IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナカヨの特許一覧

特許7582546通信装置、プログラム、および音声通信方法
<>
  • 特許-通信装置、プログラム、および音声通信方法 図1
  • 特許-通信装置、プログラム、および音声通信方法 図2
  • 特許-通信装置、プログラム、および音声通信方法 図3
  • 特許-通信装置、プログラム、および音声通信方法 図4
  • 特許-通信装置、プログラム、および音声通信方法 図5
  • 特許-通信装置、プログラム、および音声通信方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】通信装置、プログラム、および音声通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 61/00 20220101AFI20241106BHJP
   H04M 3/00 20240101ALI20241106BHJP
【FI】
H04L61/00
H04M3/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024094004
(22)【出願日】2024-06-10
【審査請求日】2024-06-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134707
【氏名又は名称】株式会社ナカヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】有泉 和憲
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】相原 和哉
【審査官】山中 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-304476(JP,A)
【文献】特開2011-139135(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042764(WO,A1)
【文献】特開2010-74353(JP,A)
【文献】特開2008-66809(JP,A)
【文献】特開2009-213108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 61/00
H04M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手装置とUDP(User Datagram Protocol)を利用した音声通信を行う通信装置であって、
前記相手装置から受信した音声通信パケットの送信元のアドレス情報を監視するアドレス監視手段と、
前記アドレス監視手段により前記音声通信パケットの送信元のアドレス情報の変更が検知された場合に、前記相手装置に送信する音声通信パケットの送信先のアドレス情報を、当該検知された変更後の送信元のアドレス情報に更新するアドレス更新手段と、
前記相手装置から受信した登録要求に従い、当該相手装置のアドレス情報を登録する端末登録手段と、
前記端末登録手段に登録されている前記相手装置のアドレス情報に基づいて、当該相手装置との間で、TCP(Transmission Control Protocol)を利用したソケット通信を行うソケット通信手段と、を有し、
前記ソケット通信手段は、
前記端末登録手段に登録されている前記相手装置のアドレス情報が更新された場合に、当該相手装置とのソケット通信に用いていたソケットはそのままに、当該相手装置の更新後のアドレス情報に基づいて、当該相手装置とのソケット通信に用いるソケットを新たに作成し、それから、当該相手装置のアドレス情報の更新前に当該相手装置とのソケット通信に用いていたソケットを削除する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項に記載の通信装置であって、
前記アドレス情報は、IPアドレスおよびポート番号を含む
ことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
相手装置とUDP(User Datagram Protocol)を利用した音声通信を行う通信装置として、コンピュータを機能させるプログラムであって、
前記相手装置から受信した音声通信パケットの送信元のアドレス情報を監視するアドレス監視手段
前記アドレス監視手段により前記音声通信パケットの送信元のアドレス情報の変更が検知された場合に、前記相手装置に送信する音声通信パケットの送信先のアドレス情報を、当該検知された変更後の送信元のアドレス情報に更新するアドレス更新手段
前記相手装置から受信した登録要求に従い、当該相手装置のアドレス情報を登録する端末登録手段、および
前記端末登録手段に登録されている前記相手装置のアドレス情報に基づいて、当該相手装置との間で、TCP(Transmission Control Protocol)を利用したソケット通信を行うソケット通信手段として、前記コンピュータを機能させ
前記ソケット通信手段は、
前記端末登録手段に登録されている前記相手装置のアドレス情報が更新された場合に、当該相手装置とのソケット通信に用いていたソケットはそのままに、当該相手装置の更新後のアドレス情報に基づいて、当該相手装置とのソケット通信に用いるソケットを新たに作成し、それから、当該相手装置のアドレス情報の更新前に当該相手装置とのソケット通信に用いていたソケットを削除する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項4】
通信装置によるUDP(User Datagram Protocol)を利用した相手装置との音声通信方法であって、
前記通信装置は、
前記相手装置から受信した音声通信パケットの送信元のアドレス情報を監視し、
前記音声通信パケットの送信元のアドレス情報の変更を検知した場合、前記相手装置に送信する音声通信パケットの送信先のアドレス情報を変更後の送信元のアドレス情報に更新し、
前記相手装置から受信した登録要求に従い、当該相手装置のアドレス情報を登録し、
登録されている前記相手装置のアドレス情報に基づいて、当該相手装置との間で、TCP(Transmission Control Protocol)を利用したソケット通信を行うとともに、登録されている前記相手装置のアドレス情報が更新された場合は、当該相手装置とのソケット通信に用いていたソケットはそのままに、当該相手装置の更新後のアドレス情報に基づいて、当該相手装置とのソケット通信に用いるソケットを新たに作成し、それから、当該相手装置のアドレス情報の更新前に当該相手装置とのソケット通信に用いていたソケットを削除する
ことを特徴とする音声通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UDP(User Datagram Protocol)を用いた音声通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)基盤で物理的ネットワークの構成に依存しないアドレス変換技術が開示されている。この技術において、送信者端末機は、目的地サーバのアドレス情報である目的地IPアドレスおよび目的地ポート番号をアドレス変更情報に従ってアドレス変更IPアドレスおよびアドレス変更ポート番号に変換し、アドレス変更IPアドレスおよびアドレス変更ポート番号を含むトラフィック情報をアドレス変換装置に送信する。アドレス変換装置は、マッピングテーブルに従って送信者端末機から受信したトラフィック情報に含まれるアドレス変更IPアドレスおよびアドレス変更ポート番号を本来の目的地IPアドレスおよび目的地ポート番号に変換して目的地サーバに送信する。これにより、送信者端末機が目的地サーバに連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2010-514326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、携帯電話機、スマートホン等の携帯端末をインターネット経由で主装置に収容することで携帯端末を内線端末として利用可能とする内線電話サービスが普及している。このような内線電話サービスでは、携帯端末の移動により基地局が変更されたタイミング等でキャリアグレードNAT(Network Address Translation)ルータが切り替わり、携帯端末のアドレス情報(グローバルIPアドレスおよびポート番号)が意図せず変更される場合がある。通話中にこの事態が発生すると、通話中の呼が切断されてしまう。なお、特許文献1記載の技術は、送信者端末機が送信したトラフィック情報に含まれている送信先のアドレス情報を本来のアドレス情報に戻して目的地サーバに送信するものであり、ここにおいて、送信元である送信者端末機のアドレス情報変更による通話断絶については考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、UDPを利用した音声通信中に、携帯端末のアドレス情報が意図せず変更された場合でも、通話中の呼を切断することなく継続させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、相手装置とUDPを利用した音声通信を行う通信装置であり、相手装置から受信した音声通信パケットの送信元のアドレス情報を監視し、音声通信パケットの送信元のアドレス情報が変更されたことを検知したならば、相手装置に送信する音声通信パケットの送信先のアドレス情報を変更後の送信元のアドレス情報に更新する。
【0007】
例えば、本発明は、
相手装置とUDPを利用した音声通信を行う通信装置であって、
前記相手装置から受信した音声通信パケットの送信元のアドレス情報を監視するアドレス監視手段と、
前記アドレス監視手段により前記音声通信パケットの送信元のアドレス情報の変更が検知された場合に、前記相手装置に送信する音声通信パケットの送信先のアドレス情報を、当該検知された変更後の送信元のアドレス情報に更新するアドレス更新手段と、
前記相手装置から受信した登録要求に従い、当該相手装置のアドレス情報を登録する端末登録手段と、
前記端末登録手段に登録されている前記相手装置のアドレス情報に基づいて、当該相手装置との間で、TCP(Transmission Control Protocol)を利用したソケット通信を行うソケット通信手段と、を有し、
前記ソケット通信手段は、
前記端末登録手段に登録されている前記相手装置のアドレス情報が更新された場合に、当該相手装置とのソケット通信に用いていたソケットはそのままに、当該相手装置の更新後のアドレス情報に基づいて、当該相手装置とのソケット通信に用いるソケットを新たに作成し、それから、当該相手装置のアドレス情報の更新前に当該相手装置とのソケット通信に用いていたソケットを削除する
【発明の効果】
【0008】
本発明では、通信装置は、相手装置から受信した音声通信パケットの送信元のアドレス情報を監視し、これが変更されたことを検知すると、相手装置に送信する音声通信パケットの送信先のアドレス情報を変更後の送信元のアドレス情報に更新する。したがって、本発明によれば、UDPを利用した音声通信中に、相手装置のアドレス情報が意図せず変更された場合でも、通話中の呼を切断することなく継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る内線電話システムの概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係る内線電話システムの動作例を説明するためのシーケンス図である。
図3図3は、本発明の一実施の形態に係る内線電話システム動作例を説明するためのシーケンス図であり、図2の続きである。
図4図4は、主装置1の概略機能構成図である。
図5図5は、主装置1の音声通信パケット送信先アドレス情報更新処理を説明するためのフロー図である。
図6図6は、主装置1のTCP通信ソケット切替処理を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る内線電話システムの概略構成図である。
【0012】
図示するように、本実施の形態に係る内線電話システムは、主装置1と、主装置1に収容された携帯端末2と、を備えて構成される。
【0013】
主装置1は、インターネット3を介して携帯端末2と、TCP(Transmission Control Protocol)を利用したソケット通信(呼制御)、およびUDP(User Datagram Protocol)を利用した音声通信を行う。これにより、携帯端末2に内線電話サービスを提供する。なお、携帯端末2から主装置1へのアクセスを常時可能とする必要がある。このため、例えば、主装置1のアドレス情報(グローバルIPアドレスおよびポート番号)を固定的に設定するか、あるいは、ポート番号のみを固定的に設定し、グローバルIPアドレスについては、ダイナミックDNS(Domain Name System)サーバにより、主装置1のFQDN(Fully Qualified Domain Nane)から名前解決するようにしてもよい。
【0014】
携帯端末2は、基地局6を介して通信キャリア網4に接続されている。通信キャリア網4は、キャリアグレードNAT(Network Address Translation)ルータ5を介してインターネット3に接続されており、これにより、携帯端末2は、キャリアグレードNATルータ5により割り当てられたアドレス情報(グローバルIPアドレス、ポート番号)により、主装置1が提供する内線電話サービスを享受する。なお、携帯端末2は、移動による基地局6の変更タイミング等でキャリアグレードNATルータ5が切り替わり、そのアドレス情報(グローバルIPアドレスおよびポート番号)が意図せず変更されることがある。
【0015】
図2および図3は、本実施の形態に係る内線電話システムの動作例を説明するためのシーケンス図である。
【0016】
なお、図2および図3において、実線の矢印はTCP通信を示しており、点線の矢印はUDP通信を示している。
【0017】
まず、携帯端末2は、TCPを利用したソケット通信により、通信キャリアから自身に割り当てられた番号情報の指定を伴う登録要求を主装置1に送信する(S100)。キャリアグレードNATルータ5により、この登録要求は、送信元のローカルアドレス情報(ローカルIPアドレスおよびポート番号)Lが、この携帯端末2に割り当てられたグローバルアドレス情報(グローバルIPアドレスおよびポート番号)Gaに変換されて(S101)、インターネット3を介して主装置1に送信される(S102)。これを受けて、主装置1は、携帯端末2から受信した登録要求で指定されている番号情報および送信元のグローバルアドレス情報Gaをこの携帯端末2の端末情報として登録する(S103)。
【0018】
これを受けて、主装置1は、TCPを利用したソケット通信により、グローバルアドレス情報Gaを送信先とする生存確認の定期送信を開始する(S104)。主装置1から生存確認が送信されると(S105)、この生存確認は、キャリアグレードNATルータ5により送信先のグローバルアドレス情報Gaがローカルアドレス情報Lに変換されて(S106)、通信キャリア網4を介して携帯端末2に送信される(S107)。携帯端末2は、主装置1から定期的に生存確認を受信することにより、主装置1との接続を監視する。
【0019】
その後、主装置1および携帯端末2が、TCPを利用したソケット通信により、キャリアグレードNATルータ5によるアドレス変換(携帯端末2のグローバルアドレス情報Gaおよびローカルアドレス情報L間の変換)を介して(S108)、相互に呼制御シーケンスを実施し(S109、S110)、これにより、主装置1と携帯端末2との間に通話路が確立されたものとする。
【0020】
携帯端末2は、UDPを利用した音声通信により、自身のローカルアドレス情報Lを送信元とする音声通信パケットを主装置1に送信する(S111)。この音声通信パケットは、キャリアグレードNATルータ5により送信元のローカルアドレス情報Lがグローバルアドレス情報Gaに変換されて(S112)、インターネット3を介して主装置1に送信される(S113)。同様に、主装置1は、UDPを利用した音声通信により、携帯端末2のグローバルアドレス情報Gaを送信先とする音声通信パケットを携帯端末2に送信する(S114)。この音声通信パケットは、キャリアグレードNATルータ5により送信先のグローバルアドレス情報Gaがローカルアドレス情報Lに変換されて(S115)、通信キャリア網4を介して携帯端末2に送信される(S116)。
【0021】
その後、携帯端末2の移動により基地局6が変更されたタイミング等でキャリアグレードNATルータ5が切り替わり、携帯端末2に割り当てられるグローバルアドレス情報が、グローバルアドレス情報Gaからグローバルアドレス情報Gbに変更されたものとする(S117)。
【0022】
携帯端末2は、UDPを利用した音声通信により、自身のローカルアドレス情報Lを送信元とする音声通信パケットを主装置1に送信する(S118)。キャリアグレードNATルータ5により、この音声通信パケットは、送信元のローカルアドレス情報Lが、この携帯端末2に新たに割り当てられたグローバルアドレス情報Gbに変換されて(S119)、インターネット3を介して主装置1に送信される(S120)。主装置1は、携帯端末2から受信する音声通信パケットの送信元アドレス情報を監視しており、この送信元アドレス情報がグローバルアドレス情報Gaからグローバルアドレス情報Gbに変更されたことを検知すると、携帯端末2から受信した登録要求により登録された携帯端末2の端末情報にかかわらず、以降、携帯端末2に送信する音声通信パケットの送信先アドレス情報をグローバルアドレス情報Gaからグローバルアドレス情報Gbに変更する(S121)。
【0023】
その後、主装置1は、UDPを利用した音声通信により、携帯端末2のグローバルアドレス情報Gbを送信先とする音声通信パケットを携帯端末2に送信する(S122)。この音声通信パケットは、キャリアグレードNATルータ5により送信先のグローバルアドレス情報Gbがローカルアドレス情報Lに変換されて(S123)、通信キャリア網4を介して携帯端末2に送信される(S124)。
【0024】
また、主装置1は、TCPを利用したソケット通信により、携帯端末2の端末情報として自身に登録されているグローバルアドレス情報Gaを送信先とする生存確認を送信する(S125)。しかしながら、携帯端末2のグローバルアドレス情報は、グローバルアドレス情報Gaからグローバルアドレス情報Gbに変更されている。このため、キャリアグレードNATルータ5でのアドレス変換に失敗し(S126)、この生存確認は、携帯端末2に到達しない。
【0025】
携帯端末2は、主装置1からの生存確認を受信することなく、所定時間の経過によりタイムアウトすると(S127)、再度、TCPを利用したソケット通信により、自身に割り当てられた番号情報の指定を伴う登録要求を主装置1に送信する(S128)。キャリアグレードNATルータ5により、この登録要求は、送信元のローカルアドレス情報Lが、この携帯端末2に割り当てられたグローバルアドレス情報Gbに変換されて(S129)、インターネット3を介して主装置1に送信される(S130)。主装置1は、携帯端末2から登録要求を再度受信すると、この登録要求で指定されている番号情報を含む携帯端末2の端末情報を特定し、この端末情報に含まれているアドレス情報をグローバルアドレス情報Gaからこの登録要求の送信元のグローバルアドレス情報Gbに更新する(S131)。
【0026】
主装置1は、携帯端末2の端末情報を更新すると、この携帯端末2とのソケット通信に用いていたTCP通信ソケット(以下、旧TCP通信ソケットと呼ぶ)はそのままに、この携帯端末2の新たな端末情報に基づいて、この携帯端末2との通信に用いるTCP通信ソケット(以下、新TCP通信ソケットと呼ぶ)を新たに作成する(S132)。それから、旧TCP通信ソケットを削除する(S133)。
【0027】
これにより、以降、新TCP通信ソケットを用いて携帯端末2とのソケット通信が行われ、主装置1から携帯端末2に定期送信される生存確認(S134)の送信先アドレス情報は、グローバルアドレス情報Gaからグローバルアドレス情報Gbに切り替わる(S134)。この生存確認は、キャリアグレードNATルータ5により送信先のグローバルアドレス情報Gbがローカルアドレス情報Lに変換されて(S135)、通信キャリア網4を介して携帯端末2に送信される(S136)。
【0028】
つぎに、本実施の形態に係る内線電話システムを構成する主装置1の詳細について説明する。なお、携帯端末2は、IP電話機能を備えた既存の携帯電話機、スマートホン等を利用できるので、その詳細な説明を省略する。
【0029】
図4は、主装置1の概略機能構成図である。
【0030】
図示するように、主装置1は、インターネット接続部10と、UDP通信部11と、TCP通信部12と、端末登録部13と、呼制御部14と、中継処理部15と、生存確認送信部16と、アドレス監視部17と、アドレス更新部18と、を備えて構成される。
【0031】
インターネット接続部10は、インターネット3に接続するためのインターフェースである。
【0032】
UDP通信部11は、インターネット接続部10を介して携帯端末2との間で、UDPを利用した音声通信を行う。
【0033】
TCP通信部12は、インターネット接続部10を介して携帯端末2との間で、TCPを利用したソケット通信を行う。
【0034】
端末登録部13は、TCP通信部12を介して携帯端末2から受信した登録要求に従い、この登録要求で指定されている携帯端末2の番号情報およびその送信元アドレス情報(グローバルIPアドレスおよびポート番号)を、端末情報として登録する。
【0035】
呼制御部14は、所定の呼制御プロトコルに従い、TCP通信部12を介して、端末登録部13に端末情報が登録されている携帯端末2との間の通話路の確立・解放を行う。
【0036】
中継処理部15は、RTP(Realtime Transport Protocol)等の伝送プロトコルに従い、UDP通信部11を介して、呼制御部14により通話路が確立されている携帯端末2との間で音声通信パケットを送受信する。
【0037】
生存確認送信部16は、端末登録部13に端末情報が登録されている携帯端末2に対して、TCP通信部12を介して生存確認を定期的に送信する。
【0038】
アドレス監視部17は、UDP通信部11が携帯端末2から受信した音声通信パケットの送信元アドレス情報を監視する。
【0039】
アドレス更新部18は、携帯端末2からの音声通信パケットの送信元アドレス情報の変更がアドレス監視部17により検知された場合に、UDP通信部11がこの携帯端末2に送信する音声通信パケットの送信先アドレス情報をこの変更後の送信元アドレス情報に更新する。
【0040】
図4に示す主装置1の機能構成は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積ロジックICによりハード的に実現されるか、あるいはDSP(Digital Signal Processor)などの計算機によりソフトウエア的に実現される。または、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置と、NIC(Network Interface Card)等の通信機と、を備えたPC(Personal Computer)等の汎用コンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置からメモリ上にロードして実行することによりプロセスとして実現される。
【0041】
図5は、主装置1の音声通信パケット送信先アドレス情報更新処理を説明するためのフロー図である。
【0042】
このフローは、呼制御部14によって携帯端末2との間に通話路が確立されると開始され、この通話路が解放されることにより終了する。
【0043】
まず、アドレス監視部17は、呼制御部14によって確立された通話路を介して、UDP通信部11が携帯端末2から受信した音声通信パケットの送信元アドレス情報の監視を開始する(S200)。そして、アドレス監視部17が携帯端末2から受信した音声通信パケットの送信元アドレス情報の変更を検知すると(S201でYES)、アドレス更新部18は、呼制御部14によって確立された通話路を介してUDP通信部11がこの携帯端末2に送信する音声通信パケットの送信先アドレス情報を、アドレス監視部17により検知された変更後の送信元アドレス情報に更新する(S202)。
【0044】
図6は、主装置1のTCP通信ソケット切替処理を説明するためのフロー図である。
【0045】
このフローは、端末登録部13が携帯端末2から受信した登録要求に従い、この携帯端末2の端末情報を新たに登録することにより開始される。
【0046】
まず、TCP通信部12は、端末登録部13に新たに登録された携帯端末2の端末情報の監視を開始する(S210)。そして、TCP通信部12は、端末登録部13がこの携帯端末2の端末情報を変更したことを検知すると(S211でYES)、この携帯端末2の変更前の端末情報に含まれているアドレス情報(グローバルIPアドレスおよびポート番号)に結び付けられた旧TCP通信ソケットはそのままに、この変更後の端末情報に含まれているアドレス情報に結び付けられた新TCP通信ソケットを作成する(S212)。それから、TCP通信部12は、この携帯端末2の変更前の端末情報に含まれているアドレス情報に結び付けられた旧TCP通信ソケットを削除する(S213)。
【0047】
以上、本発明の一実施の形態を説明した。
【0048】
本実施の形態において、主装置1は、携帯端末2から受信した音声通信パケットの送信元アドレス情報を監視し、これが変更されたことを検知すると、携帯端末2に送信する音声通信パケットの送信先アドレス情報を変更後の送信元アドレス情報に更新する。したがって、本実施の形態によれば、UDPを利用した音声通信中に、携帯端末2の移動により基地局6が変更されたタイミング等でキャリアグレードNATルータ5が切り替わり、携帯端末2のアドレス情報が意図せず変更された場合でも、通話中の呼を切断することなく継続させることができる。
【0049】
また、本実施の形態において、主装置1は、携帯端末2から受信した登録要求に従い携帯端末2の端末情報が変更された場合に、それまでにこの携帯端末2との通信に用いていた旧TCP通信ソケットをそのまま切断せずに、この変更後の端末情報に基づいて、この携帯端末2との通信に用いる新TCP通信ソケットを作成し、その後、旧TCP通信ソケットを削除している。
【0050】
一般に、TCP通信において、サーバ装置は、クライアント端末の端末情報が変更されると、それまでにクライアント端末との通信に用いていた旧TCP通信ソケットを削除し、それから、変更後の端末情報に基づいて、クライアント端末との通信に用いる新TCP通信ソケットを新たに作成する。このため、サーバ装置とクライアント端末とのセッションが一時的に切断され、クライアント端末は、サーバ装置が提供するサービスを一時的に利用できなくなる可能性がある。
【0051】
しかしながら、本実施の形態において、主装置1は、携帯端末2の端末情報が変更された場合に、携帯端末2との通信に用いていた旧TCP通信ソケットそのまま切断せずに、変更後の端末情報に基づいて、この携帯端末2との通信に用いる新TCP通信ソケットを新たに作成しているので、携帯端末2とのセッションが切断されることなく継続される。このため、本実施の形態によれば、携帯端末2の端末情報の変更により、この携帯端末2との通信に用いるTCP通信ソケットが切り替わる場合でも、携帯端末2は、主装置1が提供する内線電話サービスを継続して利用することができる。
【0052】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0053】
例えば、上記の実施の形態では、本発明を内線電話システムの主装置1に適用した場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明は、相手装置とUDPを利用した音声通信を行う通信装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:主装置 2:携帯端末 3:インターネット 4:通信キャリア網
5:キャリアグレードNATルータ 6:基地局
10:インターネット接続部 11:UDP通信部 12:TCP通信部
13:端末登録部 14:呼制御部 15:中継処理部
16:生存確認送信部 17:アドレス監視部 18:アドレス更新部
【要約】
【課題】UDP(User Datagram Protocol)を利用した音声通信中に、携帯端末のアドレス情報が意図せず変更された場合でも、通話中の呼を切断することなく継続させることができる技術を提供する。
【解決手段】主装置1は、携帯端末2との間で、UDPを利用した音声通信を行う通信装置であり、UDPを利用した音声通信により携帯端末2から受信した音声通信パケットの送信元アドレス情報を監視し、音声通信パケットの送信元アドレス情報が変更されたことを検知したならば、UDPを利用した音声通信により携帯端末2に送信する音声通信パケットの送信先アドレス情報を変更後の送信元アドレス情報に更新する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6