記第3マスターデータを参照して前記リフトシリンダから流出する作動流体の流量を算出する請求項5記載のフォークリフトのマスト高計測装置。
【請求項7】
前記シリンダ圧計測データは、リフトシリンダの圧力を計測するシリンダ圧センサまたはフォークリフトに積載される荷物重量を計測する重量センサから取得される請求項4~6いずれか記載のフォークリフトのマスト高計測装置。
【請求項8】
リフトシリンダに作動流体を供給する液圧ポンプの吐出圧力、該リフトシリンダ内の圧力およびリフトシリンダに対する作動流体の流出入をコントロールするコントロールバルブのスプールストローク量と、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量との相関を示す相関データを格納している相関データ格納部と、
前記液圧ポンプの吐出圧力に関する値を有する吐出圧計測データ、前記リフトシリンダ内の圧力に関する値を有するシリンダ圧計測データおよび前記コントロールバルブのスプールストローク量に関する値を有するストローク計測データを取得し、
これら吐出圧計測データ、シリンダ圧計測データおよびストローク計測データの各値から、前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量を算出し、該作動流体の流量に基づいてマスト高さを算出する演算部と、を備えていることを特徴とするフォークリフトのマスト高計測装置。
【請求項9】
前記演算部は、前記ストローク計測データの値に基づいてリフトシリンダが上昇しているか否かを判断し、上昇と判断した場合に、前記吐出圧計測データ、シリンダ圧計測データおよびストローク計測データの各値から、前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに流入する作動流体の流量を算出する請求項8記載のフォークリフトのマスト高計測装置。
【請求項10】
前記演算部は、前記シリンダ圧計測データの値を、前記吐出圧計測データおよびストローク計測データの各値に基づいて算出する請求項8または9記載のフォークリフトのマスト高計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトのマスト高さを測定するマスト高計測装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフトのマスト高さを計測するために、例えば以下のような方式が考えられている。
(1)ストロークセンサを用いてリフトシリンダのストローク量を計測する。
(2)流量計を用いてシリンダへの供給流量を計測する。
(3)所定のマスト高さに達した際にON,OFFが切替わるようなスイッチを設置し高さを計測する。
【0003】
しかしながら、(1)の方式では、数メートルの広範囲をセンシングする必要があってセンサの設置が難しいうえ、センサが高価になる恐れもある。
(2)の方式でも、フォークリフト液圧回路の間に新たに流量計を設置しなければならないのでスペース的に困難であり、かつ、センサが高価になるという問題がある。
(3)の方式では、設置や価格の点での問題は軽減されるものの、スイッチを設置した箇所の高さしか測定できず、中間箇所ではマストの高さがわからないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-148941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、特許文献1に記載されているように、専用のセンサを用いることなくフォークリフトに元来装備されている機器でマスト高さを測定する方式も提案されている。この特許文献1では、マストを昇降駆動する油圧ポンプモータの回転数がマストシリンダに流出入するオイル流量、ひいてはマストの単位時間当たりの昇降距離(すなわち昇降速度)に比例するという原理に基づいて、もともと装備されている油圧ポンプモータの回転数計の出力値に演算を施し、マストの高さを算出するようにしている。
【0006】
しかしながら、マストシリンダに流出入するオイル流量は、積載物の荷重やリフトレバーの操作量等によって変動するので、この方式で算出されたマスト高さは極めて不正確で、実用には適さない。
【0007】
本発明はこの問題点を見出して初めて完成されたものであって、その主たる解決課題は、安価で簡単な構成でありながら、マスト高さを精度よく計測することができるフォークリフトのマスト高計測装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係るフォークリフトのマスト高計測装置は、以下の各部を備えていることを特徴とする。
【0009】
(1)リフトシリンダに作動流体を供給する液圧ポンプの吐出圧力、該液圧ポンプの回転数およびリフトシリンダに対する作動流体の流出入をコントロールするコントロールバルブのストローク量と、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量との相関を示す相関データを格納している相関データ格納部。
【0010】
(2)前記液圧ポンプの吐出圧力に関する値を有する吐出圧計測データ、該液圧ポンプの回転数に関する値を有する回転数計測データおよび前記コントロールバルブのストローク量に関する値を有するストローク計測データを取得し、これら吐出圧計測データ、回転数計測データおよびストローク計測データの各値から、前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量を算出し、該作動流体の流量に基づいてマスト高さを算出する演算部。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成によれば、既存のセンサや安価で設置容易なセンサを用いることによって、マスト高さの計測が可能となるだけでなく、実機に搭載された液圧ポンプやコントロールバルブ固有の特性を加味した相関データによって、リフトシリンダに流出入する作動流体の流量を算出できるのでマスト高さを精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態におけるフォークリフトの全体模式図である。
図2】同実施形態におけるフォークリフトの液圧機構の回路図とマスト高計測装置とを示す全体模式図である。
図3】同実施形態においてリフトレバーを上昇側に操作した時のコントロールバルブの動きを示す回路図である。
図4】同実施形態においてリフトレバーを下降側に操作した時のコントロールバルブの動きを示す回路図である。
図5】同実施形態のマスト高計測装置の機能ブロック図である。
図6】同実施形態のマスト高計測装置によるマスト高計測手順を示すフローチャートである。
図7】同実施形態のマスト高計測装置によるマスト昇降距離(マスト移動距離)の算出手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
<構成>
【0014】
本実施形態に係るフォークリフト1は、図1に示すように、タイヤを備えた走行可能な車両本体11、荷物を搭載する搬送台(フォーク)12、該搬送台12を昇降可能に支持するマスト13等を備えたものである。同図中、符号14はマスト13を伸縮させて搬送台12を昇降駆動するリフトシリンダ、符号15はマストを傾斜させるチルトシリンダ、符号16はリフトシリンダを操作するためのリフトレバー、符号17はチルトシリンダを操作するためのチルトレバーを示している。
【0015】
また、このフォークリフト1は、前記リフトシリンダ14及びチルトシリンダ15を駆動するための液圧機構2と、この液圧機構2の状態を示す状態データを取得し、それから前記マスト13の高さを算出するマスト高計測装置4とを備えている。
【0016】
前記液圧機構2は、その回路図を図2に示すように、液圧ポンプ26から吐出された作動流体(ここでの作動流体はオイル)を前記リフトシリンダ14およびチルトシリンダ15に導き、これらを動作させるためのものである。なお、以下では、特にリフトシリンダ14に関連ある構造について言及する。
【0017】
図2中、符号は前記リフトレバー16の操作に連動するコントロールバルブ21であり、ここでは方向切換と流量制御の双方の機能を有した方向流量制御タイプのものである。
【0018】
しかして、リフトレバー16を停止位置に操作すると、図2に示すように、このコントロールバルブ21のスプールが停止位置となり、液圧ポンプ26から吐出される作動油はすべてタンク22に戻るとともに、リフトシリンダ14に対する作動流体の流出入が禁止され、マスト13は停止状態となる。
【0019】
リフトレバー16を上昇方向に操作すると、図3に示すように、その操作量に応じてコントロールバルブ21のスプールが上昇方向に移動し、液圧ポンプ26から吐出される作動油がパイロットバルブ24を通ってリフトシリンダ14内に流入し、マスト13を上昇させる。なお、マスト13が最上端に達すると作動油はそれ以上リフトシリンダ14に流入できず、リリーフバルブ28を通ってタンク22に戻る。
【0020】
リフトレバー16を下降方向に操作すると、図4に示すように、液圧ポンプ26は停止するとともに、コントロールバルブ21のスプールがリフトレバー16の操作量に応じて下降方向に移動し、ポンプ26リフトシリンダ14内の作動油が流量制御バルブ23を通ってタンク22に戻り、それに伴ってマスト13が下降する。なお、このとき、リフトシリンダ14とタンク22との間にあるパイロットバルブ24は、パイロット切換バルブ25の状態が切替ることにより、自身のオリフィスに作動油が通過して差圧が生じ、その差圧によって開状態が維持される。
【0021】
また、この液圧機構2には、複数のセンサが設けられている。ここでは、電動モータ27の回転数または液圧ポンプ26の回転数を計測する回転数センサ31、液圧ポンプ26の吐出圧力を計測する吐出圧センサ32、コントロールバルブ21のスプールのストローク量を検出するストロークセンサ33およびリフトシリンダ14内の圧力を計測するシリンダ圧センサ34である。
【0022】
回転数センサ31としては、例えば、電磁ピックアップ方式のものやロータリーエンコーダなどを利用することができる。吐出圧センサ32およびシリンダ圧センサ34としては、例えば、ひずみゲージ式のものや静電容量式のものなどのいわゆる圧力センサを利用することができる。ストロークセンサ33としては、例えば、磁歪式のものやホールエフェクト式のものなどを利用することができる。
【0023】
マスト高計測装置2は、物理的には、CPU、メモリ、I/Oポート、A/Dコンバータなどを備え、機能的には、前記メモリにあらかじめ格納されたプログラムにしたがって、CPUやその周辺機器が協動することにより、図5に示すように、相関データ格納部、演算部等としての機能を発揮するものである。
各部を詳述する。
【0024】
相関データ格納部は、実験やシミュレーション、理論計算などによって予め求められ、作成された複数(ここでは3つ)の相関データであるマスターデータを保持格納しているものである。
【0025】
第1マスターデータは、液圧ポンプ26の吐出圧力および回転数と、吐出流量との相関を表したテーブル形式のものであり、液圧ポンプ26の種類に応じた固有のものである。
【0026】
第2マスターデータは、液圧ポンプ26の吐出圧力およびコントロールバルブ21のスプールストローク量と、ポンプから吐出される作動流体のリフトシリンダ14へ通ずる回路およびタンク22へ通ずる回路への流量比率と、の相関を表したテーブル形式のものであり、コントロールバルブ21の種類に応じた固有のものである。
【0027】
第3マスターデータは、シリンダ圧力およびスプールストローク量と、コントロールバルブ21からタンク22へ戻る流量との相関を表したテーブル形式のものである。なお、この第3マスターデータは、図2図4に示す流量制御バルブ23をもセットで含むものである。したがって、この相関データは、流量制御バルブ23がコントロールバルブ21に内蔵されていればコントロールバルブ21固有、流量制御バルブ23がコントロールバルブ21外(フォークリフト車両内蔵)であればコントロールバルブ21と流量制御バルブ23とのセットで固有となる。
【0028】
各マスターデータは、ここではテーブル形式のものであり、液圧ポンプ26やコントロールバルブ21の種類ごとに、あるいはそれが搭載されるフォークリフト1の種類ごとに、実験やシミュレーションなどによって予め求められ、相関データ格納部に記録されている。なお、実験やシミュレーションで求めた関係を計算式で表し、この計算式をマスターデータとしてもよい。
【0029】
演算部は、各センサから出力される計測データ、すなわち、回転数センサ31から出力される回転数計測データ、吐出圧センサ32から出力される吐出圧計測データ、ストロークセンサ33から出力されるストローク計測データおよびシリンダ圧センサ34から出力されるシリンダ圧計測データを所定のサンプリング間隔で受け付け、これら各計測データの値と各マスターデータとに基づいて、リフトシリンダ14に流出入する作動流体の流量を算出し、この作動流体の流量と、予めメモリに記録されたシリンダの容積や有効断面積等の諸元に基づいてマスト13の高さを算出して、これをマスト高計測値として逐次出力するものである。
<マスト高計測手順>
【0030】
次に、図6を参照してマスト高計測手順を具体的に説明する。
フォークリフト1が始動されると、演算部は、まず、マスト高計測値の初期値を算出する(ステップS1)。この初期値は、本実施形態では、例えばフォークリフト1の前回の動作終了時に計測・記録されたマスト高計測値であり、メモリの所定領域に設けられたマスト高計測データ格納部に格納されている。その他に、マスト13の最下降位置を初期値としてもよいし、前回動作終了時からの経過時間に単位時間当たりの自然降下速度(バルブ等からのわずかな漏れでリフトシリンダ14からタンク22に戻る流量で定まる。)を掛けた値を、前回動作終了時のマスト高計測値から差し引いて初期値とするなどしてもよい。
【0031】
次に、所定のサンプリングタイムが来ると(ステップS2)、演算部は、前記吐出圧計測データ、回転数計測データ及びストローク計測データを取得する(ステップS3)。
【0032】
次に演算部は、マスト高さが予め定められた基準高さかどうかを判断する(ステップS4)。この判断には、マスト13またはリフトシリンダ14の1または複数個所に取り付けられたリミットスイッチ等の位置センサを用いる。この位置センサは基準高さにマスト13またはリフトシリンダ14が到達した場合に信号を発するようにしてある。
【0033】
なお、位置センサを用いることなく、各計測データの値から基準高さを判断することもできる。この場合の基準高さは、最上昇位置または最下降位置が好ましい。
【0034】
マスト13が最上昇位置あることは、ストローク計測データと吐出圧計測データとを用いて判断する。すなわち、ストローク計測データの値(以下、ストローク計測値という。)からリフトレバー16が上昇側に操作されていると検知され、かつ、吐出圧計測データの値(以下、吐出圧計測値という。)から液圧ポンプ26の吐出圧がリリーフバルブ28のリリーフ圧に等しいと検知された場合(またはこの状態が一定期間持続した場合)に、マスト13が最上昇位置にあると判断する。
【0035】
また、マスト13が最下降位置あることは、ストローク計測データとシリンダ圧吐出圧計測データとを用いて判断する。すなわち、ストローク計測値からリフトレバー16が下降側に操作されていると検知され、かつ、シリンダ圧計測データの値(以下、シリンダ圧計測値という。)からリフトシリンダ14の圧力が0であるとか、空荷の場合の圧力(フォークのみの保持圧)と検知された場合や、シリンダ圧計測値にかかわらずリフトレバー16が下降側に操作されて一定期間以上経過した場合に、最下降位置にあると判断する。
そして、マスト高さが前記基準位置であれば、マスト高計測値を基準高さとし、その値を前記マスト高計測データ格納部に格納する(ステップS7)。
その後、フォークリフトの動作が終了していなければ(ステップS8)、ステップS2に戻る。
【0036】
一方、マスト高さが基準位置ではない場合、演算部は、前回のサンプリングタイムから今回のサンプリングタイムの間の期間におけるマスト13の昇降距離を算出する(ステップS5)。
そして、その昇降距離を前記マスト高計測データ格納部に格納されているマスト高計測値に積算し、新たなマスト高計測値として更新する。
その後、フォークリフトの動作が終了していなければ(ステップS8)、ステップS2に戻る。
【0037】
次に、ステップS5、すなわち、マスト昇降距離算出ルーチンについて、図7を参照しながら以下に説明する。
ストローク計測値から、コントロールバルブ21(またはリフトレバー16)が停止位置にあると判断できる場合(ステップS21)、演算部は、マスト13の昇降距離を0とし(ステップS28)、マスト高計測値を前回の値のまま維持する。
【0038】
ストローク計測値から、コントロールバルブ21(またはリフトレバー16)が上昇側にあると判断できる場合(ステップS22)、演算部は、液圧ポンプ26の吐出圧計測値と回転数計測値とを第1マスターデータに当てはめ、対応する吐出流量Qを算出する(ステップS23)。このとき、各計測値が第1マスターデータの中間値である場合には、既知の手法を使って補間することにより液圧ポンプ26の吐出流量Qを算出する。
【0039】
また、該演算部は、液圧ポンプ26の吐出圧計測値とストローク計測値とを第2マスターデータに当てはめ、液圧ポンプ26から吐出される作動流体のリフトシリンダ14へ流入する流量とタンク22へ戻る流量との流量比率αを算出する(ステップS24)。なお、各計測値が第2マスターデータの中間値の場合に補間するのは前述同様である。ここでは、αは、タンク22へ向かう流量QTに対するリフトシリンダ14に向かう流量QSINの比率であり、α=QSIN/QTと表すことができる。
【0040】
次に、演算部は、このようにして算出した液圧ポンプ26の吐出流量Qと流量比率αとに基づいて、リフトシリンダ14への作動流体の流入流量QSINを算出する(ステップS25)。
具体的には、以下の式(1)に基づいて流入流量QSINが算出される。
QSIN=Q×(QSIN/QSIN+QT)=Q×α/(α+1)・・・(1)
【0041】
次に、演算部は、この流入流量QSINに基づいて、シリンダピストンのストローク量、すなわちマスト13の上昇距離Dを算出する(ステップS26)。
具体的には、例えば以下の式(2)に基づいて移動距離(上昇距離)Dが算出される。
=Δt×QSIN/A・・・(2)
ここで、Δtは、サンプリング間隔、Aはシリンダの有効面積である。
【0042】
次に演算部は、式(3)に示すように、前回のサンプリング時に算出したマスト高計測値Hi-1に、上昇距離Dを足して新たなマスト高計測値Hとする(ステップS27)。
=Hi―1+D・・・(3)
【0043】
他方、ストローク計測値から、コントロールバルブ21(またはリフトレバー16)が下降側にあると判断できる場合(ステップS22)、演算部は、シリンダ圧力計測値とストローク計測値とを、第3マスターデータに当てはめ、リフトシリンダ14からコントロールバルブ21を通ってタンク22へ戻る作動流体の流量QSOUTを算出する(ステップS29)。
【0044】
次に、演算部は、この流出流量QSOUTに基づいて、シリンダピストンのストローク量、すなわちマスト13の下降距離Dを算出する(ステップS26)。
具体的には、例えば以下の式(4)に基づいて下降距離Dが算出される。
=Δt×QSOUT/A・・・(4)
ここで、Δtは、サンプリング間隔、Aはシリンダの有効面積である。
【0045】
次に演算部は、式(3)に示すように、前回のサンプリング時に算出したマスト高計測値H(前回)から、下降距離Dを差し引いて新たなマスト高計測値H(今回)とする(ステップS27)。
(今回)=H(前回)-D・・・(5)
そして、演算部は、このようにして算出したマスト高計測値を出力し、例えば、フォークリフトの運転席に設けられた表示装置に表示させる。
<本マスト高計測装置2による効果>
【0046】
以上の構成によれば、回転数センサ31、吐出圧センサ32、ストロークセンサ33などといった既存のセンサや安価で設置容易なセンサを用いてマスト高さの計測が可能となるだけでなく、液圧ポンプ26やコントロールバルブ21の種類ごとに、あるいはそれが搭載されるフォークリフト1の種類ごとに、実験やシミュレーションなどによって予め求められた相関データに基づいて、リフトシリンダ14に流出入する作動流体の流量を算出し、そこからマスト高さを算出しているので、高い計測精度を担保できる。
【0047】
また、相関データがテーブル形式であり、多少の簡単な補間計算が必要な場合があるとはいえ、基本的には各計測データの値を相関データに当てはめるだけで作動流体の流量を算出できるので、計算負荷を小さくでき、例えば高性能(高価格)のCPUを用いずとも十分な計測速度および計測精度を担保できる。
【0048】
さらに、前記実施形態では、マスト高さをシリンダに対する作動流体の流出入量の積分で算出しているが、その際に生じ得る積分誤差を、基準高さの検知によってリセットしているので、積分誤差の蓄積による大幅な計測誤差を確実に回避することができる。この基準高さの検出には、前述したようにリミットスイッチのような簡単に取り付けられる安価なセンサを用いているので、構成の複雑化や価格の高騰を招くこともない。また、基準高さをマスト13の最上昇位置や最下降位置に設定すれば、前述したように、リミットスイッチのような専用のセンサを用いることなく、ポンプ吐出圧等を利用して積分誤差の蓄積による計測誤差を回避することができる。
<他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られない。
【0049】
前記実施形態では、下降時のマスト高さを算出するために、リフトシリンダ圧力を圧力センサで直接的に計測し、そのシリンダ圧計測値を用いていたが、シリンダ圧力センサが取り付けられていない場合や、取り付けられていてもその出力データの取得が難しい場合がある。
【0050】
このような場合、例えば、リフトシリンダ圧力は、マスト重量や搬送台重量などの空荷重量と、積載された荷物重量とを足し合わせた重量に比例しているから、フォークリフトの搬送台等に設けた重量センサで荷物重量を計測し、その計測重量に前記空荷重量を足し合わせた値に基づいてシリンダ圧計測値を間接的に算出してもかまわない。
【0051】
他方、前記実施形態では、上昇時のマスト高さを算出する際に、シリンダ圧計測値は利用していなかったが、シリンダ圧計測値を利用する場合は、液圧ポンプの吐出圧力、リフトシリンダ圧力及びコントロールバルブスプールストローク量と、リフトシリンダへの作動流体の流入流量との相関データ(第4マスターデータ)を、予め実験やシミュレーション等で作成・記録しておき、シリンダ圧計測値、液圧ポンプの吐出圧計測値およびコントロールバルブのストローク計測値を第4マスターデータに当てはめてリフトシリンダへの作動流体の流入流量を求めてもよい。
また、リフト上昇時の液圧ポンプの吐出圧計測値とコントロールバルブのストローク計測値から、リフトシリンダ圧力を算出するようにしてもよい。
【0052】
前記実施形態でのマスト高計測装置は、フォークリフトに取り付けられているが、作業者(運転者)が用いる携帯端末や作業管理者が用いるコンピュータ、あるいはクラウドコンピュータなどにその機能を担わせるなど、フォークリフトとは別に設けられていてもかまわない。その場合は、各センサをIoT化し、インターネット等の無線回線を通じて各計測データをマスト高計測装置が取得できるようにすればよい。
【0053】
また、以上のようにして算出されたマスト高計測値を示すデータ(マスト高計測データ)は、フォークリフトの運転席の表示装置のみならず、前述したような携帯端末や作業管理者のコンピュータなどに送信し、ログにとって記録してもかまわない。音声で報知するようにしてもよい。
【0054】
リフトシリンダ内の圧力(シリンダ圧)に代えて、荷物の重量を用いた相関データを作成し利用することも可能である。荷物の重量はシリンダ圧と一対一の関係にあるから置き換えても、同様にマスト高さを算出できる。
ストローク計測データは、リフトレバーの操作量から得ることもできる。
<フォークリフトの操作診断装置>
【0055】
さらに、このようにして計測したマスト高計測値を用いれば、フォークリフトの操作診断を行うことができる。この操作診断の一例について、次に説明する。
従来は、フォークリフトの制御装置において、積荷の重量、車速などそれぞれの機構に設定された閾値により、個別に速度や積荷重量の制限がされている。
【0056】
しかしながら、実際のフォークリフトの操作においては、複数の要素が同時に重なり合って危険な状態となるケースがある。例えば、同じリフト高さでも積荷の重量や車速、マストの昇降速度によって、その操作の危険度は異なる。そこで従来の実際の現場ではフォークリフトの操作者が自身の経験を基に、前述のような複数の要素から状況を判断し、危険運転を避けている。
【0057】
以下では、前記演算部に、フォークリフトの操作を複数の要素から自動診断して、その安全度を可視化する機能を設けた例について説明する。つまり、マスト高計測装置はフォークリフト操作診断装置としても機能することになる。
具体的に、前記演算部は、前記荷物重量計測値、マスト高計測値および車速計測値に基づいて、安全操作指数を算定する。
【0058】
荷物重量およびマスト高の計測については前述したとおりである。車速に関しては、既存のフォークリフトには車速センサが搭載されており、この車速センサから出力される車速データを取得する。その他に、別途、車軸や走行用モータ等に回転数センサを取り付けて車速データを取得するようにしてもかまわない。
【0059】
しかして、ここでは、所定の操作評価関数がメモリの所定領域に格納されており、前記演算部は、この操作評価関数に前記荷物重量計測値、マスト高計測値および車速計測値を代入することにより、安全操作指数を算出する。
これを式で表すと以下の通りとなる。
S=f(M,H,V)
ここで、Iは安全操作指数、fは操作評価関数、Mは荷物重量計測値、Hはマスト高計測値、Vは車速計測値である。
【0060】
さらに演算部は、この安全操作指数Sを、その値により複数のレベル、例えば次の3つに分類する。
レベル1:フォークリフトの安全規則として規定されているレベル
レベル2:レベル1を超えているがフォークリフトの構造上問題ないレベル
レベル3:レベル2を超えてフォークリフトの転倒の危険性が高いレベル
【0061】
演算部は、このように算出した前記安全操作指数及びレベルをメモリの所定量領域に設定された操作指数格納部に、運転者ID、時刻等とともに逐次記録する。
このとき、安全操作指数に加え、前記荷物重量計測値、マスト高計測値および車速計測値をも操作指数格納部に記録してもよい。
【0062】
このような安全操作指数を含む操作状況情報は、前述同様、フォークリフトの運転席に設けられた表示装置に表示して、操作者にすぐに報知できるようにしてある。また、この操作状況情報を、作業管理者が用いる端末装置やクラウドコンピュータなどに送信し、ログにとって記録して、作業者によるフォークリフトの操作管理に用いるようにしてもよい。
【0063】
しかして、このような構成であれば、複数のセンシング項目からフォークリフトの操作の安全度を定量的かつ客観的に評価することができ、積荷の重さに応じた危険なリフト高さの診断や、危険高さでの走行速度、荷役操作速度等に関して、操作者への注意喚起や管理者への危険状態の通知ができる。
また、前記安全操作指数を用いて、事故に至らない状態を分類し省エネ診断や操作者のスキル評価ができるようになる。
【0064】
なお、マスト高計測値を時間微分したマスト速度や、車速を時間微分した加速度を前記操作評価関数の変数に加えることでマストの操作速度による危険診断や、フォークリフトの急な加減速による危険診断などの項目を加える事ができる。
また、マスト高さは、例えば、マスト昇降シリンダに滑車状の巻き取りゲージやリニアゲージを取付けるなどして計測してもかまわない。
以上をまとめると次のようになる。
【0065】
(1)このフォークリフトのマスト高計測装置は、リフトシリンダに作動流体を供給する液圧ポンプの吐出圧力、該液圧ポンプの回転数およびリフトシリンダに対する作動流体の流出入をコントロールするコントロールバルブのスプールストローク量と、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量との相関を示す相関データを格納している相関データ格納部と、
前記液圧ポンプの吐出圧力に関する値を有する吐出圧計測データ、該液圧ポンプの回転数に関する値を有する回転数計測データおよび前記コントロールバルブのスプールストローク量に関する値を有するストローク計測データを取得し、
これら吐出圧計測データ、回転数計測データおよびストローク計測データの各値から、前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量を算出し、該作動流体の流量に基づいてマスト高さを算出する演算部と、を備えていることを特徴とする。
【0066】
このような構成であれば、既存のセンサや安価で設置容易なセンサを用いることによって、マスト高さの計測が可能となるだけでなく、実機に搭載された液圧ポンプやコントロールバルブ固有の特性を加味した相関データによって、リフトシリンダに流出入する作動流体の流量を算出するのでマスト高さを精度よく測定できる。
【0067】
(2)前記演算部は、前記ストローク計測データの値に基づいてリフトシリンダが上昇しているか否かを判断し、上昇と判断した場合に、前記吐出圧計測データ、回転数計測データおよびストローク計測データの各値から前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに流入する作動流体の流量を算出する。
このようなものであれば、ストローク計測データの値に基づいて上昇時を確実に判断でき、マスト高さを精度よく算出することができる。
【0068】
(3)前記相関データとして、前記液圧ポンプの吐出圧力および回転数と、該液圧ポンプ吐出流量との相関を表した第1マスターデータと、
前記液圧ポンプの吐出圧力および前記コントロールバルブのスプールストローク量と、前記液圧ポンプからコントロールバルブを介してリフトシリンダへ供給される流量およびタンクへ戻る流量の流量比率との相関を表した第2マスターデータとが設けられており、
前記演算部は、前記第1マスターデータを参照して液圧ポンプの吐出流量を算出するとともに、前記第2マスターデータを参照して前記流量比率を算出し、これら液圧ポンプ吐出流量と流量比率に基づいて、リフトシリンダに流入する作動流体の流量を算出する。
【0069】
このような構成であれば、相関データが、液圧ポンプ固有の第1マスターデータとコントロールバルブ固有の第2マスターデータに分離しているので、各マスターデータの実験等による取得が容易になる。
【0070】
(4)また、このフォークリフトのマスト高計測装置は、リフトシリンダに作用しているシリンダ負荷および該リフトシリンダに対する作動流体の流出入をコントロールするコントロールバルブのスプールストローク量と、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量との相関を示す相関データを格納している相関データ格納部と、
前記リフトシリンダ内の圧力に関する値を有するシリンダ圧計測データおよび前記コントロールバルブのスプールストローク量に関する値を有するストローク計測データを取得し、
これらシリンダ圧計測データおよびストローク計測データの各値から、前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量を算出し、該作動流体の流量に基づいてマスト高さを算出する演算部と、を備えていることを特徴とする。
このようなものであれば、シリンダ圧計測データを利用して、下降時のマスト高さを精度よく計測できる。
【0071】
(5)前記演算部は、前記ストローク計測データの値に基づいてリフトシリンダが下降しているか否かを判断し、下降と判断した場合に、前記シリンダ圧計測データおよびストローク計測データの各値から前記相関データを参照して、前記リフトシリンダから流出する作動流体の流量を算出し、該作動流体の流量に基づいてマスト高さを算出する。
このようなものであれば、ストローク計測データの値に基づいて下降時を確実に判断でき、マスト高さを精度よく算出することができる。
【0072】
(6)前記相関データとして、前記リフトシリンダの圧力および前記コントロールバルブのスプールストローク量と、前記液圧ポンプからコントロールバルブを介してリフトシリンダへ供給される作動流体の流量との相関を表した第3マスターデータが設けられており、
前記演算部は、前記第3マスターデータを参照して前記リフトシリンダから流出する作動流体の流量を算出する。
このような構成であれば、第3マスターデータを実験やシミュレーションなどによって取得することにより、精度の良いマスト高さの計測が可能になる。
【0073】
(7)具体的には、前記シリンダ圧計測データを、リフトシリンダの圧力を計測するシリンダ圧センサまたはフォークリフトに積載される荷物重量を計測する重量センサから取得するようにしておくことが好ましい。
【0074】
(8)また、このフォークリフトのマスト高計測装置は、リフトシリンダに作動流体を供給する液圧ポンプの吐出圧力、該リフトシリンダ内の作動流体の圧力およびリフトシリンダに対する作動流体の流出入をコントロールするコントロールバルブのスプールストローク量と、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量との相関を示す相関データを格納している相関データ格納部と、
前記液圧ポンプの吐出圧力に関する値を有する吐出圧計測データ、前記リフトシリンダ内の圧力に関する値を有するシリンダ圧計測データおよび前記コントロールバルブのスプールストローク量に関する値を有するストローク計測データを取得し、
これら吐出圧計測データ、シリンダ圧計測データおよびストローク計測データの各値から、前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに対して流出入する作動流体の流量を算出し、該作動流体の流量に基づいてマスト高さを算出する演算部と、を備えていることを特徴とする。
このようにシリンダ圧計測データを用いれば、液圧ポンプの吐出流量を用いることなく、上昇時のマスト高さを計測できる。
【0075】
(9)前記演算部は、前記ストローク計測データの値に基づいてリフトシリンダが上昇しているか否かを判断し、上昇と判断した場合に、前記吐出圧計測データ、シリンダ負荷データおよびストローク計測データの各値から、前記相関データを参照して、前記リフトシリンダに流入する作動流体の流量を算出する。
このようなものであれば、ストローク計測データの値に基づいて上昇時を確実に判断でき、マスト高さを精度よく算出することができる。
【0076】
(10)上昇時においては、前記演算部が、前記シリンダ圧計測データの値を、前記吐出圧計測データおよびストローク計測データの各値に基づいて算出することも可能である。
【0077】
(11)また、このフォークリフトの操作診断装置は、フォークリフトの搬送台に搭載された荷物の重量に関する値を有する荷物重量データ、前記搬送台の高さに関する値を有する搬送台高さデータおよびフォークリフトの車速に関する値を有する車速データ基づいて、フォークリフトの操作の安全度を示す操作安全指数を算出することを特徴とする。
このようなものであれば、複合的な要素からなるフォークリフトの操作の安全度を定量的かつ客観的に評価することができ、積荷の重さに応じた危険なリフト高さの診断や、危険高さでの走行速度、荷役操作速度等に関して操作者への注意喚起や管理者への危険状態の通知ができる。また、前記安全操作指数を用いて、事故に至らない状態を分類し省エネ診断や操作者のスキル評価ができるようになる。
【0078】
(12)前記搬送台の昇降速度に関する値を有する搬送台昇降速度データおよび/またはフォークリフトの加速度に関する値を有する加速度データにさらに基づいて、前記操作安全指数を算出するようにしておけば、さらに細かく精度の高い操作評価ができるようになる。
【0079】
フォークリフトの操作安全性を直感的に把握できるようにするには、前記操作安全指数の値に基づいて、操作の安全性を複数段階のレベルに分類し、出力するものが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、既存のセンサや安価で設置容易なセンサを用いることによって、マスト高さの計測が可能となるだけでなく、実機に搭載された液圧ポンプやコントロールバルブ固有の特性を加味した相関データによって、リフトシリンダに流出入する作動流体の流量を算出できるのでマスト高さを精度よく測定できる。
【符号の説明】
【0081】
100・・・マスト高計測装置(操作診断装置)
1・・・フォークリフト
21・・・コントロールバルブ
14・・・リフトシリンダ
26・・・液圧ポンプ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7